説明

作業車両のフロントガード

【課題】アッパフレームの位置変更操作を容易に行えると共に外観品質の向上を企図した可倒式のフロントガードを提供する。
【解決手段】 アッパフレーム32の左右の側枠材39の下部39bを左右方向で同じ側にあるロワーフレーム31の支持枠材上部33aの左右方向外側方に配置し且つ支持枠材上部33aに側枠材下部39bを枢支連結し、支持枠材上部33aと側枠材下部39bの左右方向内側面とのうちの一方に前後の規制面48,49を設け、他方に前後の規制面48,49の間に位置する係合部51を設け、係合部51は、前後一方の規制面48,49に接当することによりアッパフレーム32の後方揺動を規制して該アッパフレーム32をボンネット7を保護するガード位置Aに位置決めし、前後他方の規制面48,49に接当することによりアッパフレーム32の前方揺動を規制して該アッパフレーム32をガード位置Aから前側に倒れた退避位置Bに位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両の前部に設けられるフロントガードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボンネットの前方側にフロントガードを設けたトラクタとして、特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。
この特許文献1・2に記載されたトラクタにあっては、ボンネットは後部の上部に位置する回動支点を中心として上下に揺動されることにより開閉自在とされている。また、フロントガードは、ボンネットの前面に近接して設けられている。
【0003】
したがって、これら特許文献1・2のトラクタにあっては、ボンネットを開閉する際にフロントガードが邪魔にならないように、フロントガードの本体部分(ボンネットと干渉する部分)が前側に倒れる可倒式のフロントガードが採用されている。
この可倒式フロントガードは、トラクタの機体フレーム前面に取り付けられた取付けブラケットにフロントガード本体の下部を取り付けることにより構成されている。
【0004】
フロントガード本体は相互に連結された左右一対の側枠材を備え、該左右の側枠材の下端側が左右の取付けブラケットにそれぞれ左右軸回りに揺動自在に枢支されていて、該フロントガード本体がボンネットの前面に近接したガード位置から前側に倒すことができるように構成されている。
このフロントガード本体は、ガード位置では左右の側枠材の下部が左右の取付けブラケットに接当することにより後方への揺動が規制される。また、ガード位置においてフロントガード本体の前方への揺動を規制するロック手段が設けられている。このロック手段を解除することにより、フロントガード本体が前側に回動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4578410号公報
【特許文献2】特開2010−58614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記構成のフロントガードにあっては、フロントガード本体を前側に倒す際において前側への揺動を規制する規制手段が設けられていないので、ボンネットを開ける際にフロントガード本体をガード位置から前方側に大きく揺動させなければならず、また、このフロントガード本体を前方側に倒した退避位置から元のガード位置に戻すのにも大きく揺動させなければならない。このため、フロントガード本体をガード位置と退避位置とに位置変更させる位置変更操作が煩雑であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、ガード位置と退避位置とに位置変更される可動部分の位置変更操作を容易に行えるフロントガードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
請求項1に係る発明では、車体前部に設けられたボンネットの前方に位置する上部のアッパフレームと、このアッパフレームの下方側に位置していて車体側に取り付けられた下部のロワーフレームとを有し、
ロワーフレームは左右方向で対向する左右一対の支持枠材を備え、アッパフレームは左右方向で対向配置されていて相互に連結された左右一対の側枠材を備え、前記左右の側枠材の下部を左右方向で同じ側にある支持枠材の上部の左右方向外側方に配置すると共に支持枠材上部に側枠材下部を左右軸回りに揺動自在に枢支連結し、
支持枠材上部と側枠材下部の左右方向内側面とのうちの一方に前後の規制面を設けると共に、他方に前後の規制面の間に位置する係合部を設け、
