説明

作業機の固定治具

【課題】安価に製作可能で、取付面への着脱操作性に優れ、しかも取付面に対する吸着力を容易に向上可能な作業機の固定治具を提供する。
【解決手段】リベット3の頭部3aが複数突出配置された構造物の取付面4に着脱自在に取付けられる穴あけ機10の固定治具20あって、穴あけ機10が着脱自在に固定される基台21と、基台21の下面側に基台21の長さ方向に間隔をあけて配置され、取付面4に磁気吸着する永久磁石22を組み込んだ1対の脚部23、24と、両脚部23、23間の間隔を調整可能な間隔調整手段25と、脚部23、24の一方と取付面4間に隙間を形成して、取付面4に吸着された基台21を取付面4から離脱させる離脱手段26とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などの鉄骨構造物の柱や梁に対して穴あけ機やナットランナーなどの各種作業機を固定するのに好適に利用可能な作業機の固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震強度を高めるための橋梁の補修工事として、古いリベットや腐食したリベットを除去して、これに代えてトルシア形高力ボルトで柱や梁を結合し直すという、補修工事が広く実施されている。
【0003】
既設のリベットの除去方法としては、例えば、特許文献1記載のような穴あけ機を用い、ガス切断により数本のリベットを除去して該穴あけ機を設置するためのスペースを形成した後、該スペースに穴あけ機を磁力で固定して、リベットにその軸部分と略同じ径の穴をあけることによって、リベットを順次除去する方法が広く採用されている。
【0004】
しかし、前述のリベットの除去方法では、穴あけ機の設置スペースを確保するため、ガス切断によりリベットを除去する必要があるので、ガス切断を扱える作業者が必要となり、人材確保が難しくなったり、作業効率が低下したり、作業コストが高くなったりするという問題がある。しかも、ガス切断時の熱により、鉄骨の強度が低下することも考えられる。また、穴あけ機を用いたリベットの除去作業は、1本ずつのリベットに対して穴あけ機を位置合わせして行なう必要があることから、穴あけ機の位置調整に多くの作業時間を要するという問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、特許文献2に記載のように、表面に複数のリベット頭部を有する構造物の取付面に着脱自在に取付けられる作業機の固定治具であって、作業機が着脱自在に固定される基台部と、基台部に設けた複数の脚部であって、取付面と接触する磁力作用面を着磁状態と非着磁状態とに切替可能な磁石ユニットを有し、取付面に取付けた状態で、リベット頭部と接触しないような位置関係に基台部に配置されるとともに、基台部がリベット頭部と接触しないように、取付面から設定間隔をあけて基台部を支持する複数の脚部とを備えた作業機の固定治具を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−298967号公報
【特許文献2】特開2010−240791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の作業機の固定治具では、ガス切断を扱える作業者が不要となり、人材確保が容易になるとともに、作業効率を向上でき、作業コストを安くできる。また、ガス切断時の熱により、鉄骨の強度が低下するという不具合も防止できるし、リベットに対する作業機の位置合わせが容易で、効率的にリベットを除去できるという利点を有している。
【0008】
しかし、作業機の反力を磁石ユニットによる吸着力で受け止める関係上、吸着力は出来るだけ高く設定したいが、汎用の磁石ユニットの吸着力ではおのずと限界があること、高価な磁石ユニットを4つ用いているので、固定治具の製作コストがどうしても高くなること、磁石ユニットの操作スイッチが小さいことから、固定治具の着脱の際の操作性があまりよくないこと、などの問題があった。
【0009】
本発明の目的は、安価に製作可能で、取付面への着脱操作性に優れ、しかも取付面に対する吸着力を容易に向上可能な作業機の固定治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作業機の固定治具は、複数の突起を有する構造物の取付面に着脱自在に取付けられる作業機の固定治具であって、前記作業機が着脱自在に固定される基台と、前記基台の下面側に基台の長さ方向に間隔をあけて配置され、前記取付面に磁気吸着する永久磁石を組み込んだ1対の脚部と、前記両脚部間の間隔を調整可能な間隔調整手段と、前記脚部の一方と取付面間に隙間を形成して、前記取付面に吸着された基台を取付面から離脱させる離脱手段とを備えたものである。
