説明

作業機の排気浄化システム

【課題】より確実にオペレータに再生を促す警告をおこない、適切な手動再生がなされることで、DPF破損を防止できる作業機の排気浄化システムを提供する。
【解決手段】PM堆積量が所定値より多くなると、手動再生を促す旨の警告が表示画面6aに表示される。警告表示がされても手動再生が行われず、再生警告表示から時間t1経過すると、スピーカー6cより第1警告音が出力される。オペレータが第1警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する。オペレータが第1警告音を認識できず、再生警告表示から時間t2経過すると、第1警告音に変わって、スピーカー6cより第2警告音(第1警告音より強い警告音)が出力される。オペレータが第2警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機の排気浄化システムに係わり、特に、フィルタにより排気中に含まれる粒子状物質を捕集して排気を浄化するとともに、適宜フィルタに捕集した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生させるように、警告を促す排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機はその駆動源としてディーゼルエンジンを搭載しているが、このディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM:パティキュレート・マター:以下PMとする)の排出量は、NOx、CO、HC等とともに年々規制が強化されてきている。このような規制に対して、PMをディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタで捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減する排気浄化システムが知られている。この排気ガス浄化システムでは、フィルタのPM堆積量が増加してくるとフィルタは目詰まりを起こしてゆき、そのことによりエンジンの排圧が上昇し、燃費の悪化等を誘発するため、フィルタに捕集したPMを適宜燃焼してフィルタの目詰まりを除去し、フィルタを再生している。
【0003】
フィルタの再生は、通常、酸化触媒を用いることにより行われる。酸化触媒はフィルタの上流側に配置される場合と、フィルタに直接担持される場合と、その両方の場合とがあるが、いずれの場合も酸化触媒を活性化するためには、排気温度が酸化触媒の活性温度よりも高くなければならない。排気温度が充分高い場合は自己再生するが、排気温度が充分でなく自己再生できない場合や、自己再生では充分にPMを焼却除去できない場合も有り、排気ガス温度を強制的に酸化触媒の活性温度よりも高い温度以上に上昇させる強制再生と呼ばれる技術がある。この強制再生には、エンジンの筒内主噴射後の膨張行程において燃料を噴射する副噴射(後噴射)を行って排気を昇温する手法、排気管に設けた再生用燃料噴射装置により排気管を流れる排気中に燃料を噴射して排気を昇温する手法に加えて、エンジン回転数を上昇させるように指令してエンジン負荷を増加させ排気を昇温する手法、油圧負荷作用によりエンジン負荷を増加させ排気を昇温する手法等がある。
【0004】
また、フィルタの強制再生には自動的に再生を開始する自動再生と、オペレータの操作入力により再生を開始する手動再生とがある。PM堆積量が閾値に到達するか、予め設定した所定時間が経過すると、自動再生が行われる。しかし、自動再生が適切に行われない等の理由で、PM堆積が進行することもある。
【0005】
これに対し、特許文献1記載には、手動再生に係る技術が開示されている。手動再生を促す旨がオペレータに警告(例えば警告灯)され、オペレータが再生スイッチを操作すると、再生が開始する。
【0006】
ところで、油圧ショベル等の作業機は、例えば掘削作業など、作業をするための機械である。オペレータは作業に集中するあまり、手動再生を促す警告がなされても、気がつかないおそれがある。また、作業遂行を優先するあまり、手動再生の重要性を軽視する可能性もありえる。手動再生を促す警告がされても、手動再生が行われないと、PMは堆積し続け、多量に捕集されたPMの燃焼によるフィルタの内部温度の異常上昇やそれに由来するDPFの破損といった問題を引起す可能性がある。
【0007】
特許文献1には、PM堆積量に基づいて警告内容を変える従来技術が公開されている。具体的には、最初は警告灯をゆっくり点滅させるが、PM堆積が進行し、DPF破損の可能性が高まると、警告灯を早く点滅させる。特許文献1は走行を目的とする一般車両に係るものであるが、油圧ショベル等の作業機に適用できる。オペレータは、警告の変化に基づいて手動再生の重要性を認識し、適切に手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−299403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
手動再生、自動再生とも、PM堆積量は、フィルタの前後差圧を検出し、この差圧の検出値に基づいて演算することにより推定するのが一般的である。したがって、PM堆積量に基づいた制御の精度は、PM堆積量の推定の精度に依存する。言い換えると、推定堆積量に誤差があると、適切な警告変更ができない。推定堆積量が実堆積量より多く演算されて、この推定堆積量に基づき警告内容が変更される場合、誤差が安全側に作用するが、推定堆積量が実堆積量より少なく演算されて、この推定堆積量に基づき警告内容が変更される場合、判断の遅れが生じる。この判断遅れにより、適切な手動再生が行われず(手動再生開始時が遅れる)、DPF破損の遠因となる。
【0010】
本発明の目的は、より確実にオペレータに再生を促す警告をおこない、適切な手動再生がなされることで、DPF破損を防止できる作業機の排気浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、前記作業機の動作状態を判別する動作状態判別手段を更に備え、前記警告手段は、更に、最初の警告時点を基準として前記動作状態判別手段が動作状態と判別している経過時間に基づいて、警告内容を変更する警告内容変更機能を有する。
