説明

作業機

【課題】散布装置を取り外した状態で、機体側に備えられた電力供給部側のコネクタを簡単に保持し得るようにした作業機を提供する。
【解決手段】機体側に備えられた電力供給部と散布装置13とを導電線42で接続する通電経路に、電力供給部と前記散布装置13とを、接続状態と接続解除状態とに切換可能なコネクタ40を備えるとともに、機体側から、散布装置13を取り外してコネクタ40を接続解除状態にする際、電力供給部側のコネクタ41を保持するコネクタ保持部60を機体側に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体側に主作業装置を備え、前記機体側に着脱可能な散布装置を備える作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業機においては、薬剤散布装置の電動モータに対する電力供給系にコネクタを設けて、そのコネクタを抜き差しすることで、薬剤散布装置の着脱に伴う電力供給の断続操作を簡便に行えるように構成したものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−331937号公報(段落〔0022〕、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造のものでは、薬剤散布装置を装着したり、外したりする際に、その薬剤散布装置の電動モータに対する電力供給の断続を、コネクタの抜き差しによって簡便に行える点で有用なものである。
しかしながら、薬剤散布装置側のコネクタに差していた電力供給部側のコネクタは、薬剤散布装置を取り外した後では、差し込み対象のコネクタが存在しなくなるため、機体側の固定部からぶら下がった状態のままか、紐などの締結手段を用いて機体側の適所に縛りつけて固定するなどしていた。
このため、コネクタが機体側の固定部からぶら下がったままの状態では電力供給用の導電線を損傷する虞があり、また、機体側の適所に縛り付けるのはその手間が面倒であるとともに、作業中に縛りが解けて脱落してしまう虞もあって改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、散布装置を取り外した状態で、機体側に備えられた電力供給部側のコネクタを簡単に保持し得るようにした作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、機体側に主作業装置を備え、前記機体側に着脱可能な散布装置を備える作業機であって、
前記機体側に備えられた電力供給部と前記散布装置とを導電線で接続する通電経路に、前記電力供給部と前記散布装置とを、接続状態と接続解除状態とに切換可能なコネクタを備えるとともに、
前記機体側から、前記散布装置を取り外して前記コネクタを接続解除状態にする際、前記電力供給部側のコネクタを保持するコネクタ保持部を前記機体側に備えたことを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した特徴構成によると、主作業装置に比べて取り扱い性が良い散布装置を着脱する際に、その取り外された散布装置のコネクタに対して接続されていた電力供給部側のコネクタを、機体側に備えたコネクタ保持部に支持させるので、散布装置の取り外し後における電力供給部側のコネクタを、簡単な操作で安定的に保持させ得る利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置側のコネクタを散布装置に一体に形成し、前記電力供給部側のコネクタを保持するコネクタ保持部を、前記散布装置を支持する支持部材に設けてあることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、散布装置側のコネクタが散布装置と一体に形成されているので、散布装置を取り外した後で散布装置側には導電線につながれたコネクタは存在せず、その散布装置側のコネクタを別途固定する手段は不要である。
そして、電力供給部側のコネクタは、散布装置を支持する支持部材を利用して設けたコネクタ保持部に支持させられるので、散布装置から外したコネクタをすぐ近くのコネクタ保持部に簡単に接続して保持することができる。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記コネクタ保持部は、前記電力供給部側のコネクタ遊端部を上方に向けて差し込み接続可能な差し込み部を下面側に設けてある点に特徴がある。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、コネクタ保持部は、電力供給部側のコネクタ遊端部を上方に向けて差し込み接続可能な差し込み部を下面側に設けたものであるから、このコネクタ保持部に電力供給部側のコネクタが差し込み接続されていない状態で、差し込み部に雨水や洗車時の水が溜まるような不具合を回避できる利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置を支持する支持部材には、前記コネクタ保持部に前記電力供給部側のコネクタ遊端部が接続された前記電力供給部側の導電線の余剰長さ分を保持可能な迂回配索部を設けてあることである。
【0013】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、電力供給部側の導電線が余剰長さを有した状態であれば、その余剰分を散布装置の支持部材に設けた迂回配索部を利用して保持させることができるので、導電線の余剰の有無に拘わらず、コネクタ及び導電線を無用な垂れ下がり部分などのない安定的な状態に保持させ易い利点がある。
