作業用足場及びその施工方法
【課題】 効率良く施工を行うことができる作業用足場の施工方法を提供する。
【解決手段】 複数の支持杭8により支持された桟橋構造物4の下方に作業用足場2を設置する作業用足場の施工方法である。この施工方法は、足場部材10を地上で組み立てる足場部材組立工程と、複数の支持杭8のうち特定の支持杭8の所定部位に固定支持部材12を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた足場部材10を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、足場部材10を水面に浮かべた状態で特定の支持杭8の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、足場部材10の所定部位を固定支持部材12に固定支持させる足場部材固定工程と、を含む。
【解決手段】 複数の支持杭8により支持された桟橋構造物4の下方に作業用足場2を設置する作業用足場の施工方法である。この施工方法は、足場部材10を地上で組み立てる足場部材組立工程と、複数の支持杭8のうち特定の支持杭8の所定部位に固定支持部材12を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた足場部材10を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、足場部材10を水面に浮かべた状態で特定の支持杭8の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、足場部材10の所定部位を固定支持部材12に固定支持させる足場部材固定工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾等には、船舶を係留するため桟橋構造物が設置されている。この桟橋構造物は鉄筋コンクリートから形成され、水中地盤に立設された複数の支持杭によって支持されている。桟橋構造物の下面は、海水の影響によって劣化し易いため、桟橋構造物の下面に対する補修作業を定期的に行う必要がある。従来より、このような補修作業は、桟橋構造物の下方に吊り足場を設置することにより行われている(例えば、特許文献1参照)。この吊り足場の施工方法としては、桟橋構造物の下面に固定支持部材(アンカー)を取り付けた後に、この固定支持部材にチェーンを介して複数本のパイプを組み合わせた根太部材を吊り下げ支持させ、その後、この根太部材の上に足場板を敷設するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−325126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、複数本のパイプを組み合わせて根太部材を形成する工程や、根太部材をチェーンに吊り下げ支持させる工程、根太部材の上に足場板を載置する工程等はいずれも桟橋構造物の下方で行われるため、作業性が悪く作業効率が低下してしまう。また、吊り足場は揺れ易く不安定であるため、波浪や潮位変化の影響を受ける場合には、吊り足場の施工を中断しなければならない。このため、桟橋構造物の下面に対する補修作業の工期全体に占める吊り足場の施工工期が長くなってしまい、補修作業を効率良く行うことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、効率良く施工を行うことができる作業用足場及びその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の作業用足場の施工方法では、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に作業用足場を設置する作業用足場の施工方法であって、
足場部材を地上で組み立てる足場部材組立工程と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の所定部位に固定支持部材を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた前記足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記特定の支持杭の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、前記足場部材の所定部位を前記固定支持部材に固定支持させる足場部材固定工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の作業用足場の施工方法では、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記特定の支持杭の水面下における部位に固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程と前記足場部材固定工程との間には足場部材沈設工程が行われ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記特定の支持杭の近傍において水中に沈めることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材にはガイド孔が設けられており、前記足場部材沈設工程においては、ガイド部材を前記固定支持部材に取り付け、前記ガイド部材を前記足場部材の前記ガイド孔に挿通させた状態で前記足場部材を水中に沈めることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材は、パイプ状に形成された足場フレームを有し、前記足場フレームには、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブとが設けられており、
前記足場部材移動工程においては、前記足場フレーム内に空気が充填された状態で、前記注水バルブ及び前記排気バルブをそれぞれ閉状態に保持させ、前記足場部材沈設工程においては、前記排気バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、前記注水バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内に水を注入することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材は略矩形状に構成されており、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程においては、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記足場部材の四隅を前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材組立工程においては、前記足場部材を複数地上で組み立て、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の足場部材に対応する前記複数の支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材降下工程においては、組み立てた前記複数の足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべ、前記足場部材移動工程においては、前記複数の足場部材を水面に浮かべた状態でそれぞれ対応する前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記複数の足場部材をそれぞれ対応する前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する前記4つの固定支持部材に固定支持させ、
前記足場部材固定工程の後には足場部材連結工程が行われ、前記足場部材連結工程においては、隣接する一対の前記足場部材を連結部材により相互に連結することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の作業用足場では、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場であって、
足場部材と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられる固定支持部材と、を備え、前記足場部材の所定部位は前記固定支持部材に固定支持され、前記足場部材には、前記足場部材を水中に沈設するための沈設手段と、前記足場部材を水面に浮設するための浮設手段とが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載の作業用足場では、前記足場部材はパイプ状に形成された足場フレームを有し、前記沈設手段は、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブと、を有し、前記浮設手段は、前記足場フレーム内の水を外部に排出するための排水バルブと、前記足場フレーム内に空気を注入するための給気バルブと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項9に記載の作業用足場では、前記足場フレームは、相互に組み合わされた複数のフレーム部材から構成されており、前記複数のフレーム部材の各々には、前記沈設手段及び前記浮設手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項10に記載の作業用足場では、前記足場部材は略矩形状に構成され、前記固定支持部材は、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に取り付けられ、前記足場部材の四隅が前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項11に記載の作業用足場では、前記足場部材は複数設けられ、前記固定支持部材には、前記足場部材を固定支持するための4つの固定支持部が周方向に間隔を置いて設けられ、前記複数の足場部材の各々の四隅は、対応する前記4つの固定支持部材の各々の前記固定支持部に固定支持され、
