説明

作業機械のエンジン制御システム

【課題】排気ガス後処理装置を正常に機能させる上で有害である排気ガス中の硫黄分を正しく測定し、排気ガス後処理装置の硫黄被毒を低減することができる作業機械のエンジン制御システムを提供する。
【解決手段】キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時に記憶した燃料残量と今回のエンジン始動時に検出した燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ硫黄分濃度測定処理を行う。この処理では、エンジン1の回転数を強制的に硫黄分濃度の測定に適した目標回転数Naとなるよう固定制御し、排気ガスの温度が硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbとなり、目標時間Taを経過すると、硫黄分濃度が閾値以上であるかどうかの判定を行い、硫黄分濃度が閾値以上である場合に警報表示装置42を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の作業機械のエンジン制御システムに係わり、特にエンジンの排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する排気ガス後処理装置(以下DPF)を備えた作業機械のエンジン制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベル等の作業機械は、駆動源としてディーゼルエンジンを使用している。このディーゼルエンジンの使用に対しては、年々排気ガス規制が厳しくなっており、DPF(Diesel Particulate Filter )などの排気ガス後処理装置を装着して対処しているのが現状である。DPFとは、ディーゼルエンジンの排気系統に装着され、排出ガス中に含まれる粒子状物質(PM:パティキュレート・マター:以下適宜PMという)を捕集除去するフィルタを内蔵した装置であり、このDPFを装着した場合は、DPFで捕集されたPMを燃焼除去しDPFを再生させる手段(再生装置−例えば白金等の金属酸化触媒)を設けることが必須である。
【0003】
特許文献1には、このようなDPFを備えた作業機械において、排気系統に排気ガス分析装置を設置し、排気ガス分析装置により排気ガス中の二酸化硫黄等物質の濃度を測定し、燃料識別手段にて使用燃料を特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−65425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディーゼルエンジンを使用する作業機械においては、排気ガス規制の強化に伴って、ユーザーが使用できる燃料についても軽油中の硫黄分濃度の使用規定があり、燃料性状にシビアになってきている。しかしながら、実際に使用されている燃料は、燃料保管中の管理状態等の問題で硫黄分が使用規定値を超えたものが使用されるケースが多々ある。
【0006】
硫黄分濃度の高い燃料を使用すると、エンジンから排出されるPM量が大幅に増加し、排気ガス後処理装置の再生頻度が多くなる。また、排気ガス中に含まれる二酸化硫黄等の被毒物質が酸化触媒の貴金属表面に付着する硫黄被毒により、排気ガス後処理装置の再生能力の低下や、硫黄被毒による排気ガス後処理装置の不具合が起きると言った問題点がある。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、そのような課題に対し、排気系統に排気ガス分析装置を設け、排気ガス分析装置により二酸化硫黄等物質の濃度を測定して、燃料識別手段にて使用燃料を特定している。
【0008】
しかし、二酸化硫黄物質の濃度は、一般的にSOxセンサなどの検出手段を用いて測定されるが、作業機械が作業中であったり、エンジン回転数が高い状態などの高排気温度下では、二酸化硫黄物質の濃度を正しく測定することができない。特許文献1に記載の技術では、二酸化硫黄等の濃度が正しく測定できないことから、二酸化硫黄等を誤検知する可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、排気ガス後処理装置を正常に機能させる上で有害である排気ガス中の硫黄分を正しく測定し、排気ガス後処理装置の硫黄被毒を低減することができる作業機械のエンジン制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ディーゼルエンジンと、このエンジンの排気系統に設けられた排気ガス後処理装置と、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプ及びこの油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される少なくとも1つの油圧アクチュエータを含む油圧システムとを備えた油圧作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、エンジンの排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置と、前記エンジンの排気ガス中の硫黄分濃度を検出する硫黄分濃度検出装置と、警報装置と、前記排気温度検出装置の検出値と前記硫黄分濃度検出装置の検出値に基づいて硫黄分濃度測定処理を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記硫黄分濃度測定処理において、前記排気温度検出装置により検出した排気ガス温度が排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にある場合に、前記硫黄分濃度検出装置を用いて前記エンジンの排気ガス中の硫黄分濃度を測定し、この硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に、前記警報装置を作動させるものとする。