【0012】
(2)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、前記作業機の動作状態を判別する動作状態判別手段を更に備え、前記警告手段は、更に警告音を出力する警告音出力機能と、最初の警告時点を基準として前記動作状態判別手段が動作状態と判別している時間が設定時間を経過すると、警告音を変更する警告音変更機能を有する。
【0013】
従来技術においては、推定堆積量に基づいて警告内容を変更しており、推定堆積量に誤差があると、適切な警告変更ができないおそれがあった。このように、経過時間に基づいて警告音を変更することで、推定堆積量の誤差の影響を受けず、より確実に警告音を変更することができる。オペレータが警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0014】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記動作状態判別手段は、作業機の動作状態が待機状態か作業状態かを判別し、前記警告音変更機能は、待機状態か作業状態かで、異なる設定時間を設定する。
【0015】
待機時には、作業時に比べPM堆積がより進行するおそれがあり、作業状態対応設定時間に基づいて警告音を変更すると、警告音変更の判断に遅れが生じる。待機時には、待機状態対応設定時間に基づいて警告音を変更することにより、判断に遅れが生じることなく、より確実に警告音を変更することができる。
【0016】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記作業機は、エンジン回転数検出装置と、作業装置と、この作業装置の操作を指令する操作レバーと、この操作レバーの指令を有効とするロック解除位置と操作レバーの指令を無効とするロック位置とに選択的に操作されるゲートロックレバーと、操作レバーにより生成されるパイロット圧を検出するパイロット圧検出センサとを備え、前記動作状態判別手段は、前記エンジン回転数検出装置が低速アイドル回転数以上の回転数を検出し、かつ、前記ゲートロックレバーがロック位置に操作されると、作業機の動作状態が待機状態であると判定し、前記エンジン回転数検出装置が低速アイドル回転数以上の回転数を検出し、かつ、前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作され、かつ、前記パイロット圧検出センサが所定値以上の圧力を検出すると、作業機の動作状態が作業状態であると判定する。
【0017】
これにより、警告音変更機能は、作業時には作業状態対応設定時間に基づいて警告音を変更でき、待機時には待機状態対応設定時間に基づいて警告音を変更できる。
【0018】
(5)上記(2)において、好ましくは、前記警告音変更機能は、警告音の音量、音質、音の長さ、警告回数のうち、少なくともいずれか1つを変更する。
【0019】
これにより、オペレータは警告音の変更を認識できる。
【0020】
(6)上記目的を達成するために、本発明は、エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、前記警告手段は、警告音を出力する警告音出力機能と、前記堆積量検出手段が検出する堆積量に基づいて、警告音を変更する警告音変更機能を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より確実にオペレータに再生を促す警告をおこない、適切な手動再生がなされることで、DPF破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】排気浄化システムの全体構成を示す図である(第1実施形態)。
【図2】油圧ショベルに搭載される油圧回路を示す図である。
【図3】油圧ショベルの外観を示す図である。
【図4】コントローラの機能ブロックを示す図である。
【図5】コントローラの演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における課題を説明する図である。
【図7】第2実施形態の構成・作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。
【0024】
〜構成〜
図1は本発明の本実施形態に係わる作業機の排気浄化システムの全体構成を示す図である。
【0025】
作業機(例えば油圧ショベル)はディーゼルエンジン1を搭載しており、このエンジン1は電子式の燃料噴射制御装置である電子ガバナ1aを備えている。エンジン1の目標回転数はエンジンコントロールダイヤル2により指令され、エンジン1の実回転数は回転数検出装置3により検出される。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号及び回転数検出装置3の検出信号はコントローラ4に入力され、コントローラ4はその指令信号(目標回転数)と検出信号(実回転数)とに基づいて電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0026】
また、エンジン1の始動停止指令装置としてキースイッチ5が設けられ、キースイッチ5の指令信号もコントローラ4に入力され、コントローラ4はその指令信号に基づいてエンジン1の始動及び停止を制御する。キースイッチ5は、コントローラ4や表示装置6の電力供給開始停止指令装置としても作動する。
【0027】
油圧ショベルのキャビン107には、操作レバー28,29(図2参照)やゲートロックレバー7が設けられている。ゲートロックレバー7は運転席108の入り口を制限する下げ位置である第1位置A(ロック解除位置)と運転席108の入り口を開放する上げ位置である第2位置B(ロック位置)とに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー7は、その操作位置を検出する位置検出センサ8を有している。
