説明

作業機械の表示システム

【課題】作業機械の表示システムにおいて、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示し、かつ効率よく表示する。
【解決手段】表示制御装置53の第1警告表示機能53bは、チャージ警告にかかる異常情報信号を入力し、対応する警告アイコン34aを、警告アイコン表示領域42に表示する。基本情報簡易表示機能53eは、基本情報画像31,32に替えて基本情報簡易画像35,36を表示し、基本情報表示領域41のうち基本情報簡易画像表示領域外には、空き領域44が発生する。第2警告表示機能53fは、警告アイコン34aの表示内容「チャージ警告」と簡単な対処方法に係る文字情報(第2警告表示37)を、空き領域44に表示する。オペレータは、警告アイコン34aに加えて第2警告表示37をみることで、「チャージ警告」について確実に認識し、その内容についても理解できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の運転室に配置されて、オペレータに各種の情報を認識させるための作業機械の表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例である油圧ショベルの運転室には、オペレータが油圧ショベルの車体状態の基本情報を確認できるように各種の計器類が設けられる。このような計器類としては、例えば、冷却水の水温計、作動油の油温計、燃料の残量計、エンジンの回転数計等がある。また、その他にも、油圧ショベルを稼動している時間を示すアワーメータ、ゲートロックレバーの切換位置情報等も適宜表示される。
【0003】
近年、上記のような計器類の情報を含む油圧ショベルに関する各種情報は、液晶ディスプレイ等のモニタに一括して表示するようになってきている。このようなモニタには、通常時(正常時)には、冷却水の温度、燃料の残量などの車体状態の基本情報が表示されているが、例えば油圧ショベルに異常が発生した場合には、異常発生やその内容、対処方法などの警告情報を表示してオペレータに通知しなくてはならない。
【0004】
更に、運転室内で機械の操作を行うオペレータにとって後方の視野が十分に得られないことから、油圧ショベルの後方位置に監視用のカメラを装着して、このカメラ画像をモニタに表示する場合もある。これにより、後方における補助的な視野を確保でき、安全な作業を可能とする。
【0005】
ところで、このようなモニタは、オペレータの視界確保の観点から出来るだけコンパクトであることが好ましく、また、近年は油圧ショベルの多機能化に伴って表示される情報も増加傾向にあり、したがって、より多くの情報を限られた表示領域で効率良く表示する必要がある。
【0006】
つまり、基本情報は常時表示する必要がある一方で、警告情報は通常時は不要であるが、異常時はオペレータが確実に認識できるように表示する必要があり、かつ切換表示を効率よく行う必要がある。
【0007】
通常時には基本情報を表示し、異常時には警告情報を表示する従来技術として、特許文献1には2つの技術が開示されている。第1従来技術は、異常時に警告アイコンを点灯させるとともに、警告アイコンの内容にかかる文字情報を切換表示する。第2従来技術は、異常時に基本情報に重ね合わせて、警告アイコンの内容にかかる文字情報を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3293762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1従来技術における警告アイコンは、小さな表示領域で、オペレータが直感的に認識できるように表示できる点で有効であるが、オペレータは、警告アイコンを見ただけでは、その警告アイコンが何を意味しているのか、すなわち警告アイコンの内容を理解できるとは限らない。したがって、警告アイコンの内容にかかる文字情報を切換表示する必要がある。
【0010】
しかし、自動切換表示の場合、オペレータの意図に反する自動切換がなされると、オペレータは必要な基本情報を確認できず、作業に支障をきたす可能性があり好ましくない。また、手動切換表示の場合、作業中にオペレータに切換操作を強いることになり、オペレータの集中力低下を招く可能性があり好ましくない。
【0011】
第2従来技術のように、基本情報に警告情報(警告内容)を重ね合わせて表示すれば、基本情報は常時表示され、オペレータは基本情報を確認できるとともに、警告内容も理解できる。しかし、重ね合わせ領域の画質が多少低下し、オペレータは基本情報を確認しづらいと言う課題がある。
【0012】
