説明

作業車両のためのエアコン装置及びこのエアコン装置を備えた作業車両

【課題】エンジンルームのスペースを大きくすることなく、コンデンサを効率よく冷却するエアコン装置、及びそのようなエアコン装置を備えた作業車両を提供する。
【解決手段】ボンネット13によって上方をカバーされたエンジンルーム100内にエンジン81とエンジン冷却用ラジエータユニット9とを配置するとともに、キャビンを備えた作業車両のためのエアコン装置5において、ボンネット13にコンデンサハウジング7が設けられ、コンデンサハウジング7内にエアコン用コンデンサ60が配置され、ラジエータユニット9によって生成される冷却空気流がコンデンサハウジング7に流れ込むようにコンデンサハウジング7とラジエータユニット9とが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンネットによって上方をカバーされたエンジンルーム内にエンジンとエンジン冷却用ラジエータユニットとを配置するとともに、キャビンを備えた作業車両のためのエアコン装置、及びそのようなエアコン装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
メインフレームの前後に配置された左右前輪と左右後輪と、メインフレームの後部にリンク連結されるとともに前方に延びるブームアッセンブリと、メインフレームの後部に配置されたエンジンルームと、エンジンルームの前方に配置されたキャビンとを備えた作業車両としてのスキッドステアローダが米国特許7,426,909号公報から知られている(特許文献1)。このスキッドステアローダにおいては、エンジンルームに縦置き配置されたエンジンの上方にエンジン冷却装置を構成するファン付きラジエータが配置され、このラジエータの後方でエンジンの上方にキャビン内部を冷却するエアコン装置のためのコンデンサとこのコンデンサを冷却するファンが配置されている。この従来の空調装置を構成するコンデンサはエンジンルーム内のエンジン近くに配置されているため、十分な冷却効果を得るにはファンの容量を大きくする必要がある。また、コンデンサを冷却するためファンをその回転軸が水平となるように配置していることから、エンジンルームのスペースが大きくなり、コンパクト化に関して不利である。
【0003】
また、エアコンコンデンサを一次エアコンコンデンサと二次エアコンコンデンサとに分割し、一次エアコンコンデンサを別置きとしてその後面側にラジエータのファンシュラウドに通じるダクトを接続すると共に、二次エアコンコンデンサをインタクーラ2とラジエータとの間に配設した車両用エアコン装置も知られている(特許文献2)。この従来の車両用エアコン装置における2つのエアコンコンデンサがエンジンルームのどの場所に配置されているかは開示されておらず、それらがエンジンルーム内部に配置されているなら、そのダクトも含めてエンジンルームにおいて大きなスペースを占めることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許7,426,909号公報(第3欄−第5欄、図2)
【特許文献2】特開2004−122897号公報(段落番号0016、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑み、エンジンルームのスペースを大きくすることなく、コンデンサを効率よく冷却するエアコン装置、及びそのようなエアコン装置を備えた作業車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、キャビンを備えた作業車両のためのエアコン装置は、ボンネットによって上方をカバーされたエンジンルーム内にエンジンとエンジン冷却用のラジエータユニットとが配置されるとともに、前記ボンネットにコンデンサハウジングが設けられ、さらに前記コンデンサハウジング内にエアコン用コンデンサが配置され、前記ラジエータユニットによって生成される冷却空気流が前記コンデンサハウジングに流れ込むように前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとが接続されている。この構成によれば、コンデンサがボンネットに配置されているので、コンデンサがエンジンルーム内に要求するスペースは大きくなく、コンデンサが占める配置スペースはボンネット周辺の余り利用されていない領域である。このことから、このコンデンサの配置はエンジンルームのコンパクト化に貢献する。さらには、ボンネットはその裏面側はエンジンの熱にさらされることになるが、その表面側は外気と接触しており、エンジンルーム内においてボンネットの周辺領域は温度的には有利な領域であり、ボンネットに設けられたコンデンサハウジングにコンデンサを配置する構造の採用により、コンデンサへの熱負荷が低減される。さらに、コンデンサで利用される冷却空気流(冷却風)は、ラジエータユニットによって作り出されるので、コンデンサ専用のファンは不要となり、コスト的にも有利である。
