説明

作業車のボンネット開閉構造

【課題】ボンネット開閉用のダンパを合理的に配備して、ボンネット越しに見る搭乗運転部からの視界を広くして搭乗運転部からの視認性の向上を図れるようにする。
【解決手段】エンジン7及びエンジン7の周辺機器Aを配備するエンジンルーム2を形成するボンネット3を左右向きの支軸を支点にして上下方向に開閉揺動可能に装備し、ボンネット開閉用のダンパ45を備えた作業車のボンネット開閉構造において、ダンパ45を、ボンネット3を閉じた状態ではエンジン7及び周辺機器Aとボンネット3のサイドパネル26との間に形成される空間2Aに収まるように、サイドパネル26の内面の近くにサイドパネル26の内面に沿う状態で車体側の固定部Bとボンネット3とにわたって架設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及び前記エンジンの周辺機器を配備するエンジンルームを形成するボンネットを左右向きの支軸を支点にして上下方向に開閉揺動可能に装備し、ボンネット開閉用のダンパを備えた作業車のボンネット開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車のボンネット開閉構造としては、エンジンの上端とボンネットのアッパーパネル(天板部)との間にボンネット開閉用のダンパ(開放支持具)を配備するように構成したものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−224307号公報(段落番号0019、図1)
【特許文献2】特開2010−247670号公報(段落番号0013、0017、図1、3、4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、エンジンルームにおけるエンジンの上端とボンネットのアッパーパネルとの間にボンネット開閉用のダンパを配備するための空間を確保する必要があることから、その分、ボンネットの高さが高くなり、ボンネット越しに見る搭乗運転部からの視界が狭くなる不都合を招き易くなっていた。
【0005】
特に、エンジンの上方にエンジンの周辺機器の一つであるマフラを配備する場合には、エンジンルームにおけるエンジンの上端とボンネットのアッパーパネルとの間にマフラとボンネット開閉用のダンパとを配備するための空間を確保する必要があり、しかも、ディーゼルエンジンを搭載する作業車においては、近年の排ガス規制から、マフラとして排気ガスに含まれる微粒子を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を備えることで大型化したDPFマフラを採用する必要があることから、上記の不都合が表れ易くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、ボンネット開閉用のダンパを合理的に配備して、ボンネット越しに見る搭乗運転部からの視界を広くして搭乗運転部からの視認性の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、エンジン及び前記エンジンの周辺機器を配備するエンジンルームを形成するボンネットを左右向きの支軸を支点にして上下方向に開閉揺動可能に装備し、ボンネット開閉用のダンパを備えた作業車のボンネット開閉構造において、
前記ダンパを、前記ボンネットを閉じた状態では前記エンジン及び前記周辺機器と前記ボンネットのサイドパネルとの間に形成される空間に収まるように、前記サイドパネルの内面の近くに前記サイドパネルの内面に沿う状態で車体側の固定部と前記ボンネットとにわたって架設してある。
【0008】
第1の発明によると、エンジンの上端とボンネットのアッパーパネルとの間にボンネット開閉用のダンパを配備するための空間を確保する必要がないことから、その分、ボンネットの高さを低く抑えることができる。
【0009】
従って、ボンネット越しに見る搭乗運転部からの視界を広くすることができ、搭乗運転部からの視認性を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記ダンパを左右一対備えて、前記ボンネットを閉じた状態では前記左右のダンパが前記エンジン及び前記周辺機器と前記サイドパネルとの間に形成される左右の空間の対応する側の空間に収まるように前記左右のダンパを分散配備してある。
【0011】