【0011】
この固定治具を用いて作業機を設置する際には、1対の脚部が構造物の突起間にそれぞれ配置されるように、間隔調整手段により両脚部の間隔を調整した後、固定治具を取付面の所望の位置へ移動させて、突起間に両脚部を挿入し、永久磁石で両脚部を取付面に吸着保持させて、固定治具を取付面に取り付けることになる。また、固定治具の取付位置を微調整する際には、離脱手段により脚部と取付面間に隙間を形成した状態で、固定治具を位置調整することになる。こうして、所望の位置に固定治具を取り付けた状態で、固定治具の基台に作業機を固定することになる。一方、作業機及び固定治具を取付面から取り外す際には、作業機を固定治具から取り外してから、離脱手段により脚部と取付面間に隙間を形成して、取付面から固定治具を取り外すことになる。
【0012】
このように、この固定治具では、永久磁石を用いて固定治具を取付面に吸着保持させ、離脱手段により脚部と取付面間に隙間を形成して、取付面から固定治具を取り外せるように構成しているので、特許文献2記載のような磁石ユニットを用いて吸着保持する場合と比較して、固定治具の取り外し操作性を十分に確保しつつ、永久磁石の個数を増やして、脚部の吸着力を安価に且つ容易に高めることが可能となる。また、構造物の取付面に形成されている突起に応じて脚部の位置を調整することで、構造物の任意の位置に固定治具を設置することが可能となり、しかも固定治具に対する作業機の位置を微調整しながら、作業機を適正な位置に固定設置することができるので、構造物に対する作業機の位置決め作業が容易になる。具体的には、橋梁等の鉄骨構造物のリベットを除去する場合において、リベットの頭部が密集して配置されることから、作業機の設置スペースを確保できない場合でも、該取付面に固定治具を固定し、この固定治具に対して作業機を固定設置することで、作業機の設置スペースを容易に確保できる。このため、リベットをガス切断したりすることなく、作業機を固定設置することが可能となり、ガス切断のための作業要員が不要になるとともに、ガス切断時における熱で鉄骨の強度が低下するという問題の発生も防止できる。また、作業機の移動も、固定治具における作業機の固定設置面内において自由にできるし、取付面に対する固定治具の取付位置を変更することでも容易に位置調整できる。
【0013】
ここで、前記離脱手段が、円弧面を有する操作部材と、前記操作部材の円弧面の中心から偏心した位置を回転自在に支持する回転軸と、前記操作部材を回転操作するための操作レバーとを備えることが好ましい実施の形態である。この場合には、操作レバーの操作により、回転軸を中心に操作部材を偏心回転させて、操作部材の円弧面を取付面に押し当てることによって、一方の脚部と取付面間に隙間を形成し、固定手段を取付面から容易に取り外すことができる。
【0014】
前記離脱手段を基台の幅方向の両側に設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、両手で離脱手段を操作して、一方の脚部の両端部と取付面間に隙間を形成することで、固定手段を取付面から容易に取り外すことができ、固定手段の取外し操作性を向上できる。
【0015】
前記脚部の一方を基台の長手方向の第1端部の下面に固定し、前記脚部の他方を基台の長手方向の第2端部の下面に長手方向にスライド自在に設け、前記離脱手段を基台の第2端部に設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、基台の第1端部に作業機を取り付けることで、離脱手段と作業機の操作性を十分に確保しつつ、基台の第1端部に固定した脚部により、作業機に作用する加工反力を確実に受け止めることが可能となる。しかも、離脱手段と他方の脚部とを基台の長手方向に間隔をあけて配置することで、離脱手段により他方の脚部と取付面間に隙間を形成するときに、前記間隔に応じたモーメントを他方の脚部に作用させることができるので、離脱手段の操作抵抗を小さくできる。
【0016】
