説明

作業計画管理装置、作業計画管理方法及び作業計画管理装置の制御プログラム

【課題】新規に発生した作業について、作業実施期限などの制約を守った上で、効率的な作業計画を作成できる昇降機の保守管理装置を提供すること。
【解決手段】複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理装置であって、新たな作業の情報及び新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報を取得し、取得された情報に基づいて新たな作業を実行するべきタイミングの候補日を決定する計画対象日判定部31と、既存の計画のうち、決定された候補日に実行される作業の計画を抽出し、抽出した既存の計画における作業の対象である建造物と、新たな作業の対象である建造物との距離に基づき、新たな作業を担当させる作業者を決定する優先度判定部33と、新たな作業の計画を追加することにより既存の計画を更新する計画再作成部34とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業計画管理装置、作業計画管理方法及び作業計画管理装置の制御プログラムに関し、特に、新たに発生した作業を既存の計画に追加する際に、効率的な作業を実現する作業計画管理装置、作業計画管理方法及び作業計画管理装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ等の昇降機設備を管理する保守会社においては、作成された報告書等を顧客、即ち昇降機設備を使用しているユーザに配布する作業や、顧客のビルに掲示物を貼り付ける作業(以降、簡易作業とする)等を行う場合がある。これらの作業は、保守点検等の既存の作業計画の中に組み入れられた上で、その既存の作業を実行する保守員によって同時に実行される。このため、作業計画の作成者は、既存の作業計画を参照し、その作業を実行するために現場を巡回する保守員のうち、上記簡易作業を実行するべき現場の近くを通る保守員を判断する。そして、作業計画の作成者は、報告書の提出期限や掲示物の貼り付け期限までに間に合うように、上記簡易作業の計画を既存の作業計画に追加する。
【0003】
追加作業を保守計画に反映する技術として、従来、前回の作業計画とその計画に対する実績を比較し、予定作業の中で実施できなかった未実施分の作業を抽出して、次回の計画に反映する保守巡回作業表作成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】平11−314864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている保守巡回作業表作成装置は、あるエレベータに対する未実施分の作業を次回保守点検実施時にまとめて実施することを想定し、未実施作業を次回作業計画に反映させる。しかし、顧客への報告書等の配布作業や掲示物貼り付け作業の期限が、次回保守点検の実施時期よりも早い時期である場合、次回作業時にまとめて実施するのでは間に合わないため、簡易な作業の計画は、次回作業計画の前に既存の計画に追加する形で計画する必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、新規に発生した作業について、作業実施期限などの制約を守った上で、効率的な作業計画を作成できる作業計画管理装置、作業計画管理方法及び作業計画管理装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理装置であって、複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報及び新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を取得し、追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、新たな作業を実行するべきタイミングの候補日を決定する計画対象日判定部と、既存の計画から候補日に実行される作業の計画を抽出し、既存の計画における作業の対象である建造物と、新たな作業の対象である建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、新たな作業を担当させる作業者を決定する優先度判定部と、決定された作業者が実行するべき作業として新たな作業の計画を追加することにより既存の計画を更新する計画再作成部とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の態様は、複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理方法であって、複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報及び新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を情報記憶部から読み出し、読み出した追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、新たな作業を実行するべきタイミングの候補である実行タイミング候補日を決定し、既存の計画から候補日に実行される作業の計画を抽出し、既存の計画における作業の対象である建造物と、新たな作業の対象である建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、新たな作業を担当させる作業者を決定し、決定された作業者が実行するべき作業として新たな作業の計画を追加することにより情報記憶部に記憶されている前記既存の計画を更新することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の更に他の態様は、複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理装置の制御プログラムであって、複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報を取得するステップと、新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を取得するステップと、取得された追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、新たな作業を実行するべきタイミングの候補である実行タイミング候補を決定するステップと、複数の建造物に対して実行するべき作業を担当する作業者の情報及び実行するべきタイミング情報を含む既存の計画のうち、決定された実行タイミング候補に対応するタイミングにおいて実行される作業の計画を抽出するステップと、抽出された既存の計画における作業の対象である建造物と、新たな作業の対象である少なくとも一つの建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、新たな作業を担当させる作業者を決定するステップと、決定された作業者が実行するべき作業として新たな作業の計画を追加することにより既存の計画を更新するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規に発生した作業について、作業実施期限などの制約を守った上で、効率的な作業計画を作成できる作業計画管理装置、作業計画管理方法及び作業計画管理装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る昇降機保守管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る保守管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る作業計画格納部に格納されている作業計画の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る作業計画の追加の態様の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る作業現場と配布作業の対象現場との位置関係を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る優先度判定部が算出した優先度の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る作業計画の更新の態様を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る昇降機保守管理システムの全体構成を示すブロック図である。報告書作成管理システム1は、昇降機を有する若しくは使用している顧客へ提出する報告書の作成を管理するシステムであり、顧客の昇降機の保守に関する情報を格納するデータベース(図示せず)およびこのデータベースに格納された情報に基づいて報告書を作成するコンピュータを備える。
【0013】
報告書作成管理システム1は、顧客に配布するべき報告書を作成すると、保守管理装置3に対し、配布作業の計画を既存の計画の情報に追加することを指示する信号(以降、計画追加信号とする)を出力する。この計画追加信号が、対象となる建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報として用いられる。保守管理装置3は、報告書作成管理システム1から計画追加信号を受信すると、作業計画格納部2に格納されている作業計画21並びに顧客情報格納部4に格納される各種情報に基づいて、既存の作業計画に対して配布作業の予定を追加して、作業計画格納部2に格納される作業計画を更新する。ここで、既存の作業計画とは、例えば、昇降機の保守点検の作業予定である。
【0014】
顧客情報格納部4は、顧客について、報告書配布の実施期限を示す提出期限情報41と、顧客によって指定された報告書配布実施日を示す配布日指定情報42と、顧客によって指定された報告書配布を実施する保守員を示す配布者指定情報43と、地図情報など、顧客ビルの所在地を示す所在地情報44を格納している。
【0015】
なお、上述した作業計画格納部2や、顧客情報格納部4は、半導体メモリや磁気ディスクなどの記憶装置によって構成される。また、保守管理装置3は、作業計画格納部2及び顧客情報格納部4から作業計画や各種情報のデータを読み出して作業追加のためのデータ処理を施す演算処理装置を含むコンピュータを備える。