本願発明の目的は、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示し、かつ効率よく表示することができる作業機械の表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、作業機械の基本情報に係る画像を表示する基本情報表示領域と警告アイコンを表示する警告アイコン表示領域を有するモニタと、基本情報に係る画像を表示する基本情報表示機能と警告アイコンを表示する第1警告表示機能とを有する表示制御装置とを備えた作業機械の表示システムにおいて、前記表示制御装置は、所定信号に基づいて、前記基本情報画像に替えて、基本情報画像より小さい基本情報簡易画像を再表示する基本情報簡易表示機能と、前記基本情報表示領域のうち基本情報簡易画像が表示された領域以外の領域に、警告アイコンの表示内容を含む警告情報を表示する第2警告表示機能とを更に有する。
【0014】
(2)上記(1)において、好ましくは、作業機械の異常を検出する異常検出手段を更に備え、前記所定信号は異常検出手段から得られる異常検出信号である。
【0015】
警告アイコンは、小さな表示領域で、オペレータが直感的に認識できるように表示できる点で有効であるが、オペレータは、警告アイコンを見ただけでは、その警告アイコンが何を意味しているのか、すなわち警告アイコンの内容を理解できるとは限らない。したがって、警告アイコンの内容にかかる文字情報を表示する必要がある。従来技術において、自動切換表示、手動切替表示、重ね合わせ表示が開示されているが、いずれも、基本情報が確認できない、操作が煩わしい、基本情報が確認しづらいという課題があった。
【0016】
本発明のように、基本情報簡易表示機能が、基本情報簡易画像が表示し、第2警告表示機能が、基本情報表示領域のうち基本情報簡易画像が表示された領域以外の領域(空き領域)に、警告アイコンの表示内容を含む警告情報を表示することにより、オペレータは、警告情報をみることで、警告情報について確実に認識し、その表示内容についても理解できる。
【0017】
このとき、基本情報が確認できない、操作が煩わしい、基本情報が確認しづらいという不具合は生じない。これにより、表示システムは、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示できる。
【0018】
また、第2警告表示機能が、空き領域に、警告情報を表示することにより、限られた表示領域に多くの情報を効率よく表示できる。
【0019】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記異常検出信号にかかる異常の重要度を判定する重要度判定手段を備え、前記基本情報簡易表示機能と前記第2警告表示機能とは、前記異常検出信号にかかる異常が重度である場合に作動する。
【0020】
これにより、異常が軽度である場合には、基本情報簡易表示機能と第2警告表示機能とは作動せず、基本情報画像の表示が継続し、表示切換の煩わしさを回避できる。
【0021】
(4)上記(1)において、好ましくは、作業機械周辺を撮影するカメラを更に備え、前記モニタは、カメラから得られるカメラ画像を表示するカメラ画像表示領域を更に有し、表示制御装置は、カメラ画像表示機能を更に有する。
【0022】
(5)上記(4)において、好ましくは、作業機械の不操作状態を検出する不操作状態検出手段を更に備え、前記表示制御装置は、前記不操作状態検出手段から得られる不操作状態検出信号に基づいて、前記カメラ画像表示領域に、前記警告情報に関連する情報を表示する第3警告表示機能を有する。
【0023】
不操作状態を検出することで、カメラ画像を消去しても安全を確保できる。したがって、第3警告表示機能は、カメラ画像表示領域に、警告情報に関連する情報を表示することができる。オペレータは、関連情報をみることで、警告情報についてより確実に認識できる。
【0024】
また、第3警告表示機能が、カメラ画像表示領域に、関連情報を表示することにより、限られた表示領域に多くの情報を効率よく表示できる。
【0025】
(6)上記(1)において、好ましくは、前記警告アイコン表示領域は複数の警告アイコンを表示可能であり、前記第1警告表示機能は、重要度に応じて複数の警告アイコンを並べて表示する。
【0026】
(7)上記(6)において、好ましくは、回転により警告アイコンを選択し、押下により選択した警告アイコンを決定するロータリースイッチを更に備え、前記第2警告表示機能は、前記ロータリースイッチにより決定した警告アイコンの表示内容を含む警告情報を表示する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示し、かつ効率よく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】油圧ショベルの外観を示す図である。
