説明

作業用車両

【課題】冷却ファンや冷房装置を構成する電動モータを効率良く作動させてバッテリーの電力消費を抑えるように構成された作業用車両を提供する。
【解決手段】作業用車両を、バッテリー50と、この直流電力により、作業装置を作動させる作動油を冷却するオイルクーラ35の冷却ファン35aを駆動するDCモータ36と、作動油の油温Tを検出する油温センサ38と、この油温センサ38により検出される油温に基づいて、DCモータ36の作動を制御する制御コントローラ40とを有して構成する。そして、制御コントローラ40が、作業用車両が始動したときは、DCモータ36を停止した状態にし、作動油の油温Tが第1の閾値を超えたときは、DCモータ36を高速回転させて冷却ファン35aを駆動し、作動油の油温Tが第1の閾値より低く設定された第2の閾値より低くなったときは、DCモータ36を低速回転させて冷却ファン35aを駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーで駆動される電動モータを動力源とする作業用車両に関し、特に詳細には、この電動モータにより駆動される油圧ポンプから供給される作動油により作動する作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業用車両の動力源はエンジンが主流である。しかし、地下の建設現場のように、周囲環境との関係でエンジンを使用できない現場では、電動モータを駆動源として搭載した作業用車両が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この電動モータの電源としては、この作業用車両に搭載され商用電源により充電されるバッテリーが用いられる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−225355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような作業用車両においては、作動油を冷却するためのオイルクーラに用いられる冷却ファンや、オペレータキャビン内を冷房するための冷房装置を駆動するための電動モータもバッテリーの電源が利用される。そのため、これらの冷却ファンや冷房装置に用いられている電動モータがバッテリーの電力を消費し、結果的に、一回の充電で作動させることができる時間が短くなり、この作業用車両を用いた作業効率が悪くなるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、冷却ファンや冷房装置を構成する電動モータを効率良く作動させてバッテリーの電力消費を抑えるように構成された作業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、第1の本発明に係る作業用車両(例えば、実施形態におけるクローラ型パワーショベル車1)は、作業装置(例えば、実施形態におけるパワーショベル機構13)を有するものであり、直流電力を供給するバッテリーと、このバッテリーの直流電力により、作業装置を作動させる作動油を冷却するオイルクーラの冷却ファンを駆動するDCモータと、作動油の油温を検出する油温センサと、この油温センサにより検出される油温に基づいて、DCモータの作動を制御する制御コントローラとを有して構成される。そして、制御コントローラが、始動時には、DCモータを停止した状態にし、作動油の油温が第1の閾値を超えたときは、DCモータを第1の回転数(例えば、実施形態における高速回転指令に対応し、高い電圧値VHが印加されているときの回転数)で回転させて冷却ファンを駆動し、作動油の油温が第1の閾値より低く設定された第2の閾値より低くなったときは、DCモータを第1の回転数よりも遅く設定された第2の回転数(例えば、実施形態における低速回転指令に対応し、低い電圧値VLが印加されているときの回転数)で回転させて冷却ファンを駆動するように構成される。
【0007】
