説明

作業機械車両のキャビン用空調装置

【課題】頭寒足熱の温度分布を実現する。
【解決手段】前側吹出ダクト5の下方側空間内に、ヒーターコア13からの空気流出方向に対して直交する水平方向で傾斜させたガイド板21を設けて下方側空間を空気吹付面側空間5cと反吹付面側空間5dとに仕切るとともに、フット・デフロスタ吹出口5bを反吹付面側空間5dと連通するように設けている。
これにより、ガイド板21で仕切られた空気吹付面側空間5cは、主にヒーターコア13の下方側から流出する冷風が上方に設けたフェイス吹出口5aへと向かう流れとなり、ガイド板21で仕切られた反吹付面側空間5dは主にヒーターコア13の上方側から流出する温風が流入し、この空間に連通するように設けたフット・デフロスタ吹出口5bへと向かう流れとなる。このように、簡単な構造のガイド板21を設けて冷風と温風との流れを交差させることにより、頭寒足熱の温度分布を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設・土木・農業用などの各種作業機械用車両のキャビン(運転室)に搭載されるキャビン用空調装置に関するものであり、詳しくはキャビン内の運転者足元側方位置に設置して運転者に対して合理的に温調された空調風を送り、狭い設置スペースを有効に活用できて作業環境を快適に整えることができるキャビン用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設・土木・農業用などの各種作業機械用車両に搭載されるキャビン用空調装置では、キャビン内部のスペースが小さいため、運転席の後方や下方に空調ユニット(空調装置本体)を配置して、この空調ユニットからキャビン内の各吹出口まで送風ダクトを配設している。
【0003】
しかし、更にキャビンスペースが狭い小型のミニショベルなどの作業機械用車両では、運転席の後方や下方がすぐにエンジン(E/G)ルームとなっているため、空調ユニットを配置するスペースが取れない場合がある。下記の特許文献1、2には、この空調ユニットをキャビン内の運転席側方に搭載したものが示めされている。
【特許文献1】実開平6−53223号公報
【特許文献2】特開2000−127738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、空調ユニットを運転者の足元側方位置に搭載するとともに、よりコンパクトに構成するため、吹出温度の調整手段としてエアミックスドアを用いたエアミックス方式ではなく、ウォーターバルブを用いたリヒート方式を採用している。図7は、現在考案中の空調装置で採用しているヒーターコア13の概要を示す正面図である。運転者の足元側方位置に搭載するため天地方向に縦長となっているとともに、加熱能力を充分に発揮するためUターン構造ではなく全パス構造となっている。
【0005】
つまり、温水流入パイプ13aで供給された温水は、ウォーターバルブ19で流量が調整されたうえ分配側タンク部13bから多数のチューブに分配供給される。そして、チューブ&フィンで構成されたコア部13cを流れるうちに通風される空調用空気と熱交換して空気を加熱する。放熱した温水は各チューブから流出して集合側タンク部13d内で集合し、温水流出パイプ13eで戻る流れとなる。
【0006】
しかしながら、このような全パスタイプのヒーターコアは、充分な温水流量がある場合には加熱能力を充分に発揮するが、温水流量の少ない場合には図7に示すように、温水が流出入部近傍だけで流れてしまい、上方にだけ温度の高い部分(ハッチングで示す)が形成されるという問題点がある。
【0007】
図6は、検討段階での前側吹出ダクト5内の構造を示す斜視図である。上記のような温度分布(例えば、高温部:50℃、低温部:10℃)となると、室内ユニット3の冷温風吹出口17の上方からは温風が吹き出され、その温風が吹出ダクト5の上方に設けられたフェイス吹出口5aから車両運転者の上半身に向けて吹き出されてしまう。
【0008】
また、冷温風吹出口17の下方からは冷風が吹き出され、その冷風が吹出ダクト5の下方に設けられたフット・デフロスタ吹出口5bから車両運転者の足元や車両前方窓ガラスの内面に向けて吹き出されてしまう。このような吹き出しは頭寒足熱と全く逆で、車両運転者にとっては不快なだけであるうえに、車両前方窓ガラスを曇らせることにもなり兼ねず、問題である。
【0009】
