説明

作業観察システム、及び画像編集プログラム

【課題】 PC(パーソナルコンピュータ)を用いて業務を行なうオフィスや作業現場において、人手をかけずに、効率的に気づきを得ることが可能な作業観察システムを提供する。
【解決手段】 画像編集プログラム2を備えた画像編集用コンピュータ3と、被観察者(作業者)の挙動を撮像するビデオカメラ700から構成され、作業者の挙動がビデオカメラ700から作業者映像データとして画像編集用コンピュータ3にデータ入力されるのと同期して、作業者が使用するPCからのPC画面情報がディスプレイインターフェース350を通してPC映像データとして画像編集用コンピュータ3にデータ入力される構成とされ、画像編集プログラム2によって、前記PC映像データと関連させて前記作業者映像データがシーン分割される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて業務を行なうオフィスや作業現場における、業務改善のための作業観察システム、及び作業観察のための画像編集プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、業務改善支援を提供している企業が、顧客企業の現場(主にオフィス作業)を観察し業務改善のヒントを得る目的で、ビデオを使ったフィールドワークを実施することが行われるようになって来た。しかし、ビデオを見て、そこから気づきを得るには時間がかかるという問題がある。
【0003】
ビデオから気づきを得る時間を短縮するために使えそうな従来技術は2つある。第一は、ビデオ要約の技術を使うことである。ビデオ要約の技術は、例えば、サッカー中継の映像からゴールシーンを抜き出し、ダイジェスト版を作る技術である。第二は、スポーツ分野やインダストリアル・エンジニアリングの分野において、シーン比較の技術を使うことである。例えば、上手い人と下手な人のテニスラケットを振るフォームを比べたり、熟練作業者と新人作業者の段取りの様子の違いを比較できるようにビデオを再生したりして、観察者の気づきを助ける技術である。
【0004】
コンピュータ技術と映像処理技術の発達によって、コンピュータを用いた映像比較技術がいくつか提案されている。
【0005】
特許文献1には、ダウンヒルレースやスキージャンプなどのスポーツ競技で、競技者が一人ずつ競技する場合に、競技者間の技能を比較するため、合成ビデオシーケンスを生成し、あたかも両競技者が同時にレースをしているように見せる技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、工場ラインでの作業において標準作業速度を映像で設定する方法に関し、得られた適切な標準作業速度の映像を評価したい評価対象データの映像と並列的に動作させ、適切な標準作業速度の映像の再生速度を可変することで、両映像を一致させ、一致した条件において、適切な標準作業速度の映像が、どの程度の倍率になっているかを算出することで、評価対象データの評価値とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004−500756号公報
【特許文献2】特許第4677526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビデオ要約技術は、例えば、サッカー中継であればゴールシーンを抜き出し、それを時系列的に順につなぎ合わせる技術であるが、オフィス作業では、ゴールシーンのような特徴ある動作が予め予測できないことが大半であり、個々の作業を時系列的に順に見ているだけでは気づきが得られ難い、という問題がある。
【0009】
シーン比較技術は、プロスポーツやインダストリアル・エンジニアリング分野に関しては、ビデオから気づきを得るための良い方法であるといえる。ビデオを短いシーンに分割することで効率良く閲覧でき、また、良い例と悪い例を比較再生することで、効率良く気づきを得ることができる。特許文献1,2が対象としている、ルールが明確なスポーツや工場ラインでの定型作業ではシーン分割が比較的容易である。オフィスにおける定型作業としては、例えば、コピー、書類の配布、記帳、会議の連絡等の直接的な作業が挙げられ、この場合についても定型作業であるから、シーン分割が比較的容易である。
【0010】
