説明

作業車両のエンジン制御装置

【課題】作業車両が停車しているときにだけ、エンジンを自動的に停止させる作業車両のエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】作業車両のエンジン制御装置は、フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダルが踏込無状態、かつトランスミッションが中立状態、かつパーキングブレーキ装置が作動状態、かつサービスブレーキ装置が非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定し、アイドリングストップ条件が成立した状態が所定時間を経過したときに、エンジンを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロント装置を作動させるコントロールレバーの操作されない状態が設定された時間を超えたときは、アイドリング運転中のエンジンを自動的に停止させる作業車両のエンジン制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3825289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエンジン制御装置では、コントロールレバーの操作されない状態が設定された時間を超えると、アイドリング運転中のエンジンを自動的に停止させる。したがって、特許文献1のエンジン制御装置では、慣性走行しているとき(たとえば、平地をローアイドルで惰性走行しているときや下り坂をローアイドルで降坂走行しているとき)に、コントロールレバーの操作されない状態が設定された時間を超えると、エンジンが自動的に停止することになる。そのため、特許文献1のエンジン制御装置を備えた作業車両を操作するオペレータは、慣性走行中にエンジンが停止するのを防ぐために、常に注意を払う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、フロント装置の非作動状態を判定するフロント装置非作動判定手段と、ステアリング装置の非作動状態を判定するステアリング装置非作動判定手段と、アクセルペダルの踏込無状態を判定するペダル踏込無状態判定手段と、トランスミッションの中立状態を判定する中立状態判定手段と、パーキングブレーキ装置の作動状態を判定するパーキングブレーキ作動判定手段と、サービスブレーキ装置の非作動状態を判定するサービスブレーキ非作動判定手段と、フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダルが踏込無状態、かつトランスミッションが中立状態、かつパーキングブレーキ装置が作動状態、かつサービスブレーキ装置が非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定する条件判定手段と、条件判定手段によりアイドリングストップ条件が成立していると判定されたときから時間の計測を開始し、アイドリングストップ条件の成立が維持されている間だけ時間を計測する時間計測手段と、時間計測手段により計測された時間が、所定時間を経過したか否かを判定する時間経過判定手段と、時間計測手段で計測された時間が所定時間を経過したと時間経過判定手段により判定されたときに、エンジンを停止させるエンジン自動停止制御手段とを備えていることを特徴とする作業車両のエンジン制御装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、エンジンの始動、運転および停止の少なくとも3つの操作位置を有するイグニッションスイッチと、エンジン自動停止制御手段によりエンジンが停止された後、イグニッションスイッチが停止の操作位置に操作されたとき、時間計測手段により計測された時間をリセットすることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の作業車両のエンジン制御装置において、パーキングブレーキ装置の作動状態をアイドリングストップ条件から除外する選択部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業車両が停車しているときにだけ、エンジンを自動的に停止させることができる。オペレータは運転中に意図せずにエンジンが停止するのを防ぐために注意を払う必要がないため、オペレータの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】作業車両の一例であるホイールローダの側面図。
【図2】ホイールローダの運転室内に配置される操作部材を示す図。
【図3】ホイールローダの制御系の概略構成を示す図。
【図4】トランスミッションの概略構成を示す図。
【図5】コントロールレバーのレバー操作量とパイロット圧との関係を示す図。
【図6】アクセルペダルの操作量と目標エンジン回転速度の関係を示す図。
【図7】ブレーキペダルの操作量とブレーキ圧の関係を示す図。
【図8】本発明の一実施の形態によるホイールローダにおけるエンジン自動停止制御処理の動作を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る作業車両のエンジン制御装置の一実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダ100の側面図である。ホイールローダ100は、アーム111、バケット112、タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121、エンジン室122、タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。
【0009】
リフトアーム(以下、単にアームと呼ぶ)111は前部車体110に対して上下方向に回動可能に取り付けられ、アームシリンダ114の駆動により回動駆動される。バケット112はアーム111の先端において、アーム111に対して前後傾方向(上下方向)に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ115の駆動により回動駆動される。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0010】