第2の発明によると、左右一対のダンパでボンネットをバランス良く支持することができ、これにより、ダンパによるボンネット開閉操作のアシストを安定性良く良好に行わせることができる。又、単一のダンパを備える場合に比較して、ボンネットに作用するダンパのアシスト力を低下させることなくダンパのシリンダ径を小さくすることができ、これにより、エンジン及びエンジン周辺機器とボンネットのサイドパネルとの間に形成される左右の空間が狭い場合であっても、ボンネットを閉じた場合にそれらの空間に各ダンパを無理なく収めることができる。
【0012】
従って、ダンパによるボンネット開閉操作のアシストを安定性良く良好に行わせるようにしながら、ボンネットを閉じた状態でのダンパの収納性を向上させることができる。
【0013】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、
車体フレームに連結するボンネット用の支持フレームに前記固定部を備えるとともに前記支持フレームに前記支軸を介して前記ボンネットを開閉揺動可能に連結し、かつ、前記固定部と前記ボンネットとにわたって前記ダンパを架設して、前記支持フレームと前記ボンネットと前記ダンパとをユニット化してある。
【0014】
第3の発明によると、支持フレームに対するボンネット及びダンパの組み付けを、広い空間で組み付け作業の行い易い位置関係や体勢を得ながら無理なく迅速に行うことができる。そして、この組み付けでユニット化した支持フレームを車体フレームに連結することで、車体フレームに対する支持フレームとボンネットとダンパの組み付けを完了することができる。
【0015】
従って、ダンパをエンジン及びエンジン周辺機器とボンネットのサイドパネルとの間の狭い空間に配備する構成でありながらも、支持フレーム、ボンネット、及びダンパの車体フレームに対する組み付け性を向上させることができる。
【0016】
第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、
車体フレームに装備するボンネット用の支持フレームを、前記車体フレームに連結する車体側フレーム部と前記ボンネットを連結するボンネット側フレーム部とに分離可能な二分割構造に構成し、
前記ボンネット側フレーム部に前記固定部を備えるとともに前記ボンネット側フレーム部に前記支軸を介して前記ボンネットを開閉揺動可能に連結し、かつ、前記固定部と前記ボンネットとにわたって前記ダンパを架設して、前記ボンネット側フレーム部と前記ボンネットと前記ダンパとをユニット化してある。
【0017】
第4の発明によると、ボンネット側フレーム部に対するボンネット及びダンパの組み付けを、広い空間で組み付け作業の行い易い位置関係や体勢を得ながら無理なく迅速に行うことができる。そして、この組み付けでユニット化したボンネット側フレーム部を、車体フレームに組み付けた車体側フレーム部に連結することで、車体フレームに対する支持フレームとボンネットとダンパの組み付けを完了することができる。
【0018】
従って、ダンパをエンジン及びエンジン周辺機器とボンネットのサイドパネルとの間の狭い空間に配備する構成でありながらも、支持フレーム、ボンネット、及びダンパの車体フレームに対する組み付け性を向上させることができる。しかも、ボンネット用の支持フレームを二分割構造に構成し、その一方のボンネット側フレーム部にボンネット及びダンパを組み付けてユニット化することから、ボンネット用の支持フレームを二分割構造に構成しない場合に比較して、ユニット化して後付けするボンネット側部分の小型軽量化を図ることができ、組み付け性を更に向上させることができる。
【0019】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記エンジンの上方に前記周辺機器としてのマフラを前記エンジンの左右幅内に収まるように配備し、
前記ダンパを前記マフラよりも下側の位置に配備してある。
【0020】
第5の発明によると、ダンパをマフラの横側方に配備する場合に比較して、ボンネットの左右幅を大きくすることなく、ダンパをマフラからの放熱の影響を受け難いマフラから離れた位置に配備することができ、これにより、マフラからの放熱の影響を受けてボンネットに作用するダンパのアシスト力が変化してボンネットの開閉操作性にバラツキが生じる虞を防止することができる。
【0021】
従って、ボンネットの大型化を招くことなく安定したボンネットの開閉操作性を確保することができる。
【0022】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか一つの発明において、
