説明

作業車両の可動式ラダー装置

【課題】ラダー本体を、簡単な構成で、かつコンパクトな作動範囲で回転させる。
【解決手段】この装置は、車体フレーム3に装着されるマウントフレーム21と、ラダー本体23と、第1油圧シリンダ24と、上下ロック機構25と、を備えている。ラダー本体23は、上部がピン22の回りにマウントフレーム21に対して回転自在に支持され、下端部が昇降位置と格納位置との間で回転可能である。第1油圧シリンダ24は、マウントフレーム21に支持され、ラダー本体23を昇降位置と格納位置との間で移動させる。上下ロック機構25は、格納位置のラダー本体23がマウントフレーム21に対して上下方向に移動するのを規制する。そして、ピン22は、正面視で昇降位置のラダー本体23の長手方向に実質的に直交し、かつ平面視で格納位置のラダー本体23の長手方向に実質的に直交している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダー装置、特に、建設機械の車体に設けられた移動通路への昇降を行うためのラダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のブルドーザやホイールローダ等の作業車両では、高い位置に、運転室と運転室への連絡路となる移動通路とが配置されている。そして、この移動通路を経由して運転室に対して昇降するためのラダー装置が設けられている。ラダー装置としては、車両側の部材に固定された固定式のラダー装置や、昇降姿勢と格納姿勢との間で移動する可動式のラダー装置が提案されている。可動式のラダー装置は、使用時の昇降姿勢では地面と移動通路との間に配置され、格納姿勢では車体の側部に、ほぼ水平となるように格納される。
【0003】
例えば特許文献1に示された可動式ラダー装置では、水平方向の第1軸と第1軸に直交する第2軸とが設けられている。また、ラダー本体は、上端部が、これらの軸の回りに回転自在に支持されている。この装置では、まず、昇降姿勢のラダー本体が、第1軸回りの回転によって上方に持ち上げられ、格納姿勢を越えた上方の位置で停止する。次に、持ち上げられたラダー本体が、第2軸回りの回転によって車体側に引き寄せられる。そしてさらに、第1軸回りの回転によってラダー本体が下方に移動し、格納姿勢とされる。
【0004】
また、特許文献2に示された可動式ラダー装置では、車両の側方から視て、上方が前方に傾斜する1つの軸が設けられており、この傾斜軸にラダー本体の上部が回転自在に支持されている。この装置では、昇降姿勢のラダー本体が、傾斜軸の回りに回転して格納姿勢となる。格納状態では、ラダー本体の車体側の面(裏側)が外方に向くような姿勢で車体に沿って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】オーストラリア特許第713990号公報
【特許文献2】米国特許第7,870,932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のラダー装置では、2つの軸が設けられ、またこれらの軸の回りにラダー本体を回転させるための2つのアクチュエータが設けられている。このため、構造が複雑になり、コストも高くなる。
【0007】
また、特許文献2のラダー装置では、1つの軸及びアクチュエータによってラダー本体を昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させることができる。しかし、このラダー装置では、ラダー本体の回転中において、地上側の端部が、車体から大きく離れて回転することになる。具体的には、ラダー本体の地上側の端部が、回転の中心となる傾斜軸までの距離とほぼ同じ半径だけ車体から離れて回転するために、車両の周囲に障害物が存在する場合には、ラダー本体を回転させることができない。
【0008】
本発明の課題は、ラダー本体を、簡単な構成で、かつコンパクトな作動範囲で昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、ラダー装置の構成を簡単にするために、特許文献1に記載された2つの軸のうちの一方をなくし、水平方向の軸のみにすることが考えられる。しかし、昇降姿勢にある使用状態のラダー本体は地上側の端部が車体から離れているために、使用状態のラダー本体を水平方向の軸のみで回転した場合、格納状態では、ラダー本体の地上側の端部が車体から離れたままになる。
【0010】
そこで、ラダー本体を1つの回転中心軸で回転させる場合、
(1)昇降姿勢と格納姿勢との間でラダー本体を回転させたときに、ラダー本体が車体から大きく離れることがない、
