説明

作業機械用情報提供システム

【課題】作業機械の情報を携帯電話から簡単に参照できる情報提供システムを提供する。
【解決手段】情報提供システムは、携帯電話2がアクセス可能な情報提供サーバを備える。携帯電話2は、トラクタ4の型式を特定可能な型式特定情報を、当該トラクタ4に設けられたQRコード(登録商標)から取得し、当該型式特定情報を前記情報提供サーバに送信可能である。情報提供サーバは、前記型式特定情報に基づいて特定される型式のトラクタに関する情報を、携帯電話2に提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械用情報提供システムに関する。詳細には、作業機械用情報提供システムからの情報を携帯電話で取得する際に、必要な情報を特定するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械、建設機械、船舶などの作業機械にトラブルが発生した場合は、サービスマンが顧客の下に赴き、その場で実機を検分してトラブルの原因等を特定するということが良く行われている。
【0003】
サービスマンが顧客の下で作業機械のメンテナンスや修理などのサービスを行う際に、当該作業機械のサービスマニュアルや部品カタログ等を参照する必要が生じる場合がある。しかしながら、当該サービスマニュアル及び部品カタログ等は作業機械の型式毎に異なるものであるから、様々な型式の作業機械に対応しようとすると、大量のサービスマニュアル及び部品カタログ等を携帯しなければならず、サービスマンにとって負担となる。一方、サービスマニュアル及び部品カタログ等を(サービスマンが携帯せずに)店舗に置いておく場合、サービスマニュアルや部品カタログが必要となった場合にはサービスマンがいったん店舗まで戻らなければならず、作業機械のメンテナンスや修理を迅速に行うことができない。
【0004】
このように、様々な型式の作業機械に関するサービスマニュアルや部品カタログ等を、客先で参照できるようにしたいという要望があった。
【0005】
そこで、上記の要望に応えるため、携帯電話からアクセス可能な情報提供システムが導入されている。販売店舗のサービスマンは、この情報提供システムに携帯電話でアクセスすることにより、作業機械に関する情報を携帯電話の画面で確認することができる。なお、部品のカタログ的な情報をインターネットを介して提供するシステムとして、例えば特許文献1が開示する情報検索システムなどを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−265819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特定の型式の作業機械に関する情報を、携帯電話を用いて上記情報提供システムから取得しようとする場合、サービスマンは、当該携帯電話の入力装置で作業機械の型式を入力する等、作業機械の型式を特定する操作を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、作業機械の型式は英数字の羅列であることが多く、携帯電話の入力装置では入力に手間取りがちである。また、同一シリーズ内に異なる型式が複数ある場合、シリーズ内の型式は似たようなものになるので、型式の入力ミス等が起こることも多かった。そのため、携帯電話から上記情報提供システムを利用する際、目的の情報を必ずしも簡単に取得することができるとは言えず、改良の余地があった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、作業機械の情報を携帯電話から簡単に参照できる情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の作業機械用情報提供システムが提供される。即ち、この情報提供システムは、携帯電話がアクセス可能な情報提供サーバを備える。前記携帯電話は、作業機械の型式を特定可能な型式特定情報を、当該作業機械に設けられたQRコード(登録商標)から取得し、当該型式特定情報を前記情報提供サーバに送信可能である。前記情報提供サーバは、前記型式特定情報に基づいて特定される型式の作業機械に関する情報を、前記携帯電話に提供可能である。
【0012】
即ち、作業機械の型式を特定するための情報を携帯電話に手作業で入力しようとすると、手間が掛かるうえに入力ミスの原因ともなる。この点、上記のようにQRコードを用いることにより、作業機械の型式を特定するための情報を携帯電話にミスなく簡単に取り込むことができ、しかも前記QRコードから取り込んだ情報に基づいて、情報提供サーバから作業機械に関する情報を得ることができる。従って、必要な情報を携帯電話で簡単に得ることができるので、作業機械に関する情報を現場で簡単に確認したいという要望に応えることができる。また、一般的な携帯電話はQRコードの読取り機能を備えているので、QRコードを読み取るための特別なリーダが必要なく、上記の情報提供システムを安価に利用することができる。
【0013】
