説明

作業機械のアタッチメント

【課題】アタッチメントの上板および下板における接合部分の疲労強度の低下を抑え、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能な作業機械のアタッチメントを提供する。
【解決手段】作業機械のブーム6を構成するインサートブーム6c2は、上板21a、下板21b、および左右両側の側板21c、21dが閉鎖断面部21を構成し、閉鎖断面部21の長尺方向の端部の開放部の一部を閉鎖する前板35を有しており、上板21aおよび/または下板21bは、その端部の前方側の開放部を塞ぐ方向に曲げられた遮蔽部分21a1を有しており、前板35と遮蔽部分21a1とで開放部が遮蔽され、前板35と遮蔽部分21a1とは、当該遮蔽部分21a1の先端における前記閉鎖断面部21の上面または下面から外れた位置で接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のベースマシンに起伏自在に取り付けられるアタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の解体作業などを行う解体機などの作業機械には、超ロングアタッチメントをベースマシンに取り付けて使用される。
【0003】
このようなアタッチメントは、一般的には、ベースマシンに起伏自在に取り付けられたブームと、ブームの先端部に回動可能に取り付けられた短尺のインターブームと、このインターブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと備えている。
【0004】
アタッチメントを構成するブーム、インターブームおよびアームは、いずれも、矩形の閉鎖断面部を有している。例えば、特許文献1記載のブームでは、鋼板製の上板、下板、ならびに左右両側の側板によって矩形の閉鎖断面部が構成されている。閉鎖断面部の前端は、端部閉鎖板で閉じられている。端部閉鎖板は、上板部分と、下板部分と、当該上板部分の前端と下板部分の前端とのあいだを連続的につなぐ湾曲部分とを有している。端部閉鎖板の上板部分および下板部分の後端は、ブームの上面および下面において、上板および下板の前端にそれぞれ突き合わせた状態で溶接されている。端部閉鎖板は、その上端部および下端部がそれぞれ上板および下板と平行になるように曲げられ、上板および下板の端部にそれぞれ突き合わせて溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−28776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなブームの構造の場合、端部閉鎖板が上板および下板に溶接される溶接部分がブームの上面および下面に存在している。ブームの上面および下面には、作業機械の作業中にブームが受ける起伏方向の曲げ荷重によって、大きな曲げ応力、すなわち引張応力または圧縮応力が生じる。そのため、当該ブームの上面および下面に存在する溶接部分は、他の場所における溶接部分と比較して曲げ強度および疲労強度が相対的に低くなる傾向にあり、その結果、ブームの疲労寿命を改善することが困難になっている。
【0007】
本発明は上記の問題を解消するためになされたものであり、アタッチメントの上板および下板における接合部分の疲労強度の低下を抑え、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能な作業機械のアタッチメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業機械のアタッチメントは、作業機械のベースマシンに起伏自在に取り付けられるアタッチメントであって、上板、下板、および左右両側の側板が閉鎖断面部を構成し、前記閉鎖断面部の長尺方向の端部の開放部の一部を閉鎖する遮蔽板を有しており、前記上板および/または下板は、その端部の少なくとも一方の前記開放部を塞ぐ方向に曲げられた遮蔽部分を有しており、前記遮蔽板と前記遮蔽部分とで前記開放部が遮蔽され、前記遮蔽板と前記遮蔽部分とは、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面または下面から外れた位置で接合されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、アタッチメント内で応力が発生したときに接合部分に過度の負担がかからなくなることを目的としており、強度的に最も不利である接合部分を曲げ応力が最大となるアタッチメントの上面および下面から内側に退避した位置に設定することにより、接合部分での損傷を回避するものである。
【0010】
すなわち、本発明のアタッチメントでは、上板、下板および左右両側の側板によって閉鎖断面部が構成され、上板および/または下板は、その端部の少なくとも一方の閉鎖断面部の長尺方向の端部の開放部を塞ぐ方向に曲げられた遮蔽部分を有している。そして、遮蔽板と前記遮蔽部分とで開放部が遮蔽され、遮蔽板と遮蔽部分とは、当該遮蔽部分の先端における閉鎖断面部の上面または下面から外れた位置で接合されている。これによって、アタッチメントが外部から曲げ荷重を受けたときにアタッチメントの上面および下面を構成する上板および下板の長尺方向に連続して延びる閉鎖断面部を構成している部分において大きな曲げ応力が発生しても、アタッチメントの上面および下面から退避した位置にある当該上板および下板の接合部分で発生する曲げ応力は当該アタッチメントの上面および下面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0011】
前記上板または下板の遮蔽部分は、90度より大きく、かつ、180度よりも小さい角度に傾斜するように、折り曲げられている、のが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、上板または下板の遮蔽部分が90度より大きく、180度より小さい角度、すなわち鈍角になるように折り曲げられているので、上板または下板の遮蔽部分における折曲げの頂部への応力集中を緩和することが可能である。