図2はホイールローダ100の運転室内に配置される操作部材を示す模式図である。運転室には、オペレータがホイールローダ100を操舵するためのステアリングホイール62と、オペレータがエンジン1を始動または停止させるためのイグニッションスイッチ86と、アクセルペダル52と、左右で連動する一対のブレーキペダル31と、パーキングブレーキスイッチ83と、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87とが配設されている。運転室にはまた、アーム111を上方向あるいは下方向に回動させるためのアーム操作レバー72と、バケット112を後傾方向(上方向)あるいは前傾方向(下方向)に回動させるためのバケット操作レバー73とが配設されている。バケット112が後傾方向に回動されることをバケット112がチルトされる、とも言う。バケット112が前傾方向に回動されることをバケット112がダンプされる、とも言う。
【0011】
ステアリングホイール62の下方には、ステアリングコラムの側部から突出するように前後進切換レバー81が配設されている。前後進切換レバー81は、操作に応じて前進を指示する前進信号、後進を指示する後進信号、および、中立を指示する中立指示信号を出力する。
【0012】
図3は、ホイールローダ100の制御系の概略構成を示す図である。エンジン1の出力軸にはトルクコンバータ2(以下、トルコンと呼ぶ)の入力軸21(図4参照)が連結され、トルコン2の出力軸22(図4参照)はトランスミッション3に連結されている。トルコン2は周知のインペラ,タービン,ステータからなる流体クラッチであり、エンジン1の回転はトルコン2を介してトランスミッション3に伝達される。トランスミッション3は、後述するようにその速度段を1速〜4速に切り換える液圧クラッチを有し、トルコン2の出力軸22の回転はトランスミッション3で変速される。変速後の回転が、プロペラシャフト4,アクスル5を介してタイヤ113,123に伝達されて、ホイールローダ100が走行する。
【0013】
トルコン2は入力トルクに対して出力トルクを増大させる機能、つまりトルク比を1以上とする機能を有する。トルク比は、トルコン2の入力軸21の回転速度Niと出力軸22の回転速度Ntの比であるトルコン速度比e(=Nt/Ni)の増加に伴い小さくなる。たとえばエンジン回転速度が一定状態で走行中に走行負荷が大きくなると、トルコン2の出力軸22の回転速度Ntが低下、つまり車速が低下し、トルコン速度比eが小さくなる。このとき、トルク比は増加するため、より大きな走行駆動力(牽引力)で車両走行可能となる。
【0014】
トランスミッション3の構成について説明する。図4は、トランスミッション3の概略構成を示す図である。トランスミッション3は、トルコン出力を1速〜4速のいずれかに変速する。トランスミッション3は、複数のクラッチシャフトSH1〜SH3、アウトプットシャフトSH4、複数のギヤG1〜G13、前進用の油圧クラッチ(前進クラッチ)18、後進用の油圧クラッチ(後進クラッチ)19、1速〜4速用の油圧クラッチC1〜C4を備える。各油圧クラッチ18,19,C1〜C4は、トランスミッション制御装置20を介して供給される圧油(クラッチ圧)により係合動作または解放動作を行う。すなわち油圧クラッチ18,19,C1〜C4に供給されるクラッチ圧が増加するとクラッチ18,19,C1〜C4は係合動作を行い、クラッチ圧が減少すると解放動作を行う。
【0015】
トルコン2の出力軸22は、クラッチシャフトSH1に連結され、アウトプットシャフトSH4の両端部は、図3のプロペラシャフト4を介して車両前後のアクスル5に連結されている。図4では、前進クラッチ18と1速用クラッチC1とが係合状態で、他のクラッチ19,C2〜C4が解放状態にある。この場合には、ギヤG1とクラッチシャフトSH1が一体になって回転するとともに、ギヤG6とクラッチシャフトSH2が一体になって回転する。
【0016】
このときエンジン1の出力トルクは、図4に太線で示すようにトルコン2の入力軸21、出力軸22、クラッチシャフトSH1、前進クラッチ18、ギヤG1,G3,G5,G6、1速用クラッチC1、クラッチシャフトSH2、ギヤG8,G12を介してアウトプットシャフトSH4に伝達される。これにより1速走行が可能となる。
【0017】
1速から2速に変速する場合には、トランスミッション制御装置20を介して供給されるクラッチ圧により1速用クラッチC1を解放状態とし、2速用クラッチC2を係合状態とする。これによりエンジン1の出力トルクは、トルコン2の入力軸21、出力軸22、クラッチシャフトSH1、前進クラッチ18、ギヤG1,G3,G7、2速用クラッチC2、クラッチシャフトSH2、ギヤG8,G12を介してアウトプットシャフトSH4に伝達され、2速走行が可能となる。1速から2速以外の変速、すなわち2速から3速、3速から4速、4速から3速、3速から2速、2速から1速への変速も同様にクラッチC1〜C4を制御することで行われる。
【0018】
自動変速制御には、トルコン速度比eが所定値に達すると変速するトルコン速度比基準制御と、車速が所定値に達すると変速する車速基準制御の2つの方式がある。本実施の形態では、トルコン速度比基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御する。
【0019】
図3に示すように、油圧回路HC1は、エンジン1により駆動される油圧ポンプ13と、フロント装置用アクチュエータ71と、フロント装置用コントロールバルブ70と、ステアリング用アクチュエータ61と、ステアリングバルブ60と、分流弁15と、油タンク34と、ポンプ圧センサ14とを備えている。
【0020】
分流弁15は、油圧ポンプ13から吐出される圧油をフロント装置用アクチュエータ71側とステアリング用アクチュエータ61側に所定の分流比で分流する。
【0021】
