説明

作業機械のキャブ

【課題】キャブを床部に着脱可能に取り付ける場合の、キャブと床部の合せ面のシール材の貼付あるいは取り付けを不要にし、かつキャブ内への雨水の浸入を防止できる、作業機械のキャブを提供する。
【解決手段】運転席が設置される床部(20)の上に着脱を可能に載置されるキャブ(12)が、床部(20)の周縁に沿って床部(20)の上面(F)よりも下方に延びるスカート部(S)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席が設置される床部の上に着脱を可能に取り付けられる作業機械のキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
小型のホイールローダのような汎用的に用いられる作業機械は、運転席が設置される床部の上にキャブを着脱可能に取り付けることにより、例えば寒冷な季節にはキャブを取り付け、温暖な季節にはキャブを外し代わりに日除けのキャノピーを取り付け、あるいは作業の形態に合わせてキャブを適宜に着脱することにより、様々な作業を容易に快適に能率よく遂行することができる。さらに、作業機械の製造者は、キャブ付きあるいはキャブなしの顧客の要求に、迅速に容易に応えることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このキャブは、底面が開放されていて、運転席、各種装置、機器などの設置された床部の上にこれらを被う形で載置される。キャブと床部の合せ面には、キャブ内に雨水などが浸入しないようにシール材が貼付あるいは取り付けられている。
【特許文献1】特開2005−59658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおりの形態の従来の作業機械のキャブには、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0005】
すなわち、キャブと床部の合せ面からキャブ内に雨水などが浸入しないようにするためのシール材の貼付は、作業時間を要し面倒な作業である。また、この合せ面に取り付けられる弾性を有したシール材は、キャブを床部に固定するボルトなどの弛みの原因になる。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、キャブを床部に着脱可能に取り付ける場合の、キャブと床部の合せ面のシール材の貼付あるいは取り付けを不要にし、かつキャブ内への雨水の浸入を防止することができる、作業機械のキャブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために本発明によれば、運転席が設置される床部の上に着脱を可能に載置されるキャブが、床部の周縁に沿って床部の上面よりも下方に延びるスカート部を備えている、ことを特徴とする作業機械のキャブが提供される。
【0008】
好適には、スカート部は、キャブの外面を形成するパネルに一体に形成されている。キャブは、該パネルからキャブの内方に延び床部の上に載置される枠体を備え、枠体は、キャブを床部に取り付けるボルトを通すボルト穴を備えている。
【0009】
また、スカート部は、少なくともキャブの左側、前側、そして右側に連続して備えられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って構成された作業機械のキャブは、床部の周縁に沿って床部の上面よりも下方に延びるスカート部を備えている。したがって、キャブと床部の合わせ面はスカート部によって外方に露出されないのでキャブ内への雨水の浸入を防止でき、かつキャブを床部に取り付ける場合の、キャブと床部の合せ面のシール材の貼付あるいは取り付けを不要にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された作業機械のキャブについて、代表的な作業機械であるホイールローダにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0012】
図5を参照して説明する。番号2で示すホイールローダは、左右の前車輪4,4および作業装置6を有した前車体8と、左右の後車輪10,10、キャブ12、ならびにエンジン室14を有した後車体16を備えている。前車体8と後車体16は軸線3を中心に屈折操向を自在に連結されている。
【0013】
図5とともに、キャブ12を取り付けていない状態の後車体16の斜視図である図4を参照して説明する。後車体16の前車体8側(図4の手前側)には、運転席18およびキャブ12が載置される床部であるプラットホーム20が形成されている。運転席18は、プラットホーム20の左右幅方向の中央後方側に設置されている。運転席18の後方にエンジン室14が備えられている。キャブ12はこのプラットホーム20の上に着脱を可能に載置される。
【0014】
プラットホーム20は、運転席18が取り付けられる一段高くなった座席設置部22と、座席設置部22の前方に拡がり、前端側の両側に傾斜部24a、24bを有した矩形の床面部24を備えている。キャブ14を取り付けるための取付穴26が計8個、座席設置部22の左右端部に前後方向に各2個、床面部24の左右の傾斜部24a、24bに沿って各2個備えられている。
【0015】
キャブ12について、外観斜視図である図1および底部を下方から見た図2を参照して説明する。キャブ12は、プラットホーム20に載置される底部が、プラットホーム20の外周よりもやや大きく形成され、6個の側面、左側面12a、前左傾斜部12b、前面12c、前右傾斜部12d、右側面12e、後面12f、天井面12gを備えている。乗降用のドア12hが左側面12aに備えられている。右側面12eにも同様に乗降用のドアが備えられている(図示は省略されている)。
【0016】