【0013】
前記上板の遮蔽部分は、当該閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合されている、のが好ましい。
【0014】
アタッチメントは、作業中において斜め前方へ傾斜して起立された状態になることが多く、この場合にアタッチメントの上面には最も大きな曲げ応力が発生するので、上記の構成では、アタッチメントの上面から上板の接合部分を退避させるために、上板の遮蔽部分は、閉鎖断面部の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における閉鎖断面部の上面から外れた位置で遮蔽板(例えば、前板または後板など)に接合される。そのため、アタッチメントの上面を構成する上板が長尺方向へ連続して延びる閉鎖断面部を構成している部分において大きな曲げ応力が発生しても、アタッチメントの上面から退避した位置にある当該上板の接合部分で発生する曲げ応力は当該アタッチメントの上面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0015】
前記上板の前方側の遮蔽部分は、当該閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合されている、のが好ましい。
【0016】
この構成では、アタッチメントの上板の前方側の遮蔽部分と遮蔽板との接合部分は、板同士の接合であるため、接合強度の向上が難しい部分であるが、この部分に大きな曲げ応力が発生しないように、当該接合部分をアタッチメントの内方へ退避した構造になっている。具体的には、上板の前方側の遮蔽部分は、閉鎖断面部の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における閉鎖断面部の上面から外れた位置で遮蔽板に接合されている。そのため、アタッチメントの上面を構成する上板が長尺方向へ連続して延びる閉鎖断面部を構成している部分において大きな曲げ応力が発生しても、アタッチメントの上面から退避した位置にある当該上板の接合部分で発生する曲げ応力は当該アタッチメントの上面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0017】
前記上板、前記下板、前記左右両側の側板および前記遮蔽板は、前記ベースマシンに起伏自在に取り付けられるブームを構成している、のが好ましい。
【0018】
ブームは、ベースマシンに起伏自在に取り付けられるので、ベースマシンからの駆動力およびブーム先端側に設けられるアーム等の重量などを受ける。そのため、ブームは、アタッチメントの中で最も大きな曲げ応力が発生する。そこで、このようなブームを構成する上板または下板の遮蔽部分が閉鎖断面部の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における閉鎖断面部の上面または下面から外れた位置で遮蔽板(例えば、前板または後板など)に接合される。そのため、ブームの上面および下面を構成する上板および下板が長尺方向へ連続して延びる閉鎖断面部を構成している部分において大きな曲げ応力が発生しても、当該上板および下板の接合部分がブームの上面および下面からブームの内方へ退避しており、そのブームの内方の位置で発生する曲げ応力は当該ブームの上面および下面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、ブーム全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0019】
前記ブームは、当該ブームの長尺方向に並んで互いに着脱自在に連結可能な複数のブーム体を有しており、各々の前記ブーム体は、前記上板と、前記下板と、前記左右両側の側板と、前記遮蔽板と、前記両側の側板に沿って当該閉鎖断面部の前方へ突出するようにそれぞれ設けられ、前方の他のブーム体と接続可能な形状を有する一対の側壁とを有しており、当該ブーム体のそれぞれについて、前記ブーム体の前記上板の前方側の遮蔽部分は、前記閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合され、前記上板の前方側の遮蔽部分の両側端および前記遮蔽板の両側端は、それぞれ前記側壁に接合されている、のが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、ブームが複数のブーム体を有する分割式ブームの場合に、それぞれのブーム体において当該ブーム体の上面を構成する上板の前方側の遮蔽部分が前記閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で遮蔽板に接合される。そのため、ブーム体の上面を構成する上板が長尺方向へ連続して延びる閉鎖断面部を構成している部分において大きな曲げ応力が発生しても、ブーム体の上面から退避した位置にある当該上板の接合部分で発生する曲げ応力は当該ブーム体の上面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、各ブーム体ならびにブーム全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0021】
しかも、各ブーム体の上板と遮蔽板との接合位置が一対の側壁の間に位置するとともに、上板の前方側の遮蔽部分の両側端および遮蔽板の両側端がそれぞれ側壁に接合されているので、上板および遮蔽板は、当該上板と遮蔽板との接合位置の周辺部において一対の側壁によって固定されているので、接合位置における破損のおそれを低減することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、アタッチメントの上板および下板における接合部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、アタッチメント全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る超ロングアタッチメント付き解体機のアタッチメントを伸長して立ち上げた状態の概略側面図である。