【0016】
保守管理装置3は、図1に示すように、計画対象日判定部31、計画対象者判定部32、優先度判定部33及び計画再作成部34を含む。計画対象日判定部31は、提出期限情報41及び配布日指定情報42に基づき、配布作業を実施する計画日の候補日を抽出する。即ち、提出期限情報41及び配布日指定情報42は、新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であり、タイミング制約情報として用いられる。尚、配布日指定情報42は、新たな作業の実行タイミングを指定する情報である。
【0017】
計画対象者判定部32は、配布者指定情報43に基づいて配布作業を実施する保守員の候補者を抽出する。即ち、配布者指定情報43は、新たな作業を実行するべき作業者を指定する作業者指定情報として用いられ、計画対象者判定部32は、作業者指定情報取得部として機能する。
【0018】
優先度判定部33は、計画対象日判定部31が抽出した候補日及び計画対象者判定部32が抽出した候補者との組み合わせ(複数)の各々に対して、上記配布作業を割り当てる優先度を設定する。優先度判定部33は、所在地情報44に基づいて、配布作業の対象ビルと既存作業計画において保守点検を行う昇降機が設置されるビルとの距離を比較することにより割付の優先度を設定する。
【0019】
また、計画再作成部34は、優先度判定部33が設定した優先度に基づき、配布作業の計画を追加して作業計画を再作成する。ここで、計画再作成部34は、候補日、即ち作業実施日と候補者、即ち作業実施者の複数の組み合わせから優先度の高い組み合わせを選択すると共に、作業計画格納部2から作業計画を読み出す。そして、計画再作成部34は、上記配布作業を、上記選択された組み合わせに係る実施日における実施者の作業として、読み出された作業計画に追加することにより作業計画を再作成する。さらに、計画再作成部34は、作業計画格納部2に格納された作業計画を、再作成された作業計画に更新する。
【0020】
図2は、図1に示した実施形態の動作を示すフロー図である。以下、本図を用いて、実施形態の動作について説明する。図2においては、報告書作成管理システム1において、ある保守対象の顧客の作業現場である“ビルX”に対する保守報告書が作成され、作業計画格納部2に格納された既存の作業計画21に対して、保守管理装置3が“ビルX”への報告書の配布作業を追加して作業計画を再作成する場合を例として説明する。
【0021】
上述したように、報告書作成管理システム1は、保守対象となる昇降機の保守に関する報告書を自動で作成するシステムであり、予め顧客との契約により保守会社が報告書を定期的に発行し提出することが決められている。報告書作成管理システム1は、報告書の作成に必要なデータの集計が完了した段階で“ビルX”に対する報告書を作成し(S1)、作成後に保守管理装置3に対して、“ビルX”への報告書の配布作業の計画を既存の作業計画に追加させるための計画追加信号を出力する(S2)。この計画追加信号には、報告書の配布先である“ビルX”を示す情報が含まれる。
【0022】
本実施形態において、報告書管理システム1は、報告書作成後、上記計画追加信号として、保守管理装置3に対して“ビルX”への報告書作成が終了したことを示す信号を出力する。保守管理装置3は、この信号を受信すると、作業計画の再作成を開始する。
【0023】
作業計画格納部2には保守対象となる昇降機に対する保守計画である作業計画21が格納されている。ここで、作業計画21とは、ある地域における保守対象となる昇降機に対する保守計画であり、どの保守員が、いつ、どの作業現場の昇降機を保守するかを示した計画表である。図3は、作業計画可能部2に格納されている作業計画21の一例を示す図である。
【0024】
図3に示す計画表において、縦軸は保守員の一覧を示し、横軸は計画対象の日を示す。例えば、作業計画上で保守員Aは8/1に“ビルA、“ビルB”及び“ビルC”に設置された昇降機の保守点検を行う計画であることを示す。同様に、ある1日にどの昇降機の保守を行うかが作業現場単位で計画され、作業計画全体としては、ある地域を担当する保守員全員に対する8/1〜8/31までの1ヶ月間の作業計画が事前に作成されている。
【0025】
ここで、ビルXに対する報告書が作成された後に、顧客に配布するまでの流れを説明する。図4に作業計画の内容の一例を示す。例えば、報告書作成管理システム1において“ビルX”に対する報告書が8/5に作成されるとする。報告書は作成時点以降に配布可能となり、配布作業の計画は報告書作成当日を含む作成時点以降、つまり8/5以降に計画することになる。また8/1〜8/31までの1ヶ月間の作業計画は8/1以前に作成済みであり、配布作業の計画は予め作成されている作業計画21に配布作業を追加する形で作成する。
【0026】
配布作業の計画日については、事前に顧客との契約の中で報告書の提出締切日が決められている場合がある。例えば、ビルXの提出締切日が毎月10日であるとすると、配布作業は8/5〜8/10の間に計画される。また顧客により報告書を管理人などに手渡しする場合が有り、かつ管理人が不在の日が予め決まっている場合がある。例えばビルXにおいては偶数日に管理人が不在であるとすると、配布作業は相手が不在の日を避け奇数日に計画される。