【0028】
排気浄化システムは、エンジン1の排気系を構成する排気管31に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ32及びフィルタ32の上流側に配置された酸化触媒33を含むDPF装置34と、フィルタ32の上流側と下流側の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)を検出する差圧検出装置36と、フィルタの上流側に設置され、排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置37と、再生開始を指示する再生スイッチ38と、排気管31のエンジン1とDPF装置34との間に設けられ排気ガスの温度を上昇させる再生用燃料噴射装置39とを備えている。酸化触媒33と再生用燃料噴射装置39はフィルタ32に堆積したPM(粒子状物質)を焼却除去し、フィルタ32を再生する再生装置を構成する。
【0029】
再生スイッチ38は、油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが操作しやすい位置に配置されており、再生用燃料噴射装置39の作動開始(フィルタ32の再生開始)を指示する操作手段であり、再生スイッチ38がON位置に操作されると再生開始を指示する指令信号が出力される。なお、再生スイッチ38は、表示装置6に表示される設定画面であってもよい。操作スイッチ6bを操作してON/OFFを設定する。
【0030】
表示装置6は、油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが見やすい位置に配置され、本来、燃料残量、冷却水温等の油圧ショベルの車体基本情報を表示するものである。表示装置6は、表示画面6aと操作スイッチ6bとスピーカー6cを有し、コントローラ4の表示コントローラ43(図4参照)により制御される。操作スイッチ6bは表示画面6aの下側に配置され、操作スイッチ6bを操作することにより車体基本情報以外の車体情報も選択的に表示される。また、表示画面6aと操作スイッチ6bはインターフェイスとしての機能を有する。つまり、オペレータは表示画面6aを見ながら操作スイッチ6bを操作することで、車体に係る各種設定をおこなうことができる。
【0031】
更に適宜、表示装置6は、自動再生制御中である旨、再生スイッチ37の操作を促す警告等、車体情報のうち再生に係る情報も表示する。スピーカー6cは、表示画面6aの内容を音声出力してもよい。
【0032】
本実施形態においては、手動再生が適切に行われない場合、スピーカー6cは警告音を出力する(下記詳述)。
【0033】
図2は、建設機械(例えば油圧ショベル)に搭載される油圧回路を示す図である。油圧回路は、エンジン1により駆動される可変容量型のメインの油圧ポンプ11及び固定容量型のパイロットポンプ12と、油圧ポンプ11から吐出される圧油によって駆動される油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15を含む複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ11から油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するパイロット操作式の流量制御弁17〜19を含む複数の流量制御弁と、パイロットポンプ12から吐出される圧油の圧力を一定に保ち、パイロット油圧源20を形成するパイロットリリーフ弁21と、メインの油圧ポンプ11の吐出圧力の上限を規定するメインリリーフ弁22と、パイロット油圧源20の下流側に接続され、油圧ショベルの運転席入り口に設けられたゲートロックレバー7の開閉位置によってON/OFF制御される電磁切換弁23と、電磁切換弁23の下流側のパイロット油路24に接続され、パイロット油圧源20の油圧を元圧として流量制御弁17〜19を操作するための制御パイロット圧a〜fを生成するリモコン弁25,26,27とを備えている。
【0034】
油圧ポンプ11は、その吐出圧力に基づいて油圧ポンプ11の吸収トルク(消費トルク)が予め定めた値である最大吸収トルクを超えないように油圧ポンプ11の傾転(斜板の傾転量;押しのけ容積或いは容量)を制御するレギュレータ11aを有している。
【0035】
リモコン弁25,26,27は運転席108(図1参照)の左右に設けられた左右の操作レバー28,29により操作されるものである。操作レバー28,29は、それぞれ、十字方向に操作可能であり、操作レバー28を十字の一方向に操作するとリモコン弁25が操作され、操作レバー28を十字の他方向に操作するとリモコン弁27が操作され、操作レバー29を十字の一方向に操作するとリモコン弁26が操作され、操作レバー29を十字の他方向に操作すると図示しないリモコン弁が操作される。また、操作レバー28を十字の一方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作するとリモコン弁25は制御パイロット圧aを生成し、中立位置から反対方向に操作するとリモコン弁25は制御パイロット圧bを生成する。制御パイロット圧a,bは、それぞれのパイロットライン25a,25bを介して流量制御弁17の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁17が中立位置から切り換えられる。
【0036】
同様に、操作レバー28を十字の他方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作するとリモコン弁27は制御パイロット圧eを生成し、中立位置から反対方向に操作するとリモコン弁27は制御パイロット圧fを生成し、制御パイロット圧e,fは、それぞれのパイロットライン27a,27bを介して流量制御弁19の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁19が中立位置から切り換えられる。操作レバー29を十字の一方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作すると制御パイロット圧cを生成し、中立位置から反対方向に操作すると制御パイロット圧dを生成し、制御パイロット圧c,dは、それぞれのパイロットライン26a,26bを介して流量制御弁18の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁18が中立位置から切り換えられる。