前記の作業機械用情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械に適合可能な部品を検索可能であるとともに、当該検索結果を前記携帯電話に送信可能な部品カタログサーバであることが好ましい。
【0014】
これにより、型式を特定された作業機械に適合する部品を携帯電話で簡単に検索することができる。
【0015】
前記の作業機械用情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械の取扱説明書データを、前記携帯電話に送信可能な取扱説明書提供サーバであっても良い。
【0016】
これにより、作業機械の取扱説明書を携帯電話で簡単に閲覧することができる。
【0017】
前記の作業機械用情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械の整備に関するニュースを、当該携帯電話に送信可能なニュース提供サーバであっても良い。
【0018】
これにより、作業機械の整備に関するニュースを携帯電話で簡単に確認することができる。
【0019】
前記の作業機械用情報提供システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この作業機械用情報提供システムは、受注履歴管理サーバを備える。前記携帯電話は、作業機械それぞれを個別に識別可能な機体識別情報を、前記作業機械に設けられた前記QRコードから取得することが可能である。前記携帯電話は、前記機体識別情報と、発注する部品を特定する情報と、を前記受注履歴管理サーバに送信可能である。前記受注履歴管理サーバは、前記機体識別情報と、前記発注する部品を特定する情報と、に基づいて、機体ごとの部品受注履歴を記録する。
【0020】
これにより、どの機体がどの部品を交換したかという情報を受注履歴管理サーバに蓄積することができるので、例えば、各機体の次の部品交換時期を情報提供システム側で把握することができる。また、機体識別情報は、作業機械を個別に識別可能な情報であるために文字数が多くなりがちであり、携帯電話に手作業で入力しようとすると手間が掛かる。この点、上記のようにQRコードを用いることにより、機体識別情報を簡単に携帯電話に取り込むことができる。
【0021】
本発明の第2の観点によれば、前記の作業機械用情報提供システムの対象となる作業機械であって、前記QRコードが付されている作業機械が提供される。
【0022】
この作業機械は、当該作業機械に付されているQRコードから携帯電話で型式特定情報を読み取り、当該型式特定情報に基づいて、作業機械用情報提供システムから当該作業機械に関する各種の情報を携帯電話で得ることができる。従って、当該作業機械の修理及びメンテナンス等のサービスを、速やかに且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの構成を示す模式図。
【図2】本実施形態の情報提供システムの対象となるトラクタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る情報提供システムの構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、作業機械としての農業機械に関する情報を提供する情報提供システムについて説明するが、本発明の情報提供システムは、船舶・建設機械など、その他の作業機械に関する情報を提供する情報提供システムとして構成しても差し支えない。
【0025】
本実施形態の情報提供システム1は、農業機械のメーカが管理・運営しており、インターネットからアクセス可能に構成されている。この情報提供システム1は、農業機械の販売店舗等に、当該農業機械に関する情報を提供することを主な目的としたものである。
【0026】
前記販売店舗においては、当該販売店舗内に設置されたパーソナルコンピュータ(PC)31等により、販売店システム3が構成されている。そして、本実施形態の情報提供システム1は、前記販売店システム3からアクセスすることが可能である。従って、販売店舗にいるサービスマンや事務職員は、当該販売店舗にいながらにして情報提供システム1を利用することができる。
【0027】
また、本実施形態の情報提供システム1は、携帯電話2からアクセスすることが可能である。従って、客先での対応等のために販売店舗を外出しているサービスマンは、外出先から情報提供システム1を利用することができる。
【0028】
なお、本実施形態の情報提供システム1は一般には非公開であり、農業機械の販売店舗の従業員等、関係者にのみ公開されている。このようにアクセス制限を行うため、情報提供システム1にアクセスする際にはパスワード認証等が必要であるように構成されており、事前に登録された携帯電話2及び販売店システム3のみが当該情報提供システム1にアクセスできるようになっている。
【0029】