発明者らは検討段階において、図6に示すように、冷温風吹出口17の下方部に板部材20を設けて冷風の吹き出しを抑えることを行っている。しかし、モードや温水流量に応じて高さを可変するなどしないと、最大冷房時や最大暖房時には風量低下が大きく、温度分布改善効果が充分ではなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、頭寒足熱の温度分布を実現することのできる作業機械車両のキャビン用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項6に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空調用空気の通路を形成する空調ケース(5、10)と、
空調ケース(5、10)内に配置されて流通する空調用空気を加熱する天地方向に縦長のヒーターコア(13)と、
ヒーターコア(13)の空気流出側に形成された天地方向に縦長のダクト部(5)と、
ダクト部(5)の上方側に形成されて主に冷風を吹き出すためのフェイス吹出口(5a)と、
ダクト部(5)の下方側に形成されて主に温風を吹き出すためのフット・デフロスタ吹出口(5b)とを備え、
ヒーターコア(13)が下方側よりも上方側が熱くなり易い傾向を持つ作業機械車両のキャビン用空調装置において、
ダクト部(5)の下方側空間内に、ヒーターコア(13)からの空気流出方向に対して直交する水平方向で傾斜させたガイド板(21)を設けて下方側空間を空気吹付面側空間(5c)と反吹付面側空間(5d)とに仕切るとともに、フット・デフロスタ吹出口(5b)を反吹付面側空間(5d)と連通するように設けたことを特徴としている。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、例えば温度調節状態でヒーターコア(13)への温水流量が少なく、ヒーターコア(13)の上方側にだけ温度の高い部分が形成された温度分布となった場合、ヒーターコア(13)の下方側から流出する冷風は傾斜させたガイド板(21)に当たって空気吹付面側空間(5c)の広くなった側方側へと寄せられたうえ、その側方側を上へと流れる。
【0013】
一方、ヒーターコア(13)の上方側から流出する温風は、空気吹付面側空間(5c)の広くなった側方側には下から上がってくる冷風の主流が流れているため、反対側の反吹付面側空間(5d)の広くなった側方側へと寄せられて、反吹付面側空間(5d)へ流入するようになる。
【0014】
これにより、ガイド板(21)で仕切られた空気吹付面側空間(5c)は、主にヒーターコア(13)の下方側から流出する冷風が上方に設けたフェイス吹出口(5a)へと向かう流れとなり、ガイド板(21)で仕切られた反吹付面側空間(5d)は主にヒーターコア(13)の上方側から流出する温風が流入し、この空間に連通するように設けたフット・デフロスタ吹出口(5b)へと向かう流れとなる。このように、簡単な構造のガイド板(21)を設けて冷風と温風との流れを交差させることにより、頭寒足熱の温度分布を実現することができるようになる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置において、当該キャビン用空調装置を車両運転者の左右いずれかの側方に配置した場合、反吹付面側空間(5d)が車両運転者側に大きく形成される方向にガイド板(21)を傾斜させたことを特徴としている。この請求項2に記載の発明によれば、反吹付面側空間(5d)が車両運転者側に大きく形成されることにより、車両運転者の足元および車両運転者の正面側にある車両前面窓ガラスに、温風を供給することが容易な構成とすることができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置において、ガイド板(21)をダクト部(5)と一体に形成したことを特徴としている。この請求項3に記載の発明によれば、簡単な構成とできることより、空調装置のコストを抑えることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置において、ガイド板(21)を可動式とし、フット・デフロスタ吹出口(5b)が空気吹付面側空間(5c)に連通している状態と反吹付面側空間(5d)に連通している状態とを切り換えられるようにしたことを特徴としている。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、最大暖房状態、もしくは最大冷房状態にて空調用空気を吹き出す場合、ガイド板(21)は通風抵抗にしかならないため、不要な時にはガイド板(21)を可動させて両吹出口(5a、5b)とも空気吹付面側空間(5c)に連通している状態とするものである。