また、前記足場部材に関連して、隣接する一対の前記足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材を地上で組み立てるので、その分桟橋構造物の下方での作業が少なくなる。また、足場部材を水面に浮かべた状態で移動させるので、足場部材を例えば船外機船やウインチ等で牽引することによって、容易に所定位置まで移動させることができる。これにより作業性が高まり、作業用足場の施工工期を短縮化することができ、効率良く施工を行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材を水中に沈めて固定支持部材に固定支持させるので、足場部材は水中に敷設されるようになる。これにより、足場部材が波浪や潮位変化の影響を受けるのを抑制することができ、足場部材での作業を安定した姿勢で行うことができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の作業用足場の施工方法によれば、固定支持部材にガイド部材を取り付け、このガイド部材を足場部材のガイド孔に挿通させた状態で足場部材を水中に沈めるので、足場部材を安定して水中に沈めることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材沈設工程においては、排気バルブを開状態に保持させて足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、注水バルブを開状態に保持させて足場フレーム内に水を注入するので、比較的簡単な構成でもって足場部材を水中に沈めることができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材固定工程においては、足場部材の四隅を4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させるので、足場部材の固定支持を安定して行うことができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の作業用足場の施工方法によれば、複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する4つの固定支持部材に固定支持させ、隣接する一対の足場部材を連結部材により相互に連結するので、広範囲に亘って足場部材を敷設することができ、桟橋構造物の下面に対する補修作業を効率良く行うことができる。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の作業用足場によれば、固定支持部材は、複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられ、足場部材の所定部位は固定支持部材に固定支持されるので、足場部材は水中に敷設されるようになる。これにより、足場部材が波浪や潮位変化の影響を受けるのを抑制することができ、足場部材での作業を安定した姿勢で行うことができる。また、足場部材には、足場部材を水中に沈設するための沈設手段が設けられているので、この沈設手段によって足場部材を水中に沈めて固定支持部材に固定支持させることができる。これにより、足場部材の固定支持部材に対する固定支持を容易に行うことができ、効率良く作業用足場の施工を行うことができる。また、足場部材には、足場部材を水面に浮設するための浮設手段が設けられているので、この浮設手段によって足場部材を水面に浮上させることができ、足場部材の撤去を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の作業用足場によれば、沈設手段は、注水バルブ及び排気バルブを有しているので、排気バルブにより足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、注水バルブにより足場フレーム内に水を注入することにより、足場部材を水中に沈設することができる。また、浮設手段は、排水バルブ及び給気バルブを有しているので、給気バルブにより足場フレーム内に空気を注入するとともに、排水バルブにより足場フレーム内の水を外部に排出することにより、足場部材を水面に浮設させることができる。従って、沈設手段及び浮設手段の構成を比較的簡単なものとすることができる。
【0025】
また、本発明の請求項9に記載の作業用足場によれば、足場フレームを構成する複数のフレーム部材の各々には、沈設手段及び浮設手段が設けられているので、各フレーム部材の排気バルブからの空気の排出量(又は給気バルブへの空気の注入量)を調節することにより、足場部材を水中に沈設させる(又は水面に浮設させる)際に、足場部材の姿勢を安定させることができる。
【0026】
また、本発明の請求項10に記載の作業用足場によれば、足場部材の四隅が4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されるので、足場部材を安定して固定支持させることができる。
【0027】
また、本発明の請求項11に記載の作業用足場によれば、複数の足場部材の各々の四隅は、対応する4つの固定支持部材の各々の固定支持部に固定支持され、隣接する一対の足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられているので、広範囲に亘って足場部材を敷設することができ、桟橋構造物の下面に対する補修作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による作業用足場を示す斜視図である。
【図2】足場部材を示す斜視図である。
【図3】足場部材の沈設手段及び浮設手段に関連する構成を説明するための図である。
【図4】(a)は、足場部材を水中に沈める前の状態を示す図であり、(b)は、足場部材を水中に沈める途中の状態を示す図であり、(c)は、足場部材を水中に沈めた状態を示す図である。
【図5】(a)は、足場部材を水面に浮上させる前の状態を示す図であり、(b)は、足場部材を水面に浮上させる途中の状態を示す図であり、(c)は、足場部材を水面に浮上させた状態を示す図である。
【図6】(a)は、固定支持部材を支持杭に取り付ける前の状態を示す平面図であり、(b)は、固定支持部材を支持杭に取り付けた状態を示す平面図である。
【図7】足場部材組立工程を説明するための図である。
【図8】固定支持部材取付工程を説明するための図である。
【図9】足場部材降下工程を説明するための図である。
【図10】足場部材移動工程を説明するための図である。
【図11】固定支持部材にガイド部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】足場部材沈設工程を説明するための図である。
【図13】足場部材固定工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う作業用足場及びその施工方法の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による作業用足場を示す斜視図であり、図2は、足場部材を示す斜視図であり、図3は、足場部材の沈設手段及び浮設手段に関連する構成を説明するための図であり、図4(a)〜(c)は、足場部材を水中に沈める工程を説明するための図であり、図5(a)〜(c)は、足場部材を水面に浮上させる工程を説明するための図であり、図6(a)は、固定支持部材を支持杭に取り付ける前の状態を示す平面図であり、図6(b)は、固定支持部材を支持杭に取り付けた状態を示す平面図であり、図7は、足場部材組立工程を説明するための図であり、図8は、固定支持部材取付工程を説明するための図であり、図9は、足場部材降下工程を説明するための図であり、図10は、足場部材移動工程を説明するための図であり、図11は、固定支持部材にガイド部材を取り付けた状態を示す斜視図であり、図12は、足場部材沈設工程を説明するための図であり、図13は、足場部材固定工程を説明するための図である。
【0030】
図1を参照して、本実施形態の作業用足場2は、港湾等において船舶を係留するための桟橋構造物4の下方に設置されるものである。桟橋構造物4は鉄筋コンクリートから形成され、その先端部には防舷材6が設けられている。水中地盤には格子状に配置された複数の支持杭8が立設され、桟橋構造物4は、これら複数の支持杭8によって下方より支持されている。支持杭8の上端部における表面には、防食用のコーティングが施されている。
【0031】
作業用足場2は、複数の足場部材10と、複数の支持杭8の各々の水面下における部位に取り付けられた複数の固定支持部材12と、を備えている。足場部材10は、日の字状(矩形状)に構成された足場フレーム14と、足場フレーム14の上面に間隔を置いて固定支持された複数の補強部材16と、複数の補強部材16の上側に固定支持されたエキスパンドメタル18と、を有している(図2参照)。補強部材16は、断面矩形状のパイプ状に構成されている。エキスパンドメタルは、矩形状且つ網目状に構成され、足場フレーム14の上面のほぼ全域を覆うようにして固定支持されている。このように網目状のエキスパンドメタル18を用いることにより、水がエキスパンドメタル18を自在に通過するようになり、波浪の影響を軽減することができる。また、足場フレーム14の四隅にはそれぞれ、固定用ボルト20(後述する)が挿通される挿通孔22及びガイド部材24(後述する)が挿通されるガイド孔26が設けられている。なお、図2においては、エキスパンドメタル18の一部を切り欠いて図示してある。
【0032】
足場フレーム14は、断面円形状のパイプ状に構成された第1〜第5フレーム部材28a〜28eを日の字状に組み合わせることによって構成されている(図2及び図3参照)。第1〜第4フレーム部材28a〜28dはロの字状に組み合わされ、第1フレーム部材28a及び第2フレーム部材28b、第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dはそれぞれ相互に対向して配置されている。また、第5フレーム部材28eは、第3フレーム部材28cと第4フレーム部材28dとの間に架け渡されている。第1フレーム部材28aの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各一端部との間にはそれぞれ隔壁30,32が設けられ、また第2フレーム部材28bの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各他端部との間にはそれぞれ隔壁34,36が設けられている。また、第5フレーム部材28eの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各長手方向中央部との間にはそれぞれ隔壁38,40が設けられている。これら各隔壁30〜40によって、各フレーム部材28a〜28eの内部が仕切られている。なお、図3においては、複数の補強部材16及びエキスパンドメタル18の図示を省略してある。
