説明

作業機の制御装置

【課題】ブームやアームの長さに依存することなく、作業用アタッチメントを鉛直に昇降させることができる作業機の制御装置を提供する。
【解決手段】上部旋回体の前方において鉛直方向に対する掘削ロッドの傾斜角度が所定の閾値を超えた場合には、アクチュエータ駆動制御手段に基づいてアームを引く制御が実行される(ステップ1〜2)。また、上部旋回体の後方において鉛直方向に対する掘削ロッドの傾斜角度が所定の閾値を超えた場合には、アクチュエータ駆動制御手段に基づいてアームを押す制御が実行される(ステップ3〜4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削ロッド等の作業用アタッチメントを有する作業機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦穴掘削、杭打ち等の基礎工事用の作業機として、走行可能な下部走行体に対して旋回可能に設置された上部旋回体の前方にブームとアームを順次連結し、アームの先端に作業用アタッチメントを前後方向に揺動可能に装着された作業機が知られている。この種の作業機は、例えば地盤を掘削する際には、ブームとアームを操作することで、作業用アタッチメントとしてのアースオーガを鉛直に保ったまま昇降させる必要がある。
【0003】
ところで、地盤を掘削する際にアースオーガを鉛直に保ったまま昇降させるように、複数のアームの回動を制御するアーム式作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このアーム式作業機では、各々のアームの長さと角度とから各々のアームの軌跡が演算され、この演算に基づいて各々のアームの動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−219789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアーム式作業機では、各々のアームの軌跡の演算に際して各々のアームの長さを演算制御回路に入力する必要がある。そのため、アームを交換した場合には、交換後のアームの長さを演算制御回路に入力する必要が生じる。
【0006】
本発明は、ブームやアームの長さに依存することなく、作業用アタッチメントを鉛直に昇降させることができる作業機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行可能な下部走行体に対して旋回可能に設置された上部旋回体の前方に回動可能に取り付けられたブームと、該ブームの先端部に回動可能に取り付けられたアームと、前記ブームを前記上部旋回体の上下方向に回動させる第1アクチュエータと、前記アームを前記上部旋回体の前後方向に回動させる第2アクチュエータと、前記アームの先端部に前後方向に揺動可能に装着された作業用アタッチメントとを備えた作業機の制御装置であって、前記上部旋回体の前後方向において鉛直方向に対する前記作業用アタッチメントの傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ駆動制御手段とを有し、該アクチュエータ駆動制御手段は、前記傾斜角度検出手段によって検出された傾斜角度が所定の閾値を超えた場合に、前記作業用アタッチメントが鉛直となるように前記第2アクチュエータを駆動させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ブームとアームの回動によってアームの先端部が上部旋回体の上下方向に回動して、作業用アタッチメントが上部旋回体の前後方向において鉛直方向に対して傾斜した場合に、この傾斜角度が閾値を超えたときには、アクチュエータ駆動制御手段に基づいて第2アクチュエータの駆動によってアームを回動させて作業用アタッチメントを鉛直とすることができる。そのため、ブームやアームを交換した場合であっても傾斜角度の閾値を変更することなく、作業用アタッチメントを鉛直に昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態である作業機の側面図。
【図2】実施形態のアクチュエータを制御する油圧制御の制御回路図。
【図3】実施形態の作業機の動作図。
【図4】本発明の作業機の制御装置に関するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を以下に説明する。まず、図1を用いて、作業機の構成を説明する。
【0011】
作業機1は、走行可能な下部走行体2と、この下部走行体2に対して旋回可能に設置された上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3の前方には運転室10が設けられている。
【0012】
また、作業機1は、上部旋回体3の前方に回動可能に取り付けられたブーム11と、ブーム11の先端部11aに回動可能に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端部12aに前後方向に揺動可能に装着された作業用アタッチメントとしてのアースオーガ13と、ブーム11を回動させる第1アクチュエータとしてのブームシリンダ14と、アーム12を回動させる第2アクチュエータとしてのアームシリンダ15とを有する。ブーム11はブームシリンダ14を伸縮させることにより上部旋回体3の上下方向に回動され、アーム12はアームシリンダ15を伸縮することにより上部旋回体3の前後方向に回動される。
【0013】
