説明

作業機械

【課題】燃料タンクにミラーを取付ける場合に対応できる十分なタンク強度を確保できるようにした作業機械を提供する。
【解決手段】燃料タンク17の上面にタンク上面補強プレート22を固定し、このタンク上面補強プレート22上に取付面補強プレート23を固定し、この取付面補強プレート23を介してミラー取付支持構造体24の底板部25をボルト27により取付ける。タンク上面補強プレート22は、ミラー取付支持構造体24を取付けた取付面部41から、キャブと反対側に位置するタンク側板上部42と、このタンク側板上部42に隣接し合う他のタンク側板上部43とに、それぞれ延長補強面部44,45を突出させる。タンク上面補強プレート22のうち延長補強面部44は、折曲成形したタンク側板上部42のタンク形状に沿って下方へ折曲成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク上にミラーを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルの機体一側上にオペレータの運転席を設け、機体他側のボンネット上にミラーを設置し、オペレータから見て機体の反対側の視界を確保するようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
機体一側のオペレータに対し機体他側のミラーは1つであったが、この場所に1つのミラーでは、国際標準化機構の国際規格ISO5006(視界性)で要求される視界範囲を満足できず、複数のミラーを取付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−348916号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2003−193515号公報(第4頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機種により燃料タンク上に支柱部を介してミラーを取付ける構造としなければならない場合は、燃料タンクにミラー重量が集中するため、そのミラー重量に見合うタンク強度が要求され、単に燃料タンク上に支柱部を立てる構造では、十分なタンク強度を確保できない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、燃料タンクにミラーを取付ける場合に対応できる十分なタンク強度を確保できるようにした作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、機体と、機体の一側部に設置されたキャブと、機体の他側部に設置された燃料タンクと、この燃料タンクの上面に固定されたタンク上面補強プレートと、このタンク上面補強プレートに取付けられたミラー取付支持構造体と、このミラー取付支持構造体に取付けられたミラーとを具備し、タンク上面補強プレートは、ミラー取付支持構造体が取付けられた取付面部と、この取付面部からキャブと反対側に位置するタンク側板上部とこのタンク側板上部に隣接し合う他のタンク側板上部とにそれぞれ突出された延長補強面部とを具備した作業機械である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の作業機械において、取付面部からキャブと反対側に位置するタンク側板上部に突出された延長補強面部は、タンク形状に沿って下方へ折曲されたものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の作業機械におけるミラー取付支持構造体が、タンク上面補強プレートに取付けられた支柱部と、この支柱部の上端から水平に突出されたミラー取付用の腕部とを具備したものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項3記載の作業機械において、1本の支柱部の上端に腕部の中間部が固定され、この腕部の両端にミラーがそれぞれ取付けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、タンク上面補強プレートが、取付面部から、燃料タンクのなかで高い剛性を有する2つのタンク側板上部まで延長補強面部をそれぞれ突出させて、ミラー取付支持構造体の取付基礎となる燃料タンクに十分な強度を確保でき、タンクの変形や破壊を防止できるとともに、タンク上面補強プレートは、取付面部から高剛性の相互に隣接し合う2つのタンク側板上部まで延長補強面部をそれぞれ突出させて、2次元的に安定した支持板構造を形成しているので、作業機械の燃料タンク上にミラーを取付ける際の支持強度を確保できる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、燃料タンクのタンク側板上部は、それ自身の剛性が高い上に、取付面部からこのタンク側板上部に突出されてタンク形状に沿ってタンク上面から下方へ折曲された延長補強面部は、燃料タンクの剛性をさらに高めることができるので、より大きなタンク強度を確保でき、タンクの変形や破壊を確実に防止できる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、タンク上面補強プレートに取付けられた支柱部と、その上端から水平に突出された腕部とにより、ミラーを確実に支持できる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、ミラー取付支持構造体の支柱部の上端に腕部の中間部を固定して、その腕部の各先端に複数のミラーをバランスよく支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る作業機械の燃料タンク上に設置されたミラー取付構造の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上タンクの平面図である。
【図3】同上タンクの正面図である。
【図4】同上タンクを備えた作業機械の側面図である。
【図5】同上タンク上のミラー取付構造を拡大した正面図である。
【図6】同上タンク上のミラーにより確保できる視界範囲を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図1乃至図6に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図4に示されるように、作業機械としての油圧ショベル11は、下部走行体12上に機体としての上部旋回体13が旋回可能に設けられ、この上部旋回体13の前部中央に掘削用の作業装置14が設置され、この作業装置14を介して、上部旋回体13の一側部にキャブ15が設置され、上部旋回体13の他側部にストレージボックス16および燃料タンク17が設置され、これらの後部にはエンジン18が設置され、最後部にはカウンタウエイト19が設置されている。
【0018】
図5および図1に示されるように、燃料タンク17の上面には、燃料供給口部21が設けられているとともに、厚さ8mm程度のタンク上面補強プレート22が溶接などにより固定され、このタンク上面補強プレート22上に厚さ16mm程度の取付面補強プレート23が溶接などにより2重に固定され、この取付面補強プレート23を介してミラー取付支持構造体24の底板部25が、これらのタンク上面補強プレート22、取付面補強プレート23および底板部25に穿設された取付穴26(図2に示す)に挿入された3本以上のボルト27により取付けられている。これらのボルト27は、取付穴26に形成された雌ネジ、または燃料タンク17の裏面に溶接付けされたナットなどに螺合される。
