説明

作業機の台車

【課題】トラクタから取り外されて定置されている作業機17を保管場所まで移動させることができると共に、保管場所まで移動させた作業機17をその場に定置することができ、さらに別の作業機の移動手段としてそのまま使用することができる、作業機移動用の台車1を提供する。
【解決手段】キャスタ7,8を備えた作業機の台車1は、作業機の上部20と下部24とを支承する支持部D,Cを備え、当該支持部D,Cを定置された作業機の上部20と下部24に宛がい、台車1と共に作業機17を傾倒すると、作業機17は台車1上に浮上して、支持部D,Cに支承されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に装着するロータリ耕耘装置等の作業機を、作業車両から取り外した状態で移動可能になす台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタで行う作業には普通耕耘作業や代掻き作業等があり、作業内容によってトラクタに装着する作業機をロータリ耕耘装置やドライブハロー等に取り替えて作業が行われる。また、取り外した作業機はそのまま放置しておくと邪魔になるので、倉庫内や納屋等の保管場所まで移動させる必要がある。
そこで、作業機の移動のために作業機毎にキャスタ付きのスタンドを取り付けることが行われており、トラクタから作業機を取り外す場合には、トラクタの昇降装置によって作業機を上昇させた状態で作業機にスタンドを取り付け、或いは非作用姿勢のスタンドを作用姿勢に反転させた後、作業機を下降させて作業機をスタンドに載置するようにしている。
一方、キャスタ付きのスタンドは作業機に合わせて専用のスタンドが用意され、そのためスタンドの購入費用が掛かるので、作業機の種類やメーカーに関係なく汎用的に作業機を載置可能なスタンドの発明もなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−83409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のごとく、作業機を載置して移動可能なスタンドは費用面から勘案して、作業機の種類やメーカーに関係なく汎用的に用いることができるスタンドが望ましい。しかし、特許文献1に記載されたスタンドにあっては、従来のスタンドと同様にトラクタの昇降装置によって作業機を上昇させた状態でスタンドを取り付けた後、作業機を下降させて作業機をスタンドに載置しなければならない。
そのため、既にトラクタから取り外されて定置されている作業機をスタンドに改めて載置すること、逆にスタンドに載置された作業機を降ろしてその場に定置することは、作業機が相当な重量物であることから困難である。また、汎用的に使用できるスタンドといっても、一旦、作業機を載置したスタンドは作業機を降ろさない限り、その作業機専用のスタンドとなり、別の作業機を移動させる必要があったとしても、そのスタンドを使用して作業機を移動させることができないという問題がある。
そこで、本発明は、係る問題点に鑑みて、トラクタから取り外されて定置されている作業機を保管場所まで移動させることができると共に、保管場所まで移動させた作業機をその場に定置することができ、さらに別の作業機の移動手段としてそのまま使用することができる、汎用的な作業機移動用の台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の第1の技術的手段は、キャスタを備えた作業機の台車は、作業機の上部と下部とを支承する支持部を備え、当該支持部を定置された作業機の上部と下部に宛がい、台車と共に作業機を傾倒すると、作業機は台車上に浮上して、支持部に支承されるように構成することを特徴とする。
また、第2の技術的手段は、作業機の上部と下部とを支承する支持部を、作業機の上部連結ピンを支承する上部支持部と耕耘爪軸を支承する下部支持部とで構成することを特徴とする。
さらに、第3、第4、及び第5の技術的手段は、作業機の上部を支承する高さを調節自在に構成すること、作業機の下部を支承する高さを調節自在に構成すること、並びに作業機の下部を支承する位置を左右方向に調節自在に構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のキャスタを備えた作業機の台車によれば、作業機の上部と下部とを支承する支持部を備え、当該支持部を定置された作業機の上部と下部に宛がい、台車と共に作業機を傾倒すると、作業機は台車上に浮上して、支持部に支承されるように構成するので、作業車両から取り外されて定置されている作業機を、台車上に簡単に載置して保管場所まで移動させることができる。また、保管場所まで移動させた作業機を台車から簡単に降ろして、その場に定置することができるので、台車を別の作業機の移動手段として使い回すことができ、費用対効果を上げることができる。
また、作業機の上部と下部とを支承する支持部を、作業機の上部連結ピンを支承する上部支持部と耕耘爪軸を支承する下部支持部とで構成すると、作業機側に台車に載置するための部品等を新たに追加する必要が無く、余分な費用や部品の取付け作業を強いることがない。