【0033】
各フレーム部材28a〜28eの上面にはそれぞれ、フレーム部材28a〜28e内の空気を外部に排出するための排気バルブ42と、フレーム部材28a〜28e内に空気を注入するための給気バルブ44とが設けられている(図3〜図5参照)。また、各フレーム部材28a〜28eの下面にはそれぞれ、フレーム部材28a〜28e内に水を注入又はフレーム部材28a〜28e内の水を外部に排出するための注排水バルブ46(注水バルブ及び排水バルブを構成する)が設けられている(図4及び図5参照)。排気バルブ42及び注排水バルブ46によって沈設手段が構成され、また給気バルブ44及び注排水バルブ46によって浮設手段が構成される。なお、図2においては、排気バルブ42及び給気バルブ44の図示は省略してある。
【0034】
図4に示すように、上述した沈設手段によって、次のようにして足場部材10を水中に沈設させることができる。足場部材10を水面に浮かべた状態で(図4(a)参照)、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持するとともに、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44を閉状態に保持する。その後、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42にそれぞれ操作パネル48を接続する。この操作パネル48は、給排気パイプ50を介して桟橋構造物4上に設置されたコンプレッサ52に接続されており(図3及び図12参照)、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量及び給気バルブ44への空気の注入量を調節するためのものである。コンプレッサ52が作動されると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内の空気が排気バルブ42より外部に排出され、各フレーム部材28a〜28e内の圧力が低下する。これにより、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内に水が注入され(図4(b)参照)、負の浮力によって足場部材10が水中に沈むようになる(図4(c)参照)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量を調節する。足場部材10が水中に沈設されると、コンプレッサ52の作動を停止し、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。なお、操作パネル48の操作は、操作パネル48に設けられたスイッチ類(図示せず)を操作するようにしてもよく、あるいは桟橋構造物4上で遠隔操作するようにしてもよい。
【0035】
また、図5に示すように、上述した浮設手段によって、次のようにして足場部材10を水面に浮設させることができる。足場部材10が水中に沈設された状態で(図5(a)参照)、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持するとともに、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42を閉状態に保持する。その後、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44にそれぞれ操作パネル48を接続する。なお、図3においては、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44にそれぞれ操作パネル48を接続した状態を図示してある。コンプレッサ52が作動すると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内に空気(圧縮空気)が給気バルブ44より注入され、各フレーム部材28a〜28e内の圧力が上昇する。これにより、各フレーム部材28a〜28e内の水が注排水バルブ46より外部に排出され(図5(b)参照)、正の浮力によって足場部材10が水面に浮上するようになる(図5(c)参照)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44への空気の注入量を調節する。足場部材10が水面に浮設されると、コンプレッサ52の作動を停止し、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。
【0036】
固定支持部材12は、支持杭8に取り付けられる一対の取付バンド金具54と、一対の取付バンド金具54に支持された4つの固定支持部56と、を有している(図6参照)。一対の取付バンド金具54は分割可能に構成されており、これら一対の取付バンド金具54は、ボルト58及びナット60で相互に連結固定される。各取付バンド金具54の外側面には、一対の支持部62が周方向に間隔を置いて設けられ、各支持部62には固定支持部56がボルト等で支持される。4つの固定支持部56は、周方向にほぼ等間隔に配設されており、各固定支持部56は、足場部材10の四隅に対応する4つの支持杭8の内側を向くように配設されている。固定支持部56は略三角形状に構成され、その上側面には、固定用ボルト20が螺着されるボルト孔64及びガイド部材24の下端部が着脱自在に差し込まれる差込孔66が設けられている。
【0037】
固定用ボルト20が足場部材10の挿通孔22を通して固定支持部56のボルト孔64に螺着されることにより、足場部材10の四隅がそれぞれ対応する4つの固定支持部材12の各々の固定支持部56に固定支持されている(図1参照)。なお、隣接する一対の足場部材10は、連結部材(図示せず)によって相互に連結されている。
【0038】
次に、図7〜図13をも参照して、上述した作業用足場2の施工方法について説明する。まず、桟橋構造物4上や工場等の地上で足場部材10を複数組み立てる(足場部材組立工程)。工場で足場部材10を組み立てた場合には、組み立てた複数の足場部材10をトラック68等で桟橋構造物4上まで運搬する(図7参照)。次いで、固定支持部材12を支持杭8の水中における部位に取り付ける(固定支持部材取付工程)。この固定支持部材取付工程においては、潜水士70が桟橋構造物4の下方において水中に潜り、一対の取付バンド金具54を支持杭8の所定部位に取り付け、4つの固定支持部56を一対の取付バンド金具54に支持させる(図8参照)。固定支持部材12を取り付けるレベルは、干潮時の水面レベルよりも下方に設定される。なお、支持杭8の表面が傷付くのを防止するため、一対の取付バンド金具54と支持杭8との間にゴム部材等(図示せず)を介在させるのが好ましい。
【0039】
その後、組み立てた足場部材10をクレーン72を用いて桟橋構造物4上から水面に順次降ろして水面に浮かべる(足場部材降下工程)(図9参照)。このとき、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42、給気バルブ44及び注排水バルブ46はそれぞれ閉状態に保持され、足場フレーム14内には空気が充填された状態となっているので、正の浮力によって足場部材10は水面に浮かぶようになる。その後、足場部材10を水面に浮かべた状態で、船外機船74により足場部材10を所定位置(対応する4つの支持杭8の近傍)まで順次牽引して移動させる(足場部材移動工程)(図10参照)。なお、桟橋構造物4の下面よりもやや下方を上限水面レベルL1、固定支持部材12の固定支持部56の上面よりもやや上方を下限水面レベルL2としたとき、この足場部材移動工程は、水面レベルが上限水面レベルL1と下限水面レベルL2との間にある場合に行われるのが好ましい。
【0040】
その後、足場部材10の四隅にそれぞれロープ部材76を取り付け、このロープ部材76により足場部材10を対応する4つの支持杭8に仮固定する(図11参照)。次いで、4つの固定支持部材12の各々の差込孔66に上下に延びるパイプ状のガイド部材24を差し込み、このガイド部材24を足場部材10の四隅のガイド孔26に挿通させる。更にその後、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持し、操作パネル48を各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42に接続する(図12参照)。コンプレッサ52を作動させると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内の空気が排気バルブ42より外部に排出されるとともに、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内に水が注入される。これにより、ガイド部材24により案内されながら、足場部材10が対応する4つの支持杭8の内側において水中に沈められる(足場部材沈設工程)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量を調節する。各フレーム部材28a〜28e内に水が充填されることにより、足場部材10が水中に沈んでその四隅が固定支持部材12の固定支持部56に載置されると、コンプレッサ52の作動を停止して操作パネル48を取り外し、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。
【0041】
その後、固定用ボルト20を足場部材10の挿通孔22を通して固定支持部材12のボルト孔64に螺着し、足場部材10の四隅を対応する4つの固定支持部材12の固定支持部56に固定支持させる(足場部材固定工程)(図13参照)。このように固定支持した後に、ガイド部材24を固定支持部材12から取り外すとともに、ロープ部材76を足場部材10から取り外す。
【0042】
上述と同様にして、足場部材10をそれぞれ対応する4つの支持杭8に取り付けられた固定支持部材12に順次固定支持させ(図1参照)、隣接する一対の足場部材10を連結部材(図示せず)によって相互に連結する(足場部材連結工程)。以上のようにして、作業用足場2の設置が完了する。
【0043】