【図2】油圧ショベルの運転室の内部を概略的に示す図である。
【図3】表示システムを含む油圧ショベルの全体システム構成を概略的に示す図である。
【図4】制御装置の機能ブロックを示す図である。
【図5】通常時の表示画面の一例である。
【図6】異常時の表示画面の一例である(第1例)。
【図7】異常時の表示画面の一例である(第2例)。
【図8】異常時の表示画面の一例である(第3例)。
【図9】異常時の表示画面の一例である(第4例)。
【図10】制御装置の機能ブロックを示す図である(変形例)。
【図11】異常時の表示画面の一例である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
〜構成〜
図1は、本発明の一実施の形態に係る作業機械の一例として示す油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1と、下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2と、掘削作業手段などを備えるフロント作業機3とから概略構成されている。
【0031】
下部走行体1には左右の走行モータ(図示せず)が配置され、この走行モータによりクローラが回転駆動され、前方又は後方に走行する。上部旋回体2には、油圧ショベルの操作装置等が配置された運転室4(後の図2参照)、エンジン等の原動機(図示せず)、及び旋回モータ(図示せず)などが備えられており、この旋回モータにより上部旋回体2が下部走行体1に対して右方向又は左方向に旋回される。フロント作業機3は、ブーム3a、アーム3b及びバケット3cから構成されており、ブーム3aはブームシリンダ3dにより上下動され、アーム3bはアームシリンダ3eによりダンプ側(開く側)又はクラウド側(掻き込む側)に操作され、バケット3cはバケットシリンダ3fによりダンプ側又はクラウド側に操作される。
【0032】
また、この油圧ショベルには、オペレータの死角となる領域をなくし安全で効率的な作動を可能にするために、後方監視用のカメラ10がカウンタウエイトに取り付けられて設置されている。
【0033】
図2は、油圧ショベルの運転室(キャブ)4の内部を概略的に示す図である。運転室4の内部には、オペレータが着席する運転席5が設けられており、その周囲には、油圧ショベル(建設機械)に関する計器類などの各種情報を表示するモニタ6や、下部走行体1による走行、上部旋回体2による旋回、フロント作業機3による土砂の掘削等といった作業を行うための操作レバーなどの操作装置7などが設けられている。
【0034】
モニタ6は、例えば、液晶画面で構成されており、通常時(正常時)は、冷却水の水温計31や燃料の残量計32といった車体状態の基本情報とカメラ画像33を表示する(図5参照)。モニタ6は、モニタ表示部6aとモニタ操作部6bとから構成される(図3参照)。
【0035】
運転席5の前側の左側部(キャブ4の入り口側)にゲートロックレバー8が設けられている。ゲートロックレバー8は運転席5の入り口を制限する下げ位置と運転席5の入り口を開放する上げ位置とに選択的に操作される。
【0036】
図3は表示システムと伴にエンジンシステム、油圧駆動システム、操作パイロットシステムを含む油圧ショベルの全体システム構成を概略的に示す図である。
【0037】
油圧ショベルは、エンジン11により油圧ポンプ15を回転駆動し、油圧ポンプ15から吐出される圧油によりアームシリンダ3e等の油圧アクチュエータ17を駆動し、掘削など必要な作業を行う。
【0038】
エンジンシステムは、エンジン11と燃料噴射装置12を有する。制御装置50は、エンジン11の実回転数が目標回転数となるように燃料噴射装置12を制御し、エンジン11の回転数と出力トルクを制御する。
【0039】
更にエンジン11の排気管にはDPF装置13が設けられている。DPF装置13は、エンジン11から排出される粒子状物質を捕集する。エンジン11とDPF装置13との間に設けられた再生用燃料噴射装置14が設けられている。再生用燃料噴射装置14は燃料を噴射して排気ガスを昇温させ、DPF装置13のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する。制御装置50はこれらの再生制御をおこなう。
【0040】
油圧駆動システムは、油圧ポンプ15と制御弁16と油圧アクチュエータ17とを有する。油圧ポンプ15はエンジン11により回転駆動されて圧油を吐出する。制御弁16はこの圧油の方向と流量を制御し、圧油を油圧アクチュエータ17に供給する。これにより油圧アクチュエータ17は駆動される。
【0041】