【0027】
これらの条件により、ビルXの配布作業計画日の候補は8/5,8/7,8/9である。このように配布作業の計画日の決定にあたっては、提出締切日や、顧客への配布可能日時などの日程上の制約が有る。配布作業の日程上の制約については、顧客情報格納部4において、提出期限情報41として顧客毎の報告書提出締切日が、配布日指定情報42として顧客毎の配布可能日が格納されている。
【0028】
保守管理装置3の計画対象日判定部31は、報告書作成管理システム1より“ビルX”への報告書の配布作業の計画追加を指示されると、顧客情報格納部4から提出期限情報41と配布日指定情報42、すなわち“ビルX”への報告書配布作業の日程上の制約に関する情報を取得し、配布作業の計画日の候補を抽出する(S3)。即ち、計画対象日判定部31が、追加作業情報取得部、タイミング制約情報取得部及び実行タイミング候補決定部として機能する。候補日の抽出にあたっては、上述した8/5,8/7及び8/9のように、当日から提出期限日までの期間で、配布日指定の条件に合う日が候補日となる。
【0029】
ここで、配布作業を実施する作業者の決定については、通常は簡易作業である配布作業に特定の技術や資格等は必要としないため、ある地域を担当する保守員全てが作業実施可能である。しかし配布作業には顧客に対する説明を含むため、顧客要望により保守員が指定される場合があり、そのような場合には配布作業を担当する保守員が制約される。例えば、ある地域を担当する保守員が、保守員A,B,C,D,Eの5人であり、顧客より保守員A,B,Cの指定が有る場合には、配布作業はこの3人のいずれかに対して計画される。配布作業を行う作業者の制約については、顧客情報格納部4において、配布者指定情報43として顧客毎の配布作業可能な作業者情報が格納されている。
【0030】
保守管理装置3の計画対象者判定部32は、報告書作成管理システム1より配布作業の計画を指示された後、配布者指定情報43に基づいて配布作業を実施する保守員の候補者を抽出する(S4)。なお、本実施形態においては、保守員の制約がない場合、配布者指定情報43として、ある地域を担当する保守員全員が設定される。従って、計画対象者判定部32は、これら保守員全員を候補者として抽出する。
【0031】
S1〜S4の処理が完了すると、保守管理装置3の優先度判定部33が、計画対象日判定部31によって算出された配布作業の計画日の候補と、計画対象者判定部32によって算出された保守員の候補の中から、配布作業を割り当てる優先度を算出する(S5)。図5は予め作成されていた作業計画、即ち既存の作業計画において、計画日の候補日(8/5,8/7)における保守員候補者(A,B)毎の作業現場、すなわち候補日と候補者の各組み合わせに対応する作業現場と、配布作業の対象現場である“ビルX”の地図上での位置を模式的に示した図である。
【0032】
例えば、8/5の保守員Aは“ビルA”,“ビルB”及び“ビルC”での保守点検作業が計画され、その地理的な位置関係は図の通り夫々“L1”,“L2”及び“L3”であることを示す。優先度判定部33は、顧客情報格納部4の所在地情報44に基づき、上述した候補日と保守員候補者の全作業現場“ビルA”,“ビルB”…の位置情報と、配布作業を計画する“ビルX”との距離“L1”,“L2”…(図5では、L1〜L4,L10を図示し、他は省略)を、図5に示すように夫々計算する。そして、優先度判定部33は、距離の小さい順に作業現場の優先度を設定し、これらの作業現場の優先度に基づいて、最終的な割り当て対象である計画日と保守員との各組み合わせに対して優先度を設定する。
【0033】
即ち、優先度判定部33は、作業計画格納部2に格納されている作業計画21のうち、S3において抽出された候補日における作業であって、S4において抽出された作業者による作業の計画を抽出する既存計画抽出部として機能する。
【0034】
図6は、優先度判定部33で算出された計画日及び保守員の候補の組み合わせの優先度の一例を示す図である。上述したように図5に示した“ビルA”〜“ビルL”の各々と“ビルX”との距離が算出され、算出結果に基づいて、距離が小さな順に作業現場優先度1,2,…,12といった数値(数値が小さいほど優先度が高いことを示す)が各ビルについて算出される。
【0035】
さらに、優先度判定部33は、算出された作業現場優先度に基づいて、計画日と保守員の組み合わせの優先度(数値が小さいほど優先度が高いことを示す)を算出する。図6においては、作業場優先度1である“ビルD”を含む計画日8/5および“保守員B”という組み合わせについて優先度1が算出される。同様にして、より高い作業現場優先度を有するビルを含む計画日及び保守員の組み合わせについてより高い優先度が算出され、結果として計画日及び保守員の組み合わせ(8/5,B),(8/5,A),(8/7,B),(8/7,A)の順に高い優先度1,2,3,4が算出される。
【0036】