本実施の形態に係るホイールローダ100のフロント装置は、アーム111と、バケット112と、フロント装置用アクチュエータ71と、フロント装置用コントロールバルブ70とを含んで構成されている。フロント装置用アクチュエータ71としては、アーム111を回転駆動するアームシリンダ114と、バケット112を回転駆動するバケットシリンダ115とがあるが、説明上、フロント装置用アクチュエータ71は、以下、アームシリンダ114として説明する。フロント装置用アクチュエータ71がアームシリンダ114である場合、フロント装置用コントロールバルブ70は、アーム用コントロールバルブであって、油圧ポンプ13からフロント装置用アクチュエータ71(アームシリンダ114)への圧油の流れを制御する。
【0022】
本実施の形態に係るホイールローダ100のステアリング装置は、ステアリング用アクチュエータ61と、ステアリングバルブ60とを含んで構成されている。ステアリング用アクチュエータ61は、一対のステアリングシリンダにより構成されているが、一方のステアリングシリンダを代表して図示している。一対のステアリングシリンダは、前部車体110と後部車体120との間に設けられている。一対のステアリングシリンダの基端部は前部車体110に、一対のステアリングシリンダのピストンロッドは後部車体120にそれぞれ連結されている。
【0023】
油圧ポンプ13はエンジン1により駆動され、この油圧ポンプ13から吐出された圧油は、分流弁15およびステアリングバルブ60を介してステアリング用アクチュエータ61へ供給され、分流弁15およびフロント装置用コントロールバルブ70を介してフロント装置用アクチュエータ71へ供給される。フロント装置用コントロールバルブ70(アーム用コントロールバルブ)は、アーム操作レバー72の操作により駆動され、アーム操作レバー72の操作量に応じてフロント装置用アクチュエータ71(アームシリンダ114)が駆動される。
【0024】
アーム操作レバー72は、アーム111を操作するコントロールレバーであり、アームの上昇/下降指令を出力する。アーム操作レバー72は、油圧パイロット式操作レバーであって、図5に示すように、レバー操作量Lに応じてパイロット圧pが出力される。レバー操作量Lが最小レバー操作量La未満であるときには、パイロット圧pは上昇せず、レバー操作量Lが最小レバー操作量Laになったときに、パイロット圧pがpaまで上昇する。
【0025】
アーム操作レバー72の不感帯を考慮してパイロット圧pa以上でフロント装置用コントロールバルブ70(アーム用コントロールバルブ)の切換動作が行われる。パイロット圧pbはアーム操作レバー72の最大レバー操作量Lbに対応した圧力である。レバー操作量Lが最小レバー操作量La〜最大レバー操作量Lbの範囲では、パイロット圧pはレバー操作量Lに比例して増加する。なお、バケット操作レバー73もアーム操作レバー72と同様の油圧パイロット式操作レバーであり、バケット112のチルト/ダンプ指令を出力する。
【0026】
ステアリングホイール62は、車両の進行方向を操作する操作部材であり、回転角度に応じてステアリングバルブ60を動作させる。ステアリングバルブ60はステアリングホイール62の回動角度に応じて油圧ポンプ13からステアリング用アクチュエータ61への圧油の流れ、すなわち一対のステアリングシリンダのそれぞれに対する流れの方向と流量を制御する。ステアリングホイール62が操作されると、一対のステアリングシリンダが伸縮され、前部車体110が後部車体120に対して回動されて操向が行われる。
【0027】
ポンプ圧センサ14は、油圧ポンプ13の吐出圧Ppを検出してポンプ圧信号をコントローラ10に出力する。コントローラ10は、後述するように、検出された油圧ポンプ13の吐出圧Ppに基づいて、フロント装置およびステアリング装置が作動状態にあるのか否かを判定する。
【0028】
図3に示すように、ホイールローダ100には、ホイールローダ100を減速、停止させるための周知の油圧式サービスブレーキ装置が設けられている。サービスブレーキ装置5aは、アクスル5に設けられ、ブレーキバルブ32を介してブレーキ油が供給されると、サービスブレーキ装置5aは作動油の圧力に応じた制動力を発生させる。フットブレーキ用パイロット回路HC2は、エンジン1によって駆動されて圧油を生成するパイロット油圧源63と、ブレーキペダル31の踏み込みに応じてパイロット2次圧力(ブレーキ圧)を発生するブレーキバルブ32とを有する。ブレーキペダル31の操作により、ブレーキバルブ32からのブレーキ圧がサービスブレーキ装置5aに作用する。これによりブレーキペダル31の操作に応じてサービスブレーキ装置5aが作動し、制動力が発生する。
【0029】
ホイールローダ100には、周知の電気スイッチ式パーキングブレーキ装置が設けられている。パーキングブレーキ装置38は、トランスミッション3に設けられ、コントローラ10からの制御信号に応じて、トランスミッション3の出力軸の回転を止めるように作動する。
【0030】
図3に示すコントローラ10およびエンジンコントローラ9は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ10には、イグニッションスイッチ86が接続されており、イグニッションスイッチ86の操作位置がコントローラ10によって検出される。イグニッションスイッチ86は、エンジンの始動、運転および停止の3つの操作位置を有している。イグニッションスイッチ86を始動位置に操作すると、コントローラ10は、セルモータ51およびエンジンコントローラ9に始動制御信号を出力して、エンジン1を始動させる。イグニッションスイッチ86の操作を止めるとイグニッションスイッチ86は運転位置に維持される。イグニッションスイッチ86を停止位置に操作すると、コントローラ10は、終了処理を実行してエンジン1や電源を停止する。
【0031】
コントローラ10には、アクセルペダル52のペダル操作量Sa(ペダルストロークまたはペダル角度)を検出するペダル操作量検出器52aと、エンジン1の実回転速度Naを検出して、実回転速度信号をコントローラ10に出力するエンジン回転数センサ50とが接続されている。
【0032】