【0037】
油圧回路は、さらに、シャトル弁群46と圧力センサ47を備えている。シャトル弁群46はリモコン弁26〜27の制御パイロット圧a〜fや他の操作手段の制御パイロット圧のうちの最高圧力を抽出する。圧力センサ47は、シャトル弁群46のうち最下流に設けられたシャトル弁の出力ポートに接続され、制御パイロット圧のうち最高圧力を検出し、操作の有無を検出する。
【0038】
制御パイロット圧a〜fはゲートロックレバー7の位置に基づき連通・遮断される。
【0039】
ゲートロックレバー7が第1位置Aにあるときは電磁切換弁23のソレノイドを励磁して電磁切換弁23を図示の位置から切り換え、パイロット油圧源20の圧力をリモコン弁25,26,27に導き、これによりリモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を可能とする。ゲートロックレバー7が第2位置Bに上げ操作されると、電磁切換弁23のソレノイドを励磁を解除して電磁切換弁23を図示の位置に切り換え、パイロット油圧源20とリモコン弁25,26,27の連通を遮断し、これによりリモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を不能とする。すなわち、ゲートロックレバー7が第2位置Bに上げ操作されるとリモコン弁25,26,27(コントロールレバーユニット)に対してロック入りの状態となる。再びゲートロックレバー7が第1位置Aに下げ操作されるとロック解除状態となる。ゲートロックレバー7による電磁切換弁23の位置の切り換えは、例えば電磁切換弁23のソレノイドと電源との間に図示しないスイッチを設け、ゲートロックレバー7が第1位置AにあるときはそのスイッチをON(閉)してソレノイドを励磁し、ゲートロックレバー7が第2位置Bに操作されるとそのスイッチをOFF(開)してソレノイドの励磁を解除することにより行う。
【0040】
図3は、油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1が配置され、キャビン107内の運転席108の入り口にゲートロックレバー7(図1)が設けられ、運転席108の左右にリモコン弁25,26,27を内蔵したコントロールレバーユニット(図2)が配置されている。
【0041】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0042】
図2において、油圧モータ13は例えば旋回モータ105に対応し、油圧シリンダ14は例えばアームシリンダ115に対応し、油圧シリンダ15は例えばブームシリンダ114に対応する。図2に示す油圧駆動装置には走行モータ104a,104b、バケットシリンダ116等に対応するその他の油圧アクチュエータや制御弁も備えられているが、図2では図示を省略している。
【0043】
なお、作業機はホイルローダでもホイール式油圧ショベルでもよい。
【0044】
〜制御〜
図4はコントローラ4の機能ブロックを示す図である。コントローラ4は、車体コントローラ41と、エンジンコントローラ42と、表示コントローラ43を含み、これらのコントローラは通信ライン44を介して相互に接続され、車体ネットワークを構成している。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号、位置検出センサ8や圧力センサ47の検出信号や、再生スイッチ38の指令信号は車体コントローラ41に入力され、回転数検出装置3の検出信号や、差圧検出装置36、排気温度検出装置37の検出信号はエンジンコントローラ42に入力される。
【0045】
車体コントローラ41は、油圧駆動装置など車体全般を制御する。例えば、油圧ポンプ11のレギュレータ11aを制御することにより、油圧ポンプ11の吐出圧と吐出流量を制御する。他にも、ゲートロックに係る電磁切換弁23の切換制御をおこなう。
【0046】
エンジンコントローラ42は、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号を通信ライン44を介して入力し、この指令信号と回転数検出装置3の検出信号に基づいてエンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0047】
また、エンジンコントローラ42は、差圧検出装置36の検出信号を入力してPM堆積量を推定し、推定PM堆積量に基づき再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じて、電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置39を制御する(自動再生制御)。
【0048】
表示コントローラ43は、各種信号や各種演算処理結果を通信ライン44を介して入力し、表示信号として表示装置6に送り、それら情報を表示画面6aに表示する。場合によっては、音声信号としてスピーカー6cに出力する。また、ユーザーインターフェースとしての操作スイッチ6bによる指令信号を入力する。
【0049】
更にエンジンコントローラ42は、手動再生制御機能42aを有する。手動再生制御機能42aは、差圧検出装置36の検出信号を入力してPM堆積量を推定し、推定PM堆積量に基づき警告信号を表示コントローラ43に送信するとともに、再生スイッチ38の指令信号を通信ライン44を介して入力して、電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置39を制御する(手動再生制御)。
【0050】
本実施形態の特徴的構成として、車体コントローラ41は、動作状態判別機能41aと警告音変更機能41bとメモリ41cとを有する。