前記係合部は、前後一方の規制面に接当することによりアッパフレームの後方揺動を規制して該アッパフレームをボンネットを保護するガード位置に位置決めし、前後他方の規制面に接当することによりアッパフレームの前方揺動を規制して該アッパフレームを前記ガード位置から前側に倒れた退避位置に位置決めすることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、ロワーフレームの左右支持枠材の上部をボンネット下部と前後方向でオーバーラップするように上方に向けて延設したことを特徴とする。
請求項3に係る発明では、ロワーフレームの支持枠材の前端を、アッパフレームのガード位置における側枠材の前端よりも前方に突出させたことを特徴とする。
請求項4に係る発明では、ロワーフレームの支持枠材の上面に前後の規制面を一体形成し、アッパフレームの側枠材下部の左右方向内側面に係合部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、アッパフレームの左右側枠材が、ガード位置においてボンネットの前面に沿う湾曲状に形成されていることを特徴とする。
請求項6に係る発明では、ボンネットは上方回動させることで開き、ロワーフレームの左右の支持枠材上部が、ボンネットを開く際の該ボンネットの前面下端の回動軌跡と側面視においてオーバーラップするようにボンネットの前面に対して近接配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明によれば、前後の規制面とこれらの間に位置する係合部とによって、アッパフレームをガード位置だけでなく退避位置にも位置決めできるようにしたので、アッパフレームをガード位置から退避位置にする場合及び退避位置からガード位置に戻す場合に、アッパフレームを大きく揺動する必要がなく、アッパフレームの位置変更操作を容易に行える。
【0012】
また、支持枠材上部と、この支持枠材上部の左右方向外方側に位置する側枠材下部の左右方向内側面とのうちの一方に前後の規制面を設け、他方に係合部を設けており、これら前後の規制面及び係合部が目立たないので、フロントガードの外観品質の向上を図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、アッパフレームの左右側枠材の下部を枢支するロワーフレームの左右支持枠材の上部をボンネット下部と前後方向でオーバーラップするように上方に向けて延設していると共に該支持枠材上部側でアッパフレームのガード位置における後方への回動規制が行われ、フロントガードに作用する前方からの荷重に対して強度的に強い構造とすることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、ロワーフレームの支持枠材の前端を、アッパフレームのガード位置における側枠材の前端よりも前方に突出させたので、作業時において、トラクタの前方側に位置する障害物との接触によるガードは先ず強度のあるロワーフレームで行われ、可動部分であるアッパフレームの変形を防止することができる。
請求項4に係る発明によれば、支持枠材の上面に前後の規制面を一体形成することにより、前後の規制面を容易に形成することができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、アッパフレームの左右側枠材をガード位置においてボンネットの前面に沿う湾曲状に形成することで、アッパフレームを極力ボンネット前面に近接させることができ、作業車両を前進させてその前部を目標物に近接させる際において有利である。
請求項6に係る発明によれば、ロワーフレームの左右の支持枠材上部が、ボンネットを開く際の該ボンネットの前面下端の回動軌跡と側面視においてオーバーラップするようにボンネットの前面に対してフロントガードを近接配置することにより、フロントガードを極力ボンネット前面に近接させることができ、作業車両を前進させてその前部を目標物に近接させる際において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】作業車両の前部の側面断面図である。
【図2】作業車両の側面図である。
【図3】フロントガードの側面図である。
【図4】フロントガードの正面図である。
【図5】フロントガードの揺動範囲規制手段を表す側面図である。
【図6】アッパフレームの枢支部及びロック機構を表す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2において、符号1は作業車両として例示するトラクタである。
