説明

作業車の運転座席支持構造

【課題】 運転者の体重により運転座席に掛かる荷重が幅広く変化しても、快適な乗り心地を提供できる運転座席の支持構造を構造の大型化を避けつつ構成すること。
【解決手段】 搭乗運転部に座席支持フレーム17を設け、前記座席支持フレーム17に運転座席13を上下移動可能に連結し、前記運転座席13の下方に、弾性係数が異なるシート状の弾性部材S1,S2,S3を上下方向に接合した複合弾性部材44を配置して、前記運転座席13が前記複合弾性部材44により支持されるように作業車の運転座席支持構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや乗用芝刈機などの作業車における運転座席支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような作業車の運転座席支持構造としては、例えば、特許文献1に示されるように、機体側の固定部(特許文献1の図1(イ)中の14)に平行リンク機構(同13)を介して連結された運転シート(同9)と機体側の固定部との間に、平行リンク機構を起立側に付勢する引っ張りスプリング(同16)と、平行リンク機構の倒伏に抵抗を付与する伸縮自在な流体式のダンパ(同18)とを設けて、引っ張りスプリングの引っ張り力を利用して機体の振動に伴う衝撃力を緩和する手段を構成したものが知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献2に示されるように、左右向き軸芯(特許文献2の図2中のx)周りで上下に揺動自在な操縦シート(同6)の下方に、左右向き軸芯周りで上下に揺動自在なステー(同9)を配置し、操縦シートに着座荷重が作用している状態において操縦シートとステーとを一体揺動させる状態で弾性的に載置支持するクッションバネ(同10)を設けて、上下揺動可能なシート支持部材と機体固定部との間に圧縮バネを介在させて、バネの圧縮力を利用して機体の振動に伴う衝撃力を緩和する手段を構成したものが知られている。
【特許文献1】特開平9−290672号公報
【特許文献2】特開2004−161049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構造のものは、いずれも、運転座席の衝撃力を緩和するバネが、衝撃力により弾性変形することにより、衝撃力が直接には運転座席に伝達されないように構成することにより、運転者が快適な乗り心地を体感できるようにしたものである。
【0005】
ところが、これらの従来構造のものは、限られた設置スペースに所定の弾性係数のバネを設けて衝撃力を緩和するものであるから、着座する運転者の体重によっては、衝撃力が十分には緩和されない場合がある。例えば、体重が軽いためにバネを十分に弾性変形させるだけの慣性が得られない場合は、バネがほとんど弾性変形することなく衝撃力が運転座席に直接的に伝達されることになり、快適な乗り心地が得られない。また、体重が重いために通常の着座時にすでにバネが弾性変形限界付近まで変形して運転者を支持している状態である場合は、衝撃力が発生しても十分な弾性変形量が確保できず、衝撃力を満足に緩和することができないため、やはり、快適な乗り心地が得られない。
【0006】
また、着座する運転者の体重が軽くても重くても、運転座席を弾性支持するバネの弾性変形量が十分確保できるようなバネを所定の弾性係数によるバネで構成するとなると、体重が軽い運転者による慣性でもバネが伸縮できるように弾性係数が比較的小さいバネを構成する必要がある。この場合、衝撃力が加わらない通常状態でのバネの長さが、体重の軽い運転者と体重の重い運転者とで大きく異なることになり、バネを設置するための大きなスペースが必要となり、設置が困難となる。
【0007】
このように、着座する運転者によって運転座席に掛かる荷重が幅広く変化しても快適な乗り心地を確保できる構成を実現しようとすると、その実現が困難な状況であった。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、運転座席の支持構造を工夫することによって、運転者の体重により運転座席に掛かる荷重が幅広く変化しても、快適な乗り心地を提供できる運転座席の支持構造を構造の大型化を避けつつ構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、作業車の運転座席支持構造において次のように構成することにある。
搭乗運転部に座席支持フレームを設け、座席支持フレームに運転座席を上下移動可能に連結し、運転座席の下方に、弾性係数が異なるシート状の弾性部材を上下方向に接合した複合弾性部材を配置して、運転座席が複合弾性部材により支持されるように構成してある。
