説明

作業機械

【課題】メンテナンスおよび振動騒音などの問題を生じさせることなく空調用コンデンサをクーリングユニットから分離設置して、クーリングユニット設置スペースに余裕のない機種にも対応できる作業機械を提供する。
【解決手段】作業装置18の根元部分すなわちブーム23の基端部23aとエンジン26との間の機体12上に、クーリングユニット31から分離させて、冷却ファン一体型の空調用コンデンサ41を設置する。エンジン26より前方すなわち作業装置18側に、エンジンアクセス用のプラットホーム46を設置する。空調用コンデンサ41の下部は、このプラットホーム46の作業装置18側に取付けたヒンジ47によって回動可能に拘束し、このヒンジ47を支点にして、空調用コンデンサ41の上部を垂直姿勢よりエンジン26側へ傾斜させる通常傾斜姿勢と、作業装置18側へ傾斜させる臨時傾斜姿勢とに切換可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーリングユニットを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
小旋回型の作業機械(小旋回機)では、エンジンの一側部に、このエンジンにより駆動される冷却ファンによって冷却されるラジエータ、オイルクーラおよびインタークーラなどが集合されたクーリングユニットがコンパクトに設置されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
冷却ファンによる冷却対象としては空調用コンデンサもあるが、この空調用コンデンサをクーリングユニットに一体化すると、クーリングユニットがエンジンと反対側に膨らんでしまって、エンジンの放熱量増大に対応できる大きさのクーリングユニットが小旋回機に収まらない。
【0004】
そこで、空調用コンデンサを作業機械のキャブ上からキャブ背面にわたって姿勢変更可能に取付けたものがある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−262869号公報(第4−5頁、図1)
【特許文献2】特開2004−284535号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャブ上に取付けられた空調用コンデンサは、単に見映えが悪いだけでなく、メンテナンスも容易でなく、また空調用コンデンサ用のファンから生じた振動騒音がキャブに伝播しやすいなどの問題を抱えている。
【0006】
このように、小旋回機は、キャブ後方のスペースが狭く、規制の厳しくなる排ガス対応エンジンのヒートリジェクションの増大に対応できる十分な大きさのクーリングユニットを搭載できないので、空調用コンデンサを分離設置せざるを得ないが、その際に空調用コンデンサの設置場所を誤ると、メンテナンスなどの点で問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、メンテナンスなどの問題を生じさせることなく空調用コンデンサをクーリングユニットから分離設置して、クーリングユニット設置スペースに余裕のない機種にも対応できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、機体と、機体に搭載された作業装置と、作業装置の後方に間隔を介して配置されたエンジンと、エンジンにより駆動される冷却ファンにより冷却されるクーリングユニットと、クーリングユニットから分離させて作業装置の根元部分とエンジンとの間で機体上に設置された冷却ファン一体型の空調用コンデンサと、空調用コンデンサの下部を回動可能に拘束して上部を垂直姿勢よりエンジン側へ傾斜させた通常傾斜姿勢と作業装置側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢とに切換可能とするヒンジとを具備した作業機械である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の作業機械において、ヒンジとエンジンとの間に配置されたエンジンアクセス用のメンテナンスステップを具備したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、クーリングユニットから分離させて作業装置の根元部分とエンジンとの間で機体上に冷却ファン一体型の空調用コンデンサを設置したので、従来のキャブ上に空調用コンデンサを設置した場合のようなメンテナンスが容易でないなどの問題を生じさせることなく空調用コンデンサをクーリングユニットから分離設置でき、クーリングユニットおよび空調用コンデンサの小型化と冷却性能の向上とを図れるとともに、クーリングユニット設置スペースに余裕のない小旋回機などの機種にも対応できる。特に、空調用コンデンサの下部を回動可能に拘束するヒンジを支点に、空調用コンデンサの上部を垂直姿勢よりエンジン側へ傾斜させた通常傾斜姿勢では、作業装置を後傾させることも可能な小旋回機に適する。