【0051】
動作状態判別機能41aは、下記のように油圧ショベルの動作状態・非動作状態を判別し、更に動作状態のうち、待機状態・作業状態を判別する。
【0052】
動作状態判別機能41aは、回転数検出装置3の検出信号を通信ライン44を介して入力し、実エンジン回転数が低速アイドル回転数以上であれば、動作状態と判別し、実エンジン回転数が低速アイドル回転数未満であれば、非動作状態と判別する。
【0053】
動作状態と判別した場合、動作状態判別機能41aは、位置検出センサ8の検出信号を入力し、ロック状態であると、油圧ショベルの待機状態と判別し、位置検出センサ8の検出信号と圧力センサ47の検出信号とを入力し、ロック解除状態であり、所定以上のパイロット圧であると、油圧ショベルの作業状態と判別する。
【0054】
警告音変更機能41bは、動作状態判別機能41aの判別結果に基づき、設定時間t1,t2,t3(t1<t2<t3)を設定する。判別結果が待機状態の場合は、待機状態対応の設定時間をメモリ41cから読み込み、判別結果が作業状態の場合は、作業状態対応の設定時間をメモリ41cから読み込む。なお、待機状態対応の設定時間t1,t2,t3は、作業状態対応の設定時間t1,t2,t3に比べ、それぞれ短く設定されている。
【0055】
警告音変更機能41bは、手動再生制御機能42aの警告信号を入力すると、これを基準時点として経過時間を計測する。
【0056】
警告音変更機能41bは、経過時間が設定時間t1を超えると、メモリ41cから第1警告音の音声データを読み込み、音声信号として表示コントローラ43に出力する。経過時間が設定時間t2を超えると、メモリ41cから第2警告音の音声データを読み込み、音声信号として表示コントローラ43に出力し、経過時間が設定時間t3を超えると、メモリ41cから第3警告音の音声データを読み込み、音声信号として表示コントローラ43に出力する。
【0057】
図5は、コントローラ4の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0058】
まず、手動再生制御について説明する。なお、手動再生制御は自動再生制御と並行しておこなわれるが、説明の簡略化のため、自動再生制御の処理の記載を省略している。
【0059】
差圧検出装置36の検出信号に基づいた推定堆積量が手動再生開始警告値である第1閾値より多いかどうかを判定し(ステップS11)、推定堆積量が第1閾値より多くないと判定すると、推定堆積量が第1閾値より多くなるまで、ステップS11の処理を繰り返す。
【0060】
ステップS11において、推定堆積量が第1閾値より多いと判定すると、オペレータに再生スイッチ37の操作を促す警告信号を出力する。これにより、手動再生を促す旨の警告が表示画面6aに表示される(ステップS12)。
【0061】
そして、再生スイッチ37が操作された(再生スイッチON)かどうかを判定し(ステップS13)、再生スイッチ37が操作されていない(再生スイッチOFF)と判定されると、再生スイッチ37が操作されるまで、警告表示を継続するとともに、警告音に係る制御を行う(以下詳述)。
【0062】
ステップS13において、再生スイッチ37が操作された(再生スイッチON)と判定されると、手動再生制御を開始する(ステップS13)。
【0063】
再生制御は、例えば次のように行う。まず、エンジン1の回転数を強制再生制御に適した所定の回転数Naに制御する。強制再生制御に適した所定の回転数Naとは、そのときの排気ガスの温度を酸化触媒33の活性温度よりも高い温度まで上昇させることができる中速回転数である。この制御では、車体コントローラ41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数から所定の回転数Naに切り換え、その所定の回転数Na(目標回転数)を通信ライン44を介してエンジンコントローラ42に出力する。エンジンコントローラ42は、その目標回転数(所定の回転数Na)と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がその所定の回転数Naとなるよう制御する。
【0064】
次いで、排気温度検出装置37により検出した排気ガス温度が所定の温度(酸化触媒33の活性温度よりも高い温度)まで上昇したことが確認されると、再生用燃料噴射装置39を制御して排気管31内への燃料噴射を行う。排気管31内に燃料噴射を行うことで未燃燃料が酸化触媒33に供給され、その未燃燃料を酸化触媒33によって酸化させ、そのときに得られる反応熱により排気ガス温度が更に上昇し、フィルタ32に堆積したPMが焼却除去される。なお、必要に応じて、エンジン回転数上昇指令や油圧負荷作用によりエンジン負荷を増加させ排気を昇温させてもよい。
【0065】
再生制御中、推定堆積量が再生終了値とみなせる第2閾値より少なくなったかどうかを判定し(ステップS15)、推定堆積量が第2閾値より少なくなったと判定すると、手動再生制御を停止する(ステップS16)。ステップS15において、推定堆積量が第2閾値より少なくないと判定すると、推定堆積量が第2閾値より少なくなるまで、再生制御を継続する。
【0066】
再生制御を停止するときは、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻し、再生用燃料噴射装置39の制御を停止させる。目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻す代わりに、エンジン1を停止させてもよい。
【0067】
次に、警告音に係る制御について説明する。
【0068】
予め、油圧ショベルの動作状態を判別(ステップS21)し、判別結果(動作状態が待機状態か作業状態か)に基づき、設定時間t1,t2,t3を設定する(ステップS22)。
【0069】
ステップS12において手動再生を促す旨の警告表示がされると、この警告表示時点を基準として経過時間の計測を開始する(ステップS23)。
【0070】