アースオーガ13は、アーム12の先端部12aに前後方向に揺動可能に装着された駆動部16と、この駆動部16に取り付けられた掘削ドリル17とを有する。駆動部16では、掘削ドリル17を回転させて掘削させるための動力が発生する。また、駆動部16には、掘削ドリル17の鉛直方向に対する傾斜角度を検出することのできる電子水準器18が取り付けられている。本実施形態の電子水準器18は、上部旋回体3の前後方向において鉛直方向に対する掘削ドリル17の傾斜角度を検出することができる。
【0014】
次に、図2に基づいてブーム11とアーム12の油圧制御について説明する。ブーム11とアーム12の油圧制御は、油圧制御機構20によって実行される。油圧制御機構20は、CPU21と、第1比例弁22及び第2比例弁23と、ブームシリンダ14に油圧を供給する第1油圧切換弁24と、アームシリンダ15に油圧を供給する第2油圧切換弁25と、アーム12を引く方向に操作するアームレバー26と、ブーム11を下げる方向に操作するブームレバー27と、オイルポンプ28、29、パイロットポンプ30を有する。
【0015】
また、図2に示す実線は、ブームシリンダ14とアームシリンダ15に供給される油圧の油路を示し、図2に示す点線は、第1比例弁22及び第2比例弁23と第1油圧切換弁24のパイロットポート24a、24b及び第2油圧切換弁25のパイロットポート25a、25bに供給される油圧の油路を示し、図2に示す2点鎖線は、CPU21が送受信する信号の経路を示す。
【0016】
CPU21には、電子水準器18で検出された掘削ロッド17の傾斜角度が入力される。CPU21は、この傾斜角度に基づいて、第1比例弁22及び第2比例弁23のソレノイド22s、23sに流す電流を制御する。
【0017】
第1比例弁22は、パイロットポンプ30からの油圧を第2油圧切換弁25のパイロットポート25aに供給する場合と、第2油圧切換弁25のパイロットポート25aに供給された油圧をドレーンする場合とを選択する弁である。この選択は、ソレノイド22sに流れる電流によって定められる。
【0018】
第2比例弁23は、パイロットポンプ30からの油圧を第2油圧切換弁25のパイロットポート25bに供給する場合と、第2油圧切換弁25のパイロットポート25bに供給された油圧をドレーンする場合とを選択する弁である。この選択は、ソレノイド23sに流れる電流によって定められる。
【0019】
第2油圧切換弁25を介してアームシリンダ15に供給される油圧について説明する。第2油圧切換弁25のパイロットポート25a、25bに供給される油圧は、アームレバー26を操作することによって制御される場合と、第1比例弁22、第2比例弁23のソレノイド22s、23sへの通電によって制御される場合とがある。ソレノイド22s、23sが通電されているときは、パイロットポート25a、25bに油圧が供給される。
【0020】
第2油圧切換弁25のパイロットポート25a、25bの両方に油圧が供給されていないときは、オイルポンプ29から供給される油圧はドレーンされる。
【0021】
パイロットポート25aのみに油圧が供給されているときは、オイルポンプ29からアームシリンダ15に供給される油圧によってアームシリンダ15が縮み、アーム12の先端部12aは下方に移動する。また、パイロットポート25bのみに油圧が供給されているときは、オイルポンプ29からアームシリンダ15に供給される油圧によってアームシリンダ15が伸び、アーム12の先端部12aは上方に移動する。
【0022】
第1油圧切換弁24は、ブームレバー27の操作で供給される油圧によって切り換わる。第1油圧切換弁24のパイロットポート24a、24bの両方に油圧が供給されていないときは、オイルポンプ28から供給される油圧はドレーンされる。
【0023】
ブームレバー27の操作によってパイロットポート24aのみに油圧が供給されているときは、ブームシリンダ14に供給される油圧によってブームシリンダ14が縮み、ブーム11の先端部11aは下方に移動する。また、アームレバー27の操作によってパイロットポート24bのみに油圧が供給されているときは、ブームシリンダ14に供給される油圧によってブームシリンダ14が伸び、ブーム11の先端部11aは上方に移動する。
【0024】
次に、図2、図3に基づいて、掘削時のアームの制御について説明する。アースオーガ13は、アーム12の先端部12aに前後方向に揺動可能となるように装着されている。そのため、掘削ロッド17が地盤gに当接されていない状態では、図3(a)に示すように、掘削ロッド17は鉛直となる。
【0025】
次に、ブームシリンダ14とアームシリンダ15とを伸縮させて、アースオーガ13を下方向に移動させることによって、掘削ロッド17が地盤gに当接する。その後、駆動部16の動力によって掘削ドリル17が回転して、地盤gが掘削される。地盤gの掘削時には、ブームシリンダ14を縮ませることによってブーム11が下方に移動すると共に上部旋回体3の前方に移動するため、アーム12及びアースオーガ13も下方に移動すると共に上部旋回体3の前方に移動する。そのため、図3(b)に示すように掘削ドリル17が傾斜する。
【0026】
この掘削ドリル17の傾斜角度が一定の閾値を超えたときに、アーム12の位置を制御して、傾斜角度を小さくし、ひいては掘削ロッド17を鉛直にするための制御が、図4のフローチャートに示されている。
【0027】
まず、上部旋回体3の前方向において鉛直方向に対する掘削ロッド17の正面前方向の傾斜角度が所定の閾値を超えたか否かが判断される(ステップ1)。ステップ1では、電子水準器18で検出された鉛直方向に対する掘削ロッド17の傾斜角度がCPU21に入力される。この電子水準器18が傾斜角度検出手段に相当する。
【0028】