(2)ラダー本体を回転させて格納された状態では、ラダー本体の全体が車体に沿って、かつ車体に近接して配置される、
という2つの条件を満たす必要がある。
【0011】
以上の条件を満たす1つの回転中心軸は、昇降姿勢のラダー本体の延びる方向に実質的に直交し、かつ車両の前後方向に延びる軸、すなわち格納姿勢のラダー本体の延びる方向に実質的に直交する軸であることを、本件発明者は見出した。
【0012】
第1発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、作業車両の車体に設けられた運転室に対する昇降を行うための装置であって、可動式のラダー本体と、駆動機構と、上下ロック機構と、を備えている。ラダー本体は、長手方向の第1端部及び第2端部を有し、第1端部が車体に対して回転自在に支持され、第2端部が地上側に位置し水平面に対して傾いてい配置される昇降姿勢と、第2端部が第1端部と同じ高さまで持ち上げられた格納姿勢とを取り得る。駆動機構は、車体に支持され、ラダー本体を90度回転させて昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させる。上下ロック機構は、格納姿勢のラダー本体が車体に対して上下方向に移動するのを規制する。そして、ラダー本体の回転中心軸は、正面視で昇降姿勢のラダー本体の長手方向に直交し、かつ平面視で格納姿勢のラダー本体の長手方向に直交している。
【0013】
なお、「正面視で」とは、ラダー装置が作業車両に装着された状態で、作業車両の前方から視た場合であり、「平面視で」とは、ラダー装置が作業車両に装着された状態で、作業車両の上方から視た場合である。
【0014】
この装置では、ラダー本体は、昇降姿勢のラダー本体に直交し、かつ格納姿勢のラダー本体に直交する1つの回転中心軸の回りに回転することによって、昇降姿勢と格納姿勢との間を移動する。ここでは、昇降姿勢と格納姿勢との間でラダー本体を回転させたときにラダー本体が車体から大きく離れることがない。また、ラダー本体を昇降姿勢から90度回転させることによって、ラダー本体を車体に沿ってかつ車体に近接して格納することが可能となる。
【0015】
ここで、以上のような1つの回転中心軸を設定した場合、この回転中心軸を中心にラダー本体を回転するための駆動機構や、格納姿勢でのラダー本体の振動や移動を規制するための機構についても、それぞれ1つの回転中心軸の配置に併せて精度良く配置する必要がある。また、作業車両の走行体の配置等によっては、1つの回転中心軸の位置や角度を種々変更する必要がある。
【0016】
しかし、1つの回転中心軸の位置や角度等の配置に併せて他の機構の全部を精度良く配置することは困難である。また、作業車両の仕様に併せて、1つの回転中心軸及び他の機構の配置を変更することは煩雑であり、相互の位置関係の調整も困難である。
【0017】
そこで、第2発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第1発明の装置において、車体に装着されるマウントフレームをさらに備えている。そして、ラダー本体と駆動機構と上下ロック機構とは、マウントフレームに支持されて前記車体に搭載される。
【0018】
この装置では、ラダー装置を構成するすべての構成要素が1つのマウントフレームに搭載されているので、すべての構成要素がマウントフレームを基準として配置されることになり、各構成要素が別々に車体に装着される場合に比較して、各構成要素を容易に精度良く配置することができる。また、マウントフレームの車体への装着位置や装着角度を適宜設定することによって、種々の車両に対して、ラダー本体や他の構成部材を容易に適切な位置関係で配置することができる。
【0019】
第3発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第1又は第2発明の装置において、ラダー本体は、所定の間隔をあけて配置された1対の側板と、1対の側板間に配置された複数のステップと、を有している。そして、回転中心軸は、格納姿勢において下方に位置する側板のさらに下方に位置している。
【0020】
ここでは、格納姿勢のラダー本体は回転中心軸の上方に配置されるので、履帯等の走行体との干渉を避けることが容易になる。
【0021】
第4発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第2又は第3発明の装置において、上下ロック機構は、ロッドと、ラッチと、格納姿勢検出センサと、ラッチ駆動手段と、を有している。ロッドは、ラダー本体に設けられ、マウントフレーム側に突出する。ラッチは、マウントフレームに設けられ、ロッドに係合する係合位置と、ロッドとの係合が解除された非係合位置と、を取り得る。格納姿勢検出センサはラダー本体が格納姿勢になったことを検出する。ラッチ駆動手段は、マウントフレームに設けられ、格納姿勢検出センサの検出結果に応じて、ラッチを係合位置と非係合位置との間で移動させる。