しかしながら、オフィスは、いわゆるホワイトカラーの仕事場であり、非定型的な業務スタイルが一般的となっている。オフィスでの非定型作業としては、例えば、顧客からの苦情処理、問い合わせに対する対応、取引契約、複数の帳票類の取捨選択などの課題解決型作業が挙げられる。このような非定型作業の場合には特徴ある動作が予め予測できないことが大半であり、オフィス作業者の挙動だけを見ていても、どこで区切ってシーン分割すればよいのかが分からないし、どのような基準でシーンを取り出して比較すべきかが分らない場合がほとんどである。昨今、オフィスや作業現場では、各自がパーソナルコンピュータ(PC)を用いて業務を行なうことが日常化しており、一見すると、皆同じように作業を行なっているかのような錯覚に陥ることがある。しかし実際には、優秀な作業者とそうでない作業者が存在しているのであるから、優秀な作業者のやり方を取り入れることで作業者のスキルアップを図ることが望まれる。
【0011】
特に、コンサルティングや情報処理などのサービス提供企業では、実施コストを抑え、サービス価格を下げることは、サービスの競争力を上げるためには重要である。そのためには、人手をかけずに、効率的に気づきを得る技術が求められている。
【0012】
そこで、本願発明の目的は、PC(パーソナルコンピュータ)を用いて業務を行なうオフィスや作業現場において、人手をかけずに、効率的に気づきを得ることが可能な作業観察システムと作業観察に用いられる画像編集プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の作業観察システムは、オフィスや作業現場でPC(パーソナルコンピュータ)を使用し作業を行なう被観察者(作業者)の挙動を観察するに際し使用され、画像編集プログラムを備えた画像編集用コンピュータと、作業者の挙動を撮像するビデオカメラから構成され、作業者の挙動が前記ビデオカメラから作業者映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されるのと同期して、作業者が使用するPCからPC画面情報がPC映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力される構成とされ、前記画像編集プログラムによって、前記PC映像データと関連させて前記作業者映像データがシーン分割されることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記作業者映像データと前記PC映像データが前記画像編集用コンピュータに同期してデータ入力されるとは、前記作業者映像データと前記PC映像データが、前記画像編集用コンピュータに同時に入力され、前記画像編集用コンピュータ内で前記作業者映像データと前記PC映像データにタイムスタンプを付けることによって、前記作業者映像データのあるシーンと前記PC映像データのあるシーンが、同時刻に撮影されたことがわかるように構成することを指すが、例えば、前記ビデオカメラによって前記作業者映像データにタイムスタンプが既に付けられている場合には、前記ビデオカメラ内に前記作業者映像データを蓄積しておいて、後でまとめて前記画像編集用コンピュータに入力するようにしても前記作業者映像データと前記PC映像データが前記画像編集用コンピュータに同期してデータ入力される構成となる。
【0015】
本発明の画像編集プログラムは、オフィスや作業現場でPC(パーソナルコンピュータ)を使用し作業を行なう被観察者(作業者)の挙動を観察するに際し使用され、画像編集用コンピュータ上で動作する画像編集プログラムであって、作業者の挙動がビデオカメラから作業者映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されるのと同期して、作業者が使用するPCからPC画面情報がPC映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されると、前記PC映像データと関連させて前記作業者映像データをシーン分割することを特徴とする。
【0016】
本発明では、前記PC映像データと関連付けて前記作業者映像データをシーン分割する仕組みとなっている。本発明によれば、オフィスや作業現場に配されているPCの画面情報としての前記PC映像データを前記作業者映像データと同期させることで、前記画像編集用コンピュータが、前記PC画面の内容変化に基づいて、作業者の特徴的な作業シーンを見極めながらシーン分割することとなり、人手をかけずに、効率的に気づきを得ることができる。