また、第2の本発明に係る作業用車両は、車体にオペレータが搭乗するオペレータキャビンを有するものであり、直流電力を供給するバッテリーと、オペレータキャビン内を冷房する冷房装置に用いられ、オペレータキャビン内を冷却するためにエバポレータで気体状にされた冷媒を圧縮するコンプレッサと、このコンプレッサで圧縮された気体状の冷媒を冷却して液体状にするコンデンサと、コンプレッサを駆動させるコンプレッサ用モータと、オペレータキャビン内の室温を検出する室温センサと、コンデンサの出口における冷媒の出口温度を検出するコンデンサ出口温度センサと、オペレータキャビン内の目標温度を設定する温度設定手段(例えば、実施形態における設定スイッチ70)と、室温センサで検出された室温およびコンデンサ出口温度センサで検出された出口温度に基づいて、室温が、温度設定手段で設定された目標温度に近づくように、コンデンサモータの回転数を制御する制御コントローラとを有して構成される。
【0008】
そして、制御コントローラが、室温が、目標温度より高いときで、冷媒の出口温度が第1の閾値より高いときは、コンデンサ用モータを第1の回転数(例えば、実施形態における高速指令に対応する回転数)で回転させ、冷媒の出口温度が第1の閾値より低く設定された第2の閾値より低いときは、コンデンサ用モータを第1の回転数より遅く設定された第2の回転数(例えば、実施形態における中速指令に対応する回転数)で回転させるように構成される。また、制御コントローラが、室温が、目標温度より低いときで、目標温度と室温との差が第1の差より大きく、かつ、出口温度と第2の閾値との差が第2の差より大きいときは、コンデンサ用モータを第2の回転数より遅く設定された第3の回転数(例えば、実施形態における低速指令に対応する回転数)で回転させるように構成され、目標温度と室温との差が第1の差より大きく設定された第3の差より大きく、かつ、出口温度と第2の閾値との差が第2の差より大きく設定された第4の差より大きいときは、コンデンサ用モータを停止させるように構成される。
【0009】
このような第2の本発明に係る作業用車両が、コンデンサの冷却ファンを駆動するコンデンサ用モータを有し、制御コントローラが、冷房装置が始動したときは、コンデンサ用モータを停止した状態にし、出口温度が、第1の閾値より低く、かつ、第2の閾値より高く設定された第3の閾値より高くなったときは、コンデンサ用モータを第4の回転数(例えば、実施形態における高速回転指令に対応する回転数)で回転させ、出口温度が、第3の閾値より低くなったときは、コンデンサ用モータを第4の回転数より遅く設定された第5の回転数(例えば、実施形態における低速回転指令に対応する回転数)で回転させるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明に係る作業用車両を以上のように構成すると、この作業用車両の始動時において作動油の油温が低いときはオイルクーラの冷却ファンを作動させずに油温を上昇させて粘度を下げることにより油圧ポンプ等の負荷を軽減する。また、作動油の油温が第1の閾値を超えると冷却ファンを高速回転させて作動油の油温を一挙に下げ、目標温度(第2の閾値)に達すると、冷却ファンを低速回転させてこの目標温度を維持するように構成されるので、電動モータの起動/停止によるバッテリーの消耗を防ぐとともに、この電動モータを効率よく作動させてバッテリーの電力を有効に利用することができる。
【0011】
また、第2の本発明に係る作業用車両を以上のように構成すると、コンデンサの出口における媒体の出口温度とオペレータキャビン内の室温とにより、コンプレッサ用モータの回転数を制御することにより、バッテリーの電力を有効に利用し、このバッテリーの消耗を防止することができる。また、同様にコンデンサの冷却ファンのためのコンデンサ用モータも出口温度に応じて回転数を制御することにより冷媒を効率よく冷却してバッテリーの消耗を防止することができる。このときも、コンデンサ用モータは高速若しくは低速回転して停止することはないので、このコンデンサ用モータの起動/停止によるバッテリーの消耗を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係る作業用車両の一例として、クローラ型パワーショベル車1について図1を用いて説明する。なお、このパワーショベル車1は、地下等の比較的密閉された空間で使用されることを目的に、バッテリーからの電力を利用して作動するものである。このパワーショベル車1は、走行装置2を構成する走行台車4と、この走行台車4の後部に上下に揺動自在に設けられたブレード9と、走行台車4の上に旋回可能に設けられた旋回台11と、旋回台11の前部に枢結されたパワーショベル機構13と、旋回台11の上に設けられたオペレータキャビン15とを有している。