このトラクタ1は、左右一対の前輪5と左右一対の後輪6とによって走行可能に支持された車体4を備えている。この車体4はエンジン2と該エンジン2に連結された伝動ケース3とから構成されている。前記伝動ケース3はエンジン2からの動力を後輪(及び前輪)に伝達する動力伝達機構等を内蔵しており、クラッチハウジング、ミッションケース等を連結してなる。
【0017】
このトラクタ1の車体4の前部には、エンジン2、ラジエータ、バッテリ等を覆うボンネット7が設けられている。このボンネット7の後方側にはステアリングホイールを有する走行操縦装置8が設けられ、この走行操縦装置8の後方側にはオペレータ9が着座する運転席10が設けられている。
ボンネット7の下方側には前車軸フレーム11が配置され、該前車軸フレーム11はエンジン2の下部に該エンジン2から前方突出状に取付固定されている。
【0018】
前車軸フレーム11は、エンジン2の左右両側にそれぞれ配置されていて、後部がエンジン2の側面にボルト固定された側板材12と、左右側板材12の前端同士を連結する前板材13とから構成されている。この前車軸フレーム11にラジエータ、バッテリ等が支持されている。
ボンネット7は、車体4に支持された図示省略の支持枠に左右軸回りに上下回動自在に支持されている。このボンネット7の回動支点Xは、ボンネット7の後部側の上部に位置しており、該回動支点Xを中心としてボンネット7前部を上方に回動させることにより、ボンネット7内を開放できるように構成されている。
【0019】
このボンネット7の前面14は、図1に示すように、上端側から上下方向中途部にかけては下方に行くに従って前方に移行する湾曲状に形成され、上下方向中途部から下部側に向けては下方に行くに従って後方に移行する湾曲状に形成されている(換言すると、ボンネット7の前面14は、上端から下部側にかけて上下方向中途部が前方に突出する湾曲状に形成されている)。
【0020】
また、トラクタ1の前部には、ローダ取付フレーム16と、このローダ取付フレーム16に取り付けられたフロントローダ17とが設けられている。
ローダ取付けフレームは、ボンネット7の後部側の左右両側にそれぞれ設けられており、車体4に、該車体4から左右方向外方突出状に取付固定された支持台18と、この支持台18に立設されたマスト19とを有する。
【0021】
フロントローダ17は、ボンネット7の左右両側にそれぞれ配置された一対のブーム20と、該ブーム20を揺動駆動するブームシリンダ21と、ボンネット7の前方側に位置するバケット22と、該バケット22を揺動駆動するバケットシリンダ23とを有する。
左右各ブーム20は前後方向に長尺に形成され、後端側が左右方向で同じ側に位置するマスト19の上部に左右軸回りに回動自在に枢支連結されていて上下揺動自在とされている。左右のブーム20はボンネット7から前方に延出する長さに形成され、ボンネット7の前方側において円筒状のパイプ材からなる連結部材24によって左右ブーム20が連結されている。
【0022】
ブームシリンダ21はブーム20の長さ方向中途部とマスト19の上下方向中途部との間に介装され、このブームシリンダ21を伸縮させることでブーム20が上下に揺動駆動される。
バケット22は、その背面側の下部が左右各ブーム20の前端側に左右軸回りに回動自在に枢支連結されていて上下揺動自在とされている。
【0023】
バケットシリンダ23は左右各ブーム20の上方側にそれぞれ設けられ、各バケットシリンダ23の一端側がブーム20の中途部に枢着され、他端側が一対のリンク26,27の一端側に枢支連結されている。前記一対のリンク26,27のうち、一方のリンク26の他端側はバケット22の背面側に枢支連結され、他方のリンク27の他端側はブーム20の前端側に枢支連結されている。このバケットシリンダ23を伸縮させることによりバケット22が上下に揺動駆動される。
【0024】
前記トラクタ1の前部には、ボンネット7の前部(ボンネット7の前部のフロントグリル28等)を保護するフロントガード29が設けられている。
このフロントガード29は、図1、図3及び図4に示すように、車体4側に取り付けられた下部のロワーフレーム31と、ボンネット7の前方に位置する上部のアッパフレーム32とから主構成されている。
【0025】
また、このフロントガード29は、アッパフレーム32が、図1に実線で示すボンネット7を保護するガード位置Aから前側に倒れて図1に仮想線で示す退避位置Bに位置変更可能な可倒式のフロントガード29とされている。