【0014】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記散布装置と散布装置を支持する支持部材との着脱部を、側面視で支持部材の前後方向長さの範囲内に設けてあることである。
【0015】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、散布装置と支持部材との着脱部が側面視で支持部材の前後方向長さの範囲内であることにより、支持部材を含めての散布装置の前後方向長さをコンパクトに構成し易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】苗植付け装置に対する散布装置の取り付け状態を示す背面図である。
【図4】散布装置の着脱構造を示す斜視図である。
【図5】図3におけるV-V線断面図である。
【図6】散布装置の底面図である。
【図7】散布装置の取付状態を示す側面図である。
【図8】図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【図9】別実施形態における散布装置の平面図である。
【図10】別実施形態における苗植付け装置に対する散布装置の取り付け状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した作業機の一例である乗用型田植機の実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。
走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付け装置12(主作業装置に相当する)が連結され、その苗植付け装置12の後方に、散布装置の一例であるところの、除草剤等の粉粒状の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付け装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、操縦部7に装備した変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0018】
図1及び図2に示すように、苗植付け装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、後部側の植付け爪駆動機構17に動力を伝える2個の植付け伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。植付け伝動ケース15の後部の左右両側部に、植付け爪駆動機構17により植付アーム18が上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられ、苗植付け装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付け装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0019】
そして、フィードケース14に伝達される動力が植付け伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0020】
〔散布装置〕
次に、散布装置の一例としての薬剤散布装置13について説明する。
図5乃至図7に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー23と、その貯留ホッパー23の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0021】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。このケーシング29は、図3及び図8に示すように左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0022】
図5及び図6に示すように、繰出し機構25は、薬剤通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、薬剤通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0023】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された薬剤通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が薬剤通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、薬剤通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、薬剤通過用の開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ38により閉位置(薬剤通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ38の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(薬剤通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0024】