これにより、最大暖房運転時、もしくは最大冷房運転時には通風抵抗が大きくて風量が低下する状態を防ぐことができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置において、空調用空気を所定温度に温度調節して吹出口(5a、5b)から吹き出す場合、ガイド板(21)をフット・デフロスタ吹出口(5b)が反吹付面側空間(5d)に連通する側の位置とすることを特徴としている。この請求項5に記載の発明によれば、温度調節時にはガイド板(21)を働かせて請求項1に示した頭寒足熱の空調状態を実現することができる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明では、請求項4に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置において、最大暖房状態、もしくは最大冷房状態にて吹出口(5a、5b)から空調用空気を吹き出す場合、ガイド板(21)をフット・デフロスタ吹出口(5b)が空気吹付面側空間(5c)に連通する側の位置とすることを特徴としている。
【0021】
この請求項6に記載の発明によれば、最大暖房運転時、もしくは最大冷房運転時にはフット・デフロスタ吹出口(5b)も空気吹付面側空間(5c)に連通させることにより、通風抵抗を小さくして大きな風量で効率良くクールダウンやウォームアップを行うことができる。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付した図1ないし図4を参照しながら詳細に説明する。図1は、作業機のキャビン1内における空調装置の全体構成を示す側面図である。また図2は、図1中の室内ユニット3の構造を示す断面図であり、(a)は平面断面視、(b)は正面断面視である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態におけるキャビン用空調装置は、建設・土木・農業用など各種作業機械車両(例えば、油圧ミニショベルなど)のキャビン(運転室)1内に搭載されるものであり、より詳しくは運転席2の左右いずれかの側方(本実施形態では運転席2の右側)に搭載されている。
【0024】
本空調装置は大別して、キャビン1内の車両運転者の足元側方位置に設置されて吸い込んだ空気を空調して吐出する室内ユニット(空調装置本体)3と、室内ユニット3で空調された空気を各部の吹き出し口に導くダクト5、8とからなり、車両の上下、前後の方向に対して図1に示す形態で配置されている。
【0025】
室内ユニット3は扁平な直方体状であって、キャビンの乗降用ドアに対して反対側の壁面に沿って設けられている。室内ユニット3は、主平面を壁面に沿わせて設けられている。室内ユニット3は、車室内の後ろ側に配置される部位に空気吸い込み口を有し、車室内の前側に配置される部位に空気吹き出し部を有し、それらの間に送風装置部と、温度調節部とを有する。
【0026】
室内ユニット3は、図2に示すように、空調ケース10内の車両後方側から前方側へ向かって、内外気導入切換部としての内気導入口14a、外気導入口14b、および内外気切換ドア15と、送風機11と、空気を冷却するエバポレータ12と、エバポレータ12を通過した空気を加熱するヒーターコア13とを順に内蔵しており、送風機11からの送風が概ね車両後方側から前方側へと流れるように配置している。
【0027】
まず、空調ケース10は、キャビン1内へ向かって送風する空調空気の通路を形成するものであり、ポリプロピレンのようなある程度弾性を有して強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、大きくは右ケースと左ケースとに分割して形成されている。分割されたケースは、送風機11、エバポレータ12、ヒーターコア13および内外気切換ドア15などを収納した後に、金属バネクリップやネジなどの締結手段により一体に結合されて空調ケース10を構成する。
【0028】
送風機11は空調用空気を送風するものであり、具体的には両軸ファンであり、両軸モータ11cで両側の遠心多翼(シロッコ)ファン11a、11bを駆動しており、この遠心多翼ファン11a、11bの回転駆動により、空調ケース10内に吸い込まれた空気が、エバポレータ12に向けて送風されるようになっている。なお、その回転軸は略垂直に配置されている。
【0029】
そして、上側ファン11aの吸い込み側は、常時キャビン1内の空気(内気)を吸い込む内気導入口14aとなっており、上側ファン11aとの間には目の粗い内気用フィルタ6を配設している。また、下側ファン11bの吸い込み側には内外気切換部が構成されており、この内外気切換部内の内外気切換手段としての内外気切換ドア15により内気(キャビン内空気)導入口14aまたは外気(キャビン外空気)導入口14bが切換開閉されて外気と内気とが切換導入される(図2(a)参照)。