前記基台の第2端部に作業機の反力を受け止めるアーム部を回動自在に設けることも好ましい実施の形態である。この場合には、作業機の使用時における反力をアーム部により受け止めて、両脚部にバランス良く反力を作用させることができるので、一方の脚部に対して集中的に反力が作用することにより、該一方の脚部が取付面から脱落し易くなるという不具合を防止できる。
【0017】
前記基台は、前記脚部が下面に取付けられた固定板と、前記固定板にスライド自在に支持され、作業機が着脱自在に固定される可動板とを有することが好ましい。この場合には、固定板に対して可動板をスライドさせることにより、作業機の位置を調整できるので、作業機の位置合わせが一層容易になる。
【0018】
前記構造物が鉄骨構造物であり、前記突起がリベットの頭部であり、前記作業機がリベットを除去するための穴あけ機であることが好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る作業機の固定治具によれば、永久磁石を用いて固定治具を取付面に吸着保持させ、離脱手段により脚部と取付面間に隙間を形成して、取付面から固定治具を取り外せるように構成しているので、特許文献2記載のような磁石ユニットを用いて吸着保持する場合と比較して、固定治具の取り外し操作性を十分に確保しつつ、永久磁石の個数を増やして、脚部の吸着力を安価に且つ容易に高めることが可能となる。また、構造物の取付面に形成されている突起に応じて脚部の位置を調整することで、構造物の任意の位置に固定治具を設置することが可能となり、しかも固定治具に対する作業機の位置を微調整しながら、作業機を適正な位置に固定設置することができるので、構造物に対する作業機の位置決め作業が容易になる。具体的には、橋梁等の鉄骨構造物のリベットを除去する場合において、リベットの頭部が密集して配置されることから、作業機の設置スペースを確保できない場合でも、該取付面に固定治具を固定し、この固定治具に対して作業機を固定設置することで、作業機の設置スペースを容易に確保できる。このため、リベットをガス切断したりすることなく、作業機を固定設置することが可能となり、ガス切断のための作業要員が不要になるとともに、ガス切断時における熱で鉄骨の強度が低下するという問題の発生も防止できる。また、作業機の移動も、固定治具における作業機の固定設置面内において自由にできるし、取付面に対する固定治具の取付位置を変更することでも容易に位置調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】穴あけ機を固定設置して鉄骨構造物のリベットを除去する場合の固定治具の使用方法の説明図
【図2】固定治具の斜視図
【図3】固定治具の側面図
【図4】固定治具の平面図
【図5】固定治具の底面図
【図6】固定治具の正面図
【図7】図4のVII-VII線断面図
【図8】図4のVIII-VIII線断面図
【図9】他の構成の操作部材を用いた固定治具の図3相当図
【図10】他の構成の操作部材を用いた固定治具の図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、旧式の橋梁等の鉄骨構造物において、H形鋼などの鉄骨1を接続するときには、接続する鉄骨1の外面側にわたってガセットプレート2を配置させ、両鉄骨1のフランジ部1aをガセットプレート2に複数のリベット3でそれぞれ結合して接続するという方法が広く採用されている。しかし、リベット3を用いた鉄骨1の接続構造は、トルシア形高力ボルトを用いた鉄骨1の接続構造と比較して、耐震強度が低いことから、最近では、既設のリベット3に代えて、トルシア形高力ボルトで柱や梁を構成する鉄骨1を結合し直したり、腐食した既設のリベット3をトルシア形高力ボルトに交換したりする補修作業が行なわれている。
【0022】
また、鉄骨1からリベット3を除去する方法としては、図1に示すように、作業機としての穴あけ機10のドリル11で、リベット3に対してその軸部と略同じ径の貫通穴を開けて、除去する方法が採用されている。本発明に係る固定治具20は、表面にリベット3の頭部3aからなる複数の突起が突出状に設けられる鉄骨構造物の取付面4に、穴あけ機10を固定設置するためのものである。ただし、この固定治具20は、穴あけ機10以外の加工機や電動工具などの各種作業機を鉄骨構造物の表面に固定するための治具として用いることもできる。
【0023】