なお、作業用足場2の撤去は、例えば次のようにして行われる。まず、足場部材10の四隅をそれぞれロープ部材76を用いて対応する4つの支持杭8に仮固定し、固定用ボルト20を固定支持部材12から取り外す。各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持し、操作パネル48を各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44に接続し、コンプレッサ52を作動させる。これにより、各フレーム部材28a〜28e内に給気バルブ44より空気が注入されるとともに、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内の水が外部に排出され、足場部材10が水面まで浮上するようになる。足場部材10が水面まで浮上すると、コンプレッサ52の作動を停止して操作パネル48を取り外し、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。その後、足場部材10を水面に浮かべた状態で、船外機船74により足場部材10を所定位置まで順次牽引して移動させ、クレーン72で足場部材10を桟橋構造物4上まで順次引き上げる。また、必要に応じて固定支持部材12を支持杭8から取り外す。
【0044】
以上、本発明に従う作業用足場及びその施工方法の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0045】
上記実施形態では、注排水バルブ46は、各フレーム部材28a〜28e内の水を外部に排出するための排水バルブの機能及び各フレーム部材28a〜28e内に水を注入するための注水バルブの機能を兼ね備えるように構成したが、排水バルブ及び注水バルブを別個に設けるように構成してもよい。また、上記実施形態では、排気バルブ42及び給気バルブ44を別個に設けるように構成したが、これら2つの機能を兼ね備えた給排気バルブを設けるように構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、足場部材沈設工程においてガイド部材24を用いるように構成したが、このガイド部材24は省略してもよい。また、足場部材固定工程において足場部材10のレベル調節が必要な場合には、足場部材10と固定支持部材12との間にベースジャッキや鋼材ブロック等を介在させればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、足場フレーム14を第1〜第5フレーム部材28a〜28eから構成したが、第5フレーム部材28eを省略し、足場フレーム14全体をロの字状に構成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、足場部材降下工程においてクレーン72により足場部材10を水面まで降ろすように構成したが、クレーン72に代えてウインチを用いるようにしてもよい。また、足場部材移動工程において、船外機船74により足場部材10を牽引して移動させるように構成したが、船外機船74に代えてウインチを用いるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、足場部材沈設工程において、足場部材10を水中に沈設した後に、排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持したが、排気バルブ42、給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持してもよい。これにより、各フレーム部材28a〜28eに対して水が自在に流入及び流出されるようになる。
【0050】
また、上記実施形態では、固定支持部材取付工程において、固定支持部材12を支持杭8の水面下における部位に取り付けるように構成したが、支持杭8の水面よりも上方における部位に取り付けるように構成してもよい。かかる場合には、足場部材沈設工程を省略することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、足場部材組立工程の後に固定支持部材取付工程を行うようにしたが、足場部材組立工程の前に固定支持部材取付工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 作業用足場
4 桟橋構造物
8 支持杭
10 足場部材
12 固定支持部材
14 足場フレーム
24 ガイド部材
26 ガイド孔
28a〜28e 第1〜第5フレーム部材
42 排気バルブ
44 給気バルブ
46 注排水バルブ
56 固定支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾等には、船舶を係留するため桟橋構造物が設置されている。この桟橋構造物は鉄筋コンクリートから形成され、水中地盤に立設された複数の支持杭によって支持されている。桟橋構造物の下面は、海水の影響によって劣化し易いため、桟橋構造物の下面に対する補修作業を定期的に行う必要がある。従来より、このような補修作業は、桟橋構造物の下方に吊り足場を設置することにより行われている(例えば、特許文献1参照)。この吊り足場の施工方法としては、桟橋構造物の下面に固定支持部材(アンカー)を取り付けた後に、この固定支持部材にチェーンを介して複数本のパイプを組み合わせた根太部材を吊り下げ支持させ、その後、この根太部材の上に足場板を敷設するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−325126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、複数本のパイプを組み合わせて根太部材を形成する工程や、根太部材をチェーンに吊り下げ支持させる工程、根太部材の上に足場板を載置する工程等はいずれも桟橋構造物の下方で行われるため、作業性が悪く作業効率が低下してしまう。また、吊り足場は揺れ易く不安定であるため、波浪や潮位変化の影響を受ける場合には、吊り足場の施工を中断しなければならない。このため、桟橋構造物の下面に対する補修作業の工期全体に占める吊り足場の施工工期が長くなってしまい、補修作業を効率良く行うことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、効率良く施工を行うことができる作業用足場及びその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の作業用足場の施工方法では、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に作業用足場を設置する作業用足場の施工方法であって、
足場部材を地上で組み立てる足場部材組立工程と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の所定部位に固定支持部材を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた前記足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記特定の支持杭の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、前記足場部材の所定部位を前記固定支持部材に固定支持させる足場部材固定工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の作業用足場の施工方法では、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記特定の支持杭の水面下における部位に固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程と前記足場部材固定工程との間には足場部材沈設工程が行われ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記特定の支持杭の近傍において水中に沈めることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材にはガイド孔が設けられており、前記足場部材沈設工程においては、ガイド部材を前記固定支持部材に取り付け、前記ガイド部材を前記足場部材の前記ガイド孔に挿通させた状態で前記足場部材を水中に沈めることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材は、パイプ状に形成された足場フレームを有し、前記足場フレームには、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブとが設けられており、
前記足場部材移動工程においては、前記足場フレーム内に空気が充填された状態で、前記注水バルブ及び前記排気バルブをそれぞれ閉状態に保持させ、前記足場部材沈設工程においては、前記排気バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、前記注水バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内に水を注入することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材は略矩形状に構成されており、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程においては、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記足場部材の四隅を前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の作業用足場の施工方法では、前記足場部材組立工程においては、前記足場部材を複数地上で組み立て、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の足場部材に対応する前記複数の支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材降下工程においては、組み立てた前記複数の足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべ、前記足場部材移動工程においては、前記複数の足場部材を水面に浮かべた状態でそれぞれ対応する前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記複数の足場部材をそれぞれ対応する前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する前記4つの固定支持部材に固定支持させ、
