説明

作業機械のエアコンディショナユニット構造

【課題】運転室のレイアウトの制約いかんにかかわらず、しかも所望の機能のみの装置からなるエアコンディショナを自由自在に配置できる技術を提供しようとする。
【解決手段】エアコンディショナの各機能に応じた装置1〜5毎にユニットを分割して、それぞれのケーシングからなるブロック10〜50を形成させる。そして、それらブロック10〜50の全部または任意の一部を適宜組み合わせて、完成体ユニットを形成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機械のエアコンディショナユニット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の運転室に配置されるエアコンディショナユニットは、一般に図6に示すように、個別の機能を備えた各装置(大別すると、内外気切替のための内外気切替装置1、送風のためのブロアモータ&ブロアファン2、冷却のためのエバポレータ3、温調・暖房用ヒータ4、吹き出し口切替のための吹出分配器5)が1個のケーシング7にまとめて収納された構造となっている(なお、同様の構造として特許文献1の図1参照)。
【特許文献1】特開平11−105530号(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、エアコンディショナユニットを配置しようとする運転室は、作業機械の機種毎にレイアウトが異なるため、1種類の形態のユニット(例えば前記ケーシング7のみからなるユニット)では対応が困難な場合があった。例えば、運転席のレイアウト上、ユニットを配置するスペースを確保できない場合は、エアコンディショナ自体の配置が困難となる。
【0004】
また、必要に応じて、あるいはユーザの希望によって、エアコンディショナの全機能を生じさせる装置構成とせず、任意の機能のみに特化させた装置構成(オプショナル的に選択する形態)とする場合もあるが、ユニットの形態はそのままとせざるを得ないため、特化した機能に応じた改良をする必要が生じていた。例えば、冷却機能を不要とする形態を希望する場合、図6に示すユニットからエバポレータ3を除去する必要があるが、該エバポレータ3が存在する形態ではその空気抵抗を考慮して温調制御が設定されるので(具体的には温調・暖房用ヒータ4からの温風で調整)、それを除去するとすると、その空気抵抗と同一とする抵抗体を新たに設置する必要が生じる。さらに、エバポレータ3にはドレイン用孔31等が設けられているので、それを塞ぐ必要もある。
【0005】
このため、例えば、送風機能だけ必要な場合には、単に扇風機を取り付けて済ませることも多く、快適なエアコンディショニングの制御は当然のことながら不可能となっていた(扇風機の送風では内気循環のみとなり、もちろん吹き出し口の選定も不可能となる)。
【0006】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、運転室のレイアウトの制約いかんにかかわらず、しかも所望の機能のみの装置からなるエアコンディショナを自由自在に配置できる技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、この発明に係るエアコンディショナユニット構造は、エアコンディショナの各機能に応じた装置毎にユニットを分割して、それぞれのケーシングからなるブロックとし、それらブロックの全部または任意の一部を適宜組み合わせて、完成体ユニットを形成させたことを特徴とする。
【0008】
ここで、1つのブロックとしてユニットを分割する範囲は、基本的には1つの機能を有する装置単位とするが、ただ装置によっては、複数の機能を有するものもあり(例えば、後述するヒータは暖房機能と温調機能を有する)、そのような場合は、複数機能を有する装置を1ブロックとすれば良い。
【0009】
エアコンディショナの機能としては、通常、内外気切替、送風、冷却、温調、暖房、吹出し切替が考えられ、これら機能に対応する装置として、内外気切替装置、ブロアモータ&ブロアファン、エバポレータ、温調・暖房用ヒータ、吹出分配器が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、機能毎に分かれたブロックを組み合わせてエアコンディショナのユニットを完成させることができるので、その完成体ユニットの形態を二次元、三次元どのようにでも形成できる。このため、配置させようとする運転室のレイアウトがどのような形態であっても配置することが可能となる。
【0011】
また、必要なブロックだけを選択したうえ、それらを組み合わせてユニットを完成させることも可能となり、所望の機能だけのユニットも組立自在である。このため、様々な環境で使用するあらゆる作業機械の運転室に適用できることはもちろん、多様なニーズがあるユーザの要望に、十分応えられるものとなる。
【0012】
しかも、特定のブロックのみ配置箇所を分けることも可能となり、その態様によっては種々の派生効果が得られる。例えば、大音源となるブロアモータ&ブロアファンのブロックだけを運転室の外部に配置させることができるが、そのような態様であれば運転室内の騒音低減に効果的となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る具体的形態の一例を図面に基づき説明する。以下説明する形態例は、いずれも油圧ショベルの運転室に配置されるエアコンディショナの例であるが、運転室自体の構成はその説明を省略している。なお、適用対象を含め、本発明が以下の形態例に限定されないことは当然である。
【0014】
図1は第1形態例に係るユニット構造体の平面図であり、従来構造として例示した図6に示すエアコンディショナの装置構成と同様の配置となるように組み立てた例である。
【0015】
図示のように、本形態例は、内外気切替装置1、ブロアモータ&ブロアファン2、エバポレータ3、温調・暖房用ヒータ4、吹出し口切替用分配器5の各装置が単体のケーシングに収納され、それぞれ単体のブロック10〜50として構成される。
【0016】
上述のように、エアコンディショナの機能としては、通常、内外気切替、送風、冷却、温調・暖房、吹出し切替が考えられ、これら機能に対応する装置として、内外気切替装置、ブロアモータ&ブロアファン、エバポレータ、温調・暖房用ヒータ、吹出分配器が挙げられる。そこで、本形態例では、それら各機能に応じた装置1〜5をそれぞれ1つのブロック10〜50として独立したケーシングに分割収納したものである。