アッパフレーム32は、ガード位置Aではボンネット7の前面14に近接した位置とされている。該アッパフレーム32は退避位置Bではボンネット7を上げ・下げする(開閉する)際に該ボンネット7がアッパフレーム32(後述するアッパフレーム32の横枠材40B)に接当しない位置とされている。また、アッパフレーム32は退避位置Bでは、ブーム20を上げ・下げした場合に左右ブーム20を連結する連結部材24がアッパフレーム32に接当しない位置とされている。
【0026】
前記ロワーフレーム31は、左右一対の支持枠材33と、左右の支持枠材33を連結する前後の連結部材34,35と、前車軸フレーム11に取り付けられる取付部材36とから主構成されている。これら支持枠材33、連結部材34,35及び取付部材36は板材によって構成されている。
左右の支持枠材33は、板面が左右方向を向くように配置されていて左右方向で対向配置されている。この左右の支持枠材33は、支持枠材上部33aの対向間隔が支持枠材下部33bの対向間隔よりも広く形成され、これら支持枠材上部33aと支持枠材下部33bとの間の支持枠材中間部33cは下方に行くに従って左右方向内方(支持枠材33の対向方向内方)に移行する傾斜状に形成されている。
【0027】
支持枠材上部33a及び支持枠材中間部33cはボンネット7の下部の前方側に位置していて、ロワーフレーム31(支持枠材33)は前車軸フレーム11の前面に取り付けられる部分(支持枠材下部33b)からボンネット7の下部に対して前後方向でオーバーラップする位置まで上方に延びている。
また、支持枠材上部33aは、全体的にみて前上方に向けて延びる傾斜状(前傾状)とされている。
【0028】
また、支持枠材下部33bはボンネット7よりも下方側に位置し、その後端側はボンネット7の前端側下方に位置するように後方に延出されている。さらに、該支持枠材下部33bの前端側は、側枠材上部39aよりも前方に突出している。したがって、支持枠材下部33bの前後幅は、支持枠材上部33a及び支持部材中間部33cよりも幅広に形成され、フロントガード29の取付部分の強度確保が図られている。
【0029】
また、ロワーフレーム31は、図1に示すように、左右の支持枠材上部33aの後部側が、ボンネット7を開く(又は閉める)際の該ボンネット7の前面14下端の回動軌跡Yと側面視においてオーバーラップするようにボンネット7の前面14に対して近接配置されている。
これにより、フロントガード29を極力ボンネット7の前面に近接させることができ、トラクタ1を前進させてその前部を目標物に近接させる際において有利である。
【0030】
なお、図1で示すボンネット7の前面14下端の回動軌跡Yは、ボンネット7の左右方向中央部の回動軌跡Yを示している。また、ボンネット7の前面14は平面視において、左右方向中央部が前方に最も突出するように、前方に向けて凸となる湾曲状に形成されているので、ボンネット7の開閉時に、該ボンネット7の前部の左右両側がロワーフレーム31の左右の支持枠材33の上部33aに接当することはない。
【0031】
前側の連結部材34は、左右の支持枠材下部33b間の前部に縦向き配置され、後側の連結部材35は、左右の支持枠材下部33b間の後部の上下方向中途部に横向き配置されている。前後の連結部材34,35の左右方向の端部は左右の支持枠材下部33bに溶接等によって固定されている。
前側の連結部材34には、ウエイトが引っ掛けられて支持され、後側の連結部材35には該ウエイトの後部が下方から接当する。また、後側の連結部材35にはウエイトの後部をボルト固定するためのボルト挿通孔37が形成されている。
【0032】
取付部材36は板面が前後方向を向くように配置されると共に左右の支持枠材下部33bの後方に配置され、左右の支持枠材下部33bの後端及び後側の連結部材35の後端に溶接等によって固定されている。
この取付部材36には複数のボルト挿通孔38が貫通形成され、該取付部材36は前車軸フレーム11の前板材13前面に重ね合わされて該前板材13にボルト固定される。これによってロワーフレーム31(フロントガード29)が前車軸フレーム11に取付固定される。
【0033】
前記アッパフレーム32は、左右一対の側枠材39と、この左右側枠材39同士を連結する横枠材40A,40Bとから主構成されている。これら側枠材39と横枠材40A,40Bとは板材によって形成されている。
左右の側枠材39は上下方向に長く形成され、板面が左右方向を向くように配置されていて左右方向で対向配置されている。この左右の側枠材39は左右方向で同じ側にある支持枠材33の左右方向外方側に配置されていると共に各側枠材下部39a(の一部)が各支持枠材上部33a(の一部)と左右方向でオーバーラップしている。そして、左右の側枠材下部39aは左右方向で同じ側にある支持枠材上部33aに、ガード位置Aと退避位置Bとに位置変更可能に取り付けられている。