まず、経過時間が設定時間t1を超えたか否かを判定し(ステップS24)、設定時間t1経過していないと判定すると、再生スイッチが操作されるか、設定時間t1経過するまで、ステップS13、ステップS24の処理を繰り返す。設定時間t1経過したと判定すると、第1警告音を出力する(ステップS25)。
【0071】
次に、経過時間が設定時間t2を超えたか否かを判定し(ステップS26)、設定時間2経過していないと判定すると、再生スイッチが操作されるか、設定時間t2経過するまで、ステップS13、ステップS24、ステップS25の処理を繰り返し、第1警告音出力を継続する。設定時間t2経過したと判定すると、第1警告音に変えて、第2警告音を出力する(ステップS27)。
【0072】
更に、経過時間が設定時間t3を超えたか否かを判定し(ステップS28)、設定時間t3経過していないと判定すると、再生スイッチが操作されるか、設定時間t3経過するまで、ステップS13、ステップS24〜ステップS27の処理を繰り返し、第2警告音出力を継続する。設定時間t3経過したと判定すると、第2警告音に変えて、第3警告音を出力する(ステップS29)。
【0073】
ステップS13において、再生スイッチ37が操作された(再生スイッチON)と判定されると、手動再生制御を開始する(ステップS13)。一方、第3警告音出力後、所定時間経過しても再生がおこなわれない場合、過度に堆積したPMが一気に燃焼し、フィルタ温度が異常上昇してフィルタを損傷させるおそれがあるため、再生を禁止する(別制御のため図示せず)。
【0074】
〜請求項との対応関係〜
本実施形態において、手動再生制御機能42aのステップS12の処理と、表示コントローラ43と、表示画面6aとは、再生スイッチ38の操作を促す警告手段を構成する。
【0075】
回転数検出装置3と、位置検出センサ8と、圧力センサ47と、動作状態判別機能41aのステップS21の処理は、作業機の動作状態を判別する動作状態判別手段を構成する。
【0076】
警告音変更機能41bのステップS23〜S29の処理は、手動再生を促す旨の警告表示時点を基準として動作状態と判別している時間が設定時間を経過すると、警告音を変更する警告音変更機能を構成する。
【0077】
〜動作〜
(1)本実施形態の排気浄化システムの基本的な動作を説明する。
【0078】
油圧ショベルの動作時には、自動再生制御が行われる。しかし、何らかの理由で、自動再生が適切に行われない場合、PM堆積が進行する。PM堆積量が第1閾値より多くなると、手動再生を促す旨の警告が表示画面6aに表示される。オペレータが再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する。堆積したPMが燃焼除去され、PM堆積量が第2閾値より多くなると、再生制御は停止する(S11→S12→S13→S14→S15→S16)。
【0079】
ところで、油圧ショベルは、掘削作業などの作業をするための機械である。オペレータは作業に集中するあまり、手動再生を促す警告がなされても、気がつかないおそれがある。また、作業遂行を優先するあまり、手動再生の重要性を軽視する可能性もありえる。手動再生を促す警告がされても、手動再生が行われないと、PMは堆積し続け、多量に捕集されたPMの燃焼によるフィルタの内部温度の異常上昇やそれに由来するDPFの破損といった問題を引起す可能性がある。
【0080】
再生警告表示から、時間t1経過(時間t2経過せず)すると、スピーカー6cより第1警告音(例えば、音量小、通常音、短音3回、プ・プ・プ)が出力される。オペレータが第1警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する(S12→S23→S24→S25→S26→S13→S14)。
【0081】
しかし、油圧ショベルが使用される建設現場では、他の建設作業も並行して行われていることも多く、この作業音により消されて、オペレータが第1警告音を認識できない可能性もある。再生警告表示から、時間t2経過(時間t3経過せず)すると、第1警告音に変わって、スピーカー6cより第2警告音(例えば、音量中、低音、長断続音5回、ブー・ブー・ブー・ブー・ブー)が出力される。オペレータが第2警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する(S25→S26→S27→S28→S13→S14)。
【0082】
第2警告音が出力されても手動再生が行われない場合は、より強く、オペレータに手動再生を促す。再生警告表示から、時間t3経過すると、第2警告音に変わって、スピーカー6cより第3警告音(例えば、音量大、重低音、連続音、ブゥー)が出力される。オペレータが第3警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する(S25→S26→S27→S28→S13→S14)。
【0083】
第3警告音が出力されても手動再生が行われない場合は、所定時間経過後、過度に堆積したPMが一気に燃焼し、フィルタ温度が異常上昇してフィルタを損傷させるおそれがあるため、再生を禁止する。
【0084】
上記基本動作は、油圧ショベルの作業時を前提に説明した。油圧ショベルが作業状態にあると判別されると、作業状態対応の設定時間t1,t2,t3が設定される(S21→S22)。
【0085】
(2)油圧ショベルの待機時の排気浄化システムの動作を説明する。
【0086】
ところで、油圧ショベルの作業の1つとして、掘削土のダンプトラック積み込み作業がある。掘削土を一箇所にまとめておき、待機しているダンプトラックに積み込む。ダンプは、掘削土を場外に搬出する。ダンプトラック台数が少ない場合は、次のダンプトラックが来るまで、油圧ショベルは待機する。
【0087】
油圧ショベルが待機状態になると排気ガス温度は急激に低下するため、自己再生および自動再生が適切に行われず、作業時に比べPM堆積がより進行するおそれがある。
【0088】
油圧ショベルが待機状態にあると判別されると、待機状態対応の設定時間t1,t2,t3が設定される(S21→S22)。待機状態対応の設定時間t1,t2,t3は、作業状態対応の設定時間t1,t2,t3に比べ、それぞれ短く設定されている。したがって、油圧ショベルの待機時には、作業時に比べ早めに第1〜3警告音が出力される。オペレータが警告音を認識し、再生スイッチ38を操作すると、再生制御が開始する。