以下、情報提供システム1の構成を詳しく説明する。本実施形態の情報提供システム1は、携帯電話サーバ11、情報提供サーバ12、販売物流サーバ13及び注文管理サーバ14からなるハードウェアと、上記サーバ11,12,13,14で実行されるサーバアプリケーション及び携帯電話2で実行される後述のクライアントアプリケーションからなるソフトウェアと、から構成されている。
【0030】
携帯電話サーバ11は、携帯電話2からアクセス可能に構成される。携帯電話サーバ11は、情報提供システム1にアクセスした携帯電話2が、当該携帯電話サーバ11を介して、情報提供サーバ12、販売物流サーバ13、注文管理サーバ14にアクセスできるように構成されている。
【0031】
情報提供サーバ12は、部品カタログサーバ、取扱説明書提供サーバ、ニュース提供サーバ等として機能するように構成されている。
【0032】
部品カタログサーバとしての情報提供サーバ12は、クライアントに対して、農業機械の部品のカタログデータを提供するように構成されている。具体的には、情報提供サーバ12には、部品データベースと、図面データと、が記憶されている。
【0033】
前記部品データベースには、農業機械に用いられる部品の名称、品番等が記憶されるとともに、その部品はどの型式の機種に適合するのか、どのブロック(機体の中の特定の区画)に用いられる部品か、という情報が記憶されている。例えば、「部品Aは、Xという型式の機種のエンジンに用いられる」という情報が各部品ごとに記憶されている。また情報提供サーバ12は、部品データベースの検索機能も提供している。従って、情報提供サーバ12のクライアントは、例えば、「型式Xの機種のエンジンに用いられている部品はどのようなものがあるか」という検索を行うことができる。
【0034】
前記図面データは、部品に関する図面を携帯電話2やPC31の画面に表示可能な形式で記憶したものであり、例えばJPEG、GIFなどの画像ファイルである。この図面データに記憶された図面は、当該図面をサービスマンが確認することで各部品の使用方法や組み付け方法を把握できるような図面であることが好ましく、例えば農業機械の分解斜視図などとすることが好適である。前記分解斜視図は型式が異なるごとに異なるため、図面データは型式ごとに異なるデータが用意されている。また1つの型式の分解斜視図は通常1つの図面にすべて収まらないため、1つの型式につき複数の図面データが用意されていても良い。例えば本実施形態では、エンジンの分解斜視図を記憶した図面データ、トランスミッションの分解斜視図を記憶した図面データ、・・・のように、各部位ごとに図面データが用意されている。なお本実施形態では、PC31用の高画質な図面データと、携帯電話2用にサイズを縮小した図面データと、がそれぞれ用意されている。
【0035】
また、情報提供サーバ12には、前記図面データと前記部品データベースとを互いにリンクさせる図面リンク情報が記憶されている。具体的には、例えば、「型式Xの機種のエンジンの分解斜視図を記憶した図面データZの座標(x,y)に描かれている部品は、部品Aである」という情報が、情報提供サーバ12に記憶されている。これにより、情報提供サーバ12のクライアントは、部品データベースで検索した部品を、図面で確認することができる。
【0036】
取扱説明書提供サーバとしての情報提供サーバ12は、クライアントに対して、農業機械の取扱説明書データを提供するように構成されている。具体的には、情報提供サーバ12には、様々な型式の農業機械に関する取扱説明書の内容が、データとして記憶されている。なお、ここでいう農業機械の取扱説明書とは、具体的には、当該農業機械のメンテナンス等のときに参照するためのサービスマニュアルのことである。もっとも、情報提供サーバ12が提供する取扱説明書データとして、いわゆるユーザマニュアルのデータを提供しても良いことは勿論である。
【0037】
取扱説明書のデータを取得しようとする情報提供サーバ12のクライアントは、農業機械の型式を指定して、取扱説明書のデータを要求するメッセージを情報提供サーバ12に送信する。情報提供サーバ12は、当該型式の農業機械に関する取扱説明書のデータを、クライアントに対して送信する。このように、情報提供サーバ12のクライアントは、情報提供サーバ12が記憶している様々な型式の農業機械に関する取扱説明書データの中から、所望の型式の農業機械に関する取扱説明書データを取得することができる。
【0038】
ニュース提供サーバとしての情報提供サーバ12は、クライアントに対して、農業機械の整備に関するニュース(新着情報)を提供するように構成されている。具体的には、情報提供サーバ12には、様々な型式の農業機械の整備に関するニュースが保存されている。ここで、整備に関するニュースとは、例えば、特定型式の農業機械で問題が発生し易い箇所(ウィークポイント)及び問題の具体的内容を知らせる情報や、部品の型番が新しくなったことの通知などである。
【0039】