【0034】
このアッパフレーム32の左右側枠材39は、ガード位置Aにおいて、上下方向に関して(側面視で)ボンネット7の前面14に沿うように湾曲形成されている(換言すると、ガード位置において、左右側枠材39の後縁はボンネット7の前面に近接して沿う湾曲状に形成され、左右側枠材39の前縁は該左右側枠材39の後縁に沿う湾曲状に形成されている)。詳細には、アッパフレーム32の側枠材上部39aは側枠材下部39bよりも大きな曲率で湾曲しており、ガード位置Aにおいて、側枠材下部39bは前上方に向けて延び、側枠材上部39aは後上方向けて延びるように形成されている。
【0035】
これにより、アッパフレーム32を極力ボンネット7の前面に近接させることができる。
なお、側枠材上部39の前縁と後縁とは同じ曲率の円弧とされ、側枠材下部39bは前縁よりも後縁の由率が大きい円弧とされている。
また、このアッパフレーム32がガード位置Aであるときにおいて、左右側枠材39の前端は、側枠材上部39aの前縁と側枠材下部39bの前縁との接続部分であり、このガード位置Aにおけるアッパフレーム32の左右側枠材39の前端はロワーフレーム31の支持枠材下部33bの前端よりも後方に位置していると共に、ロワーフレーム31の支持枠材33上端よりも上方に位置している。
【0036】
また、アッパフレーム32の左右側枠材39の上端側は、ガード位置Aにおいて、ボンネット7の前面14上端から上方に突出している。
横枠材40A,40Bは、左右側枠材39の間の、上端側と上下方向中途部とにそれぞれ横向き配置されて設けられており、左右両側端部が側枠材39の内側面に溶接等によって固定されている。
【0037】
上下の各横枠材40A,40Bは、前方に向けて下向き傾斜されていると共に前方側に向けて凸となる湾曲状に形成され、且つ左右方向中央部の前端側が側枠材39から前方に突出している。
上側の横枠材40Aは、側枠材39のボンネット7の前面14上端から上方に突出した部分に設けられていて、運転席10に着座したオペレータ9から視認可能とされている。
【0038】
本実施形態のフロントガード29にあっては、上側の横枠材40Aがトラクタ1を前方の目標物に近接させる際のインジケータとされており、トラクタ1を前進させて目標物に近接させる際に、運転席10に着座したオペレータ9からみて上側の横枠材40Aの前端を目視によって目標物に近接させることにより、該目標物にフロントガード29の下部側を近接させることができるように構成されている。
【0039】
なお、前記横枠材40A,40Bは上下に3つ以上設けてもよい。また、横枠材はパイプ材等によって形成されていてもよい。
アッパフレーム32は、その下部がロワーフレーム31に枢軸41を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に枢支連結されていて前後揺動自在とされ、且つ、フロントガード29は該アッパフレーム32の前後の揺動範囲を規制する揺動範囲規制手段42を有する。これによって、アッパフレーム32がガード位置Aと退避位置Bとに位置変更可能とされている。
【0040】
図3〜図6に示すように、前記枢軸41は、アッパフレーム32の左右の各側枠材下部39bをロワーフレーム31の左右の各支持枠材上部33aに枢支連結している。
これを詳述すると、図6に示すように、前記枢軸41は頭付きのボルトによって構成され、アッパフレーム32の側枠材下部39bとロワーフレーム31の支持枠材上部33aとを左右方向外方から貫通している。また、該枢軸41は、側枠材39を左右両側から挟む左右一対の平座金43と、支持枠材33の左右方向内方側に配置された左右一対のさらばね座金44と、この一対のさらばね座金44を左右両側から挟む左右一対の平座金45とを貫通している。さらに、枢軸41のネジ部に締付用ナット46とロックナット47とが螺合している。
【0041】
本実施形態にあっては、締付用ナット46を締め付け方向に螺合させることにより、アッパフレーム32に摩擦力による回動抵抗が与えられるよう構成されている。
図5に示すように、前記揺動範囲規制手段42は、前後の規制面48,49を有する規制部50と、前後の規制面48,49の間に設けられていて該前後の規制面48,49に接当可能なストッパプレート51(係合部)とから構成されている。
【0042】
規制部50は左右各支持枠材33の上面に形成されている。該規制部50は、本実施形態では、支持枠材33を構成する板材の上面を側面視V字形に加工することにより形成され、前後の規制面48,49が連続状に形成されている。
