説明

作業機

【課題】DPFの再生が行う状況であるかどうかを簡単に確認でき、DPFの再生の指令を行うときには素早くDPFの再生の指令を実行することができるようにする。
【解決手段】堆積量が所定値以上であるときにフィルタ再生手段65による粒子状物質の燃焼を行う段階であることを報知し且つ手動操作によってフィルタ再生手段65による粒子状物質の燃焼を指令する再生スイッチ14を備え、再生スイッチ14は、表示装置用カバー16の運転席8に対向する対向面20であって且つ表示装置9の周縁部30と対向面20の周縁部25との間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ディーゼルエンジンには、排出ガスに含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター)を捕集するディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)が設けられている。DPFは、ディーゼルエンジンからの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するようになっており、この捕集された粒子状物質は徐々に堆積する。そのため、DPFを搭載した車両では、ディーゼルエンジンの排気温度を上昇させて、DPFに堆積した粒子状物質を燃焼し、DPFに堆積した粒子状物質を低減させるというDPFの再生技術が開発されている。
【0003】
DPFの再生技術の開発は、ディーゼルエンジンを搭載する農業機械や建設機械などの作業機に先行して大型のトラックで行われており、トラックのDPFの再生技術として特許文献1に示すものがある。
特許文献1は、DPFにおけるパーティキュレートの堆積量が再生を必要とする閾値以上で且つDPFの温度が再生開始適合温度以上である場合に、運転者に対してDPFの再生を促し、DPFの再生が促された際に運転者は運転席に設けられた再生スイッチを押すことによりDPF再生が行われる技術である。
【0004】
即ち、特許文献1の技術は、走行中の負荷変動が激しく場合によってはDPFの再生が完了しない場合があるため、運転者にDPFの再生に適した時期を伝えるようにし、その上で運転者が運転状況を判断して手動によってDPFの再生を指示できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−155444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、農業機械や建設機械の作業機でも、運転状況(走行状況)を判断してDPFの再生を指示したいという要望がある。しかしながら、作業機は、上述したトラックと同じように走行はするものの、運転状況はトラックとは全く異なっている。例えば、トラクタなどの農業機械では、圃場内で作業を行いながら走行することが多く、圃場内での作業中にDPFの再生が自動的に開始されてしまうと、作物等にDPFの再生による高温の排気ガスがあたってしまい、DPFの再生による排気ガスによって作物にダメージを与えてしまう可能性がある。そのため、トラクタの作業中において、トラクタを運転する作業者は常に周りの状況を確認しながら再生を行うか否かを即座に判断して、DPFの再生が行える場合には、再生を指令するスイッチを押してDPFの再生を行わなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、DPFの再生を行う状況であるかどうかを簡単に確認でき、DPFの再生の指令を行うときには素早くDPFの再生の指令を実行することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
請求項1に係る作業機によれば、運転席の前側に設置された表示装置と、前記表示装置が嵌めこまれて当該表示装置の周縁部を囲む表示装置用カバーと、ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質の堆積量が所定値以上であるときに前記粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生手段とを備えた作業機において、前記堆積量が所定値以上であるときに前記フィルタ再生手段による粒子状物質の燃焼を行う段階であることを報知し且つ手動操作によって前記フィルタ再生手段による粒子状物質の燃焼を指令する再生スイッチを備え、前記再生スイッチは、前記表示装置用カバーの前記運転席に対向する対向面の周縁部と前記表示装置の周縁部との間に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る作業機によれば、前記再生スイッチは、前記表示装置と運転席との間に設けられたハンドル側から見て前記ハンドルの左右方向一方側に対応する部分に斜めに傾斜して設けられていることを特徴とする。
請求項3に係る作業機によれば、前記表示装置の周縁部のうち左右方向一方側に形成された第1左右縁部と、前記対向面の周縁部のうち左右方向一方側に形成された第2左右縁部との間に、前記再生スイッチを設けるための設置部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る作業機によれば、前記フィルタ再生手段は、前記堆積量が所定値以上になると自動的に排出ガス浄化装置内の排気温度の昇温を行うと共に昇温の途中で指令を待ち当該指令を受けてから燃焼が促進される温度域まで昇温を行う半自動モードと、前記堆積量が所定値以上であるときに指令を受けてから燃焼が促進される温度域までの昇温を行う手動モードとを備え、前記手動モードを行うための堆積量の判定は、前記半自動モードを行う堆積量よりも大きく設定されており、前記再生スイッチは、前記半自動モードにて昇温の途中で行う指令と、前記手動モードにて行う昇温の指令とを実行することができる兼用スイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によれば、粒子状物質の燃焼を行う段階(DPFの再生が必要)であるかどうかを確認することができる再生スイッチを、運転席に対向する対向面であって且つ表示装置の周縁部と対向面の周縁部との間に設けていることから、表示装置と再生スイッチとの距離が近く運転時に両方を同時に見ることができる。そのため、作業者は運転中に再生スイッチの状態を特に注視しなくても、DPFの再生が必要になった段階になったことを、表示装置を見るのと同じような感覚で簡単に確認することができる。言い換えれば、作業者が表示装置を見たときに再生スイッチが同一の視界に入ることからDPFの再生が必要か否かを簡単に確認することができる。
