説明

作業車の安全装置

【課題】作業台に搭乗して作業を行う作業者が安全帯を装着しているか否かを地上の者が目視で確認でき、必要に応じて作業者に注意を促して、作業の安全性を高めることが可能な作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】安全装置は、作業台に設けられたフック係止金具に安全帯のフックが係止されているか否かを検出する安全帯係止検出器19(係止検出手段)と、点灯もしくは点滅することでフック係止金具に安全帯のフックが係止された旨を報知する、アウトリガジャッキの上部に取り付けられたマーカーランプ55と、安全帯係止検出器19により安全帯のフックがフック係止金具に係止されていることが検出された場合に、マーカーランプ55を点灯させて、フック係止金具に安全帯のフックが係止されている旨を報知するランプ作動制御部63(ランプ作動制御手段)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の安全装置に関し、詳しくは、作業中の作業者が作業台から誤って転落することを防止する安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、車体上にブーム等の昇降装置を介して作業台が設けられた構成となっており、作業台に搭乗した作業者は、作業台上から移動装置の作動操作を行って作業台を移動させることにより、所望の高所位置で作業を行うことができるようになっている。このような高所作業を行う際には、作業者はいわゆる安全帯と称される身体保持装置を用いて自分の体を作業台に係留する。この安全帯は、作業者の体に巻き付けられるベルトにロープを介してフックを取り付けた構成となっており、作業台側にはこのフックが係止されるフック係止金具が取り付けられている。作業台に搭乗した作業者は、先ず自分の体に取り付けた安全帯のフックを作業台のフック係止金具に係止させ、誤って作業台から転落することがないようにしている。
【0003】
しかしながら、安全帯のフックを作業台のフック係止金具に係止するのを忘れると、作業者が作業台から転落するおそれがある。そこで、作業者が転落するおそれを未然に防止する安全装置を有した高所作業車がすでに開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この安全装置では、作業台の側壁に地上から目視確認可能な位置に係止表示ランプが設けられており、安全帯のフックが作業台のフック係止金具に係止されている場合に、係止表示ランプを点灯させて、地上にいる工事責任者が安全帯のフックが係止されているか否かを目視確認できるようになっており、必要な場合には地上にいる工事責任者が作業台の作業者に対して安全帯のフックをフック係止金具に係止するように注意を喚起することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−97696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の安全装置では、作業台に係止表示ランプが設けられているため、作業者が安全帯のフックの係止行為を行ったうえで作業を行っているかどうかを、地上にいる者から目視で確認しづらいという問題があった。特に、高所作業の指揮を執る工事責任者が地上から係止表示ランプの点灯状態を確認できないと、係止していない状態で作業を行おうとしている作業台に搭乗している作業者に、作業の中止命令を適宜出すことができなかったり、作業者の安全帯のフックをフック係止金具に係止するように注意を喚起したりすることができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業台に搭乗して作業を行う作業者が安全帯を装着しているか否かを地上の者が目視で確認でき、必要に応じて作業者に注意を促して、作業の安全性を高めることが可能な作業車の安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る作業車の安全装置は、車体と、前記車体に昇降装置(例えば、本実施形態におけるブーム30)を介して取り付けられた作業台と、前記車体の前後左右に取り付けられ、側方及び下方に張り出して前記車体を支持するアウトリガジャッキと、前記作業台に搭乗した作業者の体に装着される安全帯と、前記安全帯の端部を着脱自在に係止するため前記作業台に設けられた安全帯係止手段(例えば、本実施形態におけるフック係止金具17)と、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部(例えば、本実施形態におけるフック93)が係止されているか否かを検出する係止検出手段(例えば、本実施形態における安全帯係止検出器19)と、点灯もしくは点滅することで前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止された旨を報知する、前記アウトリガジャッキの上部に取り付けられたマーカーランプと、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させるランプ作動制御手段(例えば、本実施形態におけるコントローラ60のランプ作動制御部63)とを備えて構成される。
【0008】