コントローラ10は、ペダル操作量検出器52aで検出したアクセルペダル52の操作量に応じてエンジンの目標回転速度Nsを設定し、エンジンコントローラ9に目標回転速度指令を出力して、エンジン1の実回転速度(回転数)を制御する。図6は、アクセルペダル52の操作量Saと目標エンジン回転速度Nsの関係を示す図である。アクセルペダル52の操作量Saが大きくなると目標エンジン回転速度Nsは大きくなり、ペダル最大踏み込み時の目標エンジン回転速度Nsは定格回転速度となる。コントローラ10はこの目標エンジン回転速度Nsに対応した制御信号をエンジンコントローラ9に出力し、エンジン1の実回転速度Naが目標エンジン回転速度Nsとなるように制御する。オペレータは、車速を増加または走行駆動力を増加させたい場合に、アクセルペダル52の操作量Saを増やし、エンジン回転速度を大きくする。
【0033】
エンジンコントローラ9は、エンジン回転数センサ50で検出されたエンジン1の実回転速度Naと、コントローラ10からのエンジン目標回転速度Nsとを比較して、エンジン1の実回転速度Naをエンジン目標回転速度Nsに近づけるために燃料噴射装置(不図示)を制御する。
【0034】
コントローラ10は、ペダル操作量検出器52aからのペダル操作量Saが所定値Sa1以上である場合には、アクセルペダル52が踏み込まれている状態と判定し、ペダル操作量検出器52aからのペダル操作量Saが所定値Sa1未満である場合には、アクセルペダル52が踏み込まれていない状態(以下、アクセルペダル52の踏込無状態と記す)と判定する。所定値Sa1は、目標エンジン回転速度Nsをローアイドル回転速度(たとえば、800rpm)から上昇させる閾値としても設定されており、予めコントローラ10のROMまたはRAMに記憶されている。
【0035】
図3に示すように、コントローラ10には、ブレーキペダル31の操作量(ペダルストロークまたはペダル角度)を検出するペダル操作量検出器31aと、サービスブレーキ装置5aに供給される作動油の圧力(ブレーキ圧)を検出する圧力センサ33とが接続されている。図7は、ブレーキペダル31の操作量Sbとブレーキ圧Pbの関係を示す図である。ブレーキペダル31の操作量SbがSb1以上となるとブレーキ圧Pbが上昇し始める。ブレーキペダル31の操作量Sbが大きくなるとブレーキ圧Pbも大きくなり、ペダル操作量Sbに応じてホイールローダ100に制動力が作用する。
【0036】
コントローラ10は、ペダル操作量検出器31aからのペダル操作量Sbが所定値Sb1以上である場合には、ブレーキペダル31が踏み込まれており、サービスブレーキ装置5aが作動されている状態と判定し、ペダル操作量検出器31aからのペダル操作量Sbが所定値Sb1未満である場合には、ブレーキペダル31が踏み込まれておらず、サービスブレーキ装置5aが作動されていない状態(以下、サービスブレーキ装置5aの非作動状態と記す)と判定する。所定値Sb1は、ブレーキ圧Pbが上昇しはじめる操作量として設定されている。
【0037】
図3に示すように、コントローラ10には、パーキングブレーキスイッチ83が接続され、パーキングブレーキスイッチ83の操作位置(オン/オフ)がコントローラ10によって検出される。コントローラ10は、パーキングブレーキスイッチ83がオンされると、トランスミッション3に内蔵されているパーキングブレーキ装置38に動作指令を出力する、これにより、パーキングブレーキ装置38が作動し、車両に駐車用の制動力が作用する。パーキングブレーキスイッチ83がオンされているとき、コントローラ10は、パーキングブレーキ装置38が作動状態にあると判定する。
【0038】
コントローラ10には、車両の前後進を指令する前後進切換レバー81が接続され、前後進切換レバー81の操作位置(前進(F)/中立(N)/後進(R))がコントローラ10によって検出される。コントローラ10は、前後進切換レバー81が前進(F)位置に切り換えられると、前進クラッチ18を係合状態とするための制御信号をトランスミッション制御装置20に出力する。コントローラ10は、前後進切換レバー81が後進(R)位置に切り換えられると、後進クラッチ19を係合状態とするための制御信号をトランスミッション制御装置20に出力する。トランスミッション制御装置20では、前進または後進クラッチ18,19を係合状態とするための制御信号を受信すると、トランスミッション制御装置20に設けられているクラッチ制御弁26(図3参照)が前進または後進クラッチ18,19を作動させるためのクラッチ圧を増加させる。これにより、前進または後進クラッチ18,19は係合状態とされ、作業車両の進行方向が前進側または後進側に切り換えられる。
【0039】
コントローラ10は、前後進切換レバー81が中立(N)位置に切り換えられると、クラッチ18,19を解放状態とするための制御信号をトランスミッション制御装置20に出力する。トランスミッション制御装置20では、クラッチ18,19を解放状態とするための制御信号を受信すると、トランスミッション制御装置20に設けられているクラッチ制御弁26(図3参照)がクラッチ18,19を作動させるためのクラッチ圧を減少させる。これにより、クラッチ18,19は解放状態とされ、トランスミッション3は中立状態となる。
【0040】
コントローラ10は、パーキングブレーキスイッチ83がオンされると、上記と同様に、クラッチ18,19を解放状態とするための制御信号をトランスミッション制御装置20に出力する。その結果、前後進切換レバー81の操作位置に拘わらず、クラッチ18,19が解放されて、トランスミッション3は中立状態となる。
【0041】
コントローラ10は、前後進切換レバー81が中立(N)位置に切り換えられることで、または、パーキングブレーキスイッチ83がオンされることで、クラッチ解放信号を出力する。その状態をもって、コントローラ10はトランスミッション3が中立状態にあると判定する。
【0042】