【0012】
請求項2によれば、運転者はハンドルを操作しながらハンドルの側方から手を伸ばして再生スイッチを容易に押すことができ、運転中であっても簡単にDPFの再生を行うことができる。
請求項3によれば、再生スイッチが表示装置の左側又は右側の近く(近傍)に配置されることとなり、表示装置内に再生スイッチが配置されているような感覚で、表示装置と共に再生スイッチの状態を確認することができる。
【0013】
請求項4によれば、再生スイッチは、半自動モードにおける昇温の指令と、手動モードにおける昇温の指令との両方を行うことができるも兼用スイッチあるため、半自動モード及び手動モードに対して指令するスイッチを1つのスイッチで構成することができ、部品点数を少なくすることができる。特に、2つのモードを1つのスイッチで指令することができるため、対向面のスペースを空けることができ、空いたスペースに別のスイッチを設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】運転席側から表示装置を見たときの正面図である。
【図2】表示装置の構成図である。
【図3】排出ガス浄化装置の構成を示す図である。
【図4】DPFに関連するランプ及び再生スイッチと、PM堆積量に応じたDPF再生のレベルとの関係図である。
【図5】運転席側から表示装置を見たときの変形例の正面図である。
【図6】トラクタの全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
本発明の作業機は、ディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)を備えると共に、このDPFに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去する手段を備えたものである。このような作業機は、トラクタやコンバインなどの農業機械及びバックホーやコンパクトトラックローダ(CTL)などの建設機械であって、農作業や建設作業等の作業が行えるものであるが、トラクタを例にとり説明する。
【0016】
図6に示すように、トラクタ1は、前後に車輪を有する走行車体2に、ディーゼルエンジン3、変速装置4等が搭載されて構成されている。この走行車体2の後部には、3点リンク機構5が昇降可能に設けられている。この3点リンク機構5には、耕耘装置、肥料散布装置、収穫装置などの各種作業装置6が着脱自在となっている。この作業装置6には、PTO軸を介してディーゼルエンジン3からの動力が伝達されるようになっている。また、ディーゼルエンジン3の後方には、独立搭載型のキャビン7が設けられており、キャビン7内に運転席8が設けられている。運転席8の前側(前方)にトラクタ1の様々な表示を行う表示装置9が設けられている。
【0017】
図2は、表示装置9の全体の構成を示したものである。
図2に示すように、表示装置9は、例えば、矩形状(箱型)の外装ケース10内に表示部11を形成する表示基板12が内装されて構成されている。
表示基板12の左側(一方側)には、エンジン回転数を指針計によって表示するエンジン回転表示部11aが設けられている。また、表示基板12の右側(他方側)には、燃料を指針計によって表示する燃料表示部11bが設けられると共に水温を指針計によって表示する水温表示部11cが設けられている。さらに、表示基板12の左右方向中央部には、様々な警告や報知(通知)をLED等の光によって表示するランプ表示部11dが設けられている。即ち、運転席に座った運転者は、表示装置9の各表示部11(11a、11b、11c、11d)を見ながらトラクタ1を操作することができる。
【0018】
さて、図3に示すように、ディーゼルエンジン3から排出された排出ガスに含まれる粒子状物質はDPF13によって捕集される。DPF13に堆積した粒子状物質の堆積量(PM堆積量という)は次第に増加するため、PM堆積量を低減するクリーニング、即ち、DPFの再生(DPF再生ということがある)を行う必要がある。
本発明では、後述するように制御部60の制御によってDPF再生を行う構成となっているが、DPF再生の開始などのタイミングなどは、トラクタ1を運転している作業者の意志によって決めることができるようになっている。
【0019】
そこで、本発明では、表示装置9の近傍にDPF再生の開始などを指令するための再生スイッチ14が設けられている。この再生スイッチ14には、LED等が内蔵されていて、再生スイッチ14は、DPF再生が必要なときに点灯、点滅すると共に、押すことによってDPF再生の指令などが行える押しボタン式のスイッチとされている。
図1は、運転席8側から表示装置9を見たものである。図1の説明では、便宜上、図1の紙面の左右方向を左右方向、図1の紙面の上下方向を上下方向、図1の紙面の貫通方向を前後方向と言い説明する。
【0020】
図1に示すように、外装ケース10の表示面を除く当該外装ケース10(表示装置9)の周囲は、表示装置用カバー16によって覆われて固定されており、この表示装置用カバー16に再生スイッチ14が取り付けられている。