【0022】
ここでは、ラダー本体が格納姿勢に移動すると、マウントフレームに設けられたラッチが駆動され、ラダー本体に設けられたロッドに係合する。これにより、格納姿勢のラダー本体の上下動が規制される。また、ロッドはマウントフレームに支持されたラダー本体に固定されるとともに、ラッチ及びラッチ駆動手段はマウントフレームに設けられている。すなわち、相互に係合するロッドとラッチ及びその駆動手段がマウントフレームを基準にして取り付けられているので、相互の位置関係を、容易に精度良く調整することができる。
【0023】
第5発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第4発明の装置において、ロッドは回転中心軸と同じ高さ位置に設けられている。
【0024】
このような位置関係によって、ラダー本体を格納し、上下ロック機構を作動させたとき、ラダー本体をほぼ水平状態にすることができる。
【0025】
第6発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第2から第5のいずれかの装置において、格納姿勢のラダー本体がマウントフレームに対して左右方向に移動するのを規制する左右ロック機構をさらに備えている。
【0026】
ここでは、格納姿勢のラダー本体は左右ロック機構によって左右方向の移動が規制される。したがって、格納されたラダー本体が、振動等によって車体に衝突するのを防止できる。
【0027】
第7発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第6発明の装置において、左右ロック機構は、突起部材と規制部材とを有する。突起部材は、ラダー本体に設けられ、格納姿勢のラダー本体において上方に突出する。規制部材は、マウントフレームに設けられ、ラダー本体が格納姿勢のときに突起部が挿入されて突起部の左右方向の移動を規制する。
【0028】
ここでは、ラダー本体を昇降姿勢から格納姿勢に移動させるだけで、ラダー本体の突起部材をマウントフレーム側の規制部材に挿入させて、ラダー本体の左右方向の移動を規制することができる。
【0029】
第8発明に係る作業車両の可動式ラダー装置は、第7発明の装置において、上下ロック機構のロッドは、格納姿勢のラダー本体において下方の側板に固定されており、左右ロック機構の突起部材は、格納姿勢のラダー本体において上方の側板に固定されている。
【発明の効果】
【0030】
以上のような本発明では、ラダー本体を、簡単な構成で、かつコンパクトな作動範囲で昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態によるラダー装置を備えたブルドーザの外観斜視図。
【図2】ラダー装置と履帯及び移動通路との配置を示す図。
【図3】ラダー装置の格納状態を示す外観図。
【図4】図3のラダー装置を背面から視た図。
【図5】図3の拡大部分図。
【図6】ブルドーザの平面模式図。
【図7】上下リンク機構の構成を示す外観図。
【図8】ラダー装置の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[全体構成]
本発明の一実施形態による可動式ラダー装置を備えたブルドーザを図1に示している。ブルドーザ1は主に、キャブ2、車体フレーム3、ブレード4、リッパ装置5、及び走行装置6を備えている。また、ブルドーザ1は、車体フレーム3の右側部に、可動式ラダー装置(以下、単に「ラダー装置」と記す)7を備えている。
【0033】
キャブ2には、運転席や各種操作のためのレバー、ペダル、計器類等が内装されている。また、キャブ2内には、ラダー装置7を昇降姿勢及び格納姿勢に移動するための操作ボタン(図8参照)が設けられている。車体フレーム3には、図示しないエンジンや各種の機器が搭載されており、これらは外装カバーによってカバーされている。ブレード4は、車体フレーム3の前方に設けられており、ブレードリフトシリンダ8及びブレードチルトシリンダ9によって駆動される。リッパ装置5は、車体フレーム3の後方に設けられており、リッパリフトシリンダ10及びリッパチルトシリンダ11によって駆動される。走行装置6は、車体フレーム3の左右下部にそれぞれ設けられた1対の無端状の履帯12を有している。
【0034】
[ラダー装置]