コントローラ10には、ポンプ圧センサ14が接続されている。上記したように、ポンプ圧センサ14は、油圧ポンプ13の吐出圧Ppを検出して、ポンプ圧信号をコントローラ10に出力する。コントローラ10は、ポンプ圧センサ14で検出された油圧ポンプ13の吐出圧Ppが、コントローラ10のROMやRAMに記憶された閾値Pp1(たとえば、5MPa)以上である場合には、フロント装置および/またはステアリング装置が作動されている状態であると判定する。コントローラ10は、ポンプ圧センサ14で検出された油圧ポンプ13の吐出圧Ppが所定値Pp1未満である場合には、フロント装置およびステアリング装置が共に作動されていない状態(以下、フロント装置・ステアリング装置非作動状態と記す)と判定する。
【0043】
コントローラ10は、フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダルが踏込無状態、かつトランスミッション3が中立状態、かつパーキングブレーキ装置38が作動状態、かつサービスブレーキ装置5aが非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定する。
【0044】
コントローラ10には、パーキングブレーキ装置38の作動状態をアイドリングストップ条件から除外するパーキングブレーキ除外モードスイッチ87が接続されている。コントローラ10は、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87の操作位置がオンとされているか否か、すなわち、パーキングブレーキ装置38の作動状態をアイドリングストップ条件から除外するモード(以下、パーキングブレーキ除外モードと記す)が設定されているか否かを判定する。
【0045】
コントローラ10は、パーキングブレーキ除外モードが設定されている場合には、フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダルが踏込無状態、かつトランスミッション3が中立状態、かつサービスブレーキ装置5aが非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定する。
【0046】
コントローラ10には、タイマが内蔵されており、タイマはコントローラ10により制御されて、アイドリングストップ条件が成立していると判定されたときから時間の計測(タイマカウント)を開始し、アイドリングストップ条件の成立が維持されている間だけ時間を計測する。コントローラ10は、アイドリングストップ条件がROMやRAMに記憶された継続設定時間t1だけ継続されたか否かを判定し、アイドリングストップ条件が継続設定時間t1だけ継続されたときにエンジン1を停止するためのエンジン停止信号をエンジンコントローラ9に出力する。なお、継続設定時間t1はオペレータが任意に設定できるようにしてもよい。
【0047】
コントローラ10は、エンジン1が停止すると自動でパーキングブレーキ装置38を作動させる制御を実行する。これにより、パーキングブレーキ除外モードが設定されている場合に、エンジン1が自動停止したときに、パーキングブレーキ装置38が自動で作動するため、エンジン停止後に駐車制動力を確保できる。
【0048】
以下、アイドリングストップ制御を図8のフローチャートを用いて説明する。
図8は、本発明の一実施の形態によるホイールローダにおけるエンジン自動停止制御処理の動作を示したフローチャートである。イグニッションスイッチ86がオンされると、図8に示す処理を行うプログラムが起動され、コントローラ10で繰り返し実行される。なお、上記したエンジン停止時に自動でパーキングブレーキ装置38を作動させる制御については省略している。
【0049】
なお、この明細書では、イグニッションキーを始動、運転位置に操作することをイグニッションオンと呼び、停止位置に操作することをイグニッションオフと呼ぶ。
【0050】
ステップS106において、ペダル操作量検出器52a,31aでそれぞれ検出されたアクセルペダル52のペダル操作量Saの情報およびブレーキペダル31のペダル操作量Sbの情報、ポンプ圧センサ14で検出された油圧ポンプ13の吐出圧Ppの情報、コントローラ10で検出されたパーキングブレーキスイッチ83の操作位置情報およびパーキングブレーキ除外モードスイッチ87の操作位置情報、前後進切換レバー81の操作位置情報を取得して、ステップS111へ進む。
【0051】
ステップS111では、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87がオン操作位置に操作され、パーキングブレーキ除外モードに設定されているか否かを判定する。ステップS111で否定判定されると、すなわち、パーキングブレーキ除外モードに設定されていないと判定されるとステップS116へ進む。
【0052】
ステップS116ではパーキングブレーキスイッチ83がオン操作位置に操作されているか否か、すなわち、パーキングブレーキ装置38が作動状態にあるか否かを判定する。ステップS116で肯定判定されると、ステップS121へ進む。
【0053】
ステップS111で肯定判定されると、すなわち、パーキングブレーキ除外モードに設定されていると判定されると、ステップS113へ進み、前後進切換レバー81の操作位置が中立(N)位置か否か、すなわちトランスミッション3が中立状態にあるか否かを判定する。ステップS113で肯定判定されると、ステップS116をスキップしてステップS121へ進む。
【0054】
ステップS121では、ステップS106で取得したポンプ吐出圧Ppが設定された閾値Pp1未満であるか否か、すなわちフロント装置・ステアリング装置が非作動状態にあるか否かを判定する。ステップS121で肯定判定されると、ステップS126へ進む。
【0055】
ステップS126において、ステップS106で取得したアクセルペダル52のペダル操作量Saが設定された閾値Sa1未満であるか否か、すなわちアクセル踏込無状態であるか否かを判定する。ステップS126で肯定判定されると、ステップS131へ進む。
【0056】
ステップS131において、ステップS106で取得したブレーキペダル31のペダル操作量Sbが設定された閾値Sb1未満であるか否か、すなわち、サービスブレーキ装置5aが非作動状態にあるか否かを判定する。ステップS131で肯定判定されると、ステップS136へ進み、タイマフラグがオフであるか否かを判定する。後述するように、タイマフラグは、アイドリングストップ条件が非成立となったとき、あるいは、イグニッションオフされたときにオフとされる。