また、空調用コンデンサの上部をエンジン側から作業装置側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢では、エンジンおよび空調用コンデンサの内側に容易にアクセスでき、これらのメンテナンスなどのサービス性を向上できる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、ヒンジとエンジンとの間にエンジンアクセス用のメンテナンスステップを配置したので、空調用コンデンサをヒンジを支点に作業装置側に傾斜させたときにエンジンアクセス用のメンテナンスステップが現われ、このメンテナンスステップ上でエンジンや空調用コンデンサのメンテナンス作業などを容易にでき、作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図4は、作業機械11を示し、この作業機械11の機体12が、履帯13を装着した下部走行体14と、この下部走行体14上に旋回可能に設けられた上部旋回体15とにより構成されている。この上部旋回体15に、エンジンなどの動力部16と、オペレータを囲繞するキャブ17と、掘削作業などをする作業装置18とが搭載されている。上部旋回体15上にはハンドレール19,20が設けられ、このハンドレール19,20に沿って作業装置18の後方へ登ることが可能となっている。
【0014】
図2および図3に示されるように、作業装置18は、旋回フレーム21に溶接された一対のブラケット22間にブーム23の基端部23aが軸24により回動自在に軸支され、このブーム23の基端部23aの後方に間隔を介して、冷却ファン25を駆動可能なエンジン26が配置され、このエンジン26の後方にカウンタウエイト27が配置されている。
【0015】
エンジン26により駆動される冷却ファン25によって冷却されるクーリングユニット31が、キャブ17の後方に設置され、このクーリングユニット31の近傍に、エンジン吸気用のエアクリーナ32と、バッテリ33とが設置されている。
【0016】
クーリングユニット31は、冷却ファン25と、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ34と、油圧回路の作動油を冷却するためのオイルクーラ35と、過給器が圧縮加熱した空気を冷却するアフタークーラ36とを集合させたものである。
【0017】
エンジン26の冷却ファン25とは反対側には、エンジン26により駆動される油圧ポンプ37が配置され、この油圧ポンプ37の前方には、油圧回路の作動油を貯留した作動油タンク38と、エンジン26の燃料を貯留した燃料タンク39とが配置され、さらに前方には、油圧回路を制御するコントロールバルブ40が配置されている。
【0018】
図1に示されるように、作業装置18の根元部分すなわちブーム23の基端部23aと、エンジン26との間の機体12上には、クーリングユニット31から分離させて、冷却ファン一体型の空調用コンデンサ41が設置されている。なお、図1は、便宜上、キャブ17を搭載する前のキャブマウント部17aのみを示す。
【0019】
空調用コンデンサ41は、取付フレーム42にコンデンサ本体43が一体的に取付けられ、このコンデンサ本体43に冷却ファン44が一体的に設置され、この冷却ファン44を駆動するファン駆動部45が設置されている。このファン駆動部45としては、電動モータまたは油圧モータを用いる。
【0020】
エンジン26より前方すなわち作業装置18側には、エンジンアクセス用のメンテナンスステップとしてのプラットホーム46が設置されている。空調用コンデンサ41の下部は、このプラットホーム46の作業装置18側に取付けられたヒンジ47によって回動可能に拘束され、このヒンジ47を支点にして、空調用コンデンサ41の上部を図3に示されるように垂直姿勢よりエンジン26側へ傾斜させた通常傾斜姿勢と、図1に示されるように作業装置18側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢とに切換可能となっている。
【0021】
プラットホーム46は、図1に示されるように、その大半がヒンジ47とエンジン26との間に配置され、さらに、このプラットホーム46のエンジン側部46aは、被固定材50上にボルトにより水平に固定され、図2および図3に示されるように、このプラットホーム46の前側の取付脚部46bは、一対のブラケット22間に溶接された傾斜板22a上にボルトにより固定されている。
【0022】
図3に示されるように、取付フレーム42の上部には、空調用コンデンサ41の通常傾斜姿勢でコンデンサ本体43および冷却ファン44の上側を覆う天板部48が一体に取付けられている。この天板部48は、エンジン26の上側を覆うエンジンフード49に接近した状態で固定される。
