説明

作業車の排水構造

【課題】 構造の簡単な排水構造を採りながらも、傾斜地走行時においても十分排出することのできる作業車の排水構造を提供する。
【解決手段】 空調ユニットを、リヤピラー26より後方にまで突出するルーフ部32内に設ける。排水機構Aを、空調ユニット36から水平でかつ横側方に向かう姿勢で機器側排水ホース65をルーフ部32内に設ける。ルーフ部32より突出させた機器側排水ホース65に接続する金属製の配管66を、機体前方側に向けて斜め下向き姿勢で配設する。金属製の配管66に接続する先端側ホース67を上下向き姿勢でリヤピラー26に沿って配置して構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンのルーフ部に空調ユニットを備えるとともに、空調ユニットから発生する水分を機外に排出する排水機構を設けてある作業車の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調ユニットとしての冷房装置で発生したドレン水を機外に排出する為に、キャビンのルーフ部に収納した冷房装置から前後左右に4本のドレン配管を配置し、四隅に配置された4本の支柱に沿ってドレン配管を這わせて、ドレン水を機外に排出していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平7−27215号公報(公報第4欄の第46行〜第5欄の第3行、及び、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように空調ユニットから前後にドレン排水用の配管が配設されているのは、空調ユニットの前後に配置されているキャビンの骨組みを構成するリヤピラー又はフロントピラーとしての支柱内を通して配管を配索することを目的とするものであり、かつ、作業車が傾斜地を走行して作業を行う場合に機体が前後に傾斜しても支障なくドレン水を排出することを考慮したものである。
しかし、前後に向けてドレン排水用の配管を設ける必要があり、配管の配索スペースの確保と配索作業の製作負担に大きなものがあった。
しかも、ドレン排水用の配管を上下向き姿勢で這わす支柱が、空調ユニットの前後一方にしか存在しない場合には、配管は前後一方に向けてしか配索できないこととなり、単に、配管を前後一方に向けて配索しただけでは、傾斜地走行でのドレン排出が十分でないことも考えられた。
【0005】
本発明の目的は、構造の簡単な排水構造を採りながらも、傾斜地走行時においても十分排出することのできる作業車の排水構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記空調ユニットを、リヤピラーより後方にまで突出するルーフ部内に設け、前記排水機構を、前記空調ユニットから水平でかつ横側方に向かう姿勢で第1排水部を前記ルーフ部内に設けるとともに、前記ルーフ部より突出させた第1排水部に接続する第2排水部を、機体前方側に向けて斜め下向き姿勢で配設し、前記第2排水部に接続する第3排水部を上下向き姿勢でリヤピラーに沿って配置して構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
空調ユニットから水分を取り出す第1排水部は、略水平で横側方に向かう姿勢で配索してある。この構成により作業車が後倒れ方向に傾きを生じても、第1排水部の姿勢は変化しないので、排水機能が低下することは少ない。
第3排水部としては、リヤピラーに沿って上下向き姿勢で配索されているので、この場合には、作業車が後方向に傾きを生じて第3排水部の姿勢も後倒れ姿勢に変化することとなるが、下向きに排水する機能は維持されることとなるので、排水機能が低下することは少ない。
第1排水部と第3排水部を結ぶ第2排水部を、従来構成のように、機体前後方向に向かう姿勢に配索するのではなく、前方に向けて下向き斜め姿勢に配索することとした。これによって、作業車が後方向に傾きを生じて第2排水部の姿勢が変化しても、第2排水部は下向きの状態を維持できるので、排水機能が低下することは少ない。
【0008】
一方、作業車が前方に向けて傾斜した場合には、第1排水部は略水平で横側方に向かう姿勢に配索されているので、その姿勢が変化することはない。前方に向けて下向き斜め姿勢に配索されている第2排水部は、姿勢を変化させて上下向き姿勢に近い姿勢に切り換わり、排水機能の低下はない。上下向き姿勢に配索されている第3排水部は、前倒れ姿勢に多少は変化するが、下向き傾斜姿勢は維持できるので、これも排水機能が低下することは少ない。
【0009】
〔効果〕