なお、本発明に係る作業車の安全装置は、前記車体に設けられたエンジンと、前記昇降装置や前記アウトリガジャッキを作動させるため、前記エンジンの駆動力を取り出し可能なパワーテイクオフ機構と、前記パワーテイクオフ機構をオン・オフ作動させるための操作をするパワーテイクオフ作動手段(例えば、本実施形態におけるPTO操作スイッチSW)と、前記パワーテイクオフ作動手段により前記パワーテイクオフ機構がオン作動されたか否かを検出するパワーテイクオフ検出手段(例えば、本実施形態におけるPTO検出器13)とを備え、前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、且つ、前記パワーテイクオフ検出手段により前記パワーテイクオフ機構のオン作動が検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記パワーテイクオフ機構がオン作動している旨を報知するように構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る作業車の安全装置は、前記アウトリガジャッキが前記車体の下方に張り出して、その下端部(例えば、本実施形態における接地板53)が地面に当接したか否かを検出する接地検出手段(例えば、本実施形態におけるジャッキ接地検出器56)を備え、前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、前記パワーテイクオフ検出手段により前記パワーテイクオフ機構のオン作動が検出され、さらに前記接地検出手段により前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接したことが検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記パワーテイクオフ機構がオン作動し、且つ、前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接した旨を報知するように構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る作業車の安全装置は、前記アウトリガジャッキが前記車体の下方に張り出して、その下端部が地面に当接したか否かを検出する接地検出手段を備え、前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、且つ、前記接地検出手段により前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接したことが検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接した旨を報知するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る作業車の安全装置は、作業時の安全性確保(追突防止等)のためにアウトリガジャッキの上部に取り付けられているマーカーランプの点灯もしくは点滅・消灯により、安全帯を装着しているか否かを報知するため、作業台に搭乗して作業を行う作業者が安全帯を装着している旨を、地上の者が容易に目視で確認することができ、必要に応じて作業者に注意を促して作業の安全性を高めることが可能である。また、本発明に係る作業車の安全装置では、安全帯を装着しているか否かを報知する際に、従来からあるアウトリガジャッキの張出の有無を報知するマーカーランプを利用するため、製品の低コスト化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明に係る安全装置を備えた高所作業車1である。本発明に係る安全装置の説明をする前に、先ずこの高所作業車1の構成について説明する。
【0013】
高所作業車1は、走行用車輪11を備えて運転キャビン12から走行運転が可能なトラック式の車体10と、車体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0014】
旋回台20は車体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。車体10の内部には旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。ブーム30は基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、内部に設けられた伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させてブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ(油圧シリンダ)24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0015】
先端ブーム30cの先端部には垂直ポスト保持金具32が取り付けられており、この垂直ポスト保持金具32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。この垂直ポスト33はブーム30内に設けられた図示しないレベリング装置により、ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0016】
作業台40は箱形状を有しており、外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ(油圧モータ)42が設けられており、この首振りモータ42を回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0017】
作業台40にはブーム30の旋回、起伏、伸縮操作を行うためのブーム操作レバー71及び作業台40の首振り操作を行うための作業台操作レバー72が設けられている。ブーム操作レバー71の操作により出力された操作信号は、車体10内に設置されたコントローラ60のブーム作動制御部61に入力される(図1参照)。コントローラ60のブーム作動制御部61はブーム操作レバー71の操作信号に基づいて起伏シリンダ24に対応する第1制御バルブV1、伸縮シリンダ31に対応する第2制御バルブV2及び旋回モータ23に対応する第3制御バルブV3の各スプール(図示せず)を電磁駆動する。また、作業台操作レバー72は首振りモータ42に対応する第4制御バルブV4のスプール(図示せず)を直接(機械的に)駆動する。