【0013】
走行装置2は、略H型をなす走行台車4と、この走行台車4の左右に設けられた走行機構3とからなる。走行機構3は、走行台車4の左右の前部に設けられた駆動用スプロケットホイール5と、後部に設けられたアイドラホイール6(駆動用スプロケットホイール5とアイドラホイール6とを合わせて「クローラホイール」と呼ぶ場合がある)と、これらクローラホイール5,6に掛け回されて駆動される左右一対の履帯7とからなる。なお、駆動用スプロケットホイール5の各々は、図示しない左右の走行モータ(油圧モータ)により駆動され、このパワーショベル車1を走行させることができる。また、旋回台11は、図示しない旋回モータ(油圧モータ)により走行台車4に対して旋回動させることができる。
【0014】
パワーショベル機構13は、旋回台11の前部に起伏動自在に枢結されたブーム16、ブーム16の先端部にこのブーム16の起伏面内で上下に揺動自在に枢結されたアーム17、および、このアーム17の先端に上下に揺動自在に枢結されたバケット18から構成される。ブーム16は、ブームシリンダ21により起伏動され、アーム17は、アームシリンダ22により揺動され、バケット18は、バケットシリンダ23により揺動される。なお、このようなシリンダや上述した走行モータおよび旋回モータは、図2に示すように、油圧ユニット30から供給される作動油により駆動されるため、以降の説明においては、これらをまとめて「油圧アクチュエータ20」と呼ぶ。また、このパワーショベル機構13の操作は、オペレータキャビン15内に設けられた操作装置14により行われる。
【0015】
油圧ユニット30は、電動モータ31、この電動モータ31により駆動されて所定油圧・流量の作動油を吐出する油圧ポンプ32、作動油を溜めるタンク33、油圧ポンプ32から吐出される作動油を操作装置14の操作に応じた供給方向および供給量で油圧アクチュエータ20に供給制御するコントロールバルブ(電磁比例弁)34、並びに、温度上昇した作動油を冷却するオイルクーラ35等から構成される。なお、操作装置14から出力される操作信号は、後述する制御コントローラ40に入力され、この制御コントローラ40が操作信号に応じた指令信号をコントロールバルブ34に出力してこのコントロールバルブ34の作動を制御するように構成されている。また、電動モータ31は、バッテリー50から供給される直流電力を、インバータ41で所定の電圧および周波数を有する交流電力に変換して供給することにより駆動される。なお、このような電動モータ31としては、例えばIPM(Interior Permanent Magnetic)モータ等が用いられる。
【0016】
ところで、オイルクーラ35には、作動油を冷却するための冷却ファン35aが設けられており、この冷却ファン35aはDCモータ36により回転駆動される。このDCモータ36は、バッテリー50の直流電力を、DCモータコントローラ37を介して供給することにより作動し、DCモータコントローラ37は制御コントローラ40から送信される指令信号によりDCモータ36に印加する電圧を制御する。また、油圧ユニット30のタンク33には作動油の温度(油温T)を測定するための油温センサ38が取り付けられており、この測定値は制御コントローラ40に入力される。それでは、DCモータ36による消費電力を抑え、バッテリー50の電力を有効に利用するための制御コントローラ40の制御について図3を用いて説明する。
【0017】