操作パイロットシステムは、パイロットポンプ18と操作装置7と切換弁19とシャトル弁20と圧力センサ22を有する。パイロットポンプ18はエンジン11により回転駆動されてパイロット1次圧を発生させる。操作装置7は、その操作方向と操作量に基づきパイロット操作圧PL1,PL2を発生させる。パイロット操作圧PL1,PL2は制御弁16に付与され、これにより制御弁16は切換わる。切換弁19はパイロットライン上に設けられ、ゲートロックレバー8(図1)の上げ位置、下げ位置に基づいてON/OFF制御され、パイロット操作圧の発生を可能とし、またパイロット1次圧を遮断する。シャトル弁20は複数のパイロット操作圧のうち最高圧力を抽出して出力する。圧力センサ22はシャトル弁20の出力ポートに接続され、シャトル弁20の出力圧である最高圧力を検出することにより操作の有無を検出する。
【0042】
表示システムは、各制御システムの情報を適宜、表示信号としてモニタ6に送り、これらの情報をモニタ表示部6aに表示する。また表示システムは、モニタ操作部6bを介してオペレータの指令を制御装置50に入力し、GUI(グラフィックユーザーインターフェイス)として機能する。モニタ操作部6bは例えばロータリースイッチで有り、回転操作する回転式スイッチとしての機能と押下によりON/OFFを切換えるボタン式スイッチとしての機能の両方の機能を有する。
【0043】
各システムは制御装置50により制御される。
【0044】
〜制御〜
図4は制御装置50の機能ブロックを示す図である。制御装置50は、車体制御装置51と、エンジン制御装置52と、表示制御装置53とを有し、これら制御装置51〜53は通信ライン54を介して相互に接続され、車体ネットワークを構成している。
【0045】
車体制御装置51は油圧駆動システムの制御をおこなう。DPF装置13に設けられた差圧センサ21などの各種センサ24の信号を入力し、この信号に基づいて所定の演算処理をおこなう。例えば、操作装置7の操作方向と操作量を検出し、その操作方向と操作量に応じた流量を吐出するように油圧ポンプ15の傾転角(容量)を制御する(図3参照)。また、ゲートロックレバー8に設けられた位置センサの検出信号に基づき、下げ位置を検出して切換弁19を連通位置に切換え操作装置7の操作を可能(ロック解除)にし、上げ位置を検出して切換弁19を遮断位置に切換え操作装置7の操作を不能(ロック)にする。更に、車体制御装置51は異常判定機能51aを有し、異常判定機能51aはセンサ24からの情報に基づいて異常が発生しているかどうかを判定する。異常判定機能51aは、予め設定されたテーブルに基づいてその異常情報の重要度も判定する。車体制御装置51は、不操作状態検出機能51bを有し、ゲートロックレバー8に設けられた位置センサの検出信号に基づきロック状態であるか、または、圧力センサ22の圧力信号が一定時間検出されないと、不操作状態と判定する。
【0046】
エンジン制御装置52は車体制御装置51の指令やエンジン回転数センサ(図示省略)などの各種センサ25の信号に基づきエンジンシステムの制御をおこなう。エンジン制御装置52は、異常判定機能52aを有し、異常判定機能52aはセンサ25からの情報に基づいて異常が発生しているかどうかを判定する。異常判定機能52aは、予め設定されたテーブルに基づいてその異常情報の重要度も判定する。
【0047】
表示制御装置53は、各種センサ24,25からの各種信号や車体制御装置51,エンジン制御装置52の演算処理結果を通信ライン54を介して受信し、表示信号としてモニタ6に送り、それら情報をモニタ表示部6aに表示する。
【0048】
表示制御装置53の機能の詳細について説明する。表示制御装置53は、基本情報表示機能53a、第1警告表示機能53b、カメラ画像表示機能53c、メニュー項目表示機能53dに加え、特徴的な構成として、基本情報簡易表示機能53e、第2警告表示機能53f、第3警告表示機能53gを有し、各機能は後述する表示制御をおこなう。
【0049】
基本情報表示機能53aは、センサ24,25からの各種信号を入力し、冷却水の水温計31や燃料の残量計32の基本情報に係る画像を基本情報表示領域41に表示する(図5参照)。基本情報画像31,32は、オペレータが見やすく認識しやすいように、大きな円グラフにて表示される。
【0050】
第1警告表示機能53bは、通信ライン54を介して異常判定機能51aまたは異常判定機能52aからの異常情報信号を入力し、入力された異常情報に対応する警告アイコン34を、警告アイコン表示領域42に表示する(図6〜9参照)。第1警告表示機能は、複数の警告アイコンを並べて表示できる。
【0051】
カメラ画像表示機能53cは、カメラ10から得られるカメラ画像に係る画像信号を入力し、カメラ画像33をカメラ画像領域43に表示する(図5参照)。