上下向き姿勢で排出する第3排出部に接続するために、略水平で横側方に向う第1接続部と斜め下向き姿勢の第2接続部を設けることによって、走行機体の前後傾斜に拘わらず排水機能を低下させることはなく、排水機能の低下による収納機器の作動不良等を回避できるに至った。
【0010】
請求項2に係る発明の特徴構成は、キャビンのルーフ部に空調ユニットを備えるとともに、空調ユニットから発生する水分を機外に排出する排水機構を設けてある作業車の排水構造であって、
前記空調ユニットを、フロントピラーより前方にまで突出するルーフ部内に設け、前記排水機構を、前記空調ユニットから水平でかつ横側方に向かう姿勢で第1排水部を前記ルーフ部内に設けるとともに、前記ルーフ部より突出させた第1排水部に接続する第2排水部を、機体後方側に向けて斜め下向き姿勢で配設し、前記第2排水部に接続する第3排水部を上下向き姿勢でフロントピラーに沿って配置して構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
つまり、空調ユニットから水分を取り出す第1排水部は、略水平で横側方に向かう姿勢で配索してある。この構成により作業車が前倒れ方向に傾きを生じても、第1排水部の姿勢は変化しないので、排水機能が低下することは少ない。
第3排水部としては、フロントピラーに沿って上下向き姿勢で配索されているので、この場合には、作業車が前方向に傾きを生じて第3排水部の姿勢も後倒れ姿勢に変化することとなるが、下向きに排水する機能は維持されることとなるので、排水機能が低下することは少ない。
【0012】
第1排水部と第3排水部を結ぶ第2排水部を、従来構成のように、機体前後方向に向かう姿勢に配索するのではなく、後方に向けて下向き斜め姿勢に配索することとした。これによって、作業車が前方向に傾きを生じて第2排水部の姿勢が変化しても、第2排水部は下向きの状態を維持できるので、排水機能が低下することは少ない。
作業車が後方に向けて傾斜した場合には、第1排水部は略水平で横側方に向かう姿勢に配索されているので、その姿勢が変化することはない。後方に向けて下向き斜め姿勢に配索されている第2排水部は、姿勢を変化させて上下向き姿勢に近い姿勢に切り換わり、排水機能の低下はない。上下向き姿勢に配索されている第3排水部は、後倒れ姿勢に多少は変化するが、下向き傾斜姿勢は維持できるので、これも排水機能が低下することは少ない。
【0013】
〔効果〕
上下向き姿勢で排出する第3排出部に接続するために、略水平で横側方に向う第1接続部と斜め下向き姿勢の第2接続部を設けることによって、作業車の前後傾斜に拘わらず排水機能を低下させることはなく、排水機能の低下による収納機器の作動不良等を回避できるに至った。
【0014】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1または請求項2に係る発明において、前記第2排水部を金属製の配管で構成し、その金属製の配管を、作業灯を支持するブラケットに一体形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
つまり、第2排水部を金属製の配管で構成したので、第2排水部を傾斜姿勢で設けるにしても、第2排水部の姿勢維持を良好に行うことができて、排水機能の低下を抑制できるとともに、ブラケットの兼用化を図ることができ、金属製の配管を支持する専用のブラケットを設ける必要はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には作業車の一例として耕耘作業を主作業とするトラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、前部フレーム1に防振搭載したエンジン2からの動力を、フレーム兼用のミッションケース3に内装した走行用の変速装置(図示せず)などからなる走行伝動系を介して左右一対の前輪4及び後輪5に伝達する四輪駆動型に構成されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、ミッションケース3の後部には、その後上部に内装した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)の作動で上下方向に揺動駆動される左右一対のリフトアーム6や、エンジン動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸7、などが装備されている。
【0018】
動力取出軸7には、エンジン2からの動力が、走行伝動系とは別系統のミッションケース3に内装した作業用の変速装置(図示せず)や作業クラッチ(図示せず)などからなる作業伝動系を介して伝達されている。