なお、本実施形態においては、ビル間の距離に基づいて作業現場優先度を算出する場合を例としている。しかしながら、その目的は、保守員がビル間を移動するために要する時間に基づいて作業現場優先度を算出することにある。報告書の配布先に短時間で到達することができれば、それだけ作業を効率的に達成することができるからである。即ち、優先度判定部33は、建造物間の移動に要する時間に関する情報に基づいて新たな作業を担当させる作業者を決定する追加作業担当者決定部として機能する。
【0037】
従って、作業現場優先度の算出にあたり、優先度判定部33は、保守員がビル間を移動するために要する時間に基づいて作業現場優先度を算出しても良い。この場合、作業計画のデータに保守員の移動手段を含めておけば、上述したビル間の距離と移動手段データに基づいて、優先度判定部33において移動時間を推定できる。また、各ビル間の移動に要する時間の情報を、所在地情報44に予め記憶しておいても良い。
【0038】
保守管理装置3の計画再作成部34は、優先度判定部33で算出された計画日と保守員の組み合わせの優先度の高い順に、“ビルX”の配布作業の追加可否を判定する。その判定の結果、作業追加が可能であれば、計画再作成部34は、作業を追加して作業計画を再作成し、再作成した作業計画により作業計画格納部2の作業計画21を更新する(S6)。即ち、計画再作成部34が、計画更新部として機能する。以上により、報告書配布作業の追加が完了する。
【0039】
なお、配布作業の追加可否の判定は、例えば、計画日および保守員の候補の組み合わせに対応する当初予定の保守点検作業に要する総時間に関する情報を作業計画の一部として作業計画格納部2に格納しておき、この情報に基づいて計画再作成部が判定することができる。具体的には、保守点検作業に要する総時間が予め定められた一定時間内である場合や、総時間と上述した移動時間との和が一定時間内である場合に追加可と判定される。
【0040】
図7(a)〜(b)は、図6における計画日及び保守員の優先度の算出結果に基づいて保守管理装置3の計画再作成部34によって再作成・更新された作業計画の一例を示す図であり、図7(a)は、再作成される前の当初の作業計画を示す。図7(b)は、保守員Bが配布作業に対応可能な場合であり、図6において優先度1である計画日8/5および保守員Bの組み合わせに基づいて、8/5の保守員Bの作業計画に図中“ビルX(配布)”と示されるビルXへの報告書配布作業が追加される。
【0041】
図7(c)は、8/5の配布作業に保守員Bが対応不可能であるが、保守員Aは対応可能な場合である。この場合は、図6において、優先度1である計画日8/5および保守員Bの組み合わせの次に優先度が高い優先度2である計画日8/5及び保守員Aの組み合わせが選択され、8/5の保守員Aの作業計画にビルXへの報告書配布作業が追加される。
【0042】
上述した実施形態1によれば、報告書配布を実施する候補日と作業を実施する保守員の候補者との組み合わせに対して、作業効率が大きく損なわれないように優先度が設定され、設定された優先度に基づいて作業計画が再作成される。このため、当初の保守点検作業の効率を損なうことなく、配布作業を割り当てることができる。また、保守員は通常の保守点検作業をする中で少ない移動距離で報告書等の配布作業を実施することができ、新規に発生した配布作業に対して、作業計画全体として移動時間を短縮し効率よく保守作業を行うことが出来る。
【0043】
図1に示す保守管理装置3に含まれる、計画対象日判定部31、計画対象者判定部32、優先度判定部33及び計画作成部34は、保守管理装置3を構成する情報処理装置において、ソフトウェァとして実現される。ここで、報告書作成管理システム1及び保守管理装置3等の情報処理装置を構成するハードウェアについて、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係る情報処理装置は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成を有する。
【0044】
即ち、本実施形態に係る情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
【0045】
CPU11は演算手段であり、情報処理装置全体の動作を制御する。RAM12は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU11が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM13は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
【0046】
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザが情報処理装置の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが制御装置に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0047】