さらに、作業機の上部を支承する高さを調節自在に構成し、また、作業機の下部を支承する高さを調節自在に構成し、或いは作業機の下部を支承する位置を左右方向に調節自在に構成すると、台車に載置することができる作業機の適合性を増すことができると共に、台車に作業機を適切な姿勢で載置して不測な転倒等を防止しながら、作業機を円滑に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】台車の斜視図である。
【図2】台車の側面図である。
【図3】台車の正面図である。
【図4】下部支持部の詳細を示す側面図(a)及び正面図(b)である。
【図5】上部支持部の詳細を示す背面図(a)、側面図(b)、及び正面図(c)である。
【図6】台車を作業機に装着する状態を示す側面図である。
【図7】作業機を台車に載置した状態を示す側面図である。
【図8】作業機を台車に載置した状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように、作業機の台車1はフレーム部A、キャスタ部B、下部支持部C、及び上部支持部Dから構成している。
その内、台車1の骨格を形成するフレーム部Aは、角パイプによって構成する縦枠フレーム2,2に横枠フレーム3,3の端部を接合して溶接し、また、縦枠フレーム2,2の後部上面に丸パイプで構成するハンドル4の脚部を溶接し、そして、縦枠フレーム2,2の中間部とハンドル4の脚部の中途部に補強フレーム5,5の端部を接合して溶接し、さらに、ハンドル4の脚部の中途部どうしに亘って補強プレート6を溶接し、台車1のフレームを構成している。
【0009】
また、キャスタ部Bは、縦枠フレーム2,2の前部及び後部の下面に取り付けた前キャスタ(前輪)7,7と後キャスタ(後輪)8,8から構成し、前・後キャスタ7,8は全てを方向転換可能なものにするか、何れか一方を方向転換可能なものにするか、何れも方向転換はしないものに構成することができる。
【0010】
さらに、下部支持部Cは、図4に示すように上部側内周に雌螺子部9aを形成する支持筒9と、下部側外周に雄螺子部10aを形成するロッド10によって構成している。また、支持筒9は下部に角パイプから構成するボス11を備え、ボス11は前側の横枠フレーム3に外嵌しており、これにより下部支持部Cは、前後回動不能、且つ左右方向に位置調節自在となっている。さらに、ロッド10の雄螺子部10aは支持筒9の雌螺子部9aに螺合し、ロッド10を支持筒9に対して相対的に回動するとロッド10は伸縮して、ロッド10の上部に一体的に形成した受部10bの高さを調節することができる。
【0011】
そして、上部支持部Dは、図5に示すように上向きのフック12によって構成している。このフック12は補強プレート6にボルト13とナット14とワッシャ15で取り付けられ、ボルト13は補強プレート6に穿設した上下方向の長孔6a内に挿入される。従って、ナット14の端部に溶接した丸棒で構成するグリップ16を握ってナット14を緩め、次にボルト13位置を調節して、再びナット14を締め付けると、フック12の取付け高さを上下方向に調節することができる。
【0012】
次に、台車1に載置する作業機の一例としてロータリ耕耘装置17の構成を説明する。図6乃至図8に示すようにロータリ耕耘装置17は、図示しないトラクタの後部に備えられる三点リンク機構のトップリンクとロアーリンクに連結されて圃場の耕耘作業を行う。
ロータリ耕耘装置17は、トラクタ側よりPTO動力が入力されるギヤケース18を備え、ギヤケース18には左右一対のプレートからなるトップマスト19が取り付けられている。また、トップマスト19の前方上部にはトップリンクに結合する上部連結ピン20が設けられている。
【0013】
さらに、ロータリ耕耘装置17のギヤケース18の左右にはパイプフレーム21が取り付けられている。また、左側のパイプフレーム21の外端部にはチェーンケース22が取り付けられ、右側のパイプフレーム21の外端部にはサイドフレーム23が取り付けられている。さらに、チェンケース22の下端側とサイドフレーム23の下端側との間に耕耘爪軸24が回転駆動自在に軸支され、耕耘爪軸24には耕耘爪25が複数取り付けられている。そして、耕耘爪25の上方、後方、及び側方はメインカバー26とリヤカバー27とサイドカバー28とによって覆われている。
【0014】
上記リヤカバー27は前端がメインカバー26側に回動自在に軸支され、また、加圧ロッド29によって吊支されている。ここで、ロータリ耕耘装置17をトラクタから取り外してその場に定置する場合には、予め加圧ロッド29の上下動を固定してリヤカバー27の回動を不能にしておく。その後、ロータリ耕耘装置17の耕耘爪25が接地するまで下降させて、トラクタからロータリ耕耘装置17を取り外すと、ロータリ耕耘装置17は図6に示すように耕耘爪25とリヤカバー27の下端が接地した起立姿勢で保持される。
【0015】