【0019】
図示は省略するが、左右のリフトアーム6には、ミッションケース3の後部に昇降揺動可能に連結装備されるリンク機構が連結され、動力取出軸7には、そのリンク機構に連結されるロータリ耕耘装置などの作業装置に備えた入力軸が伝動軸などを介して接続される。
【0020】
図1及び図2に示すように、トラクタの後半部には、ステアリングホイール8や運転座席9などを備えて搭乗運転部10が形成され、その搭乗運転部10を覆うキャビン11が装備されている。
【0021】
図1に示すように、キャビン11は、キャビンフレーム19に、透明の曲面ガラスなどからなるウインドシールド20、透明の平面ガラスなどからなる外開き式の左右一対のドアパネル21、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式の左右一対のサイドウインド22、及び、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式のリヤウインド23、などを備えて構成されている。
【0022】
キャビンフレーム19は、異形パイプからなる左右一対のフロントピラー24、左右一対のクォータピラー25、角パイプからなる左右一対のリヤピラー26、断面形状コの字状のフロントクロスメンバー27、断面形状コの字状の左右一対のサイドメンバー28、及び、断面形状コの字状のリヤクロスメンバー29、などを溶接して構成され、フロントクロスメンバー27、左右のサイドメンバー28、及び、リヤクロスメンバー29に、インナルーフ30やアウタルーフ31などを取り付けてルーフ部32が形成されている。
【0023】
左右のドアパネル21は、対応するクォータピラー25に上下一対のヒンジ33を介して開閉揺動可能に連結されている。
左右のサイドウインド22は、対応するリヤピラー26に上下一対のヒンジ34を介して開閉揺動可能に連結されている。
リヤウインド23は、リヤクロスメンバー29に左右一対のヒンジ35を介して開閉揺動可能に連結されている。
左右のリヤピラー26は、それらの間隔が、左右のフロントピラー24の間隔や左右のクォータピラー25の間隔よりも狭くなるように設定されている。
【0024】
図3に示すように、リヤクロスメンバー29は、アウタルーフ31との間に空調ユニット36の配置空間を確保するために、左右のリヤピラー26の上端部から所定距離だけ下げた高さ位置に配置設定され、その上部には空調ユニット36を支持する3つの支持ステー37が装備されている。
【0025】
図1〜図3に示すように、インナルーフ30は、その周縁部がフロントクロスメンバー27、左右のサイドメンバー28、及び、リヤクロスメンバー29の下面に接合されており、その周縁部とアウタルーフ31との間に空調ダクト配設用の空間を確保しながら居住空間を極力広くするために、その中央部がアウタルーフ31に向けて膨出する形状に形成されている。
【0026】
アウタルーフ31は、その周縁部がフロントクロスメンバー27及び左右のサイドメンバー28の上面で支持され、その前後中間部に外気導入経路38を有するように、又、その後端部が、リヤウインド23よりも後方に延出して、空調ユニット36の上部を覆う上部カバーとして機能するように形成されている。
【0027】
アウタルーフ31及び支持ステー37には、空調ユニット36の後下部を覆う下部カバー39が連結され、インナルーフ30の後端部とアウタルーフ31の後部と下部カバー39とで、空調ユニット36の収納空間40が形成されている。
【0028】
図2〜図6に示すように、インナルーフ30の後部中央には、キャビン内気の空調ユニット36への供給を可能にする左右一対の内気供給口41が形成されている。
図9及び図10に示すように、アウタルーフ31の後部中央には、外気の空調ユニット36への供給を可能にする左右一対の外気供給口42が、インナルーフ30の内気供給口41に対向する状態で形成されている。
【0029】
図1、図9及び図10に示すように、アウタルーフ31の後部には、左右のサイドウインド22を開けた際のキャビン内部への雨水の入り込みを阻止する左右一対の庇43が形成されている。
左右の庇43は、外気導入経路38に連通する中空状に形成され、左側の庇43の底壁にのみ、外気導入口44が形成され、エアフィルタ45が装備されている。
このように、左側の庇43にのみ外気導入口44を形成し、エアフィルタ45を装備したことで、圃場でエアフィルタ45の掃除や交換などを行う場合には、車体の左側を畦に隣接させた状態で車体を停止させるようにすれば、左側の乗降口から畦に降車して直ぐに、庇43に手が届き易い畦上で、エアフィルタ45の掃除や交換などを行うことができる。