【0018】
車体10の前後左右4箇所には、側方及び下方に張り出して(伸長作動して)、車体10を安定的に支持する、アウトリガジャッキ50が設けられている。各アウトリガジャッキ50は、車体10の側方に下方に延びて設けられたアウタポスト51と、アウタポスト51内に下方に伸縮自在に収納されたインナポスト52と、インナポスト52の下端部に取り付けられた接地板53と、アウタポスト51及びインナポスト52に内蔵され、伸縮作動することでインナポスト52をアウタポスト51に対して伸縮させるジャッキシリンダ54とから構成されている。そして、コントローラ60のジャッキ作動制御部62により制御されるジャッキ制御バルブVJを介して油圧ポンプPからの圧油を供給することにより、ジャッキシリンダ54を伸長させ(アウトリガジャッキ50の張り出し作動)、或いはジャッキシリンダ54を収縮させる(アウトリガジャッキ50の格納作動)ことができる。なお、図1では記載を簡単にするためアウトリガジャッキ50及びジャッキ制御バルブVJが1つずつしか示されていないが、実際には車体10に設けられた前後左右計4つのアウトリガジャッキ50に対応して、ジャッキシリンダ54とジャッキ制御バルブVJがそれぞれ4つずつ存在する。
【0019】
各アウトリガジャッキ50の張り出し作動(ジャッキシリンダ54の伸長作動)操作及び格納作動(ジャッキシリンダ54の収縮作動)操作は、車体10の後方に設けられたジャッキ操作レバー73の操作により行う。ジャッキ操作レバー73を張り出し操作方向に傾動操作すると、コントローラ60のジャッキ作動制御部62はジャッキ制御バルブVJの電磁駆動を介して各ジャッキシリンダ54を伸長作動させ、ジャッキ操作レバー73を格納操作方向に傾動操作すると、ジャッキ作動制御部62はジャッキ制御バルブVJの電磁駆動を介して各ジャッキシリンダ54を収縮作動させる(図1参照)。
【0020】
油圧ポンプPは、車体10の前部に設けられたパワーテイクオフ機構PTO(図1参照)により取り出された走行用のエンジンEの駆動力を利用して回転駆動され、上記第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4及びジャッキ制御バルブVJ経由で起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23、首振りモータ42及びジャッキシリンダ54に圧油を供給する。その結果、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31及び旋回モータ23はブーム操作レバー71の操作により所望に作動させることができ、首振りモータ42は作業台操作レバー72の操作により所望に作動させることができ、ジャッキシリンダ54はジャッキ操作レバー73の操作により所望に作動させることができる。なお、パワーテイクオフ機構PTOをオン・オフ作動させる(油圧ポンプPを駆動させたり停止させたりする)ためのPTO操作スイッチSWは、運転キャビン12内の運転席に設けられている(図1参照)。
【0021】
作業台40に搭乗する作業者OPは、図3に示すように、安全帯90を身に付ける。安全帯90は、作業者OPが自身に取り付けるベルト91と、一端部がベルト91に取り付けられたロープ92と、ロープ92の他端部に取り付けられたフック93とから構成される。作業者OPは作業台40に搭乗したときには、必ずフック93を作業台40に設けられたフック係止金具17(の上部に形成されたフック係止孔17a)に着脱自在に係止する(図3参照)。ロープ92は、絶縁製材料で形成されており、作業台40側からの電気的導通を絶縁し、また、フック93がフック係止金具17に係止されることで作業者OPの体を作業台40に係留する機能を有している。このような安全帯90により、作業者OPは作業中に万一作業台40から転落した場合であっても地上にまで落ちることはなく、作業の安全性が確保されるようになっている。
【0022】
なお、フック係止金具17の上部に形成されたフック係止孔17aの一部を覆う非検出位置と孔17aを覆わずに完全に開口させる検出位置との間で、ピン18aまわりに揺動自在に、フック検出用作動片18が設けられており、ばね18bにより常時図4中に示す符号Rと反対方向の方向に付勢されている。このフック検出用作動片18は、後述の安全帯係止検出器19により、安全帯90の端部が作業台40のフック係止金具17に係止されているか否かを検出する際に用いられる。
【0023】
このような構成の高所作業車1を用いて高所作業を行う場合、作業者OPは、運転キャビン12内の運転席に設けられたPTO操作スイッチSWをオン操作した後に、車体10の後部に設けられたジャッキ操作レバー73を操作して各アウトリガジャッキ50の張り出し操作入力を行い、各アウトリガジャッキ50を接地状態まで張り出させて車体10を安定姿勢にした後、車体10上から作業台40に乗り込む。そして、安全帯90のフック93を作業台40のフック係止金具17の孔17aに係止させた後、ブーム操作レバー71及び作業台操作レバー72を操作して作業台40を移動させる。これにより作業台40上の作業者OPは、自らのレバー操作により作業台40を任意の位置に移動させて所望の高所作業を行うことができる。また、高所作業の終了後は、作業台40上の作業者OPは自らレバー操作を行ってブーム30を格納姿勢にし、安全帯90のフック93をフック係止金具17から離脱させてから作業台40より降りる。そして、この作業者OPが地上に降りたことを確認してからジャッキ操作レバー73を操作して各アウトリガジャッキ50を格納させ、PTO操作スイッチSWをオフ操作する。
【0024】