【0007】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記コンデンサハウジングに前記ラジエータユニットと連通する内側空気流通口と前記ボンネット外に開口する外側空気流通口とを有する空気流通路が形成されており、前記空気流通路に前記エアコン用コンデンサが配置されている。この空気流通路における冷却風の流れはラジエータユニットによって作り出されるが、内側空気流通口から外側空気流通口へ冷却風が流れる吹き出しタイプと、外側空気流通口から内側空気流通口へ冷却風が流れる吸い込みタイプとから、その冷却仕様によって選択することができる。それぞれのタイプによって、ラジエータユニットにおけるファンとファンシュラウドの形状等が変更される。
【0008】
例えば、内側空気流通口をコンデンサのための空気流入口とするとともに外側空気流通口をコンデンサのための空気流出口とする場合ラジエータユニットのファンはコンデンサにとって送り込みファンとして機能し、外側空気流通口をコンデンサのための空気流入口とするとともに内側空気流通口をコンデンサのための空気流出口とする場合、ラジエータユニットのファンはコンデンサにとって吸い込みファンとして機能する。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ボンネットの閉鎖位置と開放位置との間の開閉揺動に伴って前記コンデンサハウジングは前記閉鎖位置に対応する第1姿勢と前記開放位置に対応する第2姿勢の間で姿勢変更し、前記コンデンサハウジングは前記ボンネットの前記閉鎖位置における第1姿勢において前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとの間で冷却空気流が流通可能となるように前記ラジエータユニットと接続するように構成されている。この構成では、ボンネットは閉鎖位置に揺動されることで、コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとの間が冷却空気流が流通可能となるように接続される。従って、コンデンサハウジングとラジエータユニットとを常時つないでおくホース等が不必要となり、その引き回しのための無駄なスペースをなくすことができる。
【0010】
本発明によるエアコン装置は、車体フレームと、車体フレーム内に形成されたエンジンルーム内に配置されたエンジン及びエンジン冷却用ラジエータユニットと、前記エンジンルームの上方をカバーするボンネットと、前記車体フレームに支持されたキャビンとからなる作業車両におけるエアコン装置のために採用されると好適である。コンデンサを含むコンデンサハウジングがボンネットに形成されるので、コンデンサハウジングが占有するエンジンルームのスペースが小さいこと、及びコンデンサハウジングが受ける熱負荷も従来に比べ比較的小さくなるからである。
【0011】
さらに、好適な実施形態の1つでは、前記コンデンサハウジングが、前記ボンネットから外部に突き出した上側ハーフ部と前記ボンネットから前記エンジンルーム内に突き出した下側ハーフ部とからなり、前記上側ハーフ部と前記下側ハーフ部との境界領域に前記コンデンサが配置されている。この構成では、コンデンサハウジングの少なくとも一部が外気に常に触れていることからエンジンからの大きな熱負荷を受けにくく、その内部に収容されているコンデンサはより高い冷却効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態を示すスキッドステアローダの側面図である。
【図2】図1によるスキッドステアローダの斜め後方からみた斜視図である。
【図3】コンデンサハウジングを取り付けたボンネットとエンジンルームを示す側面図である。
【図4】ボンネットに取り付けられたコンデンサハウジングとラジエータユニットを示し、(a)はその分解斜視図であり、(b)はコンデンサハウジングとラジエータユニットとが接続した状態での斜視図である。
【図5】ボンネットの開閉カバー部の一連の揺動姿勢を説明する説明図である。
【図6】エアコン装置の配管を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるエアコン装置を搭載した作業車両の好適な実施形態の一例としてのスキッドステアローダを添付の図面に基づいて説明する。図1はスキッドステアローダの側面図であり、図2はそのスキッドステアローダの斜め後方からみた斜視図である。これらの図に示すように、スキッドステアローダは、メインフレームアッセンブリ1と、メインフレームアッセンブリ1に装着したブームアッセンブリ2と、メインフレームアッセンブリ1を支持する左右一対の走行アッセンブリ3とを備え、メインフレームアッセンブリ1の前部側にキャビン4が搭載されている。この実施形態におけるブームアッセンブリ2には、インプル(作業装置)としてバケットローダ作業装置が装着されているので、この作業車両はローダとして機能するが、これに代えて除雪作業装置などを装着することで、この社業車両を除雪機として機能させたりすることが可能である。
