説明

作業機械の電装ボックス固定構造

【課題】
作業機械の電装ボックス固定構造に関し、十分な防水性とメンテナンス性と確保しつつ、良好な作業性や居住性を獲得する。
【解決手段】
作業機械のスイングフレームから鉛直かつ車幅方向に並んで立設された一対のサポートピラー1及び一対のサポートピラー1間を略水平に接続するサポートビーム2からなるサポート枠と、エンジンルームの上面を覆い、かつ、サポートビーム2に枢着されて該エンジンルームを上方へ開放可能に設けられたエンジンフード7と、一対のサポートピラー1のうちの何れか一方と電装ボックス3と固定する第一固定部4と、サポートビーム2と電装ボックス3とを固定する第二固定部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の電装ボックスをエンジンルームの内部に固定するための電装ボックス固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械には、エンジンコントローラ,ワイパーコントローラ等の制御機器や、機体に搭載されたヘッドランプ用のフューズ,リレー,ブレーカ等の電装部品を内蔵した電装ボックスが設けられている。一般に電装ボックスは、降雨時や機体洗車時に直接水がかからない場所であって、かつ、内部の電装部品の点検作業や交換作業が行いやすい位置に設けられる。
【0003】
例えば特許文献1,2には、電装ボックスをシートの下方スペースにスライド移動自在に収納したものが記載されている。このような構成により、十分な防水性を持った状態で設置することができ、またメンテナンス性も向上させることができるとされている。
【特許文献1】特開2006−97314号公報
【特許文献2】特開2002−242225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では着座高さや角度の調節機能を備えた高機能なシートが採用される傾向にあり、シートの下方に電装ボックスを設置することができない場合がある。また、シート周りのコンソールやサイドパネルの内部に電装ボックスを設けたとしても、その分着座スペースが狭められることになり、居住性を向上させることができないうえ、他部材のレイアウトへの影響も過大となるおそれがある。特に、機体サイズがコンパクトに纏められた小旋回型の油圧ショベルの場合には、着座スペースの狭さがそのまま操作性の低下に繋がりやすく、作業性を向上させることができない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、十分な防水性とメンテナンス性と確保しつつ、良好な作業性や居住性を獲得することができるようにした、作業機械の電装ボックス固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の作業機械の電装ボックス固定構造は、作業機械に搭載された電装品のフューズ及びリレーを内蔵した電装ボックスをエンジンルームの内部に固定するための電装ボックス固定構造であって、該作業機械のスイングフレームから鉛直かつ車幅方向に並んで立設された一対のサポートピラー及び該一対のサポートピラー間を略水平に接続するサポートビームからなるサポート枠と、該エンジンルームの上面を覆い、かつ、該サポートビームに枢着されて該エンジンルームを上方へ開放可能に設けられたエンジンフードと、該一対のサポートピラーのうちの何れか一方と該電装ボックスと固定する第一固定部と、該サポートビームと該電装ボックスとを固定する第二固定部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
すなわち該サポート枠は、該スイングフレームから門型に立設形成されている。また、該サポートビームは該車幅方向に延在している。
また、請求項2記載の本発明の作業機械の電装ボックス固定構造は、請求項1記載の構成に加え、該第一固定部が、該電装ボックスの側面に穿孔された第一固定穴と、該いずれか一方の該サポートピラーにおける機体外側方の面に穿孔されたピラー固定穴と、該機体外側方から該第一固定穴及び該ピラー固定穴の内部に挿通固定される第一固定具とを備えて構成され、該第二固定部が、板面を機体後方へ向けて該電装ボックスの上面から鉛直に立設形成された板状のブラケットと、該ブラケットの該板面に穿孔された第二固定穴と、該サポートピラーにおける該機体後方の面に穿孔されたビーム固定穴と、該機体後方から該第二固定穴及び該ビーム固定穴の内部に挿通固定される第二固定具とを備えて構成されたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の本発明の作業機械の電装ボックス固定構造は、請求項2記載の構成に加え、該サポートピラーが、機体内側へ向けて開放されたコ字状の断面形状を有し、該第一固定部が、該ピラー固定穴の該機体内側面に固設され、該電装ボックスの該側面に接触するスペーサをさらに備えて構成されたことを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の作業機械の電装ボックス固定構造は、請求項3記載の構成に加え、該電装ボックスが、該第一固定穴の内側に溶接固定された第一ナットをさらに備え、該サポートビームが、該ビーム固定穴の機体前方側の面に溶接固定された第二ナットをさらに備えるとともに、該第一固定具及び該第二固定具が、該第一ナット及び該第二ナットに対してそれぞれ螺合するボルトとして構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業機械の電装ボックス固定構造(請求項1)によれば、電装ボックスがエンジンルーム内に配置されるため、十分な防水性を確保することができる。また、電装ボックスをサポート枠の角に設けることにより、固定強度を高めることができる。さらに、二つの固定部での固定を解除することで、電装ボックスをエンジンルームから完全に取り外すことができ、電装ボックスの内蔵部品のメンテナンス作業が容易となる。なお、着座スペース周りに電装ボックスを配置しないため、居住性及び作業性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の作業機械の電装ボックス固定構造(請求項2)によれば、固定具の挿通方向が機体外側方及び機体後方からとなっているため、エンジンフードの開放時に固定具の取り外し作業や取り付け作業が容易となり、メンテナンス性を高めることができる。
また、本発明の作業機械の電装ボックス固定構造(請求項3)によれば、サポートピラーの内側にスペーサを介装させることにより、固定状態を安定させることができ、また、固定作業をより簡単にすることができる。
【0011】
また、本発明の作業機械の電装ボックス固定構造(請求項4)によれば、簡素な構成で電装ボックスを確実に固定し、かつ、取り外すことができ、メンテナンス性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造を説明するためのものであり、図1は本固定構造によって固定される電装ボックスの斜視図、図2は本固定構造の全体構成を示す斜視図、図3は本固定構造に係るサポート枠の全体構成を示す斜視図、図4は本固定構造を備えた油圧ショベルの上部旋回体を部分的に透視して示した斜視図、図5は本固定構造を備えた油圧ショベルのスイングフレームの上面図、図6は本固定構造を備えた油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
【0013】
[全体構成]
本発明に係る電装ボックスの固定構造は、図6に示す小旋回型の油圧ショベル10に適用されている。この油圧ショベル10は、クローラ式の走行装置を装備した下部走行体11と、下部走行体11の上に旋回自在に搭載された上部旋回体12とを備えて構成される。上部旋回体12における前方側には、ブームやアーム等の作業装置16及びオペレータが搭乗するキャブ14が設けられており、上部旋回体12における後端部にはカウンタウェイト17が設けられている。また、カウンタウェイト17の直前方には、エンジンルーム15が設けられている。これらのキャブ14,カウンタウェイト17及びエンジンルーム15は、上部旋回体12の下面全体を支えるスイングフレーム13上に配置されている。
【0014】
エンジンルーム15の内部には、油圧ショベル10の駆動源であるエンジンや、エンジン駆動の油圧ポンプ,クーリングパッケージ等が配置されている。また、エンジンルーム15の上面にはエンジンフード7が設けられており、メンテナンス時にはこのエンジンフード7を上方へ開放して地面に立った状態で整備,点検を実施できるようになっている。
図5に示すように、スイングフレーム13上におけるエンジンルーム15の機体前方側には、サポート枠1,2が設けられている。このサポート枠1,2は、図4に示すように、スイングフレーム13からほぼ鉛直に立設した一対のサポートピラー1と、それらの間をほぼ水平に接続するサポートビーム2とから構成されている。一対のサポートピラー1は、エンジンルーム15の左右側面の近傍に設けられており、車幅方向に並んでいる。また、サポートビーム2は車幅方向に延在している。このように、サポート枠1,2は、スイングフレーム13から門型に立設形成されている。本願発明に係る電装ボックス3は、このサポート枠1,2の角部に対して固定されている。
【0015】
なお、電装ボックス3とは、作業機械に搭載された電装品のフューズ及びリレー,ブレーカスイッチ等を内蔵した箱状の装置である。例えば、エンジンのスタータ装置のコントローラやフューズ,照明装置(機体前方ライト)のフューズ等が含まれており、図5に示すように、電装ボックス3から油圧ショベル10の各所へと電気配線が配設されている。