図5に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室35が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ36を収納するためのモータ収納室37が形成されている。
【0025】
図5及び図6に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えて縦向きの回転軸芯Y周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ36とを備えて構成されている。
【0026】
受止め体51は縦向きの回転軸芯Y周りで回転する状態で板面が上向きとなるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数個備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0027】
拡散用羽根体52の径方向での内端縁は径方向外方側ほど高くなる傾斜縁52Aに形成されている。拡散用羽根体52の上端縁は水平に形成され、拡散用羽根体52の下端側を受け止め支持する受止め体51の受止め面51Aは、径方向内方側が低く径方向外方側が高くなる傾斜面に形成されている(図5参照)。図6に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
【0028】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ36の駆動軸53に外嵌する筒軸部50も一体形成されており、筒軸部50は、電動モータ36の駆動軸53に外嵌装着されて、それに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0029】
そして、図5及び図6に示すように、受止め体51の周りでは、ケーシング29の底面部分を兼ねるように、前記受止め体51の上部側を仕切る上壁部54Aと、受止め体51の外周側を囲繞する半円弧状の縦壁部54Bとを備えた底板部分54が設けられている。
前記縦壁部54Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する左右一対の拡散方向調整板55,55が備えられている。
【0030】
拡散方向調整板55,55は、上壁部54Aに対して前方側端部の図示しない縦軸芯周りで回動自在に、且つ摩擦により位置保持する状態で取り付けてあり、薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成されている。
【0031】
前記ケーシング29の後端側では、図5に示すように、前記モータ収納室37の上端側に連なるケーシング29の天井板部分56の後端縁と、前記底板部分54の後端縁とを、後下がり姿勢の傾斜板57で連結して、モータ収納室37の後壁37aと前記底板部分54と前記傾斜板57とで側面視三角形状の空間が形成されるように構成してある。このようにケーシング29の後端側を側面視三角形状に形成することで、前記底板部分54を後方側へ長く延出してもケーシング29の所要強度を確保し易く構成してある。
【0032】
前記ケーシング29の側面視三角形状の後端側において、前記傾斜板57の内側で前記天井板部分56と前記底板部分54とにわたって、前記傾斜板57との間に所定間隔を隔ててほぼ平行に後下がり傾斜姿勢で流下案内板58を設けてある。
そして、この流下案内板58の下端側箇所、及び底板部分54の後端側箇所に、通水用の通路を構成する孔部58a,57aを設けてあり、雨水や洗車の際に前記三角形状の空間に入り込んだ水分を排出可能に構成してある。
【0033】
前記ケーシング29の天井板部分56には、図5、図7、及び図8に示すように、貯留ホッパー23の下端側における矩形状の周壁部分24を連結固定するためのホッパー連結部59が設けられている。
このホッパー連結部59は、周壁部分24の前壁部24aを前後で挟み込む状態に接当する断面三角形状の凸条部59a,59bと、前記周壁部分24の後壁部24bの内周面側に接当する凸条部59cと、前記周壁部分24の左右の両側壁部24c,24cの各内周面側に接当する板状のブラケット59d,59dとを備え、前記ブラケット59d,59dの各連結孔59eと周壁部分24の両側壁部24c,24cに形成された連結孔24dとに連結ボルト64を挿通して連結固定するように構成されている。
【0034】
前記ケーシング29の底板部分54の前部側には、前記電気制御ユニット28が収容されたソレノイド収納室35の下方側に位置させて前記電気制御ユニット28に電力を供給するための入力用コネクタ40が取り付けられている。
この入力用コネクタ40は、前記電気制御ユニット28に対して電力供給可能であるように上端側がケーシング29内に位置して電力供給ユニット28に接続され、下端側がケーシング29の外部へ露出している。そして、この入力用コネクタ40の下端側には、図示しない電力供給部側に繋がる接続用コネクタ41を下方側から抜き差し可能であるように、接続面を下方側に向けて取り付けてある。
上記の接続用コネクタ41とは、走行機体3側に備えられたオルタネータ(図示せず)、あるいはバッテリー(図示せず)などの電力供給部側に導電線42を介して接続されたコネクタである。
【0035】
〔散布装置の取付構造〕
前記散布装置の一例である薬剤散布装置13は前記苗植付け装置12に対して次のようにして装備されている。
図1乃至図5に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け装置12が苗植付け作業位置にある状態で、田面から設定距離上方に位置するように、散布装置支持フレーム70を介して支持されている。