【0017】
本発明は、前記PCに備わっているディスプレイインターフェースを通して前記PC画面が前記画像編集用コンピュータにデータ入力されることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記PCに備わっているディスプレイインターフェースを通してPC画面情報としての前記PC映像データが前記画像編集用コンピュータにデータ入力される構成であるから、オフィスや作業現場に配されているPCに特別な処置を施さなくて済み、前記PCのセキュリティに影響を及ぼす虞がない。コンサルティングなどのサービス提供企業が、簡易的なフィールドワークを実施するケースでは、この点は重要である。信頼を十分得ていないコンサルティングの初期段階で、PC画面情報を解析するようなソフトウェアを作業者のPCにインストールすることの許可を得ることは難しい。しかし、前記PCに備わっているディスプレイインターフェース経由であるなら、PCに特別な処置は要らないので許可を得ることが容易となる。
【0019】
ここで、シーン分割とは、長時間のビデオを、編集し易いようにビデオクリップに分けることである。
【0020】
本発明では、被観察者(作業者)の挙動をシーン分割し、これら分割されたシーンから比較して見るに値する複数(通常は2つ)のシーンを選び出し、それらを観察することによって気づきを得る。
【0021】
本発明は、前記画像編集プログラムが、前記PC画面上のアプリケーションウィンドウ内に表示されている電子書類の内容変化を画像解析し、前記PC画面上での前記電子書類への記入開始時点と前記電子書類への記入終了時点のいずれか又は両方を検出して所定のタイムスタンプを設定して、前記作業者映像データをシーン分割することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記画像編集プログラムが、前記PC画面上のアプリケーションウィンドウ内に表示されている電子書類の内容変化を画像解析し、前記PC画面上での前記電子書類への記入開始時点と前記電子書類への記入終了時点のいずれか又は両方を検出して所定のタイムスタンプを設定して、前記作業者映像データをシーン分割する構成であるから、前記電子書類への記入開始や記入終了のいずれか又は両方のタイミングに基づいて前記電子書類と関連した作業に的を絞って、作業者の挙動をシーン分割することができる。
【0023】
前記電子書類としては、電子文書やデータ入力表、いわゆる紙の帳票類を電子化したものや、webフォームや入力画面等が挙げられる。前記所定のタイムスタンプは、前記電子書類への記入開始時点や記入終了時点とリンクしたものであり、これらの時点と同一の時刻に加えて、数秒前〜数分前や、数秒後〜数分後とする場合がある。例えば、前記電子書類への記入開始時点を検出して所定のタイムスタンプを設定することで、前記電子書類への記入作業に関連した作業シーンがシーン分割できる。また例えば、前記電子書類への記入終了時点を検出して所定のタイムスタンプを設定することで、前記電子書類へ記入した後の作業に関連した作業シーンがシーン分割できる。そして例えば、前記電子書類への記入開始時点及び記入終了時点を検出して所定のタイムスタンプを設定することで、前記電子書類への記入に要した作業時間が把握でき、同様の電子書類への記入時間を目安とすることによって、同一の作業者や異なる作業者の複数のシーン(例えば2つのシーン)を選び出すことが容易となる。例えば、同様の電子書類への最も長い記入時間を要した作業のシーンと最も短い記入時間で済んだ作業シーンを選び出せる。また例えば、同様の電子書類への平均的な記入時間を要した異なる作業者による複数の作業シーンを選び出せる。
【0024】
本発明は、前記画像編集プログラムが、前記シーン分割した作業者映像データを、前記電子書類の内容変化を画像解析した画像解析結果に基づく類似度合いによってペアリングし、前記シーン分割された作業者映像データ同士を比較することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前記電子書類と関連した作業に的を絞って、異なる作業者の類似作業を比較することができる。
【0026】
