作業機械のアタッチメント及びその溶接方法
【課題】作業機械のアタッチメントを製造する際に、開先加工を行うことなく、十分な強度を持
った隅肉溶接を行う。
【解決手段】一対の縦板2,3における一対の平板4,5に対する各突き合わせ部11の少なくとも一部の角部12を開先を加工することなく直角を保ったまま縦板2,3の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、折り曲げられた各突き合わせ部11の角部12を平板4,5に当接させ、各突き合わせ部11と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間に形成された外側隅角部13を、内側隅角部14に裏波ビード16が形成されるように溶接する。
った隅肉溶接を行う。
【解決手段】一対の縦板2,3における一対の平板4,5に対する各突き合わせ部11の少なくとも一部の角部12を開先を加工することなく直角を保ったまま縦板2,3の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、折り曲げられた各突き合わせ部11の角部12を平板4,5に当接させ、各突き合わせ部11と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間に形成された外側隅角部13を、内側隅角部14に裏波ビード16が形成されるように溶接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のアタッチメント及びその溶接方法に関し、特にその隅肉溶接の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図6に示すように、油圧ショベルのアームなどの箱形構造物において、一対の平板205に対して一対の縦板202を当接させて箱形に組み立て、平板205の突き合わせ部211側の面と縦板202の側面との間に形成された直角の外側隅角部213を片側溶接する溶接方法は知られている。この溶接方法では、箱形に組み立てることから内側から溶接できない領域があり、その領域では、溶接を行った外側隅角部213側の隅肉溶接215は十分に溶着されているものの内側隅角部214は溶け込みが不十分となる場合が多く、溶接部分に荷重が加わると、内側隅角部214の未溶着部から亀裂が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、図7に例を示すように、第1の母材302と第2の母材305とを突き合わせ溶接する溶接方法において、予め第1の母材302の端部311にルートフェイス302a及び片側開先面302bを形成し、第2の母材305の平坦面にルートフェイス302aを当接させ、第1の母材302と第2の母材305との当接により形成される開先溶接部に、溶接ワイヤを臨ませ、溶接ワイヤのアークにより、第1の母材302と第2の母材305との当接部を溶融させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−239723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような溶接方法では、第1の母材302(縦板)の広範囲に機械加工あるいはガス切断等で開先302bを設けなければならず、非常に時間がかかってコストアップとなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、縦板の突き合わせ部を内側に折り曲げるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントを対象とし、
上記作業機械のアタッチメントは、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板に当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている。
【0009】
上記の構成によると、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0010】
第2の発明では、断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントを対象とし、
上記作業機械のアタッチメントは、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板にそれぞれ当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている。
【0011】
上記の構成によると、小型の作業機械のようにコ字状部材に対して平板を突き合わせる場合でも、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が各平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記各突き合わせ部の全てが、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられている。
【0013】
上記の構成によると、各突き合わせ部の全てにおいて開先を設けずに溶接が行われているので、製造コストが安く強度の高いアタッチメントが得られる。
【0014】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
上記平板の各端面は、上記各縦板の外面と同一平面に配置され、隅肉溶接されたコーナー部が略直角に形成されている。
【0015】
上記の構成によると、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板を平板の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板の端面と縦板の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物を有するアタッチメントに比べて断面係数が大きくなり、アタッチメントの強度が向上する。逆に従来の縦板外面に平板端面を合わせると、従来のアタッチメントと同等の断面係数を維持しながら、平板を削除した分だけ軽量化となる。さらにコーナー部が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板が縦板に対して出っ張らず、土砂等の掘削作業においてアタッチメントが土中に入り込んだときに土砂がアタッチメントに溜まることはない。
【0016】