ラダー装置7は、車体フレーム3に設けられた移動通路15への昇降を行うために設けられている。図1では、使用時の位置(昇降姿勢)を実線で示し、格納時の位置(格納姿勢)を二点鎖線で示している。また、図2は、車体フレーム3及び履帯12と、使用時のラダー装置7との位置関係を模式的に示している。この図2に示すように、走行装置6が車体フレーム3の左右に突設しているため、昇降姿勢のラダー装置7は水平面Hに対して90度より小さい角度αをなすように傾いて配置される。図1の二点鎖線のラダー装置7で示すように、格納姿勢のラダー装置7は車体フレーム3の前後方向に沿ってほぼ水平になるように配置される。
【0035】
図3以降の図面では、ラダー装置7を車体フレーム3から取り外した状態で示している。これらの図に示すように、ラダー装置7は、車体フレーム3に装着されたマウントフレーム21と、中心に回転中心軸を有するピン22と、ラダー本体23と、第1油圧シリンダ24と、上下ロック機構25と、左右ロック機構26と、を備えている。なお、図3及び図4はラダー装置7の格納状態を示しており、図3はラダー装置7を車両の側方から視た図であり、図4はラダー装置7を車体フレーム3に取り付けられる側から視た図である。
【0036】
マウントフレーム21は、図3及び図4に示すように、車両の前後方向に延びる部材であり、車体フレーム3への固定部21aと、固定部21aの前端部において上方に延びる前支持部21bと、固定部21aの後端部において上方に延びる後支持部21cと、を有している。また、図5に示すように、固定部21aの前端部には支持ブラケット21dが固定されている。支持ブラケット21dは正面視(前方から視て)U字状に形成されている。なお、図5では、支持ブラケット21dの一部は、連結部34aなどの背面に位置しているため、図示されていない。そして、この支持ブラケット21dの凹部に、ラダー本体23の回転ブラケット34(後述)が挿入されている。マウントフレーム21は、複数のボルトによって、固定部21が車両右側部の車体フレーム3に固定される。
【0037】
ピン22は、図5に示すように、支持ブラケット21d及び回転ブラケット34(後述する)を貫通して設けられている。ピン22は、移動通路15より下方かつ履帯12より上方において、格納姿勢のラダー本体23より下方に設けられている。そして、図2及び図6に示すように、ピン22は、車両の前方から視た正面視で、昇降姿勢のラダー本体23の長手方向に延びる方向、すなわちマウントフレーム21の前支持部21bの表面と実質的に直交し、かつ車両の上方から視た平面視で、車体フレーム3の前後方向に沿う格納姿勢のラダー本体23の長手方向に延びる方向と実質的に直交するように配置されている。昇降姿勢ではラダー本体23は車体フレーム3側の水平面Hに対して角度α度の傾きを持って接している。換言すると、ピン22の回転中心軸は、図2で示される正面視でマウントフレーム21から離れるにつれて水平面Hに対して(90−α)度を持って上方に傾斜し、図6で示される平面視において車体フレーム3の前後方向に直交する。
【0038】
図3〜図5に示すように、ラダー本体23は、所定の間隔をあけて配置された左右の側板30a,30bと、左右の側板30a,30bの間に設けられた複数のステップ31と、左右の側板30a,30bのそれぞれの外側の面に固定された左右の手摺り32a,32bと、を備えている。
【0039】
左右の側板30a,30bはそれぞれ、ラダー本体23が昇降姿勢にある場合、移動通路15側の第1端部301と地上側の第2端部302とを有している。また、昇降姿勢の正面視では、第2端部302の車体フレーム3側の面は、水平面Hに対してα度の角度を持って傾いている。図5に拡大して示すように、右側板30bの外側の面には、回転ブラケット34が固定されており、前述のように、回転ブラケット34の中心部にピン22が回転自在に挿入されている。このように、右側板30bに固定された回転ブラケット34がピン22に回転自在に支持されていることにより、ラダー本体23の全体が、ピン22の回りに回転可能である。また、回転ブラケット34には、右側板30bから離れる方向に突出する連結部34aが設けられている。
【0040】
左右の手摺り32a,32bは、同様の構成であり、図4に示すように、下端部が取付部37を介して各側板30a,30bの外側の面に固定された複数の縦部材321と、複数の縦部材321の上端を連結するように設けられた手摺り本体322と、を有している。手摺り本体322は各側板30a,30bと平行に配置されている。
【0041】