【0030】
内外気切換ドア15は平板状のドアであり、垂直方向に配置されたシャフト(回転軸)と一体に結合されており、このシャフトと共に略車両前後方向に回動可能となっている。なお、図1に示すように、外気導入口14aの上流側は、キャビン1下面の外気取り入れ口と接続する外気導入口4が設けられている。
【0031】
そして、下側ファン11bと内外気切換ドア15との間には目の細かい外気用フィルタ7を配設している。これら内気用、外気用のフィルタ6、7は、キャビン内から脱着が可能で、メンテナンスが容易となっている。また、図示しないが、外気用フィルタ7の取り付け部下方の空調ケース10には、内気導入口14aから入った水を室内ユニット3の外へ排出するための孔が設けられている。
【0032】
本実施形態では、内気導入口14aが、室内ユニット3の座席近傍の面に開設されている。内気導入口14aは、室内ユニット3の側面に上下方向に延在して開設された開口として形成されている。内気導入口14aは、室内の上側に位置する開口と、下側に位置する開口とを有する。
【0033】
空調ケース10内は、送風機11およびその上流側において上下に2分割されている。空調ケース10内には、その上下方向のほぼ中央に、空調ケース10内の上流側部位を上下に2分割する隔壁が設けられている。送風機11は、隔壁より上側の空気通路に配置された上部送風機と、隔壁より下側の空気通路に配置された下部送風機と、これら2つの送風機間に配置された一つの電動機とを有する。
【0034】
上部送風機と下部送風機とのそれぞれは、送風用シュラウドと、その中に配置された上下吸い込み型のシロッコファン11a、11bとを有する。上部送風機のシロッコファン11aと、下部送風機のシロッコファン11bとは、電動機11cの上下両側から延び出す回転軸とそれぞれ連結されており、電動機11cによって回転駆動される。
【0035】
隔壁より上側の空気通路は内気導入口14aのうちの上側開口と常時連通している。隔壁より下側の空気通路は、内外気切換ドア15の切り換え作動に伴って、内気導入口14aのうちの下側開口または外気導入口14bと選択的に連通する。この構成は、内気導入口14aを大きく開設することを許容するとともに、その内気導入口14aがキャビン内の床面に近い部位で開口する割合を減らすことを可能とする。
【0036】
しかも、内気導入口14aのうちの下側開口は、外気導入口14bと選択的に使用されるため、この下側開口が開いて空気を吸い込む機会が相対的に減り、その下側開口からキャビン内のごみなどを吸い込む機会が減らされる。さらに、例え内気導入口14aの下側開口が汚れて詰まったり、床に置かれた物品で塞がれたりすることがあっても、内気導入口14aは、室内の上下方向に延在して開口しており、加えてその上側開口が下側開口とは独立した上部送風機によって内気を導入するため、空調装置としての作動を継続することができる。
【0037】
送風機11の下流側には、所定間隔を開けて縦長の冷却用熱交換器としてのエバポレータ12が配置されている。エバポレータ12の内部には、周知の図示しない冷凍サイクルの低圧冷媒が流通し、エバポレータ12を通過する送風空気から冷媒に蒸発潜熱分が吸熱され、送風空気が冷却される。また、エバポレータ12の下方には、エバポレータ12で冷却したときに発生する凝縮水を、空調ケース10の底からキャビン1の外へと排出するドレイン孔18が形成されている。
【0038】
エバポレータ12の下流側には、所定間隔を開けて縦長の加熱用熱交換器としてのヒーターコア13が配置されている。ヒーターコア13には、図示しない車両エンジンから高温の温水(エンジン冷却水)が流通し、この温水を熱源としてエバポレータ12を通過した冷風が加熱される。尚この温水は、ウォーターバルブ19(図7参照)によって供給量がコントロールされる。
【0039】
エバポレータ12とヒーターコア13との間には、エバポレータ12で冷却された空気の一部を取り出すための冷風取出口16を設けており、ここからから導出した冷風は後側ダクト8を通り、キャビン1の後方に設けたリヤフェイス吹出口8aから運転者の後頭部や首筋に向け、主に冷房として冷風を吹き出すようになっている(図1参照)。
【0040】