【0009】
(作用)
本発明の第1特徴によると、座席支持フレームに運転座席を上下移動可能に連結し、弾性係数が異なるシート状の弾性部材を上下方向に接合した複合弾性部材を運転座席の下方に配置して、運転座席が複合弾性部材により支持されるように構成してあるので、着座している運転者の体重が軽い場合は、弾性係数が比較的小さい部分が弾性変形することにより運転座席に掛かる荷重を弾性支持するとともに、運転座席への衝撃力を緩衝することができる。
【0010】
一方、着座している運転者の体重が重い場合は、弾性係数が比較的小さい部分が弾性変形の限界まで圧縮変形しており、圧縮方向の力に関しては弾性体としての性質を有さず、非弾性体として振舞うので、弾性係数が比較的小さい部分に接合された弾性係数が比較的大きい部分が弾性変形することにより運転座席に掛かる荷重を弾性支持することができる。
【0011】
したがって、本発明の第1特徴構成によると、運転座席に掛かる小さな荷重から大きな荷重までを、荷重の大小に応じた弾性係数に基づき弾性支持できる。さらに、大きな荷重が掛かった場合は、単位荷重あたりの弾性変形量が、小さな荷重が掛かった場合の単位荷重あたりの変化量よりも小さくなるので、大きな荷重が掛かった場合の弾性変形量は複合弾性部材全体としては比較的小さくて済む。
【0012】
(効果)
本発明の第1特徴によると、運転座席に掛かる小さな荷重から大きな荷重までを、荷重の大小に応じた弾性係数に基づき弾性支持できるとともに、大きな荷重が掛かった場合の弾性変形量は複合弾性部材全体としては比較的小さくて済むので、運転座席に掛かる荷重が幅広く変化しても、快適な乗り心地を提供できる運転座席の支持構造を構造の大型化を避けつつ構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、本発明に係る乗用型草刈り機の全体側面図が示されている。この乗用型草刈り機は、操向される前輪1および向き固定の後輪2がそれぞれ駆動される四輪駆動型に構成された乗用型の走行機体3の下部に、図示しない油圧シリンダで駆動昇降される四連リンク機構5を介してモーアMが昇降操作可能に吊り下げ連結されるとともに、車体後部にモーアMで刈取った刈草を集める集草容器6が連結された構造となっている。
【0014】
走行車体3に備えられた左右一対の主フレーム7の前部には、左右に前輪1を操向可能に装備した前車軸ケース8がローリング可能に装備されるとともに、ボンネット9で覆われたエンジン10が搭載され、主フレーム7の後部には、左右に後輪2を装着した伝動ケース11が連結固定されている。また、主フレーム7の上部には、ステップ12が搭載連結されるとともに、このステップ12の後部に連設された左右フェンダ部12aの間に運転座席13が配備されている。
【0015】
図2に示すように、左右フェンダ部12aの後方には、後部カバー12bが連設されて、左右フェンダ部12aの間に開口12cを形成している。この開口12cを塞ぐ状態で運転座席13が配備されている。以下に運転座席13の支持構造について説明する。
【0016】
図2,図4及び図5に示すように、開口12cと略同寸法の座席支持台17(本発明の座席支持フレームに相当)が、左右フェンダ部12aの下方空間の前寄り位置で左右に亘って架設されたフレーム18に、座席支持台17の前端部に有する左右一対の連結部19を介して左右軸芯P1周りに上下揺動自在に連結されている。後部カバー12bの裏面には、座席支持台17の揺動端部側を下方で支持する左右一対の支持棒20が左右軸芯P1と高さをほぼ同じくして配置されている。
【0017】
運転者が着座していない非着座状態では、座席支持台17が、支持棒20に上向きに立設した押し上げバネ21に当接して、支持棒20から僅かに離間した状態で押し上げバネ21により弾性支持されている。運転者が着座している着座状態では、座席支持台17が下方に揺動し、押し上げバネ21が圧縮されるとともに、座席支持台17の揺動端部側が支持棒20に当接して下方揺動が規制されて、座席支持台17が位置決めされる。支持棒20の側方には着座スイッチ22が設けてあり、座席支持台17が下方に揺動すると着座スイッチ22が押し操作され、運転者が運転座席13に着座していることを検出できるようになっている。
【0018】
座席支持台17の上方には、揺動板30が、平行四連リンク31により平行上下移動可能に連結支持されている。平行四連リンク31は以下のように構成されている。座席支持台17の左右端縁の内方側に前後向きに設けた左右一対の上向きのフランジ32を設けて、各フランジの外側の前後2箇所にリンク部材33の一端を前後揺動自在に取付けてある。リンク部材33の他端は、揺動板30の下面に備える連結部30aに回転自在に設けた連結軸34を介して揺動板30に連結されている。