具体的には、表示装置用カバー16を運転席8側から見たとき、当該表示装置用カバー16には、運転席8の背もたれ8aに対向する対向面20が形成され、この対向面20上に再生スイッチ14が取り付けられている。
【0021】
詳しくは、対向面20を、表示装置9と運転席8との間に設けられたハンドル17側から見たとき、ハンドル17の左右方向一方側(例えば、左側)に対応する部分、例えば、ハンドル17と前後方向にオーバラップする部分、或いは、ハンドル17の円弧内と前後方向にオーバラップする部分に、再生スイッチ14が設けられている。
また、対向面20に設けられた再生スイッチ14を運転席8側から見たとき、当該再生スイッチ14は傾斜している。詳しくは、再生スイッチ14の上下方向の中心線Cを見たとき、この中心線Cは上側から下側に行くにしたがって左右方向外側に移行するように傾いていて、当該再生スイッチ14は下端が上端よりも外側に移行する外側傾斜状となっている。
【0022】
このように、再生スイッチ14は、ハンドル17側から見てハンドル17の左右方向一方側に対応する部分に斜めに傾斜して設けられていることから、運転者は運転しているときなど、再生スイッチ14の状態を表示装置9の表示部11と共に常に確認することができ、再生スイッチ14を押すような状況になったときには、ハンドル17の側方から手を伸ばして、再生スイッチ14を容易に押すことができる。特に、再生スイッチ14が斜めに傾斜していることから押しやすい。
【0023】
以下、さらに詳しく、再生スイッチ14の位置について表示装置用カバー16と共に説明する。
表示装置用カバー16は、運転席8の背もたれ8aに対向する対向面20(対向壁)と、この対向面20の上側縁部20Uに沿って設けられ且つ前方に突出した上面(上壁)21と、対向面20の左側縁部20Lに沿って設けられ且つ前方に突出した左側面(左側壁)22と、対向面20の右側縁部20Rに沿って設けられ且つ前方に突出した右側面(右側壁)23とを備えている。
【0024】
左側面22は、下側から上側に行くにしたがって徐々に左右方向中央側に移行していて上面21と繋がっていている。右側面23は、下側から上側に行くにしたがって徐々に左右方向中央側に移行していて上面21と繋がっていている。上面21は、当該上面21の左右方向両端部(左側面22や右側面23に繋がるところ)よりも左右方向中央部側がやや上方に突出した形状となっている。
【0025】
言い換えれば、対向面20を運転席8側から見たとき、対向面20の左側縁部20Lは、下端から上端に行くにしたがって徐々に左右方向中央側に移行し、対向面20の右側縁部20Rは、下端から上端に行くにしたがって徐々に左右方向中央側に移行し、対向面20の上側縁部20Uは、当該上側縁部20Uの左右方向両端部(左側縁部20Lや右側縁部20Rに繋がるところ)よりも左右方向中央部がやや上方に移行したものとなっている。
【0026】
つまり、左側縁部20L、右側縁部20R、上側縁部20U及び下側縁部20Dによって構成された対向面20の周縁部25であって、周縁部25の左上側(左側縁部20Lと上側縁部20Uとが繋がるところ)は円弧状となっていて、周縁部25の右上側(右側縁部20Rと上側縁部20Uとが繋がるところ)も円弧状となっている。なお、ハンドルステーが挿入される切欠部24を除き、下側縁部20Dは、略一直線上となっている。
【0027】
図1に示すように、再生スイッチ14は、表示装置9の周縁部30(外装ケース10の上端の周縁部30)と、上述した対向面20の周縁部25との間に設けられている。
詳しくは、外装ケース10の上端の周縁部30であって、左右方向一方側(左側)に形成された第1左右縁部30aと、対向面20の周縁部25であって、対向面20の左右方向左側(一方側)に形成された左側縁部20L(第2左右縁部)との間に、再生スイッチ14を設けるための設置部31が設けられ、この設置部31に再生スイッチ14が設けられている。具体的には、対向面20に再生スイッチ14を設置するための貫通孔又は凹部等から構成された設置部31が設けられ、この設置部31に再生スイッチ14が設けられている。
【0028】
さらに詳しくは、第1左右縁部30aと第2左右縁部20Lとの間であって表示装置9の表示部11の上側に対応する位置に設置部31が設けられ、この設置部31に再生スイッチ14が取り付けられている。言い換えれば、対向面20に設けられた複数のスイッチのうち上下方向最上位の位置に再生スイッチ14が設けられている。
このように、表示装置9の周縁部30のうち左側(一方側)に形成された第1左右縁部30aと、対向面20の周縁部25のうち左側(一方側)に形成された左側縁部20L(第2左右縁部)との間に、再生スイッチ14を設けているため、再生スイッチ14が表示装置9の左側の近く(近傍)に配置されることとなり、表示装置9の表示部11に再生スイッチ14が配置されているような感覚で表示装置9の表示部11と共に再生スイッチ14の状態を確認することができ、再生スイッチ14の視認性や操作性を向上させることができる。特に、再生スイッチ14を表示装置9から見て上側に配置すると、より視認性や操作性を向上させることができる。
【0029】
また、再生スイッチ14の近傍には、再生スイッチ14の点灯や点滅などが見やすくなるように周囲を暗くする遮光手段(陰影手段)32が設けられている。この遮光手段32は、例えば、再生スイッチ14の上側に位置する対向面20を運転席9側(後側)に膨出させて形成した庇部で構成されており、この庇部32によって、再生スイッチ14の部分が暗くなるように庇部32の膨出度合いが設定されている。なお、遮光手段32は、再生スイッチ14を設置する設置部31を凹状とした上で、その凹状の設置部31に再生スイッチ14を挿入したときに、再生スイッチ14の上端部が対向面20上よりも下側になるようにすることで、再生スイッチ14の周囲が暗くなるように構成してもよい。
【0030】