穴あけ機10は、ドリル11と、ドリル11を減速回転する駆動手段12と、ハンドル13の操作により駆動手段12とともにドリル11をその軸心方向に送り操作する送り操作手段14と、電磁石により穴あけ機10を着脱自在に固定設置するための磁気吸着手段15とを備えた周知の構成のものである。ただし、穴あけ機10の設置方法は、磁気吸着手段15を用いた以外の固定方法、例えばボルトやナットを用いた固定方法を採用することも可能である。
【0024】
固定治具20は、図1〜図8に示すように、穴あけ機10が着脱自在に固定される基台21と、基台21の下面側に基台21の長さ方向に間隔をあけて配置され、取付面4に磁気吸着する永久磁石22を組み込んだ1対の脚部23、24と、両脚部23、24間の間隔を調整可能な間隔調整手段25と、脚部23、24の一方と取付面4間に隙間を形成して、取付面4に吸着された基台21を取付面4から離脱させる離脱手段26とを備えたものである。この固定治具20は、図1に示すように、鉄骨構造物の水平な取付面4の上側や下側に固定することもできるし、鉛直状や傾斜状の取付面4に固定することもできる。なお、本実施の形態では、図2を基準に上下方向及び前後左右方向を定義して説明する。
【0025】
基台21は、脚部23、24が下面に取付けられたアルミニウム合金などの金属板からなる固定板27と、固定板27にスライド自在に支持され、作業機が着脱自在に固定される鉄板などの強磁性の金属板からなる可動板28とを有している。ただし、基台21は、鉄板などの強磁性の1枚ものの金属板で構成することも可能である。
【0026】
固定板27の上面の左右両側には固定板27の全長にわたって延びる細長い板状の案内板29が固定され、両案内板29と固定板27間には内側へ開口する案内溝29aが形成され、可動板28はその左右両側部を案内溝29aに嵌合させて、長さ方向に移動自在に固定板27に取付けられている。固定板27の左右方向の略中央部には前後方向に細長い規制孔30が形成され、可動板28には規制孔30に頭部31aが配置されるようにボルト31が固定され、可動板28は、固定板27に対して、規制孔30の後端部に頭部31aが係合した、図3に実線で図示の収縮位置と、規制孔30の前端部に頭部31aが係合した、図3に仮想線で図示の伸長位置とに前後方向にスライド自在に取付けられている。なお、符号32は、可動板28をスライド不能に固定するために固定板27の側部に設けた蝶ネジである。
【0027】
固定板27の前後方向の途中部の下面には角棒状の前部脚部23が設けられ、前部脚部23は間隔調整手段25を介して前後方向に移動可能に支持され、固定板27の後端部の下面には左右方向に延びる角棒状の後部脚部24が固定されている。間隔調整手段25は、上端部に案内板29の上側へ延びる支持部33aを有する、前部脚部23の両端部に固定した倒立L字状の支持部材33と、両支持部材33の支持部33aにそれぞれ取付けた固定レバー34とを備え、前部脚部23は、前部脚部23と支持部材33間の案内溝29aに固定板27及び案内板29を嵌合保持することで、基台21に前後方向に移動自在に取付けられ、固定レバー34のレバー操作により所望位置に固定できるように構成されている。なお、符号50は、前部脚部23の最前進位置を規制するために案内板29に固定した規制ネジである。
【0028】
前部脚部23及び後部脚部24には左右方向に一定間隔おきに下面側を開口させた複数の取付孔35が形成され、各取付孔35には円柱状の上下1対の永久磁石22が組み込まれ、前部脚部23及び後部脚部24は、両脚部23、24がリベット3間にそれぞれ配置されるように、間隔調整手段25により前部脚部23の前後方向位置を調整した状態で、永久磁石22を介して取付面4に磁気吸着されるように構成されている。ただし、取付孔35の個数は任意に設定可能であり、また取付孔35に装填する永久磁石22の個数は2つに設定したが、それ以外の個数に設定することもできる。
【0029】