前記ビデオカメラの配置構成としては、幾つかのパターンがある。まず、前記ビデオカメラが1箇所に配されており、特定のPCを使用する被観察者(1人の作業者)を撮像する構成が挙げられる。例えば、特定のPCを使用する作業者の手元や作業デスクが映るように撮像することで、作業者のデスク上での仕事の仕方がわかる。また、前記ビデオカメラが複数箇所に配されており、特定のPCを使用する被観察者(1人の作業者)を多角度的に撮像する構成が挙げられる。例えば、上記に加えて、オフィス全体が映るように撮像することで、作業者のオフィス内での動き(キャビネットに資料を取りに行ったり、上司に連絡しに行ったりする等の動き)がわかる。また、近隣作業者の挙動を撮像することで、作業者同士の連係動作がわかる。そして、被観察者(複数の作業者)の使用するPCの台数に応じて複数の前記ビデオカメラが配されており、複数の前記ビデオカメラからの作業者映像データと同期して、複数の前記PCからの複数のPC映像データがデータ入力され、複数の作業者の作業者映像データ同士が比較される構成が挙げられる。この構成によれば、同じ時間帯における複数の作業者の挙動をそれぞれシーン分割し、これら分割されたシーンから異なる作業者の複数のシーン(例えば2つのシーン)を選び出し、それらを観察することによって効果的に気づきを得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の作業観察システムによれば、オフィスや作業現場に配されているPCの画面情報に着目し、前記PC映像データを前記作業者映像データと連動させて前記画像編集用コンピュータにデータ入力することで、前記画像編集用コンピュータが、前記PC画面の内容変化に基づいて、被観察者(作業者)の特徴的な作業シーンを見極めながらシーン分割することとなり、人手をかけずに、効率的に気づきを得ることができる。そして、前記PCに備わっているディスプレイインターフェースを通して前記PC画面情報が前記画像編集用コンピュータにデータ入力される構成であるから、オフィスや作業現場に配されているPCに特別な処置を施さなくて済み、前記PCのセキュリティに影響を及ぼす虞がない。
【0028】
本発明の画像編集プログラムによれば、前記電子書類への記入開始や記入終了のいずれか又は両方のタイミングに基づいて前記電子書類と関連した作業に的を絞って、作業者の挙動をシーン分割することができる。そして、前記電子書類と関連した作業に的を絞って、異なる作業者の類似作業を比較することができる。そして、分割されたシーンの所要時間の統計を取ることで作業処理時間を比較することができ、同種作業の「差」を観察容易とし、連続作業の「繋がり」を観察容易とする。したがって、優秀な作業者のやり方を取り入れて作業者のスキルアップを図ることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の作業観察システムを説明するブロック図である。
【図2】上記実施形態の作業観察システムの他の例を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の画像編集プログラムにおける画像編集手順を説明するフローチャートである。
【図4】上記画像編集プログラムにおけるシーン分割を模式的に説明する図である。
【図5】上記画像編集プログラムにおけるクラスタリングを模式的に説明する図である。
【図6】上記画像編集プログラムにおけるシーン比較を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(システム構成)
図1は、本発明の実施の形態の作業観察システム1を機能的に説明するブロック図である。本実施形態の作業観察システム1は、オフィスや作業現場でPC(パーソナルコンピュータ)300を使用し作業を行なう被観察者(作業者)200の挙動を観察するに際し使用され、画像編集プログラム2とデータベース5を備えた画像編集用コンピュータ3と、作業者200の挙動を撮像するビデオカメラ700から構成される(図1)。図1に示す例では、ビデオカメラ700がその映像出力端子を通して画像編集用コンピュータ3に接続されており、作業者200の挙動がビデオカメラ700から作業者映像データとして画像編集用コンピュータ3にデータ入力される構成となっている。また、PC(符号300)がそのディスプレイインターフェース350を通して画像編集用コンピュータ3に接続されており、作業者200が使用するPC(符号300)からPC画面情報がPC映像データとして画像編集用コンピュータ3にデータ入力される構成となっている。前記ビデオカメラ(符号700)からの作業者映像データとPC(符号300)からのPC画面情報とは同期させている。