次に、台車1の使用方法を説明すると、先ず定置されたロータリ耕耘装置17を台車1に載置する場合には、定置されたロータリ耕耘装置17の前部側に台車1の正面側を向けて、前キャスタ7,7を支点としてハンドル4を持ち上げ、台車1を前傾させる。そして、台車1の前傾姿勢においてフック12がトップマスト19の上部連結ピン20に係合するようにフック12を上部連結ピン20に引っ掛ける。この状態でハンドル4を押し下げると、ロータリ耕耘装置17は前方に徐々に傾倒していく。さらに、ロータリ耕耘装置17が前方に傾倒していくと、ロッド10の上部に設けた受部10bが耕耘爪軸24に宛がわれ、これ以降はロータリ耕耘装置17が地上から浮上して持ち上げられ、最終的に図7に示すように、台車1上にロータリ耕耘装置17がフック12と受部10bによって支承されて載置された状態になる。
【0016】
従って、作業機17を台車1上に載置するには、台車1の上部支持部Dを構成するフック12と下部支持部Cを構成するロッド10の受部10bを、作業機17の上部に設けた上部連結ピン20と下部に設けた耕耘爪軸24に宛がい、台車1と共に作業機17を前方に傾倒すると、作業機17は台車1上に浮上して、上部支持部Dと下部支持部Cに支承された載置姿勢となる。これによって、ハンドル4を押すと前・後キャスタ7,8が転がり、作業機17を保管場所まで移動することができる。
【0017】
また、作業機17を保管場所に定置する場合には、上記と逆の手順を踏むことになる。その際に、ハンドル4を持ち上げると先ず耕耘爪25が接地し、さらに持ち上げるとリヤカバー27の下端が接地した当初の作業機17の起立姿勢になる。その段階で台車1の上部支持部Dのフック12と下部支持部Cの受部10bが作業機17から外れ、ここで台車1を作業機17の前方に後退されれば、作業機17を単独で定置することができる。また、その後は、台車1を別の作業機の移動用の台車として使用することができる。一方、定置された作業機17は起立姿勢となり、台車1が取り外されていることから、作業機17の保管スペースは作業機17自体で足りることになる。
【0018】
なお、作業機17を台車1上に載置する際には、予め作業機17が適切な姿勢に載置されるように、台車1側で上部支持部Dと下部支持部Cの位置を調節しておくことが好ましい。
即ち、ロータリ耕耘装置17を作業機とした場合には、耕耘爪25が最下端となるので、耕耘爪軸24を支持する下部支持部Cの受部10bの高さをロッド10の回動によって、少なくともロータリ耕耘装置17を台車1上に載置した状態で、耕耘爪25が地上より浮上する高さに調節する。
【0019】
次に、左右の受部10b,10bが共に耕耘爪25・・と干渉せず、また、耕耘爪軸24に密着するように、受部10bの左右方向の位置をボス11の左右移動によって調節する。
さらに、上部支持部Dを構成するフック12の上下位置調節は、上部連結ピン20と耕耘爪軸24間の長さによって決まり、予め調節しておくこともできるが、作業機17を台車1上に載置する前に予めナット14を緩めておき、次に、耕耘爪軸24に下部支持部Cの受部10bを宛がった状態で、フック12を上部連結ピン20に係合する位置まで引き上げて、その位置でナット14を締め付けて固定することができる。
【0020】
尚、前述の実施例においては、作業機としてロータリ耕耘装置17を例に採り取り上げたが、作業機としては、ロータリ耕耘装置の構成と比較的近似するドライブハローであっても良く、或いは畦塗機等の他の作業機であっても良い。
また、上部支持部Dは、トラクタに連結される作業機として通常備える上部連結ピン20をフック12で支承するように構成したが、上部連結ピン20に限らず作業機の上部側に存在する部材を対象として、これを支承するように構成しても良い。
同様に下部支持部Cは、トラクタに連結される作業機として通常備えるロアリンク取り付け用の下部連結ピンを支承するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 台車
7 前キャスタ
8 後キャスタ
9 支持筒
10 ロッド(下部支持部C)
12 フック(上部支持部D)
17 ロータリ耕耘装置(作業機)
20 上部連結ピン
24 耕耘爪軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタを備えた作業機の台車は、作業機の上部と下部とを支承する支持部を備え、当該支持部を定置された作業機の上部と下部に宛がい、台車と共に作業機を傾倒すると、作業機は台車上に浮上して、支持部に支承されるように構成する作業機の台車。
【請求項2】
前記作業機の上部と下部とを支承する支持部を、作業機の上部連結ピンを支承する上部支持部と耕耘爪軸を支承する下部支持部とで構成する請求項1に記載の作業機の台車。
【請求項3】
前記上部支持部は、作業機の上部を支承する高さを調節自在に構成する請求項1乃至請求項2に記載の作業機の台車。
【請求項4】
前記下部支持部は、作業機の下部を支承する高さを調節自在に構成する請求項1乃至請求項3に記載の作業機の台車。
【請求項5】
前記下部支持部は、作業機の下部を支承する位置を左右方向に調節自在に構成する請求項1乃至請求項4に記載の作業機の台車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−239442(P2012−239442A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114461(P2011−114461)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】