前記足場部材固定工程の後には足場部材連結工程が行われ、前記足場部材連結工程においては、隣接する一対の前記足場部材を連結部材により相互に連結することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の作業用足場では、複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場であって、
足場部材と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられる固定支持部材と、を備え、前記足場部材の所定部位は前記固定支持部材に固定支持され、前記足場部材には、前記足場部材を水中に沈設するための沈設手段と、前記足場部材を水面に浮設するための浮設手段とが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載の作業用足場では、前記足場部材はパイプ状に形成された足場フレームを有し、前記沈設手段は、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブと、を有し、前記浮設手段は、前記足場フレーム内の水を外部に排出するための排水バルブと、前記足場フレーム内に空気を注入するための給気バルブと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項9に記載の作業用足場では、前記足場フレームは、相互に組み合わされた複数のフレーム部材から構成されており、前記複数のフレーム部材の各々には、前記沈設手段及び前記浮設手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項10に記載の作業用足場では、前記足場部材は略矩形状に構成され、前記固定支持部材は、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に取り付けられ、前記足場部材の四隅が前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項11に記載の作業用足場では、前記足場部材は複数設けられ、前記固定支持部材には、前記足場部材を固定支持するための4つの固定支持部が周方向に間隔を置いて設けられ、前記複数の足場部材の各々の四隅は、対応する前記4つの固定支持部材の各々の前記固定支持部に固定支持され、
また、前記足場部材に関連して、隣接する一対の前記足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材を地上で組み立てるので、その分桟橋構造物の下方での作業が少なくなる。また、足場部材を水面に浮かべた状態で移動させるので、足場部材を例えば船外機船やウインチ等で牽引することによって、容易に所定位置まで移動させることができる。これにより作業性が高まり、作業用足場の施工工期を短縮化することができ、効率良く施工を行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材を水中に沈めて固定支持部材に固定支持させるので、足場部材は水中に敷設されるようになる。これにより、足場部材が波浪や潮位変化の影響を受けるのを抑制することができ、足場部材での作業を安定した姿勢で行うことができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の作業用足場の施工方法によれば、固定支持部材にガイド部材を取り付け、このガイド部材を足場部材のガイド孔に挿通させた状態で足場部材を水中に沈めるので、足場部材を安定して水中に沈めることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材沈設工程においては、排気バルブを開状態に保持させて足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、注水バルブを開状態に保持させて足場フレーム内に水を注入するので、比較的簡単な構成でもって足場部材を水中に沈めることができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の作業用足場の施工方法によれば、足場部材固定工程においては、足場部材の四隅を4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させるので、足場部材の固定支持を安定して行うことができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の作業用足場の施工方法によれば、複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する4つの固定支持部材に固定支持させ、隣接する一対の足場部材を連結部材により相互に連結するので、広範囲に亘って足場部材を敷設することができ、桟橋構造物の下面に対する補修作業を効率良く行うことができる。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の作業用足場によれば、固定支持部材は、複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられ、足場部材の所定部位は固定支持部材に固定支持されるので、足場部材は水中に敷設されるようになる。これにより、足場部材が波浪や潮位変化の影響を受けるのを抑制することができ、足場部材での作業を安定した姿勢で行うことができる。また、足場部材には、足場部材を水中に沈設するための沈設手段が設けられているので、この沈設手段によって足場部材を水中に沈めて固定支持部材に固定支持させることができる。これにより、足場部材の固定支持部材に対する固定支持を容易に行うことができ、効率良く作業用足場の施工を行うことができる。また、足場部材には、足場部材を水面に浮設するための浮設手段が設けられているので、この浮設手段によって足場部材を水面に浮上させることができ、足場部材の撤去を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の作業用足場によれば、沈設手段は、注水バルブ及び排気バルブを有しているので、排気バルブにより足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、注水バルブにより足場フレーム内に水を注入することにより、足場部材を水中に沈設することができる。また、浮設手段は、排水バルブ及び給気バルブを有しているので、給気バルブにより足場フレーム内に空気を注入するとともに、排水バルブにより足場フレーム内の水を外部に排出することにより、足場部材を水面に浮設させることができる。従って、沈設手段及び浮設手段の構成を比較的簡単なものとすることができる。
【0025】
また、本発明の請求項9に記載の作業用足場によれば、足場フレームを構成する複数のフレーム部材の各々には、沈設手段及び浮設手段が設けられているので、各フレーム部材の排気バルブからの空気の排出量(又は給気バルブへの空気の注入量)を調節することにより、足場部材を水中に沈設させる(又は水面に浮設させる)際に、足場部材の姿勢を安定させることができる。
【0026】
また、本発明の請求項10に記載の作業用足場によれば、足場部材の四隅が4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されるので、足場部材を安定して固定支持させることができる。
【0027】
また、本発明の請求項11に記載の作業用足場によれば、複数の足場部材の各々の四隅は、対応する4つの固定支持部材の各々の固定支持部に固定支持され、隣接する一対の足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられているので、広範囲に亘って足場部材を敷設することができ、桟橋構造物の下面に対する補修作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による作業用足場を示す斜視図である。
【図2】足場部材を示す斜視図である。
【図3】足場部材の沈設手段及び浮設手段に関連する構成を説明するための図である。
【図4】(a)は、足場部材を水中に沈める前の状態を示す図であり、(b)は、足場部材を水中に沈める途中の状態を示す図であり、(c)は、足場部材を水中に沈めた状態を示す図である。
【図5】(a)は、足場部材を水面に浮上させる前の状態を示す図であり、(b)は、足場部材を水面に浮上させる途中の状態を示す図であり、(c)は、足場部材を水面に浮上させた状態を示す図である。
【図6】(a)は、固定支持部材を支持杭に取り付ける前の状態を示す平面図であり、(b)は、固定支持部材を支持杭に取り付けた状態を示す平面図である。
【図7】足場部材組立工程を説明するための図である。
【図8】固定支持部材取付工程を説明するための図である。
【図9】足場部材降下工程を説明するための図である。
【図10】足場部材移動工程を説明するための図である。
【図11】固定支持部材にガイド部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】足場部材沈設工程を説明するための図である。
【図13】足場部材固定工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う作業用足場及びその施工方法の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による作業用足場を示す斜視図であり、図2は、足場部材を示す斜視図であり、図3は、足場部材の沈設手段及び浮設手段に関連する構成を説明するための図であり、図4(a)〜(c)は、足場部材を水中に沈める工程を説明するための図であり、図5(a)〜(c)は、足場部材を水面に浮上させる工程を説明するための図であり、図6(a)は、固定支持部材を支持杭に取り付ける前の状態を示す平面図であり、図6(b)は、固定支持部材を支持杭に取り付けた状態を示す平面図であり、図7は、足場部材組立工程を説明するための図であり、図8は、固定支持部材取付工程を説明するための図であり、図9は、足場部材降下工程を説明するための図であり、図10は、足場部材移動工程を説明するための図であり、図11は、固定支持部材にガイド部材を取り付けた状態を示す斜視図であり、図12は、足場部材沈設工程を説明するための図であり、図13は、足場部材固定工程を説明するための図である。
【0030】