サポートピラー1は、機体内側へ向けて開放されたコ字状の断面形状(チャンネル形状)を有している。また、サポートビーム2はサポートピラー1のウェブ及びフランジ部分を水平方向へ連続的に延設した形状となっており、エンジンルーム15の内部側へ向けて開放されたコ字状の断面形状となっている。
【0016】
[固定構造]
電装ボックス3の固定構造について詳述する。図4に示すように、電装ボックス3は、サポートピラー1及びサポートビーム2のそれぞれに対して固定されるようになっている。以下、電装ボックス3とサポートピラー1との固定部のことを第一固定部4と呼び、電装ボックス3とサポートビーム2との固定部のことを第二固定部5と呼ぶ。
【0017】
図3に示すように、サポートピラー1には、ピラー固定穴1aが穿孔されており、その内側にはスペーサ1bが溶接固定されている。また、サポートビーム2にもビーム固定穴2aが穿孔されており、その内側に溶接ナット2b(第二ナット)が固定されている。この溶接ナット2bは、ビーム固定穴2aの機体前方側の面に溶接固定されたナットである。
【0018】
また、図2に示すように、電装ボックス3の側面には、第一固定穴4aが穿孔されており、その内側に溶接ナット4b(第一ナット)が固定されている。第一固定穴4aの位置は、電装ボックス3の固定時におけるサポートピラー1のピラー固定穴1aの位置に対応しており、ボルト4c(第一固定具)をピラー固定穴1a及び第一固定穴4aへと挿通させて、ナット4bに螺合締結させることができるようになっている。また、スペーサ1bの長さは、ボルト4cの締結時にスペーサ1bの先端部が電装ボックス3の側面に当接するように設定されている。このように、第一固定部4では、ボルト4cをサポートピラー1の機体外側方から挿通することで電装ボックス3を固定している。
【0019】
電装ボックス3の上端部には、L字状のブラケット6が固定されている。図2に示すように、ブラケット6の鉛直面は機体後方を向いている。また、この鉛直面には、電装ボックス3の固定時におけるサポートビーム2のビーム固定穴2aの位置に対応するように、第二固定穴5aが穿孔されている。これにより、ボルト5b(第二固定具)を第二固定穴5a及びビーム固定穴2aへと挿通させて、ナット2bに螺合締結させることができるようになっている。このように、第二固定部5では、ボルト5bを機体後方から挿通することで電装ボックス3を固定している。
なお、電装ボックス3の機体後方の面には、フューズカバー3aが取り付けられている。フューズカバー3aは電装ボックス3から着脱自在となっており、例えば図1に示すように取り外すと、その内部の各種フューズにアクセスできるようになっている。
【0020】
[作用・効果]
フューズの交換作業を実施する場合には、エンジンフード7を機体上方へ持ち上げると、エンジンルーム15の左側端部に電装ボックス3が現れる。フューズカバー3aは電装ボックス3の機体後方の面に設けられているため、地面に立った状態でフューズカバー3aを取り外し、内部のフューズを交換することができる。このように、本電装ボックス固定構造によれば、楽な姿勢での整備,点検が可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0021】
さらに、電装ボックス3がエンジンルーム15内に配置されるため、十分な防水性を確保することができる。また、電装ボックス3をサポート枠1,2の角部に設けることにより、固定強度を高めることができる。なお、着座スペース周りに電装ボックス3を配置しないため、キャブ14内の居住性及び作業性を向上させることができる。
【0022】
次に、ブレーカやコントローラといった電装ボックス3の内蔵部品を交換する場合には、電装ボックス3の全体をサポート枠1,2から取り外すことになる。その際、第一固定部4のボルト4cはサポートピラー1の機体外側方から挿通されているため、エンジンフード7が開放されている状態では機体側面からのアクセスが可能であって、地面に立った状態で第一固定部4の固定状態を解除することができる。一方、第二固定部5のボルト5bも、電装ボックス3の機体後方から挿通されているため、機体側面から容易にアクセスすることができ、第二固定部5の固定状態を解除することができる。つまり、電装ボックス3の取り外し作業も楽な姿勢で実施することができ、メンテナンス性をさらに向上させることができる。
【0023】
また、本電装ボックス固定構造では、サポートピラー1の内側にスペーサ1bを介装させているため、第一固定部4の固定状態を安定化させることができ、また、固定作業をより簡単にすることができる。なお、スペーサ1bは必ずしも必須ではなく、適宜省略することも可能である。
このように、本電装ボックス固定構造によれば、十分な防水性とメンテナンス性と確保しつつ、良好な作業性や居住性を獲得することができる。