整備に関するニュースを取得しようとする情報提供サーバ12のクライアントは、農業機械の型式を指定して、整備に関するニュースを要求するメッセージを情報提供サーバ12に送信する。情報提供サーバ12は、当該型式の農業機械の整備に関するニュースを、クライアントに対して送信する。このように、情報提供サーバ12のクライアントは、特定の型式の農業機械のどこにウィークポイントがあるのか、等といった情報を取得することができる。従って、農業機械のサービスマンは、農業機械のメンテナンス時に、整備に関するニュースを参照することにより、点検が必要な箇所を絞りこんで適切にメンテナンスを行うことができる。
【0040】
次に、販売物流サーバについて説明する。販売物流サーバ13は、前記PC31及び携帯電話2を利用するクライアントに対して、部品の価格や在庫に関する最新情報を提供するように構成されている。従って、販売物流サーバ13を利用するクライアントは、部品の価格改訂等があった場合においても、価格の情報を正しく得ることができる。また、販売物流サーバ13を利用するクライアントは、最新の在庫状況を確認することにより、部品を発注してから納入されるまでの期間を予測することができる。なお本実施形態では、部品の在庫に関する情報は、メーカ在庫と、各地の販売拠点の在庫と、の項目に分けて管理されている。従って、販売物流サーバ13を利用するクライアントは、近隣の販売拠点に在庫があるか否か、といった情報を得ることができる。
【0041】
なお、販売物流サーバ13は、農業機械メーカの外部のクライアント(具体的には販売店舗)に対して情報を提供するのみでなく、農業機械メーカ内部で部品の出荷業務を集中的に管理するためのサーバとしての役割を兼ねている。即ち、農業機械メーカにおいては、販売店舗等から部品の発注を受けると、前記発注元の情報、受注した内容等を販売物流サーバ13に入力する。また、受注した部品の出荷状況等を、販売物流サーバ13に随時入力する。これにより部品の出荷業務を集中的に管理できるとともに、部品の出荷状況等に基づいて、部品在庫に関する情報をリアルタイムに近い状況で更新することができる。
【0042】
また、販売物流サーバ13は、受注履歴管理サーバとしても機能するように構成されている。具体的には、販売物流サーバ13は、販売店舗等から部品の発注を受けると、受注した部品を特定する情報と、当該部品の交換を行う農業機械を特定する情報(機体識別情報)と、受注年月日と、を関連付けた受注履歴を記録する。これにより、農業機械のメーカ側で、どの機体のどの部品がいつ交換されたか、という情報を管理することができる。従って、例えば次の部品交換時期等を機体ごとに予測することができる。
【0043】
注文管理サーバ14は、クライアントからの部品の発注を受け付けて処理するように構成されている。注文管理サーバ14のクライアントが部品の発注を行う際には、当該クライアントは、発注する部品を特定する情報、及び前記部品の個数を指定する情報を、注文管理サーバ14に対して送信する。注文管理サーバ14は、部品の発注を受け付けると、前記部品及び個数を特定する情報と、発注元を特定する情報と、を販売物流サーバ13に送信する。そして、販売物流サーバ13が上記情報を記憶することにより、部品の受注が完了する。
【0044】
なお、販売物流サーバ13とは別に注文管理サーバ14を設けたのは、以下のような理由による。即ち、販売物流サーバ13は、農業機械メーカの営業時間外はメンテナンス等のためにオフラインとなる。一方、注文管理サーバ14は基本的に一日中オンラインで稼動しており、販売物流サーバ13がオフラインのときには、受注した部品及び個数と発注元を特定する情報を、キューに一時保存しておく。そして、注文管理サーバ14は、販売物流サーバ13がオンラインになると、キューに貯めておいた情報を前記販売物流サーバ13に送信するように構成されている。このように、注文管理サーバ14によって、部品の発注を一日中受け付けることが可能となっている。
【0045】
次に、携帯電話2の構成について説明する。
【0046】
携帯電話2は、ディスプレイ21を備え、インターネットに接続可能な通常の携帯電話を用いることができる。また、この携帯電話は、英数字を入力可能なテンキーと、各種項目を選択可能な十字キーと、を有する入力装置22を備えている。もっとも、入力装置22は例えばタッチパネル式の入力装置など、他の適宜の入力装置であって良い。
【0047】
この携帯電話2は、農業機械のサービスマン等が持ち歩くものである。この携帯電話2には、携帯電話サーバ11にアクセスするための専用のプログラム(クライアントアプリケーション)がインストールされている。
【0048】
前記クライアントアプリケーションは、入力装置22が操作されるのに応じて適宜の情報を携帯電話サーバ11に送信する機能と、携帯電話サーバ11から情報を受信してディスプレイ21に表示する機能と、を有している。
【0049】
また、携帯電話2はカメラ付き携帯電話であり、当該カメラによってQRコード(登録商標)を読み取って、当該QRコードに記憶された情報を取得することができるように構成されている。なお、近年では、現在日本で発売されているカメラ付き携帯電話の多くがQRコードの読取りに対応しているので、携帯電話2としては一般的な携帯電話を用いることができるとともに、QRコードを読み取るための特別なリーダ等を用意する必要が無い。
【0050】