離脱手段26は、円板状の操作部材36と、操作部材36の偏心位置を回転自在に支持する回転軸37と、操作部材36を回転操作するための操作レバー38とを備え、基台21の前端部の左右両側にそれぞれ設けられている。より具体的には、案内板29の前端部には左右1対の支持ブロック39が固定され、両支持ブロック39の中央部には枢支孔40が左右方向に貫通状に形成され、枢支孔40には回転軸37が内嵌装着されている。支持ブロック39内において回転軸37には溝部37aが形成され、この溝部37aに支持ブロック39の上部に螺合させた固定ボルト41の下端部を係合させることによって、回転軸37は支持ブロック39に脱落不能に取付けられている。操作部材36の中心Pから距離Lだけ偏心した位置には貫通孔42が形成され、操作部材36は、貫通孔42に回転軸37のうちの支持ブロック39から外方へ突出する部分を挿通させて、回転軸37に偏心回転自在に支持されている。回転軸37の外端部には鍔部37bが形成され、操作部材36は鍔部37bにより脱落不能に回転軸37に支持されている。操作部材36には操作レバー38が取り付けられ、図3に仮想線で示すように、操作レバー38を手前に操作すると、回転軸37の軸心Cを中心に操作部材36が偏心回転し、操作部材36が取付面4を押して、回転軸37が取付面4から離れる方向へ高さhだけ移動することで、前部脚部23の永久磁石22が取付面4から離間するとともに、後部脚部24が傾いて後部脚部24の永久磁石22が取付面4から離間し、取付面4から容易に固定治具20を取り外すことができるように構成されている。
【0030】
操作部材36としては、前部脚部23と取付面4間に隙間が形成されるように操作できるものであればよく、例えば図9に示すように、細長い板状の操作部材36Aを設けることもできる。ただし、操作レバー38から手を放した状態で、安定的に前部脚部23を支持できるように、外周に円弧面を有するように構成することが好ましく、例えば図10に示すように、半円形の操作部材36Bを用いることもできる。操作部材36の直径や板厚は任意に設定できる。また、操作部材36は左右1対設けることが好ましいが、基台21の前端部の左右方向の中央部に1枚だけ設けることも可能である。
【0031】
左右の回転軸37に代えて、左右の支持部材33にわたって延びる1本の回転軸を設けることも可能である。ただし、この場合には、回転軸と穴あけ機10との干渉を防止するため、基台21が大型になるので、本実施の形態のように1対の回転軸37を設けることが好ましい。
【0032】
固定ボルト41及び溝部37aに代えて、両回転軸37の内端部を支持ブロック39から内側へ突出させ、該突出部分にCリングやEリングなどを嵌合させて、支持ブロック39からの回転軸37の脱落を防止するように構成することもできる。
【0033】
固定板27の前端部には上下方向に延びる枢支軸43が下方へ突出状に設けられ、枢支軸43には穴あけ機10による加工時の反力を受けるためのアーム44が回転自在に枢支され、アーム44は、その全体を固定板27の下面側に配置させた収納位置と、前方へ伸ばした使用位置とに回動自在に支持されている。アーム44には使用位置において、固定板27の下面に形成した凹部45に係合して、アーム44を使用位置に保持するための、位置規制用の鋼球46と、それを付勢するバネ部材47とが組み込まれている。アーム44の先端部には高さ調整用のボルト48が螺合されている。
【0034】
この固定治具20を用いて穴あけ機10を鉄骨構造物の取付面4に固定する際には、先ずアーム44を使用位置に回動させとともに、前後の脚部23、24がそれぞれリベット3の頭部3a間に配置されるように、間隔調整手段25を介して前部脚部23を前後方向に位置調整する。次に、固定治具20を鉄骨構造物の取付面4に固定してから、固定治具20に対して穴あけ機10を固定設置するか、あるいは穴あけ機10を固定治具20に固定設置した状態で、両脚部23、24を永久磁石22により取付面4に磁気吸着させて、固定治具20とともに穴あけ機10を取付面4に固定することになる。そして、除去するリベット3の中心に穴あけ機10のドリル11の中心を位置合わせして、該リベット3に貫通孔を形成し、該リベット3を除去することになる。このとき、ドリル11による穴あけ時の反力は、アーム44の前端部を中心に固定治具20が回転しようとすることで、後部脚部24及び前部脚部23で受け止められることになる。
【0035】
また、次のリベット3を除去する際には、可動板28上において穴あけ機10を左右に移動させたり、可動板28を前後方向にスライドさせたりして、次に除去するリベット3の中心に穴あけ機10のドリル11の中心を位置合わせすることになる。
【0036】
また、構造物から穴あけ機10及び固定治具20を取外す際には、穴あけ機10を固定治具20から取り外した状態、または穴あけ機10を固定治具20に固定設置した状態で、操作レバー38を図3に仮想線で示すように回動させて、前部脚部23を持ち上げるとともに、後部脚部24を傾斜させて鉄骨構造物の取付面4から穴あけ機10及び固定治具20を取外すことになる。