このように、遮光手段32を再生スイッチ14の周囲に設けることによって、再生スイッチ14が点灯、点滅したときの状態を容易に確認することができる。
なお、図1に示すように、対向面20には再生スイッチ14の他に、表示部11に設けられた液晶部分の表示を切り替えるメータ切り替えスイッチ15a、フロントデフロックスイッチ15b、DT/倍速スイッチ15c、ハザードスイッチ15d、予備スイッチ15eなどが設けられており、対向面20を見ると、各スイッチ14、15a〜15eの並びは、上側から下側に行くに従って左右方向外側に移行する略ハの字状となっている。再生スイッチ14は、左側に並べられた各スイッチ15a、15eのうち、予備スイッチ15eの上側であって最上位の位置に設置されている。
【0031】
上述した実施形態では、再生スイッチ14を左右方向左側に設けるようにしているが、図5に示す変形例のように、表示装置9の周縁部30のうち右側に形成された第1左右縁部30bと、対向面20の周縁部25のうち右側に形成された右側縁部20R(第2左右縁部)との間に、再生スイッチ14を設けるようにしてもよい。
【0032】
次に、DPF再生について詳しく説明する。
図3は、ディーゼルエンジン3における排気系の構造を示したもので、この排気系にはDPF13が設けられている。なお、通常、ディーゼルエンジン3は、複数のシリンダ(気筒)を有する多気筒エンジンである場合が多いが、図3では、そのうちの1つのシリンダを示している。
図3に示すように、ディーゼルエンジン(以降、エンジンという)3のシリンダ40の上部には、当該シリンダ40内に空気を導入するための開口である吸気ポート41が形成されると共に、燃焼後のガス(燃焼ガス)をシリンダ40から排出するための開口である排気ポート42が形成されている。さらにシリンダ40の上部には、吸気ポート41を開閉するための吸気バルブ43と、排気ポート42を開閉するための排気バルブ44とが設けられている。
【0033】
吸気ポート41には、シリンダ40内に導入される空気の流路となる管状の吸気マニホールド45が接続されている。また、排気ポート42には、シリンダ40から排出される燃焼ガスの流路となる管状の排気マニホールド46が接続されている。排気マニホールド46の端部には排気音を低減するためのサイレンサ47が設けられていて、燃焼ガスはサイレンサ47を通過して外部に排出される。
【0034】
排気マニホールド46において、排気ポート42とサイレンサ47との間には排出ガス浄化装置50が設けられている。排出ガス浄化装置50は、通過する排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集して浄化するものである。つまり、シリンダ40から排気ポート42を経て排出された燃焼ガスは、排出ガスとなって排気マニホールド46を通り、排出ガス浄化装置50で浄化されてサイレンサ47に至る。
【0035】
この排出ガス浄化装置50は、内部にDPF13を有している。DPF13は、例えば、セラミック製で断面がハニカム構造となるように形成されている。つまり、DPF13の一端から他端にわたる長手方向に沿って、例えば六角柱のストロー状の多角形貫通孔が多数隣接しており、各貫通孔内には、DPF13の長手方向に沿って所定間隔で多孔質の隔壁が設けられている。
【0036】
DPF13の一端側(入側)から進入した排出ガスは、貫通孔内に形成された多孔質の隔壁を通過しつつDPF13の他端側(出側)へ向かって流れる。排出ガスに含まれる粒子状物質は、多孔質の隔壁に付着したり、貫通孔の内壁に付着したりすることでDPF13に捕集され、DPF13によって浄化された排気ガスは外部へ放出される。なお、ディーゼルエンジン3の排気系には、図示はしないが、DPF13の入側とエンジン3との間に、粒子状物質中の燃料及び燃焼ガス中の窒素酸化物を酸化するための酸化触媒(ディーゼル用酸化触媒)などが設けられている。
【0037】
本発明のトラクタ1では、CPU等から構成された制御部60による制御によってDPF13に堆積した粒子状物質の堆積量(PM堆積量という)を低減するDPF再生ということがあるを行う。
制御部60は、DPF再生の制御の他、トラクタ全体の動作を制御するもので、例えば、主にエンジン3を制御するエンジンECU61と、このエンジンECU61と連携しながらトラクタ1に搭載した各種装置を制御するメインECU62とから構成されている。
【0038】
エンジンECU61は、アクセルレバーの操作量、アクセルペダルの操作量、クランク位置、カム位置、或いは、メインECU62からの制御信号に基づいて、インジェクタ、コモンレール、サプライポンプ等を制御するものである。なお、エンジンECU61におけるディーゼルエンジン制御は、一般的なディーゼルエンジン制御と同じものであり、例えば、インジェクタの制御では燃料噴射量、噴射時期などが設定され、サプライポンプやコモンレールの制御では燃料噴射圧が設定される。当然の如く、トラクタ1においては、作業者がアクセルレバーを操作したり、アクセルペダルを操作することによって、アクセルレバーの操作量やアクセルペダルの操作量が変化し、エンジン回転数を増減させることができる。
【0039】
メインECU62は、エンジンECU61とは別にトラクタ1に関する様々な制御を行うものであって、エンジンECU61によるエンジン回転の制御よりも優先してエンジン回転数を設定するという制御も行う。
例えば、メインECU62には、運転席8の周囲に設けられたボリュームにより設定されるエンジン回転上限値が入力されるようになっており、メインECU62は、アクセルレバーやアクセルペダルによるエンジン回転数の指令値がエンジン回転上限値を超えている場合には、エンジン回転数がエンジン回転上限値を超えないようにエンジンECU61に指令を出力し、エンジンECU61よりも優先したエンジン回転数の制御を行う。その他、メインECU62は、運転席8の周囲に設けられた操作レバーに基づいて3点リンク機構5などの昇降を制御したり、変速装置の変速制御などを行う。