図2に、本実施形態の情報提供システム1の対象となる農業機械としてのトラクタ4の側面図を示す。このトラクタ4は、左右一対の前輪5と左右一対の後輪6とを有する四輪駆動式の農用トラクタであり、前輪5の舵角を変更して車体の操向操作を行うためのステアリングハンドル7を有する。
【0051】
このトラクタ4の適宜の位置には、QRコードが印刷されたシール9が貼り付けられている。シール9を貼り付ける位置は特に限定されないが、当該シール9を見つけ易く、QRコードを読み取り易く、しかもQRコードが汚れにくい位置であることが好ましい。従って、例えば図2に示すように、ステアリングコラム8の側面などがシール9を貼り付ける位置として好適である。
【0052】
前記QRコードには、トラクタ4の型式を特定する情報(型式特定情報)と、当該トラクタ4の機体識別情報と、が情報として記憶されている。前記型式特定情報は、例えば、英数字からなる文字列データで表現されたトラクタ4の型式である。また前記機体識別情報とは、トラクタ4を個別に識別可能な情報であり、例えば、複数桁の数字からなる文字列データで表現されたトラクタ4のシリアルナンバーである。
【0053】
次に、前記クライアントアプリケーションの機能について、サービスマンが携帯電話2で部品を発注するまでの流れに沿って説明する。
【0054】
例えば図2のトラクタ4にトラブルが発生した場合、農業機械のサービスマンは、顧客の元に赴き、当該トラクタ4を現場で検分してトラブルの原因を特定する。ここで、トラブルの原因を特定するために、サービスマニュアル等の閲覧が必要な場合がある。前述のように、本実施形態の情報提供システム1は携帯電話2から利用することができるので、サービスマンは現場でサービスマニュアル等を確認することができる。
【0055】
以下、具体的に説明する。本実施形態の情報提供システム1を携帯電話2から利用しようとするサービスマン(以下、単に利用者という)は、まず、当該携帯電話2において前記クライアントアプリケーションを起動する。
【0056】
クライアントアプリケーションが起動されると、当該クライアントアプリケーションは、QRコード読取モードに移行する。このQRコード読取モードでは、携帯電話2のカメラがアクティブになり、当該カメラによって農業機械が備えるQRコードを読み取ることができるようになる。そして、農業機械が備える前記QRコードを携帯電話2のカメラで読み取ることにより、クライアントアプリケーションは、前記農業機械の型式特定情報と機体識別情報とを取得することができるように構成されている。具体的には、例えば図2のトラクタ4において、シール9に印刷されたQRコードを読み取ることにより、当該トラクタ4の型式情報及び機体識別情報をクライアントアプリケーションが取得できる。これにより、手作業で型式情報等を入力する構成と比べて、簡単かつ確実に、農業機械の型式等を特定することができる。
【0057】
QRコードを読み取ることにより農業機械の型式特定情報及び機体識別情報を取得すると、クライアントアプリケーションは、利用者の操作に応じて情報提供サーバ12と通信を行い、当該情報提供サーバ12から各種の情報を取得することができるように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0058】
農業機械が備えるQRコードを携帯電話2で読み取った後、利用者が適宜の「取扱説明書閲覧」操作を行うと、クライアントアプリケーションは、取扱説明書のデータを要求するメッセージと、型式特定情報と、を携帯電話サーバ11を介して情報提供サーバ12に送信するように構成されている。情報提供サーバ12は、取扱説明書提供サーバとして機能することにより、受信した型式特定情報から特定される型式の農業機械に関する取扱説明書のデータを、携帯電話サーバ11を介して携帯電話2に送信する。そして、携帯電話2が取扱説明書のデータを受信すると、クライアントアプリケーションは、前記取扱説明書の内容をディスプレイ21に表示するように構成されている。
【0059】
例えば、図2のトラクタ4からQRコードを読み取った後、利用者が「取扱説明書閲覧」操作を行うことにより、携帯電話2のディスプレイでトラクタ4の取扱説明書を閲覧することができる。このように、農業機械が備えるQRコードから取得した情報に基づいて情報提供サーバ12から取扱説明書データを取得することにより、所望の取扱説明書を簡単に閲覧することができる。
【0060】
また、農業機械が備えるQRコードを携帯電話2で読み取った後、利用者が適宜の「ニュース閲覧」操作を行うと、クライアントアプリケーションは、農業機械の整備に関するニュースを要求するメッセージと、型式特定情報と、を携帯電話サーバ11を介して情報提供サーバ12に送信するように構成されている。情報提供サーバ12は、ニュース提供サーバとして機能することにより、受信した型式情報から特定される型式の農業機械の整備に関するニュースを、携帯電話サーバ11を介して携帯電話2に送信する。携帯電話2が整備に関するニュースを受信すると、クライアントアプリケーションは、前記ニュースの内容をディスプレイ21に表示するように構成されている。