第5の発明では、一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接し、作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法を対象とし、
上記溶接方法では、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記折り曲げられた各突き合わせ部の角部を上記平板に当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、外側隅角部を溶接する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0018】
第6の発明では、断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法を対象とし、
上記溶接方法では、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部を上記平板にそれぞれ当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する構成とする。
【0019】
上記の構成によると、小型の作業機械のようにコ字状部材に対して平板を突き合わせる場合でも、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0020】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、
上記各突き合わせ部の全てに開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げる構成とする。
【0021】
上記の構成によると、各突き合わせ部の全てにおいて開先を設けないので、さらに安価で強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0022】
第8の発明では、第5乃至第7のいずれか1つの発明において、
上記平板の端面と、上記各縦板の外面とが同一平面となるように、上記折り曲げられた突き合わせ部の角部を上記平板に当接させ、コーナー部を略直角に隅肉溶接する。
【0023】
上記の構成によると、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板を平板の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板の端面と縦板の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物を有するアタッチメントに比べて断面係数が大きくなり、アタッチメントの強度が向上する。逆に従来の縦板外面に平板端面を合わせると、従来のアタッチメントと同等の断面係数を維持しながら、平板を削除した分だけ軽量化となる。さらにコーナー部が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板が縦板に対して出っ張らず、土砂等の掘削作業においてアタッチメントが土中に入り込んだときに土砂がアタッチメントに溜まることはない。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、縦板の突き合わせ部の少なくとも一部の角部を、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げて平板に突き合わせ、内側隅角部に裏波ビードが形成されるように隅肉溶接するようにしたことにより、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことができる。
【0025】
また、縦板外面を平板端面と同一平面上に配置しても片側からの隅肉溶接により十分な溶接強度が得られるので、縦板間の幅を大きくして断面係数の高い箱形構造物を有するアタッチメントを得ることができる。また、同等の断面係数を有する従来構造の箱形構造物に比べて軽量化を図ることもできる。さらには、角部に出っ張りがないので、角部に土砂等が溜まりにくく、土砂等の掘削作業における泥落ち性を格段に向上させることができる。このように、本発明によると、商品性の高いアタッチメントが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図2のI−I線断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるアームの側面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる隅肉溶接部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明のその他の実施形態にかかる図1相当図である。
【図5】本発明のコ字状部材を用いたその他の実施形態にかかる図1相当図である。
【図6】従来の開先加工を加えない片側隅肉溶接にかかる図3相当図である。
【図7】従来の開先加工を加えた片側隅肉溶接にかかる図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図2は本発明の実施形態の箱形構造物としてのアーム1を示し、このアーム1は、作業機械としての油圧ショベル(図示せず)のアタッチメント先端側に接続される。アーム1は、一対の側板(縦板2,3)とこの縦板2,3に溶接された一対の平板4,5とを備えている。左右の縦板2,3は、一枚よりなるものでもよく、複数枚よりなるものでもよい。また、本実施形態では、上下の平板4,5は、複数枚で構成されているが、一枚で構成してもよい。
【0029】
アーム1は、前後に他のアタッチメントを接続するための接続ピンを挿入する第1乃至第3接続ピン挿入孔6,7,8を備えている。アーム1の基端側には、各アタッチメントとの間に接続される油圧シリンダ(図示せず)を連結するためのシリンダ連結部9,10が平板4,5から突出するように形成されている。
【0030】
そして、本発明の特徴として、図1及び図3に拡大して示すように、左右の縦板2,3における上下の平板4,5に対する突き合わせ部11の角部12は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、平板5の突き合わせ部11側の面に突き合わされている。この突き合わせ部11の外面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間には、鋭角の外側隅角部13が形成されている。同様に、突き合わせ部11の端面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間には、外側隅角部13よりも角度が小さい内側隅角部14が形成されている。この外側隅角部13には、連続して隅肉溶接15が形成され、内側隅角部14にも連続して裏波ビード16が形成されている。