【0040】
さて、DPF再生の制御は、主にメインECU62に設けられたフィルタ再生手段65によって行う。フィルタ再生手段65は、メインECU62に格納された制御プログラム等により構成されている。フィルタ再生手段65は、DPF13に堆積した粒子状物質の堆積量(PM堆積量)が所定値以上(閾値以上)であるときに、例えば、エンジンECU61などに指令を出力して粒子状物質を燃焼させて除去するものである。
【0041】
ここで、PM堆積量は、DPF13の入側の排気圧力と、DPF13の出側の排気圧力との差圧により推定することとしている。
詳しくは、DPF13(排出ガス浄化装置50)の入側付近の排気圧力を入側圧力センサ66により検出し、DPF13(排出ガス浄化装置50)の出側付近の排気圧力を出側圧力センサ67により検出し、メインECU62では、入側圧力センサ66が検出した排気圧力と、出側圧力センサ67が検出した排気圧力とから排出ガス浄化装置50の入側と出側での排気圧力の差(差圧)を計算する。PM堆積量が多いと排気圧力の差である差圧も大きく、PM堆積量が少ないと排気圧力の差圧も小さいことから、このような関係を用いて、メインECU62では、計算した差圧からDPFに堆積したPM堆積量を求める。なお、差圧とPM堆積量との関係は、メインECU62に予め制御プログラム又は制御パラメータなどという形態で格納されている。この実施形態では、排気圧力の差からPM堆積量を算出することとしているが、これに限定されず、エンジン3を稼働した稼働時間や燃料の消費量などによりPM堆積量を算出してもよく、PM堆積量の算出方法はどのようなものであってもよい。
【0042】
図4は、DPFに関連するランプ及び再生スイッチと、PM堆積量に応じたDPF再生のレベルを示したものである。図2及び図4を用いてDPF再生の詳細について説明する。第1ランプ70、第2ランプ71、第3ランプ72、第4ランプ73はランプ表示部11dに設けられている。
図2及び図4に示すように、第1ランプ70は、点灯、点滅、消灯によってDPF再生の状態を示すもので、消灯しているときはDPF再生が不要であることを示し、点灯しているときはDPF再生が行われていることを示し、点滅しているときはその他の様々な状態を示す。
【0043】
第2ランプ71は、第1ランプ70に駐車を示す「P」が付けられて構成されたもので、第1ランプ70とは区別されて認識されるものである。この第2ランプ71は、点灯、点滅、消灯によって駐車してDPF再生を行うための情報が含まれており、消灯しているときはDPF再生が不要であることを示し、点灯しているときは駐車状態でDPF再生が行われていることを示し、点滅しているときは駐車とDPF再生とに関連する様々な状態を示す。
【0044】
第3ランプ72は、第1ランプ70及び第2ランプ71とは異なり、作業者に対してエンジン回転数をアクセルレバー等の手動操作によって上昇させることを促すものである。消灯しているときは、エンジン回転数の上昇が不要であることを示し、点滅しているときは、エンジン回転数の上昇を促していることを示す。
第4ランプ73は、DPF再生に関して警告を示すもので、消灯しているときは、警告が無いことを示し、点灯又は点滅しているときは、警告を発生していることを示す。
【0045】
図4に示すように、PM堆積量が少なく第1閾値未満である「Level:0」であるときは、DPF再生は不要であるレベルであるため、「再生不要状態」の欄で示されているように、第1ランプ70〜第4ランプ73は消灯している。一方、再生スイッチ14においても「SW表示」の欄に示すように、DPF再生が不要であるため消灯している。
PM堆積量が第1閾値以上である「Level:1(レベル1)」になると、DPF再生が必要な段階であるため、フィルタ再生手段65は半自動モードになる。
【0046】
半自動モードとは、PM堆積量が所定値以上(例えば、第1閾値以上)になると、自動的に排出ガス浄化装置50内の排気温度の昇温を行うと共に昇温の途中で指令を待ち当該指令を受けてから燃焼が促進される温度域まで昇温を行うもので、段階的に排気温度を上昇させるモードである。
具体的には、半自動モードになると、フィルタ再生手段65は、エンジンECU61等に吸気スロットルの絞りを指令する信号を出力して吸気スロットルを絞り、これにより、排出ガス浄化装置50内の排気温度(DPF13の入側の排気温度、即ち、DPF13内の温度)を、まず、第1段階として第1目標温度である250℃に向けて昇温する昇温制御を行う。
【0047】
半自動モードによって、吸気スロットルの絞りが自動的に行われた後、排気温度が第1目標温度に達したか否かの判断が行われる。具体的には、半自動モードによって、吸気スロットルの絞りが行われると、DPF13の入側に設けた温度センサ68が測定したDPF13の入側の排気温度が250℃以上となった時点で、フィルタ再生手段65は、吸気スロットルの絞り後の排気温度が第1目標温度に達したと判断する。なお、排気温度が第1目標温度に達していない状態では吸気スロットルの絞り動作は継続される。
【0048】
そして、排気温度が第1目標温度である250℃に達している状態では、フィルタ再生手段65は、第1ランプ70に制御信号を出力し、「再生条件成立」の欄に示すように、第1ランプ70を点滅(遅く点滅)させ、この点滅によって再生条件が成立を示す。
レベル1における第1ランプ70のみの点滅は、排気温度を第1目標温度からさらに排気温度を上昇させるという第2段階の昇温制御が行える条件が揃っていることを示しており、このように条件が揃っている状態では、第2段階の昇温制御による昇温がスムーズに進みやすい段階の温度域(250℃)であることを示す。第1ランプ70の点滅と同時に、フィルタ再生手段65は、再生スイッチ14に制御信号を出力し、「SW表示」の欄に示すように、再生スイッチ14を点滅させる。なお、第2段階の昇温制御が行える条件が揃っていない場合は、再生スイッチ14は消灯のままである。