【0057】
ステップS136で肯定判定されると、すなわち、タイマフラグがオフであると判定されるとステップS141へ進む。コントローラ10は、アイドリングストップ条件が成立したこと、すなわち、コントロールレバー72,73、ステアリングホイール62、アクセルペダル52、ブレーキペダル31の全てが操作されておらず、トランスミッション3が中立状態とされた停車状態であることを判定し、タイマのカウントを開始するとともにタイマフラグをオンにしてステップS146へ進む。
【0058】
ステップS146では、タイマにより計測された時間tが継続設定時間t1(たとえば、5分)以上であるか否かを判定する。ステップS146で否定判定されると、ステップS106へ戻って、ペダル操作量Sa,Sb、ポンプ吐出圧Pp、パーキングブレーキスイッチ83の操作位置、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87の操作位置、前後進切換レバー81の操作位置の情報を取得する。
【0059】
ステップS106で取得した情報に基づきステップS111〜ステップS131の処理を実行し、アイドリングストップ条件を構成する各条件が成立しているか否かを判定する。各条件が成立していると判定されると、ステップS136へ進んで、タイマフラグオフであるか否かを判定する。
【0060】
上記したように、ステップS141でタイマフラグがオンとされていると、ステップS136で否定判定され、ステップS141をスキップして、ステップS146へ進んでタイマによる計測時間tが継続設定時間t1以上であるか否かを判定する。
【0061】
つまり、アイドリングストップ条件が成立し、その状態が継続設定時間t1を経過したと判定されるまで、ステップS106〜ステップS146の処理がサンプリングタイムごとに実行される。アイドリングストップ条件を構成する各条件が1つでも成立していないと、すなわち、ステップS113〜ステップS131のいずれかにおいて否定判定されると、ステップS161へ進んでタイマをリセットし、タイマフラグをオフにしてリターンする。つまり、アイドリングストップ条件の成立状態が継続設定時間t1以上継続される前にアイドリングストップ条件が非成立になると、最初の状態に戻って、アイドリングストップ条件が成立するまで各種情報の検出を継続し、アイドリングストップ条件が再び成立すると、タイマカウントをt=0から開始する。
【0062】
ステップS146でタイマにより計測された時間tが継続設定時間t1以上であると判定されると、すなわち、アイドリングストップ条件が時間t1以上継続されたと判定されると、ステップS151へ進んで、エンジン停止信号をエンジンコントローラ9に出力する。エンジンコントローラ9は、エンジン停止信号が入力されると、燃料噴射装置を制御してエンジン1を停止させる。ステップS151で、エンジン停止信号が出力されると、ステップS156へ進んで、オペレータがイグニッションスイッチ86を停止位置に操作したか否か、すなわち、イグニッションオフになったか否かを判定する。ステップS156で肯定判定されると、すなわち、イグニッションオフになったと判定されると、ステップS171へ進んで、タイマをリセットするとともにタイマフラグをオフにし、ステップS176へ進んで、終了処理を実行し、各種電源をオフにして、処理を終了する。
【0063】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ10は、フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダル52が踏込無状態、かつトランスミッション3が中立状態、かつパーキングブレーキ装置38が作動状態、かつサービスブレーキ装置5aが非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定し、アイドリングストップ条件の成立が継続設定時間t1以上維持されたときに、エンジン停止信号を出力するようにした。したがって、コントロールレバー72,73やステアリングホイール62、アクセルペダル52、ブレーキペダル31が操作されていない状態であって、かつトランスミッション3が中立状態でパーキングブレーキ装置38が作動された状態で作業車両が停車しているときにだけ、エンジン1を自動的に停止させることができる。
【0064】
(2)(1)により、アイドリング状態でかつ、コントロールレバー(アーム操作レバー72やバケット操作レバー73)を操作しないで慣性走行中(平地をローアイドルで惰性走行中、あるいは下り坂をローアイドルで降坂走行中等)に、突然にエンジン1が停止することはない。
【0065】
(3)(1)により、エンジン1で駆動される油圧ポンプ13からの圧油によりステアリング装置を作動している時に、エンジン1が停止することはないので、走行中、安全にステアリング操作を行うことができる。これに対して、特許文献1に記載の従来の作業車両では、コントロールレバーを操作しない状態が所定時間継続されると、エンジン1が突然に自動停止するため、エンジン1の停止によりステアリング操作ができなくなってしまうことを防ぐために、オペレータは常時注意しながら運転する必要があった。
【0066】
(4)(1)により、ホイールローダ100が一般道路の坂道でコントロールレバー72,73やステアリングホイール62を操作していない状態で、かつオペレータがブレーキペダル8を踏んで停車させている時、たとえば、坂道で長時間の信号を待っている間や、渋滞時などでも、エンジン1が突然に自動停止することがない。これに対して、特許文献1に記載の従来の作業車両では、坂道で停止中にあるときにおいてもコントロールレバーを操作しない状態が所定時間継続されると、エンジンが自動停止してしまう。したがって、従来の作業車両を運転するオペレータは、エンジンの自動停止によりエンジン駆動のパイロット油圧源からブレーキバルブへ圧油が供給されなくなり、サービスブレーキ装置が十分に作動しないことに起因して、作業車両が坂道を下降し始めてしまうことがないように、常時注意しながら運転する必要があった。本実施の形態によれば、サービスブレーキ装置5aが作動しているときには、エンジン1が意図せずに自動停止することはないため、坂道において、ブレーキペダル31のペダル操作量Sbに応じた制動力がサービスブレーキ装置5aによって保たれ、作業車両の停止状態を確保できる。
