説明

作業車両のキャビン

【課題】オペレータの視界を妨げることなくドアガラスに対する泥土付着を防止することができると共に、乗降を行い易くすることができる作業車両のキャビンを提供する。
【解決手段】ドアガラス9aの周縁部にウエザーストリップを装着して、室内への埃や雨水の侵入を防止する作業車両のキャビンであって、前記ウエザーストリップは、室内側に設けられキャビンフレームに密着する中空シール部15cと、室外側に突出するフィン部23を備え、当該フィン部23はタイヤに臨むドアガラス9aの周縁部に設け、タイヤが巻き上げた泥土を遮ってドアガラス9aに泥土が付着しないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のキャビン関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに設置されるキャビンは、操縦部を覆い操縦ステップの側方で、ドアを後部のヒンジを支点に開閉自在に備えており、ドアには周縁部を被覆するウエザーストリップを設けて、キャビン室内への埃や雨水の侵入を防止するものが既に公知である(例えば特許文献1。)。
上記キャビンのドアガラスは、ドア後下部辺(ドア斜辺部)にオーバーフェンダを設けている。このオーバーフェンダは、タイヤ(後輪)の上部及び後方を覆うフェンダの幅と同一幅を有して、タイヤが巻き上げた泥土を遮りドアガラスへの泥土の付着を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−9878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるキャビンは、オーバーフェンダをドア開閉の支障とならないように設けると共に、オーバーフェンダによってドアガラスへの泥土の付着を防止するが、オペレータがタイヤ位置や機体側方下部の圃場の状況等を確認しようとするとき、外側に大きく突出するオーバーフェンダが視界を遮りタイヤ位置の確認等を行い難くする欠点がある。
またドアをキャビンの外(圃場側)から開けるとき、ドアから大きく突出するオーバーフェンダが邪魔になると共に、人体と接触し易い等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は係る課題を解決するために、ドアガラス9aの周縁部にウエザーストリップ15を装着して、室内への埃や雨水の侵入を防止する作業車両のキャビン1において、前記ウエザーストリップ15は、室内側に設けられキャビンフレームに密着する中空シール部15cと、室外側に突出するフィン部23を備え、当該フィン部23はタイヤ3に臨むドアガラス9aの周縁部に設け、タイヤ3が巻き上げた泥土を遮ってドアガラス9aに泥土が付着しないように構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、キャビンのドアガラスにウエザーストリップを装着するに、タイヤに臨むドアガラスの周縁部に装着するウエザーストリップに、室外側に突出させるフィン部を設けることにより、当該フィン部によってタイヤが巻き上げた泥土を遮ることができるので、ドアガラスに対する泥土付着を防止することができる。
またフィン部はタイヤに臨むドアガラスの周縁部に比較的に幅狭となして突出させているので、オペレータの視界を妨げることなくタイヤ位置等の確認を行い易くすることができる。またドアを開けるとき、フィン部はそれほど大きく突出させていないので、大きく回動させることができて乗降を行い易くすることができる。さらに、フィン部が作業者に接触したとしても、フィン部は可撓性並びに弾力性を有しているので、身体を徒に損傷するといった虞れがない等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタに設置されるキャビンの要部の構成を示す斜視図である。
【図2】周縁シール部とキャビンフレームの構成を示す断面図である。
【図3】斜辺シール部とキャビンフレームの構成を示す断面図である。
【図4】ステップマットの要部の構成を示す平面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】(A)は操作レバーの構成を示す正面図である。(B)は摺動部材とシール部材の構成を示す平面図である。(C)は摺動部材の斜視図である。