図1を参照して、本実施形態の作業用足場2は、港湾等において船舶を係留するための桟橋構造物4の下方に設置されるものである。桟橋構造物4は鉄筋コンクリートから形成され、その先端部には防舷材6が設けられている。水中地盤には格子状に配置された複数の支持杭8が立設され、桟橋構造物4は、これら複数の支持杭8によって下方より支持されている。支持杭8の上端部における表面には、防食用のコーティングが施されている。
【0031】
作業用足場2は、複数の足場部材10と、複数の支持杭8の各々の水面下における部位に取り付けられた複数の固定支持部材12と、を備えている。足場部材10は、日の字状(矩形状)に構成された足場フレーム14と、足場フレーム14の上面に間隔を置いて固定支持された複数の補強部材16と、複数の補強部材16の上側に固定支持されたエキスパンドメタル18と、を有している(図2参照)。補強部材16は、断面矩形状のパイプ状に構成されている。エキスパンドメタルは、矩形状且つ網目状に構成され、足場フレーム14の上面のほぼ全域を覆うようにして固定支持されている。このように網目状のエキスパンドメタル18を用いることにより、水がエキスパンドメタル18を自在に通過するようになり、波浪の影響を軽減することができる。また、足場フレーム14の四隅にはそれぞれ、固定用ボルト20(後述する)が挿通される挿通孔22及びガイド部材24(後述する)が挿通されるガイド孔26が設けられている。なお、図2においては、エキスパンドメタル18の一部を切り欠いて図示してある。
【0032】
足場フレーム14は、断面円形状のパイプ状に構成された第1〜第5フレーム部材28a〜28eを日の字状に組み合わせることによって構成されている(図2及び図3参照)。第1〜第4フレーム部材28a〜28dはロの字状に組み合わされ、第1フレーム部材28a及び第2フレーム部材28b、第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dはそれぞれ相互に対向して配置されている。また、第5フレーム部材28eは、第3フレーム部材28cと第4フレーム部材28dとの間に架け渡されている。第1フレーム部材28aの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各一端部との間にはそれぞれ隔壁30,32が設けられ、また第2フレーム部材28bの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各他端部との間にはそれぞれ隔壁34,36が設けられている。また、第5フレーム部材28eの両端部と第3フレーム部材28c及び第4フレーム部材28dの各長手方向中央部との間にはそれぞれ隔壁38,40が設けられている。これら各隔壁30〜40によって、各フレーム部材28a〜28eの内部が仕切られている。なお、図3においては、複数の補強部材16及びエキスパンドメタル18の図示を省略してある。
【0033】
各フレーム部材28a〜28eの上面にはそれぞれ、フレーム部材28a〜28e内の空気を外部に排出するための排気バルブ42と、フレーム部材28a〜28e内に空気を注入するための給気バルブ44とが設けられている(図3〜図5参照)。また、各フレーム部材28a〜28eの下面にはそれぞれ、フレーム部材28a〜28e内に水を注入又はフレーム部材28a〜28e内の水を外部に排出するための注排水バルブ46(注水バルブ及び排水バルブを構成する)が設けられている(図4及び図5参照)。排気バルブ42及び注排水バルブ46によって沈設手段が構成され、また給気バルブ44及び注排水バルブ46によって浮設手段が構成される。なお、図2においては、排気バルブ42及び給気バルブ44の図示は省略してある。
【0034】
図4に示すように、上述した沈設手段によって、次のようにして足場部材10を水中に沈設させることができる。足場部材10を水面に浮かべた状態で(図4(a)参照)、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持するとともに、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44を閉状態に保持する。その後、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42にそれぞれ操作パネル48を接続する。この操作パネル48は、給排気パイプ50を介して桟橋構造物4上に設置されたコンプレッサ52に接続されており(図3及び図12参照)、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量及び給気バルブ44への空気の注入量を調節するためのものである。コンプレッサ52が作動されると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内の空気が排気バルブ42より外部に排出され、各フレーム部材28a〜28e内の圧力が低下する。これにより、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内に水が注入され(図4(b)参照)、負の浮力によって足場部材10が水中に沈むようになる(図4(c)参照)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量を調節する。足場部材10が水中に沈設されると、コンプレッサ52の作動を停止し、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。なお、操作パネル48の操作は、操作パネル48に設けられたスイッチ類(図示せず)を操作するようにしてもよく、あるいは桟橋構造物4上で遠隔操作するようにしてもよい。
【0035】
また、図5に示すように、上述した浮設手段によって、次のようにして足場部材10を水面に浮設させることができる。足場部材10が水中に沈設された状態で(図5(a)参照)、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持するとともに、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42を閉状態に保持する。その後、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44にそれぞれ操作パネル48を接続する。なお、図3においては、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44にそれぞれ操作パネル48を接続した状態を図示してある。コンプレッサ52が作動すると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内に空気(圧縮空気)が給気バルブ44より注入され、各フレーム部材28a〜28e内の圧力が上昇する。これにより、各フレーム部材28a〜28e内の水が注排水バルブ46より外部に排出され(図5(b)参照)、正の浮力によって足場部材10が水面に浮上するようになる(図5(c)参照)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44への空気の注入量を調節する。足場部材10が水面に浮設されると、コンプレッサ52の作動を停止し、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。
【0036】
固定支持部材12は、支持杭8に取り付けられる一対の取付バンド金具54と、一対の取付バンド金具54に支持された4つの固定支持部56と、を有している(図6参照)。一対の取付バンド金具54は分割可能に構成されており、これら一対の取付バンド金具54は、ボルト58及びナット60で相互に連結固定される。各取付バンド金具54の外側面には、一対の支持部62が周方向に間隔を置いて設けられ、各支持部62には固定支持部56がボルト等で支持される。4つの固定支持部56は、周方向にほぼ等間隔に配設されており、各固定支持部56は、足場部材10の四隅に対応する4つの支持杭8の内側を向くように配設されている。固定支持部56は略三角形状に構成され、その上側面には、固定用ボルト20が螺着されるボルト孔64及びガイド部材24の下端部が着脱自在に差し込まれる差込孔66が設けられている。
【0037】
固定用ボルト20が足場部材10の挿通孔22を通して固定支持部56のボルト孔64に螺着されることにより、足場部材10の四隅がそれぞれ対応する4つの固定支持部材12の各々の固定支持部56に固定支持されている(図1参照)。なお、隣接する一対の足場部材10は、連結部材(図示せず)によって相互に連結されている。
【0038】
次に、図7〜図13をも参照して、上述した作業用足場2の施工方法について説明する。まず、桟橋構造物4上や工場等の地上で足場部材10を複数組み立てる(足場部材組立工程)。工場で足場部材10を組み立てた場合には、組み立てた複数の足場部材10をトラック68等で桟橋構造物4上まで運搬する(図7参照)。次いで、固定支持部材12を支持杭8の水中における部位に取り付ける(固定支持部材取付工程)。この固定支持部材取付工程においては、潜水士70が桟橋構造物4の下方において水中に潜り、一対の取付バンド金具54を支持杭8の所定部位に取り付け、4つの固定支持部56を一対の取付バンド金具54に支持させる(図8参照)。固定支持部材12を取り付けるレベルは、干潮時の水面レベルよりも下方に設定される。なお、支持杭8の表面が傷付くのを防止するため、一対の取付バンド金具54と支持杭8との間にゴム部材等(図示せず)を介在させるのが好ましい。
【0039】
その後、組み立てた足場部材10をクレーン72を用いて桟橋構造物4上から水面に順次降ろして水面に浮かべる(足場部材降下工程)(図9参照)。このとき、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42、給気バルブ44及び注排水バルブ46はそれぞれ閉状態に保持され、足場フレーム14内には空気が充填された状態となっているので、正の浮力によって足場部材10は水面に浮かぶようになる。その後、足場部材10を水面に浮かべた状態で、船外機船74により足場部材10を所定位置(対応する4つの支持杭8の近傍)まで順次牽引して移動させる(足場部材移動工程)(図10参照)。なお、桟橋構造物4の下面よりもやや下方を上限水面レベルL1、固定支持部材12の固定支持部56の上面よりもやや上方を下限水面レベルL2としたとき、この足場部材移動工程は、水面レベルが上限水面レベルL1と下限水面レベルL2との間にある場合に行われるのが好ましい。
【0040】