前記散布装置支持フレーム70は、図2及び図3に示されるように、左右の植付け伝動ケース15同士を連結するように、左右の各植付け伝動ケース15にわたって下端側を連結された背面視門形に屈曲形成されたパイプ材からなる横向きフレームによって構成されている。
【0036】
前記散布装置支持フレーム70は、図3に示すように、左右の各植付け伝動ケース15側から上方へ立ち上がる脚部70Aと、左右の脚部70A,70Aの上端部同士を連結するように水平方向で横向きに延設された横杆部70Bとを備えて形成されている。
前記散布装置支持フレーム70は、図3に示されるように、下端部に取付板71が溶接してあり、この取付板71が左右の各植付け伝動ケース15の上部の前後2カ所のボス部材15aに対して、取付ボルト72を介して連結固定されることにより、左右の各植付け伝動ケース15に対して着脱可能に取り付けてある。
【0037】
前記散布装置支持フレーム70の横杆部70Bの左右方向での中央部には、図3乃至図5に示すように、取付面73Aを上下方向に沿わせた取付台73(支持部材に相当する)を溶接して固定してあり、この取付台73に対して、薬剤散布装置13に固定された連結台74を連結するように構成してある。
前記散布装置支持フレーム70側に固定の取付台73は、平板状の取付面73Aが後方側に向き、その取付面73Aの左右両側辺側を前方側へ折り曲げた横側片73Bと、取付面73Aの上端辺側を前方側へ折り曲げた上側片73Cとを備え、前記左右の横側片73Bの下端縁と取付面73Aの下端部とを前記横杆部70Bの外周に溶接して固定してある。
【0038】
前記薬剤散布装置13に固定の連結台74は、取付台73の取付面73Aに対向する平板状の前向き面74Aと、その前向き面74Aの上端側で左右両側から後方に向けて水平方向に延出された左右一対の載置片74Bとを備えて側面視L字状に構成され、載置片74Bに薬剤散布装置13が載置された状態で固定ボルト76により連結固定されている。
【0039】
前記取付台73には、薬剤散布装置13側の連結台74の前向き面74Aにおける左右両側に形成された係合孔74aに係入して、前記連結台74の上部側を支持する後方向きの係止片73aを、前記取付面73Aの上端部箇所に形成してあるとともに、前記連結台74の前向き面74Aの下端縁74bを受け止め支持するように、左右両側で下端側をU字状に折り返して形成した受け溝部分73bを形成してある
そして、前記連結台74の前向き面74Aにおける下端側で左右方向の中央箇所に、U字状に折り曲げて遊端側が前方側へ突出するように形成したフック74cが形成してあり、前記取付台73の取付面73Aに、前記フック74cの前方側へ突出する遊端側が挿通される開口73cを形成してある。
【0040】
したがって、図5及び図7に示すように、連結台74の左右両側に形成された下端縁74bを取付台73の受け溝部分73bに支持させた状態で、取付台73の係止片73aが連結台74の係合孔74aに係合して、薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態となる。この状態から薬剤散布装置13側の連結台74を少し浮かして前記係止片73aと係合孔74aとの係合を解除し、後方側へ移動させることにより、図4に示すように散布装置支持フレーム70側の取付台73に対する薬剤散布装置13側の連結台74における載置支持状態を解除することができる。
【0041】
また、散布装置支持フレーム70側の取付台73には、前記取付面74の裏側である前面の左右方向での中央付近にバックル式の連結金具75が備えてある。
この連結金具75の止め金75aを、前記連結台74の左右方向での中央箇所に形成されているフック74cに引っ掛けて、薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73に対して引き寄せた状態で連結できるようにしてある。
したがって、この連結金具75で、前記薬剤散布装置13側の連結台74を散布装置支持フレーム70側の取付台73側に引き寄せて連結した状態では、前記薬剤散布装置13側の連結台74が散布装置支持フレーム70側の取付台73に載置支持された状態を維持し、連結台74の浮き上がりや上下揺動が抑止された状態に保たれている。この連結金具75を緩み側に操作して前記止め金75aをフック74cから外すことで簡単に連結を解除できる。
【0042】
図4及び図5に示すように、前記連結金具75には、手指を引っかけて揺動操作することにより、前記止め金75aを上方側へ移動させて緩める状態と、下方側へ引っ張って締め付ける状態とに操作するための操作片75bが設けられている。この操作片75bは、図5に示すように、下方側へ操作した締め付け姿勢で、最も前方側に位置する操作片75bの遊端側が取付台73の横側片73Bの前縁よりも前方側へ突出しないように構成されている。
【0043】
上記のように薬剤散布装置13を支持する支持部材としての前記取付台73に対して、薬剤散布装置13側の連結台74を着脱可能に連結するための着脱部が、前記連結金具75、フック74c、前記係止片73aと係合孔74a、及び前記下端縁74bと受け溝部分73bによって構成されている。
これにより、前記着脱部は、取付台73の前後方向幅Lの範囲内に、つまり、取付台73の横側片73Bの前縁と、前記係止片73a又は前記受け溝部分73bの後端との間における前後方向長さの範囲内に存在した状態で構成されている。
【0044】