【0031】
そして、上下の平板4,5の端面(左右側面)と、左右の縦板2,3の外面(左右側面)とは、同一平面に配置されている。このため、アーム1の各コーナー部17は、平板5が左右に出っ張らない略直角に形成されている。
【0032】
−溶接方法−
次ぎに、本実施形態のアーム1のコーナー部17の溶接方法について説明する。
【0033】
まず、所定の形に切断された縦板2,3を用意する。縦板2,3の上下端部すなわち、平板4,5に対する突き合わせ部11の角部12は、開先を加工することなく縦板2,3の切断時の直角を保ったままとする。このため、開先を加工する手間が省けて大幅なコストダウンとなる。
【0034】
次いで、プレス機械等により、突き合わせ部11の直角に保たれた角部12を内側に鋭角だけ折り曲げる。プレス作業が従来に比べて追加されるが、開先加工に比べると加工が容易でコストアップは少なくて済む。
【0035】
次いで、上下の平板4,5の左右端面と、左右の縦板2,3の外面とが同一平面となるように、折り曲げられた突き合わせ部11の角部12をそれぞれ上下の平板4,5に当接させる。そして、縦板2,3及び平板4,5を仮溶接しながら箱形に組み立てる。
【0036】
次いで、突き合わせ部11の外面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間に形成された外側隅角部13に溶接ワイヤ(図示せず)を臨ませ、溶接ワイヤのアークにより外側隅角部13を溶融させる。このとき、内側隅角部14にも溶融物が流れ込んで裏波ビード16を形成させる。つまり、開先を設けなくても、折り曲げ加工により、直角の角部12の外側に鋭角の外側隅角部13が形成され、内側にも鋭角の内側隅角部14が形成されるので、外側隅角部13を溶接する際に内側隅角部14にも溶融物が流れ込む。このため、内側隅角部14も溶け込みが十分に行われ、溶接部分に荷重が加わっても、内側隅角部14から亀裂が発生することはない。
【0037】
このように、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板2,3を平板4,5の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板4,5の端面と縦板2,3の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物に比べて断面係数が大きくなり、強度が向上する。具体的には、図6に示すように、従来の隅肉溶接では、溶接領域を確保するために平板205の端面から中心までの幅bは、縦板202の外面から中心までの幅aよりも大きくする必要がある(b>a)。一方、本実施形態では、図3に示すように、平板5の端面と縦板2の外面とが同一平面状にある。このため、縦板2を幅aまで拡げることができるので、アーム1の断面係数が向上する。さらには、コーナー部17が左右に出っ張らない略直角に形成されているので、見映えがよい。このようにして、製造コストの安く、強度の高い見映えのよいアタッチメントが得られる。
【0038】
したがって、一対の縦板2,3に開先を設けることなく、外側隅角部13に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部11の角部12が各平板4,5の突き合わせ部11側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部12に開先を設けた場合のように内側隅角部14が形成され、溶融物が内側隅角部14にも流れ込みやすく容易に裏波ビード16が形成される。このため、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことができる。
【0039】
また、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板2,3を平板4,5の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板4,5の端面と縦板2,3の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによるアームに比べて断面係数が大きくなり、強度を格段に向上させることができる。
【0040】
逆に図6に示す従来の縦板202外面に平板205の端面を合わせると、従来のアームと同等の断面係数を維持しながら、平板205の一部を削除することができ、その分だけ軽量化を図ることができて有利である。
【0041】
しかも、コーナー部17が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板4,5が縦板2,3に対して出っ張らないので、土砂等の掘削作業においてアーム1が土中に入り込んだときに土砂がアーム1のコーナー部17に溜まることはない。このため、アーム1が汚れにくい。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、縦板2,3の上下いずれにも折り曲げ加工を施したが、例えば、図4に示すように、上側のみ折り曲げ加工を施し、下側は通常の片側隅肉溶接115としてもよい。但し、この場合には、下側の平板105が縦板2,3の外面よりも出っ張るという欠点はある。
【0044】
また、上記実施形態では、一対の平板4,5の間に一対の縦板2,3を略垂直に突き合わせて隅肉溶接しているが、図5に示すアーム401のように、断面コ字状部材402の一対の縦板402a,402bの端部に平板405を突き合わせて上記実施形態と同様に隅肉溶接するようにしてもよい。その場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。断面コ字状部材402は、小型の油圧ショベルのアームなどでよく使用されるので、さらなる軽量化や強度向上を図ることができる。なお、一対の縦板402a,402bの一方のみ折り曲げ加工を施すようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、箱形構造物として、油圧ショベルのアームの例を示したが、これに限定されず、各種作業機械のアタッチメントに適用可能である。また、作業機械に限定されず、溶接により製缶される箱形構造物であれば何でもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、隅肉溶接15及び裏波ビード16を連続して形成するようにしたが、箱形構造物によっては、間隔をあけて溶接するようにしてもよい。この場合にも隅肉溶接15のある部分には裏波ビード16が必ず形成されるようにすればよい。
