作業車両のキャビン
【課題】従来の作業車両のキャビンにおいては、空洞共鳴周波数が空間を形成する壁面の形状、寸法によって決定されおり、これを変更するには、寸法の変化若しくは空間内への仕切り板を設ける等の所作が必要であった。
【解決手段】作業車両のキャビン1であって、該キャビン1内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管31又は共鳴箱30を具備し、前記共鳴管31の長さ又は共鳴箱30の壁面の位置を調節するとともに、前記共鳴管31の長さ又は共鳴箱30の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ46を制御する制御部45とを設けた。
【解決手段】作業車両のキャビン1であって、該キャビン1内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管31又は共鳴箱30を具備し、前記共鳴管31の長さ又は共鳴箱30の壁面の位置を調節するとともに、前記共鳴管31の長さ又は共鳴箱30の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ46を制御する制御部45とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行時のエンジンの回転振動等に起因してキャビン内に発生する主に低周波の音、すなわちこもり音を低減する装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビン内に発生するこもり音の低減には、キャビン構造体支持部及びエンジン支持部におけるバネ常数の変更による振動絶縁や、こもり音と周波数が同じで逆位相の音をスピーカで発生して、消音するアクティブノイズコントロール等がある。また、キャビン構造体の天井部を構成するルーフパネルに形成した前後方向の補強用ビード間の隙間を利用して、吸気レゾネータを構成し、この吸気レゾネータから導出される吸気レゾネータパイプを、キャビン構造体のバックパネル付近で開口させてなる技術も公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−44681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の作業車両のキャビンや発電機のパッケージに関しては、空洞共鳴周波数が空間を形成する壁面の形状、寸法によって決定されおり、これを変更するには、寸法の変化若しくは空間内への仕切り板を設ける等の所作が必要であった。そして、寸法の変更は実質上困難であり、仕切り板もキャビン内等に設けると邪魔である。
【0005】
また、音響的な動吸振効果を利用した空洞共鳴周波数移動について、その移動量を制御することが必要であった。
【0006】
また、音響的な動吸振効果を利用した空洞共鳴周波数移動について、共鳴管若しくは共鳴箱の寸法によって、空間内の共鳴周波数が決まってしまい、起振周波数が移動した場合、移動した周波数で共鳴現象が生じていた。
【0007】
また、音響的な動吸振効果を利用したセミアクティブ制御において、起振周波数の変化を知ることが困難であった。また、作業車両のエンジン(またはモータ)の回転数を制御するスロットル部に開閉機構を設けた場合、負荷が変動したときにエンジン回転とのずれが生じた。
【0008】
また、作業車両のエンジンの回転に依存しない起振周波数に対応できていなかった。また、音場が変化した場合、特に起振源が不明のとき等には、エンジンの回転数に応じた制御だけでは音圧が逆に上昇する場合があった。
【0009】
また、音場が変化した場合、特に窓の開放等による場合には、エンジンの回転数に応じた制御だけでは音圧が逆に上昇する場合があった。
【0010】
また、共鳴部の開口部分の開閉だけでは、固定された周波数にしか移動が不可能であった。また、キャビン側の空間の影響から、共鳴器の周波数に変化が生じ、目標の周波数に合致させることが困難であった。
【0011】
また、共鳴管若しくは共鳴箱の設置場所によっては、居住空間として邪魔となった。また、従来の共鳴管若しくは共鳴箱では、対象とする共鳴周波数が一つに限られてしまっていた。
【0012】
また、共鳴管若しくは共鳴箱の設置場所によっては、共鳴管若しくは共鳴箱内部のスペースが十分に得られず、共鳴周波数の移動量が不十分であった。また、共鳴管若しくは共鳴箱を設置するとどうしても居住空間に対して、邪魔になっていた。
【0013】
また、空洞共鳴周波数は空間を形成する壁面の形状、寸法によって決定されており、これを変更するには、寸法の変化若しくは空間内への仕切り板の設置等の所作が必要であった。しかし、寸法の変更は実質上は困難であり、仕切り板も空間内では邪魔であった。
【0014】
また、共鳴管若しくは共鳴箱を用いて、動吸振構造により、音場を変化させており、設計が複雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
請求項1においては、作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するものである。
【0017】
請求項2においては、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたものである。
【0018】
請求項3においては、前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたものである。
【0019】
請求項4においては、前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させるものである。
【0020】
請求項5においては、前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させるものである。
【0021】
請求項6においては、前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させるものである。
【0022】
請求項7においては、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
請求項1においては、作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するので、音響的な動吸振効果により、空洞共鳴周波数を移動することが可能となり、壁面形状の大幅な変化なく空洞共鳴に起因する騒音の増加を避けられ、こもり音の低減を図ることができる。
【0025】
また、容積の増加に伴い、周波数の移動量を増加し、効果的に共鳴現象を低減することができる。つまり、共鳴周波数の移動を大きなものとし、こもり音の低減効果を顕著なものとすることができる。
【0026】
また、共鳴管の長さ又は共鳴箱の壁面の位置を制御することによって、空洞共鳴周波数は変化するので、起振周波数の変化に伴って開閉を行うことで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0027】
また、作業車両のエンジンの回転に起因する起振周波数は既知であるので、これに連動して共鳴周波数を変化させることで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0028】
請求項2においては、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことによって、空洞共鳴周波数は変化するので、起振周波数の変化に伴って開閉を行うことで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0029】
請求項3においては、前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0030】
請求項4においては、前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させるので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0031】
請求項5においては、前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることで、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0032】
請求項6においては、前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させるので、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0033】
請求項7においては、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させるので、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1はキャビン1の概略斜視図、図2は第一の構成例に係るキャビン1の概略斜視図、図3は同じく概略右側面図、図4は別構成例のキャビン1の概略右側面図、図5は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図6は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図7は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図8は第二の構成例に係るキャビン1の概略右側面図、図9は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図10は第三の構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図である。
【0036】
図11同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側側面図、図12は別構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図、図13は同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側面図、図14は第四の構成例に係るキャビン1周辺の概略右側面図、図15は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図16は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図17は別構成例を示す概略右側面図、図18は第1の実施例に係るキャビン1の概略右側面図、図19は同じく壁面30aを移動させた状態キャビン1の概略右側面図である。