【0017】
このため、各ブロック10〜50を形成するケーシングには、各装置1〜5の機能に応じた構成が施される。前記内外気切替装置1のブロック10を形成するケーシングには、外気取入れ口(図示なし)に連通する外気口11と、機械内に連通する内気口12とが備えられ、各口11,12に回転式電動羽根13(羽根が回転することで口を開閉する機構。以下同じ)とが備えられる。前記エバポレータ3のブロック30を形成するケーシングには、ドレイン用孔31が穿設され、前記温調・暖房用ヒータ4のブロック40を形成するケーシングには、風向切替のための回転式電動羽根41が備えられ、前記吹出分配器5のブロック50を形成するケーシングには、各吹出し口連通ダクト(図示なし)に接続される各送出口(リア口51、フロント口52、、デフロスタ口53、フット口54)が設けられるとともにと、各間口に回転式電動羽根55が備えられている。また、各ブロック10〜50のケーシング間の壁にはそれぞれ通風用の孔(図示なし)が形成される。
【0018】
そして、図示のように、ブロアモータ&ブロアファン2のブロック(以下ブロアモータ&ブロアファンブロックという)20、エバポレータ3のブロック(以下クーラブロックという)30、温調・暖房用ヒータ4のブロック(以下ヒータ・エアミックスブロックという)40、分配器5のブロック(以下ディストリビュータブロックという)50が水平状に直列に配置されるとともに、ブロアモータ&ブロアファンブロック20の一角部の上方に内外気切替装置1のブロック(以下エアインテークブロックという)10が載置されて、1個のエアコンディショナのユニットが形成される。これにより、ブロアモータ&ブロアファン2によりエアがエアインテークブロック10から取り入れられ、そのエアはクーラブロック30、ヒータ・エアミックスブロック40、ディストリビュータブロック50に向かい、該ディストリビュータブロック50の電動羽根55の開閉状況に応じて各口に向かうことになる。すなわち、全体が1個のユニットで形成される、図6に示す従来型とまったく同様の通風経路となる。
【0019】
本形態例は以上のように各装置1〜5がブロック単位で分割構成されているので、あらゆる仕様に応じた態様が容易に形成できる。例えば第1形態例に対して、冷房機能が不要な場合、図2(a)に示すように、クーラブロック30を外し、ブロアモータ&ブロアファンブロック20とヒータ・エアミックスブロック40とを直接接続させれば良い。この場合、エバポレータ3を除去したことにより空気抵抗に変動が生じた場合は、ブロック20,40間に適宜抵抗板を介在させれば足りる。さらに暖房機能も不要であれば、同図(b)に示すように、ヒータ・エアミックスブロック40を外せばよい。なお、同図(c)は第1形態例のブロック構成を簡易的に図示したものである。
【0020】
図3(a)は第2形態例、同図(b)は第3形態例を各示す。両形態例とも、第1形態例とまったく同様のブロックを構成要素としているが、ブロック組立後のユニットが一部縦型の形態である点で異なっている。両形態例でも、クーラブロック30以降が縦型となり、そこでエアの流れが水平から垂直方向に切り換わる。この切替の工夫としては、例えば図4に示すように、エバポレータ3を斜めに配置する等すれば良い。これらの形態例では、垂直方向にスペースが確保できる運転室に有意義となるが、さらに第4形態例では、ブロアモータ&ブロアファンブロック20を運転室外(図示では床下)に配置している点でより有用となる。すなわち、ブロアモータ&ブロアファン(ブロック20内に配置)はモータ音とファンの風切り音とで騒音源となるので、それを運転室外に配置させることで、運転室内の騒音低減となるものである。言うまでもないが、このようにブロアモータ&ブロアファンブロック20のみ運転室外に配置させのが容易に行えるのは、各装置がブロック単位に分割されることによる。
【0021】
なお、各種仕様に応じて、以上の形態例以外のブロックの組み合わせを行ってももちろん良く、さらに各ブロックのバリエーションを種々変えても良い。例えば図5に示すように、エアインテークブロック10の空気取り入れ口用羽根11,12を適宜選択しても良い((a)は外気導入専用の形態、(b)は内気循環専用の形態)。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、作業機械のエアコンディショナに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る第1形態例の配置構成を示す概略平面図である。
【図2】ブロック単位でエアの流れを示す説明であり、(a)は第1形態例から冷房機能のブロックを外した形態例、(b)は(a)から暖房機能を外した形態例、(c)は第1形態例そのもののである。
【図3】一部のブロックが縦型の形態例の説明図であり、(a)は第2形態例、(b)は第3形態例である。
【図4】クーラブロックにおける風向き変更の一形態を示す説明図である。
【図5】エアインテークブロックの種々の形態例を示す説明図であり、(a)は外気導入専用の形態、(b)は内気循環専用の形態である。
【図6】従来のエアコンディショナユニット構造を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 内外気切替装置
2 ブロアモータ&ブロアファン
3 エバポレータ
4 温調・暖房用ヒータ
5 吹出し口切替用分配器
7 ケーシング
10〜50 各ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンディショナの各機能に応じた装置毎にユニットを分割して、それぞれのケーシングからなるブロックとし、それらブロックの全部または任意の一部を適宜組み合わせて、完成体ユニットを形成させたことを特徴とする作業機械のエアコンディショナユニット構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−24079(P2008−24079A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196762(P2006−196762)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】