【図2】図1の解体機のアタッチメントを折り畳んだ状態の概略側面図である。
【図3】図1のアタッチメントのインサートブームの斜視図である。
【図4】図1のアタッチメントのインサートブームの正面図である。
【図5】図4のインサートブームの平面図である。
【図6】図5のVI―VI線断面図である。
【図7】図6の張出し部分の拡大図である。
【図8】図2のアタッチメントの折り畳んだ状態において、インサートブーム同士を連結する前の状態を示す断面図である。
【図9】図2のアタッチメントの折り畳んだ状態において、インサートブーム同士を連結する前の状態を示す平面図である。
【図10】図2のアタッチメントの折り畳んだ状態において、インサートブーム同士を連結する前の状態を示す底面図である。
【図11】図8のインサートブーム同士を連結した後の状態を示す断面図である。
【図12】図8のインサートブーム同士を連結した後の状態を示す平面図である。
【図13】図8のインサートブーム同士を連結した後の状態を示す底面図である。
【図14】図1のアタッチメントのメインブームの正面図である。
【図15】図14のメインブームの縦断面図である。
【図16】図14のメインブームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施形態では、本発明のアタッチメントを備えた作業機械の一実施形態として、背景技術の説明に合わせて超ロングアタッチメント付き解体機1を適用対象としている。
【0025】
本実施形態の解体機1は、図1〜2に示されるように、ベースマシン2と、作業アタッチメント3とから構成されている。ベースマシン2は、クローラ式の下部走行体4と、この下部走行体4上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体5とによって構成されている。作業アタッチメント3は、ベースマシン2の前部に取り付けられている。
【0026】
作業アタッチメント3は、ベースマシン2(上部旋回体5)に起伏自在に取り付けられたブーム6と、このブーム6の先端部に水平軸まわりに上下方向に回動可能に取り付けられた短尺のインターブーム7と、このインターブーム7の先端に対して後端部が水平軸まわりに上下方向に回動可能に取り付けられたアーム8と、このアーム8の先端部に取り付けられたニブラなどの破砕装置9とを具備している。
【0027】
ブーム6は、複数のブーム体、すなわち、メインブーム6aと、フロントブーム6bと、インサートブーム6c1、6c2とから構成されている。メインブーム6aは、ブーム6の根元側の部分を構成し、上部旋回体5に起伏自在に取り付けられる。フロントブーム6bは、ブーム6の先端側の部分を構成し、その先端部にインターブーム7が回動自在に取り付けられる。
【0028】
インサートブーム6c1、6c2は、メインブーム6aとフロントブーム6bとの間に介在して、ブーム6の長さを解体作業に適応した長さに延長することが可能である。フロントブーム6bの根元側端部には、インサートブーム6c1が連結され、そのインサートブーム6c1の根元側端部には、インサートブーム6c2が連結され、さらに、そのインサートブーム6c2の根元側端部には、メインブーム6aが連結される。
【0029】
図1〜2に示されるように、作業アタッチメント3を作動させるシリンダとして、ブーム6(アタッチメント3全体)を起伏させるブームシリンダ10と、インターブーム7を作動させるインターブームシリンダ11と、アーム8を作動させるアームシリンダ12と、それに破砕装置9を水平軸回りに回動させる破砕装置シリンダ13とが設けられている。
【0030】
また、図2に示されるように、作業アタッチメント3の折り畳み輸送時には、同アタッチメント3を、インターブーム7を境としてフロントブーム6bが上側、アーム8が下側となる三つ折れ状態に折り畳んで地上に置き、ベースマシン2とメインブーム6aの組と、メインブーム6aおよびインサートブーム6c2を除く作業アタッチメント3aの組と、インサートブーム6c2とに切り離して輸送し、輸送後には、同じ状態で組み立てられる。
【0031】
この作業アタッチメント3では、図2に示されるように三つ折れ状態に折り畳んだ後にインサートブーム6c2をインサートブーム6c1から切り離し、その後メインブーム6aから切り離される。組み立てるときには、その逆の手順で連結される。
【0032】
(インサートブーム6c2の構成)
ここで、ブーム6を構成する複数のブーム体の一例として、インサートブーム6c2の構成について具体的に説明する。なお、インサートブーム6c1、6c2は本発明のブーム体にそれぞれ対応する。さらに、インサートブーム6c1、6c2は、以下で説明される点については同じ構成を有しているので、インサートブーム6c1の構成についての説明は本実施例では省略する。
【0033】
図3〜5に示されるように、インサートブーム6c2は、本体20と、一対の前方側壁22と、一対の後方側壁23と、固定ピン24と、ピン支持部25とを備えている。
【0034】
<前方側壁22>
一対の前方側壁22は、後述する本体20の閉鎖断面部21の両側の側板21c、21dに沿うように、本体20の前方へ突出するようにそれぞれ配置されている。前方側壁22は、本発明の側壁に対応する。
【0035】
前方側壁22は、インサートブーム6c2よりも先端側に設けられるインサートブーム6c1の後端部に着脱自在に係合可能な2つの係合部として、フック部30およびピン取付部31を有している。
【0036】
図6〜7に示されるように、フック部30は、インサートブーム6c1の後端部の固定ピン24に係合可能な切欠き32を有している。フック部30は、ピン取付部31よりも、前方側壁22の突出方向Aの先端22aに近く、かつ、上板21aに近い位置に配置されている。切欠き32の開口32aは、前方側壁22の前方上方へ向けて開口している。本実施形態の前方側壁22では、切欠き32の周辺を部分的に鋼板を重ね合わせることにより補強されている。
【0037】