【0052】
メニュー項目表示機能53dは、モニタ操作部6bを介して入力されたオペレータの切換指令に基づき、基本情報表示領域41と警告アイコン表示領域42とカメラ画像領域43とを含む全領域45に、メニュー項目画面を表示する。更に、メニュー項目画面において、モニタ操作部6bを介して入力されたオペレータの選択指令に基づき、選択項目に係る画面を表示する。詳細については省略する。
【0053】
基本情報簡易表示機能53eは、異常情報信号が入力されると、基本情報画像31,32に替えて、基本情報簡易画像35,36を表示する(図6,7,9参照)。基本情報簡易画像35は水温計31の簡易画像であり、基本情報簡易画像36は残量計32の簡易画像である。基本情報簡易画像35,36は、基本情報画像31,32より小さく、かつ、小さくしても基本情報を認識しやすいように基本情報画像31,32とは異なる表示形式に変更され表示される。たとえば、棒グラフ形式で基本情報表示領域41の右部に表示される。
【0054】
第2警告表示機能53fは、異常情報信号が入力されると、警告アイコン34の表示内容と異常情報に対する簡単な対処方法に係る文字情報である第2警告表示37を、基本情報表示領域41のうち基本情報簡易画像35,36が表示された領域以外の空き領域44に表示する(図6,7,9参照)。
【0055】
第3警告表示機能53gは、通信ライン54を介して不操作状態検出機能51bからの不操作状態検出信号を入力し、カメラ画像33を消去し、異常情報のより詳細な情報、対象部品の部品番号、緊急連絡先など異常情報に関連する情報である第3警告表示38をカメラ画像領域43に表示する(図7参照)。
【0056】
〜動作〜
表示システムの動作を表示画面(図5〜9)を用いて説明する。
【0057】
図5は通常時の表示画面の一例である。
【0058】
通常時、モニタ6のモニタ表示部6aの基本情報表示領域41には、油圧ショベルの車体状態の基本情報に係る画像である冷却水の水温計31や燃料の残量計32が表示され、カメラ画像領域43には、カメラ10から得られるカメラ画像33が表示されている。一方、警告アイコン表示領域42には、何も表示されていない。
【0059】
オペレータは、水温計31や残量計32を見ながら車体状態を確認し、カメラ画像33aを見ながら周囲の安全を確認し、掘削等の作業を行う。一方、何れの警告アイコン34も表示されてないことで、異常がないことを確認する。
【0060】
図6は異常時の表示画面の第1例であり、チャージ警告を表示している。
【0061】
油圧ショベルは電気系統を有している。たとえば、エンジン11はバッテリにより通電されたスタータが駆動することにより起動する。バッテリの電圧が規定値以下であると、スタータが駆動せず、エンジン11を起動できない。
【0062】
エンジン制御装置52はセンサ25から信号を入力し、エンジン制御装置52の異常判定機能52aはこの入力信号に基づいて異常が発生しているかどうかを判定し、異常発生と判定すると、通信ライン54を介して表示制御装置53に異常情報信号を出力する。
【0063】
表示制御装置53の第1警告表示機能53bは、チャージ警告にかかる異常情報信号を入力し、対応する警告アイコン34aを、警告アイコン表示領域42に表示する。基本情報簡易表示機能53eは、基本情報画像31,32に替えて基本情報簡易画像35,36を表示し、基本情報表示領域41のうち基本情報簡易画像35,36が表示される領域外には、空き領域44が発生する。第2警告表示機能53fは、警告アイコン34aの表示内容「チャージ警告」と簡単な対処方法に係る文字情報(第2警告表示37)を、空き領域44に表示する。なお、カメラ画像33の表示は継続する。このように、表示制御装置53は限られた表示領域に多くの情報を効率よく表示できる。
【0064】
オペレータは、警告アイコン34aに加えて第2警告表示37をみることで、「チャージ警告」について確実に認識し、その内容についても理解できる。このとき、自動切換により基本情報を確認できなくなることや、手動切換操作に伴う煩わしさといった不具合は生じない。また重ね合わせ表示により基本情報を確認しづらいという不具合もない。
【0065】
オペレータは、簡易水温計35や簡易残量計36を見ながら車体状態を確認し、カメラ画像33を見ながら周囲の安全を確認しながら、オルタネータやバッテリなどの電気系統を点検するため、他の作業に支障の出ないところまで油圧ショベルを移動する。
【0066】
図7は異常時の表示画面の第2例であり、DPF再生禁止警告を表示している。
【0067】