このようなハードウェア構成において、ROM13やHDD14若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM13に読み出され、CPU11がRAM13に読み出されたプログラムに従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る計画対象日判定部31、計画対象者判定部32、優先度判定部33及び計画再作成部34のような機能が実現される。
【0048】
また、上記実施形態において、提出期限情報41、配布日指定情報42及び配布者指定情報43は、顧客情報格納部4に記憶されており、保守管理装置3の各部は、これらの情報を顧客情報格納部4から取得する場合を例として説明した。これに限らず、報告書作成管理システム1が保守管理装置3に入力する計画追加信号に、上記各情報が含まれるようにしても良い。特に、提出期限情報41は、作成された報告書の提出期限を示す情報であるため、夫々の報告書毎に設定されることが考えられるため、この点においても、計画追加信号に提出期限情報41を含めることが有意義である。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態1においては、既存の作業計画に追加するべき簡易な作業の例として、顧客への報告書の配布作業を例として説明した。この他、考えられ得る簡易作業としては、顧客のビルに掲出すべき掲示物の貼り付け作業等が考えられる。掲示物としては、顧客に対して次回のエレベータの点検日を知らせる目的で掲示する貼紙等が考えられる。
【0050】
この場合、昇降機保守管理システムの構成は実施形態1と同様であるが、実施形態1と異なる点は次のとおりである。まず、報告書作成管理システム1に代わり、貼紙の作成を管理する管理手段が、貼紙が作成されたタイミングで、保守管理装置3に対して掲示物貼り付け作業を追加した作業計画の再作成を指示する計画追加信号を入力する。
【0051】
また、顧客情報格納部4には、提出期限情報41、配布日指定情報42、配布者指定情報43に対応して、それぞれ、掲示物貼り付けの実施期限に関する貼り付け期限情報と、顧客による、掲示物貼り付け実施日の指定に関する貼り付け日指定情報と、顧客による、掲示物貼り付けを実施する保守員の指定に関する貼り付け者指定情報43が格納される。尚、掲示物の貼り付けにおいて人的制限があることは考えづらいため、図1の配布者指定情報43に相当する構成は省略することができる。
【0052】
本実施形態においても、保守管理装置は、作業計画再作成の指示を受けると、格納部から情報を読み出して実施形態1と同様の手順で処理して、作業計画21に配布作業が追加され計画が再作成され更新される。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 報告書作成管理システム、
2 作業計画格納部、
3 保守管理装置、
4 顧客情報格納部、
11 CPU、
12 RAM、
13 ROM、
14 HDD、
15 I/F、
16 LCD、
17 操作部、
18 バス、
21 作業計画、
31 計画対象日判定部、
32 計画対象者判定部、
33 優先度判定部、
34 計画再作成部、
41 提出期限情報、
42 配布日指定情報、
43 配布者指定情報、
44 所在地情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理装置であって、
前記複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報を取得する追加作業情報取得部と、
前記新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を取得するタイミング制約情報取得部と、
前記取得された追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、前記新たな作業を実行するべきタイミングの候補である実行タイミング候補を決定する実行タイミング候補決定部と、
前記複数の建造物に対して実行するべき作業を担当する作業者の情報及び実行するべきタイミング情報を含む既存の計画のうち、前記決定された実行タイミング候補に対応するタイミングにおいて実行される作業の計画を抽出する既存計画抽出部と、
前記抽出された既存の計画における作業の対象である建造物と、前記新たな作業の対象である少なくとも一つの建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、前記新たな作業を担当させる前記作業者を決定する追加作業担当者決定部と、
前記決定された作業者が実行するべき作業として前記新たな作業の計画を追加することにより前記既存の計画を更新する計画更新部とを含むことを特徴とする作業計画管理装置。
【請求項2】
前記タイミング制約情報は、前記新たな作業の期限に関する情報を含み、
前記実行タイミング候補決定部は、前記期限内に前記新たな作業が実行されるように前記実行タイミング候補を決定することを特徴とする請求項1に記載の作業計画管理装置。
【請求項3】
前記前記タイミング制約情報は、前記新たな作業を実行するべきタイミングを指定する情報を含み、
前記実行タイミング候補決定部は、前記指定されたタイミングにおいて前記新たな作業が実行されるように前記実行タイミング候補を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の作業計画管理装置。