【0031】
本実施形態によれば、PC(符号300)に備わっているディスプレイインターフェース350を通してPC画面情報としてのPC映像データが画像編集用コンピュータ3にデータ入力される構成であるから、オフィスや作業現場に配されているPC(符号300)に特別な処置を施さなくて済み、PC(符号300)のセキュリティに影響を及ぼす虞がない。
【0032】
本実施形態で使用する画像編集用コンピュータ3の構成は、いわゆる個人向けのパーソナルコンピュータで足りる。ここでは、画像編集用コンピュータ3には、データ入力を受け付ける入力手段81と、入力されたデータに演算処理を行うCPU4と、演算処理後のデータを蓄積保存するデータベース5とデータ処理前後のデータを画面表示するディスプレイ82が備わっており、画像編集用コンピュータ3上で画像編集プログラム2が動作する。入力手段81は、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0033】
図2は、本実施形態の作業観察システム1において、ビデオカメラ700が複数箇所に配されており、複数の作業者を同時に観察するシステム構成例を説明するブロック図である。図2に示す例では、3人の被観察者(作業者)201,202,203がそれぞれ異なるPC301,302,303を使用する場合において、前記複数の作業者の挙動が複数の前記ビデオカメラから作業者映像データとしてそれぞれ画像編集用コンピュータ3にデータ入力されるのと同期して、複数の前記PC画面情報が複数の前記PCからディスプレイインターフェース351,352,353を通してPC映像データとしてそれぞれ画像編集用コンピュータ3にデータ入力され、シーン分割された異なる作業者の作業者映像データ同士が比較される構成となっている。
【0034】
(画像編集プログラム)
本発明では、作業観察のために画像編集プログラムを使用する。図3は、本発明の実施の形態の画像編集プログラム2における画像編集手順を説明するフローチャートである。図3に示すフローチャートに沿って、本実施形態の作業者観察手順を以下に説明する。
【0035】
先ず、オフィスにてPCを使用し作業を行なう被観察者(作業者)200の挙動をビデオカメラ700から作業者映像データ710として画像編集用コンピュータ3にデータ入力するのと同期させて、作業者200が使用するPC300からPC画面情報がPC映像データ310として画像編集用コンピュータ3にデータ入力する(符号S11)。このとき、作業者映像データ710にタイムスタンプが付いていなければ、タイムスタンプを付す。また、PC映像データ310にタイムスタンプが付いていなければ、タイムスタンプを付す。データ入力されたこれらの映像情報は、それぞれ作業者毎にデータベース5に蓄積される(符号S12)。
【0036】
そして、画像編集プログラム2が、前記タイムスタンプが対応した作業者映像データ710とPC映像データ310とをデータベース5から取り出して、PC映像データ310と関連させて作業者映像データ710を画像解析し(符号S13、図4)、画像編集プログラム2内の分割ツール290にてシーン分割する(符号S14、図4)。分割ツール290によって、作業者映像データ710とPC映像データ310は、同じタイムスタンプを持つ位置で分割され、作業者映像データ710は複数の作業者映像シーン(符号711、712、713)に分割され、PC映像データ310は複数のPC映像シーン(符号311,312,313)に分割される。ここで何個に分割されるかは、PC映像データ310の内容に依存して、適宜設定される。また、作業者映像データ710とPC映像データ310は、同じタイムスタンプを持つ位置で分割されることから、分割後の作業者映像シーン711,712,713とPC映像シーン311,312,313は一対一で対応し、かつ、個数は同数である。つまり、作業者映像シーン711はPC映像シーン311に、作業者映像シーン712はPC映像シーン312に、作業者映像シーン713はPC映像シーン313に、それぞれ一対一で対応する。
【0037】