前記ボンネットを閉じた状態では、前記ダンパの前記ボンネットとの連結点が前記固定部との連結点よりも下側に位置するように構成してある。
【0023】
第6の発明によると、ボンネットを閉じた状態では、ダンパがボンネットを閉じ方向に揺動付勢することから、ボンネットを閉じ位置に保持し易くなる。又、このようにボンネットを閉じ位置に保持するダンパの作用に抗してボンネットを上方に開き操作することで、ダンパのボンネットとの連結点が固定部との連結点よりも上側に変位すると、ダンパがボンネットを開き方向に揺動付勢するようになり、これにより、ボンネットの開き操作を軽い操作で行うことができるとともに、ボンネットの閉じ操作の際には適度な操作抵抗を付与することができる。
【0024】
従って、ボンネットの開閉操作を良好に行えるようにしながらボンネットの閉じ位置での保持性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態で例示するキャビン仕様のトラクタの全体左側面図である。
【図2】第1実施形態でのボンネット開閉構造の構成を示す要部の左側面図である。
【図3】第1実施形態でのボンネット開閉構造の構成を示す要部の平面図である。
【図4】第1実施形態でのボンネット開閉構造の構成を示す要部の背面図である。
【図5】第1実施形態でのボンネット開閉構造の構成を示す要部の一部分解左側面図である。
【図6】第1実施形態でのボンネット開閉構造の分解斜視図である。
【図7】第2実施形態でのボンネット開閉構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
【0027】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車のボンネット開閉構造を、作業車の一例であるキャビン仕様のトラクタに適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1〜3に示すように、本発明に係るトラクタは、車体フレーム1の前部にエンジンルーム2を形成するボンネット3などを備えるとともに左右一対の前輪4を操舵可能かつ駆動可能に配備し、車体フレーム1の後部に搭乗運転部5などを備えるとともに左右一対の後輪6を駆動可能かつ制動可能に配備して構成してある。
【0029】
車体フレーム1は、水冷式のエンジン7の後部に中継フレームを兼ねるクラッチハウジング8を連結し、クラッチハウジング8の後部に後部フレームを兼ねるトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9をクラッチハウジング8から車体後方に向けて延出する状態に連結し、エンジン7に前部フレーム10をエンジン7から車体前方に向けて延出する状態に連結して構成してある。
【0030】
エンジン7には、コモンレール式のディーゼルエンジンを採用してある。T/Mケース9の後上部には、トラクタの後部に連結するロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置(図示せず)の昇降操作を可能にする左右一対のリフトアーム11を配備してある。T/Mケース9の後部には、左右のリフトアーム11を揺動駆動する油圧式のリフトシリンダ(図示せず)を内蔵してある。トラクタの後端部からは、ロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結する場合に作業装置への伝動を可能にする作業動力取り出し用のPTO軸12を後向きに突設してある。
【0031】
図示は省略するが、エンジン7からの動力は、クラッチハウジング8に内蔵した主クラッチなどを介してT/Mケース9の内部に伝達し、T/Mケース9の内部において走行用の動力と作業用の動力とに分岐する。そして、走行用の動力を、T/Mケース9に内蔵した主変速装置や副変速装置などを介して左右の前輪4及び後輪6に伝達する。又、作業用の動力を、T/Mケース9に内蔵したPTOクラッチやPTO変速装置を介してPTO軸12に伝達する。
【0032】
図1に示すように、搭乗運転部5は、前輪操舵用のステアリングホイール13や運転座席14などを備え、搭乗空間を形成するキャビン15を装備して構成してある。キャビン15の天井部15Aには空調用の室内ユニット(図示せず)を内蔵してある。
【0033】