【0019】
また、前後位置を同じくして左右向きに対向するリンク部材33は、揺動位相を同じくした状態で一体揺動できるように左右方向に設けた連結棒33bにより連結されている。さらに、各リンク部材33の前方側端面には係止部33aが設けられており。四連リンク機構31が起立姿勢となる場合の上昇揺動限界は、フランジ部32の外側面に設けたストッパー32aとリンク部材33の係止部33aとが当接することにより規制される構成になっている。
【0020】
運転座席13は、上述の揺動板30に対して前後方向にスライド調節可能に載置されている。詳しくは以下の通りである。図5に示すように、左右中央位置に前後方向の溝部35aを形成したシートプレート35が運転座席13の底面、即ち座面13aの裏側に連結固定されており、溝部35aの下方には摺動ガイド36が前後2箇所でシートプレート35の下面にボルト連結されている。一方、揺動板30の上面には、左右中央位置に断面視コの字状のガイドレール37が前後方向に取り付けてあり、これを上方から覆うように摺動ガイド36が位置している。ガイドレール37の右側面には複数の係入孔38が刻まれており、所定の係入孔38に後述するロック部材39の係止爪39aが係入することで、運転座席13が揺動板30に対して前後方向に位置決めされる構造になっている。
【0021】
摺動ガイド36の右側面には、ロック部材39を操作する操作ロッド40が沿設されている。操作ロッド40の前方端部は、運転座席13の座面13aの前端部から僅かに前方側に位置する箇所において右方向に屈折形成されてグリップ部41を形成している。また、操作ロッド40の後方端には、操作ロッド40と一体回転するロック部材39が固設されており、操作ロッド40及びロック部材39をロック側に回転付勢する付勢バネ42を備えている。したがって、グリップ部41を前後軸芯周りに上方に揺動操作すると、操作ロッド40を介してロック部材39が揺動し、係入孔38と係止爪39aとの係合が外れ、運転座席13の位置決めが解除されて、前後方向に位置調節可能となる。
【0022】
シートプレート35の左右端縁からやや内側寄り箇所において前後方向に左右一対の支持板43が設けられている。支持版43の下端縁は折り曲げ加工されており、下方に位置する揺動板30と比較的広い面積で当接することができるように構成されている。前述の摺動ガイド36とガイドレール37とが係合するとともにシートプレート35に備えた左右の支持板43が揺動板30に当接するので、運転座席13が揺動板30上において左右方向に振れにくい状態が得られ、運転座席13が安定して支承される。
【0023】
図4及び図5に示すように、座席支持台17の上面に、複合弾性部材としてのゴムスポンジ44が敷設されている。このゴムスポンジ44は、略同一形状でありながら硬さの異なる3種のゴムスポンジS1,S2,S3を下段から硬さ順に積層された状態で相互に接着して一体化したものである。ゴムスポンジ44は、四連リンク機構31が起立側の揺動限界に位置する場合に座席支持台17と揺動板30とがなす間隔より若干小さい寸法となる厚みを有しており、左右及び前後の寸法はいずれも、揺動板30に設けた連結部30aの左右及び前後の間隔L1,L2より小さい寸法となっており、揺動板30が揺動した場合に周辺の部材がゴムスポンジ44に干渉しないように構成されている。
【0024】
上述のような構成からなる運転座席13の指示構造によると、着座動作に伴い各部材は以下のように作用する。
【0025】
まず、揺動板30がゴムスポンジ44に当接した状態で、座席支持台17の上方に構成されたすべての部材が左右軸芯P1周りに座席支持台17と一体となって下方に揺動操作される。座席支持台17の下降揺動が進行すると、着座スイッチ22がオン操作されるとともに、支持棒20に座席支持台17の下面が当接支持されて、座席支持台17の下方揺動が終了する。このとき、運転座席13に掛かる荷重の内、押し上げバネ21を圧縮操作する力が、反作用としてゴムスポンジ44を弾性圧縮変形する方向に作用するが、押し上げバネ21の反発力が小さく設定されているので、ゴムスポンジ44には荷重がほとんど掛からず、弾性圧縮変形はほとんど行われない。
【0026】
座席支持台17が下降位置に位置決めされた後は、運転者の体重に応じた荷重が運転座席13に掛かることにより、ゴムスポンジ44に上方から当接する揺動板30が、ゴムスポンジを弾性圧縮変形しつつ下降し、四連リンク機構31が倒伏姿勢方向に変位する。そして、ゴムスポンジ44が弾性圧縮変形されることにより発生する反発力により運転座席13が支持されて、運転座席13が着座状態となる。
【0027】