【0047】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 アーム
2,3 縦板
4,5 平板
6,7,8 接続ピン挿入孔
9,10 シリンダ連結孔
11 突き合わせ部
12 角部
13 外側隅角部
14 内側隅角部
15 隅肉溶接
16 裏波ビード
402 断面コ字状部材
402a,402b 一対の縦板
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のアタッチメント及びその溶接方法に関し、特にその隅肉溶接の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図6に示すように、油圧ショベルのアームなどの箱形構造物において、一対の平板205に対して一対の縦板202を当接させて箱形に組み立て、平板205の突き合わせ部211側の面と縦板202の側面との間に形成された直角の外側隅角部213を片側溶接する溶接方法は知られている。この溶接方法では、箱形に組み立てることから内側から溶接できない領域があり、その領域では、溶接を行った外側隅角部213側の隅肉溶接215は十分に溶着されているものの内側隅角部214は溶け込みが不十分となる場合が多く、溶接部分に荷重が加わると、内側隅角部214の未溶着部から亀裂が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、図7に例を示すように、第1の母材302と第2の母材305とを突き合わせ溶接する溶接方法において、予め第1の母材302の端部311にルートフェイス302a及び片側開先面302bを形成し、第2の母材305の平坦面にルートフェイス302aを当接させ、第1の母材302と第2の母材305との当接により形成される開先溶接部に、溶接ワイヤを臨ませ、溶接ワイヤのアークにより、第1の母材302と第2の母材305との当接部を溶融させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−239723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような溶接方法では、第1の母材302(縦板)の広範囲に機械加工あるいはガス切断等で開先302bを設けなければならず、非常に時間がかかってコストアップとなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、縦板の突き合わせ部を内側に折り曲げるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントを対象とし、
上記作業機械のアタッチメントは、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板に当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている。
【0009】
上記の構成によると、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0010】
第2の発明では、断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントを対象とし、
上記作業機械のアタッチメントは、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板にそれぞれ当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている。
【0011】
上記の構成によると、小型の作業機械のようにコ字状部材に対して平板を突き合わせる場合でも、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が各平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記各突き合わせ部の全てが、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられている。
【0013】
上記の構成によると、各突き合わせ部の全てにおいて開先を設けずに溶接が行われているので、製造コストが安く強度の高いアタッチメントが得られる。
【0014】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
上記平板の各端面は、上記各縦板の外面と同一平面に配置され、隅肉溶接されたコーナー部が略直角に形成されている。
【0015】
上記の構成によると、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板を平板の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板の端面と縦板の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物を有するアタッチメントに比べて断面係数が大きくなり、アタッチメントの強度が向上する。逆に従来の縦板外面に平板端面を合わせると、従来のアタッチメントと同等の断面係数を維持しながら、平板を削除した分だけ軽量化となる。さらにコーナー部が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板が縦板に対して出っ張らず、土砂等の掘削作業においてアタッチメントが土中に入り込んだときに土砂がアタッチメントに溜まることはない。
【0016】
第5の発明では、一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接し、作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法を対象とし、
上記溶接方法では、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記折り曲げられた各突き合わせ部の角部を上記平板に当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、外側隅角部を溶接する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0018】
第6の発明では、断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法を対象とし、