図1〜5に示すように、エンジンルーム2は左右の前輪4の間に形成してあり、エンジンルーム2には、エンジン7やその周辺機器Aである冷却ファン16、ラジエータ17、インタークーラ18、オイルクーラ19、エアクリーナ20、及びマフラ21、などとともに、空調用のコンデンサ22及びバッテリ23などを配備してある。ラジエータ17には、ラジエータ17とボンネット3との隙間からの通気を遮断する仕切板24を装備してある。そして、エンジンルーム2におけるラジエータ17よりも前側の領域に、インタークーラ18、オイルクーラ19、エアクリーナ20、空調用のコンデンサ22、及びバッテリ23などを配備してある。又、エンジンルーム2におけるラジエータ17よりも後側の領域に、エンジン7、冷却ファン16、及びマフラ21を配備してある。
【0034】
マフラ21には、排気ガスに含まれる微粒子を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を備えることで大型化したDPFマフラ21を採用してある。そして、この大型のDPFマフラ21を、エンジン7の上方における左側の位置に、その長手方向が車体の前後方向に沿う姿勢又は略沿う姿勢で、エンジン7の上部側の左右幅内に位置する状態で配備してある。
【0035】
ボンネット3は、上部側ほど左右幅が狭くなる逆U字状の縦断面形状を有する板金製のアッパーパネル25と、板金製で左右一対のサイドパネル26とを、アッパーパネル25の左右の下端部から対応するサイドパネル26が垂下する状態に溶接して、左右の前輪4の間に収まる幅狭の左右幅を有するように形成してある。又、左右のサイドパネル26に、それらの前端部の下側部分にわたる状態に板金製のフロントパネル27をボルト連結してある。そして、それらのパネル25〜27が形成する前端の開口部に、メッシュ状のフロントグリル28、及び、左右一対のヘッドライト29などを備えたライトユニット30、などをボルト連結してある。
【0036】
ボンネット3の後端部には、アッパーパネル25の内面と左右のサイドパネル26の内面とにわたる逆U字状に形成した第1補強部材31を溶接してある。左右のサイドパネル26における前後中間部の後側内面部分には上下向きで短尺の第2補強部材32を溶接してあり、前後中間部の前側内面部分には上下向きで長尺の第3補強部材33を溶接してある。そして、第1補強部材31の上部を、クラッチハウジング8に立設した支持フレーム34に左右向きで左右一対の支軸35を介して相対揺動可能に連結してある。
【0037】
つまり、ボンネット3は、その後上端部を相対揺動可能に支持する左右向きの支軸35を支点にして、その全体が上下方向に開閉揺動するフルオープン構造に構成してある。
【0038】
図2及び図4〜6に示すように、支持フレーム34は、クラッチハウジング8にボルト連結する車体側フレーム部34Aに対してボンネット3を開閉揺動可能に支持するボンネット側フレーム部34Bを着脱可能にボルト連結した二分割構造に構成してある。車体側フレーム部34Aは、丸パイプ鋼材からなる左右一対の支柱部材36の上下中間部にL字形鋼材からなる左右向きの連結部材37の端部を溶接してH字状に形成してある。そして、各支柱部材36の下端部にはクラッチハウジング8に対するボルト連結用の第1連結板38を溶接してあり、各支柱部材36の上端部にはボンネット側フレーム部34Bに対するボルト連結用の第2連結板39を溶接してある。ボンネット側フレーム部34Bは、断面形状がC字状で第1補強部材31の内側に収まる逆U字状に形成した板金材からなる支持部材40を備え、この支持部材40の両端部に車体側フレーム部34Aに対するボルト連結用の連結板41を溶接してある。
【0039】
ボンネット側フレーム部34Bにおける支持部材40の上部には、対応する支軸35を左向きに延出する状態で装備した左右一対の支持板42を立設してある。一方、ボンネット3における第1補強部材31の上部には、対応する支軸35に対して右方から相対回転可能に外嵌する嵌合板43を垂下姿勢で溶接してある。そして、各嵌合板43を対応する支軸35に右方から外嵌した後、各支軸35の左端部にベータピン44を装着することで、ボンネット3をボンネット側フレーム部34Bに開閉揺動可能に連結した状態で保持することができる。
【0040】
ボンネット側フレーム部34Bの支持部材40における左右の起立部には、ボンネット開閉用としてエンジンルーム2に配備する左右一対のダンパ45のうちの対応するダンパ45の一端部とのピン連結を可能にする連結アーム46を各起立部の上下中間部から前向きに延出する状態で溶接してある。一方、ボンネット3における左右の第2補強部材32の上下中間部には、対応するダンパ45の他端部とのピン連結を可能にする連結金具47を溶接してある。