ピン取付部31は、側壁22を貫通して形成されたピン孔33を有している。ピン孔33は、フック部30に対して切欠き32における開口32aから奥端32bへ向かう方向Cに配置されている。
【0038】
<本体20>
本体20は、閉鎖断面部21と、閉鎖断面部21の前方側の張出し部分26と、閉鎖断面部21の後方側の凹み部分27とを有する。張出し部分26は、閉鎖断面部21の前端に配置され、前板35を有している。前板35は、本発明の遮蔽板に対応する。
【0039】
閉鎖断面部21は、上板21aと、下板21bと、左右両側の側板21c、21dとから構成され、矩形断面形状を有する長尺の筐体である。上板21aと下板21bとは、上下方向に離間して配置され、当該上板21aおよび下板21bの両側端は両側の側板21c、21dに溶接されている。
【0040】
閉鎖断面部21の長尺方向の端部(すなわち、側板21c、21dの前端21c1、21d1)の開放部は、その一部が前板35によって遮蔽され、他の部分が上板21a1の前方遮蔽部分21a1によって遮蔽されている。開放部は、前端21c1、21d1において、上板21a、下板21bおよび左右両側の側板21c、21dによって形成された長尺方向に開放された開口部分である。
【0041】
上板21aは、図6に示されるように、インサートブーム6c2の上面を構成する当該インサートブーム6c2の長尺方向へ連続して延びる上面構成部分40と、当該上面構成部分40の前端からインサートブーム6c2の内方へ折り曲げられた折曲部分39とを有している。
【0042】
また、上板21aは、閉鎖断面部21との関係から見れば、長尺方向へ連続して延び、閉鎖断面部21を構成する中間部分21a3と、当該閉鎖断面部21の長尺方向の前方側の端部(すなわち、側板21c、21dの前端21c1、21d1)から当該長尺方向の前方へ延びる前方遮蔽部分21a1と、当該閉鎖断面部21の長尺方向の後方側の端部(すなわち、側板21c、21dの後端21c2、21d2)から当該長尺方向の後方へ延びる後方延長部分21a2とから構成されている。これら、これら中間部分21a3、前方遮蔽部分21a1、および後方延長部分21a2は、長尺方向に連続している。
【0043】
折曲部分39は、上板21aの前方遮蔽部分21a1の前方側に形成されている。前方遮蔽部分21a1は、本発明の遮蔽部分に対応する。前方遮蔽部分21a1は、具体的には、上板21aのうち閉鎖断面部21の上面を構成する中間部分21a3に連続するように側板21c、21dの前端21c1、21d1よりも前方へ延長した部分である。
【0044】
図6〜7に示されるように、前方遮蔽部分21a1の前方側に形成された折曲部分39は、前方遮蔽部分21a1の前端37から所定距離Xだけ後方へ離れた位置(すなわち、折曲げ頂部38)において、閉鎖断面部21の開放部を塞ぐ方向に曲げられている。換言すれば、折曲部分39は、閉鎖断面部21の外周面から内方へ退避する方向、すなわちインサートブーム6c2の内方に向けて(具体的には、前方へ向かうにつれて下板21bへ近づく方向へ向けて)折り曲げられた部分である。
【0045】
図7に示されるように、前方遮蔽部分21a1は、閉鎖断面部21の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分21a1の先端における閉鎖断面部21の上面から外れた位置で前板35に接合されている。換言すれば、前方遮蔽部分21a1は、折曲部分39においてインサートブーム6c2の上面から退避した位置、具体的には、折曲げ頂部38よりも前方で、かつ、一対の前方側壁22の間の前方遮蔽部分21a1の先端の接合位置36において、前板35の上端部35aと溶接によって接合されている。これにより、上板21aの接合位置36は、インサートブーム6c2の上面を構成する上面構成部分40からインサートブーム6c2の内方へ退避している。
【0046】
本実施形態では、上板21aの前方遮蔽部分21a1の前端37と前板35の上端35aとが突き合わされ、その突き合された部分に張出し部分26の内側から裏当て金41を当てた状態で、前方遮蔽部分21a1と前板35とが突合せ溶接されている。
【0047】
また、上板21aの前方遮蔽部分21a1は、上板21aが長尺方向へ連続して延びる上面構成部分40に対して、90度より大きく、かつ、180度よりも小さい角度(いわゆる鈍角)の傾斜角θ1で傾斜するように、曲げられている。
【0048】
なお、前方遮蔽部分21a1の前端37から折曲げ頂部38までの距離X、および折曲部分39の傾斜角θ1は、張出し部分26の寸法等の条件に基づいて適宜設定される。
【0049】
左右両側の側板21cおよび21dのそれぞれの前後の辺は、下板21bから上板21aに向かうにつれて前方へ傾斜している。
【0050】
張出し部分26は、閉鎖断面部21の前方側において、一対の前方側壁22の間で上板21aから下板21bにかけて連続するように前方へ突出している。
【0051】
張出し部分26の両側の側端26b(図5参照)は、一対の前方側壁22に対して溶接によって結合されている。
【0052】
張出し部分26は、前方へ突出するように曲げられた前板35と、上板21aの前方遮蔽部分21a1と、ピン支持部25の円筒部分25aと、下板21bの前方延長部分21b1とからなる。
【0053】
下板21bの前方延長部分21b1は、下板21bの前端部を側板21c、21dの前端よりも前方へ延長した部分である。前方延長部分21b1の前端部は、円筒部分25aに溶接されている。また、前板35の下端も、円筒部分25aに溶接されている。
【0054】
本実施形態の張出し部分26では、図7に示されるように、張出し部分26における突出方向Aの先端26aは、前方側壁22のフック部30の中心O1とピン取付部31の中心O2を結ぶ直線Lよりも当該突出方向Aにおいて前方に位置している。ここで、フック部30の中心O1は、切欠き32の奥端面の曲率中心であり、ピン取付部31の中心O2は、ピン孔33の中心である。
【0055】
張出し部分26における突出方向Aの先端26aは、ピン取付部31のピン孔33よりもフック部30の切欠き32に近い位置に配置されている。