【0011】
このように硫黄分濃度測定処理において、排気ガス温度が排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にある場合にエンジンの排気ガス中の硫黄分濃度を測定することにより、排気ガス中の硫黄分濃度が正しく測定され、この正しく測定された硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に警報装置を作動させることにより、排気ガス後処理装置の硫黄被毒を最小限に留め、排気ガス後処理装置の不具合を未然に防止することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、作業機械のエンジン制御システムは、エンジンを始動させるキースイッチと、前記エンジンに供給される燃料の残量を検出する燃料油量検出装置とを更に備え、前記制御装置は、前記キースイッチがONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時に前記記憶装置に記憶した燃料残量と今回のエンジン始動時に前記燃料油量検出装置が検出した燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ、前記硫黄分濃度測定処理を行う。
【0013】
このようにキースイッチがONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時の燃料残量と今回のエンジン始動時の燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ、硫黄分濃度測定処理を行うことにより、通常、燃料の給油は必ずエンジンを停止させて行う結果、燃料給油後のエンジン始動時は毎回硫黄分濃度測定処理を行うようになるため、硫黄分濃度測定処理の要否が自動的に判定され、必要なときにのみ硫黄分濃度測定処理を行うことができる。これにより硫黄分濃度測定処理の頻度を低減し、硫黄分濃度測定処理による作業機械の稼動効率の低下を極力抑えることができる。
【0014】
(3)上記(1)において、好ましくは、作業機械のエンジン制御システムは、前記エンジンの目標回転数を指示するエンジン回転数指示装置を更に備え、前記制御装置は、前記硫黄分濃度測定処理を行わないときは、前記エンジン回転数指示装置が指示する目標回転数に基づいて前記エンジンの回転数を制御する通常エンジン回転数制御を行い、前記硫黄分濃度測定処理を行うときは、前記エンジン回転数指示装置による目標回転数の指示に係わらず、前記エンジンの回転数を強制的に前記排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数となるよう固定制御する。
【0015】
このように硫黄分濃度測定処理を行うときは、エンジン回転数指示装置による目標回転数の指示に係わらず、エンジンの回転数を強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数となるよう固定制御することにより、排気ガス温度を排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲に確実に制御して、硫黄分濃度測定処理の効率との測定精度を高めることができる。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、また好ましくは、前記制御装置は、前記硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合は、予め設定した所定の時間経過後に、前記エンジンを自動停止させる。
【0017】
このようにエンジンを自動停止させることにより、硫黄分濃度が高い燃料である場合にオペレータに燃料の交換を強く促し、この点でも排気ガス後処理装置の硫黄被毒を最小限に留めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排気ガス後処理装置を正常に機能させる上で有害である排気ガス中の硫黄分濃度を正しく測定し、排気ガス後処理装置の硫黄被毒を最小限に抑え、排気ガス後処理装置の不具合を未然に防止することができる。
【0019】
また、本発明によれば、通常、燃料の給油は必ずエンジンを停止させて行う結果、燃料給油後のエンジン始動時は毎回硫黄分濃度測定処理を行うようになるため、硫黄分濃度測定処理の要否が自動的に判定され、必要なときにのみ硫黄分濃度測定処理を行うことができる。これにより硫黄分濃度測定処理の頻度を低減し、硫黄分濃度測定処理による作業機械の稼動効率の低下を極力抑えることができる。
【0020】
また、本発明によれば、硫黄分濃度測定処理を行うときは、エンジン回転数指示装置による目標回転数の指示に係わらず、エンジンの回転数を強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数となるよう固定制御するため、排気ガス温度を排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲に確実に制御して、硫黄分濃度測定処理の効率と測定精度を高めることができる。
【0021】