【0014】
メインフレームアッセンブリ1は、図示は省略されているが、底部と、左右一対の側壁と、前後壁とを有する上方が開口した箱形フレーム10を車体フレームとして備えている。箱形フレーム10の後部には、ブームアッセンブリ2を装着するためのブーム支持部11が左右一対で形成されている。このブーム支持部11には、連結ピン等の連結部材を介してブームアッセンブリ2を装着するためのボス部が設けられている。さらに、箱形フレーム10の後壁は後部ボンネット12としての機能をもつべく、貫通孔が設けられており、箱形フレーム10の内部空間と車両外部との間の空気流通を可能にしている。図2に示されているように、箱形フレーム10の後壁からキャビン4に達する箱形フレーム10の上方開放領域を覆うボンネット13が設けられている。このボンネット13の後方の大部分は開口されており、その開口を開放可能に揺動閉鎖する開閉カバー部13aがボンネット13の構成部材として設けられている。
【0015】
ブームアッセンブリ2は図1と図2に示すように、メインフレームアッセンブリ1の左右両側に配置された左右一対のブーム21とブーム21の先端に装着されたバケット(作業具の一種)22とを備えている。左右一対のブーム21は、メインフレームアッセンブリ1の後上部に基部側が第1リフトリンク23と第2リフトリンク24とを介して上下揺動自在に支持されている。左右一対のブーム21の基部側とブーム支持部11の下部との間に設けられた複動式油圧シリンダからなる左右一対のブームシリンダ25によって、ブーム21の先端側がメインフレームアッセンブリ1の前方側で昇降する。第1リフトリンク23は、その基部がブーム支持部11の後上部に設けられたボス部に横断方向の揺動軸26a回りで揺動自在に枢着されており、先端部がブーム21の基部に左右方向の揺動軸26b回りで揺動自在に連結されている。第2リフトリンク24は、その基部がメインフレームアッセンブリ1のブーム支持部11の前側上部に設けられたボス部に横断方向の揺動軸26c回りで揺動自在に枢着されており、その先端部がブーム21の基部から先端側へ離れた位置に横断方向の揺動軸26d回りで揺動自在に連結されている。そして、ブームシリンダ25は、その基部がメインフレームアッセンブリ1のブーム支持部11の後側下部に設けられたボス部に横断方向の揺動軸26e回りで揺動自在に枢着されており、そのピストンロッドの先端部がブーム21の基部から先端側へ離れた位置に左右方向の揺動軸26f回りで揺動自在に連結されている。揺動軸26fは、揺動軸26eよりもブーム21の先端側の位置とされている。これによって、左右一対のブーム21は、キャビン4に干渉することなくキャビン4の左右両側で上下揺動自在に支持される。バケット22はブラケット22aを介してブーム21の先端部に左右方向の揺動軸26g回りで揺動自在に支持されており、複動式油圧シリンダからなるバケットシリンダ27により揺動動作(スクイ・ダンプ動作)される。
【0016】
走行アッセンブリ3は、それ自体公知であるので、詳しく述べないが、図1と図2から明らかなように、トラックフレーム31に支持された前後一対の従動輪32と、これら前後一対の従動輪32間の上方に配置された駆動輪33と、下方に配置された複数の転輪34とを有し、これら従動輪32、駆動輪33及び転輪34にクローラ35を巻き掛けてなるクローラ走行アッセンブリにより構成されている。左右一対の走行アッセンブリ3は、トラックフレーム31がメインフレームアッセンブリ1の箱形フレーム10の左右両側の側壁に固定されることによってメインフレームアッセンブリ1を走行可能に支持している。駆動輪33が図示されていない左右一対の独立制御される油圧式モータにより回転駆動されることで、このスキッドステアローダを前後進動作及び左右旋回動作させる。
【0017】
キャビン4は、図1と図2から理解できるように箱状に形成されており、内部に運転席などの配置された運転室40が形成されている。図示は省略されているが、キャビン4の後部に設けられたブラケットが箱形フレーム10に設けられた支持ブラケットに揺動軸を介して連結されていることによりキャビン4は揺動自在となっている。このキャビン4の揺動により、キャビン4によって覆われていた箱形フレーム10の前方領域が露出し、この前方領域に配置されているオイルタンクや燃料タンクの保守点検が容易となる。運転者の運転室40への乗車と降車は、ここでは図示されていない、キャビン5の前側に設けられたドアを通じて行われる。
【0018】