【0056】
図4〜5に示されるように、凹み部分27は、インサートブーム6c1の後端において、当該インサートブーム6c1の前方へ凹み、当該インサートブーム6c1の後端に接続されるメインブーム6aの張出し部分56(図14〜16参照)が収容可能な部分である。
【0057】
凹み部分27の両側の側端27b(図5参照)は、一対の後方側壁23に対して溶接によって結合されている。
【0058】
凹み部分27は、閉鎖断面部21の後方側端部において、当該後方側端部から前方へ凹んでいる。凹み部分27は、前方へ突出するように曲げられた後板37と、上板21aの後方延長部分21a2と、下板21bの後方延長部分21b2と、上部円筒28と、下部円筒29とからなる。上板21aの後方延長部分21a2は、上板21aの後端部を側板21c、21dの後端よりも後方へ延長した部分であり、下板21bの後方延長部分21b2は、下板21baの後端部を側板21c、21dの後端よりも後方へ延長した部分である。上部円筒28は、インサートブーム6c2の幅方向(図4および図6の紙面垂直方向)に延びており、上板21aの後方延長部分21a2および後板37にそれぞれ溶接されている。下部円筒29は、インサートブーム6c2の幅方向(図4および図6の紙面垂直方向)に延びており、下板21bの後方延長部分21b2および後板37にそれぞれ溶接されている。
【0059】
本実施形態の本体20では、左右両側の側板21c、21dを有する範囲は、矩形断面形状の閉鎖断面部21を構成し、側板21c、21dよりも前方へはみだした部分は張出し部分26を構成し、さらに、側板21c、21dよりも後方へはみだした部分は凹み部分27を構成している。
【0060】
<後方側壁23>
図4〜6に示されるように、一対の後方側壁23は、閉鎖断面部21の両側の側板21c21dに沿って本体20の後方へ突出するようにそれぞれ設けられている。
【0061】
後方側壁23は、インサートブーム6c2の後端側に接続されるメインブーム6aのフック部30およびピン取付部31(図14〜16参照)に接続される。
【0062】
後方側壁23の後端上側の位置には、ピン孔23aが形成されている。一対の後方側壁23のピン孔23aには、固定ピン24の両端部がそれぞれ嵌合することが可能である。
【0063】
また、後方側壁23の後端下側には、後方へ突出する後方突出部分23bが形成されている。その後方突出部分23bの先端部付近には、ピン孔23cが形成されている。ピン孔23cは、インサートブーム6c2の後端側に接続されるメインブーム6aの前方側壁22のピン取付部31のピン孔33(図14〜16参照)とほぼ同一の直径を有している。
【0064】
インサートブーム6c2とメインブーム6aとを接続するときに、インサートブーム6c2側の後方側壁23のピン孔23cとメインブーム6a側の前方側壁22のピン孔33とが重ね合わされ、これらピン孔23cと33とを貫通するようにピン50(図11〜13参照)が挿入されることにより、ピン孔23cと33における係合が達成される。ピン50としては、例えば、作業者によるピンの抜き差し作業が容易なように、インサートブーム6c2側の一対の後方側壁23にそれぞれ短いピンが2本用いられる。
【0065】
<固定ピン24>
図4〜6に示されるように、固定ピン24は、上板21aの幅方向W(図5参照)に延び、その両端部が上記の後方側壁23の後端のピン孔23aにそれぞれ嵌合している。固定ピン24は、インサートブーム6c2の後端側に接続されるメインブーム6aの前方側壁22のフック部30の切欠き32に係合される。
【0066】
なお、固定ピン24は、本実施形態のように、一対のピン孔23aによって両端固定された比較的長いピンを用いるだけでなく、一対の短い固定ピンをそれぞれ一対のピン孔23aから内側へ向けて突出するように設けてもよい。
【0067】
<ピン支持部25>
図4〜6に示されるように、ピン支持部25は、インサートブーム6c2の一対の前方側壁22のピン孔33およびその先端側のインサートブーム6c1の一対の後方側壁23のピン孔23cに挿入される短いピン50(図11〜13参照)を外側から支持する。ピン支持部25は、円筒部分25aと、一対の連結板25bとを有している。
【0068】
円筒部分25aは、一対の前方側壁22を貫通して設けられている。円筒部分25aは、一対の前方側壁22の間において、前板35、および下板21bの前方延長部分21b1にそれぞれ溶接されている。さらに、円筒部分25aと前方側壁22とは、前方側壁22における円筒部分25aが貫通している部分の周辺で溶接されている。
【0069】
一対の連結板25bは、細長い板状の部材からなる。連結板25bの後方側端部は、連結板25bと前方側壁22との間に隙間34が形成されるように、円筒部分25aの両端部にそれぞれ溶接されている。隙間34には、インサートブーム6c2の先端側に接続されるインサートブーム6c1の後方側壁23の後方突出部分23b(図8〜9参照)を挿入することが可能である。
【0070】
また、連結板25bの前方側端部には、ピン孔25b1が形成されている。ピン孔25b1は、当該連結板25bと対向する前方側壁22のピン孔33とほぼ同一の直径を有しており、かつ、当該ピン孔33と同一軸線上に並んでいる。
【0071】
(メインブーム6aの構成)
図14〜16に示されるメインブーム6aは、一対の前方側壁22と、ピン支持部25と、張出し部分56を有する本体51と、上部旋回体連結筒52と、シリンダ連結筒53とを備えている。
【0072】
メインブーム6aは、前述のように、インサートブーム6c2の前側部分、すなわち、一対の前側側壁22およびピン支持部25を有する点において、インサートブーム6c2と共通しているので、これらの部分についての説明は省略する。
【0073】
メインブーム6aの本体51は、閉鎖断面部54と、閉鎖断面部54の前方側の張出し部分56とを有する。張出し部分56は、閉鎖断面部54の前端に配置され、前板55を有している。前板55は、本発明の遮蔽板に対応する。
【0074】