【0037】
図20は別実施例を示すキャビン1の概略右側面図、図21は同じく底面31aを移動させた状態のキャビン1の概略右側面図、図22は別実施例にを示すキャビン1の概略右側面図、図23は同じく摺動筒32aを移動させたキャビン1の概略右側面図、図24は第一の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図25は第2の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図26は第3の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図27は第五の構成例に係るキャビン1の概略斜視図、図28は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図29は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図30は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図31は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図32は第六の構成例に係るキャビン1の概略右側面図、図33は別構成例を示す概略右側面図、図34は別構成例を示す概略右側面図、図35は別構成例を示す概略右側面図、図36は別実施例を示す概略右側面図、図37は別構成例を示す概略右側面図、図38は第七の構成例に係る概略右側面図、図39はこもり音の周波数に影響する寸法方向を示すキャビン1の概略図、図40は第八の構成例に係るキャビン3の概略右側面図、図41は別構成例を示すキャビン3の概略右側面図である。
【0038】
操縦部をキャビンで覆ったトラクタ等の作業車両において、エンジンが始動すると、エンジンの回転振動によりキャビン1は防振支持されていても振動は避けられず加振される。また、騒音も発生する。それ等の振動が騒音の原因となり、キャビン1内には定在波が生じ、こもり音が発生する。定在波は、それぞれのキャビンの寸法に応じて発生する。つまり、キャビン内側の縦方向の長さや横方向の長さによって、定在波の周波数は異なるのである。本構成例では、キャビン1を用いて説明を行うが、トラクタや作業車両等のキャビンに限定されるものではなく、エンジン等の振動原を付設した荷室や作業室等の振動原側部に空間を有する部屋においても本構成例の効果が得られる。
【0039】
キャビン1内に定在波が生じこもり音が発生すると、図1に示すように、箱型のキャビン1の場合は壁面付近の音圧が最も大きくなり、キャビン1の中心部の音圧は小さくなる。この際、図2乃至図4に示すように、共鳴管2a若しくは共鳴箱2b等の共鳴器2を壁面に配設すると、共鳴器2の共鳴周波数と同じ周波数でキャビン1内の壁面付近で振動している音圧レベルの大きい空気によって、共鳴器2内部の空気が加振されて振動を始める。その結果、キャビン1内の空気は、共鳴器2 内の空気に振動を伝達した分、エネルギーを消費することになる。そして、消費されたエネルギー分だけ、キャビン1 内の振動が減衰され、こもり音が低減される。
【0040】
そして、キャビン1に共鳴器2を配設したため、配設前のキャビン1のみの場合に比べて、共鳴器の影響によって、共鳴周波数も配設前のキャビン1のみの場合から変化する。例えば、図1の共鳴器2を具備していないキャビン1のみのときの共鳴周波数が131Hzであった場合、図2のように共鳴管2aを付け加えたことで、共鳴周波数が117Hzと136Hzに変化する等である。このような場合は、上述したように、キャビン1内の空気のエネルギーが共鳴器2内の空気に伝達され、共鳴周波数は2 種類に増えるが、該2種類の117Hzと136Hzの共鳴周波数での音圧は、前記131Hzの共鳴周波数の音圧よりも小さなものとなっている。
【0041】
図3は、共鳴器2をサイドブランチ型の共鳴管2aとし、共鳴管2aの長軸をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面に対して垂直方向になるように、キャビン1の外部に配設したものであるが、図4に示すように、共鳴箱2bの長軸をキャビン2の壁面と平行になるようにキャビン1の外部に配設しても良い。また、図5に示すように、サイドブランチ型の共鳴器22の長軸をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面と平行になるように、キャビン1の内部に配設しても良い。また、図6に示すように、共鳴器23をヘルムホルツ型のものとし、共鳴器23をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面の外部に配設しても良いし、図7のように、ヘルムホルツ型の共鳴器24をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面の内部に配設しても良い。なお、音圧レベルの大きい壁面は前後または左右または上下の両側に現れるものであり、キャビン形状や材質やエンジンの位置等により異なるものである。
【0042】
このように、作業車両のキャビン1であって、空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管2aもしくは共鳴箱2bを具備したので、音響的な動吸振効果により、空洞共鳴周波数を移動することが可能となり、壁面形状の大幅な変化なく空洞共鳴に起因する騒音の増加を避けられ、こもり音の低減を図ることができる。
【0043】
また第二の構成例として、作業車両のキャビンに前記共鳴器23を配設して、こもり音を低減しても、所望のレベルまで下がらない場合がある。この場合には、図8に示すように、共鳴周波数は同一で容積のより大きな共鳴器25を交換、つまり、付け替え可能にキャビン1に配設することにより、大きな共鳴器25を取り付けることで周波数の移動量を大きくすることができる。ここで、図9に示すように、ヘルムホルツ型の共鳴器26をキャビン1に配設する場合は、共鳴器26の開口部分26aの面積も共鳴器26の容積に伴い変更するものとする。
【0044】
このように、同一共鳴周波数で容積が異なる前記共鳴管若しくは前記共鳴箱26と付け替え可能に構成したので、容積の増加に伴い、周波数の移動量を増加し、効果的に共鳴現象を低減することができる。つまり、共鳴周波数の移動を大きなものとし、こもり音の低減効果を顕著なものとすることができる。
【0045】
次に第三の構成例として、図10乃至図13を参照しながら、キャビン1とヘルムホルツ型の共鳴器27の接続部分である、共鳴器27の開口部分について説明する。図10及び図11に示すように、共鳴器27の開口部分には仕切り41が開閉自在に配設されている。仕切り41を開閉自在にするためには、仕切り41をスライド式に開口部に配設しても良いし、開口部分の端を支点に回転扉型に配設してもよい。これによって、共鳴器27の開閉を変化させる。
【0046】
ところで、サイドブランチ型の共鳴器の共鳴振動数fsは、
fs=C/4l
C=音速、l=共鳴器の長さ(奥行き)
であり、また、ヘルムホルツ型の共鳴器の共鳴周波数fhは、
fh=C/2π・(A/V・l)1/2
C=音速、A=開口部分面積、l=共鳴器のくび部の等価長さ
である。
そのため、ヘルムホルツ型の共鳴器27をキャビン1に配設する場合は、開口部分の面積Aを変化させることで、該共鳴器27によって、低減できる周波数を変化させることができるのである。
【0047】
本構成例では、図10及び図11に示すように、仕切り41をスライドする等して、開口部分の開閉を可能とした。これにより、通常は共鳴器を閉じておくが、エンジン起振周波数がキャビン内空洞共鳴周波数に合致しかけた時に共鳴器を開けることで、空洞共鳴周波数自体を変化させ、空洞共鳴が起きなくなる。さらに、開口部分の面積Aを変化させることも可能であり、車両外部の気温や車両の重量そしてエンジンの回転数等によりエンジンからの起振周波数が移動した場合においても、開口部分の面積Aを調節することによりこもり音の低減効果を高めることができる。具体的には、空洞共鳴周波数に比較して起振周波数が高くなってきた場合は、fhを増加させる、すなわち開口部分の面積Aを大きくすべく、仕切り41を開放させる方向へ移動することでこもり音の低減効果を高め、逆に起振周波数が低くなってきた場合には、fhを低下させる、すなわち開口部分の面積Aを小さくすべく、仕切り41を閉じる方向へ移動することでこもり音の低減効果を高めることができる。なお、具体例として、仕切り41をスライドさせるために、壁の開口部に上下にレールを設けて仕切り41を摺動自在に移動可能とし、該仕切り41と壁との間にハンドル等を介装して、該ハンドルを回動することにより所望の位置に移動させて開口面積を変更可能とするのである。
【0048】
このように、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱27の開口部分に仕切り41を設け、該仕切り41を開閉することにより共鳴周波数が調節できるようにしたので、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0049】
開口部分の仕切り41の開閉は、キャビン内の作業者が直接行っても良いが、図12及び図13に示すように、エンジン等の回転数を制御するアクセル部42にワイヤー43の一端を連結し、他端を該仕切り41に連結して、回転数に応じて開口部分の面積Aが変化するようにしてもよい。そして、エンジンの回転数が増えれば起振周波数も高くなり、エンジンの回転数が減れば起振周波数も低くなるので、アクセルを踏み込めば開口部分の面積Aが大きくなるように、アクセルを話せば開口部分の面積Aが小さくなるように、ワイヤー43の連結を行えばよい。若しくは、空洞共鳴の生じるエンジン回転においてのみ、共鳴器が開く機構を備えても良い。
【0050】
このように、前記作業車両のエンジンの回転数を制御するスロットル部42と、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱28の開口部分の仕切り41と、を連動連結し、スロットル部42の変位に応じて仕切り41が開閉するので、作業車両のエンジンの回転に起因する起振周波数は既知であるので、これに連動して共鳴周波数を変化させることで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0051】