キャブ12は、プラットホーム20の周縁に沿って、より詳細には床面部24の左右および前部ならびに座席設置部24の左右の周縁に沿って、プラットホーム20の上面Fよりも下方に延びるスカート部Sを備えている。スカート部Sは、キャブ12の左側面12aの部分から前左傾斜部12b、前面12c、前右傾斜部12dを通って右側面12eに連続している。
【0017】
図2とともに図3を参照して説明する。キャブ12は、左側面12a〜右側面12eを形成するパネルPの内面に、プラットホーム20の上面F上に載置される枠体28を備えている。枠体28は、所定の幅に鋼板により形成され、左側面12a〜右側面12eを形成するパネルPに一体に溶接され、キャブ12の内方に延びている。
【0018】
スカート部Sは、上記キャブ12の左側面12a〜右側面12eを形成するパネルPを下方に延ばして一体に形成されている。プラットホーム20の上面Fから下方に延びる長さLは、枠体28と上面Fの合せ面Mがキャブ12の外方に露出しないように、そしてキャブ12内に雨水が浸入しないように、大きさが決められる。
【0019】
枠体28は、キャブ12をプラットホーム20に取り付けるボルト30を通すボルト穴32を、前記取付穴26(8個)に合わせた位置に備えている。
【0020】
本実施例においては、キャブ12の後面12fとエンジン室14の間には、機体の構成上プラットホーム20の縁部を形成していないので、スカート部Sは備えないで、シール材(図示していない)が取り付けられている。後面12fの部分にプラットホーム20の縁部を形成しスカート部Sを備えてもよい。
【0021】
上述のように構成したキャブ12を床部であるプラットホーム20に取り付けるには、キャブ12をプラットホーム20に被せ、枠体28をプラットホーム20の縁部の上面Fに載せ、枠体28のボルト穴32にボルト30を通し、プラットホーム20に固定する。キャブ12を取り外す場合は、逆の手順で行えばよい。
【0022】
上述したとおりの作業機械のキャブ12の作用効果について説明する。
【0023】
本発明に従って構成された作業機械のキャブ12は、床部であるプラットホーム20の周縁に沿ってプラットホーム20の上面Fよりも下方に延びるスカート部Sを備えている。したがって、キャブ12とプラットホーム20の合わせ面Mはスカート部Sによって外方に露出しないので、キャブ12内への雨水の浸入が防止され、かつキャブ12をプラットホーム20に取り付ける場合の、キャブ12とプラットホーム20の合せ面のシール材の貼付あるいは取り付けを不要にすることができる。
【0024】
スカート部Sは、キャブ12の外面を形成するパネルPに一体に形成されているので、確実にキャブ12内への雨水の浸入を防止できるとともに、作業機械の外観、見栄えを向上させることができる。
【0025】
キャブ12は、キャブ12の側面を形成するパネルPからキャブ12の内方に延び床部であるプラットホーム20の上に載置される枠体28を備えている。したがって、キャブ20は確実にプラットホーム20の上に載置されるとともに、プラットホーム20の上面Fに枠体28の上も含めて敷かれるフロアマット(図示していない)により、より確実にキャブ12の内外を遮断することができる。
【0026】
枠体28は、キャブ12を床部であるプラットホーム20に取り付けるボルト30を通すボルト穴32を備えている。したがって、キャブ12をボルト30の着脱により容易にプラットホーム20に着脱できる。
【0027】
スカート部Sは、少なくとも、キャブ12の左側である左側面12aから、前側である前側面12c、そして右側である右側面12eを通して連続して備えられている。したがって、屈折操向されるホイールローダ2のような作業機械の後車体16に取り付けられるキャブ12に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に従って構成された作業機械のキャブを左前側の下方(図5の矢印C方向)から見た斜視図。
【図2】図1のキャブの底部を矢印Aで示す下方から見た図。
【図3】図1の矢印B−B方向に見てキャブ取付部の代表例を示した断面図。
【図4】キャブが取り外された状態のホイールローダの後車体の斜視図。
【図5】キャブが取り付けられたホイールローダの側面図。
【符号の説明】
【0029】
2:ホイールローダ(作業機械)
12:キャブ
18:運転席
20:プラットホーム(床部)
28:枠体
30:ボルト
32:ボルト穴
F:上面
M:合せ面
P:パネル
S:スカート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席が設置される床部の上に着脱を可能に載置されるキャブが、
床部の周縁に沿って床部の上面よりも下方に延びるスカート部を備えている、
ことを特徴とする作業機械のキャブ。
【請求項2】
スカート部が、
キャブの外面を形成するパネルに一体に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械のキャブ。
【請求項3】
キャブが、
該パネルからキャブの内方に延び床部の上に載置される枠体を備えている、
ことを特徴とする請求項2記載の作業機械のキャブ。
【請求項4】
枠体が、
キャブを床部に取り付けるボルトを通すボルト穴を備えている、
ことを特徴とする請求項3記載の作業機械のキャブ。
【請求項5】
スカート部が、
少なくともキャブの左側、前側、そして右側に連続して備えられている、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の作業機械のキャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−296989(P2007−296989A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127347(P2006−127347)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】