なお、本実施形態では冷風取出口16を常時開としているが、ウォーターバルブ19と連動させたドアを設けて開閉させても良い。また、本実施形態では冷風取出口16をリヤフェイス吹き出しに用いているが、冷蔵ボックスなどに用いたものであっても良いし、冷風取出口16を構成していなくても良い。
【0041】
車両前方側へとエバポレータ12とヒーターコア13とを通過した空調風は、冷温風吹出口17から前側吹出ダクト(本発明で言う空調ケース、ダクト部)5に流入してそこから吹き出されるようになっている。前側吹出ダクト5には運転者の上半身に向けて主に冷房として冷風を吹き出すフェイス吹出口5aと、運転者の足元に向けて主に暖房として温風を吹き出す、もしくはキャビン1の前方窓ガラスの内面に向けて曇り防止として温風を吹き出すフット・デフロスタ吹出口5bとが設けられている。
【0042】
なお、この前側吹出ダクト5内の構造が本発明の要部であるため、詳細は後述する。図1中のCはコンソールであり、E/Gはエンジンである。本構成では図示しない空調操作パネルに設けられたスイッチによって送風機11のON−OFFおよび風量調節、図示しないコンプレッサ(冷媒圧縮機)のON−OFFを行い、図示しない空調操作パネルに設けられたレバーによって直接ウォーターバルブ19を操作する。
【0043】
また本構成は図示しない空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される図示しない空調制御装置を備えており、この制御装置の出力信号によりコンプレッサが制御される。なお、本実施形態ではウォーターバルブ19は、パネルに備えられたレバーによる直動式となっているがサーボモータによる操作方法、およびケーブルを介する操作方法を実施しても良い。
【0044】
また、本実施形態では内外気切換ドア15による内外気切り換えは手動となっているが、電動であっても良い。また、各吹出口5a、5b、8aは、それぞれに設けられた吹出グリルのルーバー部の向きと開閉とにより、風向調節および風の出る出ないを切り換える構造となっている。
【0045】
次に、上述した構成に基づいて本実施形態の作動概要を説明する。冷房時:各吹出口のルーバー部は、フェイス吹出口5aとリヤフェイス吹出口8aとを開状態、フット・デフロスタ吹出口5bを閉状態、ウォーターバルブ19は閉状態としてコンプレッサとコンデンサファンとを駆動させる。これにより、エバポレータ12は冷やされ、エバポレータ12と熱交換して冷却された空調風はヒーターコア13で暖められず、フェイス吹出口5aとリヤフェイス吹出口8aから吹き出されて運転者に冷房感を与える。
【0046】
暖房時:各吹出口のルーバー部は、フット・デフロスタ吹出口5bを開状態、フェイス吹出口5aとリヤフェイス吹出口8aとを閉状態、コンプレッサとコンデンサファンは駆動せずウォーターバルブ19を開状態とする。これにより、エバポレータ12を通過してヒーターコア13と熱交換して暖められた空調風は、フット・デフロスタ吹出口5b吹き出されて運転者に冷房感を与えるとともに、必要に応じて前方窓ガラスの曇り止めを行う。
【0047】
次に、本発明の要部について、図3、図4を用いて説明する。図3は、本発明の第1実施形態における前側吹出ダクト5内の構造を示す斜視図である。図4は、図3の前側吹出ダクト5内での温度調節時の風流れを示す側面部分断面図と、そのA−A断面図とB−B断面図とである。
【0048】
図6で説明した検討段階の前側吹出ダクト5で冷温風吹出口17の下方部に板部材20を設けたものと異なるのは、まず前側吹出ダクト5の下方側空間内に、ヒーターコア13からの空気流出方向に対して直交する水平方向で傾斜させたガイド板21を設けて下方側空間を空気吹付面側空間5cと反吹付面側空間5dとに仕切っている。それとともに、フット・デフロスタ吹出口5bを2つに仕切ったうちの反吹付面側空間5dと連通するように設けている(いずれも図4参照)。
【0049】
なお、空気吹付面側空間5cの底面は、後述するように冷風を上方向に流すために塞がっている。また、ガイド板21の高さは、ヒーターコア13上方側の温風が当たらないで流れるようにヒーターコア13の高さよりも低くしており、実際には上下にあるフェイス吹出口5aとフット・デフロスタ吹出口5bとの温度差、風量差によって決定している。
【0050】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、前側吹出ダクト5の下方側空間内に、ヒーターコア13からの空気流出方向に対して直交する水平方向で傾斜させたガイド板21を設けて下方側空間を空気吹付面側空間5cと反吹付面側空間5dとに仕切るとともに、フット・デフロスタ吹出口5bを反吹付面側空間5dと連通するように設けている。