次に、上記高所作業車1に備えられた安全装置について説明する。高所作業車1に備えられた安全装置は、安全帯90(のフック93)と、フック係止金具17と、安全帯係止検出器19と、アウトリガジャッキ50の上部に取り付けられたマーカーランプ55と、コントローラ60のランプ作動制御部63とを備えている(図1参照)。
【0025】
安全帯係止検出器19は、フック係止金具17(のフック係止孔17a)に安全帯90の端部、すなわちフック93が係止されているか否かを検出するものであり、いわゆるリミットスイッチで構成されている(但し、これに限定されるものではなく、例えば光電センサや近接スイッチを用いてもよい)。安全帯係止検出器19は、フック93がフック係止孔17aに係止されると、フック検出用作動片18が図4中に示す符号Rの方向に回転して、これにより操作片19aが上方に押し上げられて、オン信号を出力するようになっている。また、フック係止孔17aにフック93が係止されていないときには、ばね18bに付勢されたフック検出用作動片18と接触していないので、オフ信号を出力するようになっている。このような安全帯係止検出器19が出力するオン・オフ信号は、コントローラ60のランプ作動制御部63に入力される(図1参照)。
【0026】
マーカーランプ55は、点灯もしくは点滅することでフック係止金具17に安全帯90の端部に取り付けられたフック93が係止された旨を報知するものであり、各アウトリガジャッキ50の上部に取り付けられている(図2参照)。
【0027】
コントローラ50のランプ作動制御部63は、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93がフック係止金具17に係止されていることが検出された場合、すなわち安全帯係止検出器19からオン信号が入力された場合には、マーカーランプ55を点灯もしくは点滅させて、フック係止金具17に安全帯90の端部に取り付けられたフック93が係止されている旨を報知する。また、ランプ作動制御部63に、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93がフック係止金具17に係止されていることが検出されなかった場合、すなわち安全係止検出器19からオフ信号が入力された場合には、マーカーランプ55を消灯させる。
【0028】
次に、本発明の作業車の安全装置の作用を説明する。最初に、図2に示すアウトリガジャッキ50とブーム30を車体10に格納した状態で、車両を作業現場の近くまで移動させた後に、作業者OPがアウトリガジャッキ50の張出操作を行って、その先端部(接地板53)を接地させ、車体10を安定支持させる。そして、図3に示す作業台40に作業者OPが搭乗し、ベルト91を作業者OPの胴体に巻き付けて装着し、ロープ92の一端をベルト91に連結し、他端に設けられたフック93を作業台40のフック係止金具17(の上部に形成されたフック係止孔17a)に係止する。また、作業台40に搭乗した作業者OPに作業の指示を与えるため、図示しない工事責任者が地上で待機する。
【0029】
作業者OPがフック93をフック係止金具17に係止すると、図4に示すフック検出用作動片18がばね18bの付勢力に抗して符号Rの方向に回転し、これにより操作片19aが上方に押し上げられ、安全帯係止検出器19がオン信号を出力する。安全帯係止検出器19により出力されたオン信号はコントローラ60のランプ作動制御部63に送られ、このオン信号に基づいてランプ作動制御部63がアウトリガジャッキ50の上部に設けられたマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させる。このため、地上にいる工事責任者はマーカーランプ55の点灯もしくは点滅を地上から目視確認して、安全帯90のフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されたことを確認することができる。さらに、マーカーランプ55はアウトリガジャッキ50の上部に設けられているため、地上にいる者からランプの点灯もしくは点滅・消灯の様子が非常に把握し易い。
【0030】
一方、作業台40に搭乗した作業者OPが、安全帯90のフック93を作業台40のフック係止金具17に係止し忘れた場合には、フック検出用作動片18はばね18bの付勢力により、フック係止孔17aの上部を覆う非検出位置に保持され、安全帯係止検出器19はオフの状態になる。すると、安全帯係止検出器19により出力されたオフ信号はランプ作動制御部63に送られ、このオフ信号に基づいてランプ作動制御部63がアウトリガジャッキ50の上部に設けられたマーカーランプ55を消灯させる。このため、地上にいる工事責任者がマーカーランプ55の消灯を地上から目視確認して、安全帯90のフック93がフック係止金具17に係止されていないことを認識する。その結果、工事責任者は作業台40に搭乗した作業者OPに、安全帯90のフック93を作業台40のフック係止金具17に係止するように、注意を喚起させることができる。また、作業中にマーカーランプ55が消灯した場合には、工事責任者は作業の中止を作業者OPに指示することができる。
【0031】
なお、上記実施形態において、各アウトリガジャッキ50に設けられているマーカーランプ55、すなわち4個を全て点灯もしくは点滅させて、安全帯90がフック係止金具17に係止されている旨を報知しているが、地上の工事責任者がその旨を確実に認識できればよく、例えば、車体10の右側の位置にある2個のマーカーランプ55だけを点灯もしくは点滅させるなど、適宜ランプの点灯パターンを変更してもよい。
【0032】
また、上記実施形態において、起伏シリンダ24や伸縮シリンダ31といった油圧アクチュエータの駆動に、パワーテイクオフ機構PTOによって取り出した走行用のエンジンEの駆動力を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、車体10上にバッテリを搭載し、このバッテリを駆動源とする電動モータの駆動力をパワーテイクオフ機構PTOにより取り出して、油圧アクチュエータの駆動に用いる構成としてもよい。