【0023】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0024】
掘削作業をするときなどの通常時は、図2および図3に示されるように空調用コンデンサ41の下部を回動可能に拘束するヒンジ47を支点に、空調用コンデンサ41の上部を垂直姿勢よりエンジン26側へ傾斜させた通常傾斜姿勢で、天板部48などを図示されないボルトなどの固定手段により図示されないフレームなどに固定し、図3に2点鎖線で示される小旋回姿勢のように作業装置18のブーム23を後傾させることも可能とする。
【0025】
一方、エンジン26または空調用コンデンサ41をメンテナンスするときなどは、図1に示されるように空調用コンデンサ41の上部をエンジン26側から作業装置18側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢にすると、プラットホーム46が現われるので、作業者は、このプラットホーム46に載って、エンジン26にアクセスするか、または空調用コンデンサ41の内側にアクセスする。
【0026】
このように、クーリングユニット31から分離させて作業装置18の根元部分とエンジン26との間で機体12上に冷却ファン一体型の空調用コンデンサ41を設置したので、従来のキャブ上に設置した空調用コンデンサのようなメンテナンスが容易でない、振動騒音がキャブに伝播しやすいなどの問題を生じさせることなく、空調用コンデンサ41をクーリングユニット31から分離設置でき、クーリングユニット31および空調用コンデンサ41の小型化と冷却性能の向上とを図れるとともに、クーリングユニット設置スペースに余裕のない小旋回機などの機種にも対応できる。
【0027】
特に、空調用コンデンサ41の下部を回動可能に拘束するヒンジ47を支点に、空調用コンデンサ41の上部を垂直姿勢よりエンジン26側へ傾斜させた通常傾斜姿勢では、作業装置18を後傾させることも可能な小旋回機に適する。また、空調用コンデンサ41の上部をエンジン26側から作業装置18側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢では、エンジン26および空調用コンデンサ41の内側に容易にアクセスでき、これらのメンテナンスなどのサービス性を向上できる。
【0028】
その際、ヒンジ47とエンジン26との間にエンジンアクセス用のプラットホーム46を配置したので、空調用コンデンサ41をヒンジ47を支点に作業装置18側に傾斜させたときにエンジンアクセス用のプラットホーム46が現われ、このプラットホーム46上でエンジン26や空調用コンデンサ41のメンテナンス作業などを容易にでき、作業性を向上できる。
【0029】
本発明は、クーリングユニット設置スペースに余裕のない作業機械に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る作業機械の要部の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上作業機械の上部旋回体の平面図である。
【図3】同上作業機械の上部旋回体の側面図である。
【図4】同上作業機械の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
12 機体
18 作業装置
25 冷却ファン
26 エンジン
31 クーリングユニット
41 空調用コンデンサ
44 冷却ファン
46 メンテナンスステップとしてのプラットホーム
47 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
機体に搭載された作業装置と、
作業装置の後方に間隔を介して配置されたエンジンと、
エンジンにより駆動される冷却ファンにより冷却されるクーリングユニットと、
クーリングユニットから分離させて作業装置の根元部分とエンジンとの間で機体上に設置された冷却ファン一体型の空調用コンデンサと、
空調用コンデンサの下部を回動可能に拘束して上部を垂直姿勢よりエンジン側へ傾斜させた通常傾斜姿勢と作業装置側へ傾斜させた臨時傾斜姿勢とに切換可能とするヒンジと
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
ヒンジとエンジンとの間に配置されたエンジンアクセス用のメンテナンスステップ
を具備したことを特徴とする請求項1記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77634(P2010−77634A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245570(P2008−245570)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】