まず、パワーショベル車1の始動時は、作動油の油温Tは低く、油の粘度が高いので、油圧ポンプ32の負荷が大きくなる。そのため、オイルクーラ35で作動油を冷却する必要がなく、制御コントローラ40は作動油が第1の閾値TH(例えば、60度)より高くなるまで、DCモータ36を作動させない(ステップS100)。そして、パワーショベル車1が作動して作動油の油温Tが上昇し、第1の閾値THを超えたと判断すると(ステップS101)、制御コントローラ40はDCモータコントローラ37に指令信号として高速回転指令を送信する(ステップS102)。DCモータコントローラ37は、この高速回転指令を受け取ると、DCモータ36に対してバッテリー50の電力を高い電圧値VHで印加する。このようなDCモータ36は、印加電圧値Vの大きさに応じて回転数が変化するように構成されており、印加電圧値Vが高いとDCモータ36(冷却ファン35a)が高速で回転して作動油は急速に冷却される。すなわち、作動油を急速に冷却するために必要な回転数となるような電圧値が高い電圧値VHとして設定される。
【0018】
次に、制御コントローラ40は、作動油の油温Tが第2の閾値TL(第1の閾値THより低い温度であって、例えば40度)より低くなるまで、DCモータ36に高い電圧値VHを印加し続け、油温Tが第2の閾値TLより低くなったと判断すると(ステップS103)、DCモータコントローラ37に指令信号として低速回転指令を送信する(ステップS104)。DCモータコントローラ37は、この低速回転指令を受け取ると、DCモータ36にバッテリー50の電力を低い電圧値VL(VH>VL)として印加し、油温Tが第2の閾値TLを維持するように制御する。
【0019】
なお、制御コントローラ40は、ステップS104で低速回転指令を出力すると、ステップS101に戻り、作動油の油温Tが第1の閾値THを超えるか否かを監視、以上の処理を繰り返す。すなわち、本実施例においては、第2の閾値TLが油温Tの設定目標温度となり、作動油の油温Tが、この第2の閾値TLの近傍になるように制御される。
【0020】
以上の動作を、図4を用いて説明する。時刻t0でパワーショベル車1が始動すると、徐々に作動油の油温Tは上昇する。時刻t1で油温Tが第2の閾値TLを超えるが、この時点ではDCモータ36は停止したままである(モータ印加電圧Vは0のままである)。そして、時刻t2において油温Tが第1の閾値THを超えると、制御コントローラ40から高速回転指令が出力され(高速回転指令がオン状態となり)、DCモータコントローラ37によりDCモータ36に高い電圧値VHが印加され冷却ファン35aは高速回転する。冷却ファン35aが高速回転すると、作動油の油温Tは急速に下がり、時刻t3で第2の閾値TLより低くなると、制御コントローラ40から低速回転指令が出力され(高速回転指令がオフ状態、低速回転指令がオン状態となり)、DCモータコントローラ37によりDCモータ36に低い電圧値VLが印加され冷却ファン35aは低速回転する。
【0021】
冷却ファン35aが低速回転しているときに、パワーショベル車1の作動状態等により油温Tが上昇する場合があるが、上述の処理と同様に、時刻t4において油温Tが第2の閾値TLを超えても、制御コントローラ40は低速回転指令を維持し、時刻t5において油温Tが第1の閾値THを超えると、高速回転指令をDCモータコントローラ37に出力する。そして、時刻t6で油温Tが第2の閾値TLより低くなると、制御コントローラ40は低速回転指令をDCモータコントローラ37に出力し、油温Tが第1の閾値THを超えるまでは低速回転指令を維持する(時刻t7,t8)。
【0022】
このように、パワーショベル車1の始動時のように油温が低いときはDCモータ36を作動させないことにより、作動油の油温を上げて粘度を下げ、油圧ポンプ32を駆動する電動モータ31の負荷を下げることができ、そのため、バッテリー50の電力消費を抑えることができる。また、油温Tが第1の閾値THを超えると、DCモータ36に高い電圧値VHを印加して冷却ファン35aを高速回転させることにより、設定目標温度(第2の閾値)TLまで急速に下げ、また、作動油の油温Tが設定目標温度(第2の閾値)TLまで下がったときは、DCモータ36に低い電圧値VLを印加して冷却ファン35aを低速回転させて、この設定目標温度TLを維持するように制御することにより、バッテリー50の電力を効率的に利用して消費電力を抑えることができる。このようなDCモータ36は、起動/停止を繰り返すと、結果として作動油の温度変化が大きくなり、DCモータ36を作動させている時間(冷却している時間)が長くなって返ってバッテリー50の電力を消費するため、本実施例においては、一度作動油の油温Tが上昇してDCモータ36により冷却ファン35aが回転を開始すると、油温Tが上昇したときは一挙に設定目標温度TLまで下げ、その油温を維持するように制御する、すなわち、DCモータ36の回転を必要に応じて高速/低速回転として切り換えることにより停止させないように構成されている。