このように、取付台73に対して薬剤散布装置13側の連結台74を着脱可能に連結するための着脱部が、取付台73の前後方向幅Lの範囲内に収まるように構成されたことで、薬剤散布装置13の対地高さをできるだけ低くして重心の安定化を図りながら、着脱部の前後方向幅を短くすることで、薬剤散布装置13を支持する構造の全体を前後方向で短縮化する上で有利であり、これに伴って薬剤散布装置13をできるだけ苗のせ台20に近づけて配置し易く、機体全長の短縮化にも有利である。
また、薬剤散布装置13を苗のせ台20側に近づけて配設しても、前記連結金具75の操作片75bの遊端側が取付台73の横側片73Bの前縁よりも前方側へ突出しないように構成されていることにより、例えば、苗のせ台20に載置されている苗が比較的長くて、苗のせ台20の横移動の際に苗先端側が取付台73に接触するようなことがあっても、その苗が連結金具75に引っ掛かって損傷するような不具合が生じる可能性を少なくできる点で有利である。
【0045】
〔コネクタ保持部〕
図3乃至図7に示されるように、前記取付台73における取付面73Aの下部には、前記薬剤散布装置13の下部に一体に設けられた入力用コネクタ40に対して抜き差し可能な電力供給部側の接続用コネクタ41が、図3に実線で示すように薬剤散布装置13の入力用コネクタ40に差し込まれている状態から引き抜かれたとき、その引き抜かれた電力供給部側の接続用コネクタ41を図3に仮想線で示すように差し込み可能なコネクタ保持部60を設けてある。
このコネクタ保持部60は、前記薬剤散布装置13側の入力用コネクタ40と同一形状の差し込み部を備え、その下面側から前記電力供給部側の接続用コネクタ41を抜き差し可能に構成されているが、薬剤散布装置13側の電気制御ユニット28などの電気系統には接続されていず、前記薬剤散布装置13の取り外しに際して入力用コネクタ40から抜かれた電力供給部側の接続用コネクタ41を位置固定するためのものである。
【0046】
前記コネクタ保持部60は、取付部材61を介して取付台73の左側の下部に固定してあり、取付台73の右側の下部には、前記電力供給部側の接続用コネクタ41に繋がる導電線42の中途部を支持するための迂回配索部62を設けてある。
この迂回配索部62は、ゴム材、もしくは軟質合成樹脂材などからなる可撓性に富む帯状のバンド部62aと、そのバンド部62aを導電線42に巻き付けた状態でバンド部62aの端部を挿通して抜け止め状態に摩擦保持可能な固定部62bとで構成してある。
【0047】
前記導電線42は、散布装置支持フレーム70の左側で、横杆部70B及び脚部70Aに沿って配索してあり、その中途部を横杆部70B及び脚部70Aに止めバンド63a,63bで固定してある。
この導電線42は、走行機体3側に備えられた電力供給部(図示せず)から、図1に示す構造の薬剤散布装置13の入力用コネクタ40まで所要長さよりも長く設けてあり、図10に示すように、薬剤散布装置13の前側に施肥装置80を配設した場合おける薬剤散布装置13の入力用コネクタ40に接続する場合に適切な長さに設定してある。
したがって、図1に示す構造の薬剤散布装置13の入力用コネクタ40までの長さでは余剰分があるので、その余剰分を前記迂回配索部62で保持することにより、導電線42の中途部に大きな弛みのでないようにしたものである。
【0048】
〔別実施形態の1〕
図9は、本発明における別の実施形態を示すものであり、薬剤散布装置13の拡散方向調整板55,55の後端側に、さらに後方に延長された左右一対の延長拡散方向調整板55a,55aを備えている。
この延長拡散方向調整板55a,55aは、拡散方向調整板55,55の後端側の上下方向軸芯p周りで左右揺動可能に支持されていて、前記上下方向軸芯p周りで揺動角度を変更してその変更位置を適宜位置保持手段で摩擦保持することにより薬剤の散布範囲を変更可能に構成されているとともに、図中に実線で示すように後方に延出された案内作用姿勢と、同図中に仮想線で示すように、前記上下方向軸芯p周りで前方が折り返された格納姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
したがって、この延長拡散方向調整板55a,55aの後方側への延長が必要でないときには機体前方側に折り畳んでコンパクトに格納された状態とすることができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0049】
〔別実施形態の2〕
図10は、本発明における別の実施形態を示すものであり、この実施形態では、前述した薬剤散布装置13の前方側に施肥装置80を備えている。
前記施肥装置80は、上部に粉粒体貯留部としての施肥タンク81を備え、その下部に繰出し機構82を備え、さらに下方側に作溝器83、及び植付け爪駆動機構17の上部側に位置させた泥除けカバー84を備えて構成された周知の構造のものである。
このように、薬剤散布装置13の前方側に施肥装置80を備えたことにより、相対的に薬剤散布装置13は苗植付け装置12から後方に離れて位置することになり、その後方に離れて位置する薬剤散布装置13の入力用コネクタ40に対して電力供給部側の接続用コネクタ41を接続してある。
このとき、接続用コネクタ41の導電線42は、散布装置支持フレーム70には止めバンド63a,63bで中途部を支持されているが、取付台73に設けてある迂回配索部62には中途部を支持されることなく、入力用コネクタ40に対して直接的に接続させてある。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0050】
〔別実施形態の3〕