【0089】
(3)警告音出力中にエンジン1が停止すると、全ての制御は中断する。このときの経過時間はメモリ41cに記憶される。再びキースイッチ5により、コントローラ4や表示装置6に電力が供給されると、前回の経過時間が読み込まれ、エンジン始動前においても、警告音が出力される。
【0090】
〜効果〜
(1)手動再生を促す旨の警告表示を基準時点として経過時間が短く、比較的(後述の記載と比較して)DPF破損の可能性が低い場合は、弱い警告である第1警告音が出力される。第1警告音は、弱めの警告であるため、オペレータは煩わしさを感じることはない。一方、オペレータが第1警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0091】
第1警告音出力によっても手動再生が行われず、経過時間が長くなると、DPF破損の可能性が高まる。第1警告音に変えて、より強い警告である第2警告音、更に強い警告である第3警告音が出力される。第2警告音、第3警告音は、強めの警告であるため、オペレータは確実に第2警告音、第3警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0092】
(2)従来技術においては、推定堆積量に基づいて警告内容を変更しており、推定堆積量に誤差があると、適切な警告変更ができないおそれがあった。特に、推定堆積量が実堆積量より少なく演算されて、この推定堆積量に基づき警告内容が変更される場合、警告内容変更の判断に遅れが生じ、この遅れにより、適切な手動再生が行われず(手動再生開始時が遅れる)、DPF破損の遠因となるという課題があった。
【0093】
本実施形態においては、経過時間に基づいて警告音を変更しており、推定堆積量の誤差の影響を受けず、より確実に警告音を変更することができる。オペレータが警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0094】
(3)油圧ショベルは、掘削作業などの作業をするための機械であり、作業状態であることが前提であるが、作業内容によっては待機状態が継続することもある。待機時には、作業時に比べPM堆積がより進行するおそれがあり、作業状態対応設定時間に基づいて警告音を変更すると、警告音変更の判断に遅れが生じる。
【0095】
本実施形態においては、待機時には、待機状態対応設定時間に基づいて警告音を変更することにより、判断に遅れが生じることなく、より確実に警告音を変更することができる。オペレータが警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0096】
〜変形例〜
(1)本実施形態においては、警告音を、第1警告音(例えば、音量小、通常音、短音3回、プ・プ・プ)→第2警告音(例えば、音量中、低音、長断続音5回、ブー・ブー・ブー・ブー・ブー)→第3警告音(例えば、音量大、重低音、連続音、ブゥー)のように変更するが、これは警告音変更の一例であり、警告音の音量、音質、音の長さ、警告回数などを適宜変更すればよい。
【0097】
(2)本実施形態においては、手動再生を促す旨の警告表示(ステップS12)は、差圧検出装置36による推定堆積量に基づいて行われるが、推定堆積量の誤差の影響を排除するように、作業開始からの経過時間に基づいて行ってもよい。
【0098】
(3)本実施形態においては、警告表示時点を基準とする経過時間に基づいて警告音を変更しているが、推定堆積量の推定精度が高ければ、推定堆積量に基づいて警告音を変更してもよい。
【0099】
(4)本実施形態においては、経過時間に基づいて警告音を変更しているが、表示画面6aに表示される警告表示をより注意喚起する表示に変更してもよい。
【0100】
<第2実施形態>
〜課題〜
第1実施形態における制御中に、待機状態から作業状態に戻った場合の排気浄化システムの動作を説明する。待機時には、作業時に比べPM堆積がより進行するおそれがある。したがって、油圧ショベルが作業状態にあると判別され、作業状態対応の設定時間t1,t2,t3が改めて設定された場合、待機時に計測した経過時間に基づいて、作業状態対応の設定時間t1,t2,t3と比較すると、事実上、警告音変更が遅くなる。
【0101】
図6を用いて更に詳しくする。図6は、待機状態と作業状態とで設定時間が異なることに起因する課題の概要を説明する概念図である。横軸は時間であり、縦軸は堆積量である。警告音変更すべきPM堆積量を閾値Qとし、これに相当する作業状態設定時間をTとし、作業時のPM堆積進行を示す。そして、待機時には、作業時に比べPM堆積がX倍(Xは1より大きい正数)進行するものとし、待機時のPM堆積進行を示す。したがって、待機状態対応設定時間(閾値Q相当)は、作業状態対応設定時間Tに対し、Xの逆数倍(=T/X)に設定されていると仮定する。
【0102】
図示A点において待機状態から作業状態に戻った場合のPM堆積進行を点線で示す。図示A点において、油圧ショベルが作業状態にあると判別されると、作業状態対応設定時間Tが改めて設定される。一方、計測時間が作業状態対応設定時間Tを経過する前に、図示B点において、閾値Qに達する。すなわち、作業状態対応設定時間T経過時に、警告音を変更にしたのでは遅い。
【0103】
〜構成・効果〜
本実施形態は、第1実施形態の警告音変更機能41bに、経過時間換算機能41d(図4に追記)を付加したものである。
【0104】
図7は、経過時間換算機能41dの作用概要を説明する概念図である。図6と同様に、図示A点において待機状態から作業状態に戻った場合を想定し、図示A点における経過時間をtとする。
【0105】
経過時間換算機能41dは、図示A点における堆積量と同量となるように、作業時のPM堆積進行を示す線上の図示C点を演算する。図7では、図示C点における換算経過時間はXtとなる。換算経過時間は、基準時点から作業状態であると仮定した場合の経過時間である。
【0106】