その後、足場部材10の四隅にそれぞれロープ部材76を取り付け、このロープ部材76により足場部材10を対応する4つの支持杭8に仮固定する(図11参照)。次いで、4つの固定支持部材12の各々の差込孔66に上下に延びるパイプ状のガイド部材24を差し込み、このガイド部材24を足場部材10の四隅のガイド孔26に挿通させる。更にその後、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持し、操作パネル48を各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42に接続する(図12参照)。コンプレッサ52を作動させると、コンプレッサ52の作用によって各フレーム部材28a〜28e内の空気が排気バルブ42より外部に排出されるとともに、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内に水が注入される。これにより、ガイド部材24により案内されながら、足場部材10が対応する4つの支持杭8の内側において水中に沈められる(足場部材沈設工程)。このとき、足場部材10の姿勢を安定させるために、操作パネル48を適宜操作して各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42からの空気の排出量を調節する。各フレーム部材28a〜28e内に水が充填されることにより、足場部材10が水中に沈んでその四隅が固定支持部材12の固定支持部56に載置されると、コンプレッサ52の作動を停止して操作パネル48を取り外し、各フレーム部材28a〜28eの排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。
【0041】
その後、固定用ボルト20を足場部材10の挿通孔22を通して固定支持部材12のボルト孔64に螺着し、足場部材10の四隅を対応する4つの固定支持部材12の固定支持部56に固定支持させる(足場部材固定工程)(図13参照)。このように固定支持した後に、ガイド部材24を固定支持部材12から取り外すとともに、ロープ部材76を足場部材10から取り外す。
【0042】
上述と同様にして、足場部材10をそれぞれ対応する4つの支持杭8に取り付けられた固定支持部材12に順次固定支持させ(図1参照)、隣接する一対の足場部材10を連結部材(図示せず)によって相互に連結する(足場部材連結工程)。以上のようにして、作業用足場2の設置が完了する。
【0043】
なお、作業用足場2の撤去は、例えば次のようにして行われる。まず、足場部材10の四隅をそれぞれロープ部材76を用いて対応する4つの支持杭8に仮固定し、固定用ボルト20を固定支持部材12から取り外す。各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持し、操作パネル48を各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44に接続し、コンプレッサ52を作動させる。これにより、各フレーム部材28a〜28e内に給気バルブ44より空気が注入されるとともに、注排水バルブ46より各フレーム部材28a〜28e内の水が外部に排出され、足場部材10が水面まで浮上するようになる。足場部材10が水面まで浮上すると、コンプレッサ52の作動を停止して操作パネル48を取り外し、各フレーム部材28a〜28eの給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持する。その後、足場部材10を水面に浮かべた状態で、船外機船74により足場部材10を所定位置まで順次牽引して移動させ、クレーン72で足場部材10を桟橋構造物4上まで順次引き上げる。また、必要に応じて固定支持部材12を支持杭8から取り外す。
【0044】
以上、本発明に従う作業用足場及びその施工方法の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0045】
上記実施形態では、注排水バルブ46は、各フレーム部材28a〜28e内の水を外部に排出するための排水バルブの機能及び各フレーム部材28a〜28e内に水を注入するための注水バルブの機能を兼ね備えるように構成したが、排水バルブ及び注水バルブを別個に設けるように構成してもよい。また、上記実施形態では、排気バルブ42及び給気バルブ44を別個に設けるように構成したが、これら2つの機能を兼ね備えた給排気バルブを設けるように構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、足場部材沈設工程においてガイド部材24を用いるように構成したが、このガイド部材24は省略してもよい。また、足場部材固定工程において足場部材10のレベル調節が必要な場合には、足場部材10と固定支持部材12との間にベースジャッキや鋼材ブロック等を介在させればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、足場フレーム14を第1〜第5フレーム部材28a〜28eから構成したが、第5フレーム部材28eを省略し、足場フレーム14全体をロの字状に構成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、足場部材降下工程においてクレーン72により足場部材10を水面まで降ろすように構成したが、クレーン72に代えてウインチを用いるようにしてもよい。また、足場部材移動工程において、船外機船74により足場部材10を牽引して移動させるように構成したが、船外機船74に代えてウインチを用いるようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、足場部材沈設工程において、足場部材10を水中に沈設した後に、排気バルブ42及び注排水バルブ46をそれぞれ閉状態に保持したが、排気バルブ42、給気バルブ44及び注排水バルブ46をそれぞれ開状態に保持してもよい。これにより、各フレーム部材28a〜28eに対して水が自在に流入及び流出されるようになる。
【0050】
また、上記実施形態では、固定支持部材取付工程において、固定支持部材12を支持杭8の水面下における部位に取り付けるように構成したが、支持杭8の水面よりも上方における部位に取り付けるように構成してもよい。かかる場合には、足場部材沈設工程を省略することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、足場部材組立工程の後に固定支持部材取付工程を行うようにしたが、足場部材組立工程の前に固定支持部材取付工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 作業用足場
4 桟橋構造物
8 支持杭
10 足場部材
12 固定支持部材
14 足場フレーム
24 ガイド部材
26 ガイド孔
28a〜28e 第1〜第5フレーム部材
42 排気バルブ
44 給気バルブ
46 注排水バルブ
56 固定支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に作業用足場を設置する作業用足場の施工方法であって、
足場部材を地上で組み立てる足場部材組立工程と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の所定部位に固定支持部材を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた前記足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記特定の支持杭の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、前記足場部材の所定部位を前記固定支持部材に固定支持させる足場部材固定工程と、を含むことを特徴とする作業用足場の施工方法。
【請求項2】
前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記特定の支持杭の水面下における部位に固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程と前記足場部材固定工程との間には足場部材沈設工程が行われ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記特定の支持杭の近傍において水中に沈めることを特徴とする請求項1に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項3】
前記足場部材にはガイド孔が設けられており、前記足場部材沈設工程においては、ガイド部材を前記固定支持部材に取り付け、前記ガイド部材を前記足場部材の前記ガイド孔に挿通させた状態で前記足場部材を水中に沈めることを特徴とする請求項2に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項4】
前記足場部材は、パイプ状に形成された足場フレームを有し、前記足場フレームには、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブとが設けられており、
前記足場部材移動工程においては、前記足場フレーム内に空気が充填された状態で、前記注水バルブ及び前記排気バルブをそれぞれ閉状態に保持させ、前記足場部材沈設工程においては、前記排気バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、前記注水バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内に水を注入することを特徴とする請求項2又は3に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項5】
前記足場部材は略矩形状に構成されており、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程においては、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記足場部材の四隅を前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の作業用足場の施工方法。
【請求項6】