【0023】
次に、オペレータキャビン15内を冷房する冷房装置60の制御について説明する。まず、図5を用いて冷房装置60の構成について説明する。この冷房装置60は、エキスパンジョンバルブ61、エバポレータ62、コンプレッサ63、コンデンサ64、および、レシーバ・ドライヤ65から構成され、これらの装置の間で冷媒を循環することにより冷房が行われる。エキスパンジョンバルブ61は、レシーバ・ドライヤ65を通ってきた高温・高圧の液体状の冷媒を小さな孔から噴射させることにより、急激に膨張させて低温・低圧の霧状の冷媒にするとともに、エバポレータ62内における冷媒の気化状態に応じて冷媒量を調節するものである。そして、エキスパンションバルブ61で低温・低圧にされた霧状冷媒をエバポレータ62で大量に気化し、図示しないファンにより送られる車室内の暖かい空気がこのエバポレータ62を通過することによって冷却し、オペレータキャビン15内を冷やす。
【0024】
コンプレッサ63は、コンプレッサ用モータ66で回転駆動され、エバポレータ62で気化したガス冷媒(気化状の冷媒)を容易に液化させるため圧縮して高圧化する。なお、コンプレッサ用モータ66は、コンプレッサ用インバータ67によりその作動が制御される。また、コンデンサ64は、コンプレッサ63から送られてきた高温・高圧のガス冷媒を冷却して冷媒を液化する(液体状の冷媒に戻す)。このコンデンサ64には、冷媒ガスを冷却するために、コンデンサ用DCモータ68により回転作動する冷却ファン64aを有しており、このコンデンサ用DCモータ68はコンデンサ用DCモータコントローラ69によりその作動が制御される。そして、レシーバ・ドライヤ65に送ってこのコンデンサ64で液化した冷媒を、冷房負荷に応じてエバポレータ62に供給できるよう一時的に貯えるとともに、ストレーナーと乾燥剤により冷凍サイクル内の「ゴミ」や「水分」を除去する。
【0025】
オペレータキャビン15内には、この室温の目標値を設定する設定スイッチ70が設けられており、この設定スイッチ70により設定された温度(目標温度TS)は、制御コントローラ40に入力される。また、オペレータキャビン15内には、室温を測定するための室温センサ71が設けられており、検出値(室温TR)は制御コントローラ40に入力され、また、冷房装置60には、コンデンサ64から吐出される冷媒の温度を検出するためのコンデンサ出口温度センサ72が設けられており、検出値(コンデンサ出口温度TC)は制御コントローラ40に入力される。そして、制御コントローラ40はこれらの目標温度TS、室温TR、および、コンデンサ出口温度TCにより、上述のコンプレッサ用インバータ67およびコンデンサ用DCモータコントローラ69に指令信号を出力して、室温TRが目標温度TSになるように制御する。
【0026】
それでは、制御コントローラ40による冷房装置60の制御について説明する。まず、図6および図7を用いてコンデンサ用冷却ファン64aを回転駆動させるコンデンサ用DCモータ68の制御について説明する。制御コントローラ40は、コンデンサ出口温度センサ72の検出値(コンデンサ出口温度TC)に基づいてコンデンサ用DCモータ68の回転を高速回転と低速回転に切り換える制御を行う。
【0027】
具体的には、時刻t0において冷房装置60が起動されると、制御コントローラ40は、コンデンサ用DCモータコントローラ69に指令信号として停止指令を出力しコンデンサ用DCモータ68を作動させない(ステップS200)。そして、制御コントローラ40が、時刻t1においてコンデンサ出口温度TCが第3の閾値TM(例えば、60度)を超えたと判断すると(ステップS201)、コンデンサ用DCモータコントローラ69に指令信号として高速回転指令を出力する(ステップS202)。コンデンサ用DCモータコントローラ69は、高速回転指令を受け取ると(高速回転指令がオン状態となると)、バッテリー50の電力を高い電圧でコンデンサ用DCモータ68に印加して高速回転させる。ここで、コンデンサ用DCモータコントローラ69により設定される高い電圧は、コンデンサ64の冷却ファン64aにより冷媒を急速に冷却するために必要な回転数となるための値が設定される。