更に、本発明によれば、エンジンを自動停止させることで、硫黄分濃度が高い燃料である場合にオペレータに燃料の交換を強く促し、この点でも排気ガス後処理装置の硫黄被毒を最小限に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態における作業機械のエンジン制御システムを含む駆動システム全体を示す図である。
【図2】図1に示す駆動システムを備えた油圧ショベルの外観を示す図である。
【図3】車体制御装置の硫黄分濃度検出制御及びエンジン制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】車体制御装置の硫黄分濃度検出制御及びエンジン制御の処理内容を示す,図3のフローチャートの続きのフローチャートである。
【図5】エンジン回転数と排気ガス温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。以下の実施の形態は、本発明を作業機械(建設機械)の代表例である油圧ショベルに適用したものである。
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は本発明の第1の実施の形態における作業機械のエンジン制御システムを含む駆動システム全体を示す図である。
【0024】
図1において、本実施の形態に係わる油圧ショベルの駆動システムは、エンジン1と、油圧システム2と、排気ガス後処理装置3と、エンジン制御システム4とを備えている。
【0025】
エンジン1はディーゼルエンジンであり、エンジン1には、エンジン制御システム4の一部として、エンジン1の実回転数を検出する回転数検出装置43と、エンジン1に供給される燃料を制御する電子ガバナ45(電子制御式燃料噴射装置)とが設けられている。
【0026】
油圧システム2は、エンジン1を動力源として油圧ショベルの被駆動部材を駆動するものであり、エンジン1により駆動される可変容量型のメインの油圧ポンプ21及び固定容量型のパイロットポンプ22と、油圧ポンプ21から吐出される圧油によって駆動され油圧ショベルの被駆動部材を駆動するアクチュエータ群23と、油圧ポンプ21からアクチュエータ群23に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するメインスプール群(流量制御弁群)を含むコントロールバルブ装置24と、パイロットポンプ22からの圧油を油圧源としてコントロールバルブ装置24のメインスプール群を操作するための制御パイロット圧を生成するリモコン弁群を備えた入力操作レバー装置25とを有している。
【0027】
排気ガス後処理装置3は、エンジン1の排気ガスが流れる排気系統の一部である排気管31に取り付けられ、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ32a及びフィルタ32aの上流側に位置する酸化触媒32bを内蔵している。また、排気ガス後処理装置3には、エンジン制御システム4の一部として、フィルタ32aの上流側の排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置33と、それぞれフィルタ32aの上流側の圧力と下流側の圧力をそれぞれ検出する排気圧力検出装置34a,34bとが設けられている。排気圧力検出装置34a,34はフィルタ32aの上流側と下流側の前後差圧(フィルタ32aの圧力損失)を検出する差圧検出装置を構成している。
【0028】
エンジン制御システム4は、エンジン1の排気管に設けられ、エンジン1の排気ガス中の硫黄分濃度を検出する硫黄分濃度検出装置36と、燃料の油量を検出する燃料油量検出装置40と、エンジン1の目標回転数を指示するエンジンコントロールダイヤル41(回転数指示装置)と、警報表示装置42と、上述した排気温度検出装置33、排気圧力検出装置34a,34b、回転数検出装置43、電子ガバナ45と、キースイッチ46と、車体制御装置51及びエンジン制御装置52とを有している。
【0029】
車体制御装置51は、排気温度検出装置33からの検出信号と、硫黄分濃度検出装置36からの検出信号と、燃料油量検出装置40からの検出信号と、エンジンコントロールダイヤル41からの指令信号と、回転数検出装置43からの検出信号と、キースイッチ46からの指令信号とを入力し、所定の演算処理を行い、エンジン制御装置52にエンジンコントロールダイヤル41が指示する目標回転数と硫黄分濃度測定処理のための目標回転数のいずれかの指令信号を出力するとともに、硫黄分濃度の高い燃料を使用していると判断された場合は、警報表示装置42に作動信号を出力する。車体制御装置51は、排気温度検出装置33からの検出信号と硫黄分濃度検出装置36からの検出信号と回転数検出装置43からの検出信号をエンジン制御装置52を介して入力する。
【0030】
エンジン制御装置52は、車体制御装置51からの目標回転数の指令信号と、回転数検出装置43からのエンジン回転数の検出信号を入力し、所定の演算処理を行い、電子ガバナ45に目標燃料噴射量の制御信号を出力する。電子ガバナ45は、その制御信号に基づいてエンジン1に供給される燃料噴射量を制御し、エンジン1の回転数が車体制御装置51からの指令信号の目標回転数に維持されるように制御する。
【0031】
また、エンジン制御装置52は、差圧検出装置33からの検出信号を入力し、次のようにフィルタ32aを再生(フィルタ32aに捕集された粒子状物質の燃焼除去)する制御を行う。
【0032】