閉鎖断面部54は、上板54aと、下板54bと、一対の側板54c、54dとを有している。側板54cおよび54dは、上板54aと下板54bとの間に上下から挟まれている。側板54cおよび54dのそれぞれの上端および下端は、上板54aおよび下板54bに溶接されている。下板54bは、後方側へ行くにつれて上方へ傾斜している。上板54aおよび下板54bの後方側端部は、上部旋回体連結筒52に連結されている。
【0075】
閉鎖断面部54の長尺方向の端部(すなわち、側板54c、54dの前端54c1、54d1)の開放部は、その一部が前板55によって遮蔽され、他の部分が上板54a1の前方遮蔽部分54a1によって遮蔽されている。開放部は、前端54c1、54d1において、上板54a、下板54bおよび左右両側の側板54c、54dによって形成された長尺方向に開放された開口部分である。
【0076】
上板54aは、図15に示されるように、メインブーム6aの上面を構成する当該メインブーム6aの長尺方向へ連続して延びる上面構成部分62と、当該上面構成部分62の前端からメインブーム6aの内方へ折り曲げられた折曲部分61とを有している。
【0077】
折曲部分61は、上板54aの前方遮蔽部分54a1の前方側に形成されている。前方遮蔽部分54a1は、具体的には、上板54aのうち閉鎖断面部54の上面を構成する中間部分54a2に連続するように側板54c、54dの前端54c1、54d1よりも前方へ延長した部分である。前方遮蔽部分54a1は、本発明の遮蔽部分に対応する。
【0078】
図14〜15に示されるように、前方遮蔽部分54a1の前方側に形成された折曲部分61は、前方遮蔽部分54a1の前端57から所定距離Yだけ後方へ離れた位置(すなわち、折曲げ頂部58)において、閉鎖断面部54の開放部を塞ぐ方向に曲げられている。換言すれば、折曲部分61は、メインブーム6aの内方に向けて(具体的には、前方へ向かうにつれて下板54bへ近づく方向へ向けて)曲げられた部分である。
【0079】
図15〜16に示されるように、前方遮蔽部分54a1は、閉鎖断面部54の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分54a1の先端における閉鎖断面部54の上面から外れた位置で前板55に接合されている。換言すれば、前方遮蔽部分54a1は、折曲部分61においてメインブーム6aの上面から退避した位置、具体的には、折曲げ頂部58よりも前方で、かつ、一対の前方側壁22の間の接合位置59において、前板55の上端部60と溶接によって接合されている。これにより、上板54aの接合位置59は、メインブーム6aの上面を構成する上面構成部分62からメインブーム6aの内方へ退避している。
【0080】
また、上板54aの前方遮蔽部分54a1は、折曲部分61が当該上板54aが後端から折曲げ頂部58まで延びる上面構成部分62に対して、90度より大きく、かつ、180度よりも小さい角度(いわゆる鈍角)の傾斜角θ2で傾斜するように、曲げられている。
【0081】
なお、上記のインサートブーム6c2における距離Xおよび傾斜角θ1と同様に、前方遮蔽部分54a1の前端57から折曲げ頂部58までの距離Y、および折曲部分61の傾斜角θ2は、張出し部分56の寸法等の条件に基づいて適宜設定される。
【0082】
張出し部分56は、上記のインサートブーム6c2の張出し部分26と同様に、前方へ突出するように曲げられた前板55と、上板54aの前方遮蔽部分54a1と、ピン支持部25の円筒部分25aと、下板54abの前方遮蔽部分54b1とからなる。
【0083】
上部旋回体連結筒52は、図1〜2に示されるベースマシン2の上部旋回体5に取り付けられた水平軸によって回転自在に支持されている。これにより、メインブーム6aは、上部旋回体5に起伏自在に取り付けられる。
【0084】
シリンダ連結筒53は、図1〜2に示されるブームシリンダ10のロッド先端部に対して揺動可能にピンなどによって結合される。
【0085】
(フロントブーム6bの構成)
図1〜2に示されるフロントブーム6bの先端側には、インターブーム7が水平軸回りに回転軸回りに連結されている。また、フロントブーム6bの後端側には、インサートブーム6c1の先端部が接続されている。
【0086】
フロントブーム6bの後側部分は、上記のインサートブーム6c2の後側部分と同様の構成、すなわち、一対の後側側壁23、凹み部分27および固定ピン24を有している。
【0087】
なお、本実施形態のアーム8およびインターブーム7においても、上記のインサートブーム6c2およびメインブーム6aと同様に、上板、下板、左右両側の側板を有する矩形断面形状を有する長尺の閉鎖断面部を有している。
【0088】
(インサートブーム6c1と6c2の接続方法についての説明)
つぎに、図8〜13を参照しながら、インサートブーム6c1と6c2との接続方法について説明する。
【0089】
インサートブーム6c1と6c2を接続する前では、図8〜10に示されるように、インサートブーム6c1の後端部をインサートブーム6c2の先端部に向かい合わせる。具体的には、図2に示されるように、作業アタッチメント3のうちメインブーム6aおよびインサートブーム6c2を除く作業アタッチメント3aの組を三つ折れにした状態で地面に設置しておき、メインブーム6aの先端にあらかじめ接続されたインサートブーム6c2を移動させて、当該インサートブーム6c2の先端部をインサートブーム6c1の後端部に向かい合わせるように位置合わせをする。
【0090】
ついで、図11〜13に示されるように、ベースマシン2の駆動によって、インサートブーム6c2を前進させてインサートブーム6c1の後端部に接続する。
【0091】
具体的には、まず、インサートブーム6c2の前方側壁22の突出方向における先端側であってピン取付部31のピン孔33よりも上板21aに近い位置にあるフック部30の切欠き32を、インサートブーム6c1の後端部の固定ピン24に係合させる。
【0092】
このとき、図12〜13に示されるように、インサートブーム6c1側の後方側壁23の後方突出部分23bは、インサートブーム6c2側の連結板25bと前方側壁22との隙間34に挿入される。これにより、インサートブーム6c1側の後方側壁23のピン孔23cは、インサートブーム6c2側の前方側壁22のピン孔33および連結板25bのピン孔25b1に同軸状に並んで連通する。