次に、仕切り41の開閉動作をより正確に、起振周波数に対応させる技術について説明する。第四の構成例として、図14を参照しながら、エンジン50の回転数を計測する回転センサ44と、仕切り41の開閉を行うアクチュエータ46を利用した制御方法を説明する。トラクタ等の作業車両の場合、キャビン1の前方若しくは下方にエンジン50が配設されていることが多い。前記エンジン50に回転センサ44を装備して、常時エンジンの回転数を計測する。そして、仕切り41にはソレノイドまたはモータ等を利用したアクチュエータ46を連結し、アクチュエータ46により、仕切り41の開閉を行うものとする。前記回転センサ44とアクチュエータ46は、間に制御部45を介して連動連結されており、エンジン50の回転数に応じて、制御部45がアクチュエータ46を動作させて仕切り41の開閉を行う。
【0052】
本構成例においても、回転センサ44によって計測されたエンジン50の回転数が高くなると、制御部45はアクチュエータ46が仕切り41を開放する方向に動作するように命令し、エンジン50の回転数が低くなると制御部45はアクチュエータ46が仕切り41を閉じる方向に動作するように命令しても良い。
【0053】
このように、前記作業車両のエンジン50の回転数を計測する回転センサ44と、前記開口部分の仕切り41の開閉を行うアクチュエータ46と、該回転センサ44より得られた回転数に応じて、該アクチュエータ46を介して該仕切り41を制御する制御部45と、を設けたので、負荷変動に伴う作業車両のエンジン50の回転数の変化に追従して効果的に共鳴周波数を変化させることができる。
【0054】
また、キャビン1内に振動が生じても、起振源がどこであるか不明である場合もある。そこで、図15に示すように、直接キャビン1内の代表点の振動を計測するものとする。キャビン1内の代表点に振動センサ51・51を配設し、共鳴器がない場合の空洞共鳴周波数の振動が大きい場合に、開口部分の仕切り41を開放し、空洞共鳴周波数自体を変化させるのである。この場合も、計測されたキャビン1 内の代表点の振動周波数が大きい場合は、仕切り41を大き目に開放し開放部分の面積Aを大きくし、振動周波数が小さい場合は、仕切り41を調節して開放部分の面積Aを小さくするようにしても良い。
【0055】
このように、前記キャビン1内の所定位置の振動を計測する振動センサ51と、計測された振動数に応じて、前記仕切りの開閉を調節する制御部45を設けたので、
起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0056】
また、起振源がわからない場合と同様に、音場の変化がわからない場合もある。そこで、図16のように、共鳴器28の開口部分付近の音圧を測定しながら、開口部分の仕切り41の開閉動作を行う。さらに、最もこもり音が低減されるような仕切り41の位置を求めてもよい。この場合は仕切り41の開閉を一定時間ごとに行って、その都度、最もこもり音が低減される仕切り41の位置を求めても良いし、作業者がこもり音をうるさいと感じたとき等、作業者の好みにより任意の時点で仕切り41を開閉させるか、最もこもり音が低減される仕切り41の位置を求めても良い。
【0057】
このように、前記開口部分付近の音圧を計測するマイク51aと、該開口部分付近の音圧が最も低くなるようにアクチュエータ46を介して前記仕切り41の開閉を行う制御部45と、を具備したので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0058】
前記音場の変化は、ドア61や窓62を開閉したときには特に顕著に起こるものである。そのため、窓の開放による音場の変化を捉え、こもり音の低減を効率良く行うことが重要である。そこで、図17に示すように、ドア61や窓62等の可動部分に開閉センサ47・47を配設し、キャビン1の空間の開閉をセンシングし、全閉状態においてのみ共鳴器29が作動する、つまり仕切り41が開放される、ようにする。共鳴器29の作動は、上述したように、開閉センサ47・47によってセンシングされた結果が制御部45に送られ、制御部45にて全閉状態か否かを判断し、全閉状態の場合にはアクチュエータ46により、仕切り41を開放する。若しくは、最もこもり音が低減される位置を求めるものとする。そして、開閉センサ47・47のうちの少なくとも1つ以上が、可動部分の開放を検知すると、制御部45とアクチュエータ46によって仕切り41は閉じられる。
【0059】
このように、前記キャビン1のドア61や窓62等の開閉が行われる部分をセンシングする開閉センサ47・47を設け、開口されている部分がある場合は、前記共鳴管若しくは共鳴箱29の開口部分を閉じるようにするので、ドア61や窓62などの開口部分が発生した場合に共鳴管若しくは共鳴箱29が逆に騒音を発生することを回避することができる。
【0060】
次に、第1の実施例として、共鳴周波数を変化させる技術について説明する。上述の技術では、最も大きな音圧や振動を起こしている周波数に対してこもり音の低減を行うことが可能であったが、共鳴周波数を予め決められた周波数にしか移動できないものであった。本実施例では、共鳴管31の長さ若しくは共鳴箱30の一部の壁面を可変とすることで、共鳴周波数を変化させるものである。また、共鳴器の共鳴周波数はキャビン内部の空気の影響を受けて、開放状態とは若干異なってくる。これを解消する為に、共鳴器の共鳴周波数を調整できる機構が必要となる。具体的には、図18及び図19に示すように、共鳴箱30の1つの壁面30aを可変とし、キャビン1側に近づけたり遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させる方法が挙げられる。また、図20及び図21に示すように、共鳴管31の底面31a(キャビン1の壁面から最も遠く、キャビン1の壁面と平行な共鳴管の底面31a)を可変とし、キャビン1側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることも可能である。
【0061】
本実施例では、共鳴箱30若しくは共鳴管31の内部に壁面30aや底面31aが摺動自在に配設された構成となっているが、図22及び図23に示すように、共鳴管32の外側に、共鳴管32に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒32aを嵌め込む構成としても良い。また、本実施例の場合も、上述の第5の構成例の場合と同じく、キャビン1内の代表点や共鳴器30・31・32付近において、センサ51により振動や音圧や周波数を測定して、キャビン1内の振動数を求め、壁面30aや底面31aや摺動筒32aをアクチュエータ46にて移動可能とし、センサ51に制御部45を介してアクチュエータ46と接続して、共鳴周波数を変化させるものとする。
【0062】
このように、前記作業車両のエンジンの回転数か、前記開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ44・51と、前記共鳴管31の底面31a若しくは前記共鳴箱30の壁面30aを調節するアクチュエータ46と、該センサ44・51より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面31a・32a若しくは壁面30aを移動させるべく該アクチュエータ46を制御する制御部45とを設けたので、共鳴管31・32若しくは共鳴箱30の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量が変化するため、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管31・32若しくは共鳴箱30を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に大きく移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0063】
次に、共鳴箱若しくは共鳴管の設置箇所について説明する。エンジンを作動させると、キャビン1内にはこもり音が発生するが、該こもり音は上述したように、壁面付近の音圧や振動が大きなものとなる。例えば、図24に示すように、キャビン1内の左右両端の音圧が大きくなり、左右方向において真中付近の音圧が低くなったり(パターン1)、図25に示すように、キャビン1の前下部及び後上部の音圧が大きくなり、キャビン1の前後方向と上下方向において真中付近の音圧が低くなったりする(パターン2)。また、以上の性質全てを反映する場合、すなわち図26に示すように、キャビン1の前上部の右端及び、後下部の左端の音圧が大きくなり、前後方向及び上下方向及び左右方向の全てにおいて真中付近の音圧が低くなったりする場合もある(パターン3)。
【0064】
そこで、第五の構成例として、図27に示すように、ヘルムホルツ型の共鳴器33をキャビン1の天井の右端辺近傍(端辺部)に固設する。このように、キャビン1の端に共鳴器33を固設すると、作業者がキャビン1内に乗り込んでいる場合にも、居住空間として邪魔にならない。ここで、共鳴器33はキャビン1の天井の左端に固設しても良い。また、図28に示すように、2つのヘルムホルツ型の共鳴器33・33をキャビン1の天井の右端と左端の両側端辺部、または対角方向、または対辺方向に固設しても良い。これらの設置方法は、上述のパターン1の場合に特に有効である。そして、図29に示すように、天井の後部に同じくヘルムホルツ型の共鳴器34を固設しても良し、図30に示すように、天井の左右方向の中心付近にサイドブランチ型の共鳴器35を固設しても良い。サイドブランチ型の共鳴器35は最後部に開口部を設ける。これらの後上部に共鳴器34・35を固設する方法は、上述のパターン2の場合に特に有効である。なお、パターン3の場合は、図31のように、共鳴器34をキャビン1の前上部に固設すると有効である。
【0065】
このように、前記キャビン1内の隅部または角部または端辺部に、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱33・34・35を設けるので、人の居住空間を邪魔することなく、共鳴管若しくは共鳴箱33・34・35の設置が可能であり、特に低周波数の共鳴に効果的であり、結果騒音低減に有効である。
【0066】
次に、六の構成例として、2つ以上の共鳴周波数を低減する技術について、説明する。キャビン1内にこもり音が発生した場合に、大きな振動及び音圧を生じさせる2種類の共鳴周波数A・B(二つのピークA・B)が存在するときに、それぞれの共鳴周波数A・Bをもつ共鳴器36A・37Bをキャビン1内に固設する。ここで、大きな振動及び音圧を生じる2種類の共鳴周波数は、他の共鳴周波数に比べて目立って大きな振動や音圧を生じる共鳴周波数でなくとも、キャビン1内に生じたこもり音の様々な共鳴周波数の中で比較的振動や音圧が大きなものを選択すれば良い。
【0067】