エンジン制御装置52は、差圧検出装置33からの検出信号が示すフィルタ32aの前後差圧が再生開始判定閾値を超えたかどうかを判定し、再生開始判定閾値を超えると、フィルタ32aの再生が必要であると判定して再生制御を開始する。この再生制御は、例えば排気管31内に再生用の燃料噴射を行うことにより行う。排気管31内に燃料が噴射されると、その噴射燃料の一部が燃焼して排気ガスの温度を上昇させるとともに、未燃燃料が酸化触媒32bに供給されて酸化触媒32bによって酸化され、そのときに得られる反応熱により排気ガス温度が更に上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタ32aに体積したPMが燃焼除去される。再生用の燃料噴射は、例えば、電子ガバナ45によるエンジン1の筒内(シリンダ内)噴射システムを利用し、多段噴射の主噴射後の膨張行程において燃料を噴射する副噴射(ポスト噴射)を実行することで行うことができる。また、排気管31に再生用の燃料噴射装置を設置し、この燃料噴射装置を作動させることで再生用の燃料噴射を行ってもよい。この再生制御は、差圧検出装置33からの検出信号が示すフィルタ32aの前後差圧が再生終了判定閾値を下回るまで行い、フィルタ32aの前後差圧が再生終了判定閾値を下回ると排気管31内への再生用の燃料噴射を停止し、再生制御を終了する。
【0033】
図2は、図1に示す駆動システムを備えた油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1、油圧ポンプ21、パイロットポンプ22、排気ガス後処理装置3等が配置され、キャビン107内の運転席の左右に入力操作レバー25が配置されている。車体制御装置51及びエンジン制御装置52は、例えばキャビン107内の運転席の下側に配置されている。
【0034】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。左右の走行モータ104a,104b、旋回モータ105、ブームシリンダ114、アームシリンダ115、バケットシリンダ116は図1に示すアクチュエータ群25を構成する。
〜制御内容〜
図3及び図4は、車体制御装置51の硫黄分濃度測定処理及びエンジン制御の処理内容を示すフローチャートである。
【0035】
<ステップS100(図3)>
車体制御装置51はキースイッチ46の指令信号を入力し、キースイッチ46がONとなるとプログラムが起動し、図3及び図4のフローチャートに示す処理が開始される。
【0036】
<ステップS110(図3)>
まず、車体制御装置51は、硫黄分濃度測定処理の要否を判定するため、キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、燃料油量検出装置40からの検出信号を入力し、前回のエンジン停止時に車体制御装置51の記憶装置51aに記憶した燃料残量(図4のステップS330参照)と今回のエンジン始動時の燃料残量とを比較し、燃料残量が増えているかどうかを判定する。
【0037】
<ステップS120(図3)>
ステップS110において、今回のエンジン始動時の燃料残量が増えていると判定された場合は、車体制御装置51は、硫黄分濃度測定処理が必要な場合であると判定し、燃料異常フラグFをOFFにリセットする。
【0038】
<ステップS130(図3)>
次いで、車体制御装置51は硫黄分濃度測定処理を行う。この硫黄分濃度測定処理においては、まず、車体制御装置51は、硫黄分濃度測定処理のために予め設定した排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数Naの指令信号をエンジン制御装置52に出力する。この目標回転数Naの指令信号の出力は、エンジンコントロールダイヤル41からの目標回転数の指令信号に優先して行う。目標回転数Naは例えば中速回転数程度の回転数である。
【0039】
エンジン制御装置52は、目標回転数Naの指令信号を入力すると、その目標回転数Naと回転数検出装置43により検出される実回転数に基づいて電子ガバナ45に目標燃料噴射量の制御信号を出力し、電子ガバナ45は、その制御信号に基づいて、エンジン1の回転数が目標回転数Naになるように制御する。これにより硫黄分濃度測定処理では、エンジンコントロールダイヤル41による目標回転数の指示に係わらず(その目標回転数の指令信号を無視して)、エンジン1の回転数が強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した目標回転数Naとなるように固定制御される。
【0040】
<ステップS140(図3)>
次いで、車体制御装置51は、回転数検出装置43からの検出信号を入力し、車体制御装置51からの指令信号の目標回転数Naと回転数検出装置43により検出されるエンジン1の実回転数Nとを比較し、エンジン1の実回転数Nが目標回転数Na以下にあるかどうかを判定する。エンジン1の実回転数が目標回転数範囲Na以下にないと判定された場合は、ステップS140の手順を繰り返す。
【0041】
<ステップS150(図3)>
また、車体制御装置51は、排気温度検出装置33からの検出信号を入力し、予め設定した排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbと排気温度検出装置33により検出された排気ガスの温度Texとを比較し、排気ガスの温度Texが排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbにあるかどうかを判定する。排気ガスの温度Texが所定の温度範囲Texa〜Texbにないと判定された場合は、ステップS140及びS150の手順を繰り返す。
【0042】