シーン分割されると(符号S14)、PC映像シーン311,312,313、314、315、316、317同士の類似度をもって、PC映像シーン311,312,313、314、315、316,317をクラスタリングする(符号S15、図5)。クラスタリングにより、PC映像クラスター(符号101、102、103)が得られる。例えば、PC映像シーン311には一対一で対応する作業者映像シーン711があることから、PC映像シーン311,312,313、314、315、316、317をクラスタリングすることにより、作業者映像シーン711、712、713,714,715,716,717も同様にクラスタリングされることとなる(図6)。PC映像クラスター101には作業者映像クラスター901が、PC映像クラスター102には作業者映像クラスター902が、PC映像クラスター103には作業者映像クラスター903が、それぞれ一対一で対応する。
【0038】
クラスタリングされると(符号S15)、前記の作業者映像シーンをペアリングする(符号S16、図6)。ペアリングは、作業者映像クラスター901,902,903から一つのクラスターを選び出し、例えば作業者映像クラスター901が選び出されたとすると、選び出された作業者映像クラスター901から、二つの作業者映像シーン712と714を選び出す作業である。シーン比較は、選び出された作業者映像シーン712と714を、並べて同時再生する(符号S17、図6)。ペアリングとシーン比較は、必要な回数だけ繰り返し行う(符号S18)。ペアリングの方法は、いろいろなバリエーションがあって良い。毎回のペアリングにおいて、異なるクラスターを一つ選び出し、当該クラスターから異なる組み合わせの作業者映像シーンを選び出しても良いし、同じ一つのクラスターを選び出し続けるが異なる組み合わせの作業者映像シーンを選び出しても良いし、同じ一つのクラスターと当該クラスターの一つの同じ作業者映像シーンを選び出し続け、残りの作業者映像シーンについては当該クラスターから異なる作業者映像シーンを選び出しても良い。なお、上述の例では、作業者映像データ710と、PC映像データ310は、同一作業者のデータであるとして説明したが、異なる二人の作業者(例えば符号201と202)が、隣の席に座っている場合とか、離れた席に座っているが二人の作業に連続性がある場合には、一人目の作業者201のPC映像データ310の画像分析結果に基づいて、二人目の作業者202の挙動を撮影するビデオカメラ702の作業者映像データを分割することにも意味がある場合があり、そのようなケースも本実施形態の想定内であることを留意しておく。
【0039】
前記シーン分割では、PC映像データ310から、固定した短い時間間隔で静止画像を切り出し、各静止画像に映っているPC画面情報を画像解析して、当該時刻でシーン分割をすべきかどうかを判定する。オフィス作業でのアプリケーションは、従来は紙であったものを電子化したものが典型である。そこで、以下では、アプリケーションウィンドウには、典型的には電子書類(帳票)が写っていると想定される。帳票は、時間の経過と共に、帳票の空いているフィールドが文字や記号で埋められて行く。そこで、作業の切れ目を判断するために、連続する静止画像の白黒の面積の割合の変化を追い、黒の領域の割合がだんだん増加し、突然、黒の領域の割合が減少した時点を切れ目とみなすことができる。そこで、PC映像データ310に備わっているタイムスタンプを参照し、そのタイムスタンプで、作業者200の挙動を撮影した作業者映像データ710を切る。この作業を繰り返すことで、複数の作業者映像シーン711、712、713に分割する(図4を参照)。なお、上述の例では、PC画面の白黒の領域の割合を見る方法で説明したが、これはベーシックな方法であり、PC画面に映った電子書類(帳票)を解析する技術を本実施形態に取り込むことが出来る。例えば、文字認識を行って、帳票に入力された文字の意味を追跡することができる。例えば、画像認識を行って、帳票を切り替えるボタン領域を認識し、ボタンが押されたかどうか(典型的には、ボタンのグラフィックスが短い時間、変化する)を見張ることもできる。さらには、固定した短い時間間隔で静止画像を切り出すとしたが、静止画像の変化をモニタリングして、切り出し間隔を適応的に変化させて、画像解析の処理負荷を抑える工夫を入れても良い。
【0040】
上述の方法で切り出した複数の作業者映像シーン711、712、713には、それぞれ一対一で対応する同数のPC映像シーン311,312、313がある。それは、同じタイムスタンプのスタートタイムを持ち、同じタイムスタンプのエンドタイムを持つ(図4を参照)。