そして、共鳴器36A・36Bの固設箇所は、それぞれの共鳴周波数の腹、すなわちそれぞれの共鳴周波数において振動や音圧が大きくなる場所、とする。この場合の2つの共鳴器36A・36Bは、図32に示すように、ヘルムホルツ型共鳴器36HAとヘルムホルツ型共鳴器36HBの組み合わせでも良いし、図33に示すように、サイドブランチ型共鳴器36SAとサイドブランチ型共鳴器36SBの組み合わせでも良いし、図34に示すように、ヘルムホルツ型共鳴器36HAとサイドブランチ型共鳴器36SBの組み合わせでも良い。また、共鳴器は2つに限らず、3つ以上の共鳴周波数の振動や音圧を低減させるべく、3つ以上の共鳴器を固設しても良い。
【0068】
このように、前記キャビン1内であって、少なくとも2箇所以上の音圧が大きく振動数が異なる場所に、該振動数と同じ共鳴周波数をもつ前記共鳴管若しくは共鳴箱36・36を配設したので、2以上の共鳴周波数についても、上記と同様に、低周波数の共鳴に効果的であり、結果騒音低減に有効である。
【0069】
また、キャビン1内に発生したこもり音の1つの共鳴周波数の振動や音圧を低減させるために、2つ以上の共鳴器37・38を配設しても良い。具体的には、図35に示すように、2つの同型のヘルムホルツ型共鳴器37・37を固設しても良いし、図36のように、2つの同型のサイドブランチ型共鳴器38・38を固設しても良いし、図37のように、1つのヘルムホルツ型共鳴器37と1つのサイドブランチ型共鳴器38を固設しても良い。また、共鳴器37・38は2つに限らず、更に効果を高めるために、3つ以上の共鳴器を固設しても良い。
【0070】
このように、前記キャビン1内であって、少なくとも2箇所以上の音圧が大きく振動数が同じ場所に、該振動数と同じ共鳴周波数をもつ前記共鳴管若しくは共鳴箱37・38を配設したので、周波数の移動量を多く得ることができ、改善効果を向上させられる。この場合は、キャビンの端に小さい共鳴管若しくは共鳴箱をたくさん固設することが可能となるので、作業者の居住空間を邪魔することなく、こもり音の低減効果が得られる。
【0071】
また、わざわざ共鳴管や共鳴箱を配設しなくても、ある程度の厚みを持ち、また、強度を求められることがない天井部を、共鳴器として利用しても良い。すなわち、天井部を中空にして、キャビン1内から天井に穴を開けるのである。天井に穴を開けることで、天井部がサイドブランチ型共鳴器、若しくはヘルムホルツ型共鳴器の役割を果たす構造となる。また、天井部に限らず、中空のフレームやエアコンのダクトを利用しても良い。
【0072】
このように、前記キャビン1の一部に開口部を設け、該開口部を共鳴部として利用したので、人の居住空間を邪魔することなく、共鳴管若しくは共鳴箱の設置が可能となる。共鳴管若しくは共鳴箱を別途設ける必要が無く、コストダウンが可能となる。
【0073】
次に、第八の構成例として、構造系の共鳴を利用して空洞共鳴周波数の移動を為す方法について説明する。図38のように、音圧の腹となる部分の近くに薄膜等の構造の動吸振部材49を配設する。該動吸振部材49はゴム等の薄い弾性部材が適している。予め、キャビン1内に発生するこもり音の共鳴周波数を求めておき、キャビン1内の該共鳴周波数により生じる振動や音圧の大きい箇所に、該共鳴周波数にて共鳴する構造の動吸振部材49を配設する。
【0074】
このように、前記キャビン1の中で、音圧が大きい部分に薄膜等の動吸振部材49を配設したので、構造系の共鳴が動吸振器として作用し、空洞共鳴周波数を移動することが可能となる。
【0075】
最後に、第八の構成例として、キャビンの一部を変形させて、共鳴管若しくは共鳴箱を配設するのと同じ効果が得られる技術について説明する。例えば、キャビン1が図39に示すような形状をしている場合において、エンジンからの振動によるこもり音がキャビン1内の前下部及び後上部の音圧が大きく、前後方向及び上下方向においての真中付近の音圧が小さいときは、図中の矢印方向の寸法に関する共鳴周波数の振動及び音圧の影響が大きいと考えられる。この場合は、図40に示すように、キャビン3の後上部を若干凹ませる(外側に凸の形状とする。)ことによって、矢印方向の寸法を大きくする。これによって、共鳴周波数を移動させて、こもり音の低減を図るのである。
【0076】
また、図40のように、キャビン3の後上部の凹部3aの下方に仕切り48を回動自在に配設し、矢印方向の寸法を調節できるようにして、エンジンの回転数の変化による共鳴周波数の変化に対応させる。本構成例では、キャビン3の後上部を凹ませる構成としたが、前下部の方を凹ませても良い。凹部の形状としては、図41のように、開口部分が入り組んだ形状となっても良い。
【0077】
このように、前記キャビン3の空洞共鳴に起因する寸法部分の端部に空洞部(凹部)3aを設け、該空洞部3aの開口部分に仕切り48を設け、該仕切り48の開閉により音場を変化させるので、共鳴管若しくは共鳴箱を用いることなく、音場を変化させるが可能となり、設計が単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】キャビン1の概略斜視図。
【図2】第一の構成例に係るキャビン1の概略斜視図。
【図3】同じく概略右側面図。
【図4】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図5】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図6】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図7】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図8】第二の構成例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図9】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図10】第三の構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図。
【図11】同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側側面図。
【図12】別構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図。
【図13】同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側面図。
【図14】第四の構成例に係るキャビン1周辺の概略右側面図
【図15】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図16】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図17】別構成例を示す概略右側面図。
【図18】第1の実施例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図19】同じく壁面30aを移動させた状態キャビン1の概略右側面図。
【図20】別実施例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図21】同じく底面31aを移動させた状態のキャビン1の概略右側面図。
【図22】別実施例にを示すキャビン1の概略右側面図。
【図23】同じく摺動筒32aを移動させたキャビン1の概略右側面図。
【図24】第1の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図25】第2の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図26】第3の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図27】第五の構成例に係るキャビン1の概略斜視図。
【図28】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図29】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図30】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図31】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図32】第六の構成例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図33】別構成例を示す概略右側面図。
【図34】別構成例を示す概略右側面図。
【図35】別構成例を示す概略右側面図。
【図36】別構成例を示す概略右側面図。
【図37】別構成例を示す概略右側面図。
【図38】第七の構成例に係る概略右側面図。
【図39】こもり音の周波数に影響する寸法方向を示すキャビン1の概略図。
【図40】第八の構成例に係るキャビン3の概略右側面図。
【図41】別構成例を示すキャビン3の概略右側面図。
【符号の説明】
【0079】
1 キャビン
3 キャビン
2a サイドブランチ型共鳴管
2b ヘルムホルツ型共鳴箱
41 仕切り
42 アクセル
43 ワイヤー
44 回転センサ
45 制御部
46 アクチュエータ
47 開閉センサ
49 動吸振部材
51 振動センサ
51a マイク
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行時のエンジンの回転振動等に起因してキャビン内に発生する主に低周波の音、すなわちこもり音を低減する装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビン内に発生するこもり音の低減には、キャビン構造体支持部及びエンジン支持部におけるバネ常数の変更による振動絶縁や、こもり音と周波数が同じで逆位相の音をスピーカで発生して、消音するアクティブノイズコントロール等がある。また、キャビン構造体の天井部を構成するルーフパネルに形成した前後方向の補強用ビード間の隙間を利用して、吸気レゾネータを構成し、この吸気レゾネータから導出される吸気レゾネータパイプを、キャビン構造体のバックパネル付近で開口させてなる技術も公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−44681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の作業車両のキャビンや発電機のパッケージに関しては、空洞共鳴周波数が空間を形成する壁面の形状、寸法によって決定されおり、これを変更するには、寸法の変化若しくは空間内への仕切り板を設ける等の所作が必要であった。そして、寸法の変更は実質上困難であり、仕切り板もキャビン内等に設けると邪魔である。