上述のように、弾性圧縮変形した状態で運転座席13を弾性支持するゴムスポンジ44は、異なる弾性係数のゴムスポンジS1,S2,S3を上下に積層接合して構成されているので、ゴムスポンジ44に掛かる荷重が衝撃力などにより変化すると、弾性支持している荷重の大きさに応じた弾性係数に基づく弾性変形が開始されることになる。つまり、大きな荷重が掛かっている状態で衝撃力が掛かると、大きな弾性係数により弾性圧縮変形が開始され、小さな荷重が掛かっている状態で衝撃力が掛かると、小さな弾性係数による弾性圧縮変形が開始される。
【0028】
したがって、作業走行時の振動による衝撃力が運転座席13に掛かると、その衝撃力は、異なる弾性係数による弾性圧縮変化により緩和され始めるので、運転者の体重に応じた弾性変形量が期待でき、体重の大小に依らず、衝撃力が緩和され、乗り心地のよい作業車が得られる。また、運転者の体重の大小に依らず衝撃力を緩和する構成が、異なる弾性係数を有するゴムスポンジS1,S2,S3を積層接合するだけの簡単な構造により実現でき、かつ、装置構造の大型化を招来することなく構成できる。
【0029】
図3の伝動系統図に示すように、エンジン10から出力された前後軸心の回転動力は伝動軸14を介して伝動ケース11の入力軸15に前方から伝達されて、ケース内で走行系と作業系に分岐される。
【0030】
入力軸15に伝達された動力の一部はギヤG11で作業系の動力として取り出され、ギヤG12,G13を介してPTOクラッチ24に伝達された後、ケース前面に突設したPTO軸25から取り出され、伝動軸26を介してモーアMのデッキ上面に搭載連結された入力ケース27(図1参照)に伝達されるようになっている。ここで、図3中に示すように、入力軸15から作業系動力を分岐する前記ギヤG11は、入力軸15と入力用ポンプ軸16aとを連結する軸継ぎ手としても機能している。
【0031】
図6に示すように、前記PTOクラッチ24は、手動操作式の多板クラッチに構成されており、伝動ケース11の前記入力軸15からの動力を受けるギヤG13がPTO軸25に遊嵌装着され、このギヤG13のボス部に咬合連結されたクラッチドラム51と、PTO軸25にシフト可能にスプライン装着したクラッチボス52との間に、それぞれに係合されたクラッチディスク53が交互に重合されている。
【0032】
クラッチボス52の内部空間には、このクラッチボス52を図中左方にスライド付勢してクラッチディスク群53を圧接するバネ54が組み込まれ、常態ではPTOクラッチ24がクラッチ入り状態に保持され、クラッチボス52がバネ54に抗し図中右方に後退変位されることでクラッチディスク53の圧接が解除されてクラッチ切り状態がもたらされるようになっている。
【0033】
また、伝動ケース11内の前部には、前後向きの操作軸55を介して揺動操作される操作フォーク56が配備されるとともに、外周部分に設けた係合溝57aを介して操作フォーク56によって回動操作される回転カム板57及び押圧板58が、クラッチボス52に遊嵌装着されている。押圧板58は、クラッチ軸芯方向には摺動可能であるが、その外周の一部が伝動ケース11の内壁に係合支持されているので、クラッチ軸芯回りの回転は規制されている。
【0034】
伝動ケース11内の回転カム板57より前方側には伝動ケース11の内面と、クラッチボス52との間に、それぞれに係合されたブレーキディスク60が交互に重合されている。ストッパーリング61が伝動ケース11側のブレーキディスク群60の直前方に設けてあり、クラッチボス52の回転軸方向に摺動するブレーキディスク群60の摺動範囲を規制している。
【0035】
押圧板58は、クラッチボス52の外周に段差状に形成された受け面Wに後方から受け止め支持されている。回転カム板57及び押圧板58のそれぞれが対向する面には、図8に示すようなボール係入溝57H及び58Hが刻設されており、対向するボール係入溝57H及び58Hの間には、両者に係入支持されたボール59が内装されている。
【0036】
図7に示すように、回転カム板57の係入溝57Hは、操作フォーク56による回動操作に伴いボール59の係入深さが減少するような形状を有している。このため、クラッチボス52に遊嵌された回転カム板57がクラッチボス52の外周周りに回動すると、同じくクラッチボス52に遊嵌された押圧板58との間隔が開くことになる。
【0037】
このように、操作フォーク56の操作軸55周りの回転操作力が、回転カム板57,ボール59,押圧板58および受け面Wを介してクラッチボス52に伝えられ、クラッチボス52がバネ54に抗して後方(クラッチ切り方向)に押圧変位されてPTO軸の回転駆動力が遮断されるとともに、回転カム板57が前方に押圧変位されて、交互に重合する伝動ケース11側及びクラッチボス52側のブレーキディスク60群が圧接されるようになっている。