第1油圧シリンダ24は、図3及び図4に示すように、基端部がマウントフレーム21の前支持部21bに回動自在に支持されている。また、第5図に示すように、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aの先端は、右側板30bの回転ブラケット34に形成された連結部34aにピンを介して回動自在に連結されている。したがって、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aが作動することによって、回転ブラケット34が回転し、その結果、ラダー本体23がピン22の回りに回転することになる。以上の構成が、ラダー本体23を格納姿勢と昇降姿勢との間で移動させる駆動機構である。
【0042】
上下ロック機構25は、図3に示すように、ラダー本体23側に設けられたロッド38と、マウントフレーム21側に設けられたラッチ39と、格納姿勢検出センサ40(図8参照)と、ラッチ39を駆動するための第2油圧シリンダ41と、を有している。
【0043】
ロッド38は、ラダー本体23を構成する右側板30bの外側の面において下端部に固定されている円柱状の部材である。ロッド38の下端は、右側板30bの下面よりさらにマウントフレーム21側に突出している。ロッド38の中心軸は、ピン22の回転中心軸と平行である。ラダー本体23の回動中心であるピン22が上述の位置にあるため、ラダー本体23を90度回転するだけで、昇降姿勢で車体フレーム3から離れていたロッド38は、格納姿勢で車体フレーム3に近接する。
【0044】
ラッチ39は、図7に示すように、マウントフレーム21の固定部21aの後端部に設けられている。ラッチ39は、2枚の互いに間隔をあけて配置されたプレート部材からなり、一方側に凹部39aを有するC字状に形成されている。ラッチ39の基端部はマウントフレーム21に回動自在に支持されており、凹部39aにはロッド38が挿入可能である。
【0045】
格納姿勢検出センサ40は回転ブラケット34に設けられている。この格納姿勢検出センサ40は、ラダー本体23が昇降姿勢から回転して格納姿勢の位置に到達したことを検出するセンサである。また、回転ブラケット34には、ラダー本体23が格納姿勢から回転して昇降姿勢の位置に到達したことを検出する昇降姿勢検出センサ43(図5参照)が設けられている。格納姿勢検出センサ40と昇降姿勢検出センサ43は、ともにローラアーム型のリミットスイッチが用いられている。
【0046】
図7に示すように、第2油圧シリンダ41は、基端部39bがマウントフレーム21の固定部21aに回動自在に支持されている。第2油圧シリンダ41のピストンロッド41aの先端は、凹部39aと基端部39bとの間でラッチ39を構成する2枚のプレート部材の間に挿入されて、両プレート部材に回動自在に連結されている。
【0047】
以上のような構成では、第2油圧シリンダ41のピストンロッド41aを作動させることにより、ラッチ39は、格納姿勢のラダー本体23のロッド38に係合する係合位置と、ロッド38との係合が解除された非係合位置と、を取り得る。係合位置では、格納姿勢でのラダー本体23の上下方向の移動が規制される。
【0048】
左右ロック機構26は、格納姿勢のラダー本体23の左右方向の移動を規制する機構である。図4に示すように、左右ロック機構26は、ラダー本体23に設けられた突起部45と、マウントフレーム21に設けられた規制部材46と、を有している。
【0049】
突起部45は、左側板30aの外側の面において下端部に設けられている。突起部45は、左側板30aの延びる方向から視て先端が円弧状の三角形状のプレート部材であり、ベースプレート47とともに左側板30aに固定されている。
【0050】
規制部材46は、マウントフレーム21の後支持部21cの上端部に固定されている。規制部材46は、後支持部21cの上端部から車両外側に延びるように配置されており、下面に突起部45の先端が挿入可能な凹部46aが形成されている。
【0051】
以上のような構成により、ラダー本体23が回動して格納姿勢にくると、突起部45の先端が規制部材46の凹部46aに挿入される。これにより、格納姿勢でのラダー本体23の左右方向の移動が規制される。
【0052】
また、ラダー装置7を構成するすべての構成部材が1つのマウントフレーム21に搭載されているので、各部材を容易に精度良く配置することができる。特に、上下、左右のロック機構25,26を構成するラダー本体23側の部材とマウントフレーム21側の部材とが、マウントフレーム21を基準にして配置されるので、これらの部材の相互の位置関係を容易に精度良く調整することができる。
【0053】
また、マウントフレーム21の車体フレームへの装着位置や装着角度を適宜設定することによって、種々の車両に容易に適合させることができる。
【0054】
[制御ブロック図]