運転室40内に配置されている運転席は箱形フレーム10側に支持されており、その左右に走行系操作レバーとローダ作業系操作レバーとが設けられている。キャビン4の前後面には視界性のよい大型のウインドガラスが装着されており、また、キャビン4の左右両側面には、運転者の視界を確保するために多数の小孔が設けられている。キャビン4の上面や底面は、実質的に閉鎖されており、キャビン4の閉鎖により運転室40は閉鎖空間となる。このため、この運転室40の移住環境を良好にするための空調システムを構成するエアコン装置5が、このスキッドステアローダには搭載されている。図2から理解できるように、このエアコン装置5のコンデンサ60がボンネット13の開閉カバー部13aに形成されたコンデンサハウジング7に収容されている。
【0019】
図3は、メインフレームアッセンブリ1を構成する箱形フレーム10の後方領域に形成されたエンジンルーム100に配置された動力部8と、ボンネット13の開閉カバー部13aに形成されたコンデンサハウジング7を側面視で示している。このコンデンサハウジング7にはエアコン装置5のコンデンサ60が収納されている。
【0020】
動力部8は、エンジン81と、エンジン81と後部ボンネット12の間に配置されたエンジン冷却装置としての縦置きのラジエータユニット9と、エンジン81の前方に配置された油圧式変速装置(HST)83とを備えている。さらに、図示されていないが、油圧式変速装置83の前方に3連のギヤポンプであるオイルポンプや、作動油タンク、油圧制御装置が配置されている。油圧式変速装置83は、走行アッセンブリ3のここでは図示されていない油圧式モータへの作動油の供給量を調整することにより変速するものである。走行アッセンブリ3の油圧式モータの回転方向の切替は、キャビン4内に設けられた、ここでは図示されていない走行系操作レバーの左右又は前後の選択操作により行われ、また、油圧式モータの回転速度の調整は、走行系操作レバーの操作角度の大きさに比例して行われる。
【0021】
ラジエータユニット9は、ラジエータ本体90と、ラジエータ本体90に隣接しているファンシュラウド91と、ファンシュラウド91内に配置されたファン92を備えている。ファン92は、詳しく図示されていないベルト伝動機構を介してエンジン動力によって回転駆動される。また、同様にベルト伝動機構を介してエンジン動力によって回転駆動されるエアコン装置5用コンプレッサ51が、コンデンサハウジング7とエンジン81との間に配置され、エンジン81の上端部に取り付けられている。図4にわかりやすく示されているように、ファンシュラウド91の上部には接続ノズル部93が設けられており、この接続ノズル部93の周壁端面が平坦な接続面93aとして形成されている。コンデンサハウジング7の下面にも接続開口部70が設けられており、ファンシュラウド91の接続ノズル部93は、コンデンサハウジング7の接続開口部70と付き合わせ接続可能である。良好な密封接続性を得るために、接続開口部70の開口周部と接続ノズル部93の開口周部には、それぞれ対応する寸法形状を有する平坦な接続面70aと接続面93aが形成されている。ファンシュラウド91とコンデンサハウジング7との接続によって、接続開口部70の開口周部によって境界付けられたコンデンサ側冷却風接続口94と、接続ノズル部93の開口周部によって境界付けられたラジエータ側冷却風接続口とが連通することになる。
【0022】
この実施形態では、コンデンサハウジング7内での冷却風の流れ方向は、ラジエータユニット9からコンデンサハウジング7への方向であり、ファン92はコンデンサハウジング7への吹き出しタイプとして機能している。従って、ファン92は模式的にしか示されていないが、エンジン81の周囲を通り抜けて吸引した冷却風をラジエータ本体90に送り込むことで、エンジン81とラジエータ本体90を冷却する。さらに、このファン92によって作り出される冷却風はファンシュラウド91の接続ノズル部93とコンデンサハウジング7と接続開口部70とを通じてコンデンサハウジング7にも送り込まれる。
【0023】
図4から理解できるように、ボンネット13の中央領域は開閉カバー部13aとして形成されており、この開閉カバー部13aは支持ブラケット13bによって箱形フレーム10または固定のボンネット部分に揺動可能に支持されている。開閉カバー部13aにはその中央部にかなり大きな開口が設けられており、その開口にコンデンサハウジング7が装着されている。
【0024】