前規制面48は前上方に向けて傾斜状の傾斜面とされ、後規制面49は後上方に向けて傾斜状の傾斜面とされ、後規制面49が前規制面48に比べて緩傾斜とされている。
【0043】
ストッパプレート51は側面視菱形状の矩形状に形成され、左右各規制部50の上方側にそれぞれ配置されていると共に側枠材39の左右方向内側面に溶接等によって固定されている。
図1及び図5に実線で示すように、ストッパプレート51の下面51aが後規制面49に面接触により接当することでアッパフレーム32のガード位置Aでの後方への揺動が規制される。
【0044】
また、図1及び図5に仮想線で示すように、ストッパプレート51の前面51b下部が前規制面48に面接触により接当することでアッパフレーム32の退避位置Bでの前方への揺動が規制される。
本実施形態にあっては、規制部50(前後の規制面48,49)は支持枠材33の上面に形成されているので、アッパフレーム32をガード位置Aにしたときに該アッパフレーム32の側枠材39の左右方向内方に位置していて、左右方向外方から見えない位置に設けられている。また、ストッパプレート51は側枠材39の左右方向内側面に固定されているので、左右方向外方から見えない。
【0045】
これによって、側面視においてスッキリしたフロントガード29デザインを確保でき、フロントガード29の外観品質の向上が図られている。
また、アッパフレーム32をガード位置Aだけでなく退避位置Bにも位置決めできるようにしたので、アッパフレーム32をガード位置Aから退避位置Bにする場合及び退避位置Bからガード位置Aに戻す場合に、アッパフレーム32を大きく揺動する必要がなく、アッパフレーム32の位置変更操作を容易に行える。
【0046】
さらに、前後の規制面48,49を支持枠材33の上面に、該支持枠材33を構成する板材を加工することにより形成しているので、前後の規制面48,49を容易に形成することができる。
また、従来のフロントガードにあっては、フロントガード本体を前側に倒す際において前側への揺動を規制する規制手段が設けられていないので、ボンネットを開ける際にフロントガード本体をガード位置から前方側に大きく倒すと、左右一対のブームを連結する連結部材と接触してフロントガード本体が変形する恐れがあるが、本実施形態にあっては、アッパフレーム32を退避位置Bにしたときには、ブーム20を上げ・下げしても左右ブーム20を連結する連結部材24がアッパフレーム32に接当しない位置であるので、前述した問題は生じない。また、アッパフレーム32を退避位置Bにしてブーム20を上げ・下げした場合に左右ブーム20を連結する連結部材24をアッパフレーム32に接当させて該アッパフレーム32を変形させてしまうということもない。
【0047】
なお、前記規制部50を側枠材39の左右方向内側面に設け、係合部を支持枠材33の上面側に設けてもよい。この場合、規制部50は側枠材39の左右方向内側面に溶接等によって固定される部材の下面に形成される。したがって、この場合は、前規制面が係合部に接当することによりアッパフレーム32のガード位置Aでの後方への揺動が規制され、後規制面が係合部に接当することによりアッパフレーム32の退避位置Bでの前方への揺動が規制される。
【0048】
また、前記フロントガード29は、アッパフレーム32をガード位置Aで位置固定するロック機構52を有する。このロック機構52は、図4に示すように、フロントガード29の右側に設けられている。
図6に示すように、ロック機構52は、側枠材39及び支持枠材33にわたって貫通されるロックピン53と、側枠材39に貫通状に形成されたロック孔54と、支持枠材33に貫通状に形成されたピン支持孔55と、このピン支持孔55と共にロックピン53を支持するピン支持部材56と、ロックピン53をロック孔54に挿通させる方向に付勢する付勢バネ57とを有する。
【0049】
ロックピン53は、左右方向直線状のピン本体53aと、このピン本体53aの左右方向内端側から該ピン本体53aに直交する方向に延出していて指等が引っ掛けられる引掛部53bとから構成されている。
ロック孔54は、枢軸41の上方側に位置すると共に該枢軸41の軸心を中心とする円弧方向に長い長孔状に形成されている。
【0050】
ピン支持孔55は、枢軸41の真上に形成され、アッパフレーム32をガード位置Aにした状態において、ロック孔54に連通する円形孔に形成されている。
ピン支持部材56は、右側の支持枠材33の左右方向内方側に位置していて該支持枠材33に対して左右方向で対向配置された側壁56aと、この側壁56aの前端から右側の支持枠材33に向けて延出されていて該支持枠材33の左右方向内側面に溶接等によって固定された前壁56bとからL字状に形成されている。このピン支持部材56の側壁56aは前記ピン支持孔55の形成部分に対して対向しており、該側壁56aには前記ピン支持孔55と同心状に形成された円形孔からなるピン挿通孔58を有する。