【0037】
固定治具20によれば、永久磁石22を用いて固定治具20を取付面44に吸着保持させ、離脱手段26により脚部23、24と取付面4間に隙間を形成して、取付面4から固定治具20を取り外せるように構成しているので、特許文献2記載のような磁石ユニットを用いて吸着保持する場合と比較して、固定治具20の取り外し操作性を十分に確保しつつ、永久磁石22の個数を増やして、脚部23、24の吸着力を安価に且つ容易に高めることが可能となる。また、リベット3の頭部3aが密集配置されている鉄骨構造物のリベット3を除去する場合でも、鉄骨構造物の取付面4に形成されているリベット3の頭部3aに応じて前部脚部23の位置を調整して、該取付面4に固定治具20を固定し、この固定治具20に対して穴あけ機10を固定設置できるので、穴あけ機10の設置スペースを容易に確保できる。このため、リベット3をガス切断したりすることなく、穴あけ機10を固定設置することが可能となり、ガス切断のための作業要員が不要になるとともに、ガス切断時における熱で鉄骨の強度が低下するという問題の発生も防止できる。また、穴あけ機10の移動も、固定治具20における穴あけ機10の固定設置面内において自由にできるし、取付面4に対する固定治具20の取付位置を変更することでも容易に位置調整できる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 鉄骨 1a フランジ部
2 ガセットプレート 3 リベット
3a 頭部 4 取付面
10 穴あけ機 11 ドリル
12 駆動手段 13 ハンドル
14 操作手段 15 磁気吸着手段
20 固定治具 21 基台
22 永久磁石 23 前部脚部
24 後部脚部 25 間隔調整手段
26 離脱手段 27 固定板
28 可動板 29 案内板
29a 案内溝 30 規制孔
31 ボルト 31a 頭部
32 蝶ネジ 33 支持部材
33a 支持部 34 固定レバー
35 取付孔 36 操作部材
36A 操作部材 36B 操作部材
37 回転軸 37a 溝部
37b 鍔部 38 操作レバー
39 支持ブロック 40 枢支孔
41 固定ボルト 42 貫通孔
43 枢支軸 44 アーム
45 凹部 46 鋼球
47 バネ部材 48 ボルト
50 規制ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突起を有する構造物の取付面に着脱自在に取付けられる作業機の固定治具であって、
前記作業機が着脱自在に固定される基台と、
前記基台の下面側に基台の長さ方向に間隔をあけて配置され、前記取付面に磁気吸着する永久磁石を組み込んだ1対の脚部と、
前記両脚部間の間隔を調整可能な間隔調整手段と、
前記脚部の一方と取付面間に隙間を形成して、前記取付面に吸着された基台を取付面から離脱させる離脱手段と、
を備えたことを特徴とする作業機の固定治具。
【請求項2】
前記離脱手段が、円弧面を有する操作部材と、前記操作部材の円弧面の中心から偏心した位置を回転自在に支持する回転軸と、前記操作部材を回転操作するための操作レバーとを備えた請求項1記載の作業機の固定治具。
【請求項3】
前記離脱手段を基台の幅方向の両側に設けた請求項1又は2記載の作業機の固定治具。
【請求項4】
前記脚部の一方を基台の長手方向の第1端部の下面に固定し、前記脚部の他方を基台の長手方向の第2端部の下面に長手方向にスライド自在に設け、前記離脱手段を基台の第2端部に設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の作業機の固定治具。
【請求項5】
前記基台の第2端部に作業機の反力を受け止めるアーム部を回動自在に設けた請求項4記載の作業機の固定治具。
【請求項6】
前記基台は、前記脚部が下面に取付けられた固定板と、前記固定板にスライド自在に支持され、作業機が着脱自在に固定される可動板とを有する請求項1〜5のいずれか1項記載の作業機の固定治具。
【請求項7】
前記構造物が鉄骨構造物であり、前記突起がリベットの頭部であり、前記作業機がリベットを除去するための穴あけ機である請求項1〜6のいずれか1項記載の作業機の固定治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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