【請求項4】
前記新たな作業を実行するべき作業者を指定する作業者指定情報を取得する作業者指定情報取得部を更に含み、
前記既存計画抽出部は、前記既存の計画のうち、前記取得された作業者指定情報において指定されている作業者によって実行される作業の計画を抽出することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の作業計画管理装置。
【請求項5】
前記追加作業担当者決定部は、前記抽出された既存の計画における作業の対象である建造物及び前記新たな作業の対象である少なくとも一つの建造物の所在地に関する情報を取得し、前記所在地の情報に基づいて前記建造物間の距離を算出することにより前記建造物間の移動に要する時間に関する情報を求めることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の作業計画管理装置。
【請求項6】
前記既存の計画は、前記作業を担当する作業者の移動手段に関する情報を含み、
前記追加作業担当者決定部は、前記算出した建造物間の距離及び前記移動手段の情報に基づいて前記建造物間の移動に要する時間を求めることを特徴とする請求項5に記載の作業計画管理装置。
【請求項7】
前記複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画は、前記建造物に設置された昇降機の保守点検の作業であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の作業計画管理装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業は、前記建造物を使用している顧客への文書の配布及び前記建造物に対する掲示物の掲示のうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の作業計画管理装置。
【請求項9】
複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理方法であって、
前記複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報及び前記新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を情報記憶部から読み出し、
前記読み出された追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、前記新たな作業を実行するべきタイミングの候補である実行タイミング候補を決定し、
前記複数の建造物に対して実行するべき作業を担当する作業者の情報及び実行するべきタイミング情報を含む既存の計画のうち、前記決定された実行タイミング候補に対応するタイミングにおいて実行される作業の計画を情報記憶部から抽出し、
前記抽出された既存の計画における作業の対象である建造物と、前記新たな作業の対象である少なくとも一つの建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、前記新たな作業を担当させる前記作業者を決定し、
前記決定された作業者が実行するべき作業として前記新たな作業の計画を追加することにより情報記憶部に記憶されている前記既存の計画を更新することを特徴とする作業計画管理方法。
【請求項10】
複数の建造物に対して夫々実行するべき作業の計画を管理する作業計画管理装置の制御プログラムであって、
前記複数の建造物のうち少なくとも一つの建造物に対して実行するべき新たな作業の情報である追加作業情報を取得するステップと、
前記新たな作業の実行タイミングの制約に関する情報であるタイミング制約情報を取得するステップと、
前記取得された追加作業情報及びタイミング制約情報に基づき、前記新たな作業を実行するべきタイミングの候補である実行タイミング候補を決定するステップと、
前記複数の建造物に対して実行するべき作業を担当する作業者の情報及び実行するべきタイミング情報を含む既存の計画のうち、前記決定された実行タイミング候補に対応するタイミングにおいて実行される作業の計画を抽出するステップと、
前記抽出された既存の計画における作業の対象である建造物と、前記新たな作業の対象である少なくとも一つの建造物との間の移動に要する時間に関する情報に基づき、前記新たな作業を担当させる前記作業者を決定するステップと、
前記決定された作業者が実行するべき作業として前記新たな作業の計画を追加することにより前記既存の計画を更新するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする作業計画管理装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170705(P2011−170705A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35125(P2010−35125)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)