DPF装置13にはフィルタが設けられ、フィルタは粒子状物質を捕集する。油圧ショベルの長期間の使用によりフィルタの目詰まりが発生する。自動再生制御が適切におこなわれたり、オペレータが手動再生を適切におこなえば、粒子状物質は燃焼除去され、フィルタの目詰まりは解消する。しかし、適切な再生がおこなわれなければ、粒子状物質は堆積し続け、フィルタはそれ以上の粒子状物質を捕集できなくなる。この状態で再生を行うと異常燃焼によるフィルタの溶損が発生する可能性がある。したがって、車体制御装置51は、粒子状物質の堆積量が限界値を超えると、再生禁止と判断し、再生制御を停止するとともに、通信ライン54を介して表示制御装置53に異常情報信号を出力する。
【0068】
表示制御装置53の第1警告表示機能53bは、再生禁止警告にかかる異常情報信号を入力し、対応する警告アイコン34bを、警告アイコン表示領域42に表示する。基本情報簡易表示機能53eは、基本情報画像31,32に替えて基本情報簡易画像35,36を表示し、基本情報表示領域41のうち基本情報簡易画像35,36が表示される領域外には、空き領域44が発生する。第2警告表示機能53fは、警告アイコン34bの表示内容「DPF再生禁止警告」と簡単な対処方法に係る文字情報(第2警告表示37)を、空き領域44に表示する。
【0069】
一方、DPF装置13が粒子状物質を捕集できなければ、エンジン11から粒子状物質がそのまま排出されるため、油圧ショベルは実質的にこれ以上作業できない。すなわち油圧ショベルは不操作状態になる。
【0070】
不操作状態検出機能51bは、ゲートロックレバー8に設けられた位置センサの検出信号に基づきロック状態であるか、または、操作パイロットシステムの圧力センサ22の圧力信号が一定時間検出されていないとして、不操作状態を検出する。第3警告表示機能53gは、通信ライン54を介して不操作状態検出機能51bからの不操作状態検出信号を入力し、カメラ画像33を消去し、DPF再生禁止警告のより詳細な情報、フィルタの部品番号、緊急連絡先など異常情報に関連する情報(第3警告表示38)をカメラ画像領域43に表示する。
【0071】
第2警告表示37は空き領域44に表示されるが、更なる情報を追加表示するほうが好ましい場合もある。例えば、オペレータはDPF再生禁止の原因や現況を確認したい場合もある。また、フィルタ交換のより具体的な方法を確認したい。しかし、空き領域44では充分に表示できない場合もある。第3警告表示38がカメラ画像領域43に表示され、オペレータは第3警告表示38を見ることで、DPF再生禁止の原因、現況、より具体的な対処方法について確実に認識できる。
【0072】
オペレータは、ただちに、第3警告表示38の緊急連絡先に、フィルタの部品番号を伝え、フィルタの交換を依頼する。
【0073】
なお、カメラ画像33は、後方の安全確認のため、常時表示することが好ましいが、不操作状態が検出された場合は安全上の問題は発生しないため、消去しても問題ない。
【0074】
図8は異常時の表示画面の第3例であり、燃料残量警告を表示している。
【0075】
燃料残量は残量計32により常時確認できる。また、燃料残量警告に対応する警告アイコン34cは頻繁に表示されるものであり、オペレータは、警告アイコン34cを見ただけで燃料残量警告であることを理解でき、それ以上の情報を必要とせず、一方、頻繁な表示切換(基本情報画像31,32→基本情報簡易画像35,36)を煩わしいと感じる場合もある。
【0076】
異常判定機能51aは予め設定されたテーブルに基づいてその異常情報の重要度も判定する。たとえば、燃料残量警告の重要度について軽度と判定する。
【0077】
表示制御装置53の第1警告表示機能53bは、燃料残量警告にかかる異常情報信号を入力し、対応する警告アイコン34cを、警告アイコン表示領域42に表示する。一方、異常が軽度である場合には、基本情報簡易表示機能53eと第2警告表示機能53fとは作動せず、基本情報画像31,32の表示が継続する。これにより、オペレータは表示切換の煩わしさを感じることがない。
【0078】
なお、第1例および第2例において、異常判定機能51a,52aは異常情報の重要度について重度と判定し、基本情報簡易表示機能53eと第2警告表示機能53fとが作動しているが、詳細を省略している。
【0079】
図9は異常時の表示画面の第4例であり、複数の警告を表示している。
【0080】
油圧ショベルの各構成は通信ライン54を介して制御されるため、相互に影響を与える。したがって、異常判定機能51a,52aは複数の異常情報を通信ライン54を介して表示制御装置53に出力する可能性がある。異常判定機能51a,52aは重要度判定機能も併せて有しており、異常情報には重要度に係る情報も付加される。
【0081】