上記溶接方法では、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部を上記平板にそれぞれ当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する構成とする。
【0019】
上記の構成によると、小型の作業機械のようにコ字状部材に対して平板を突き合わせる場合でも、一対の縦板の少なくとも一部に開先を設けることなく、外側隅角部に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部の角部が平板の突き合わせ部側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部に開先を設けた場合のように内側隅角部が形成され、溶融物が内側隅角部にも流れ込みやすく容易に裏波ビードが形成される。このため、容易に強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0020】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、
上記各突き合わせ部の全てに開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げる構成とする。
【0021】
上記の構成によると、各突き合わせ部の全てにおいて開先を設けないので、さらに安価で強度の高い箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントが得られる。
【0022】
第8の発明では、第5乃至第7のいずれか1つの発明において、
上記平板の端面と、上記各縦板の外面とが同一平面となるように、上記折り曲げられた突き合わせ部の角部を上記平板に当接させ、コーナー部を略直角に隅肉溶接する。
【0023】
上記の構成によると、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板を平板の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板の端面と縦板の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物を有するアタッチメントに比べて断面係数が大きくなり、アタッチメントの強度が向上する。逆に従来の縦板外面に平板端面を合わせると、従来のアタッチメントと同等の断面係数を維持しながら、平板を削除した分だけ軽量化となる。さらにコーナー部が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板が縦板に対して出っ張らず、土砂等の掘削作業においてアタッチメントが土中に入り込んだときに土砂がアタッチメントに溜まることはない。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、縦板の突き合わせ部の少なくとも一部の角部を、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げて平板に突き合わせ、内側隅角部に裏波ビードが形成されるように隅肉溶接するようにしたことにより、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことができる。
【0025】
また、縦板外面を平板端面と同一平面上に配置しても片側からの隅肉溶接により十分な溶接強度が得られるので、縦板間の幅を大きくして断面係数の高い箱形構造物を有するアタッチメントを得ることができる。また、同等の断面係数を有する従来構造の箱形構造物に比べて軽量化を図ることもできる。さらには、角部に出っ張りがないので、角部に土砂等が溜まりにくく、土砂等の掘削作業における泥落ち性を格段に向上させることができる。このように、本発明によると、商品性の高いアタッチメントが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図2のI−I線断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるアームの側面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる隅肉溶接部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明のその他の実施形態にかかる図1相当図である。
【図5】本発明のコ字状部材を用いたその他の実施形態にかかる図1相当図である。
【図6】従来の開先加工を加えない片側隅肉溶接にかかる図3相当図である。
【図7】従来の開先加工を加えた片側隅肉溶接にかかる図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図2は本発明の実施形態の箱形構造物としてのアーム1を示し、このアーム1は、作業機械としての油圧ショベル(図示せず)のアタッチメント先端側に接続される。アーム1は、一対の側板(縦板2,3)とこの縦板2,3に溶接された一対の平板4,5とを備えている。左右の縦板2,3は、一枚よりなるものでもよく、複数枚よりなるものでもよい。また、本実施形態では、上下の平板4,5は、複数枚で構成されているが、一枚で構成してもよい。
【0029】
アーム1は、前後に他のアタッチメントを接続するための接続ピンを挿入する第1乃至第3接続ピン挿入孔6,7,8を備えている。アーム1の基端側には、各アタッチメントとの間に接続される油圧シリンダ(図示せず)を連結するためのシリンダ連結部9,10が平板4,5から突出するように形成されている。
【0030】
そして、本発明の特徴として、図1及び図3に拡大して示すように、左右の縦板2,3における上下の平板4,5に対する突き合わせ部11の角部12は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、平板5の突き合わせ部11側の面に突き合わされている。この突き合わせ部11の外面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間には、鋭角の外側隅角部13が形成されている。同様に、突き合わせ部11の端面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間には、外側隅角部13よりも角度が小さい内側隅角部14が形成されている。この外側隅角部13には、連続して隅肉溶接15が形成され、内側隅角部14にも連続して裏波ビード16が形成されている。
【0031】
