説明

作業機械

【課題】 エンジンスイッチ及びアクセルノブをキャビン取外し状態でも操作できるようにする。
【解決手段】 キャビン7の内カバー17の前部上側に操作盤取付部18を設ける。一方、エンジンを始動/停止させるエンジンスイッチ13と、エンジン回転数を調整するアクセルノブ14を枠体19に組み込んで操作盤16を構成し、この操作盤16を操作盤取付部18に着脱自在に取付けることにより、製造段階でのテスト時や使用段階でのメンテナンス時にキャビン7を取外した状態でもエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を操作できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャビンを備えた油圧ショベル等の作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとって従来の技術と問題点を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図6に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が垂直軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5を備えた作業(掘削)アタッチメント6が取付けられて構成される。
【0004】
また、上部旋回体2にはキャビン7が設けられ、図7,8に示すようにこのキャビン7の内部に運転席8と、走行、旋回等の機械動作、及びアタッチメント起伏等の作業動作を行わせるための各種操作設備や計器類が設けられる。
【0005】
たとえば、レバー類として、運転席8の前方に走行レバー9,9、左右両側に作業用レバー10,10が設けられる一方、運転席8の右側にコントロールボックス(コンソールボックスともいう)11が設けられ、ここに各種スイッチ及び計器、ディスプレイ等が設けられる(特許文献1参照)。
【0006】
また、他の必須の操作設備として、エンジンを始動/停止させるためのエンジンスイッチ13、及びエンジン回転数(出力)を調整するためのアクセルノブ14が設けられる。
【0007】
従来、このエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14は、キャビン7の内面側、すなわち、エアコンのダクトやハーネスを覆うためにキャビン7の右内面に取付けられた内カバー15の前部上面に組み込まれている。
【0008】
この内カバー15は、通常、プラスチックにてキャビン7と別体に成形され、キャビン7の内面に固定される。図7,8中、12…は内カバー15の上面に設けられた各種スイッチである。
【0009】
この内カバー15の前部上面は、図示のように前方、左側方、それに上方が開放して操作の障害物がないこと、操作設備を取付けるための加工が容易であることから、エンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を取付けるのに適した位置として選択されている。
【特許文献1】実開平5−46536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
キャビン7は製造段階でのテスト時や使用段階でのメンテナンス時等に対象機器を露出させるために機体(上部旋回体2)から取外される場合がある。
【0011】
この場合、内カバー15はキャビン7に固定されているため、キャビン7と一体に取外される。
【0012】
従って、この内カバー15に設置されたエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14もまた、キャビン7と一緒に取外されてしまうため、エンジン操作及びアクセル操作ができなくなるという問題があった。
【0013】
なお、エンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を、キャビン取外しの影響を受けない既存の部位、たとえばコントロールボックス11に設置することが考えられる。しかし、この場合、たとえスペース的に可能であっても、コントロールボックス11が、運転席8の右アームレスト8aの下方に位置することから、操作の都度、同アームレスト8aを回転させて上方空間を空けなければならず、この点で操作性が悪くなる。
【0014】
いいかえれば、コントロールボックス11のような、キャビン取外しの影響を受けない既存の部位では操作性が悪くなるために、やむを得ずキャビン内面側にエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を配置していたのが実情であった。
【0015】