【0030】
図2、図9及び図10に示すように、内気供給口41と外気供給口42の間には、外気供給口42を開放して空調ユニット36への外気の供給を許容するとともに、内気供給口41の開口面積を小さくして内気供給口41からのキャビン内気の供給を抑制する外気混入状態と、外気供給口42を閉塞して空調ユニット36への外気の供給を阻止するとともに内気供給口41を大きく開放する内気循環状態とに切り換え可能に構成された上下揺動式のシャッタ46が配備されている。
【0031】
図2、図9及び図10に示すように、シャッタ46は、電動モータ47の作動で左右向きの支軸48を支点にして上下揺動する電動式で、その遊端部に備えた連係軸49が、前後向きの支点ピン50を支点にして揺動するクランクアーム51、及び連係ワイヤ52を介して、電動モータ47の操作アーム53に操作連係され、図外のバネによって内気循環状態に復帰付勢されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、空調ユニット36は、右上部に吸気部54が開口され、前部に左右一対のパイプ状の吹出部55が形成されたケーシング56に、シロッコファン57、エバポレータ58、及びヒータ59、などを内装して構成され、左右のリヤピラー26、26の間で、その後端部がキャビン11のリヤウインド23よりも大きく後方に位置するように各支持ステー37で支持されることで、その全体が運転座席9よりも後方に位置するようになっている。
【0033】
図2及び図3に示すように、空調ユニット36を配置したことで、空調ユニット36をルーフ部32の前端部に配置する場合に比較して、キャビン11の全高を極力低くしながら居住空間を大きく確保することができ、又、能力の高い大型の空調ユニット36を装備することが可能になり、更に、前上方に対する視界が広がることから、例えば、フロントローダ(図示せず)を連結装備したローダ作業時には、上昇させたバケット位置の視認が容易になり、作業性が向上する。
【0034】
図2及び図3に示すように、シロッコファン57は、エバポレータ58の右側方に配置され、吸気部54から取り込んだ未調節空気を、エバポレータ58とそれに対向するケーシング56の後壁60との間に形成された給気経路61を介して、エバポレータ58及びヒータ59に供給する。
【0035】
図2及び図3に示すように、ケーシング56の後壁60は、シロッコファン57からの未調節空気をエバポレータ58の全域に略均一に案内する案内壁として機能するように、シロッコファン57から離れる左端側ほどエバポレータ58に接近する多段形状に形成されている。
【0036】
このように、ケーシング56の後壁60を多段形状に形成したことで、後壁60における左端部の外面と、ルーフ部32における後部の壁面との間には比較的大きい空間62が形成されることになる。
【0037】
そこで、この空間を有効利用して、ケーシング56の後壁60にシャッタ操作用の電動モータ47を装備するようにしてあり、これによって、電動モータ47を収納する専用の空間を形成することによるルーフ部形状の複雑化やルーフ部32の大型化などを回避することができる。
【0038】
又、シロッコファン57は、エバポレータ58の右側方に配置されたことで、アウタルーフ31の左端部に形成された外気導入口44とは反対側の右端部に位置することになり、これによって、外気混入状態では、外気導入口44から導入された外気が、外気導入経路38と給気経路61とを介して、キャビン11の内温で予熱された状態でエバポレータ58及びヒータ59に供給されるようになることから、外気導入口44の近傍にシロッコファン57を配置する場合に比較して、空調効率の向上を図ることができる。
【0039】
図2及び図3に示すように、ケーシング56の各吹出部55には、対応する吹出部55からの調節空気をキャビン11の前端部に向けて案内する左右一対の空調ダクト63が外嵌されている。
【0040】
図2〜図6に示すように、エバポレータ58には、そのケース内で発生した結露水を排出する排水機構Aが設けられている。排水機構Aは、エバポレータ58の底部における左右両端部に形成された結露水排出用の排水口75,76に対応して、夫々、設けられている。
【0041】
図3〜図6に示すように、排水機構Aは、左右排水口75、76に接続され、略水平でかつ横側方に向かう姿勢で第1排水部としての左右機器側排水ホース65,65を設ける。左右機器側排水ホール65,65は、左右排水口75,76に接続された基端部65A、65Aを下部カバー39の内部空間内に位置させており、その内部空間における底面に沿った状態で、略水平でかつ横側方に向かう姿勢で設けられており、図7に示すように、下部カバー39には載置溝39C、39Cが設けてある。左右機器側排水ホース65,65の先端部分は、下部ケース39に形成した取出口39D、39Dより突出し、斜め前方下方に向かって延出されている。