【0051】
これによれば、例えば温度調節状態でヒーターコア13への温水流量が少なく、ヒーターコア13の上方側にだけ温度の高い部分が形成された温度分布となった場合、ヒーターコア13の下方側から流出する冷風は傾斜させたガイド板21に当たって空気吹付面側空間5cの広くなった側方側へと寄せられたうえ、その側方側を上へと流れる。
【0052】
一方、ヒーターコア13の上方側から流出する温風は、空気吹付面側空間5cの広くなった側方側には下から上がってくる冷風の主流が流れているため、反対側の反吹付面側空間5dの広くなった側方側へと寄せられて、反吹付面側空間5dへ流入するようになる(いずれも図4参照)。
【0053】
これにより、ガイド板21で仕切られた空気吹付面側空間5cは、主にヒーターコア13の下方側から流出する冷風が上方に設けたフェイス吹出口5aへと向かう流れとなり、ガイド板21で仕切られた反吹付面側空間5dは主にヒーターコア13の上方側から流出する温風が流入し、この空間に連通するように設けたフット・デフロスタ吹出口5bへと向かう流れとなる。
【0054】
このように、簡単な構造のガイド板21を設けて冷風と温風との流れを交差させることにより、頭寒足熱の温度分布を実現することができるようになる(例えば、フェイス吹出温度:30℃、フット・デフロスタ吹出温度:40℃)。
【0055】
また、当該キャビン用空調装置を車両運転者の左右いずれかの側方に配置した場合、反吹付面側空間5dが車両運転者側に大きく形成される方向にガイド板21を傾斜させている。これによれば、反吹付面側空間5dが車両運転者側に大きく形成されることにより、車両運転者の足元および車両運転者の正面側にある車両前面窓ガラスに、温風を供給することが容易な構成とすることができる。また、ガイド板21を前側吹出ダクト5と一体に形成している。これによれば、簡単な構成とできることより、空調装置のコストを抑えることができる。
【0056】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示す前側吹出ダクト5内の水平断面図である。上述した第1実施形態と異なる特徴は、ガイド板21を回転軸21aで可動式とし、フット・デフロスタ吹出口5bが空気吹付面側空間5cに連通している状態と反吹付面側空間5dに連通している状態とを切り換えられるようにしたものである。これは、ガイド板21の設置により、フット・デフロスタ吹出側の風量が低下するため、最大暖房時、もしくは最大冷房時にはガイド板21が通風抵抗とならないように可動するドア構造としたものである。
【0057】
これによれば、最大暖房状態、もしくは最大冷房状態にて空調用空気を吹き出す場合、ガイド板21は通風抵抗にしかならないため、不要な時にはガイド板21を可動させて両吹出口5a、5bとも空気吹付面側空間5cに連通している状態とするものである。これにより、最大暖房運転時、もしくは最大冷房運転時には通風抵抗が大きくて風量が低下する状態を防ぐことができる。
【0058】
また、空調用空気を所定温度に温度調節して吹出口5a、5bから吹き出す場合、ガイド板21をフット・デフロスタ吹出口5bが反吹付面側空間5dに連通する側の位置としている。これによれば、温度調節時にはガイド板21を働かせて第1実施形態で説明した頭寒足熱の空調状態を実現することができる。
【0059】
また、最大暖房状態、もしくは最大冷房状態にて吹出口5a、5bから空調用空気を吹き出す場合、ガイド板21をフット・デフロスタ吹出口5bが空気吹付面側空間5cに連通する側の位置としている。これによれば、最大暖房運転時、もしくは最大冷房運転時にはフット・デフロスタ吹出口5bも空気吹付面側空間5cに連通させることにより、通風抵抗を小さくして大きな風量で効率良くクールダウンやウォームアップを行うことができる。
【0060】
(その他の実施形態)
上述の実施形態で前側吹出ダクト5は空調ケース10と別体で構成されているが、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、前側吹出ダクト5と空調ケース10とは一体に形成されていても良い。また、フット・デフロスタ吹出口5bを前側吹出ダクト5の左右一方の側面に設けているが、前側吹出ダクト5の車両前方方向側面を利用して設けても良いし、ガイド板21によって仕切られた反吹付面側空間5d底面の三角部分を利用して設けても良い。
【0061】