【0028】
次に、制御コントローラ40は、時刻t2において、コンデンサ出口温度TCが第3の閾値TMより低くなったと判断すると(ステップS203)、コンデンサ用DCモータコントローラ69に指令信号として低速回転指令を出力する(ステップS204)。コンデンサ用DCモータコントローラ69は、低速回転指令を受け取ると(高速回転指令がオフ状態となり、低速回転指令がオン状態となると)、バッテリー50の電力を低い電圧(高速回転指令時の電圧より低い電圧)でコンデンサ用DCモータ68に印加して低速回転させる。そして、ステップS201に戻り、コンデンサ出口温度TCが第3の閾値TMが超えるのを監視する。
【0029】
以上のように、制御コントローラ40は、コンデンサ出口温度TCが第3の閾値TMを超えると(時刻t1,t3,t5)、コンデンサ用DCモータ68に高い電圧を印加してコンデンサ用冷却ファン64aを高速回転させて冷媒を急速に冷却し、コンデンサ出口温度TCが第3の閾値TMより低くなると(時刻t2,t4,t6)、コンデンサ用DCモータ68に低い電圧を印加してコンデンサ用冷却ファン64aを低速回転させるように構成されている。このとき、時刻t7のようにコンデンサ出口温度TCが、第2の閾値TL(第3の閾値TMより低く設定された温度であって、例えば50度)より低くなったとしても、コンデンサ用DCモータ68を停止させないように構成し、このコンデンサ用DCモータ68の起動/停止にともなう電力消費を抑えるように構成されている。
【0030】
次に、図8および図9を用いてコンプレッサ63を回転駆動させるコンプレッサ用モータ66の制御について説明する。制御コントローラ40は、室温センサ71の検出値TRとコンデンサ出口温度センサ72の検出値TCとに基づいてコンプレッサ用モータ66の回転を高速回転、中速回転、低速回転、および、停止状態に切り換える制御を行う。
【0031】
具体的には、時刻t0において冷房装置60が起動されると、制御コントローラ40は、コンプレッサ用インバータ67に指令信号として高速指令を出力する(ステップS300)。コンプレッサ用モータ66は、油圧ポンプ32を駆動する電動モータ31と同様にIPMモータ等で構成されているため、コンプレッサ用インバータ67は、高速指令を受け取ると、バッテリー50の直流電力を所定の電圧および周波数の交流電力に変換し、コンプレッサ用モータ66を所定の回転数で高速回転させ、圧縮する冷媒の量を多くする。そして、制御コントローラ40は、コンデンサ出口温度TCが、第2の閾値TLより低くなるかを判断し(ステップS301)、低くなっていないと判断したときは、高速指令を維持し、時刻t10において低くなったと判断したときは、コンプレッサ用インバータ67に指令信号として中速指令を出力する(ステップS302)。コンプレッサ用インバータ67は、中速指令を受け取ると、コンプレッサ用モータ66を中速回転させる(上述の高速回転より遅い所定の回転数で運転する)。
【0032】
次に、制御コントローラ40は、コンデンサ出口温度TCが第1の閾値TH(第3の閾値TMよりも高く設定された温度であって、例えば60度)を超えたかを判断し(ステップS303)、時刻t20において超えたと判断したときは、ステップS300に戻り、コンプレッサ用インバータ67に高速指令を出力し、コンプレッサ用モータ66を高速回転させる。一方、ステップS303でコンデンサ出口温度TCが第1の閾値THを超えていないと判断したときは、次に、目標温度TSと室温TRの差が第1の差ΔT1より大きく(TS−TR>ΔT1)、かつ、第2の閾値TLとコンデンサ出口温度TCの差が第2の差ΔT2より大きいか(TL−TC>ΔT2)を判断する(ステップS304)。制御コントローラ40は、この条件を満たさないと判断したときは、中速指令を維持してステップS303に戻り、時刻t30において条件を満たすと判断したときは、コンプレッサ用インバータ67に指令信号として低速指令を出力する(ステップS305)。コンプレッサ用インバータ67は、低速指令を受け取ると、コンプレッサ用モータ66を低速回転させる(上述の中速回転より遅い所定の回転数で運転する)。