【0049】
再生スイッチ14の点滅は、作業者に対して排気温度を第1目標温度より高い温度に上昇させる第2段階の昇温制御を行ってよいか否かを確認するためのもので、再生スイッチ14が点滅した状態で再生スイッチ14を押すと、第2段階の昇温制御に進むようになっている。
DPF再生において、第2段階の昇温は、排気温度を粒子状物質の燃焼が促進される温度域である第2目標温度(例えば、600℃)まで昇温することになり、この第2目標温度は、第1段階で昇温を行ったときの第1目標温度と比べて非常に高く、第2段階の昇温に伴って排気ガスの温度も高くなる。そのため、上述したように、再生スイッチ14の点滅によって、第2段階の昇温が行えることを報知すると共に第2段階の昇温を行ってよいかを確認している。
【0050】
再生スイッチ14を押して(手動操作によって)、排気温度を粒子状物質の燃焼が促進される第2目標温度まで上げてよいことを指令すると、フィルタ再生手段65は、直ちにエンジンECU61等に指令を出力してポスト噴射を開始し、粒子状物質の燃焼が促進される温度域である第2目標温度(600℃)に向けて、排気温度を一挙に上昇させる。
また、再生スイッチ14が押されると、フィルタ再生手段65は、第1ランプ70及び再生スイッチ14に制御信号を出力し、「再生中」の欄に示すように、第1ランプ70を点滅から点灯に代え、「SW表示」の欄に示すように再生スイッチ14も点滅から点灯に代える。これら第1ランプ70及び再生スイッチ14の点灯によってDPF再生、即ち、ポスト噴射が行われていることを示す。
【0051】
上述したように、PM堆積量が第1閾値以上になると、フィルタ再生手段65によって半自動モードとなり、吸気スロットルの絞りが行われて排気温度が第1目標温度となり、この段階で再生スイッチ14を押すとポスト噴射が行われて排気温度が第2目標温度となり、PM堆積量が減少することになる。
さて、第1段階の昇温において吸気スロットルの絞りが行われると、排気温度は上昇して第1目標温度(250℃)なるが、希に吸気スロットルの絞りを行っても短期間で排気温度が上がらず250℃未満になることがある。
【0052】
このような場合、フィルタ再生手段65は、第3ランプ72に制御信号を出力して、「再生条件不成立/再生失敗・中断」の欄に示すように、第3ランプ72を点滅(遅く点滅)させる。第3ランプ72の点滅は、「作業者に対してエンジン回転数をアクセルレバー等の手動操作によって上昇させることを促す」ことを示すものである。なお、フィルタ再生手段65は、吸気スロットルの絞り後に排気温度が第1目標温度未満である状態が連続して数秒間続いたときに、第3ランプ72を点滅させる制御信号を出力するようにしてもよい。
【0053】
このようにすれば、作業者は、再生スイッチ14が消灯している状態で第3ランプ72が点滅した場合には、第2段階の昇温の前に、手動操作によって排気温度を上げなければならない段階であることが分かり、作業を行っている合間などに、アクセルレバーを操作してエンジン回転数を上昇させることができる。エンジン回転数が上昇すると排気温度が上昇する。ここで、エンジン回転数の上昇によって排気温度が上がり、排気温度が第1目標温度以上になると、フィルタ再生手段65は、第3ランプ72への制御信号の出力を停止し、第3ランプ72を消灯させる。
【0054】
また、第2段階の昇温においてポスト噴射を行った場合でも、吸気スロットルの絞りと同様に、トラクタ1の負荷変動等により、排気温度がスムーズに上がらず、第1目標温度未満になることがある。このような場合でも、フィルタ再生手段65は、第3ランプ72に制御信号を出力して、「再生制御中の条件外れ警告」の欄に示すように、第3ランプ72を点滅(遅く点滅)させ、吸気スロットルの絞りのときと同様に、作業者に対してエンジン回転数をアクセルレバー等の手動操作によって上昇させることを促す。また、フィルタ再生手段65は、第2段階の昇温であるポスト噴射を停止させると共に、第1ランプ70及び再生スイッチ14に制御信号を出力して、第1ランプ70を点灯から点滅に代えると共に再生スイッチ14を消灯する。
【0055】
なお、フィルタ再生手段65は、ポスト噴射後に排気温度が第1目標温度未満である状態が連続して数秒間続いたときに、第3ランプ72を点滅させる制御信号を出力したり、第1ランプ70を点灯から点滅させる制御信号を出力したり、再生スイッチ14を消灯させる制御信号を出力するようにしてもよい。
このようにすれば、作業者は、再生スイッチ14を一旦押して、第2段階の昇温を確認(許可)した場合でも、その後に第3ランプ72が点滅したときには、第2段階の昇温がスムーズに進まなかったために、手動操作によって排気温度を上げなければならない段階であることが分かる。
【0056】
ここで、エンジン回転数の上昇によって排気温度が上がり、排気温度が第1目標温度以上になると、フィルタ再生手段65は、第3ランプ72への制御信号の出力を停止し、第3ランプ72を消灯させるだけでなく、再生スイッチ14へ制御信号を出力して再生スイッチ14を点滅させ、再度、第2段階の昇温の確認を行う。
なお、上述したレベル1において、十分にPM堆積量が減少した場合は、レベル0になったとみなされ、第1ランプ70〜第3ランプ72及び再生スイッチ14も消灯となる。
【0057】
さて、図4に示すように、PM堆積量が第1閾値以上であるレベル1になってから、長く時間が経過し、例えば、レベル1となってからの経過時間が1800秒(30分)しても、PM堆積量が警告解除レベルに設定された量(警告解除量)未満となっていない場合には、「Level:2(レベル2)」の段階になる。なお、警告解除量とは、第1閾値よりも小さいものの十分にPM堆積量が減少していない量のことであり、例えば、第1閾値のPM堆積量を100%とすると、警告解除量は、例えば、第1閾値の80%に設定されている。