図5は、エンジン回転数と排気ガス温度との関係を示す図である。エンジン回転数と排気ガス温度には相関関係があり、図示の如く、エンジン回転数が上昇するにしたがって排気ガス温度も上昇する関係にある。また、エンジン回転数が一定であっても、排気ガス温度はそのときの環境条件(気温等)や車体条件(エアコン使用の有無等のエンジン引き摺り負荷の大小等)によって所定の幅内で変化する。図5に示す如く、目標回転数Naとして適切な値を設定することにより、排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbの排気ガス温度を得ることができる。
【0043】
<ステップS160(図3)>
ステップS140において、エンジン1の実回転数が目標回転数範囲Na以下にあると判定され、ステップS150において、排気ガスの温度Texaが所定の温度範囲Texa〜Texbにあると判定された場合は、車体制御装置51は、その後の経過時間Tと予め設定した目標時間Taとを比較し、経過時間Tが目標時間Taに達したかどうかを判定する。経過時間Tが目標時間Taに達していないと判定された場合は、ステップS140,S150及びS160の手順を繰り返す。
【0044】
<ステップS170(図3)>
ステップS160において、経過時間Tが目標時間Taに達したと判定された場合は、車体制御装置51は、硫黄分濃度検出装置36からの検出信号を入力し、予め設定した排気ガス中の目標硫黄分濃度(閾値)と硫黄分濃度検出装置36により検出される排気ガス中の硫黄分濃度とを比較し、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であるかどうかを判定する。
【0045】
<ステップS180(図3)>
ステップS170において、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であと判定された場合は、車体制御装置51は、燃料異常フラグFをONにセットする。
【0046】
<ステップS190(図3)>
次いで、車体制御装置51は、警報表示装置42に作動信号を出力して、現在使用中の燃料は硫黄分濃度の高い燃料であることと、直ちに燃料を交換する必要があることを警報表示装置42に表示させる。
【0047】
<ステップS200(図3)>
次いで、車体制御装置51は、エンジン1を停止させる準備として、上述した排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した目標回転数Naよりも低いエンジン停止に適した目標回転数Nbの指令信号をエンジン制御装置52に出力する。この目標回転数Nbの指令信号の出力も、エンジンコントロールダイヤル41による目標回転数の指示に優先して行う。目標回転数Nbは例えば低速アイドル回転数程度の回転数である。
【0048】
エンジン制御装置52は、この目標回転数Nbと回転数検出装置43により検出される実回転数に基づいて電子ガバナ45に目標燃料噴射量の制御信号を出力し、電子ガバナ45は、その制御信号に基づいて、エンジン1の回転数が目標回転数Nbになるように制御する。これにより現在使用中の燃料は硫黄分濃度の高い燃料であると判定された場合に、エンジンコントロールダイヤル41からの目標回転数の指示に係わらず、エンジンコントロールダイヤル41からの目標回転数の指令信号を無視して、エンジン1の回転数をエンジン停止に適した目標回転数Nbとなるよう制御する。
【0049】
<ステップS210(図3)>
次いで、ステップS200において、目標回転数Nbの指令信号をエンジン制御装置52に出力した後の経過時間Tと目標時間Tbとを比較し、経過時間Tが目標時間Tbに達したかどうかを判定する。
【0050】
<ステップS220(図3)>
ステップS210において、経過時間Tが目標時間Tbに達したと判定された場合は、エンジン1の停止信号をエンジン制御装置52に出力し、エンジン1を自動停止させる。
【0051】
<ステップS230(図3)>
ステップS110において、今回のエンジン始動時の燃料残量が増えていないと判定された場合は、車体制御装置51は硫黄分濃度測定処理が不要であると判定する。次いで車体制御装置51は燃料異常フラグFがOFFであるかどうかを判定し、燃料異常フラグFがOFFでない場合(ONである場合)は、一度、ステップS170において、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であと判定された後にキースイッチ46をオンしてエンジン1の始動をした場合であるので、ステップS190に進んで直ちに警告表示を行うとともに、ステップS200〜S220に進んでエンジン停止のための目標回転数Nbの指令信号をエンジン制御装置52に出力し、目標時間Tb経過後、エンジン1を停止させる。
【0052】
<ステップS310(図4)>
ステップS170において、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上でないと判定された場合、或いはステップS230において、燃料異常フラグFがOFFであると判定された場合は、図4のステップS300に進む。このステップS300では、通常のエンジン回転数制御演算を行う。この通常のエンジン回転数制御演算では、エンジンコントロールダイヤル41からの指令信号を入力し、その指令信号に基づく目標回転数を演算し、その目標回転数の指令信号をエンジン制御装置52に出力する。この場合、車体制御装置51がオートアイドル制御等の付加的なエンジン制御機能を備えていてもよく、この場合は、エンジンコントロールダイヤル41からの指令信号に基づく目標回転数とそのエンジン制御機能に目標回転数の一方を指令信号としてエンジン制御装置52に出力する。