【0067】
(5)(1)により、ホイールローダ100を一般道路の坂道で駐車させているとき、すなわち、アクセルペダル52およびブレーキペダル31が踏み込まれず、かつコントロールレバー72,73およびステアリングホイール62が操作されず、かつパーキングブレーキ装置38が作動された状態のときに、自動でエンジン1が停止してもパーキングブレーキ装置38により駐車用制動力が維持されるため、駐車状態を確保できる。
【0068】
(6)アイドリングストップ条件の成立が継続設定時間t1以上維持されて、コントローラ10によりエンジン1が自動停止された後、イグニッションスイッチ86が停止の操作位置に操作されたとき、タイマにより計測された時間tをリセットするようにした。したがって、エンジン1が自動停止された後、エンジン1を再始動させるには、オペレータは一旦、イグニッションスイッチ86を運転位置から停止位置にした後、再びイグニッションスイッチ86を始動位置にすればよく、簡単にエンジン1の再始動ができる。
【0069】
(7)本実施の形態に係るホイールローダ100等の作業車両においては、平地で作業をしている場合、オペレータがパーキングブレーキ装置38を作動させないで、車両内で休憩したり、車両から離れることがある。本実施の形態では、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87を設けて、パーキングブレーキ装置38の作動状態をアイドリングストップ条件から除外できるようにしたため、その分、自動でエンジン1が停止する機会(回数)を多くすることができ、省エネ効果を高めることができる。なお、エンジン1が自動停止される際に、パーキングブレーキ装置38が自動で作動するため、エンジン停止後に駐車制動力を確保できる。
【0070】
(8)上記のとおり、本実施の形態によれば、意図せずにエンジン1が自動停止することが防止され、安全で省エネ運転が可能なホイールローダ100を提供できる。オペレータは運転中に意図せずにエンジン1が停止するのを防ぐために注意を払う必要がないため、オペレータの負担を軽減できる。
【0071】
(9)オペレータが休憩するために作業車両を駐車させるときなどにエンジン1を停止し忘れることがあったとしても、所定時間が経過するとエンジン1が自動で停止するため、無駄な排気ガスの排出を抑えることができる。また、本実施の形態によれば、規則により駐車時にはエンジン1を停止することを義務づけている地域などでの利用に好適な作業車両を提供できる。
【0072】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
[変形例]
(1)上記した実施の形態では、ペダル操作量検出器31aからコントローラ10に入力されるブレーキペダル31のペダル操作量Sb(ペダルストロークまたはペダル角度)に基づいて、コントローラ10がサービスブレーキ装置5aの非作動状態を判定したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ブレーキペダル31の踏み込み力を検出する検出器(不図示)を設け、踏み込み力が所定値未満である場合にはサービスブレーキ装置5aが非作動状態とコントローラ10で判定してもよい。圧力センサ33で検出されたブレーキ圧Pbと、コントローラ10のROMやRAMに記憶された閾値Pb2とを比較して、ブレーキ圧Pbが閾値Pb2未満であるときには、サービスブレーキ装置5aが非作動状態とコントローラ10で判定してもよい。ブレーキ圧Pbによりサービスブレーキ装置5aの非作動状態を判定する場合には、閾値Pb2は0.15MPa程度とされる。
【0073】
(2)上記した実施の形態では、ペダル操作量検出器52aからコントローラ10に入力されるアクセルペダル52のペダル操作量Sa(ペダルストロークまたはペダル角度)に基づいて、コントローラ10がアクセルペダル52の踏み込みの有無を判定したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、エンジン目標回転速度Nsと、コントローラ10のROMやRAMに記憶された閾値Ns1とを比較して、目標回転速度Nsが閾値Ns1未満であるときには、アクセルペダル52が踏込無状態とコントローラ10で判定してもよい。閾値Ns1としては、たとえば、ローアイドル回転速度Lo=800rpmよりも所定値50rpmだけ高い回転速度850rpmを採用できる。アクセル開度、または、エンジン回転数センサ50で検出されたエンジン1の実回転速度Naに基づいて、アクセルペダル52の踏み込みの有無を判定してもよい。
【0074】
(3)上記した実施の形態では、ポンプ圧センサ14からコントローラ10に入力される油圧ポンプ13のポンプ吐出圧Ppに基づいて、コントローラ10がフロント装置の非作動およびステアリング装置の非作動状態を判定したが、本発明はこれに限定されない。それぞれの非作動状態を個別に判定してもよい。
【0075】
たとえば、アーム操作レバー72およびバケット操作レバー73のそれぞれの操作用パイロット圧を検出する各パイロット圧検出センサからのパイロット圧情報に基づいて、コントローラ10でフロント装置の非作動状態を判定してもよい。コントローラ10は、各パイロット圧センサ(不図示)で検出されたパイロット圧pのいずれもが図5に示した所定値pa未満である場合には、アーム操作レバー72およびバケット操作レバー73のいずれもが操作されておらず、アーム111およびバケット112のいずれもが作動されていない状態、すなわち、フロント装置は非作動状態にあると判定する。
【0076】
ステアリング装置の非作動状態の判定については、ステアリングコラムに回動角度を検出する角度センサなどを設けるなどして、ステアリングホイール62の操作量を検出し、ステアリングホイール62の操作量が所定値未満である場合には、ステアリングホイール62が操作されておらず、ステアリング装置が作動されていない状態、すなわち、ステアリング装置が非作動状態にあると判定する。