【0058】
このレベル2は、レベル1にてDPF再生後にPM堆積量が第1閾値未満になったとしても、第1ランプ70〜第3ランプ72及び再生スイッチ14の全てを消灯するような段階、警告を全て解除できない段階である。なお、レベル2は、レベル1におけるDPF再生の評価を行うためのレベルであって、レベル1の開始後、PM堆積量が警告解除未満となればレベル0となり、警告解除以上であればレベル2となる。当然の如く、レベル1の処理が行われない場合にはレベル2には移行しない。レベル2における昇温制御や第1ランプ70〜第3ランプ72及び再生スイッチ14の点灯、消灯、点滅の制御は、レベル1におけるものと同じである。そのため、レベル2については説明を省略する。
【0059】
PM堆積量が第1閾値以上よりも高い第2閾値以上である「Level:3(レベル3)」となると、半自動モードによるDPF再生を行う段階ではなく、トラクタ1を安全な場所に駐車してDPF再生を手動によって行わなければならない段階である。具体的には、PM堆積量が、半自動モードを実行する第1閾値よりも大きい第2閾値以上となったとき、フィルタ再生手段65は、手動モードになり、この手動モードによってDPF再生を行う。
【0060】
手動モードとは、PM堆積量が所定値以上(例えば、第2閾値以上)になると、半自動モードとは異なり、指令を受けると、燃焼が促進される温度域(例えば、第2目標温度)まで一挙に昇温を行うモードである。
半自動モードでDPF再生を行うレベル1及びレベル2の段階では、DPF13が捕集できる限界値に比べて、DPF13に堆積したPM堆積量には余裕があるため、例えば、圃場内でトラクタ1を動かし、トラクタ1による作業中であっても、圃場内でトラクタ1を動かしながらDPF再生を行ってもよい。しかしながら、PM堆積量が第2閾値を超えてレベル3の段階まで堆積すると、PM堆積量が限界値に近くなっているため、速やかにPM堆積量の減少を行わなければ、DPF13の故障を引き起こす虞がある。そのため、トラクタ1は作業を行う圃場(作業場)などから離れた場所に駐車して、トラクタ1の走行を停止した状態で手動モードでDPF再生を行う必要がある。
【0061】
詳しくは、フィルタ再生手段65が手動モードになると、フィルタ再生手段65は、第2ランプ71も制御信号を出力し、第2ランプ71を点滅させる。第2ランプ71の点滅によって、PM堆積量がレベル3になっていることを報知すると共に、作業者にトラクタ1を安全な場所に停車(駐車)することを促す。作業者は、第2ランプ71の点滅を見た後、トラクタ1を停車し(条件A)、パーキングレバーを引き(条件B)、ギアをニュートラル(変速装置をニュートラル、条件C)にし、エンジン回転数をアイドル回転数にする。
【0062】
上述した停車条件A〜条件Cが整うと、フィルタ再生手段65は、再生スイッチ14に制御信号を出力し、再生スイッチ14を点滅させる。この状態の再生スイッチ14の点滅は、半自動モードとは異なり、トラクタ1を停車した状態で排気温度を一挙に第2目標温度を指令してよいか否かを作業者に確認するもので、作業者が再生スイッチ14を押すと、フィルタ再生手段65の昇温制御によって吸気スロットルの絞りやポスト噴射などが行われ一挙に昇温がなされる。手動モードでは、再生スイッチ14が押されると、フィルタ再生手段65は、半自動モードとは異なり、エンジンECU61に指令を出力して自動的にエンジン回転数を上昇させる。即ち、手動モードでは、自動的にエンジンを十分に上昇させて排気温度を上げる処理がなされる。
【0063】
また、フィルタ再生手段65は、DPF再生を行うと、第2ランプ71及び再生スイッチ14に制御信号を出力して、第2ランプ71及び再生スイッチ14を点滅から点灯に代えて、駐車した状態でDPF再生中であることを示す。なお、上述した実施形態では、条件A〜条件Cが揃ったときに、再生スイッチ14を点滅させると説明したが、条件A〜条件Cが全て揃わなくても、フィルタ再生手段65によるDPF再生が可能であるときに、再生スイッチ14を点滅させてもよい。
【0064】
再生スイッチ14が点滅後、作業者が再生スイッチ14を押さずに、所定時間が経過した場合(例えば、10分)には、フィルタ再生手段65は、第4ランプ73に制御信号を出力し、当該第4ランプ73を点滅させ、異常であることを作業者に報知する。
第4ランプ73の点滅によって、作業者は、手動モードにおいて再生スイッチ14を押すことによる手動再生(強制再生)を行わなかったことを知ることができると共に、トラクタ1を管理する販売店や製造メーカのサービスマンを呼ばなければならない段階であることを知ることができる。即ち、第4ランプ73の点滅は、トラクタ等の販売店などに連絡して、DPF13の状況を知らせる必要があることを示している。
【0065】
以上、本発明では、再生スイッチ14は、PM堆積量が第1閾値以上であって半自動モードのときは、第1段階の昇温から第2段階の昇温を行う指令を行うもの(昇温の途中で指令を行うもの)であるが、PM堆積量が第2閾値を超えて手動モードのときは、一挙に粒子状物質の燃焼を促進する温度域(600℃)まで昇温を実行するものである。即ち、再生スイッチ14は、半自動モードにおける昇温の指令と、手動モードにおける昇温の指令との両方を行うことができるも兼用スイッチであり、各モードに対応するスイッチを1つのスイッチで構成することができ、部品点数を少なくすることができる。