【0005】
また、音響的な動吸振効果を利用した空洞共鳴周波数移動について、その移動量を制御することが必要であった。
【0006】
また、音響的な動吸振効果を利用した空洞共鳴周波数移動について、共鳴管若しくは共鳴箱の寸法によって、空間内の共鳴周波数が決まってしまい、起振周波数が移動した場合、移動した周波数で共鳴現象が生じていた。
【0007】
また、音響的な動吸振効果を利用したセミアクティブ制御において、起振周波数の変化を知ることが困難であった。また、作業車両のエンジン(またはモータ)の回転数を制御するスロットル部に開閉機構を設けた場合、負荷が変動したときにエンジン回転とのずれが生じた。
【0008】
また、作業車両のエンジンの回転に依存しない起振周波数に対応できていなかった。また、音場が変化した場合、特に起振源が不明のとき等には、エンジンの回転数に応じた制御だけでは音圧が逆に上昇する場合があった。
【0009】
また、音場が変化した場合、特に窓の開放等による場合には、エンジンの回転数に応じた制御だけでは音圧が逆に上昇する場合があった。
【0010】
また、共鳴部の開口部分の開閉だけでは、固定された周波数にしか移動が不可能であった。また、キャビン側の空間の影響から、共鳴器の周波数に変化が生じ、目標の周波数に合致させることが困難であった。
【0011】
また、共鳴管若しくは共鳴箱の設置場所によっては、居住空間として邪魔となった。また、従来の共鳴管若しくは共鳴箱では、対象とする共鳴周波数が一つに限られてしまっていた。
【0012】
また、共鳴管若しくは共鳴箱の設置場所によっては、共鳴管若しくは共鳴箱内部のスペースが十分に得られず、共鳴周波数の移動量が不十分であった。また、共鳴管若しくは共鳴箱を設置するとどうしても居住空間に対して、邪魔になっていた。
【0013】
また、空洞共鳴周波数は空間を形成する壁面の形状、寸法によって決定されており、これを変更するには、寸法の変化若しくは空間内への仕切り板の設置等の所作が必要であった。しかし、寸法の変更は実質上は困難であり、仕切り板も空間内では邪魔であった。
【0014】
また、共鳴管若しくは共鳴箱を用いて、動吸振構造により、音場を変化させており、設計が複雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
請求項1においては、作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するものである。
【0017】
請求項2においては、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたものである。
【0018】
請求項3においては、前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたものである。
【0019】
請求項4においては、前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させるものである。
【0020】
請求項5においては、前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させるものである。
【0021】
請求項6においては、前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させるものである。
【0022】
請求項7においては、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0024】
請求項1においては、作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するので、音響的な動吸振効果により、空洞共鳴周波数を移動することが可能となり、壁面形状の大幅な変化なく空洞共鳴に起因する騒音の増加を避けられ、こもり音の低減を図ることができる。
【0025】
また、容積の増加に伴い、周波数の移動量を増加し、効果的に共鳴現象を低減することができる。つまり、共鳴周波数の移動を大きなものとし、こもり音の低減効果を顕著なものとすることができる。
【0026】
また、共鳴管の長さ又は共鳴箱の壁面の位置を制御することによって、空洞共鳴周波数は変化するので、起振周波数の変化に伴って開閉を行うことで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0027】
また、作業車両のエンジンの回転に起因する起振周波数は既知であるので、これに連動して共鳴周波数を変化させることで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0028】
請求項2においては、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことによって、空洞共鳴周波数は変化するので、起振周波数の変化に伴って開閉を行うことで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0029】
請求項3においては、前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0030】
請求項4においては、前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させるので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0031】
請求項5においては、前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることで、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0032】
請求項6においては、前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させるので、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0033】
請求項7においては、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させるので、周波数の移動量が変化する、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管若しくは共鳴箱を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1はキャビン1の概略斜視図、図2は第一の構成例に係るキャビン1の概略斜視図、図3は同じく概略右側面図、図4は別構成例のキャビン1の概略右側面図、図5は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図6は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図7は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図8は第二の構成例に係るキャビン1の概略右側面図、図9は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図10は第三の構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図である。
【0036】
図11同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側側面図、図12は別構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図、図13は同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側面図、図14は第四の構成例に係るキャビン1周辺の概略右側面図、図15は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図16は別構成例を示すキャビン1の概略右側面図、図17は別構成例を示す概略右側面図、図18は第1の実施例に係るキャビン1の概略右側面図、図19は同じく壁面30aを移動させた状態キャビン1の概略右側面図である。
【0037】
図20は別実施例を示すキャビン1の概略右側面図、図21は同じく底面31aを移動させた状態のキャビン1の概略右側面図、図22は別実施例にを示すキャビン1の概略右側面図、図23は同じく摺動筒32aを移動させたキャビン1の概略右側面図、図24は第一の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図25は第2の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図26は第3の音場を示すキャビン1の概略斜視図、図27は第五の構成例に係るキャビン1の概略斜視図、図28は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図29は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図30は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図31は別構成例を示すキャビン1の概略斜視図、図32は第六の構成例に係るキャビン1の概略右側面図、図33は別構成例を示す概略右側面図、図34は別構成例を示す概略右側面図、図35は別構成例を示す概略右側面図、図36は別実施例を示す概略右側面図、図37は別構成例を示す概略右側面図、図38は第七の構成例に係る概略右側面図、図39はこもり音の周波数に影響する寸法方向を示すキャビン1の概略図、図40は第八の構成例に係るキャビン3の概略右側面図、図41は別構成例を示すキャビン3の概略右側面図である。
【0038】
操縦部をキャビンで覆ったトラクタ等の作業車両において、エンジンが始動すると、エンジンの回転振動によりキャビン1は防振支持されていても振動は避けられず加振される。また、騒音も発生する。それ等の振動が騒音の原因となり、キャビン1内には定在波が生じ、こもり音が発生する。定在波は、それぞれのキャビンの寸法に応じて発生する。つまり、キャビン内側の縦方向の長さや横方向の長さによって、定在波の周波数は異なるのである。本構成例では、キャビン1を用いて説明を行うが、トラクタや作業車両等のキャビンに限定されるものではなく、エンジン等の振動原を付設した荷室や作業室等の振動原側部に空間を有する部屋においても本構成例の効果が得られる。
【0039】