そこで本発明は、キャビンの搭載/取外しにかかわらず操作する必要のある特定の操作体(上記例ではエンジンスイッチとアクセルノブ)を、操作し易いキャビンの内面側に設置しながら、キャビン取外し状態でも同操作体を操作することができる作業機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、キャビンを備え、このキャビンの内部に、機械の各種動作を行わせるための操作設備が装備された作業機械において、上記操作設備のうち、上記キャビンを取外した状態でも操作する必要のある特定操作体が独立した枠体に組み込まれて操作盤が構成される一方、キャビンの内面側に操作盤取付部が設けられ、上記操作盤がこの操作盤取付部に対し、キャビンの取外し時にキャビンから切り離して上記特定操作体を操作し得る状態で着脱自在に取付けられたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、キャビンの内面に、キャビンと別体に成形され、かつ、キャビンと一体に取外される内カバーが設けられ、操作盤取付部がこの内カバーに設けられたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、内カバーの上面一部に操作盤取付部が上向きに開口した凹部として形成され、操作盤が、上記開口部を閉塞しかつ操作盤上面が内カバーの上面の一部を形成する状態で操作盤取付部に取付けられたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、特定操作体として、エンジンを始動/停止させるエンジンスイッチと、エンジン回転数を調整するアクセルノブが枠体に組み込まれて操作盤が構成されたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、特定操作体(請求項4ではエンジンスイッチとアクセルノブ)を独立した操作盤に組み込み、この操作盤をキャビンの内面側、すなわち、コントロールボックスに設けた場合のアームレストのような操作の障害物が無い部位に取付けた(障害物の無い任意の場所に設置できる)から、キャビンを搭載した状態での特定操作体の操作性が良い。
【0021】
しかも、操作盤を操作盤取付部に対し、キャビン取外し時にキャビンから切り離して特定操作体を操作し得る状態で着脱自在に取付けたから、製造段階でのテストや使用段階でのメンテナンス等のためにキャビンを取外した状態でも、特定操作体を操作することが可能となる。
【0022】
この場合、請求項2,3の発明によると、キャビンと別体の内カバーに操作盤を取付けたから、キャビンそのものに新たに操作盤取付部を設けてここに操作盤を取付ける場合と比較して、操作盤取付部の加工が容易でコストが安くてすむ。
【0023】
また、請求項3の発明によると、操作盤取付部を、内カバーの上面一部に上向きに開口した凹部として形成し、操作盤を、上記開口部を閉塞しかつ操作盤上面が内カバーの上面の一部を形成する状態(凹みを埋める形)で操作盤を取付けるため、この取付状態で操作盤が内カバーから外側に出っ張らず、より操作し易くなる。また、操作盤が出っ張らないため、美観上も好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態を図1〜図5によって説明する。
【0025】
以下の実施形態において、図7,8に示す従来技術と同一部分には同一符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0026】
図1〜図4はキャビン搭載状態、図5はキャビン取外し状態をそれぞれ示す。
【0027】
この実施形態においては、特定操作体としてのエンジンスイッチ13とアクセルノブ14が組み込まれた操作盤16を、キャビン7の右内面に設けられた内カバー17の前部上面に着脱自在に取付けている。
【0028】
内カバー17は、図7,8に示す従来機械の内カバー15と同様に、通常はプラスチックにてキャビン7と別体に成形され、キャビン7の内面に固定される。
【0029】
この内カバー17は、従来機械の内カバー15の前部上側部分を抉り取った形状に形成し、抉り跡としての前部上側に、上向きに開口する凹部状の操作盤取付部18(図3,4参照)を設けている。
【0030】
一方、抉り取った部分に相当する、右側方と後方、それに下方が開口した枠体19にエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を組み込んで操作盤16を構成し、この操作盤16を操作盤取付部18に、内カバー17の凹みを埋める状態で着脱自在に取付けている。
【0031】
この取付状態で、操作盤16(枠体19)の上面が内カバー17の上面と面一に連続し、同カバー上面の一部を形成する状態となる。
【0032】
この操作盤16の取付手段を図3に示す。
【0033】
キャビン7の右内面に板バネからなるクリップ20をブラケット21を介して取付けている。このクリップ20には、先端部にコの字形に折れ曲がった挟圧部20aを設けている。
【0034】
一方、操作盤16(枠体19)の内面に水平に突出する突片22を設け、この突片22を、クリップ20の挟圧部20aに弾性的に差し込むことにより、エンジンスイッチ13及びアクセルノブ14が組み込まれた操作盤16(図3ではアクセルノブ14のみを示す)を操作盤取付部18に着脱自在に取付けている。
【0035】
なお、エンジンスイッチ13及びアクセルノブ14に接続される電気配線(図示しない)は、内カバー17内を通して操作盤16に導入される。
【0036】
この構成において、キャビン7を搭載した状態で、図1〜図3に示すように操作盤16が内カバー17の前部(操作盤取付部18)に取付けられ、この取付状態のままエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14が操作される。
【0037】
この場合、操作盤16の周りに、コントロールボックス11に設けた場合における右アームレスト8aのような障害物が無いため、エンジンスイッチ13及びアクセルノブ14の操作性が良いものとなる。
【0038】