【0038】
以上の構成により、常時はバネ54によってクラッチ入り状態に付勢されたPTOクラッチ24が、操作軸55に連係連結した図示しない操作レバーを操作して操作フォーク56を揺動させると、回転カム板57を介してクラッチボス52がバネ54に抗して後退変位されてPTOクラッチ24がクラッチ切り状態に切換えられクラッチドラム51からクラッチボス52への動力伝達が断たれるとともに、回転カム板57の前方側のブレーキディスク群が圧接されることによりPTOブレーキ23がブレーキ入り状態となり、回転摩擦抵抗が付与されてPTO軸25に回転制動がかけられる。このように、PTO軸25への駆動力が遮断されると同時にPTO軸25の回転が制動されて、動力伝達が断たれたモーアMの慣性回転が積極的に抑制される。
【0039】
上述のクラッチディスク53及びブレーキディスク60の押圧操作力は、回転カム板57の回動操作量に応じて、クラッチ軸方向に変位する押圧板58及び回転カム板57により伝達されるものであり、かつ、回転カム板57の外周部分における回転操作量は、それにより生じる押圧板58及び回転カム板57のクラッチ軸方向の変位量に比して大きなものであるから、十分な押圧操作力を生むために必要な操作フォーク56の操作力は、小さなもので済む。
【0040】
したがって、押圧操作力を得るために油圧操作機構などの構成を必要とせず、手動操作により押圧操作力を得ることができる。また、回転カム板57を回動させることで、クラッチディスク53及びブレーキディスク60の双方を押圧操作できるので、動力伝達が断たれたモーアMの慣性回転を積極的に抑制する機構を構成する場合に、PTOクラッチ24の周辺の操作機構が簡素化できる。
【0041】
〔発明の実施の別形態〕
以下に本発明の別実施形態を列記する。
(1)ゴムスポンジ44を、座席支持台17の上面に設ける構成に代えて、揺動板30の下面に設ける構成にしてもよい。
(2)異なる弾性係数を有するそれぞれのゴムスポンジS1,S2,S3の積層順序は任意の順序でよい。
(3)ゴムスポンジ44を構成する異なる弾性係数を有するそれぞれのゴムスポンジS1,S2,S3の厚みは適宜変更しても良く、相互に異なる厚みを有するもので構成してもよい。
(4)上記実施の形態においては、複合弾性部材としてのゴムスポンジ44は、3種の異なる弾性係数を有するゴムスポンジS1,S2,S3を積層接合して構成したものについて例示したが、積層接合するゴムスポンジは2種或いは3種以上であってもよい。
(5)上記実施の形態においては、複合弾性部材を、弾性係数の異なるゴムスポンジS1,S2,S3で構成してあるが、ゴムスポンジではなく、弾性変形可能なその他の部材を積層接合して構成してもよい。
(6)上記実施の形態においては、運転座席13を四連リンク機構31により上下移動可能に構成しているが、運転座席13を座席支持台17に揺動自在に連結することにより上下移動可能に構成してもよいし、その他の連結構造によるものでもよい。
(7)上記実施の形態においては、乗用芝刈機の運転座席支持構造に付いて例示したが、トラクタやコンバインなどのその他の作業車の運転座席支持構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】乗用型草刈り機の全体側面図
【図2】乗用型草刈り機の全体平面図
【図3】伝動系統図
【図4】運転座席支持構造の側面図
【図5】運転座席支持構造の正面図
【図6】PTOクラッチの縦断側面図
【図7】回転カム板のボール係入溝の形状を示す図
【図8】回転カム板及び押圧板のボール係入溝の形状を示す断面図
【符号の説明】
【0043】
S1 弾性部材
S2 弾性部材
S3 弾性部材
13 運転座席
17 座席支持フレーム
44 複合弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗運転部に座席支持フレームを設け、前記座席支持フレームに運転座席を上下移動可能に連結し、前記運転座席の下方に、弾性係数が異なるシート状の弾性部材を上下方向に接合した複合弾性部材を配置して、前記運転座席が前記複合弾性部材により支持されるように構成してある作業車の運転座席支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7978(P2006−7978A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188314(P2004−188314)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】