また、上述の実施形態では、前側吹出ダクト5下方側の吹出口をフット・デフロスタ吹出口5bとしているが、主に温風を吹き出す吹出口であればフット吹出口でもデフロスタ吹出口でも良い。また、空調ユニット3は車両の左右どちら側に設置しても良い。また、上述の実施形態で空調ユニット3はウォーターバルブ19を用いたリヒート方式であるが、エアミックスドアを用いたエアミックス方式であっても良い。また、ガイド板21は平板形状に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】作業機のキャビン1内における空調装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1中の室内ユニット3の構造を示す断面図であり、(a)は平面断面視、(b)は正面断面視である。
【図3】本発明の第1実施形態における前側吹出ダクト5内の構造を示す斜視図である。
【図4】図3の前側吹出ダクト5内での温度調節時の風流れを示す側面部分断面図と、そのA−A断面図とB−B断面図とである。
【図5】本発明の第2実施形態を示す前側吹出ダクト5内の水平断面図である。
【図6】検討段階での前側吹出ダクト5内の構造を示す斜視図である。
【図7】現在考案中の空調装置で採用しているヒーターコア13の概要を示す正面図である。
【符号の説明】
【0063】
5…前側吹出ダクト(空調ケース、ダクト部)
5a…フェイス吹出口
5b…フット・デフロスタ吹出口
5c…空気吹付面側空間
5d…反吹付面側空間
10…空調ケース
13…ヒーターコア
21…ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通路を形成する空調ケース(5、10)と、
前記空調ケース(5、10)内に配置されて流通する空調用空気を加熱する天地方向に縦長のヒーターコア(13)と、
前記ヒーターコア(13)の空気流出側に形成された天地方向に縦長のダクト部(5)と、
前記ダクト部(5)の上方側に形成されて主に冷風を吹き出すためのフェイス吹出口(5a)と、
前記ダクト部(5)の下方側に形成されて主に温風を吹き出すためのフット・デフロスタ吹出口(5b)とを備え、
前記ヒーターコア(13)が下方側よりも上方側が熱くなり易い傾向を持つ作業機械車両のキャビン用空調装置において、
前記ダクト部(5)の下方側空間内に、前記ヒーターコア(13)からの空気流出方向に対して直交する水平方向で傾斜させたガイド板(21)を設けて前記下方側空間を空気吹付面側空間(5c)と反吹付面側空間(5d)とに仕切るとともに、前記フット・デフロスタ吹出口(5b)を前記反吹付面側空間(5d)と連通するように設けたことを特徴とする作業機械車両のキャビン用空調装置。
【請求項2】
当該キャビン用空調装置を車両運転者の左右いずれかの側方に配置した場合、前記反吹付面側空間(5d)が車両運転者側に大きく形成される方向に前記ガイド板(21)を傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置。
【請求項3】
前記ガイド板(21)を前記ダクト部(5)と一体に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置。
【請求項4】
前記ガイド板(21)を可動式とし、前記フット・デフロスタ吹出口(5b)が空気吹付面側空間(5c)に連通している状態と前記反吹付面側空間(5d)に連通している状態とを切り換えられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置。
【請求項5】
空調用空気を所定温度に温度調節して前記吹出口(5a、5b)から吹き出す場合、前記ガイド板(21)を前記フット・デフロスタ吹出口(5b)が前記反吹付面側空間(5d)に連通する側の位置とすることを特徴とする請求項4に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置。
【請求項6】
最大冷房状態、もしくは最大暖房状態にて前記吹出口(5a、5b)から空調用空気を吹き出す場合、前記ガイド板(21)を前記フット・デフロスタ吹出口(5b)が前記空気吹付面側空間(5c)に連通する側の位置とすることを特徴とする請求項4に記載の作業機械車両のキャビン用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−37277(P2008−37277A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214919(P2006−214919)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】