【0051】
ロックピン53は、ピン本体53aがピン支持部材56のピン挿通孔58とピン支持孔55とにわたって挿通されることで左右方向移動自在に支持されており、アッパフレーム32をガード位置Aにした状態においてピン本体53aがロック孔54に挿通することにより、アッパフレーム32がガード位置Aに固定される。
付勢バネ57は、コイルバネによって形成され、右側の支持枠材33とピン支持部材56の側壁56aとの間でピン本体53aに套嵌されている。この付勢バネ57の一端側はピン支持部材56の側壁56aに接当し、他端側はピン本体53aを直交状に貫通するバネ受けピン59に接当していて、ロックピン53を左右方向外方、すなわち、ロック孔54に挿通させる方向に付勢している。また、前記バネ受けピン59が右側の支持枠材33に接当することによりロックピン53の左右方向外方への移動が規制される。
【0052】
アッパフレーム32をガード位置Aから退避位置Bにする場合は、付勢バネ57の付勢力に抗してロック孔54からロックピン53を抜脱する。すると、アッパフレーム32の前方側への回動が許容されるので、該アッパフレーム32を前方に倒すことによりアッパフレーム32が退避位置Bとされる。
また、アッパフレーム32を退避位置Bからガード位置Aにする場合は、ロックピン53の端部が右側の支持枠材33の内側面に接当している状態でアッパフレーム32をガード位置Aへと揺動させる。アッパフレーム32がガード位置Aになるとロック孔54がピン支持孔55に連通し、ロックピン53が付勢バネ57の付勢力によって左右方向外方に移動してロック孔54に挿通する。
【0053】
ストッパプレート51を支持枠材33の内側面に溶接固定する場合、該ストッパプレート51の取付位置の誤差が生じる場合があるが、ロック孔54を長孔に形成することにより、ストッパプレート51の取付位置の誤差を吸収することができる。
なお、前記ロック機構52のピン支持部材56は、支持枠材33の左右方向内側面に設けられているが、ボンネット7を開閉する際に該ボンネット7前部がピン支持部材56に接当することはない。
【0054】
従来のフロントガードにあっては、ボンネット前面の下方側に位置する左右の取付けブラケットを機体フレームの前面に固定し、この左右取付けブラケットにフロントガード本体の左右の側枠材の下端側を枢支連結している。したがって、この従来のフロントガードにあっては、可動部分であるフロントガード本体の左右の側枠材は上下方向に長い。また、フロントガード本体の左右側枠材はガード位置において、その下部が取付けブラケットに接当することにより後方への回動が規制されている。
【0055】
このように構成されている従来のフロントガードにあっては、トラクタにフロントローダを装備しての作業中にフロントガード本体がトラクタの前方側に位置する障害物に接触した場合に、フロントガード本体の取付部やフロントガード本体が変形する惧れが高い。
これに対し、本実施形態のフロントガード29にあっては、ロワーフレーム31の支持枠材下部33bの前端が、ガード位置Aにおけるアッパフレーム32の側枠材39の前端よりも前方に突出しているので、ローダ作業時において、トラクタ1の前方側に位置する障害物との接触によるガードは先ず強度のあるロワーフレーム31で行われ、可動部分であるアッパフレーム32の変形を防止することができる。
【0056】
また、本実施形態のフロントガード29にあっては、ロワーフレーム31の支持枠材33の上部33aをボンネット7下部とオーバーラップするように上方に向けて延設すると共に該支持枠材上部33aにアッパフレーム32の側枠材下部39aを枢支連結しており、且つ、ロワーフレーム31の支持枠材上部33aの上面側でアッパフレーム32の側枠材下部39aの後方への揺動を規制しているので、アッパフレーム32に前方からの荷重が作用した際におけるモーメント荷重は小さい。また、トラクタ1の前方に位置する障害物との接触に際しロワーフレーム31の支持枠材上部33aもガード部材として機能する。したがって、フロントガード29に作用する前方からの荷重に対して強度的に強い構造とすることができ、フロントガード29がトラクタ1前方の障害物と接触した際におけるアッパフレーム32の取付部や該アッパフレーム32の変形を極力防止することができる。
【0057】