【0053】
エンジン制御装置52は、その目標回転数と回転数検出装置43により検出される実回転数に基づいて電子ガバナ45に目標燃料噴射量の制御信号を出力し、電子ガバナ45は、その制御信号に基づいて、エンジン1の回転数が目標回転数になるように制御する。
【0054】
<ステップS320(図4)>
次いで、車体制御装置51はキースイッチ46の指令信号を入力し、キースイッチ46がOFFとなってエンジン1が停止されたかどうかを判定する。
【0055】
<ステップS330(図4)>
ステップS320において、エンジン1が停止されたと判定された場合は、車体制御装置51は燃料油量検出装置40からの検出信号を入力し、燃料油量検出装置40により検出した燃料残量を記憶装置51aに記憶する。
【0056】
以上において、車体制御装置51及びエンジン制御装置52は、排気温度検出装置33の検出値と硫黄分濃度検出装置36の検出値に基づいて硫黄分濃度測定処理を行う制御装置を構成し、この制御装置は、硫黄分濃度測定処理において、排気温度検出装置33により検出した排気ガス温度が排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にある場合に、硫黄分濃度検出装置36を用いてエンジン1の排気ガス中の硫黄分濃度を測定し、この硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に、警報装置(警報表示装置42)を作動させる。
【0057】
また、上記制御装置は、キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時に記憶装置51aに記憶した燃料残量と今回のエンジン始動時に燃料油量検出装置40が検出した燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ、硫黄分濃度測定処理を行うものとなる。
【0058】
更に、上記制御装置は、硫黄分濃度測定処理を行わないときは、エンジン回転数指示装置(エンジンコントロールダイヤル41)が指示する目標回転数に基づいてエンジン1の回転数を制御する通常エンジン回転数制御を行い、硫黄分濃度測定処理を行うときは、エンジン回転数指示装置(エンジンコントロールダイヤル41)による目標回転数の指示に係わらず、エンジン1の回転数を強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数Naとなるよう固定制御するものとなる。
【0059】
また、上記制御装置は、硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合は、予め設定した所定の時間Tb経過後に、エンジン1を自動停止させるものとなる。
〜動作〜
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0060】
<硫黄分濃度の低い通常燃料を給油した場合>
まず、硫黄分濃度の低い通常燃料を給油した場合について説明する。
【0061】
燃料給油後、最初にキースイッチ46をONしてエンジン1を始動したときは、給油後で燃料残量が増えているため、車体制御装置51は、燃料異常フラグFをOFFにリセットして硫黄分濃度測定処理を開始する(ステップS100→S110→S120)。この硫黄分濃度測定処理では、エンジン1の目標回転数は強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した目標回転数Naとなるように固定制御され、エンジン1の実回転数が目標回転数Na以下となり、排気ガスの温度Texが排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbとなり、かつ目標時間Taを経過すると、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であるかどうかの判定を行う(ステップS130→S140→S150→S160→S170)。この場合は、硫黄分濃度の低い通常燃料を使用しているため、車体制御装置51は排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上でないと判定し、通常のエンジン回転数制御演算を行う(ステップS310)。これによりオペレータは通常通り油圧ショベルを動かして作業を行うことができる。
【0062】
昼休み等の作業中断時或いは一日の作業終了時に、オペレータがエンジン停止のためキースイッチ46をOFFすると、車体制御装置51は、燃料油量検出装置40により検出したそのときの燃料残量を記憶装置51aに記憶する(ステップS320→S330)。
【0063】
昼休み等の作業中断後或いは翌日の作業開始時にオペレータが再びキースイッチ46をONしてエンジン1を始動したときは、給油後でなく燃料残量は増えておらず、かつ燃料異常フラグFはOFFであるため、車体制御装置51は直ちに通常のエンジン回転数制御演算を行う(ステップS100→S110→S230→S310)。これによりオペレータは通常通り油圧ショベルを動かして作業を行うことができる。
【0064】
その後キースイッチ46をOFFして、エンジンを停止させた場合も同様である。
<硫黄分濃度の高い燃料を給油した場合>
次に、硫黄分濃度の高い燃料を給油した場合について説明する。
【0065】