【0041】
先ず、同時再生すべき複数の作業者映像シーンの一つを選ぶ。ここでは一つを選べば良いので、いろいろな選択法を取ることができる。ランダムに一つ選んでも良いし、観察者に一つ選んでもらっても良い。再生時間が最長の作業者映像シーンを選んでも良い。観察者と被観察者(作業者200)が一緒になってワークショップを開いたとき、ワークショップの前半では、被観察対象者に自由に作業者映像シーンを閲覧させ、もっとも多く再生された作業者映像シーンの一つを選んでもよい。ここに例示したものに限らず、いろいろなバリエーションを考えることができる。
【0042】
次に、最初に選ばれた一つの作業者映像シーンと組み合わせるべき作業者映像シーンを、どのように選択するかの方法を述べる。その技術的なポイントは、与えられた作業者映像シーンに一対一で対応するPC映像シーンと、選択候補の他の作業者映像シーンに一対一で対応するPC映像シーン同士の類似度を求め、類似度が高いPC映像シーンに対応する挙動シーンから選ぶ点にポイントがある。既に述べたように、PC画面には典型的には帳票が写っている。そこで、それぞれのPC画面に映っている帳票を比較し、何らかの意味で類似しているもの同士を選ぶ。もし、類似のPC画面が複数あるときには、類似の度合を定量化し、類似度合いが最大のシーンを選択しても良いし、ある一定値以上の類似度合いがあるシーンからランダムに選んでも良い。例えば、同じ書式の帳票が写っていれば、そのうちの一つを選んで類似とする。
【0043】
上述の手続きは、別の表現をすれば、作業者映像シーンに一対一で対応するPC映像シーン同士の類似度を求め、その結果で、作業者映像シーンの集合をクラスタリングしておき、選ばれた作業者映像シーンに対し、その作業者映像シーンと同時再生すべき作業者映像シーンを、同じクラスターに入っているものから選ぶことといえる。同じクラスターに入っている作業者映像シーンが3つ以上の時は、どの作業者映像シーンを選ぶかの選択の自由度がある。例えば、ランダムに選んでも良いし、まだ選択されていない作業者映像シーンを優先しても良いし、一対一で対応するPC映像シーン同士の類似度がより高い作業者映像シーンを優先しても良い。ここで述べた例に限らず、いろいろなバリエーションを考えることができる。なお、ここで述べた、帳票の書式を用いる方法はベーシックなものであり、これに限るものではない。例えば、文字認識を行い、同じ伝票番号を持っている帳票が写っているPC映像シーンを類似であると判断して、一対一で対応する作業者映像シーンを選択しても良い。このケースでは、同様な作業を行っている人同士を比較するだけでなく、異なる作業であるが、同じ案件に対する作業者映像シーンを比較することが可能となる。問題が起きた案件に対し、どの段階の作業で問題が起きたかを追跡することなどが可能となる。
【0044】
本実施形態によれば、前記画像編集用コンピュータ3が、前記PC画面の内容変化に基づいて、作業者の特徴的な作業シーンを見極めながらシーン分割することとなり、人手をかけずに、効率的に気づきを得ることができる。本実施形態によれば、前記電子書類(帳票)への記入開始や記入終了のいずれか又は両方のタイミングに基づいて前記電子書類(帳票)と関連した作業に的を絞って、作業者の挙動をシーン分割することができる。そして、前記電子書類(帳票)と関連した作業に的を絞って、異なる作業者の類似作業を比較することができる。そして、分割されたシーンの所要時間の統計を取ることで作業処理時間を比較することができ、同種作業の「差」を観察容易とし、連続作業の「繋がり」を観察容易とする。したがって、優秀な作業者のやり方を取り入れて作業者のスキルアップを図ることが容易となる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、ビデオカメラ700が特定のPC300を使用する作業者200を撮像する構成に加えて、オフィス全体が映るように別のビデオカメラを設置し撮像することで、作業者200のオフィス内での動きが把握できるようにしても良い。また、上述の作業者映像データ710とPC映像データ310とを画像編集用コンピュータ3にデータ入力し、それぞれ作業者毎にデータベース5に予め蓄積しておくことで、複数の営業拠点(或いは同業他社)における異なる作業者同士の作業比較を行なうことができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 作業観察システム、