【0093】
また、それと同時に、図11に示されるように、インサートブーム6c2側の閉鎖断面部21の前方へ突出する張出し部分26は、インサートブーム6c1の後端部から前方へ凹む凹み部分27の内側に入り込む。
【0094】
その後、作業者は、一対の短いピン50を、インサートブーム6c2の両側からピン孔25b1、23cおよび33の全てを貫通させて、インサートブーム6c2側の前方側壁22とインサートブーム6c1側の後方側壁23とを係合する。これにより、インサートブーム6c1と6c2とは、前方側壁22の上側においては、固定ピン24と切欠き32とが係合し、その下側においては、ピン50による前方側壁22と後方側壁23との結合がなされることにより、インサートブーム6c1と6c2の接続が完了する。
【0095】
また、上記のインサートブーム6c1、6c2間の接続と同様に、他のブーム体間の接続、例えば、フロントブーム6bとインサートブーム6c1との間の連結、およびインサートブーム6c2とメインブーム6aとの間の連結についても、上記の手順で接続作業を行うことが可能である。
【0096】
一方、上記のブーム体同士の接続を解除する場合には、上記の接続方法と逆の手順によって、これらのブーム体同士の接続を解除することが可能である。
【0097】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の作業アタッチメント3では、ブーム6が複数のブーム体(メインブーム6a、フロントブーム6b、およびインサートブーム6c1、6c2)を有する分割式ブームである。上記実施形態のインサートブーム6c2(それと同一形状のインサートブーム6c1)ならびにメインブーム6aのように、各ブーム体の上面を構成する上板21a、54aの閉鎖断面部21、54の長尺方向の端部から長尺方向の前方へ延びる前方遮蔽部分21a1、54a1が閉鎖断面部21、54の開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分21a1、54a1の先端における閉鎖断面部21、54の上面から外れた位置で前板35、55に接合される。そのため、ブーム体の上面を構成する中間部分21a3、54a2およびそれを含む上面構成部分40、62において大きな曲げ応力が発生しても、ブーム体の上面から退避した位置にある当該上板21a、54aの接合位置36、59で発生する曲げ応力は当該ブーム体の上面で発生する曲げ応力よりも相対的に小さくなる。そのため、接合位置36、59における部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、各ブーム体ならびにブーム6全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0098】
とくに、ブーム6は、ベースマシン2からの駆動力およびブーム6先端側に設けられるアーム8や破砕装置9等の重量などを受けるため、アタッチメント3を起立状態で作業しているときには、ブーム6の上面などでは、アーム8等よりも大きな曲げ応力が発生するが、上記のように、上板21aと前板35との接合位置36等がブーム6の上面から内方へ退避しているので、ブーム6において強度的に弱い接合位置36等における部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑え、ブーム6の疲労寿命を改善することが可能である。
【0099】
しかも、上板21aと前板35との接合位置36等は、板同士の溶接であるため、接合強度の向上が難しい部分であるが、上記のように、接合位置36をブーム6の上面から内方へ退避しているので、当該板同士の溶接部分であっても、曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能である。
【0100】
(2)
しかも、各ブーム体の上板21a、54aと前板35、55との接合位置36、59が一対の側壁22の間に位置するとともに、折曲部分39、61および前板35、55の両側端がそれぞれ側壁22に接合されているので、上板21a、54aおよび前板35、55は、当該上板21a、54aと前板35、55との接合位置36、59の周辺部において一対の側壁22によって固定されているので、接合位置36、59における破損のおそれを低減することが可能である。
【0101】
(3)
本実施形態の作業アタッチメント3では、インサートブーム6c2およびメインブーム6aの折曲部分39、61は、それぞれ、当該折曲部分39、61を有する上板21a、54aにおける長尺方向に延びる上面構成部分40、62に対して、90度より大きく、かつ、180度よりも小さい角度に傾斜するように、折り曲げられているので、折曲部分39、61における折曲げ頂部38、58への応力集中を緩和することが可能である。
【0102】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、互いに連結可能な複数のブーム体、すなわち、メインブーム6a、フロントブーム6b、およびインサートブーム6c1、6c2を有する分割式のブーム6を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のブーム体に分割しない一体型のブームであっても、本発明を適用することが可能である。その場合も、ブームの上面から上板と前板との接合位置を退避することが可能であり、ブームの疲労寿命を改善することが可能である。
【0103】
(B)