【0066】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上記の実施形態では、PM堆積量が第2閾値を超えてレベル3の段階まで堆積した場合、手動モードになると説明したがこれに代え、PM堆積量が第1閾値を超えてレベル1及びレベル2になったときに、手動モードになるようにしてもよい。この場合、PM堆積量が第1閾値以上となるとフィルタ再生手段65は、まず、制御信号を出力して第2ランプ71を点滅させ、作業者にトラクタ1を安全な場所に停車(駐車)することを促す。また、フィルタ再生手段65は、トラクタ1が停車条件(条件A〜条件C)を満たすと、再生スイッチ14に制御信号を出力し、再生スイッチ14を点滅させる。作業者が再生スイッチ14を押すと、フィルタ再生手段65は、昇温制御によって吸気スロットルの絞りやポスト噴射などを実行し一挙に昇温を行う。このようにすれば、PM堆積量が第1閾値以上であっても手動モードによりDPF再生を行うことができる。
【0067】
上記の実施形態では、フィルタ再生手段65は、DPF13内の粒子状物質を燃焼させるために排気温度を昇温させるものであると説明しているが、これは実質的に粒子状物質を燃焼させるためにDPF13内の温度を上げることであり、これらの排気温度をDPF13内の温度や水温等と読み替えても何ら問題ない。
フィルタ再生手段65を構成する制御プログラムは、エンジンECU61に格納していてもよく、作業機(トラクタ1)に搭載した電子機器類に格納していてもよい。また、エンジンECU61とメインECU62とを一体化してもよい。エンジンECU61及びメインECU62における制御は、上述したものに限定されず、適用する作業機によって各種制御を行えばよく、例えば、作業機がコンバインあれば、コンバインに適応した制御を行い、バックホーであれば、バックホーに適応した制御を行う。
【0068】
上述した実施形態では、半自動モードにおいて、排気温度を第1目標温度に上げた後、第2目標温度に上げるという2段階方式について説明したが、排気温度が第1目標温度になるまでや第2目標温度になるまで、2段階以上、例えば、3段階や4段階など複数段階に分けて昇温してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 トラクタ
2 走行車体
3 ディーゼルエンジン
4 変速装置
5 3点リンク機構
6 作業装置
7 キャビン
8 運転席
8a 背もたれ
9 表示装置
10 外装ケース
11 表示部
11a エンジン回転表示部
11b 燃料表示部
11c 水温表示部
11d ランプ表示部
12 表示基板
13 DPF
14 再生スイッチ
16 表示装置用カバー
20 対向面
20U 上側縁部
20L 左側縁部
20R 右側縁部
20D 下側縁部
21 上面
22 左側面
23 右側面
24 切欠部
25 対向面の周縁部
30 表示装置の周縁部
30a 第1左右縁部
31 設置部
32 遮光手段(陰影手段)
40 シリンダ
41 吸気ポート
42 排気ポート
43 吸気バルブ
44 排気バルブ
45 吸気マニホールド
46 排気マニホールド
47 サイレンサ
50 排出ガス浄化装置
60 制御部
61 エンジンECU
62 メインECU
65 フィルタ再生手段
66 入側圧力センサ
67 出側圧力センサ
68 温度センサ
70 第1ランプ
71 第2ランプ
72 第3ランプ
73 第4ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前側に設置された表示装置と、前記表示装置が嵌めこまれて当該表示装置の周縁部を囲む表示装置用カバーと、ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質の堆積量が所定値以上であるときに前記粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生手段とを備えた作業機において、
前記堆積量が所定値以上であるときに前記フィルタ再生手段による粒子状物質の燃焼を行う段階であることを報知し且つ手動操作によって前記フィルタ再生手段による粒子状物質の燃焼を指令する再生スイッチを備え、
前記再生スイッチは、前記表示装置用カバーの前記運転席に対向する対向面の周縁部と前記表示装置の周縁部との間に設けられていることを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記再生スイッチは、前記表示装置と運転席との間に設けられたハンドル側から見て前記ハンドルの左右方向一方側に対応する部分に斜めに傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記表示装置の周縁部のうち左右方向一方側に形成された第1左右縁部と、前記対向面の周縁部のうち左右方向一方側に形成された第2左右縁部との間に、前記再生スイッチを設けるための設置部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記フィルタ再生手段は、前記堆積量が所定値以上になると自動的に排出ガス浄化装置内の排気温度の昇温を行うと共に昇温の途中で指令を待ち当該指令を受けてから燃焼が促進される温度域まで昇温を行う半自動モードと、前記堆積量が所定値以上であるときに指令を受けてから燃焼が促進される温度域までの昇温を行う手動モードとを備え、前記手動モードを行うための堆積量の判定は、前記半自動モードを行う堆積量よりも大きく設定されており、
前記再生スイッチは、前記半自動モードにて昇温の途中で行う指令と、前記手動モードにて行う昇温の指令とを実行することができる兼用スイッチであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業機。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113215(P2013−113215A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260251(P2011−260251)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】