【図7】キャビンフレームの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1は、農業用トラクタ(作業車両)に設置された操縦部2を囲うキャビンである。尚、上記トラクタは前部にエンジンを配設してボンネットで覆い、その後方にキャビン1で覆われるステアリングハンドル及び操縦席等からなる操縦部2が設置され、前輪と後輪3を有する機体後部に耕耘装置等の作業機を装着する連結部を備えている。
【0009】
上記キャビン1は、図7で示すような箱形枠形状のキャビンフレーム1aを備え、トラクタの車体に図示しない防振支持体を介して搭載されている。このキャビンフレーム1aは左右前部に配置された一対の前部支柱4と、左右側部に配置された一対の中間支柱4aと、背面に配置された左右一対の後部支柱4bとで縦方向の支柱部が構成され、前記左右一対の前部支柱4の上端部間を連結する上部前梁4cと、左右一対の後部支柱4b の上端部間を連結する上部後梁4dと、前部支柱4と中間支柱4aと後部支柱4bとの上端部間を連結する左右一対の上部側梁4eとで上部枠が構成されている。
【0010】
また、キャビンフレーム1aは、左右一対の前部支柱4の下端から左右内方へ突出した下部前梁4fと、左右一対の前部支柱4の下端から後方へ突出した下部側梁4gと、この左右下部側梁4gの後端と左右各中間支柱4a並びに後部支柱4bの下端との間に連結されているフェンダ支持梁4hと、左右後部支柱4bの下端部間に連結される下部後梁4iと、下部後梁4iの中間部の下端と下部前梁4fの突出端との間に連結されている左右下部中梁4jとで下部枠が構成されている。
【0011】
そして、この下部枠にフロアパネル5、シートパネル5a、背面パネル5b、フェンダ6がそれぞれ相互に溶接されて接合されており、さらに、下部前梁4fの左右突出端には門型の前基板5cが連結されており、この前基板5cとフロアパネル5とにわたってステアリングハンドルやペダル等を支持する操縦ボックス5dが立設されている。
さらに、このキャビンフレーム1aに、フロントウインドウ7、サイドウインドウ7a、リャウインドウ7b、ルーフ8及び操縦席等が装着される。また前部支柱4と上部側梁4eと中間支柱4aとフェンダ支持梁4hと下部側梁4gとによって形成される乗降間口には、ドア9が取付けられてキャビン 1 を構成している。
【0012】
上記フェンダ6は、キャビンルーム内に位置し後輪(タイヤ)3をタイヤ幅の内側寄り半分程度を覆う幅のフェンダ部の後部に、図1に示すようにオーバーフェンダ6aを設けている。このオーバーフェンダ6aは、タイヤ上方の外側寄りを覆う幅となしており、タイヤ3が巻き上げた泥土の飛散を遮りサイドウインドウ7aやドア9の後部側への泥土付着を防止すると共に、その前部側に向けて徐々に先細となる傾斜形状にすることにより、後方に向けて大きく回動させるドア9との接当を防止し乗降間口を広くするようにしている。
【0013】
これにより、フェンダ6は、フェンダ前方側をキャビン1から側方に大きく突出させないため、オペレータがドア9を介して外を覗き見るとき、機体側方下部の視界を遮ぎることなく、タイヤ3の位置や圃場の作業状態の確認を容易に行うことができる。
またドア9を開くとき、フェンダ6に支障されることなく大きく開動させることができ、且つドア9を開いた間口にオーバーフェンダ6aを大きく突出させることなく、乗降を行い易くすることができる。
【0014】
ドア9は、強化ガラス又はプラスッチック材による1枚状の透明板のドアガラス9aとなし、前記キャビンフレーム1aの乗降間口の側面に合致し間口を塞ぐ形状にしており、ドアガラスの後部をヒンジ11を介して中間支柱4aに回動自在に取付け、ドアガラス前部に設けたドアハンドル12によってドア9を開閉するようにしている。
またドアガラスの周縁部には、室内への埃や雨水の侵入を防止するウエザーストリップ15を装着しており、このウエザーストリップ15は、前部支柱4と上部側梁4eと中間支柱4aと下部側梁4gとに対向して周縁部に装着する周縁シール部15aと、フェンダ支持梁4hに対向する、ドアガラス9aのドア斜辺部9bに装着する斜辺シール部15bとによって構成している。
【0015】