ステップ1で、掘削ロッド17の傾斜角度が所定の閾値を超えたと判断した場合には、「YES」と判断されてアームシリンダ15が縮み、油圧制御機構20によりアーム12を引く処理(アーム補正処理)が実行される(ステップ2)。
アーム補正処理は、すなわち、CPU21からの信号によってソレノイド22sが通電すると、アームレバー26を介してパイロットポート25aに油圧が供給される。そのため、アームシリンダ15に供給された油圧によりアームシリンダ15が縮み、アーム12がブーム11に近づく方向に移動する。このステップ2におけるソレノイド22s及び後述のステップ4におけるソレノイド23sが、アクチュエータ駆動制御手段に相当する。掘削ロッド17が鉛直になるようにアーム12を引いたことによってステップ2が完了し、ステップ1に戻る。
【0029】
一方、ステップ1で、上部旋回体3の前方向において鉛直方向に対する傾斜角度が所定の閾値未満であると判断した場合には、「NO」と判断されて、次のステップ3に進む。
【0030】
ステップ3では、上部旋回体3の後方向において鉛直方向に対する掘削ロッド17の傾斜角度が所定の閾値を超えたか否かが判断される。ステップ3では、電子水準器18で検出された鉛直方向に対する掘削ロッド17の傾斜角度がCPU21に入力される。
【0031】
ステップ3で、正面後方向の傾斜角度が所定の閾値を超えたと判断した場合には、「YES」と判断されてアームシリンダ15が伸び、アーム12を押す処理(アーム補正処理)が実行される(ステップ4)。アーム12を押す場合のアーム補正処理は、ソレノイド23sへの通電とパイロットポート25bに油圧が供給される点を除いてアームを引く場合のアーム補正処理と同様に制御される。そして、掘削ロッド17が鉛直になるようにアーム12を移動させたことによって、ステップ4が完了し、ステップ1に戻る。また、ステップ3で、上部旋回体3の後方向の傾斜角度が所定の閾値未満であると判断した場合には、「NO」と判断されて、ステップ1に戻る。
【0032】
なお、ステップ1〜4の動作において、アーム補正処理によって掘削ロッド17の傾斜角度が大きくなる場合には、アーム補正処理は中断される。また、アーム補正処理を行っても掘削ロッド17の傾斜角度が補正されないときは、CPU21はアームシリンダ15が最大に伸びているか、最小に縮んでいると判断し、アーム補正処理は中断される。
【0033】
本実施例では、作業用アタッチメントがアースオーガ13である場合について説明したが、作業用アタッチメントは、アースオーガ13に限らず杭打作業のためのバイブロハンマーであってもよい。その場合は、バイブロハンマーの傾斜角度が所定の閾値を超えると、アクチュエータ制御駆動手段がバイブロハンマーを鉛直になるように制御するので、杭打ちを鉛直に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では上部旋回体3の前後方向について、アースオーガ13の傾斜角度を検出する電子水準器18について説明したが、電子水準器18は上部旋回体3の前後方向についての傾斜角度に加えて左右方向の傾斜角度も検出するものであってもよい。このときは、上部旋回体3の水平方向に傾斜したアースオーガ13を鉛直にするための補正制御は、上部旋回体3の旋回動作を制御することによって実行される。
【0035】
さらに、本実施形態では、ブームシリンダ14とアームシリンダ15によるアースオーガ13の制御を説明したが、ブーム11とアーム12との間にジブシリンダがあってもよい。この場合には、アームシリンダ15についてアーム補正処理を行っても掘削ロッド17の傾斜角度が補正されないときに、ジブシリンダを伸縮させることによって、アーム補正処理を実行しながら掘削することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1…作業機、2…下部走行体、3…上部旋回体、11…ブーム、12…アーム、11a、12a…一端部、13…アースオーガ(作業用アタッチメント)、14…ブームシリンダ(第1アクチュエータ)、15…アームシリンダ(第2アクチュエータ)、18…電子水準器(傾斜角度検出手段)、22s、23s…ソレノイド(アクチュエータ駆動制御手段)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な下部走行体に対して旋回可能に設置された上部旋回体の前方に回動可能に取り付けられたブームと、
該ブームの先端部に回動可能に取り付けられたアームと、
前記ブームを前記上部旋回体の上下方向に回動させる第1アクチュエータと、
前記アームを前記上部旋回体の前後方向に回動させる第2アクチュエータと、
前記アームの先端部に前後方向に揺動可能に装着された作業用アタッチメントとを備えた作業機の制御装置であって、
前記上部旋回体の前後方向において鉛直方向に対する前記作業用アタッチメントの傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ駆動制御手段とを有し、
該アクチュエータ駆動制御手段は、前記傾斜角度検出手段によって検出された傾斜角度が所定の閾値を越えた場合に、前記作業用アタッチメントが鉛直となるように前記第2アクチュエータを駆動させることを特徴とする作業機の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219462(P2012−219462A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83925(P2011−83925)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】