【0061】
例えば、図2のトラクタ4からQRコードを読み取った後、利用者が「ニュース閲覧」操作を行うことにより、携帯電話2のディスプレイでトラクタ4の整備に関するニュースを閲覧することができる。このように、農業機械が備えるQRコードから取得した情報に基づいて情報提供サーバ12からニュースを取得することにより、当該農業機械に関係しているニュースのみを簡単に閲覧することができる。
【0062】
利用者であるサービスマンは、携帯電話2のディスプレイ21に表示された取扱説明書を確認しながら、農業機械に発生しているトラブルの原因を特定していくことができる。また、利用者であるサービスマンは、携帯電話2のディスプレイ21に表示された農業機械の整備に関するニュースを確認し、例えば当該農業機械に何らかのウィークポイントがあることを示すニュースがある場合には、当該ウィークポイントを優先的に点検することにより、当該農業機械に発生しているトラブルの原因を早期に特定することが期待できる。
【0063】
利用者であるサービスマンは、農業機械に発生しているトラブルの原因を特定すると、部品の交換が必要か否かを判断する。部品の交換が必要であると判断した場合、利用者は、以下のようにして部品の発注を行う。
【0064】
まず、利用者は、どの部品を発注するかを特定する。具体的には、利用者が適宜の「部品検索」操作を行うと、クライアントアプリケーションは、部品の検索を要求するメッセージと、QRコードから取得した型式特定情報と、を携帯電話サーバ11を介して情報提供サーバ12に送信するように構成されている。情報提供サーバ12は、部品カタログサーバとして機能することにより、受信した型式情報から特定される機種に適合する部品を検索し、当該検索結果を携帯電話サーバ11を介して携帯電話2に送信する。
【0065】
携帯電話2が前記検索結果を受信すると、クライアントアプリケーションは、当該検索結果に含まれる部品を一覧表にしてディスプレイ21に表示する。なお、部品の検索を行う際には、ブロックを指定して絞り込み検索を行うことができる。例えば、図2のトラクタ4からQRコードを読み取った後、利用者が「エンジン」を指定して「部品検索」操作を行うことにより、携帯電話2のディスプレイでトラクタ4のエンジンに用いられている部品の一覧表を閲覧することができる。このように、農業機械が備えるQRコードから取得した情報に基づいて情報提供サーバ12で部品の検索を行うことにより、当該農業機械に適合する部品を簡単に調べることができる。
【0066】
次に、利用者は、携帯電話2のディスプレイ21に表示された部品の一覧表の中から、発注する部品を特定する。具体的には、クライアントアプリケーションは、利用者が適宜の操作を行うことにより、前記部品の一覧表の中から、発注予定の部品を選択することができるように構成されている。このように、所望の型式の農業機械に適合する部品の一覧表の中から発注予定の部品を指定するので、当該農業機械に適合しないような部品を誤って発注してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0067】
なお、クライアントアプリケーションは、利用者が適宜の「図面表示」操作を行うことにより、前記一覧表の中で選択した部品が描かれている図面の図面データを、情報提供サーバ12から取得し、ディスプレイ21に表示することができるように構成されている。これにより、利用者は、発注しようとしている部品を図面で確認することができる。
【0068】
利用者は、発注予定の部品を全て選択すると、実際に部品の発注を行う。具体的には、クライアントアプリケーションは、利用者が適宜の「発注」操作を行うことにより、前記発注する部品を特定する情報と、農業機械が備えるQRコードから取得した機体識別番号と、を携帯電話サーバ11を介して注文管理サーバ14に送信するように構成されている。注文管理サーバ14は、携帯電話2から部品の発注を受けると、発注元を特定する情報と、前記発注する部品を特定する情報と、前記機体識別番号と、を販売物流サーバ13に送信する。
【0069】
販売物流サーバ13においては、発注元を特定する情報と、発注する部品を特定する情報と、を関連付けて記憶する。これにより、部品の受注処理が終了する。
【0070】
また、販売物流サーバ13は、受注履歴管理サーバとして機能することにより、発注する部品を特定する情報と、機体識別情報と、受注年月日と、を記憶する。これにより、農業機械の機体ごとに、どの部品をいつ交換したか、という部品受注履歴を記憶しておくことができる。即ち、例えばトラクタ4がエンジンのタイミングベルトをいつ交換したか、という情報をメーカ側で管理することができるので、当該タイミングベルトの次の交換時期をメーカ側で予測することができるなど、農業機械のメンテナンスサービスや部品流通の効率化に役立てることができる。
【0071】