【0019】
ミラー取付支持構造体24は、底板部25に対して支柱部31が溶接され、この支柱部31と底板部25との間に溶接された複数のリブ32により補強され、支柱部31の上端には、1枚板状に成形されたミラー取付用の腕部33,34の中間部が溶接などにより固定され、これらの腕部33,34が支柱部31の上端から水平に突出され、これらの各腕部33,34の先端部に取付バー35がそれぞれ設けられたものであり、これらの取付バー35にミラー36,37がそれぞれ取付けられている。腕部33,34は、ヘ字形に成形されたプレートの中央部が支柱部31の上端に溶接され、各ミラー36,37は、各取付バー35に取付けられた球面支持部材38により任意の取付角度に調整可能に取付けられている。
【0020】
図1乃至図3に示されるように、タンク上面補強プレート22は、ミラー取付支持構造体24が取付けられた取付面部41と、この取付面部41からキャブ15と反対側に位置するタンク側板上部42とこのタンク側板上部42に隣接し合う他のタンク側板上部43とにそれぞれ突出された延長補強面部44,45とを具備している。
【0021】
燃料タンク17のうち、キャブ15と反対側に位置するタンク側板上部42は折曲成形されており、タンク上面補強プレート22のうち、取付面部41からこの折曲成形されたタンク側板上部42に突出された延長補強面部44は、タンク形状に沿って下方へ折曲され、溶接されている。
【0022】
このように、機体右側に設置された燃料タンク17の上面を、剛性の高いタンク側板上部42,43まで延長したタンク上面補強プレート22により補強し、そのタンク上面補強プレート22上にミラー取付支持構造体24を設置して、2個のミラー36,37を取付ける。取付面補強プレート23は、必要に応じて設置する。
【0023】
なお、図1において、上部旋回体13には、ステップ46が取付けられ、作業装置14を取付けるためのブラケット47が取付けられている。
【0024】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0025】
図6に示されるように、キャブ15内のオペレータから見て油圧ショベル11の右側領域Aの視界を一方のミラー36により確保し、右側後方領域Bの視界を他方のミラー37により確保する。さらに、これらのミラー36,37に加えて、カウンタウエイト19上に設置されたリアビューカメラ(図示せず)と、キャブ15の昇降口のハンドレールに取付けられたキャブミラー(図示せず)とにより、ISO5006の視界要求範囲を満たすようにする。
【0026】
燃料タンク17にあって高剛性のタンク側板上部42,43まで延長補強面部44,45が成形されたミラー取付用のタンク上面補強プレート22により、燃料タンク17の強度を維持しつつ、ミラー取付支持構造体24を介して複数のミラー36,37を燃料タンク17上に支持したので、機械振動などによってミラー取付支持構造体24の頭部に横荷重が作用しても、燃料タンク17に変形や破壊が起こることを防止できる。
【0027】
すなわち、タンク上面補強プレート22が、取付面部41から、燃料タンク17のなかで高い剛性を有する2つのタンク側板上部42,43まで延長補強面部44,45をそれぞれ突出させて、ミラー取付支持構造体24の取付基礎となる燃料タンク17に、複数のミラー36,37に対応できる十分なタンク強度を確保でき、タンクの変形や破壊を防止できるとともに、タンク上面補強プレート22は、取付面部41から高剛性の相互に隣接し合う2つのタンク側板上部42,43まで延長補強面部44,45をそれぞれ突出させて、2次元的に安定した支持板構造を形成しているので、油圧ショベル11の燃料タンク17上に複数のミラー36,37を取付ける際の支持強度を確保できる。
【0028】
特に、燃料タンク17のタンク側板上部42は、折曲成形されているので、それ自身の剛性が高い上に、取付面部41からこのタンク側板上部42に突出されタンク形状に沿って折曲され固定されたタンク上面補強プレート22の延長補強面部44は、燃料タンク17の剛性をさらに高めることができるので、複数のミラー36,37に対応できる、より大きなタンク強度を確保でき、タンクの変形や破壊を確実に防止できる。すなわち、タンク上面補強プレート22は、燃料タンク17の剛性の高い側面曲げ形状に合わせて延長補強面部44を折曲げ固定することで、タンク上面の強度を上げ、その変形を抑えることができる。
【0029】
タンク上面補強プレート22に取付けられた支柱部31と、その上端から水平に突出された腕部33,34とにより、ミラー36,37を確実に支持できる。
【0030】
ミラー取付支持構造体24の支柱部31の上端に腕部33,34の中間部を固定して、その腕部33,34の各先端に複数のミラー36,37をバランスよく支持できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
11 作業機械としての油圧ショベル
13 機体としての上部旋回体
15 キャブ
17 燃料タンク
22 タンク上面補強プレート
24 ミラー取付支持構造体
31 支柱部
33,34 腕部
36,37 ミラー
41 取付面部
42,43 タンク側板上部
44,45 延長補強面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
機体の一側部に設置されたキャブと、
機体の他側部に設置された燃料タンクと、
この燃料タンクの上面に固定されたタンク上面補強プレートと、
このタンク上面補強プレートに取付けられたミラー取付支持構造体と、
このミラー取付支持構造体に取付けられたミラーとを具備し、
タンク上面補強プレートは、
ミラー取付支持構造体が取付けられた取付面部と、
この取付面部からキャブと反対側に位置するタンク側板上部とこのタンク側板上部に隣接し合う他のタンク側板上部とにそれぞれ突出された延長補強面部と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
取付面部からキャブと反対側に位置するタンク側板上部に突出された延長補強面部は、タンク形状に沿って下方へ折曲された
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
ミラー取付支持構造体は、
タンク上面補強プレートに取付けられた支柱部と、
この支柱部の上端から水平に突出されたミラー取付用の腕部と
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
1本の支柱部の上端に腕部の中間部が固定され、
この腕部の両端にミラーがそれぞれ取付けられた
ことを特徴とする請求項3記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−163775(P2010−163775A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5982(P2009−5982)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】