キャビン1内に定在波が生じこもり音が発生すると、図1に示すように、箱型のキャビン1の場合は壁面付近の音圧が最も大きくなり、キャビン1の中心部の音圧は小さくなる。この際、図2乃至図4に示すように、共鳴管2a若しくは共鳴箱2b等の共鳴器2を壁面に配設すると、共鳴器2の共鳴周波数と同じ周波数でキャビン1内の壁面付近で振動している音圧レベルの大きい空気によって、共鳴器2内部の空気が加振されて振動を始める。その結果、キャビン1内の空気は、共鳴器2 内の空気に振動を伝達した分、エネルギーを消費することになる。そして、消費されたエネルギー分だけ、キャビン1 内の振動が減衰され、こもり音が低減される。
【0040】
そして、キャビン1に共鳴器2を配設したため、配設前のキャビン1のみの場合に比べて、共鳴器の影響によって、共鳴周波数も配設前のキャビン1のみの場合から変化する。例えば、図1の共鳴器2を具備していないキャビン1のみのときの共鳴周波数が131Hzであった場合、図2のように共鳴管2aを付け加えたことで、共鳴周波数が117Hzと136Hzに変化する等である。このような場合は、上述したように、キャビン1内の空気のエネルギーが共鳴器2内の空気に伝達され、共鳴周波数は2 種類に増えるが、該2種類の117Hzと136Hzの共鳴周波数での音圧は、前記131Hzの共鳴周波数の音圧よりも小さなものとなっている。
【0041】
図3は、共鳴器2をサイドブランチ型の共鳴管2aとし、共鳴管2aの長軸をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面に対して垂直方向になるように、キャビン1の外部に配設したものであるが、図4に示すように、共鳴箱2bの長軸をキャビン2の壁面と平行になるようにキャビン1の外部に配設しても良い。また、図5に示すように、サイドブランチ型の共鳴器22の長軸をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面と平行になるように、キャビン1の内部に配設しても良い。また、図6に示すように、共鳴器23をヘルムホルツ型のものとし、共鳴器23をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面の外部に配設しても良いし、図7のように、ヘルムホルツ型の共鳴器24をキャビン1の音圧レベルの大きい壁面の内部に配設しても良い。なお、音圧レベルの大きい壁面は前後または左右または上下の両側に現れるものであり、キャビン形状や材質やエンジンの位置等により異なるものである。
【0042】
このように、作業車両のキャビン1であって、空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管2aもしくは共鳴箱2bを具備したので、音響的な動吸振効果により、空洞共鳴周波数を移動することが可能となり、壁面形状の大幅な変化なく空洞共鳴に起因する騒音の増加を避けられ、こもり音の低減を図ることができる。
【0043】
また第二の構成例として、作業車両のキャビンに前記共鳴器23を配設して、こもり音を低減しても、所望のレベルまで下がらない場合がある。この場合には、図8に示すように、共鳴周波数は同一で容積のより大きな共鳴器25を交換、つまり、付け替え可能にキャビン1に配設することにより、大きな共鳴器25を取り付けることで周波数の移動量を大きくすることができる。ここで、図9に示すように、ヘルムホルツ型の共鳴器26をキャビン1に配設する場合は、共鳴器26の開口部分26aの面積も共鳴器26の容積に伴い変更するものとする。
【0044】
このように、同一共鳴周波数で容積が異なる前記共鳴管若しくは前記共鳴箱26と付け替え可能に構成したので、容積の増加に伴い、周波数の移動量を増加し、効果的に共鳴現象を低減することができる。つまり、共鳴周波数の移動を大きなものとし、こもり音の低減効果を顕著なものとすることができる。
【0045】
次に第三の構成例として、図10乃至図13を参照しながら、キャビン1とヘルムホルツ型の共鳴器27の接続部分である、共鳴器27の開口部分について説明する。図10及び図11に示すように、共鳴器27の開口部分には仕切り41が開閉自在に配設されている。仕切り41を開閉自在にするためには、仕切り41をスライド式に開口部に配設しても良いし、開口部分の端を支点に回転扉型に配設してもよい。これによって、共鳴器27の開閉を変化させる。
【0046】
ところで、サイドブランチ型の共鳴器の共鳴振動数fsは、
fs=C/4l
C=音速、l=共鳴器の長さ(奥行き)
であり、また、ヘルムホルツ型の共鳴器の共鳴周波数fhは、
fh=C/2π・(A/V・l)1/2
C=音速、A=開口部分面積、l=共鳴器のくび部の等価長さ
である。
そのため、ヘルムホルツ型の共鳴器27をキャビン1に配設する場合は、開口部分の面積Aを変化させることで、該共鳴器27によって、低減できる周波数を変化させることができるのである。
【0047】
本構成例では、図10及び図11に示すように、仕切り41をスライドする等して、開口部分の開閉を可能とした。これにより、通常は共鳴器を閉じておくが、エンジン起振周波数がキャビン内空洞共鳴周波数に合致しかけた時に共鳴器を開けることで、空洞共鳴周波数自体を変化させ、空洞共鳴が起きなくなる。さらに、開口部分の面積Aを変化させることも可能であり、車両外部の気温や車両の重量そしてエンジンの回転数等によりエンジンからの起振周波数が移動した場合においても、開口部分の面積Aを調節することによりこもり音の低減効果を高めることができる。具体的には、空洞共鳴周波数に比較して起振周波数が高くなってきた場合は、fhを増加させる、すなわち開口部分の面積Aを大きくすべく、仕切り41を開放させる方向へ移動することでこもり音の低減効果を高め、逆に起振周波数が低くなってきた場合には、fhを低下させる、すなわち開口部分の面積Aを小さくすべく、仕切り41を閉じる方向へ移動することでこもり音の低減効果を高めることができる。なお、具体例として、仕切り41をスライドさせるために、壁の開口部に上下にレールを設けて仕切り41を摺動自在に移動可能とし、該仕切り41と壁との間にハンドル等を介装して、該ハンドルを回動することにより所望の位置に移動させて開口面積を変更可能とするのである。
【0048】
このように、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱27の開口部分に仕切り41を設け、該仕切り41を開閉することにより共鳴周波数が調節できるようにしたので、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0049】
開口部分の仕切り41の開閉は、キャビン内の作業者が直接行っても良いが、図12及び図13に示すように、エンジン等の回転数を制御するアクセル部42にワイヤー43の一端を連結し、他端を該仕切り41に連結して、回転数に応じて開口部分の面積Aが変化するようにしてもよい。そして、エンジンの回転数が増えれば起振周波数も高くなり、エンジンの回転数が減れば起振周波数も低くなるので、アクセルを踏み込めば開口部分の面積Aが大きくなるように、アクセルを話せば開口部分の面積Aが小さくなるように、ワイヤー43の連結を行えばよい。若しくは、空洞共鳴の生じるエンジン回転においてのみ、共鳴器が開く機構を備えても良い。
【0050】
このように、前記作業車両のエンジンの回転数を制御するスロットル部42と、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱28の開口部分の仕切り41と、を連動連結し、スロットル部42の変位に応じて仕切り41が開閉するので、作業車両のエンジンの回転に起因する起振周波数は既知であるので、これに連動して共鳴周波数を変化させることで、共鳴現象を効果的に回避することができる。
【0051】
次に、仕切り41の開閉動作をより正確に、起振周波数に対応させる技術について説明する。第四の構成例として、図14を参照しながら、エンジン50の回転数を計測する回転センサ44と、仕切り41の開閉を行うアクチュエータ46を利用した制御方法を説明する。トラクタ等の作業車両の場合、キャビン1の前方若しくは下方にエンジン50が配設されていることが多い。前記エンジン50に回転センサ44を装備して、常時エンジンの回転数を計測する。そして、仕切り41にはソレノイドまたはモータ等を利用したアクチュエータ46を連結し、アクチュエータ46により、仕切り41の開閉を行うものとする。前記回転センサ44とアクチュエータ46は、間に制御部45を介して連動連結されており、エンジン50の回転数に応じて、制御部45がアクチュエータ46を動作させて仕切り41の開閉を行う。
【0052】
本構成例においても、回転センサ44によって計測されたエンジン50の回転数が高くなると、制御部45はアクチュエータ46が仕切り41を開放する方向に動作するように命令し、エンジン50の回転数が低くなると制御部45はアクチュエータ46が仕切り41を閉じる方向に動作するように命令しても良い。
【0053】
このように、前記作業車両のエンジン50の回転数を計測する回転センサ44と、前記開口部分の仕切り41の開閉を行うアクチュエータ46と、該回転センサ44より得られた回転数に応じて、該アクチュエータ46を介して該仕切り41を制御する制御部45と、を設けたので、負荷変動に伴う作業車両のエンジン50の回転数の変化に追従して効果的に共鳴周波数を変化させることができる。
【0054】
また、キャビン1内に振動が生じても、起振源がどこであるか不明である場合もある。そこで、図15に示すように、直接キャビン1内の代表点の振動を計測するものとする。キャビン1内の代表点に振動センサ51・51を配設し、共鳴器がない場合の空洞共鳴周波数の振動が大きい場合に、開口部分の仕切り41を開放し、空洞共鳴周波数自体を変化させるのである。この場合も、計測されたキャビン1 内の代表点の振動周波数が大きい場合は、仕切り41を大き目に開放し開放部分の面積Aを大きくし、振動周波数が小さい場合は、仕切り41を調節して開放部分の面積Aを小さくするようにしても良い。
【0055】
このように、前記キャビン1内の所定位置の振動を計測する振動センサ51と、計測された振動数に応じて、前記仕切りの開閉を調節する制御部45を設けたので、
起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0056】
また、起振源がわからない場合と同様に、音場の変化がわからない場合もある。そこで、図16のように、共鳴器28の開口部分付近の音圧を測定しながら、開口部分の仕切り41の開閉動作を行う。さらに、最もこもり音が低減されるような仕切り41の位置を求めてもよい。この場合は仕切り41の開閉を一定時間ごとに行って、その都度、最もこもり音が低減される仕切り41の位置を求めても良いし、作業者がこもり音をうるさいと感じたとき等、作業者の好みにより任意の時点で仕切り41を開閉させるか、最もこもり音が低減される仕切り41の位置を求めても良い。