【0033】
また、制御コントローラ40は、ステップS305で、コンプレッサ用インバータ67に低速指令を出力すると、次に、目標温度TSと室温TRとの差が第3の差ΔT3(第1の差ΔT1より大きい値が設定される)より大きく(TS−TR>T3)、かつ、第2の閾値TLとコンデンサ出口温度TCとの差が第4の差ΔT4(第2の差ΔT2より大きい値が設定される)より大きいか(TL−TC>ΔT4)を判断する(ステップS306)。制御コントローラ40は、この条件を満たさないと判断したときは、低速指令を維持してステップS304に戻り、時刻t40において条件を満たすと判断したときは、コンプレッサ用インバータ67に指令信号として停止指令を出力し(ステップS307)、コンプレッサ用モータ66を停止させ、ステップS306に戻る。
【0034】
このように、制御コントローラ40は、冷房装置60の始動時のように室温TRが目標温度TSより高いときにおいて、コンデンサ出口温度TCが第1の閾値THを超えるときはコンプレッサ用モータ66を高速回転させて室温TRを急速に下げるようにし、第2の閾値TLより低いときは中速回転させて、室温TRを目標温度TSに近づけるように制御する。そして、室温TRが目標温度TSに近づくと、室温TRと目標温度TSの差およびコンデンサ出口温度TCと第2の閾値TLとの差により、コンプレッサ用モータ66を低速回転、もしくは、停止させるように制御する。このように制御することにより、室温TRが高いときは、コンプレッサ用モータ66を高速回転させて室温TRを早く下げ、室温TRが目標温度TSに近づいたときはコンプレッサ用モータ66を中速回転若しくは低速回転させてこの室温TRが目標温度TSの近傍を維持するように制御することにより、バッテリー50の電力を効率よく利用するように構成されている。なお、このコンプレッサ用モータ66も起動/停止による電力消費は大きいが、室温TRと目標温度TSとの差およびコンデンサ出口温度TCと第2の閾値TLとの差が第3および第4の差ΔT3,ΔT4より大きい場合は、コンプレッサ用モータ66を停止させた方が電力消費量が少なくなるため、本実施例においては、停止させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る作業用車両の一例であるクローラ型パワーショベル車の構成を示す斜視図である。
【図2】上記パワーショベル車に搭載される油圧ユニットおよび電源ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】制御コントローラによる電動モータの制御を示すフローチャートである。
【図4】油温と電動モータに対する指令信号との関係を示す説明図であり、(a)は油温の状態を示す図であり、(b)は指令信号の状態を示す図であり、(c)は電動モータに印加される電圧を示す図である。
【図5】上記パワーショベル車に搭載される冷房装置の構成を示すブロック図である。
【図6】制御コントローラによるコンデンサ用モータの制御を示すフローチャートである。
【図7】コンデンサ出口温度とコンデンサ用モータに対する指令信号との関係を示す説明図であり、(a)はコンデンサ出口温度の状態を示す図であり、(b)は指令信号の状態を示す図である。
【図8】制御コントローラによるコンプレッサ用モータの制御を示すフローチャートである。
【図9】室温およびコンデンサ出口温度とコンプレッサに対する指令信号との関係を示す説明図であり、(a)は室温の状態を示す図であり、(b)はコンデンサ出口温度の状態を示す図であり、(c)は指令信号の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 クローラ型パワーショベル車(作業用車両)
13 パワーショベル機構(作業装置)
15 オペレータキャビン
35 オイルクーラ
35a 冷却ファン
36 DCモータ
38 油温センサ
40 制御コントローラ
50 バッテリー
60 冷房装置
62 エバポレータ
63 コンプレッサ