実施の形態では、コネクタ保持部60を入力用コネクタ40と同一形状の差し込み部を備えて構成したが、このように入力用コネクタ40と同一形状の差し込み部を備えて構成したものに限らず、接続用コネクタ41を差し込み状態で保持可能な構造であれば任意の形状の差し込み部を備えたもので構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0051】
〔別実施形態の4〕
実施の形態では、接続用コネクタ41を差し込み可能なコネクタ保持部60の差し込み部を、接続用コネクタ41の遊端部を上方に向けて差し込み接続可能であるように下面側に設けたものを示したが、これに限らず、例えば、接続用コネクタ41の遊端部を前後方向に向けて差し込み接続可能であるように、コネクタ保持部60の前方側もしくは後方側に設ける、あるいは、接続用コネクタ41の遊端部を左右方向に向けて差し込み接続可能であるように、コネクタ保持部60の左側もしくは右側に設けるようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0052】
〔別実施形態の5〕
実施の形態では、コネクタ保持部60を取付台73に設けたものを示したが、これに限らず、例えば、散布装置支持フレーム70に設けるなど、薬剤散布装置13を取り外した後でも主作業装置である苗植付け装置12側に残る部位の適所に設けることができる。
また、コネクタ保持部60は、走行機体3に対して主作業装置である苗植付け装置12を取り外して薬剤散布装置13を直接にリンク機構11に支持させて用いる場合には、そのリンク機構11の遊端側の一部に設けるなど、走行機体3側に設けてもよい。要は、取り外し対象の薬剤散布装置13側にコネクタ保持部60を設けるのではなく、薬剤散布装置13を取り外した後の電力供給部が存在する側にコネクタ保持部60を設けるものであればよく、本発明ではこの電力供給部が存在する側を電力供給部側と称している。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0053】
〔別実施形態の6〕
実施の形態では、迂回配索部62を取付台73に設けたものを示したが、これに限らず、例えば、散布装置支持フレーム70に設けるなど、薬剤散布装置13を取り外した後でも主作業装置である苗植付け装置12側に残る部位の適所に設けることができる。
また、迂回配索部62は、走行機体3に対して主作業装置である苗植付け装置12を取り外して薬剤散布装置13を直接にリンク機構11に支持させて用いる場合には、そのリンク機構11の遊端側の一部に設けるなど、走行機体3側に設けてもよい。要は、取り外し対象の薬剤散布装置13側に迂回配索部62を設けるのではなく、薬剤散布装置13を取り外した後の電力供給部が存在する側に迂回配索部62を設けるものであればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、散布装置として薬剤の散布のみを行うもの、薬剤と肥料との散布を行うもの、あるいは、肥料のみを散布するものなど、作業機に備える散布装置として任意のものに適用することができる。また、作業機としては、実施形態で示した乗用型田植機に限らず、例えば、歩行型田植機であったり、田面に直接に種籾を播種する播種装置を搭載した乗用型播種機、あるいは歩行型播種機であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
3 機体(走行機体)
12 主作業装置(苗植付け装置)
13 散布装置(薬剤散布装置)
40 コネクタ(入力用コネクタ)
41 コネクタ(接続用コネクタ)
42 導電線
60 コネクタ保持部
62 迂回配索部
73 支持部材(取付台)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体側に主作業装置を備え、前記機体側に着脱可能な散布装置を備える作業機であって、
前記機体側に備えられた電力供給部と前記散布装置とを導電線で接続する通電経路に、前記電力供給部と前記散布装置とを、接続状態と接続解除状態とに切換可能なコネクタを備えるとともに、
前記機体側から、前記散布装置を取り外して前記コネクタを接続解除状態にする際、前記電力供給部側のコネクタを保持するコネクタ保持部を前記機体側に備えた作業機。
【請求項2】
前記散布装置側のコネクタを散布装置に一体に形成し、前記電力供給部側のコネクタを保持するコネクタ保持部を、前記散布装置を支持する支持部材に設けてある請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記コネクタ保持部は、前記電力供給部側のコネクタ遊端部を上方に向けて差し込み接続可能な差し込み部を下面側に設けてある請求項1または2記載の作業機。
【請求項4】
前記散布装置を支持する支持部材には、前記コネクタ保持部に前記電力供給部側のコネクタ遊端部が接続された前記電力供給部側の導電線の余剰長さ分を保持可能な迂回配索部を設けてある請求項3記載の作業機。
【請求項5】
前記散布装置と散布装置を支持する支持部材との着脱部を、側面視で支持部材の前後方向長さの範囲内に設けてある請求項2〜4の何れか一項記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70(P2013−70A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135533(P2011−135533)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】