【0033】
また、上記実施形態において、マーカーランプ55は、全てのアウトリガジャッキ50の上部に設けたが、例えば、車体10の右側のアウトリガジャッキ50の上部のみに設けてもよい。
【0034】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したもの限定されない。
【0035】
上記安全装置では、安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されている旨を報知するために、マーカーランプ55を点灯もしくは点滅させているが、例えば、上記安全装置において、図5に示すように、PTO操作スイッチSWによりパワーテイクオフ機構PTOがオン作動されたか否かを検出するPTO検出器13を備え、ランプ作動制御部63が、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていることが検出され、且つ、PTO検出器13によりパワーテイクオフ機構PTOのオン作動が検出された場合にマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させ、作業台40のフック係止金具17に安全帯90のフック93が係止されている旨に加えて、パワーテイクオフ機構PTOがオン作動している旨を報知するように構成してもよい。
【0036】
なお、図5に示す構成の安全装置において、パワーテイクオフ機構PTOはオン作動しているが、安全帯90のフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていない場合には、ランプ作動制御部63が、4個のマーカーランプ55のうち車体10の片側2個だけを点灯もしくは点滅させ、パワーテイクオフ機構PTOはオン作動しているが、作業台40のフック係止金具17に安全帯90のフック93が係止されていない旨を、地上の工事責任者に報知できるように構成することもできる。
【0037】
また、上記安全装置において、図6に示すように、アウトリガジャッキ50が車体10の下方に張り出して、その下端部(接地板53)が地面に当接したか否かを検出するジャッキ接地検出器56を備え、ランプ作動制御部63が、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていることが検出され、且つ、ジャッキ接地検出器56によりアウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接したことが検出された場合にマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させ、作業台40のフック係止金具17に安全帯90のフック93が係止されている旨に加え、アウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接した旨を報知するように構成してもよい。
【0038】
また、上記安全装置において、図7に示すように、アウトリガジャッキ50が車体10の下方に張り出して、その下端部(接地板53)が地面に当接したか否かを検出するジャッキ接地検出器56を備え、ランプ作動制御部63は、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていることが検出され、PTO検出器13によりパワーテイクオフ機構PTOのオン作動が検出され、さらにジャッキ接地検出器56によりアウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接したことが検出された場合に、マーカーランプ55を点灯もしくは点滅させて、作業台40のフック係止金具17に安全帯90のフック93が係止されている旨に加え、パワーテイクオフ機構PTOがオン作動し、且つ、アウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接した旨を報知するように構成してもよい。
【0039】
また、上記安全装置において、アウトリガジャッキ50が車体10の下方に張り出して、その下端部(接地板53)が地面に当接したか否かを検出するジャッキ接地検出器56を備え、ランプ作動制御部63は、ジャッキ接地検出器56により4本全てのアウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接したことが検出された場合に、2個もしくは3個のマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させて、さらに安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていることが検出された場合に、残りのマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させるように構成してもよい。また、逆に、安全帯係止検出器19により安全帯90の端部に取り付けられたフック93が作業台40のフック係止金具17に係止されていることが検出された場合に、2個もしくは3個のマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させて、さらにジャッキ接地検出器56により4本全てのアウトリガジャッキ50の下端部(接地板53)が地面に当接したことが検出された場合に、残りのマーカーランプ55を点灯もしくは点滅させるように構成してもよい。
【0040】