また、上記の実施形態では、メインブーム6aおよびインサートブーム6c2の上板21a、54aの前端部に折曲部分39、61が形成され、折曲部分39、61の先端で前板35、55に溶接されている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらブーム体の上板の後端部に曲げ部分を形成して当該上板の接合位置をブーム体の上面から退避させるように閉鎖断面部の開放部を塞ぐ方向へ曲げて、その後方先端における閉鎖断面部の上面から外れた位置で後板37等に接合してもよい。その場合、後板が本発明の遮蔽板に対応する。その場合も、接合位置における部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、各ブーム体ならびにブーム全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0104】
(C)
また、上記の実施形態では、メインブーム6aおよびインサートブーム6c2の上板21a、54aに折曲部分39、61が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらブーム体の下板の前後両端部のいずれかに曲げ部分を形成して当該下板の接合位置をブーム体の下面から退避させるように閉鎖断面部の開放部を塞ぐ方向へ下板を曲げてもよく、その場合も、接合位置における部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、各ブーム体ならびにブーム全体の疲労寿命を改善することが可能である。
【0105】
(D)
また、上記の実施形態では、ブーム6を構成するメインブーム6aおよびインサートブーム6c2の上板21a、54aに折曲部分39、61が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、作業アタッチメント3を構成するブーム6以外の他の閉鎖断面部を有する部材、例えば、アーム8やインターブーム7のそれぞれの閉鎖断面部を構成する上板および下板における前後両端部のいずれかに閉鎖断面部の長尺方向の端部の開放部を塞ぐ方向に曲げられた遮蔽部分を形成し、遮蔽部分の先端で遮蔽板に接合することにより、当該上板または下板の接合位置をアーム等の上面または下面から退避させるようにしてもよい。その場合も、接合位置における部分の曲げ強度や疲労強度の低下を抑えることが可能になり、アーム等の疲労寿命を改善することが可能である。
【0106】
(E)
以上の実施形態では、本発明のアタッチメントを備えた作業機械の一例として解体機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アタッチメント先端にマグネットを取り付けたリフマグ機等の他の作業機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 解体機
2 ベースマシン
3 作業アタッチメント
4 下部走行体
5 上部旋回体
6 ブーム
6a メインブーム
6b フロントブーム
6c1、6c2 インサートブーム
7 インターブーム
8 アーム
9 作業装置
21、54 閉鎖断面部
21a、54a 上板
21a1、54a1 前方遮蔽部分(遮蔽部分)
21a3、54a2 中間部分
21b、54b 下板
21c、21d、54c、54d 側板
22 前方側壁(側壁)
23 後方側壁
26、56 張出し部分
35、55 前板(遮蔽板)
36、59 接合位置
37、57 前端
38、58 折曲げ頂部
39、61 折曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のベースマシンに起伏自在に取り付けられるアタッチメントであって、
上板、下板、および左右両側の側板が閉鎖断面部を構成し、
前記閉鎖断面部の長尺方向の端部の開放部の一部を閉鎖する遮蔽板を有しており、
前記上板および/または下板は、その端部の少なくとも一方の前記開放部を塞ぐ方向に曲げられた遮蔽部分を有しており、
前記遮蔽板と前記遮蔽部分とで前記開放部が遮蔽され、
前記遮蔽板と前記遮蔽部分とは、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面または下面から外れた位置で接合されている、
ことを特徴とする作業機械のアタッチメント。
【請求項2】
前記上板または下板の遮蔽部分は、90度より大きく、かつ、180度よりも小さい角度に傾斜するように、折り曲げられている、
請求項1に記載の作業機械のアタッチメント。
【請求項3】
前記上板の遮蔽部分は、当該閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合されている、
請求項1または2に記載の作業機械のアタッチメント。
【請求項4】
前記上板の前方側の遮蔽部分は、当該閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合されている、請求項3に記載の作業機械のアタッチメント。
【請求項5】
前記上板、前記下板、前記左右両側の側板および前記遮蔽板は、前記ベースマシンに起伏自在に取り付けられるブームを構成している、
請求項1または2に記載の作業機械のアタッチメント。
【請求項6】
前記ブームは、当該ブームの長尺方向に並んで互いに着脱自在に連結可能な複数のブーム体を有しており、
各々の前記ブーム体は、前記上板と、前記下板と、前記左右両側の側板と、前記遮蔽板と、前記両側の側板に沿って前記閉鎖断面部の前方へ突出するようにそれぞれ設けられ、前方の他のブーム体と接続可能な形状を有する一対の側壁とを有しており、
当該ブーム体のそれぞれについて、前記ブーム体の前記上板の前方側の遮蔽部分は、前記閉鎖断面部の前記開放部を塞ぐ方向へ曲がり、かつ、当該遮蔽部分の先端における前記閉鎖断面部の上面から外れた位置で前記遮蔽板に接合され、
前記上板の前方側の遮蔽部分の両側端および前記遮蔽板の両側端は、それぞれ前記側壁に接合されている、
請求項5に記載の作業機械のアタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−96171(P2013−96171A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241321(P2011−241321)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)