以上で説明したように、本実施形態における農業機械用の情報提供システム1は、以下のように構成されている。即ち、この情報提供システム1は、携帯電話2がアクセス可能な情報提供サーバ12を備える。携帯電話2は、農業機械に設けられたQRコードから当該農業機械の型式を特定可能な型式特定情報を取得し、当該型式特定情報を情報提供サーバ12に送信可能である。情報提供サーバ12は、前記型式特定情報に基づいて特定される型式の農業機械に関する情報を、携帯電話2に提供可能である。
【0072】
即ち、農業機械の型式を特定するための情報を携帯電話に手作業で入力しようとすると、手間が掛かるうえに入力ミスの原因ともなる。この点、上記のようにQRコードを用いることにより、農業機械の型式を特定するための情報を携帯電話にミスなく簡単に取り込むことができ、しかも前記QRコードから取り込んだ情報に基づいて、情報提供サーバから農業機械に関する情報を得ることができる。従って、必要な情報を携帯電話で簡単に得ることができるので、農業機械に関する情報を現場で簡単に確認したいという要望に応えることができる。また、一般的な携帯電話はQRコードの読取り機能を備えているので、QRコードを読み取るための特別なリーダが必要なく、上記の情報提供システムを安価に利用することができる。
【0073】
また本実施形態の情報提供システム1において、情報提供サーバ12は、携帯電話2から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の農業機械に適合可能な部品を検索可能であるとともに、当該検索結果を携帯電話2に送信可能な部品カタログサーバとして機能することができる。
【0074】
これにより、型式を特定された農業機械に適合する部品を携帯電話2で簡単に検索することができる。
【0075】
また本実施形態の情報提供システム1において、情報提供サーバ12は、携帯電話2から送信された型式特定情報に基づいて特定された型式の農業機械の取扱説明書データを、携帯電話2に送信可能な取扱説明書提供サーバとして機能することができる。
【0076】
これにより、農業機械の取扱説明書を携帯電話2で簡単に閲覧することができる。
【0077】
また本実施形態の情報提供システム1において、情報提供サーバ12は、携帯電話2から送信された型式特定情報に基づいて特定された型式の農業機械の整備に関するニュースを、携帯電話2に送信可能なニュース提供サーバとして機能することができる。
【0078】
これにより、農業機械の整備に関するニュースを携帯電話で簡単に確認することができる。
【0079】
また本実施形態の情報提供システム1は、以下のように構成されている。即ち、情報提供システム1は、受注履歴管理サーバとしての販売物流サーバ13を備える。携帯電話2は、農業機械に設けられた前記QRコードから、農業機械それぞれを個別に識別可能な機体識別情報を取得することが可能である。携帯電話2は、前記機体識別情報と、発注する部品を特定する情報と、を販売物流サーバ13に送信可能である。販売物流サーバ13は、前記機体識別情報と、前記発注する部品を特定する情報と、に基づいて、機体ごとの部品受注履歴を記録する。
【0080】
これにより、どの機体がどの部品を交換したかという情報を販売物流サーバ13に蓄積することができるので、例えば、各機体の次の部品交換時期を情報提供システム1側で把握することができる。また、機体識別情報は、農業機械を個別に識別可能な情報であるために文字数が多くなりがちであり、携帯電話に手作業で入力しようとすると手間が掛かる。この点、上記のようにQRコードを用いることにより、機体識別情報を簡単に携帯電話2に取り込むことができる。
【0081】
また、本実施形態の農業機械としてのトラクタ4には、QRコードが付されている。
【0082】
このトラクタ4は、当該トラクタ4に付されているQRコードから携帯電話2で型式特定情報を読み取り、当該型式特定基づいて、情報提供システム1から当該トラクタ4に関する各種の情報を携帯電話2で得ることができる。従って、当該トラクタ4の修理及びメンテナンス等のサービスを、速やかに且つ確実に行うことができる。
【0083】
以上に本発明の好適な実施形態について説明したが、上記の構成は、例えば以下のように構成することができる。
【0084】
図1は情報提供システムの構成を概念的に図示したものであって、情報提供システムの構成を限定するものではない。例えば、上記サーバは、互いにLANケーブル等によって接続されたサーバ専用機としても良いし、サーバラックに取り付けられたサーバモジュールとしても良いし、汎用コンピュータにサーバ機能を持たせたものでも良い。また各サーバの機能を複数のハードウェアで実現する構成の代わりに、携帯電話サーバ11、情報提供サーバ12、販売物流サーバ13及び注文管理サーバ14としての機能を、例えば1台のハードウェアで実現しても良い。
【0085】
また上記実施形態では、部品カタログサーバ、取扱説明書提供サーバ及びニュース提供サーバの機能を、情報提供サーバ12が兼ねる構成としたが、それぞれのサーバの機能を別々のハードウェアで実現しても良いことは勿論である。
【0086】