【0042】
図3〜図6に示すように、左右機器側排水ホース65、65より排水方向下手側には、左右のエルボ状の金属製の配管66、66を前方下方に向かう斜め下向き姿勢に配設し、第2排水部を構成してある。
左右金属製の配管66、66より排水方向下手側には、左右先端側ホース67、67を上下向き姿勢で配設し、夫々、左右金属製の配管66、66に接続してある。
【0043】
図3〜図6に示すように、左右金属製の配管66、66の上方には、夫々、後記する左右作業灯84、84が配設され、左右作業灯84、84を支持する左右ブラケット68、68が設けてある。左右ブラケット68、68より下向きに板状部68A、68Aを垂下してあり、この板状部68A、68Aの下端に、夫々、左右金属製の配管66、66を一体固定してある。
図中83は、ウインカーである。
【0044】
図3〜図6に示すように、左右金属製の配管66、66の下端部に外嵌装着された左右先端側ホース67、67は、対応する左右のリヤピラー26,26の外面に接合したサイドウインド22とリヤウインド23の間を通って機体の下部側まで延出されている。図12に示すように、左右先端側ホース67、67の断面形状は、円筒形の一部でリヤピラー26、26に接着される基端部分は、一定の横幅を備えた取付座67A、67Aに形成され、リヤピラー26、26への取付状態を安定したものにしている。
【0045】
つまり、図3〜図6に示すように、エバポレータ58の底部における左右両端部に排水口75,76を備えたことで、エバポレータ58で発生した結露水を、車体の左右傾きに対応する排水口75,76から、左右の排水機構A、Aを介して、左右のリヤピラー26の外面に案内することができ、図1に示すように、左右のリヤピラー26の下端部から左右のリヤフェンダ80の内面に沿って車外に速やかに排出することができる。
【0046】
又、左右の先端側ホース67、67を、サイドウインド22とリヤウインド23の間を通すことで、目立ち難くすることができ、外部配管構造を採用することによる見栄えの低下を抑制することができる。
【0047】
アウタルーフ31と下部カバー39との間に形成される防水シール機構Bについて説明する。図3、図7及び図8に示すように、防水シール機構Bは、アウタルーフ31と下部カバー39との接続面に設けられるものであり、第1合わせ面に配置される第1シール部材69と、第1合わせ面より内側に形成される第2合わせ面に配置される第2シール部材70と、第1シール部材69と第2シール部材70との間に形成される補水空間Cとで構成される。
【0048】
図7及び図8に示すように、補水空間Cは、下部カバー39における外側壁部39Aとその外側壁部39Aの内側にその外側壁部39Aから分岐されて立設されている内側壁部39Bとの間に形成されており、第1シール部材69を越えて浸入してきた水分を捕集するように構成してある。
【0049】
このような構成によって、高圧洗車時であっても、空調ユニット収納空間に水が浸入することが少なくなる。
なお、補水空間Cに溜まった水は、次ぎのようにして排出される。図7及び図8に示すように、補水空間Cを、前記第1合わせ面に沿ってかつその補水空間Cの底面が前記補水空間Cの両側端程低位に位置するように形成する。そして、前記した両側端に対応した最低部位に下部カバー39より機外に排出する排出口Cc、Ccを設けて、補水空間Cに捕捉された漏水を排出するように構成してある。
【0050】
第1シール部材69と第2シール部材70について説明する。図7及び図8に示すように、第1シール部材69は、左右のリヤピラー26,26より後方に配置されている下部カバー39の周縁部に沿って設けられており、第1合わせ面として形成されている平坦面に沿った一定幅の平板状に形成され、所定間隔毎に連結用の取付具等が貫通する孔69Aを備えている。
【0051】
第2シール部材70について説明する。図1に示すように、アウタルーフ31は、キャビン11を構成するフロントクロスメンバー27と左右のサイドメンバー28,28とに主として支持され、リヤピラー26の後方より突出する部分は、下部カバー39で支持されている。第2シール材70は、図7乃至図9に示すように、アウタルーフ31と下部カバー39との第2合わせ面に対応して設けられている後部シール部70Aと、フロントクロスメンバー27、左右のサイドメンバー28,28との合わせ面に亘る状態で設けられている本体シール部70Bとを有している。つまり、第2シール部材70は、後部シール部70Aと本体シール部70Bとをエンドレスに繋いだもので、アウタルーフ31の周縁部に対応して形成されている保持溝内に装着されている。