そして、上下の平板4,5の端面(左右側面)と、左右の縦板2,3の外面(左右側面)とは、同一平面に配置されている。このため、アーム1の各コーナー部17は、平板5が左右に出っ張らない略直角に形成されている。
【0032】
−溶接方法−
次ぎに、本実施形態のアーム1のコーナー部17の溶接方法について説明する。
【0033】
まず、所定の形に切断された縦板2,3を用意する。縦板2,3の上下端部すなわち、平板4,5に対する突き合わせ部11の角部12は、開先を加工することなく縦板2,3の切断時の直角を保ったままとする。このため、開先を加工する手間が省けて大幅なコストダウンとなる。
【0034】
次いで、プレス機械等により、突き合わせ部11の直角に保たれた角部12を内側に鋭角だけ折り曲げる。プレス作業が従来に比べて追加されるが、開先加工に比べると加工が容易でコストアップは少なくて済む。
【0035】
次いで、上下の平板4,5の左右端面と、左右の縦板2,3の外面とが同一平面となるように、折り曲げられた突き合わせ部11の角部12をそれぞれ上下の平板4,5に当接させる。そして、縦板2,3及び平板4,5を仮溶接しながら箱形に組み立てる。
【0036】
次いで、突き合わせ部11の外面と平板4,5の突き合わせ部11側の面との間に形成された外側隅角部13に溶接ワイヤ(図示せず)を臨ませ、溶接ワイヤのアークにより外側隅角部13を溶融させる。このとき、内側隅角部14にも溶融物が流れ込んで裏波ビード16を形成させる。つまり、開先を設けなくても、折り曲げ加工により、直角の角部12の外側に鋭角の外側隅角部13が形成され、内側にも鋭角の内側隅角部14が形成されるので、外側隅角部13を溶接する際に内側隅角部14にも溶融物が流れ込む。このため、内側隅角部14も溶け込みが十分に行われ、溶接部分に荷重が加わっても、内側隅角部14から亀裂が発生することはない。
【0037】
このように、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板2,3を平板4,5の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板4,5の端面と縦板2,3の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによる箱形構造物に比べて断面係数が大きくなり、強度が向上する。具体的には、図6に示すように、従来の隅肉溶接では、溶接領域を確保するために平板205の端面から中心までの幅bは、縦板202の外面から中心までの幅aよりも大きくする必要がある(b>a)。一方、本実施形態では、図3に示すように、平板5の端面と縦板2の外面とが同一平面状にある。このため、縦板2を幅aまで拡げることができるので、アーム1の断面係数が向上する。さらには、コーナー部17が左右に出っ張らない略直角に形成されているので、見映えがよい。このようにして、製造コストの安く、強度の高い見映えのよいアタッチメントが得られる。
【0038】
したがって、一対の縦板2,3に開先を設けることなく、外側隅角部13に隅肉溶接をすることができ、しかも突き合わせ部11の角部12が各平板4,5の突き合わせ部11側の面に当接しているので、外側だけでなく内側にも角部12に開先を設けた場合のように内側隅角部14が形成され、溶融物が内側隅角部14にも流れ込みやすく容易に裏波ビード16が形成される。このため、開先加工を行うことなく、十分な強度を持った隅肉溶接を行うことができる。
【0039】
また、開先を形成しなくても溶接強度が得られることから縦板2,3を平板4,5の端面から内側にずらしてT字型に突き合わせる必要がないので、平板4,5の端面と縦板2,3の外面とを同一平面に配置することができ、同じ幅のT字型突き合わせによるアームに比べて断面係数が大きくなり、強度を格段に向上させることができる。
【0040】
逆に図6に示す従来の縦板202外面に平板205の端面を合わせると、従来のアームと同等の断面係数を維持しながら、平板205の一部を削除することができ、その分だけ軽量化を図ることができて有利である。
【0041】
しかも、コーナー部17が略直角に形成されるので、見映えがよい上に、平板4,5が縦板2,3に対して出っ張らないので、土砂等の掘削作業においてアーム1が土中に入り込んだときに土砂がアーム1のコーナー部17に溜まることはない。このため、アーム1が汚れにくい。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、縦板2,3の上下いずれにも折り曲げ加工を施したが、例えば、図4に示すように、上側のみ折り曲げ加工を施し、下側は通常の片側隅肉溶接115としてもよい。但し、この場合には、下側の平板105が縦板2,3の外面よりも出っ張るという欠点はある。
【0044】
また、上記実施形態では、一対の平板4,5の間に一対の縦板2,3を略垂直に突き合わせて隅肉溶接しているが、図5に示すアーム401のように、断面コ字状部材402の一対の縦板402a,402bの端部に平板405を突き合わせて上記実施形態と同様に隅肉溶接するようにしてもよい。その場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。断面コ字状部材402は、小型の油圧ショベルのアームなどでよく使用されるので、さらなる軽量化や強度向上を図ることができる。なお、一対の縦板402a,402bの一方のみ折り曲げ加工を施すようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態では、箱形構造物として、油圧ショベルのアームの例を示したが、これに限定されず、各種作業機械のアタッチメントに適用可能である。また、作業機械に限定されず、溶接により製缶される箱形構造物であれば何でもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、隅肉溶接15及び裏波ビード16を連続して形成するようにしたが、箱形構造物によっては、間隔をあけて溶接するようにしてもよい。この場合にも隅肉溶接15のある部分には裏波ビード16が必ず形成されるようにすればよい。
【0047】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 アーム
2,3 縦板
4,5 平板
6,7,8 接続ピン挿入孔
9,10 シリンダ連結孔
11 突き合わせ部
12 角部
13 外側隅角部
14 内側隅角部
15 隅肉溶接
16 裏波ビード
402 断面コ字状部材