コンデンサハウジング7は、実質的に箱型(直方体)形状であり、底壁部71、側壁部72、カバー状の天壁部73とからなる。図3と図4とから明らかなように、コンデンサハウジング7の上側ハーフ部7Aが開閉カバー部13aから外側に突き出ており、コンデンサハウジング7の下側ハーフ部7Bが開閉カバー部13aから内側に突き出ている。天壁部73には、冷却風を放出する主流出口73aとして外側空気流通口が形成されているとともに、さらにこの主流出口73aを補うためにその両側または片側に補助流出口73bが形成されている。底壁部71の後方側には、内側空気流通口として上述した接続開口部70が形成されており、残りの底面領域は前方に行くほど高くなるように傾斜面として形成されている。つまり、接続開口部70からその横断面積が上側に徐々に広がった上向きラッパ状の内部空間がコンデンサハウジング7の下側ハーフ部7Bに形成されている。このコンデンサハウジング7は、内側空気流通口としての流入口を作り出している接続開口部70から外側空気流通口としての主流出口73a及び補助流出口73bに至る空気通路を作り出している。この空気通路の途中で、コンデンサハウジング7の上側ハーフ部7Aと下側ハーフ部7Bとのほぼ境界領域に薄い直方体状のコンデンサ60前方下方にやや傾斜した傾斜姿勢で配置されている。コンデンサ60の断面積は、空気通路の流れ断面にほぼ一致しているので、ファンシュラウド91の接続ノズル部93から送り込まれてきた冷却風をコンデンサ60はその全面で受けることができ、効率のよいコンデンサ60の冷却が可能となる。さらには、コンデンサハウジング7の下側ハーフ部7Bはエンジンルーム100の熱気にさらされているが、コンデンサハウジング7の上側ハーフ部7Aはエンジンルーム100の空気より通常は低い温度である外気にさらされており、コンデンサ60はそのほぼ境界領域に配置されていることから、直接エンジンルーム100の熱気にさらされている配置に比べてその熱負荷が小さい。なお、コンデンサ60の下面には、エアコン冷媒の流入用管接続部62と流出用管接続部63が設けられている。天壁部73に横方向に細長く延びるように形成された主流出口73aは、雨などは入りにくくするためその幅は狭くされているが、なおそこから入り込んでくる雨水等が直接コンデンサ60にかかることを避けるために、樋部73cが設けられている。この樋部73cはその一端側を天壁部73の裏面に取り付けられ、その自由端が主流出口73aを通じて入り込んでくる雨水等を受け止めるべく凹湾曲状にに曲げられ、樋を作り出している。この樋部73cは、コンデンサ60の両端から所定長さだけオーバーハングする長さを有しており、受け止められた雨水等はコンデンサ60の外側で落下することになる。
【0025】
上述したように、コンデンサハウジング7を装着している開閉カバー部13aは支持ブラケット13bによって箱形フレーム10または固定されているボンネット部分に対して揺動可能に支持されているので、ボンネット13の開閉カバー部13aの開閉揺動に伴って結果的に箱形フレーム10に対して、つまりラジエータユニット9に対して揺動動作を行う。開閉カバー部13aにおけるコンデンサハウジング7の取り付け姿勢は、開閉カバー部13aが閉鎖位置に揺動した際に、コンデンサハウジング7と接続開口部70とファンシュラウド91の接続ノズル部93とが接続するように設定されている。なお、その際の接続ノズル部93の接続面93aと接続開口部70の接続面70aとの接続密封性を確保するため、接続面93aと接続面70aとの間に弾性封止部材95が介装されることが好適である。
【0026】
ボンネット13の開閉カバー13aを図5の(a)に示す閉鎖位置から、ガススプリング76の補助力を受けて、図5の(b)に示す開放位置に開放することにより、コンデンサハウジング7の接続開口部70もファンシュラウド91の接続ノズル部93から離脱するので、その開口を通じてのコンデンサ60の状態をチェックすることができる。これにより、コンデンサの保守点検も容易となる。
【0027】
上述したコンデンサ60を含む、エアコン装置5の模式的な配管図が図6に示されている。このエアコン装置5は、自動車用エアコンとしてよく知られているように、コンプレッサ51と、コンデンサ60と、クーリングユニット52と、空調ダクト54と、これらの構成要素を連結する連結パイプ53a、53b、53c、及び図示されていないタンクから構成されている。コンプレッサ51で高圧化され、温度が高くなった冷媒はコンデンサ60で冷やされ、クーリングユニット52で低圧化に伴って熱を奪う吸熱(蒸発)プロセスが行われる。クーリングユニット52は蒸発器として機能するので、そこで冷却された空気は、空調ダクト54を通って、キャビン4内の運転室40に開口したエアコン吹き出し口から冷却空気を放出する。暖房時にはクーリングユニット52は、空気を冷却除湿した後に過熱を行うリヒート機能を実行するが、その説明は省略する。
【0028】
上述した実施形態では、コンデンサハウジング7内での冷却風の流れ方向をラジエータユニット9からコンデンサハウジング7への方向とし、ファン92はコンデンサハウジング7への吹き出しタイプとして機能していたが、これに代えて、コンデンサハウジング7内での冷却風の流れ方向をコンデンサハウジング7からラジエータユニット9への方向とし、ファン92をコンデンサハウジング7へ外気を吸い込む吸い込みタイプとして機能させてもよい。つまり、ファン92はエンジン81の傍を通過させながら吸い込む空気流とコンデンサ60を通過させながら吸い込む空気流とを合流させた空気流をラジエータ本体90に送り込むことになる。この場合、コンデンサ60には外気である新鮮な空気が直接送り込まれるという利点が得られる。