【0052】
図3に示すように、リヤクロスメンバー29は、その後上端縁に段差が形成され、この段差を利用して、リヤクロスメンバー29と下部カバー39との間にシール材82が介装されている。
【0053】
このように防水機構Bとシール材82とを介装したことで、インナルーフ30の後端部とアウタルーフ31の後部と下部カバー39とで形成される空調ユニット収納空間40の気密性及び防水性を確保することができる。
【0054】
〔別実施形態〕
〔1〕作業車としては、コンバインやバックホーあるいは運搬車などであってもよい。
〔2〕ルーフ部32の前部側に空調ユニット36を配備するようにしてもよい。
この場合には、図示してはいないが、空調ユニット36をフロントピラー24より前方に突出する状態で配置する構成を採る。そうすると、この場合の排水機構Aとしては、第1排水部としての機器側排水ホース65は、空調ユニット36から水平でかつ横側方に向かう姿勢で設けるとともに、機器側排水ホース65に接続する金属製の配管66を、機体後方側に向けて斜め下向き姿勢で配設し、先端側ホース67を上下向き姿勢でリヤピラーに沿って配置して構成する。
〔3〕第1〜第3排水部としては、全て、排水ホースで構成してもよく、又、全て金属製の配管で構成してもよく、いずれにも、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】キャビン後部を示す平面図
【図3】キャビン後部の空調ユニット収納状態を示す縦断側面図
【図4】排水機構を備えるキャビンの後面図
【図5】機体左側の排水機構を示す左側面図
【図6】機体右側の排水機構を示す右側面図
【図7】下部カバーの内面を示す平面図
【図8】下部カバーとアウタルーフの間に介在されている第1シール部材と第2シール部材を示す縦断側面図
【図9】アウタルーフに装着される第2シール材を示す下面図
【図10】内気供給口と外気供給口との間に設けられているシャッターを示す縦断側面図
【図11】内気供給口と外気供給口との間に設けられているシャッターを駆動するクランクアーム等を示す構成図
【図12】排水機構の先端側ホースのリヤピラーに対する取付状態を示す横断平面図
【符号の説明】
【0056】
11 キャビン
24 フロントピラー
26 リヤピラー
32 ルーフ部
36 空調ユニット
65 第1排水部(機器側ホース)
66 第2排水部(金属製の配管)
67 第3排水部(先端側ホース)
68 ブラケット
84 作業灯
A 排水機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンのルーフ部に空調ユニットを備えるとともに、空調ユニットから発生する水分を機外に排出する排水機構を設けてある作業車の排水構造であって、
前記空調ユニットを、リヤピラーより後方にまで突出するルーフ部内に設け、前記排水機構を、前記空調ユニットから水平でかつ横側方に向かう姿勢で第1排水部を前記ルーフ部内に設けるとともに、前記ルーフ部より突出させた第1排水部に接続する第2排水部を、機体前方側に向けて斜め下向き姿勢で配設し、前記第2排水部に接続する第3排水部を上下向き姿勢でリヤピラーに沿って配置して構成してある作業車の排水構造。
【請求項2】
キャビンのルーフ部に空調ユニットを備えるとともに、空調ユニットから発生する水分を機外に排出する排水機構を設けてある作業車の排水構造であって、
前記空調ユニットを、フロントピラーより前方にまで突出するルーフ部内に設け、前記排水機構を、前記空調ユニットから水平でかつ横側方に向かう姿勢で第1排水部を前記ルーフ部内に設けるとともに、前記ルーフ部より突出させた第1排水部に接続する第2排水部を、機体後方側に向けて斜め下向き姿勢で配設し、前記第2排水部に接続する第3排水部を上下向き姿勢でフロントピラーに沿って配置して構成してある作業車の排水構造。
【請求項3】
前記第2排水部を金属製の配管で構成し、その金属製の配管を、作業灯を支持するブラケットに一体形成してある請求項1又は2記載の作業車の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−80871(P2008−80871A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260672(P2006−260672)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】