上記実施形態には、型式特定情報及び機体識別情報をQRコードに記憶しておく構成としたが、この構成に限らない。例えば、QRコードに型式特定情報のみを記憶する構成でも良い。ただし、この構成の場合は、情報提供システム1側で作業機械の機体識別情報を得ることができないので、機体ごとの部品の受注履歴を情報提供システム1で管理することができない。従って、上記実施形態のように型式特定情報及び機体識別情報をQRコードに記憶しておく構成が好ましい。
【0087】
また、シリアルナンバー等の機体識別情報に基づいて、当該シリアルナンバーが付されている作業機械の型式を情報提供システム1側で特定することができる場合、QRコードには前記シリアルナンバーのみを記憶しておいても良い。この場合、当該シリアルナンバーが機体識別情報と型式特定情報を兼ねることになる。
【0088】
上記実施形態では、携帯電話2に専用のクライアントアプリケーションがインストールされているとしたが、これに代えて、情報提供サーバが携帯電話に送信する情報はHTML形式のデータとし、携帯電話2側では、当該携帯電話2が予め備えている汎用のウェブブラウザによって情報提供サーバ(WEBサーバ)からの情報を閲覧するように構成しても良い。
【0089】
作業機械の型式を特定するための型式特定情報としては、当該型式の作業機械に関する取扱説明書、部品カタログ、整備に関するニュース等を適切に取得することができる情報であれば、どのような情報でも良い。例えば、上記の変形例のように汎用のウェブラウザで情報を閲覧する構成とした場合、作業機械の型式特定情報として、当該型式の作業機械に関する取扱説明書等のURLをQRコードに記憶しておけば、所望の情報に直接アクセスできるので便利である。
【符号の説明】
【0090】
1 情報提供システム
2 携帯電話
4 トラクタ(作業機械)
11 携帯電話サーバ
12 情報提供サーバ(部品カタログサーバ、取扱説明書提供サーバ、ニュース提供サーバ)
13 販売物流サーバ(受注履歴管理サーバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話がアクセス可能な情報提供サーバを備え、
前記携帯電話は、作業機械の型式を特定可能な型式特定情報を、当該作業機械に設けられたQRコード(登録商標)から取得し、当該型式特定情報を前記情報提供サーバに送信可能であり、
前記情報提供サーバは、前記型式特定情報に基づいて特定される型式の作業機械に関する情報を、前記携帯電話に提供可能であることを特徴とする作業機械用情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械用情報提供システムであって、
前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械に適合可能な部品を検索可能であるとともに、当該検索結果を前記携帯電話に送信可能な部品カタログサーバであることを特徴とする作業機械用情報提供システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械用情報提供システムであって、
前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械の取扱説明書データを、前記携帯電話に送信可能な取扱説明書提供サーバであることを特徴とする作業機械用情報提供システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の作業機械用情報提供システムであって、
前記情報提供サーバは、前記携帯電話から送信された前記型式特定情報に基づいて特定された型式の作業機械の整備に関するニュースを、当該携帯電話に送信可能なニュース提供サーバであることを特徴とする作業機械用情報提供システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の作業機械用情報提供システムであって、
受注履歴管理サーバを備え、
前記携帯電話は、作業機械それぞれを個別に識別可能な機体識別情報を、前記作業機械に設けられた前記QRコードから取得することが可能であるとともに、前記機体識別情報と、発注する部品を特定する情報と、を前記受注履歴管理サーバに送信可能であり、
前記受注履歴管理サーバは、前記機体識別情報と、前記発注する部品を特定する情報と、に基づいて、機体ごとの部品受注履歴を記録することを特徴とする作業機械用情報提供システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の作業機械用情報提供システムの対象となる作業機械であって、
前記QRコードが付されていることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−53795(P2011−53795A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200305(P2009−200305)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)