表示制御装置53の第1警告表示機能53bは、複数の異常情報信号を入力し、対応する警告アイコン34d〜hを、警告アイコン表示領域42に表示する。警告アイコン34d〜hは重要度に基づいて優先順位が定められ、優先順位の高いものから順に左から並べられる。基本情報簡易表示機能53eは、基本情報画像31,32に替えて基本情報簡易画像35,36を表示し、基本情報表示領域41のうち基本情報簡易画像35,36が表示される領域外には、空き領域44が発生する。
【0082】
初期状態として、第2警告表示機能53fは、優先順位の高い警告アイコン34dの表示内容「オーバーヒート警告」と簡単な対処方法に係る文字情報を、空き領域44に表示する。
【0083】
オペレータがロータリースイッチ(モニタ操作部6b)を回転すると、警告アイコンを反転表示するカーソルが移動し、所望の警告アイコンを選択できる。たとえば、カーソルが警告アイコン34gに移動したとき、オペレータがロータリースイッチを押下すると、警告アイコン34gに決定する。
【0084】
第2警告表示機能53fは、決定された警告アイコン34gの表示内容「エンジン排気温度警告」と簡単な対処方法に係る文字情報(第2警告表示37)を、空き領域44に表示する。これにより、警告アイコン34が複数表示された場合でも、所望の警告アイコンの内容等についても理解できる。
【0085】
〜効果〜
(1)従来技術において以下の課題があった。すなわち、警告アイコンは、小さな表示領域で、オペレータが直感的に認識できるように表示できる点で有効であるが、オペレータは、警告アイコンを見ただけでは、その警告アイコンが何を意味しているのか、すなわち警告アイコンの内容を理解できるとは限らない。したがって、警告アイコンの内容にかかる文字情報を表示する必要がある。このとき、自動切換表示では基本情報を確認できなくなり、手動切換表示では操作に伴う煩わしさが生じ、また重ね合わせ表示では基本情報を確認しづらい。
【0086】
これに対し本実施形態においては、表示制御装置53が、警告アイコン34の表示内容と簡単な対処方法に係る文字情報(第2警告表示37)を、空き領域44に表示する。オペレータは、警告アイコン34に加えて第2警告表示37をみることで、警告情報について確実に認識し、その内容についても理解できる。このとき、自動切換表示により基本情報を確認できなくなる、手動切換操作に伴う煩わしさ、重ね合わせ表示により基本情報を確認しづらいという不具合は生じない。
【0087】
これにより、表示システムは、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示できる。
【0088】
(2)第2警告表示37に加えて、更なる情報を追加表示するほうが好ましい場合もある。しかし、空き領域44では充分に表示できない場合もある。
【0089】
これに対し本実施形態においては、表示制御装置53が第2警告表示37に関連する情報(第3警告表示38)をカメラ画像領域43に表示する。オペレータは第3警告表示38を見ることで、警告情報についてより確実に認識できる。また、車体制御装置51が不操作状態を検出するため、安全を確保しつつ、カメラ画像33を消去することができる。
【0090】
(3)表示制御装置53が第2警告表示37を空き領域44に表示し、第3警告表示38をカメラ画像領域43に表示することにより、限られた表示領域に多くの情報を効率よく表示できる。
【0091】
以上により、表示システムは、基本情報を常時表示するともに、異常時にはオペレータが警告内容を確実に認識できるように表示し、かつ効率よく表示することができる。
【0092】
〜変形例〜
(1)本実施形態は、カメラ画像33を表示するカメラ画像表示領域43と、カメラ画像表示機能53cと、不操作状態検出機能51bと、第3警告表示機能53gとを備え、これらの構成を備えることがより好ましいが、これらの構成は必須ではない。
【0093】
図10は、この変形例にかかる制御装置50の機能ブロックを示す図である。図11は、異常時の表示画面の一例である。
【0094】
表示制御装置53の第1警告表示機能53bは警告アイコン34aを警告アイコン表示領域42に表示する。基本情報簡易表示機能53eが基本情報簡易画像35,36を表示すると、空き領域44が発生する。第2警告表示機能53fは、第2警告表示37を、空き領域44に表示する。
【0095】
これにより、上記第1および第3の効果と同様な効果が得られる。
【0096】
(2)本実施形態において、異常検出信号にかかる異常が軽度である場合には、基本情報簡易表示機能53eと第2警告表示機能53fとは作動しない(図8参照)が、異常の軽重に関わらず、基本情報簡易表示機能53eと第2警告表示機能53fとが作動するようにしてもよい。この変形例においても、上記第1〜第3の効果と同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0097】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 作業フロント