燃料給油後、最初にキースイッチ46をONしてエンジン1を始動すると、給油後で燃料残量が増えているため、車体制御装置51は、燃料異常フラグFをOFFにリセットして硫黄分濃度測定処理を開始する(ステップS100→S110→S120)。この硫黄分濃度測定処理においても、エンジン1の目標回転数は強制的に目標回転数Naとなるように固定制御され、エンジン1の実回転数が目標回転数Na以下となり、排気ガスの温度Texが排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲Texa〜Texbとなり、かつ目標時間Taを経過すると、排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であるかどうかの判定を行う(ステップS130→S140→S150→S160→S170)。この場合は、硫黄分濃度の高い燃料を使用しているため、車体制御装置51は排気ガス中の硫黄分濃度が目標硫黄分濃度(閾値)以上であると判定し、燃料異常フラグFをONにセットし、かつ警報表示装置42に現在使用中の燃料は硫黄分濃度の高い燃料である旨と、直ちに燃料を交換する必要があることを表示させる(ステップS180→S190)。また、エンジン1を強制的にエンジン停止に適した目標回転数Nbに制御してエンジン1の回転数を低下させ、この状態が目標時間Tbを経過すると、エンジンを停止させる(ステップS200→S210→S220)。
【0066】
その後、オペレータが、万一、エンジン1を再始動しようとしてキースイッチ46をONした場合は、給油後でなく燃料残量は増えておらず、かつ燃料異常フラグFはONであるため、車体制御装置51は直ちに警報表示装置42を作動させて、現在使用中の燃料は硫黄分濃度の高い燃料である旨と、直ちに燃料を交換する必要があることを表示させ、かつエンジン1を強制的に目標回転数Nbに制御してエンジン1の回転数を低下させ、目標時間Tbを経過すると、エンジンを停止させる(ステップS100→S110→S230→S190→S200→S210→S220)。これによりオペレータは、硫黄分濃度の低い燃料に交換しない限り、エンジン1の再始動は無理であることが分かり、オペレータは燃料交換をせざるを得なくなる。
〜効果〜
以上のように構成した本実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0067】
本実施の形態においては、排気ガス温度が排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にある場合にエンジン1の排気ガス中の硫黄分濃度を測定するため、排気ガス後処理装置3を正常に機能させる上で有害である排気ガス中の硫黄分濃度が正しく測定され、この正しく測定された硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に警報表示装置42を作動させるため、排気ガス後処理装置3の硫黄被毒を最小限に抑え、排気ガス後処理装置3の不具合を未然に防止することができる。
【0068】
また、キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時の燃料残量と今回のエンジン始動時の燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ、硫黄分濃度測定処理を開始するため、通常、燃料の給油はエンジン1を停止して行う結果、燃料給油後のエンジン始動時は毎回硫黄分濃度測定処理を行うようになり、硫黄分濃度測定処理の要否が自動的に判定され、必要なときにのみ硫黄分濃度測定処理を行うことができる。これにより硫黄分濃度測定処理の頻度を低減し、硫黄分濃度測定処理による作業機械の稼動効率の低下を極力抑えることができる。
【0069】
また、硫黄分濃度測定処理を行うときは、エンジンコントロールダイヤル41(エンジン回転数指示装置)からの目標回転数の指示に係わらず、エンジン1の回転数を強制的に排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数となるように固定制御するため、排気ガス温度を排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲に確実に制御して、硫黄分濃度測定処理の効率との測定精度を高めることができる。
【0070】
更に、硫黄分濃度が高い場合はエンジン1を自動停止させることで、オペレータに燃料の交換を強く促し、この点でも排気ガス後処理装置の硫黄被毒を最小限に留めることができる。
〜バリエーション〜
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、上記実施の形態では、キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時の燃料残量と今回のエンジン始動時の燃料残量とを比較して、燃料残量が増えていた場合のみ、硫黄分濃度測定処理を行うようにしたが、通常の運転中(作業中)に常時排気ガス温度を検出し、排気ガス温度が硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にあるときにのみ、硫黄分濃度を測定してもよい。この場合でも、硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に、警報表示装置42を作動させるようにすることで、排気ガス中の硫黄分濃度を正しく測定し、排気ガス後処理装置3硫黄被毒を最小限に抑え、排気ガス後処理装置3の不具合を未然に防止することができる。
【0072】