【0057】
このように、前記開口部分付近の音圧を計測するマイク51aと、該開口部分付近の音圧が最も低くなるようにアクチュエータ46を介して前記仕切り41の開閉を行う制御部45と、を具備したので、起振源が不明であっても、空洞共鳴による共鳴を回避することができる。
【0058】
前記音場の変化は、ドア61や窓62を開閉したときには特に顕著に起こるものである。そのため、窓の開放による音場の変化を捉え、こもり音の低減を効率良く行うことが重要である。そこで、図17に示すように、ドア61や窓62等の可動部分に開閉センサ47・47を配設し、キャビン1の空間の開閉をセンシングし、全閉状態においてのみ共鳴器29が作動する、つまり仕切り41が開放される、ようにする。共鳴器29の作動は、上述したように、開閉センサ47・47によってセンシングされた結果が制御部45に送られ、制御部45にて全閉状態か否かを判断し、全閉状態の場合にはアクチュエータ46により、仕切り41を開放する。若しくは、最もこもり音が低減される位置を求めるものとする。そして、開閉センサ47・47のうちの少なくとも1つ以上が、可動部分の開放を検知すると、制御部45とアクチュエータ46によって仕切り41は閉じられる。
【0059】
このように、前記キャビン1のドア61や窓62等の開閉が行われる部分をセンシングする開閉センサ47・47を設け、開口されている部分がある場合は、前記共鳴管若しくは共鳴箱29の開口部分を閉じるようにするので、ドア61や窓62などの開口部分が発生した場合に共鳴管若しくは共鳴箱29が逆に騒音を発生することを回避することができる。
【0060】
次に、第1の実施例として、共鳴周波数を変化させる技術について説明する。上述の技術では、最も大きな音圧や振動を起こしている周波数に対してこもり音の低減を行うことが可能であったが、共鳴周波数を予め決められた周波数にしか移動できないものであった。本実施例では、共鳴管31の長さ若しくは共鳴箱30の一部の壁面を可変とすることで、共鳴周波数を変化させるものである。また、共鳴器の共鳴周波数はキャビン内部の空気の影響を受けて、開放状態とは若干異なってくる。これを解消する為に、共鳴器の共鳴周波数を調整できる機構が必要となる。具体的には、図18及び図19に示すように、共鳴箱30の1つの壁面30aを可変とし、キャビン1側に近づけたり遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させる方法が挙げられる。また、図20及び図21に示すように、共鳴管31の底面31a(キャビン1の壁面から最も遠く、キャビン1の壁面と平行な共鳴管の底面31a)を可変とし、キャビン1側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることも可能である。
【0061】
本実施例では、共鳴箱30若しくは共鳴管31の内部に壁面30aや底面31aが摺動自在に配設された構成となっているが、図22及び図23に示すように、共鳴管32の外側に、共鳴管32に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒32aを嵌め込む構成としても良い。また、本実施例の場合も、上述の第5の構成例の場合と同じく、キャビン1内の代表点や共鳴器30・31・32付近において、センサ51により振動や音圧や周波数を測定して、キャビン1内の振動数を求め、壁面30aや底面31aや摺動筒32aをアクチュエータ46にて移動可能とし、センサ51に制御部45を介してアクチュエータ46と接続して、共鳴周波数を変化させるものとする。
【0062】
このように、前記作業車両のエンジンの回転数か、前記開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ44・51と、前記共鳴管31の底面31a若しくは前記共鳴箱30の壁面30aを調節するアクチュエータ46と、該センサ44・51より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面31a・32a若しくは壁面30aを移動させるべく該アクチュエータ46を制御する制御部45とを設けたので、共鳴管31・32若しくは共鳴箱30の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量が変化するため、つまり空洞共鳴周波数に対して少し低い周波数の共鳴管31・32若しくは共鳴箱30を用いると低周波側に大きく移動し、その逆だと高周波数側に大きく移動するため、起振周波数に合わせたマッチングが可能となる。
【0063】
次に、共鳴箱若しくは共鳴管の設置箇所について説明する。エンジンを作動させると、キャビン1内にはこもり音が発生するが、該こもり音は上述したように、壁面付近の音圧や振動が大きなものとなる。例えば、図24に示すように、キャビン1内の左右両端の音圧が大きくなり、左右方向において真中付近の音圧が低くなったり(パターン1)、図25に示すように、キャビン1の前下部及び後上部の音圧が大きくなり、キャビン1の前後方向と上下方向において真中付近の音圧が低くなったりする(パターン2)。また、以上の性質全てを反映する場合、すなわち図26に示すように、キャビン1の前上部の右端及び、後下部の左端の音圧が大きくなり、前後方向及び上下方向及び左右方向の全てにおいて真中付近の音圧が低くなったりする場合もある(パターン3)。
【0064】
そこで、第五の構成例として、図27に示すように、ヘルムホルツ型の共鳴器33をキャビン1の天井の右端辺近傍(端辺部)に固設する。このように、キャビン1の端に共鳴器33を固設すると、作業者がキャビン1内に乗り込んでいる場合にも、居住空間として邪魔にならない。ここで、共鳴器33はキャビン1の天井の左端に固設しても良い。また、図28に示すように、2つのヘルムホルツ型の共鳴器33・33をキャビン1の天井の右端と左端の両側端辺部、または対角方向、または対辺方向に固設しても良い。これらの設置方法は、上述のパターン1の場合に特に有効である。そして、図29に示すように、天井の後部に同じくヘルムホルツ型の共鳴器34を固設しても良し、図30に示すように、天井の左右方向の中心付近にサイドブランチ型の共鳴器35を固設しても良い。サイドブランチ型の共鳴器35は最後部に開口部を設ける。これらの後上部に共鳴器34・35を固設する方法は、上述のパターン2の場合に特に有効である。なお、パターン3の場合は、図31のように、共鳴器34をキャビン1の前上部に固設すると有効である。
【0065】
このように、前記キャビン1内の隅部または角部または端辺部に、前記共鳴管若しくは前記共鳴箱33・34・35を設けるので、人の居住空間を邪魔することなく、共鳴管若しくは共鳴箱33・34・35の設置が可能であり、特に低周波数の共鳴に効果的であり、結果騒音低減に有効である。
【0066】
次に、六の構成例として、2つ以上の共鳴周波数を低減する技術について、説明する。キャビン1内にこもり音が発生した場合に、大きな振動及び音圧を生じさせる2種類の共鳴周波数A・B(二つのピークA・B)が存在するときに、それぞれの共鳴周波数A・Bをもつ共鳴器36A・37Bをキャビン1内に固設する。ここで、大きな振動及び音圧を生じる2種類の共鳴周波数は、他の共鳴周波数に比べて目立って大きな振動や音圧を生じる共鳴周波数でなくとも、キャビン1内に生じたこもり音の様々な共鳴周波数の中で比較的振動や音圧が大きなものを選択すれば良い。
【0067】
そして、共鳴器36A・36Bの固設箇所は、それぞれの共鳴周波数の腹、すなわちそれぞれの共鳴周波数において振動や音圧が大きくなる場所、とする。この場合の2つの共鳴器36A・36Bは、図32に示すように、ヘルムホルツ型共鳴器36HAとヘルムホルツ型共鳴器36HBの組み合わせでも良いし、図33に示すように、サイドブランチ型共鳴器36SAとサイドブランチ型共鳴器36SBの組み合わせでも良いし、図34に示すように、ヘルムホルツ型共鳴器36HAとサイドブランチ型共鳴器36SBの組み合わせでも良い。また、共鳴器は2つに限らず、3つ以上の共鳴周波数の振動や音圧を低減させるべく、3つ以上の共鳴器を固設しても良い。
【0068】
このように、前記キャビン1内であって、少なくとも2箇所以上の音圧が大きく振動数が異なる場所に、該振動数と同じ共鳴周波数をもつ前記共鳴管若しくは共鳴箱36・36を配設したので、2以上の共鳴周波数についても、上記と同様に、低周波数の共鳴に効果的であり、結果騒音低減に有効である。
【0069】
また、キャビン1内に発生したこもり音の1つの共鳴周波数の振動や音圧を低減させるために、2つ以上の共鳴器37・38を配設しても良い。具体的には、図35に示すように、2つの同型のヘルムホルツ型共鳴器37・37を固設しても良いし、図36のように、2つの同型のサイドブランチ型共鳴器38・38を固設しても良いし、図37のように、1つのヘルムホルツ型共鳴器37と1つのサイドブランチ型共鳴器38を固設しても良い。また、共鳴器37・38は2つに限らず、更に効果を高めるために、3つ以上の共鳴器を固設しても良い。
【0070】
このように、前記キャビン1内であって、少なくとも2箇所以上の音圧が大きく振動数が同じ場所に、該振動数と同じ共鳴周波数をもつ前記共鳴管若しくは共鳴箱37・38を配設したので、周波数の移動量を多く得ることができ、改善効果を向上させられる。この場合は、キャビンの端に小さい共鳴管若しくは共鳴箱をたくさん固設することが可能となるので、作業者の居住空間を邪魔することなく、こもり音の低減効果が得られる。
【0071】
また、わざわざ共鳴管や共鳴箱を配設しなくても、ある程度の厚みを持ち、また、強度を求められることがない天井部を、共鳴器として利用しても良い。すなわち、天井部を中空にして、キャビン1内から天井に穴を開けるのである。天井に穴を開けることで、天井部がサイドブランチ型共鳴器、若しくはヘルムホルツ型共鳴器の役割を果たす構造となる。また、天井部に限らず、中空のフレームやエアコンのダクトを利用しても良い。
【0072】
このように、前記キャビン1の一部に開口部を設け、該開口部を共鳴部として利用したので、人の居住空間を邪魔することなく、共鳴管若しくは共鳴箱の設置が可能となる。共鳴管若しくは共鳴箱を別途設ける必要が無く、コストダウンが可能となる。
【0073】
次に、第八の構成例として、構造系の共鳴を利用して空洞共鳴周波数の移動を為す方法について説明する。図38のように、音圧の腹となる部分の近くに薄膜等の構造の動吸振部材49を配設する。該動吸振部材49はゴム等の薄い弾性部材が適している。予め、キャビン1内に発生するこもり音の共鳴周波数を求めておき、キャビン1内の該共鳴周波数により生じる振動や音圧の大きい箇所に、該共鳴周波数にて共鳴する構造の動吸振部材49を配設する。