2 画像編集プログラム、
3 画像編集用コンピュータ、
4 CPU、
5 データベース、
200 被観察者(作業者)、
300 作業者が使用するPC、
350 ディスプレイインターフェース、
700 ビデオカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフィスや作業現場でPC(パーソナルコンピュータ)を使用し作業を行なう被観察者(作業者)の挙動を観察するに際し使用され、画像編集プログラムを備えた画像編集用コンピュータと、作業者の挙動を撮像するビデオカメラから構成され、作業者の挙動が前記ビデオカメラから作業者映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されるのと同期して、作業者が使用するPCからPC画面情報がPC映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力される構成とされ、前記画像編集プログラムによって、前記PC映像データと関連させて前記作業者映像データがシーン分割されることを特徴とする作業観察システム。
【請求項2】
前記PCに備わっているディスプレイインターフェースを通して前記PC画面情報がPC映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されることを特徴とする請求項1記載の作業観察システム。
【請求項3】
前記画像編集プログラムによって、前記PC画面上のアプリケーションウィンドウ内に表示されている電子書類の内容変化が画像解析され、前記PC画面上での前記電子書類への記入開始時点と前記電子書類への記入終了時点のいずれか又は両方が検出されて所定のタイムスタンプが設定されて、前記作業者映像データがシーン分割されることを特徴とする請求項1または2記載の作業観察システム。
【請求項4】
前記シーン分割された作業者映像データが、前記電子書類の内容変化を画像解析した画像解析結果に基づく類似度合いによってペアリングされ、前記シーン分割された作業者映像データ同士が比較されることを特徴とする請求項3記載の作業観察システム。
【請求項5】
被観察者(作業者)の使用するPCの台数に応じて複数の前記ビデオカメラが配されており、複数の前記ビデオカメラからの作業者映像データと同期して、複数の前記PCからの複数のPC映像データがデータ入力され、複数の前記ビデオカメラからの作業者映像データ同士が比較されることを特徴とする請求項4記載の作業観察システム。
【請求項6】
オフィスや作業現場でPC(パーソナルコンピュータ)を使用し作業を行なう被観察者(作業者)の挙動を観察するに際し使用され、画像編集用コンピュータ上で動作する画像編集プログラムであって、作業者の挙動がビデオカメラから作業者映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されるのと同期して、作業者が使用するPCからPC画面情報がPC映像データとして前記画像編集用コンピュータにデータ入力されると、前記PC映像データと関連させて前記作業者映像データをシーン分割することを特徴とする画像編集プログラム。
【請求項7】
前記PC画面上のアプリケーションウィンドウ内に表示されている電子書類の内容変化を画像解析し、前記PC画面上での前記電子書類への記入開始時点と前記電子書類への記入終了時点のいずれか又は両方を検出して所定のタイムスタンプを設定して、前記作業者映像データをシーン分割することを特徴とする請求項6記載の画像編集プログラム。
【請求項8】
前記シーン分割した作業者映像データを、前記電子書類の内容変化を画像解析した画像解析結果に基づく類似度合いによってペアリングし、前記シーン分割された作業者映像データ同士を比較することを特徴とする請求項7記載の画像編集プログラム。
【請求項9】
複数の前記ビデオカメラからの作業者映像データと同期して、複数の前記PCからの複数のPC映像データがデータ入力されると、複数の前記ビデオカメラからの作業者映像データ同士を比較することを特徴とする請求項8記載の画像編集プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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