また、キャビン7と別体の内カバー17に操作盤16を取付けたから、キャビン7そのものに新たに操作盤取付部を設けてここに操作盤16を取付ける場合と比較して、操作盤取付部18の加工が容易でコストが安くてすむ。
【0039】
さらに、内カバー17の凹み(操作盤取付部18)を上方から閉塞し、かつ、凹みを埋める状態で操作盤16を取付けているため、操作盤16が内カバー17から外側(上方)に出っ張らず、より操作し易くなる。また、操作盤16が出っ張らないため、美観上も好ましいものとなる。
【0040】
一方、製造段階でのテスト時や使用段階でのメンテナンス時等にキャビン7を取外すときは、その前に図4,5に示すように操作盤16を操作盤取付部18から取外し、キャビン7の取外しの影響を受けない位置、たとえばコントロールボックス11上に仮置きしておく。
【0041】
なお、操作盤16は、図3に示す突片22をクリップ20から引き抜くだけで操作盤取付部18から簡単に取外すことができる。
【0042】
そして、図5に示すキャビン取外し状態で、操作盤16を仮置き位置に置いたまま、または手に持って操作すればよい。
【0043】
なお、操作盤16に対する電気配線も、通常、キャビン7とともに取外されるため、この点の対策として、たとえば操作盤16の直前にコネクタを設けてこのコネクタで電気配線を操作盤側とキャビン側に分離し、キャビン取外し後、仮設の配線と操作盤側の配線とを接続する方法をとることができる。
【0044】
こうして、キャビン7を取外した状態でもエンジンスイッチ13及びアクセルノブ14を操作することが可能となる。
【0045】
また、キャビン7の再搭載時には、操作盤16を元の位置(操作盤取付部18)に取付け直せばよい。
【0046】
ところで、キャビン7を取外した状態でも操作する必要のある特定操作体としては、通常、上記実施形態のエンジンスイッチ13とアクセルノブ14が挙げられるが、必要に応じて他の操作体に差し替え、あるいは追加してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では操作盤16を内カバー17の前部上側に取付けたが、キャビン内面側における操作し易い他の場所を選んで取付けてもよい。あるいは、内カバー17でなく、支障がなければキャビン7そのものの内面に取付けてもよい。
【0048】
さらに、キャビン取外し状態で操作盤16を仮置きするための操作盤保持手段を、キャビン7の取外しの影響を受けない部位に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態を示すキャビン内部の部分斜視図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す図である。
【図3】図2III−III線拡大断面図である。
【図4】図2の状態から操作盤を取外した状態の斜視図である。
【図5】図4の状態からキャビンを取外した状態の斜視図である。
【図6】本発明の適用対象例である油圧ショベルの概略側面図である。
【図7】同ショベルのキャビン内部の斜視図である。
【図8】図7の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0050】
7 キャビン
9,10 操作設備としてのレバー
13 特定操作体としてのエンジンスイッチ
14 同アクセルノブ
16 操作盤
17 キャビンの内カバー
18 操作盤取付部
19 操作盤を構成する枠体
20 操作盤取付用のクリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンを備え、このキャビンの内部に、機械の各種動作を行わせるための操作設備が装備された作業機械において、上記操作設備のうち、上記キャビンを取外した状態でも操作する必要のある特定操作体が独立した枠体に組み込まれて操作盤が構成される一方、キャビンの内面側に操作盤取付部が設けられ、上記操作盤がこの操作盤取付部に対し、キャビンの取外し時にキャビンから切り離して上記特定操作体を操作し得る状態で着脱自在に取付けられたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、キャビンの内面に、キャビンと別体に成形され、かつ、キャビンと一体に取外される内カバーが設けられ、操作盤取付部がこの内カバーに設けられたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械において、内カバーの上面一部に操作盤取付部が上向きに開口した凹部として形成され、操作盤が、上記開口部を閉塞しかつ操作盤上面が内カバーの上面の一部を形成する状態で操作盤取付部に取付けられたことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業機械において、特定操作体として、エンジンを始動/停止させるエンジンスイッチと、エンジン回転数を調整するアクセルノブが枠体に組み込まれて操作盤が構成されたことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283448(P2006−283448A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106346(P2005−106346)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】