説明

作業機械の空調装置

【課題】左窓及び右窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、また、運転者の頭部に向っての風の吹き出しを抑えることができる作業機械の空調装置の提供。
【解決手段】運転室7の天井窓13に沿って風を吹き出す天井用吹き出し口16と、運転室7に配置される運転席8に運転者30が座ったときの左側に位置する左窓14に沿って風18を吹き出す左側吹き出し口19と、運転席8に運転者30が座ったときの右側に位置する右窓に沿って風を吹き出す右側吹き出し口21とを設け、天井用吹き出し口16と左側吹き出し口19と右側吹き出し口21のそれぞれから吹き出される風15,18等によって、運転席8を囲むエアカーテンを形成するようにした。左側吹き出し口19は運転席8の左後方に位置する左後方ピラー17に設けてあり、右側吹き出し口21は運転席8の右後方に位置する右後方ピラー20に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に備えられる運転室内を空調する作業機械の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、建設機械あるいは農業機械の運転室の空調として適用されるものであり、運転室の天井部付近に、右後方ピラー及び左後方ピラーに沿ってそれぞれ延設される第1ピラーダクト及び第2ピラーダクトによって導かれる風を合流させる略三角形状の天井ダクトを備えた構成になっている。この天井ダクトは、運転室内に配置された運転席に座った運転者の頭部を含む全身に向って風の吹き出しが可能なように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−30738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は、運転席に運転者が座ったときの左側に位置する左窓からの日射量に基づく熱量すなわち熱負荷、及び運転席に運転者が座ったときの右側に位置する右窓からの日射量に基づく熱負荷については考慮がなされていない。したがって、左窓及び右窓からの日射量に基づく熱負荷による空調精度の低下が考えられ、運転室内の十分な空調を実現させることができない虞がある。また、天井ダクトから吹き出された風が運転者の頭部に放射されることから、運転者に不快感を与える虞もある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、左窓及び右窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、また、運転者の頭部に向っての風の吹き出しを抑えることができる作業機械の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る作業機械の空調装置は、作業機械の運転室内を空調する作業機械の空調装置において、上記運転室の天井窓に沿って風を吹き出す天井用吹き出し口と、上記運転室に配置される運転席に運転者が座ったときの左側に位置する左窓に沿って風を吹き出す左側吹き出し口と、上記運転席に運転者が座ったときの右側に位置する右窓に沿って風を吹き出す右側吹き出し口とを設け、上記天井用吹き出し口と上記左側吹き出し口と上記右側吹き出し口のそれぞれから吹き出される風によって、上記運転席を囲むエアカーテンを形成することを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明は、天井用吹き出し口から吹き出させた風によるエアカーテンによって天井窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、また、左側吹き出し口から吹き出された風によるエアカーテンによって運転室の左窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、また、右側吹き出し口から吹き出された風によるエアカーテンによって運転室の右窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができる。また、天井用吹き出し口、左側吹き出し口、右側吹き出し口のそれぞれから吹き出された風は、天井窓、左窓、右窓のそれぞれに沿うように流れる風であることから、運転席に座った運転者の頭部に直接に当たることが少なくなる。すなわち、運転者の頭部に向っての風の吹き出しを抑えることができる。
【0008】
また、本発明に係る作業機械の空調装置は、上記発明において、上記天井用吹き出し口を、上記運転席の後方に位置するリアカバーに設けるとともに、この天井用吹き出し口を、上記運転席の後方に位置する後窓に沿うように風を吹き出させ、その風が天井窓に沿って流れることが可能なように配置したことを特徴としている。このように構成した本発明は、天井用吹き出し口から吹き出させた風によって後窓を覆うエアカーテンを形成させることができる。これにより、後窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができる。
【0009】
また、本発明に係る作業機械の空調装置は、上記発明において、上記左側吹き出し口を上記運転席の左後方に位置する左後方ピラーに設け、上記右側吹き出し口を上記運転席の右後方に位置する右後方ピラーに設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、左窓に沿う風の流れ、及び右窓に沿う風の流れを容易に形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る作業機械の空調装置は、上記発明において、上記左側吹き出し口及び上記右側吹き出し口を、上記運転席の上部に設けられるヘッドレストに対向する左窓部分及び右窓部分に風を吹き出すことが可能な高さ位置に設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、運転席に運転者が座った際に運転者の頭部が位置するヘッドレストの高さ位置に対応する左窓部分及び右窓部分に、左側吹き出し口及び右側吹き出し口から吹き出された風が流れることから、運転席に座った運転者の頭部に対する日射量に基づく熱負荷を遮断することができる。