また、キースイッチ46がONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時の燃料残量と今回のエンジン始動時の燃料残量とを比較して、燃料残量が増えていた場合のみ、硫黄分濃度測定処理を行う代わりに、硫黄分濃度測定処理を指示するスイッチを設け、エンジン始動後にオペレータのスイッチ操作で硫黄分濃度測定処理の開始を指示し、硫黄分濃度測定処理を行ってもよい。
【0073】
更に、上記実施の形態では、警報装置として警報表示装置42を設け、警報表示装置42に警報の内容(現在使用中の燃料は硫黄分濃度の高い燃料であることと、直ちに燃料を交換する必要があること)を表示したが、警報装置としてスピーカを用い、音声で警報の内容を知らせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン
2 油圧システム
3 排気ガス後処理装置
4 エンジン制御システム
21 油圧ポンプ
22 パイロットポンプ
23 アクチュエータ群
24 コントロールバルブ
25 入力操作レバー装置
31 排気管(排気系統)
32a フィルタ
32b 酸化触媒
33 排気温度検出装置
34a,34b 排気圧力検出装置
36 硫黄分濃度検出装置
40 燃料油量検出装置
41 エンジンコントロールダイヤル
42 警報表示装置
43 回転数検出装置
45 電子ガバナ
46 キースイッチ
51 車体制御装置
51a 記憶装置
52 エンジン制御装置
100 下部走行体
101 上部旋回体
102 フロント作業機
103a,103b クローラ式走行装置
104a,104b 左右の走行モータ
105 旋回モータ
106 エンジンルーム
107 キャビン
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
114 ブームシリンダ
115 アームシリンダ
116 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、このエンジンの排気系統に設けられた排気ガス後処理装置と、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプ及びこの油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される少なくとも1つの油圧アクチュエータを含む油圧システムとを備えた油圧作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
エンジンの排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置と、
前記エンジンの排気ガス中の硫黄分濃度を検出する硫黄分濃度検出装置と、
警報装置と、
前記排気温度検出装置の検出値と前記硫黄分濃度検出装置の検出値に基づいて硫黄分濃度測定処理を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記硫黄分濃度測定処理において、前記排気温度検出装置により検出した排気ガス温度が排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の温度範囲にある場合に、前記硫黄分濃度検出装置を用いて前記エンジンの排気ガス中の硫黄分濃度を測定し、この硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合に、前記警報装置を作動させることを特徴とする作業機械のエンジン制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械のエンジン制御システムにおいて、
エンジンを始動させるキースイッチと、
前記エンジンに供給される燃料の残量を検出する燃料油量検出装置とを更に備え、
前記制御装置は、前記キースイッチがONするエンジン始動毎に、前回のエンジン停止時に前記記憶装置に記憶した燃料残量と今回のエンジン始動時に前記燃料油量検出装置が検出した燃料残量とを比較し、燃料残量が増えていた場合のみ、前記硫黄分濃度測定処理を行うことを特徴とする作業機械のエンジン制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の作業機械のエンジン制御システムにおいて、
前記エンジンの目標回転数を指示するエンジン回転数指示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記硫黄分濃度測定処理を行わないときは、前記エンジン回転数指示装置が指示する目標回転数に基づいて前記エンジンの回転数を制御する通常エンジン回転数制御を行い、前記硫黄分濃度測定処理を行うときは、前記エンジン回転数指示装置による目標回転数の指示に係わらず、前記エンジンの回転数を強制的に前記排気ガス中の硫黄分濃度の測定に適した所定の目標回転数となるよう固定制御することを特徴とする作業機械のエンジン制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の作業機械のエンジン制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記硫黄分濃度が予め定めた閾値以上である場合は、予め設定した所定の時間経過後に、前記エンジンを自動停止させることを特徴とする作業機械のエンジン制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36393(P2013−36393A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173290(P2011−173290)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】