402a,402b 一対の縦板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントにおいて、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板に当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項2】
断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントにおいて、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板にそれぞれ当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械のアタッチメントにおいて、
上記各突き合わせ部の全てが、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の作業機械のアタッチメントにおいて、
上記平板の各端面は、上記各縦板の外面と同一平面に配置され、隅肉溶接されたコーナー部が略直角に形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項5】
一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法において、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記折り曲げられた各突き合わせ部の角部を上記平板に当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項6】
断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法において、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部を上記平板にそれぞれ当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の溶接方法において、
上記各突き合わせ部の全てに開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げる
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1つに記載の溶接方法において、
上記平板の端面と、上記各縦板の外面とが同一平面となるように、上記折り曲げられた突き合わせ部の角部を上記平板に当接させ、コーナー部を略直角に隅肉溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項1】
一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントにおいて、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板に当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項2】
断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接された箱形構造物を有する作業機械のアタッチメントにおいて、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部は、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部が上記平板にそれぞれ当接された状態で、該角部と平板の突き合わせ部側の面との間に形成された外側隅角部が外側から隅肉溶接されて内側の内側隅角部に裏波ビードが形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械のアタッチメントにおいて、
上記各突き合わせ部の全てが、開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げられている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の作業機械のアタッチメントにおいて、
上記平板の各端面は、上記各縦板の外面と同一平面に配置され、隅肉溶接されたコーナー部が略直角に形成されている
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項5】
一対の平板の間に一対の縦板を略垂直に突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法において、
上記一対の縦板における上記一対の平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記折り曲げられた各突き合わせ部の角部を上記平板に当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項6】
断面コ字状の部材の一対の縦板の端部に平板を突き合わせて隅肉溶接する作業機械のアタッチメントを製造する溶接方法において、
上記一対の縦板における上記平板に対する突き合わせ部の少なくとも一部の角部を開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げ、
上記直角を保った突き合わせ部の角部を上記平板にそれぞれ当接させて外側隅角部と内側隅角部とを形成し、
上記内側隅角部に裏波ビードが形成されるように、上記外側隅角部を溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の溶接方法において、
上記各突き合わせ部の全てに開先を加工することなく直角を保ったまま該縦板の外面に対して内側に鋭角だけ折り曲げる
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1つに記載の溶接方法において、
上記平板の端面と、上記各縦板の外面とが同一平面となるように、上記折り曲げられた突き合わせ部の角部を上記平板に当接させ、コーナー部を略直角に隅肉溶接する
ことを特徴とする溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−221235(P2010−221235A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68973(P2009−68973)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
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