【0011】
また、本発明に係る作業機械の空調装置は、上記発明において、上記運転室の前窓付近に設けられ、上記運転席方向に風を吹き出す前側吹き出し口と、上記運転席の下方付近に風を吹き出す足元吹き出し口とを備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、運転席を囲むように形成されたエアカーテン内に前側吹き出し口から吹き出された風を放射することによって、運転席付近を効率良く空調することができる。また、足元吹き出し口から吹き出される風によって運転席に座った運転者の足元を確実に空調することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、運転室の天井窓に沿って風を吹き出す天井用吹き出し口と、運転室に配置される運転席に運転者が座ったときの左側に位置する左窓に沿って風を吹き出す左側吹き出し口と、運転席に運転者が座ったときの右側に位置する右窓に沿って風を吹き出す右側吹き出し口とを設け、天井用吹き出し口と左側吹き出し口と右側吹き出し口のそれぞれから吹き出される風によって、運転席を囲むエアカーテンを形成することから、左窓及び右窓からの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、これによって日射量による影響を抑えることができ、従来に比べて精度の高い空調を実現させることができる。また、た、運転者の頭部に向っての風の吹き出しを抑えることができ、これによって従来におけるような吹き出し口から吹き出される風による運転者の不快感を除くことができ、快適な運転環境を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る空調装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルに備えられる本実施形態に係る空調装置を模式的に示す側面図である。
【図3】図2に示す運転席から後方に向って見たときの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る空調装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【0016】
この図1に示す油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に設けられるフロント作業機3とを備えている。フロント作業機3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられるバケット6とを含んでいる。旋回体2上には、本実施形態に係る空調装置が備えられる運転室7が配置されている。
【0017】
図2は図1に示す油圧ショベルに備えられる本実施形態に係る空調装置を模式的に示す側面図、図3は図2に示す運転席から後方に向って見たときの要部拡大図である。
【0018】
これらの図2,3に示すように、本実施形態に係る空調装置は、運転室7の天井窓13に沿って風15を吹き出す天井用吹き出し口16と、運転室7に配置される運転席8に運転者30が座ったときの左側に位置する左窓14に沿って風18を吹き出す左側吹き出し口19と、運転席8に運転者30が座ったときの右側に位置する右窓に沿って風を吹き出す右側吹き出し口21とを設け、天井用吹き出し口16と左側吹き出し口19と右側吹き出し口21のそれぞれから吹き出される風15,18等によって、運転席8を囲むエアカーテンを形成するようになっている。
【0019】
天井用吹き出し口16は、例えば運転席8の後方に位置するリアカバー10に設けるとともに、この天井用吹き出し口16を、運転席8の後方に位置する後窓12に沿うように風15を吹き出させ、その風15が天井窓13に沿って流れることが可能なように配置してある。
【0020】
図3に示すように、左側吹き出し口19は、例えば運転席8の左後方に位置する左後方ピラー17に設けてあり、例えば右側吹き出し口21は、運転席8の右後方に位置する右後方ピラー20に設けてある。
【0021】
また、上述した左側吹き出し口19及び右側吹き出し口21は、運転席8の上部に設けられるヘッドレスト9に対向する左窓14部分及び右窓部分に風18等を吹き出すことが可能な高さ位置に設けてある。
【0022】
さらに、本実施形態は図2に示すように、運転室7の前窓11付近に設けられ、運転席8に座った運転者30の例えば頭部より下方の身体部分に向って、すなわち、左側吹き出し口19及び右側吹き出し口21から吹き出される風18等にぶつかり合わないように、風22を吹き出す前側吹き出し口23を設けてある。また、この前側吹き出し口23の例えば下側位置に、運転席8の下方付近に向って、すなわち運転席8に座った運転者30の足元付近に向って、風24を吹き出す足元吹き出し口25を設けてある。
【0023】
このように構成した本実施形態は、例えば日射量が多い高温作業環境下にあっては、天井用吹き出し口16、左側吹き出し口19、及び右側吹き出し口21のそれぞれから、例えば冷風となる風15,18等を吹き出させることが行われる。また、例えば同時に、前側吹き出し口22から冷風からなる風22を吹き出させることが行われる。
【0024】