4 運転室
5 運転席
6 モニタ
6a モニタ表示部
6b モニタ操作部(ロータリースイッチ)
7 操作装置
8 ゲートロックレバー
11 エンジン
12 燃料噴射装置
13 DPF装置
14 再生用燃料噴射装置
15 油圧ポンプ
16 制御弁
17 油圧アクチュエータ
18 パイロットポンプ
19 切換弁
20 シャトル弁
21 差圧センサ
22 圧力センサ
24,25 各種センサ
31 水温計(基本情報画像)
32 残量計(基本情報画像)
33 カメラ画像
34 警告アイコン
35 簡易水温計(基本情報簡易画像)
36 簡易残量計(基本情報簡易画像)
37 第2警告表示
38 第3警告表示
41 基本情報表示領域
42 警告アイコン表示領域
43 カメラ画像領域
44 空き領域
45 全領域
50 制御装置
51 車体制御装置
51a 異常判定機能
51b 不操作状態検出機能
52 エンジン制御装置
52a 異常判定機能
53 表示制御装置
53a 基本情報表示機能
53b 第1警告表示機能
53c カメラ画像表示機能
53d メニュー項目表示機能
53e 基本情報簡易表示機能53e
53f 第2警告表示機能
53g 警告アイコン表示機能
54 通信ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の基本情報に係る画像を表示する基本情報表示領域と警告アイコンを表示する警告アイコン表示領域を有するモニタと、基本情報に係る画像を表示する基本情報表示機能と警告アイコンを表示する第1警告表示機能とを有する表示制御装置とを備えた作業機械の表示システムにおいて、
前記表示制御装置は、
所定信号に基づいて、前記基本情報画像に替えて、基本情報画像より小さい基本情報簡易画像を再表示する基本情報簡易表示機能と、
前記基本情報表示領域のうち基本情報簡易画像が表示された領域以外の領域に、警告アイコンの表示内容を含む警告情報を表示する第2警告表示機能と
を更に有することを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の表示システムにおいて、
作業機械の異常を検出する異常検出手段を更に備え、
前記所定信号は異常検出手段から得られる異常検出信号である
ことを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械の表示システムにおいて、
前記異常検出信号にかかる異常の重要度を判定する重要度判定手段を備え、
前記基本情報簡易表示機能と前記第2警告表示機能とは、前記異常検出信号にかかる異常が重度である場合に作動する
ことを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械の表示システムにおいて、
作業機械周辺を撮影するカメラを更に備え、
前記モニタは、カメラから得られるカメラ画像を表示するカメラ画像表示領域を更に有し、
表示制御装置は、カメラ画像表示機能を更に有する
ことを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械の表示システムにおいて、
作業機械の不操作状態を検出する不操作状態検出手段を更に備え、
前記表示制御装置は、
前記不操作状態検出手段から得られる不操作状態検出信号に基づいて、前記カメラ画像表示領域に、前記警告情報に関連する情報を表示する第3警告表示機能
を有することを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械の表示システムにおいて、
前記警告アイコン表示領域は複数の警告アイコンを表示可能であり、
前記第1警告表示機能は、重要度に応じて複数の警告アイコンを並べて表示する
ことを特徴とする作業機械の表示システム。
【請求項7】
請求項6記載の作業機械の表示システムにおいて、
回転により警告アイコンを選択し、押下により選択した警告アイコンを決定するロータリースイッチを更に備え、
前記第2警告表示機能は、前記ロータリースイッチにより決定した警告アイコンの表示内容を含む警告情報を表示する
ことを特徴とする作業機械の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−72617(P2012−72617A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219307(P2010−219307)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】