【0041】
上記の構成から、車体側フレーム部34Aにボンネット側フレーム部34Bをボルト連結する前の段階において、ボンネット3をボンネット側フレーム部34Bに左右の支軸35を介して相対揺動可能に連結し、かつ、ボンネット側フレーム部34Bの左右の連結アーム46とボンネット3の左右の連結金具47とにわたって左右のダンパ45を架設することができ、ボンネット3とボンネット側フレーム部34Bと左右のダンパ45とをユニット化することができる。そして、このようにユニット化した後にボンネット側フレーム部34Bをクラッチハウジング8に立設した車体側フレーム部34Aにボルト連結することで、クラッチハウジング8に立設した支持フレーム34にボンネット3と左右のダンパ45とを個々に組み付ける場合に比較して、それらの車体フレーム1に対する組み付けを簡単にすることができる。
【0042】
図1〜6に示すように、左右のダンパ45は、ボンネット3を閉じた状態では、エンジンルーム2におけるラジエータ17よりも後側の領域において、DPFマフラ21よりも下側の位置で、エンジン7の上部側とボンネット3の左右のサイドパネル26との間に形成される左右の空間2Aのうちの対応する側の空間2Aに、各ダンパ45の遊端側に位置するボンネット3の連結金具47との連結点aが、各ダンパ45の揺動支点となるボンネット側フレーム部34Bの連結アーム46との連結点bよりも少し下側に位置する前下がり姿勢で収まるように、対応するサイドパネル26の内面の近くにサイドパネル26の内面に沿う状態で車体側の固定部Bであるボンネット側フレーム部34Bの連結アーム46とボンネット3の連結金具47とにわたって架設してある。
【0043】
このように、ボンネット開閉用の左右のダンパ45をエンジン7の上部側とボンネット3の左右のサイドパネル26との間の空間2Aに配備することで、エンジン7の上端とボンネット3のアッパーパネル25との間の空間2Bを、DPFを備えることで大型化したDPFマフラ21を装備するための専用の空間として使用することができる。
【0044】
これにより、エンジン7の上端とボンネット3のアッパーパネル25との間の空間2Bに左右のダンパ45とDPFマフラ21とを上下に並べた状態で配備する場合に比較してボンネット3の高さを低く抑えることができ、その分、搭乗運転部5から前方側の視界を広くすることができ、前方に対する視認性を向上させることができる。
【0045】
しかも、左右のダンパ45がDPFマフラ21よりも下方に位置することで、左右のダンパ45をDPFマフラ21の左右に配備する場合に比較して、ボンネット3の左右幅を大きくすることなく、ダンパ45をDPFマフラ21からの放熱の影響を受け難いDPFマフラ21から離れた位置に配備することができ、これにより、DPFマフラ21からの放熱の影響を受けてボンネット3に作用するダンパ45のアシスト力が変化してボンネット3の開閉操作性にバラツキが生じる虞を防止することができる。その結果、ボンネット3の大型化を招くことなく安定したボンネット3の開閉操作性を確保することができる。
【0046】
そして、ボンネット3を閉じた状態では、左右のダンパ45が前下がり姿勢になってボンネット3を閉じ方向に揺動付勢することから、ボンネット3を閉じ位置に保持し易くなる。又、このようにボンネット3を閉じ位置に保持する左右のダンパ45の作用に抗してボンネット3を上方に開き操作することで、左右のダンパ45が前下がり姿勢から前上がり姿勢に切り換わると、左右のダンパ45がボンネット3を開き方向に揺動付勢するようになることから、ボンネット3の開き操作を軽い操作で行うことができる。
【0047】
図4に示すように、DPFマフラ21は、エンジン7の上部に連結装備したDPFマフラ用の支持フレーム48で強固に支持してある。そして、このDPFマフラ用の支持フレーム48の後部に、クラッチハウジング8に立設したボンネット用の支持フレーム34における車体側フレーム部34Aの連結部材37と、ボンネット側フレーム部34Bの支持部材40から前下方向きに延設した連結部材50とを連結してある。これにより、ボンネット用の支持フレーム34及びDPFマフラ用の支持フレーム48の強度を高めることができ、特に、ボンネット用の支持フレーム34の前後方向での振れを防止することができ、結果、ボンネット3及びDPFマフラ21を安定性良く支持することができる。
【0048】