また、上記安全装置において、安全帯90の係止検出器として、例えば、安全帯90のフック93の先端に設けられた鉤部と、鉤部を開放・閉鎖する開閉キャップと、作業台40に配設され断面U字形状のフックブラケットと、フックブラケットに固設されてフック93の鉤部を係脱可能な掛止部材と、フックブラケットの開口部に設けられ信号光を照射する投光器とこれを受光する受光器とからなる光電センサとを有し、フック93が掛止部材に係止状態にある場合に、該フック93はフックブラケットの開口部に位置して投光器により照射された信号光を遮ることにより、受光器が信号光を遮られたことを検出して(フック93の係止状態を検出して)、コントローラ60のランプ作動制御部63にオン信号を出力するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る安全装置のブロック図を示す。
【図2】本発明に係る作業車の安全装置を搭載した高所作業車の正面図を示す。
【図3】本発明に係る作業台の部分断面図を示す。
【図4】本発明に係るフック係止金具の正面図を示す。
【図5】本発明に係る他の実施形態における安全装置のブロック図を示す。
【図6】本発明に係る他の実施形態における安全装置のブロック図を示す。
【図7】本発明に係る他の実施形態における安全装置のブロック図を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 高所作業車(作業車)
10 車体
30 ブーム(昇降装置)
40 作業台
50 アウトリガジャッキ
90 安全帯
93 フック(安全帯の端部)
17 フック係止金具(安全帯係止手段)
19 安全帯係止検出器(係止検出手段)
55 マーカーランプ
63 ランプ作動制御部(ランプ作動制御手段)
OP 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に昇降装置を介して取り付けられた作業台と、
前記車体の前後左右に取り付けられ、側方及び下方に張り出して前記車体を支持するアウトリガジャッキと、
前記作業台に搭乗した作業者の体に装着される安全帯と、
前記安全帯の端部を着脱自在に係止するため前記作業台に設けられた安全帯係止手段と、
前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されているか否かを検出する係止検出手段と、
点灯もしくは点滅することで前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止された旨を報知する、前記アウトリガジャッキの上部に取り付けられたマーカーランプと、
前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させるランプ作動制御手段とを備えることを特徴とする作業車の安全装置。
【請求項2】
前記車体に設けられたエンジンと、
前記昇降装置や前記アウトリガジャッキを作動させるため、前記エンジンの駆動力を取り出し可能なパワーテイクオフ機構と、
前記パワーテイクオフ機構をオン・オフ作動させるための操作をするパワーテイクオフ作動手段と、
前記パワーテイクオフ作動手段により前記パワーテイクオフ機構がオン作動されたか否かを検出するパワーテイクオフ検出手段とを備え、
前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、且つ、前記パワーテイクオフ検出手段により前記パワーテイクオフ機構のオン作動が検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記パワーテイクオフ機構がオン作動している旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の作業車の安全装置。
【請求項3】
前記アウトリガジャッキが前記車体の下方に張り出して、その下端部が地面に当接したか否かを検出する接地検出手段を備え、
前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、前記パワーテイクオフ検出手段により前記パワーテイクオフ機構のオン作動が検出され、さらに前記接地検出手段により前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接したことが検出された場合に、
前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記パワーテイクオフ機構がオン作動し、且つ、前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接した旨を報知することを特徴とする請求項2に記載の作業車の安全装置。
【請求項4】
前記アウトリガジャッキが前記車体の下方に張り出して、その下端部が地面に当接したか否かを検出する接地検出手段を備え、
前記ランプ作動制御手段は、前記係止検出手段により前記安全帯の端部が前記安全帯係止手段に係止されていることが検出され、且つ、前記接地検出手段により前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接したことが検出された場合に、前記マーカーランプを点灯もしくは点滅させて、前記安全帯係止手段に前記安全帯の端部が係止されている旨に加え、前記アウトリガジャッキの下端部が地面に当接した旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の作業車の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−35387(P2009−35387A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201628(P2007−201628)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】