【0074】
このように、前記キャビン1の中で、音圧が大きい部分に薄膜等の動吸振部材49を配設したので、構造系の共鳴が動吸振器として作用し、空洞共鳴周波数を移動することが可能となる。
【0075】
最後に、第八の構成例として、キャビンの一部を変形させて、共鳴管若しくは共鳴箱を配設するのと同じ効果が得られる技術について説明する。例えば、キャビン1が図39に示すような形状をしている場合において、エンジンからの振動によるこもり音がキャビン1内の前下部及び後上部の音圧が大きく、前後方向及び上下方向においての真中付近の音圧が小さいときは、図中の矢印方向の寸法に関する共鳴周波数の振動及び音圧の影響が大きいと考えられる。この場合は、図40に示すように、キャビン3の後上部を若干凹ませる(外側に凸の形状とする。)ことによって、矢印方向の寸法を大きくする。これによって、共鳴周波数を移動させて、こもり音の低減を図るのである。
【0076】
また、図40のように、キャビン3の後上部の凹部3aの下方に仕切り48を回動自在に配設し、矢印方向の寸法を調節できるようにして、エンジンの回転数の変化による共鳴周波数の変化に対応させる。本構成例では、キャビン3の後上部を凹ませる構成としたが、前下部の方を凹ませても良い。凹部の形状としては、図41のように、開口部分が入り組んだ形状となっても良い。
【0077】
このように、前記キャビン3の空洞共鳴に起因する寸法部分の端部に空洞部(凹部)3aを設け、該空洞部3aの開口部分に仕切り48を設け、該仕切り48の開閉により音場を変化させるので、共鳴管若しくは共鳴箱を用いることなく、音場を変化させるが可能となり、設計が単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】キャビン1の概略斜視図。
【図2】第一の構成例に係るキャビン1の概略斜視図。
【図3】同じく概略右側面図。
【図4】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図5】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図6】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図7】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図8】第二の構成例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図9】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図10】第三の構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図。
【図11】同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側側面図。
【図12】別構成例に係る仕切り41が開放された状態のキャビン1の概略右側面図。
【図13】同じく仕切り41が閉じられた状態のキャビン1の概略右側面図。
【図14】第四の構成例に係るキャビン1周辺の概略右側面図
【図15】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図16】別構成例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図17】別構成例を示す概略右側面図。
【図18】第1の実施例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図19】同じく壁面30aを移動させた状態キャビン1の概略右側面図。
【図20】別実施例を示すキャビン1の概略右側面図。
【図21】同じく底面31aを移動させた状態のキャビン1の概略右側面図。
【図22】別実施例にを示すキャビン1の概略右側面図。
【図23】同じく摺動筒32aを移動させたキャビン1の概略右側面図。
【図24】第1の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図25】第2の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図26】第3の音場を示すキャビン1の概略斜視図。
【図27】第五の構成例に係るキャビン1の概略斜視図。
【図28】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図29】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図30】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図31】別構成例を示すキャビン1の概略斜視図。
【図32】第六の構成例に係るキャビン1の概略右側面図。
【図33】別構成例を示す概略右側面図。
【図34】別構成例を示す概略右側面図。
【図35】別構成例を示す概略右側面図。
【図36】別構成例を示す概略右側面図。
【図37】別構成例を示す概略右側面図。
【図38】第七の構成例に係る概略右側面図。
【図39】こもり音の周波数に影響する寸法方向を示すキャビン1の概略図。
【図40】第八の構成例に係るキャビン3の概略右側面図。
【図41】別構成例を示すキャビン3の概略右側面図。
【符号の説明】
【0079】
1 キャビン
3 キャビン
2a サイドブランチ型共鳴管
2b ヘルムホルツ型共鳴箱
41 仕切り
42 アクセル
43 ワイヤー
44 回転センサ
45 制御部
46 アクチュエータ
47 開閉センサ
49 動吸振部材
51 振動センサ
51a マイク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節することを特徴とする作業車両のキャビン。
【請求項2】
前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項3】
前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項4】
前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項5】
前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項6】
前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項7】
前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項1】
作業車両のキャビン(1)であって、該キャビン(1)内の空洞共鳴が生じたときの音圧の大きい位置に、該空洞共鳴の周波数で共鳴を生じる共鳴管(31)又は共鳴箱(30)を具備し、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節することを特徴とする作業車両のキャビン。
【請求項2】
前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項3】
前記キャビン(1)の所定位置の振動数かを計測するセンサと、前記共鳴管(31)の長さ若しくは、前記共鳴箱(30)の壁面の位置を調節するアクチュエータ(46)と、前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、回転センサより得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、前記共鳴管(31)の長さ又は共鳴箱(30)の壁面の位置の調節を行う該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項4】
前記共鳴箱(30)の1つの壁面(30a)の位置を可変とし、キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数に影響を与える寸法を変更し、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項5】
前記共鳴管(31)の、キャビン(1)の壁面から最も遠く、該キャビン(1)の壁面と平行な底面(31a)の位置を可変とし、該キャビン(1)側に近づけたり、遠ざけたりすることで、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項6】
前記共鳴管(32)の外側に、共鳴管(32)に覆い被せるように、一方向を開放した円柱状もしくは多角柱状の摺動筒(32a)を嵌め込み、該キャビン(1)内の代表点や共鳴管(32)付近において、センサ(51)により振動や音圧や周波数を測定して、該キャビン(1)内の振動数を求め、摺動筒(32a)をアクチュエータ(46)にて移動可能とし、センサ(51)に制御部(45)を介してアクチュエータ(46)と接続して、共鳴周波数を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【請求項7】
前記作業車両のエンジンの回転数か、開口部分の音圧か、前記キャビンの所定位置の振動数かを計測するセンサ(44・51)と、前記共鳴管(31)の底面(31a)の位置若しくは前記共鳴箱(30)の壁面(30a)の位置を調節するアクチュエータ(46)と、該センサ(44・51)より得られた回転数か音圧か振動数かに応じて、該底面(31a)若しくは壁面(30a)を移動させるべく、該アクチュエータ(46)を制御する制御部(45)とを設け、共鳴管(31)若しくは共鳴箱(30)の基本周波数を変化させることで、周波数の移動量を変化させることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公開番号】特開2009−102000(P2009−102000A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282333(P2008−282333)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2004−150847(P2004−150847)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2004−150847(P2004−150847)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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