上記周縁シール部15aと斜辺シール部15bは、図2,図3で示すようにいずれも、ゴム又はプラスッチック材によって、ドアガラスの縁部に嵌合するコ字状の溝断面をなす取付基部15dと、該取付基部15dの内側片から室内側に設けられキャビンフレーム1a側に密着する中空シール部15cと、取付基部15dの外側表面に突出させた水切り用のリップ15eとを一体的に形成した帯状体にしている。
【0016】
そして、上記斜辺シール部15bには、タイヤ3に臨むドアガラス9aの周縁部において、室外側に突出するフィン部23を設けることにより、当該フィン部23によってタイヤ3が巻き上げた泥土を遮りドアガラス9aに泥土が付着しないようにしている。
即ち、斜辺シール部15bは、その取付基部15dの外側片から室外側に向けて50ミリ程度の突出幅を有するフィン部23を、断面が先細状でやや下向きに傾斜させて一体的に突出している。これにより斜辺シール部15bはドア9の閉鎖姿勢において、フィン部23をドアガラス9aから50ミリ程度の突出幅によってタイヤ3の外周前方を覆い、且つフィン部23の後部を前記オーバーフェンダ6aの前部上方にラップさせることができる。
【0017】
尚、図2で示すようにキャビン1内には、フロアパネル5の上面に図4,図5で後述するフロアマット20を敷設している。上記フロアパネル5を取付ける下部側梁4gと下部中梁4jは、その下面を補強板4kによって接続し補強している。
またフェンダ支持梁4hとフェンダ6は、図3に点線で示す断面形状のカバー21で覆っている。そして、カバー21又はフェンダ6或いはフロアパネル5等の板部材には、必要により図6で後述する構成を以って操作レバー22が設置される。
【0018】
以上のように構成されるキャビン1は、ドアガラス9aの周縁部にウエザーストリップ15を装着するに、ウエザーストリップ15は、室外側に突出するフィン部23をタイヤ3に臨むドアガラス9aの周縁部に設けたことにより、フィン部23の後部をオーバーフェンダ6aの前部上方でラップさせた状態で、フィン部23の突出幅によりオーバーフェンダ6aの前方でタイヤ3の前側上方を覆うことができ、タイヤ3による飛散泥土を遮りドアガラス9aに対する泥土付着を防止することができる。またフィン部23はドア斜辺部9bの縁部において幅狭で突出させるので、オペレータの視界を妨げることなくタイヤ3の位置等の確認を行い易くすることができる。
【0019】
また広幅なオーバーフェンダをドアガラス9aの下部にボルトによって取付ける従来のものと比較し、上記オーバーフェンダに代わる幅狭なフィン部23は、ドア斜辺部9bに設ける斜辺シール部15bに一体的に突出させて設けるので、ドア下部に設置される泥土付着防止構造を、簡単且つ廉価な構成にすることができると共に、在来の断面構造の周縁シール部15aを製作する際に、同様な工程と製造手段によって、軽量化を図りながら簡単に製作することができる。
また大きさや形状の異なる各種作業車両のドア9に対しても、斜辺シール部15bは取付け長さを調整切断することによって、フィン部23付の泥土付着防止構造を簡単に付設することができる。
【0020】
またドア9をヒンジ13を介して後方に向けて大きく開けようとするとき、フィン部23がタイヤ3の側面等に接当するまで大きく回動させ間口を広くするので、乗降を行い易くすることができる。
またこの際に、フィン部23は突出幅が比較的に少なく可撓性並びに弾力性を有しているため、フィン部が作業者に接触したとしても、人体にクッション性を有して柔らかく接触するので、身体を徒に損傷するといった虞れがない等の特徴がある。
【0021】
次に、図4,図5を参照し前記フロアマット20について説明する。このフロアマット20はゴム或いはプラスッチック材により可撓性を有して操縦ステップ5の平面視形状に沿って敷設するように形成され、マット幅中央の前後端にカギ状の係合部27とカギ孔状の係止部28を設けていると共に、マットの左右端側に操縦ステップ5に対し係脱自在に係合する位置決め用の止め具29を設けている。
【0022】
これにより、フロアマット20は敷設状態において、フロアパネル5の後部側に設置されるメンテナンス口30を覆っており、且つ止め具29を外しマットの後部を持ち上げ、図5に点線で示すように前方に折り曲げることにより、係止部28を係合部27に係止させたメンテナンス姿勢に保持することができる。これによりフロアマット20は、ステップ後部のメンテナンス口30の上方を広く開放することができ、該メンテナンス口30を介して、ステップ下部に配設されている例えば油圧バルブ、レバーリンク等の調整や清掃、並びにオイル供給口への給油作業等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0023】