【0024】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、本電装ボックス固定構造を小旋回型の油圧ショベル10に適用したものを例示したが、本発明に係る電装ボックス固定構造の適用対象は油圧ショベル10の機体サイズや仕事能力,規模によって限定されない。
【0025】
また、上述の実施形態ではボルト4c,5b及びナット2b,4bでの螺合締結によって第一固定部4及び第二固定部5の固定がなされているが、これ以外の取り付け,取り外しが可能な固定方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造によって固定される電装ボックスの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造に係るサポート枠の全体構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造を備えた油圧ショベルの上部旋回体を部分的に透視して示した斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造を備えた油圧ショベルのスイングフレームの上面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る作業機械の電装ボックス固定構造を備えた油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 サポートピラー
1a ピラー固定穴
1b スペーサ
2 サポートビーム
2a ビーム固定穴
2b 溶接ナット(第二ナット)
3 電装ボックス
3a フューズカバー
4 第一固定部
4a 第一固定穴
4b 溶接ナット(第一ナット)
4c 第一固定具(ボルト)
5 第二固定部
5a 第二固定穴
5b 第二固定具(ボルト)
6 ブラケット
7 エンジンフード
10 油圧ショベル
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 スイングフレーム
14 キャブ
15 エンジンルーム
16 作業装置
17 カウンタウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に搭載された電装品のフューズ及びリレーを内蔵した電装ボックスをエンジンルームの内部に固定するための電装ボックス固定構造であって、
該作業機械のスイングフレームから鉛直かつ車幅方向に並んで立設された一対のサポートピラー及び該一対のサポートピラー間を略水平に接続するサポートビームからなるサポート枠と、
該エンジンルームの上面を覆い、かつ、該サポートビームに枢着されて該エンジンルームを上方へ開放可能に設けられたエンジンフードと、
該一対のサポートピラーのうちの何れか一方と該電装ボックスと固定する第一固定部と、
該サポートビームと該電装ボックスとを固定する第二固定部と
を備えたことを特徴とする、作業機械の電装ボックス固定構造。
【請求項2】
該第一固定部が、
該電装ボックスの側面に穿孔された第一固定穴と、
該いずれか一方の該サポートピラーにおける機体外側方の面に穿孔されたピラー固定穴と、
該機体外側方から該第一固定穴及び該ピラー固定穴の内部に挿通固定される第一固定具とを備えて構成され、
該第二固定部が、
板面を機体後方へ向けて該電装ボックスの上面から鉛直に立設形成された板状のブラケットと、
該ブラケットの該板面に穿孔された第二固定穴と、
該サポートピラーにおける該機体後方の面に穿孔されたビーム固定穴と、
該機体後方から該第二固定穴及び該ビーム固定穴の内部に挿通固定される第二固定具とを備えて構成された
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の電装ボックス固定構造。
【請求項3】
該サポートピラーが、機体内側へ向けて開放されたコ字状の断面形状を有し、
該第一固定部が、該ピラー固定穴の該機体内側面に固設され、該電装ボックスの該側面に接触するスペーサをさらに備えて構成された
ことを特徴とする、請求項2記載の作業機械の電装ボックス固定構造。
【請求項4】
該電装ボックスが、該第一固定穴の内側に溶接固定された第一ナットをさらに備え、
該サポートビームが、該ビーム固定穴の機体前方側の面に溶接固定された第二ナットをさらに備えるとともに、
該第一固定具及び該第二固定具が、該第一ナット及び該第二ナットに対してそれぞれ螺合するボルトとして構成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の作業機械の電装ボックス固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−95028(P2010−95028A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265274(P2008−265274)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)