64 コンデンサ
64a 冷却ファン
66 コンプレッサ用モータ
68 コンデンサ用モータ
70 設定スイッチ(温度設定手段)
71 室温センサ
72 コンデンサ出口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を有する作業用車両において、
直流電力を供給するバッテリーと、
前記バッテリーの直流電力により、前記作業装置を作動させる作動油を冷却するオイルクーラの冷却ファンを駆動するDCモータと、
前記作動油の油温を検出する油温センサと、
前記油温センサにより検出される前記油温に基づいて、前記DCモータの作動を制御する制御コントローラと、を有し、
前記制御コントローラが、
始動時には、前記DCモータを停止した状態にし、
前記作動油の油温が第1の閾値を超えたときは、前記DCモータを第1の回転数で回転させて前記冷却ファンを駆動し、
前記作動油の油温が前記第1の閾値よりも低く設定された第2の閾値より低くなったときは、前記DCモータを前記第1の回転数よりも遅く設定された第2の回転数で回転させて前記冷却ファンを駆動するように構成された作業用車両。
【請求項2】
車体にオペレータが搭乗するオペレータキャビンを有する作業用車両において、
直流電力を供給するバッテリーと、
前記オペレータキャビン内を冷房する冷房装置に用いられ、前記オペレータキャビン内を冷却するためにエバポレータで気体状にされた冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサで圧縮された気体状の前記冷媒を冷却して液体状にするコンデンサと、
前記コンプレッサを駆動させるコンプレッサ用モータと、
前記オペレータキャビン内の室温を検出する室温センサと、
前記コンデンサの出口における前記冷媒の出口温度を検出するコンデンサ出口温度センサと、
前記オペレータキャビン内の目標温度を設定する温度設定手段と、
前記室温センサで検出された前記室温および前記コンデンサ出口温度センサで検出された前記出口温度に基づいて、前記室温が、前記温度設定手段で設定された前記目標温度に近づくように、前記コンプレッサ用モータの回転数を制御する制御コントローラと、を有し、
前記制御コントローラが、
前記室温が、前記目標温度より高いときで、前記冷媒の前記出口温度が第1の閾値より高いときは、前記コンプレッサ用モータを第1の回転数で回転させ、前記冷媒の前記出口温度が前記第1の閾値より低く設定された第2の閾値より低いときは、前記コンプレッサ用モータを前記第1の回転数よりも遅く設定された第2の回転数で回転させるように構成され、
前記室温が、前記目標温度より低いときで、前記目標温度と前記室温との差が第1の差より大きく、かつ、前記出口温度と前記第2の閾値との差が第2の差より大きいときは、前記コンプレッサ用モータを前記第2の回転数より遅く設定された第3の回転数で回転させるように構成され、前記目標温度と前記室温との差が前記第1の差より大きく設定された第3の差より大きく、かつ、前記出口温度と前記第2の閾値との差が前記第2の差より大きく設定された第4の差より大きいときは、前記コンプレッサ用モータを停止させるように構成された作業用車両。
【請求項3】
前記コンデンサの冷却ファンを駆動するコンデンサ用モータを有し、
前記制御コントローラが、
前記冷房装置が始動したときは、前記コンデンサ用モータを停止した状態にし、
前記出口温度が、前記第1の閾値より低く、かつ、前記第2の閾値より高く設定された第3の閾値より高くなったときは、前記コンデンサ用モータを第4の回転数で回転させ、
前記出口温度が、前記第3の閾値より低くなったときは、前記コンデンサ用モータを前記第4の回転数より遅く設定された第5の回転数で回転させるように構成された請求項1に記載の作業用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−19589(P2008−19589A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191045(P2006−191045)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】