図8に、ラダー装置の作動に関する制御ブロックを示す。この図に示すように、ブルドーザ1はコントローラ50を有している。コントローラ50には、ラダー装置7を作動させるための操作ボタン51と、格納姿勢検出センサ40と、昇降姿勢センサ43と、が接続されている。また、コントローラ50には、第1油圧シリンダ24及び第2油圧シリンダ41を作動させるためのコントロールバルブ52が接続されている。
【0055】
[動作]
ラダー装置23は、使用時には図1の実線で示す昇降姿勢になるように移動させられ、また走行時や作業時には二点鎖線で示す格納姿勢になるように移動させられる。
【0056】
昇降姿勢では、ラダー本体23は図2に示すように、水平面Hに対してα度の角度になるように、移動通路15と地面との間に配置される。この状態では、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aは後退している。また、第2油圧シリンダ41のピストンロッド41aも後退しており、これにより上下ロック機構25のラッチ39は非係合位置に位置している。
【0057】
ラダー本体23を格納する場合は、運転室内の操作ボタン51が操作される。この操作ボタン51の操作を受けて、コントローラ50は、コントロールバルブ52に信号を出力し、第1油圧シリンダ24を作動させる。これにより、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aは突出し、ラダー本体23の回転ブラケット34が、図5において、ピン22の回りに時計回りに回転する。したがって、ラダー本体23の地上側の端部302が持ち上げられ、ラダー本体23は回転する。ラダー本体23が昇降姿勢から90度回転すると、ラダー本体23はほぼ水平状態の格納姿勢の位置に到達する。ラダー本体23が格納姿勢の位置まで回転すると、ラダー本体23の左側板30aに設けられた突起部45がマウントフレーム21の規制部材46の凹部46aに挿入される。これにより、ラダー本体23の左右の移動が規制される。
【0058】
また、ラダー本体23が格納姿勢の位置に到達すると、回転ブラケット34に設けられている格納姿勢検出センサ40によって、ラダー本体23が格納姿勢の位置に到達したことが検出される。この検出結果を受けて、コントローラ50はコントロールバルブ52に信号を出力する。これにより、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aの突出は停止する。また、第2油圧シリンダ41のピストンロッド41aが突出し、ラッチ39が、図7において、回動軸の回りに反時計回りに回動する。このため、ラダー本体23のロッド38をラッチ39が抱え込むように両者は係合する。このため、ラダー本体23の上下方向の移動が規制される。
【0059】
また、ラダー本体23を格納姿勢から昇降姿勢に移動させる場合は、運転室内の操作ボタン51が操作される。この操作ボタン51から指示を受けたコントローラ50は、コントロールバルブ52に信号を出力し、第2油圧シリンダ41のピストンロッド41aを後退させる。これにより、ラッチ39は図7において時計回りに回動し、ラッチ39のロッド38への係合が解除される。その後、コントローラ50はコントロールバルブ52に信号を出力して第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aを後退させる。これにより、ラダー本体23の回転ブラケット34が反時計回りに回転する。この結果、ラダー本体23は側方視で反時計回りに回転する。ラダー本体23が格納姿勢の位置から90度回転すると、回転ブラケット34に設けられている昇降姿勢検出センサ43によって、ラダー本体23が昇降姿勢の位置に到達したことが検出される。この検出結果を受けて、コントローラ50はコントロールバルブ52に信号を出力する。これにより、第1油圧シリンダ24のピストンロッド24aの後退は停止し、ラダー本体23の回転が停止する。これにより、ラダー本体23は昇降姿勢に配置される。
【0060】
[特徴]
(1)ラダー本体23を、1つのピン22の回りに一方向に実質的に90度回転させることによって、昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させることができる。このため、油圧シリンダ等の駆動機構も含めて構成が簡単になる。
【0061】
(2)ラダー本体23を、車体から大きく離すことなく、車体フレーム3に近接させた状態で昇降姿勢と格納姿勢との間で回転させることができる。したがって、狭いスペースでもラダー本体23を回転させることができる。
【0062】
(3)簡単な構成で格納姿勢のラダー本体23の上下及び左右方向の移動を規制することができる。