即ち、フロアマット20は、係止部28をマット後部面の一部から上方に突出させ、後方下向きにカギ状に折り曲げたフック片31となし、係合部27をマット前部面の一部から上方に向け、側面視で下向きコ字状の断面をなすように箱型状に突出させた収納部32を形成している。そして、収納部32には、その後壁の下部に前記フック片31を挿入自在とする差込孔33を穿設している。これによりフロアマット20は、上方に突出したフック片31を摘み前方への折り曲げを行うことができ、且つフック片31を係合部27の差込孔33に挿入することができる。そして、フック片31は反転姿勢となり収納部32の後壁にマット自身の弾力性を有して係止するので、メンテナンス作業時の姿勢保持を確実にすることができる。
【0024】
またメンテナンス姿勢のフロアマット20は、そのマット弾性に抗してフック片31を下向きに押圧すると、収納部32との係合を解除してフック片31を抜き出すことができ、元の敷設姿勢に簡単に復帰させることができる。従って、フロアマット20を操縦ステップ5から取り除くことなく、メンテナンス作業を行うことができる。
また上記構成による係合部27と係止部28は、フロアマット20を成形する際に、アンダーカット部分を生じない形状にすることができるので、マット表面の凹凸模様35と共に上下の合せ成形型によって簡単に成形することができる等の特徴がある。
【0025】
次に、前記操作レバー22について図6を参照し説明する。この操作レバー22は前記板部材等からなるレバーガイド36のガイド溝36aに挿入され、溝に沿って点線及び実線で示す方向に操作移動自在に設置され、走行速度或いは作業変速等を行うことができる。そして、操作レバー22はレバー杆の中途に、菱形状断面をなす摺動部材37をガイド溝36aの高さ位置で、前後の鋭角部をレバー操作方向に向けて嵌挿し位置決め固定している。またレバーガイド36は、その下面にガイド溝36aに沿わせてホルダ38を固設しており、該ホルダ38内に弾力性を有して左右方向から摺動部材37を押接するシール部材39を溝方向に沿って保持している。
【0026】
これにより図6(B)に示すように左右のシール部材39は、摺動部材37の形状に沿って弾力を有して滑らかに変形し挟持状態にするので、相対向するシール部材39との間に大きな隙間の発生を防止すると共に、摺動部材37の溝方向の移動に支障を生ずることなく操作レバー22の操作を行うことができる。
従って、摺動部材37を有しない在来の構成では、操作レバー22が左右のシール部材39を押し開いて隙間を生じさせるので、該隙間から塵埃が侵入するものであるが、上記構成によれば、この隙間を摺動部材37が蓋をするように塞ぐため、キャビン1内への塵埃の侵入を防止すると共に、室内側への騒音の伝播を抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 キャビン
2 操縦部
3 後輪(タイヤ)
6 フェンダ
9 ドア
9a ドアガラス
15 ウエザーストリップ
15a 周縁シール部
15b 斜辺シール部
15c 中空シール部
23 フィン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアガラス(9a)の周縁部にウエザーストリップ(15)を装着して、室内への埃や雨水の侵入を防止する作業車両のキャビン(1)において、前記ウエザーストリップ(15)は、室内側に設けられキャビンフレームに密着する中空シール部(15c)と、室外側に突出するフィン部(23)を備え、当該フィン部(23)はタイヤ(3)に臨むドアガラス(9a)の周縁部に設け、タイヤ(3)が巻き上げた泥土を遮ってドアガラス(9a)に泥土が付着しないように構成することを特徴とする作業車両のキャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71742(P2012−71742A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218994(P2010−218994)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】