また、特に、本実施形態のフロントガード29にあっては、アッパフレーム32の左右側枠材39はガード位置Aにおいて中途部が前方に突出した湾曲状に形成されており、このアッパフレーム32のガード位置Aにおける前端の下方近くに、アッパフレーム32を枢支する枢軸41が位置していて、該アッパフレーム32に前方から荷重が作用した際におけるモーメント荷重が小さい。
【0058】
また、アッパフレーム32の側枠材39の内側面に固定されたストッパプレート51が接当することで該アッパフレーム32の後方への揺動を規制する後規制面49が後上方に向けて傾斜状の傾斜面とされているので、アッパフレーム32に作用する前方からの荷重を分散させることができる。
【符号の説明】
【0059】
4 車体
7 ボンネット
31 ロワーフレーム
32 アッパフレーム
33 支持枠材
33a 支持枠材上部
39 側枠材
39b 側枠材下部
48 前規制面
49 後規制面
51 係合部(ストッパプレート)
A ガード位置
B 退避位置
Y ボンネットの前面下端の回動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(4)前部に設けられたボンネット(7)の前方に位置する上部のアッパフレーム(32)と、このアッパフレーム(32)の下方側に位置していて車体(4)側に取り付けられた下部のロワーフレーム(31)とを有し、
ロワーフレーム(31)は左右方向で対向する左右一対の支持枠材(33)を備え、アッパフレーム(32)は左右方向で対向配置されていて相互に連結された左右一対の側枠材(39)を備え、前記左右の側枠材(39)の下部(39b)を左右方向で同じ側にある支持枠材(33)の上部(33a)の左右方向外側方に配置すると共に支持枠材上部(33a)に側枠材下部(39b)を左右軸回りに揺動自在に枢支連結し、
支持枠材上部(33a)と側枠材下部(39b)の左右方向内側面とのうちの一方に前後の規制面(48,49)を設けると共に、他方に前後の規制面(48,49)の間に位置する係合部(51)を設け、
前記係合部(51)は、前後一方の規制面(48,49)に接当することによりアッパフレーム(32)の後方揺動を規制して該アッパフレーム(32)をボンネット(7)を保護するガード位置(A)に位置決めし、前後他方の規制面(48,49)に接当することによりアッパフレーム(32)の前方揺動を規制して該アッパフレーム(32)を前記ガード位置(A)から前側に倒れた退避位置(B)に位置決めすることを特徴とする作業車両のフロントガード。
【請求項2】
ロワーフレーム(31)の左右支持枠材(33)の上部(33a)をボンネット(7)下部と前後方向でオーバーラップするように上方に向けて延設したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両のフロントガード。
【請求項3】
ロワーフレーム(31)の支持枠材(33)の前端を、アッパフレーム(32)のガード位置(A)における側枠材(39)の前端よりも前方に突出させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両のフロントガード。
【請求項4】
ロワーフレーム(31)の支持枠材(33)の上面に前後の規制面(48,49)を一体形成し、アッパフレーム(32)の側枠材下部(39b)の左右方向内側面に係合部(51)を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車両のフロントガード。
【請求項5】
アッパフレーム(32)の左右側枠材(39)が、ガード位置(A)においてボンネット(7)の前面(14)に沿う湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車両のフロントガード。
【請求項6】
前記ボンネット(7)は上方回動させることで開き、ロワーフレーム(31)の左右の支持枠材上部(33a)が、ボンネット(7)を開く際の該ボンネット(7)の前面(14)下端の回動軌跡(Y)と側面視においてオーバーラップするようにボンネット(7)の前面(14)に対して近接配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車両のフロントガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18324(P2013−18324A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151834(P2011−151834)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)