警告音変更機能41bは、計測した経過時間がtである場合、換算経過時間Xtだけ経過したとみなし、時間計測を継続する。そして、経過時間が作業状態対応設定時間T(閾値Q相当)を超えると、警告音を変更する。
【0107】
本実施形態においては、経過時間換算機能41dを備えることにより、待機状態から作業状態に戻った場合でも、判断に遅れが生じることなく、より確実に警告音を変更することができる。オペレータが警告音を認識し、適切な手動再生をおこなうことで、DPF破損を防止できる。
【0108】
一方、作業状態から待機状態になった場合は、経過時間換算機能41dは、計測した経過時間がtである場合、換算経過時間t/Xを演算する。
【符号の説明】
【0109】
1 ディーゼルエンジン
1a 電子ガバナ
2 エンジンコントロールダイヤル
3 回転数検出装置
4 コントローラ
5 キースイッチ
6 表示装置
6a 表示画面
6b 操作スイッチ
7 ゲートロックレバー
8 位置検出センサ
11 油圧ポンプ
12 パイロットポンプ
13 油圧モータ
14,15 油圧シリンダ
17〜19 流量制御弁
20 パイロット油圧源
21 パイロットリリーフ弁
22 メインリリーフ弁
23 電磁切換弁
24 パイロット油路
25,26,27 リモコン弁
28,29 操作レバー
31 排気管
32 フィルタ
33 酸化触媒
34 DPF装置
36 差圧検出装置
37 排気温度検出装置
38 再生スイッチ
39 再生用燃料噴射装置
41 車体コントローラ
41a 動作状態判別機能
41b 警告音変更機能
41c メモリ
41d 経過時間換算機能(第2実施形態)
42 エンジンコントローラ
42a 手動再生制御機能
43 表示コントローラ
44 通信ライン
46 シャトル弁群
47 圧力センサ
100 下部走行体
101 上部旋回体
102 フロント作業機
103a,103b クローラ式走行装置
104a,104b 走行モータ
105 旋回モータ
106 エンジンルーム
107 キャビン
108 運転席
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
114 ブームシリンダ
115 アームシリンダ
116 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、
前記作業機の動作状態を判別する動作状態判別手段を更に備え、
前記警告手段は、更に、最初の警告時点を基準として前記動作状態判別手段が動作状態と判別している経過時間に基づいて、警告内容を変更する警告内容変更機能を有する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。
【請求項2】
エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、
前記作業機の動作状態を判別する動作状態判別手段を更に備え、
前記警告手段は、更に
警告音を出力する警告音出力機能と、
最初の警告時点を基準として前記動作状態判別手段が動作状態と判別している時間が設定時間を経過すると、警告音を変更する警告音変更機能を有する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。
【請求項3】
請求項2記載の作業機の排気浄化システムにおいて、
前記動作状態判別手段は、作業機の動作状態が待機状態か作業状態かを判別し、
前記警告音変更機能は、待機状態か作業状態かで、異なる設定時間を設定する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。
【請求項4】
請求項3記載の作業機の排気浄化システムにおいて、
前記作業機は、エンジン回転数検出装置と、作業装置と、この作業装置の操作を指令する操作レバーと、この操作レバーの指令を有効とするロック解除位置と操作レバーの指令を無効とするロック位置とに選択的に操作されるゲートロックレバーと、操作レバーにより生成されるパイロット圧を検出するパイロット圧検出センサとを備え、
前記動作状態判別手段は、
前記エンジン回転数検出装置が低速アイドル回転数以上の回転数を検出し、かつ、前記ゲートロックレバーがロック位置に操作されると、作業機の動作状態が待機状態であると判定し、
前記エンジン回転数検出装置が低速アイドル回転数以上の回転数を検出し、かつ、前記ゲートロックレバーがロック解除位置に操作され、かつ、前記パイロット圧検出センサが所定値以上の圧力を検出すると、作業機の動作状態が作業状態であると判定する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。
【請求項5】
請求項2記載の作業機の排気浄化システムにおいて、
前記警告音変更機能は、警告音の音量、音質、音の長さ、警告回数のうち、少なくともいずれか1つを変更する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。
【請求項6】
エンジンの排気系に配置され、排気中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、このフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去してフィルタを再生する再生装置と、この再生装置の作動開始・停止を制御する再生制御装置と、この再生制御装置に再生開始を指示する再生スイッチと、この再生スイッチの操作を促す警告手段とを備えた作業機の排気浄化システムにおいて、
前記警告手段は、
警告音を出力する警告音出力機能と、
前記堆積量検出手段が検出する堆積量に基づいて、警告音を変更する警告音変更機能を有する
ことを特徴とする作業機の排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225202(P2012−225202A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91571(P2011−91571)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】