図2〜4に示すように、支持フレーム34は、そのボンネット側フレーム部34Bがエンジン7の上方に配備したDPFマフラ21の後端部を跨ぐ車体前寄りの位置に立設してある。これにより、支持フレーム34の後方においてエンジンルーム2と搭乗運転部5とを仕切る状態でクラッチハウジング8に立設する隔壁49をも車体前寄りの位置に配備することができ、結果、搭乗運転部5の搭乗空間を広くすることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
【0050】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車のボンネット開閉構造を、作業車の一例であるロプス仕様のトラクタに適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
【0051】
尚、第2実施形態で例示するロプス仕様のトラクタは、第1実施形態で例示したキャビン仕様のトラクタとは、キャビン15に代えてロプスとしてのアーチ状の保護フレーム(図示せず)を車体後部に立設する以外は、ボンネット3の支持構造が異なるだけであることから、以下、ボンネット3の支持構造についてのみ図面に基づいて説明する。
【0052】
図7に示すように、ボンネット3を開閉揺動可能に支持する支持フレーム34において、車体側フレーム部34Aは、エンジンルーム2と搭乗運転部5とを仕切る状態にクラッチハウジング8に立設した隔壁49の上下中間部に左右一対のブラケット51をボルト連結して構成してある。左右のブラケット51には、ボンネット側フレーム部34Bを下方から受け止め支持する状態でボンネット側フレーム部34Bの連結板41にボルト連結する支持台52と、ボンネット側フレーム部34Bを後方から支持する状態にボンネット側フレーム部34Bの第2連結板54にボルト連結する連結部53とを、ブラケット51から前向きに延出する状態に装備してある。
【0053】
ボンネット側フレーム部34Bは、第1実施形態で例示した構成に加えて、支持部材40における左右の起立部に、対応するブラケット51の連結部53に対するボルト連結用の第2連結板54を各起立部の上下中間部から後向きに延出する状態で溶接してある。
【0054】
つまり、隔壁49を車体側フレーム部34Aに有効利用して構成の簡素化を図りながらも、支持フレーム34を、クラッチハウジング8に立設した車体側フレーム部34Aに対してボンネット3を開閉揺動可能に支持するボンネット側フレーム部34Bを着脱可能にボルト連結した二分割構造に構成してある。そして、この二分割構造によって、車体側フレーム部34Aにボンネット側フレーム部34Bをボルト連結する前の段階において、ボンネット3とボンネット側フレーム部34Bと左右のダンパ45とをユニット化することができ、それらの車体フレーム1に対する組み付けを簡単にすることができる。
【0055】
〔別実施形態〕
【0056】
〔1〕作業車としては、エンジン7としてコモンレール式以外のディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどを搭載したものであってもよい。
【0057】
〔2〕作業車としては、エンジン7の上方にエンジン7の周辺機器Aの一つであるラジエータ17などを配備したものであってもよい。又、エンジン7の上方にエンジン7の周辺機器Aを配備しないように構成したものであってもよい。
【0058】
〔3〕ボンネット3として、アッパーパネル25、左右のサイドパネル26、及び、フロントパネル27、などを一体形成した樹脂成形品に、フロントグリル28及びライトユニット30などを装備して構成したものであってもよい。
【0059】
〔4〕ボンネット3としては、その自重とダンパ45の作用で閉じ位置に保持するように構成したものであってもよく、又、ボンネット3を閉じ位置に保持するロック機構を備えたものであってもよい。
【0060】
〔5〕エンジン7の上方にマフラ21又はラジエータなどのエンジン7の周辺機器Aを配備したものにおいては、ボンネット開閉用のダンパ45を、ボンネット3を閉じた状態ではエンジン7の上方に配備した周辺機器Aとボンネット3のサイドパネル26との間に形成される空間2Aに収まるように、サイドパネル26の内面の近くにサイドパネル26の内面に沿う状態で車体側の固定部Bとボンネット3とにわたって架設するように構成してもよい。
【0061】
〔6〕ボンネット開閉用のダンパ45として単一のダンパ45を備えて、ボンネット3を閉じた状態では、エンジン7及び周辺機器Aとボンネット3の左右のサイドパネル26との間に形成される左右の空間2Aのうちのいずれか一方に収まるように構成してもよい。