前記足場部材組立工程においては、前記足場部材を複数地上で組み立て、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の足場部材に対応する前記複数の支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材降下工程においては、組み立てた前記複数の足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべ、前記足場部材移動工程においては、前記複数の足場部材を水面に浮かべた状態でそれぞれ対応する前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記複数の足場部材をそれぞれ対応する前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する前記4つの固定支持部材に固定支持させ、
前記足場部材固定工程の後には足場部材連結工程が行われ、前記足場部材連結工程においては、隣接する一対の前記足場部材を連結部材により相互に連結することを特徴とする請求項5に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項7】
複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場であって、
足場部材と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられる固定支持部材と、を備え、前記足場部材の所定部位は前記固定支持部材に固定支持され、前記足場部材には、前記足場部材を水中に沈設するための沈設手段と、前記足場部材を水面に浮設するための浮設手段とが設けられていることを特徴とする作業用足場。
【請求項8】
前記足場部材はパイプ状に形成された足場フレームを有し、前記沈設手段は、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブと、を有し、前記浮設手段は、前記足場フレーム内の水を外部に排出するための排水バルブと、前記足場フレーム内に空気を注入するための給気バルブと、を有することを特徴とする請求項7に記載の作業用足場。
【請求項9】
前記足場フレームは、相互に組み合わされた複数のフレーム部材から構成されており、前記複数のフレーム部材の各々には、前記沈設手段及び前記浮設手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の作業用足場。
【請求項10】
前記足場部材は略矩形状に構成され、前記固定支持部材は、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に取り付けられ、前記足場部材の四隅が前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の作業用足場。
【請求項11】
前記足場部材は複数設けられ、前記固定支持部材には、前記足場部材を固定支持するための4つの固定支持部が周方向に間隔を置いて設けられ、前記複数の足場部材の各々の四隅は、対応する前記4つの固定支持部材の各々の前記固定支持部に固定支持され、
また、前記足場部材に関連して、隣接する一対の前記足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の作業用足場。
【請求項1】
複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に作業用足場を設置する作業用足場の施工方法であって、
足場部材を地上で組み立てる足場部材組立工程と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の所定部位に固定支持部材を取り付ける固定支持部材取付工程と、組み立てた前記足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべる足場部材降下工程と、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記特定の支持杭の近傍まで移動させる足場部材移動工程と、前記足場部材の所定部位を前記固定支持部材に固定支持させる足場部材固定工程と、を含むことを特徴とする作業用足場の施工方法。
【請求項2】
前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記特定の支持杭の水面下における部位に固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程と前記足場部材固定工程との間には足場部材沈設工程が行われ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記特定の支持杭の近傍において水中に沈めることを特徴とする請求項1に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項3】
前記足場部材にはガイド孔が設けられており、前記足場部材沈設工程においては、ガイド部材を前記固定支持部材に取り付け、前記ガイド部材を前記足場部材の前記ガイド孔に挿通させた状態で前記足場部材を水中に沈めることを特徴とする請求項2に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項4】
前記足場部材は、パイプ状に形成された足場フレームを有し、前記足場フレームには、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブとが設けられており、
前記足場部材移動工程においては、前記足場フレーム内に空気が充填された状態で、前記注水バルブ及び前記排気バルブをそれぞれ閉状態に保持させ、前記足場部材沈設工程においては、前記排気バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内の空気を外部に排出するとともに、前記注水バルブを開状態に保持させて前記足場フレーム内に水を注入することを特徴とする請求項2又は3に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項5】
前記足場部材は略矩形状に構成されており、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材移動工程においては、前記足場部材を水面に浮かべた状態で前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記足場部材を前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記足場部材の四隅を前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の作業用足場の施工方法。
【請求項6】
前記足場部材組立工程においては、前記足場部材を複数地上で組み立て、前記固定支持部材取付工程においては、前記複数の足場部材に対応する前記複数の支持杭の各々の水面下における部位に前記固定支持部材を取り付け、前記足場部材降下工程においては、組み立てた前記複数の足場部材を水面まで降ろして水面に浮かべ、前記足場部材移動工程においては、前記複数の足場部材を水面に浮かべた状態でそれぞれ対応する前記4つの支持杭の近傍まで移動させ、前記足場部材沈設工程においては、前記複数の足場部材をそれぞれ対応する前記4つの支持杭の内側において水中に沈め、前記足場部材固定工程においては、前記複数の足場部材の各々の四隅をそれぞれ対応する前記4つの固定支持部材に固定支持させ、
前記足場部材固定工程の後には足場部材連結工程が行われ、前記足場部材連結工程においては、隣接する一対の前記足場部材を連結部材により相互に連結することを特徴とする請求項5に記載の作業用足場の施工方法。
【請求項7】
複数の支持杭により支持された桟橋構造物の下方に設置される作業用足場であって、
足場部材と、前記複数の支持杭のうち特定の支持杭の水面下における部位に取り付けられる固定支持部材と、を備え、前記足場部材の所定部位は前記固定支持部材に固定支持され、前記足場部材には、前記足場部材を水中に沈設するための沈設手段と、前記足場部材を水面に浮設するための浮設手段とが設けられていることを特徴とする作業用足場。
【請求項8】
前記足場部材はパイプ状に形成された足場フレームを有し、前記沈設手段は、前記足場フレーム内に水を注入するための注水バルブと、前記足場フレーム内の空気を外部に排出するための排気バルブと、を有し、前記浮設手段は、前記足場フレーム内の水を外部に排出するための排水バルブと、前記足場フレーム内に空気を注入するための給気バルブと、を有することを特徴とする請求項7に記載の作業用足場。
【請求項9】
前記足場フレームは、相互に組み合わされた複数のフレーム部材から構成されており、前記複数のフレーム部材の各々には、前記沈設手段及び前記浮設手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の作業用足場。
【請求項10】
前記足場部材は略矩形状に構成され、前記固定支持部材は、前記複数の支持杭のうち前記足場部材の四隅に対応する4つの支持杭の各々の水面下における部位に取り付けられ、前記足場部材の四隅が前記4つの固定支持部材にそれぞれ固定支持されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の作業用足場。
【請求項11】
前記足場部材は複数設けられ、前記固定支持部材には、前記足場部材を固定支持するための4つの固定支持部が周方向に間隔を置いて設けられ、前記複数の足場部材の各々の四隅は、対応する前記4つの固定支持部材の各々の前記固定支持部に固定支持され、
また、前記足場部材に関連して、隣接する一対の前記足場部材を相互に連結するための連結部材が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の作業用足場。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−77578(P2012−77578A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226242(P2010−226242)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(510266882)株式会社近江潜建 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(510266882)株式会社近江潜建 (1)
【Fターム(参考)】
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