これにより、後窓12及び天井窓13は、冷風である風15によるエアカーテンで覆われ、左窓14及び右窓は、冷風である風18等によるエアカーテンで覆われる。すなわち運転席8に座った運転者30の周囲が冷風のエアカーテンで囲われる。このように、運転者30の周囲に冷風のエアカーテンが形成されることによって、天井窓13、左窓14、及び右窓それぞれからの日射量に基づく熱負荷を遮断することができ、これによって日射量による影響を抑えることができ、精度の高い空調を実現させることができる。また、運転席8に座った運転者30の頭部に向っての風の吹き出しを抑えることができ、これによって吹き出し口から吹き出される風による運転者30の不快感を除くことができ、快適な運転環境を実現させることができる。
【0025】
また、天井吹き出し口16から吹き出させた冷風からなる風15によって後窓12を覆うエアカーテンを形成させることができるので、後窓12からの日射量に基づく熱負荷も遮断することができ、精度の高い空調の実現に貢献する。
【0026】
また、左後方ピラー17に左側吹き出し口19を設け、右後方ピラー20に右側吹き出し口21を設けるようにしたことから、左窓14に沿う風の流れ、及び右窓に沿う風の流れを容易に形成することができ、実用性に富む。
【0027】
また、運転席8に運転者30が座った際に運転者30の頭部が位置するヘッドレスト9の高さ位置に対応する左窓14部分及び右窓部分に、左側吹き出し口19及び右側吹き出し口21から吹き出された冷風からなる風18等が流れることから、運転席8に座った運転者30の頭部に対する日射量に基づく熱負荷も遮断することができる。この点でも運転席8に座った運転者30に対する不快感を除くことができる。
【0028】
また、運転席8を囲むように形成されたエアカーテン内に前側吹き出し口23から吹き出された冷風からなる風22を放射することによって、運転席8付近を効率良く空調することができ、運転席8に座った運転者30の快適な運転環境の実現に貢献する。
【0029】
なお、低温の作業環境下にあって、運転室7内を暖房しようとする場合には、上述とは異なり天井用吹き出し口16、左側吹き出し口19、及び右側吹き出し口21のそれぞれから、例えば温風となる風15,18等を吹き出させることが行われる。また、例えば同時に、前側吹き出し口22から温風からなる風22を吹き出させ、足元吹き出し口25からも温風からなる風24を吹き出させることが行われる。
【0030】
これにより、後窓12及び天井窓13は、温風である風15によるエアカーテンで覆われ、左窓14及び右窓は、温風である風18等によるエアカーテンで覆われる。すなわち運転席8に座った運転者30の周囲が温風のエアカーテンで囲われる。このように、運転者30の周囲に温風のエアカーテンが形成されることによって、天井窓13、左窓14、及び右窓それぞれを伝わって運転室7内の暖気が運転室7の外部に逃げることを防止でき、運転室7内を高精度に空調することができる。また、足元吹き出し口25から吹き出された温風からなる風24によって、運転席8に座った運転者30の足元を暖めることができる。このように運転者30の足元を暖めた温風は、運転者30の周囲を囲む温風からなるエアカーテン内において上昇し、運転席8に座った運転者を暖めることに貢献する。これらによって、低温の作業環境下にあっても、快適な運転環境を実現させることができる。
【符号の説明】
【0031】
7 運転室
8 運転席
9 ヘッドレスト
10 リアカバー
11 前窓
12 後窓
13 天井窓
14 左窓
15 風
16 天井用吹出し口
17 左後方ピラー
18 風
19 左側吹出し口
20 右後方ピラー
21 右側吹出し口
22 風
23 前側吹出し口
24 風
25 足元吹出し口
30 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の運転室内を空調する作業機械の空調装置において、
上記運転室の天井窓に沿って風を吹き出す天井用吹き出し口と、上記運転室に配置される運転席に運転者が座ったときの左側に位置する左窓に沿って風を吹き出す左側吹き出し口と、上記運転席に運転者が座ったときの右側に位置する右窓に沿って風を吹き出す右側吹き出し口とを設け、
上記天井用吹き出し口と上記左側吹き出し口と上記右側吹き出し口のそれぞれから吹き出される風によって、上記運転席を囲むエアカーテンを形成することを特徴とする作業機械の空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の空調装置において、
上記天井用吹き出し口を、上記運転席の後方に位置するリアカバーに設けるとともに、この天井用吹き出し口を、上記運転席の後方に位置する後窓に沿うように風を吹き出させ、その風が天井窓に沿って流れることが可能なように配置したことを特徴とする作業機械の空調装置。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械の空調装置において、
上記左側吹き出し口を上記運転席の左後方に位置する左後方ピラーに設け、上記右側吹き出し口を上記運転席の右後方に位置する右後方ピラーに設けたことを特徴とする作業機械の空調装置。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械の空調装置において、
上記左側吹き出し口及び上記右側吹き出し口を、上記運転席の上部に設けられるヘッドレストに対向する左窓部分及び右窓部分に風を吹き出すことが可能な高さ位置に設けたことを特徴とする作業機械の空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の作業機械の空調装置において、
上記運転室の前窓付近に設けられ、上記運転席方向に風を吹き出す前側吹き出し口と、上記運転席の下方付近に風を吹き出す足元吹き出し口とを備えたことを特徴とする作業機械の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195196(P2010−195196A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42434(P2009−42434)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】