【0077】
(4)上記した実施の形態では、パーキングブレーキ除外モードスイッチ87を設けて、パーキングブレーキ装置38の作動状態をアイドリングストップ条件から除外できるようにしたが、本発明はこれに限定されない。パーキングブレーキ除外モードスイッチ87を省略して、アイドリングストップ条件にパーキングブレーキ装置38の作動状態の条件を必ず加えるようにしてもよい。これにより、上記実施の形態で説明した(1)〜(5)および(8),(9)と同様の効果を奏する。
【0078】
(5)上記した実施の形態では、イグニッションスイッチ86が停止位置に操作されたときに、タイマにより計測された時間をリセットすることとしたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、イグニッションスイッチ86が始動位置に操作され、エンジン起動信号が出力されたときに、タイマにより計測された時間をリセットしてもよいし、アイドリングストップ条件が所定時間継続してエンジン停止信号が出力されたときにタイマにより計測された時間をリセットしてもよい。
【0079】
(6)上記した実施の形態では、トルコン車について説明したが、本発明はこれに限定されない。いわゆるHST駆動形式のホイールローダに本発明を適用してもよい。HST駆動形式のホイールローダにおいては、前後進切換レバー81を中立位置に操作している状態を上記トランスミッション3の中立状態と同義とする。
【0080】
(7)上記した実施の形態では、作業車両の一例としてホイールローダ100を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、ホイールショベル、フォークリフト、テレハンドラー、リフトトラック等、他の作業車両であってもよい。
【0081】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン、3 トランスミッション、5a サービスブレーキ装置、8 ブレーキペダル、9 エンジンコントローラ、10 コントローラ、13 油圧ポンプ、14 ポンプ圧センサ、18 前進クラッチ、19 後進クラッチ、20 トランスミッション制御装置、26 クラッチ制御弁、31 ブレーキペダル、31a ペダル操作量検出器、32 ブレーキバルブ、33 圧力センサ、38 パーキングブレーキ装置、50 エンジン回転数センサ、52 アクセルペダル、52a ペダル操作量検出器、60 ステアリングバルブ、61 ステアリング用アクチュエータ、62 ステアリングホイール、63 パイロット油圧源、70 フロント装置用コントロールバルブ、71 フロント装置用アクチュエータ、72 アーム操作レバー、73 バケット操作レバー、81 前後進切換レバー、83 パーキングブレーキスイッチ、86 イグニッションスイッチ、87 パーキングブレーキ除外モードスイッチ、100 ホイールローダ、101 センタピン、110 前部車体、111 アーム、112 バケット、113 タイヤ、114 アームシリンダ、115 バケットシリンダ、120 後部車体、121 運転室、122 エンジン室、123 タイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント装置の非作動状態を判定するフロント装置非作動判定手段と、
ステアリング装置の非作動状態を判定するステアリング装置非作動判定手段と、
アクセルペダルの踏込無状態を判定するペダル踏込無状態判定手段と、
トランスミッションの中立状態を判定する中立状態判定手段と、
パーキングブレーキ装置の作動状態を判定するパーキングブレーキ作動判定手段と、
サービスブレーキ装置の非作動状態を判定するサービスブレーキ非作動判定手段と、
フロント装置が非作動状態、かつステアリング装置が非作動状態、かつアクセルペダルが踏込無状態、かつトランスミッションが中立状態、かつパーキングブレーキ装置が作動状態、かつサービスブレーキ装置が非作動状態となったとき、アイドリングストップ条件が成立していると判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段によりアイドリングストップ条件が成立していると判定されたときから時間の計測を開始し、アイドリングストップ条件の成立が維持されている間だけ時間を計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段により計測された時間が、所定時間を経過したか否かを判定する時間経過判定手段と、
前記時間計測手段で計測された時間が所定時間を経過したと前記時間経過判定手段により判定されたときに、エンジンを停止させるエンジン自動停止制御手段とを備えていることを特徴とする作業車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、
エンジンの始動、運転および停止の少なくとも3つの操作位置を有するイグニッションスイッチと、
前記エンジン自動停止制御手段によりエンジンが停止された後、前記イグニッションスイッチが停止の操作位置に操作されたとき、前記時間計測手段により計測された時間をリセットすることを特徴とする作業車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業車両のエンジン制御装置において、
前記パーキングブレーキ装置の作動状態をアイドリングストップ条件から除外する選択部材を備えていることを特徴とする作業車両のエンジン制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104385(P2013−104385A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250020(P2011−250020)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(509241041)株式会社KCM (35)
【Fターム(参考)】