【0029】
上述した実施形態において、一つの実施形態の特徴は他の実施形態の特徴と組み合わせることができ、そのような組み合わせは、矛盾が生じない限り、本発明の範囲に含まれることをここに明記しておく。
【符号の説明】
【0030】
4:キャビン
10:箱形フレーム
13:ボンネット
13a:開閉カバー部
40:運転室
5:エアコン装置
60:コンデンサ
7:コンデンサハウジング
7A:上側ハーフ部
7B:下側ハーフ部
70:流入口(接続開口部)
71:底壁部
72:側壁部
73:天壁部
73:ダクト空間部
73a:流出口
74:熱遮断カバー
71a:開口部
100:エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットによって上方をカバーされたエンジンルーム内にエンジンとエンジン冷却用のラジエータユニットとを配置するとともに、キャビンを備えた作業車両のためのエアコン装置であって、
前記ボンネットにコンデンサハウジングが設けられ、前記コンデンサハウジング内にエアコン用コンデンサが配置され、前記ラジエータユニットによって作り出される冷却空気流が前記コンデンサハウジングに流れ込むように前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとが接続されるエアコン装置。
【請求項2】
前記コンデンサハウジングに前記ラジエータユニットと連通する空気流入口と前記ボンネット外に開口する空気流出口とを有する空気流通路が形成されており、前記空気流通路に前記エアコン用コンデンサが配置されている請求項1に記載のエアコン装置。
【請求項3】
前記ボンネットの閉鎖位置と開放位置との間の開閉揺動に伴って前記コンデンサハウジングは前記閉鎖位置に対応する第1姿勢と前記開放位置に対応する第2姿勢の間で姿勢変更し、前記コンデンサハウジングは前記ボンネットの前記閉鎖位置における第1姿勢において前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとの間で冷却空気流が流通可能となるように前記ラジエータユニットと接続する請求項1または2に記載のエアコン装置。
【請求項4】
車体フレームと、車体フレーム内に形成されたエンジンルーム内に配置されたエンジン及びエンジン冷却用のラジエータユニットと、前記エンジンルームの上方をカバーするボンネットと、前記車体フレームに支持されたキャビンと、前記キャビンのためのエアコン装置とを備えた作業車両であって、
前記ボンネットにコンデンサハウジングが設けられ、前記コンデンサハウジング内にエアコン用コンデンサが配置され、前記ラジエータユニットによって生成される冷却空気流が前記コンデンサハウジングに流れ込むように前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとが接続される作業車両。
【請求項5】
前記コンデンサハウジングは、前記ボンネットから外部に突き出した上側ハーフ部と前記ボンネットから前記エンジンルーム内に突き出した下側ハーフ部とからなり、前記上側ハーフ部と前記下側ハーフ部との境界領域に前記コンデンサが配置されている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記コンデンサハウジングに前記ラジエータユニットと連通する空気流入口と前記ボンネット外に開口する空気流出口とを有する空気流通路が形成されており、前記空気流通路に前記エアコン用コンデンサが配置されている請求項4または5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記ボンネットに、閉鎖位置と開放位置との間で開閉揺動可能な開閉カバー部が形成されており、当該開閉カバー部に前記コンデンサハウジングが設けられ、
前記コンデンサハウジングは前記開閉カバー部の前記閉鎖位置に対応する姿勢において前記コンデンサハウジングと前記ラジエータユニットとの間で冷却空気流が流通可能となるように前記ラジエータユニットと接続する請求項4から6のいずれか一項に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−16437(P2011−16437A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162057(P2009−162057)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】