【0062】
〔7〕ダンパ45の一端部をボンネット側フレーム部34B又は隔壁49などに直結して、ボンネット側フレーム部34B又は隔壁49などを車体側の固定部Bとするように構成してもよい。
【0063】
〔8〕ボンネット用の支持フレーム34を二分割構造に構成せずに、ボンネット用の支持フレーム34に固定部Bを備えるとともに左右向きの支軸35を介してボンネット3を開閉揺動可能に連結し、かつ、固定部Bとボンネット3とにわたってダンパ45を架設して、支持フレーム34とボンネット3とダンパ45とをユニット化するように構成してもよい。
【0064】
〔9〕マフラ21として、DPFを備えていない一般的なものを採用するようにしてもよい。
【0065】
〔10〕ボンネット3を閉じた状態では、ダンパ45のボンネット3との連結点aが固定部Bとの連結点bよりも上側に位置する、又は、それらの連結点a,bが同じ高さに位置するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る作業車のボンネット開閉構造は、トラクタ、ミッドマウントモーアやフロントモーアなどの草刈機、及び、ホイールローダなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車体フレーム
2 エンジンルーム
2A 空間
3 ボンネット
7 エンジン
23 マフラ
26 サイドパネル
34 支持フレーム
34A 車体側フレーム部
34B ボンネット側フレーム部
35 支軸
45 ダンパ
A 周辺機器
B 固定部
a 連結点
b 連結点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び前記エンジンの周辺機器を配備するエンジンルームを形成するボンネットを左右向きの支軸を支点にして上下方向に開閉揺動可能に装備し、ボンネット開閉用のダンパを備えた作業車のボンネット開閉構造において、
前記ダンパを、前記ボンネットを閉じた状態では前記エンジン及び前記周辺機器と前記ボンネットのサイドパネルとの間に形成される空間に収まるように、前記サイドパネルの内面の近くに前記サイドパネルの内面に沿う状態で車体側の固定部と前記ボンネットとにわたって架設してある作業車のボンネット開閉構造。
【請求項2】
前記ダンパを左右一対備えて、前記ボンネットを閉じた状態では前記左右のダンパが前記エンジン及び前記周辺機器と前記サイドパネルとの間に形成される左右の空間の対応する側の空間に収まるように前記左右のダンパを分散配備してある請求項1に記載の作業車のボンネット開閉構造。
【請求項3】
車体フレームに連結するボンネット用の支持フレームに前記固定部を備えるとともに前記支持フレームに前記支軸を介して前記ボンネットを開閉揺動可能に連結し、かつ、前記固定部と前記ボンネットとにわたって前記ダンパを架設して、前記支持フレームと前記ボンネットと前記ダンパとをユニット化してある請求項1又は2に記載の作業車のボンネット開閉構造。
【請求項4】
車体フレームに装備するボンネット用の支持フレームを、前記車体フレームに連結する車体側フレーム部と前記ボンネットを連結するボンネット側フレーム部とに分離可能な二分割構造に構成し、
前記ボンネット側フレーム部に前記固定部を備えるとともに前記ボンネット側フレーム部に前記支軸を介して前記ボンネットを開閉揺動可能に連結し、かつ、前記固定部と前記ボンネットとにわたって前記ダンパを架設して、前記ボンネット側フレーム部と前記ボンネットと前記ダンパとをユニット化してある請求項1又は2に記載の作業車のボンネット開閉構造。
【請求項5】
前記エンジンの上方に前記周辺機器としてのマフラを前記エンジンの左右幅内に収まるように配備し、
前記ダンパを前記マフラよりも下側の位置に配備してある請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車のボンネット開閉構造。
【請求項6】
前記ボンネットを閉じた状態では、前記ダンパの前記ボンネットとの連結点が前記固定部との連結点よりも下側に位置するように構成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の作業車のボンネット開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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