【0063】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0064】
前記実施形態では、ラダー本体を回転させるための駆動機構として油圧シリンダを用いたが、駆動機構の構成はこれに限定されない。例えば、モータとギア機構とから構成してもよい。
【0065】
前記実施形態では、回転中心軸としてマウントフレーム21側にピン22を設け、ラダー本体23側の回転ブラケット34をピン22に挿入して構成したが、回転中心軸の構成はこれに限定されない。例えば、マウントフレーム側に孔を形成するとともに、ラダー本体側に軸を固定し、この軸をマウントフレーム側の孔に挿入して構成してもよい。
【0066】
前記実施形態ではラダー装置7を構成するすべての構成部材が1つのマウントフレーム21上に搭載されているが、ラダー本体23及び駆動機構と、上下ロック機構25と、を別体として、マウントフレーム21を介さず、それぞれ直接、車体フレーム3に装着してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ブルドーザ
3 車体フレーム
7 ラダー装置
12 履帯
15 移動通路
21 マウントフレーム
22 ピン
23 ラダー本体
24 第1油圧シリンダ
25 上下ロック機構
26 左右ロック機構
30a,30b 側板
31 ステップ
32a,32b 手摺り
38 ロッド
39 ラッチ
40 格納姿勢検出センサ
41 第2油圧シリンダ
45 突起部
46 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の車体に設けられた運転室に対する昇降を行うための可動式ラダー装置であって、
長手方向の第1端部及び第2端部を有し、前記第1端部が前記車体に対して回転自在に支持され、前記第2端部が地上側に位置し水平面に対して傾いて配置される昇降姿勢と、前記第2端部が前記第1端部と同じ高さまで持ち上げられた格納姿勢とを取り得る可動式のラダー本体と、
前記車体に支持され、前記ラダー本体を90度回動させて昇降姿勢と格納姿勢との間で移動させる駆動機構と、
格納姿勢の前記ラダー本体が前記車体に対して上下方向に移動するのを規制する上下ロック機構と、
を備え、
前記ラダー本体の回転中心軸は、正面視で昇降姿勢の前記ラダー本体の長手方向に直交し、かつ平面視で格納姿勢の前記ラダー本体の長手方向に直交している、
作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項2】
前記車体に装着されるマウントフレームをさらに備え、
前記ラダー本体と前記駆動機構と前記上下ロック機構とは、前記マウントフレームに支持されて前記車体に搭載される、
請求項1に記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項3】
前記ラダー本体は、所定の間隔をあけて配置された1対の側板と、前記1対の側板間に配置された複数のステップと、を有し、
前記回転中心軸は、格納姿勢において下方に位置する側板のさらに下方に位置している、
請求項1又は2に記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項4】
前記上下ロック機構は、
前記ラダー本体に設けられ、前記マウントフレーム側に突出するロッドと、
前記マウントフレームに設けられ、前記ロッドに係合する係合位置と、前記ロッドとの係合が解除された非係合位置と、を取り得るラッチと、
前記ラダー本体が格納姿勢になったことを検出する格納姿勢検出センサと、
前記マウントフレームに設けられ、前記格納姿勢検出センサの検出結果に応じて、前記ラッチを係合位置と非係合位置との間で移動させるラッチ駆動手段と、
を有している、請求項2又は3に記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項5】
前記ロッドは前記回転中心軸と同じ高さ位置に設けられている、請求項4に記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項6】
格納姿勢の前記ラダー本体が前記マウントフレームに対して左右方向に移動するのを規制する左右ロック機構をさらに備えた、請求項2から5のいずれかに記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項7】
前記左右ロック機構は、
前記ラダー本体に設けられ、格納姿勢の前記ラダー本体において上方に突出する突起部材と、
前記マウントフレームに設けられ、前記ラダー本体が格納姿勢のときに前記突起部が挿入されて前記突起部の左右方向の移動を規制する規制部材と、
を有する、請求項6に記載の作業車両の可動式ラダー装置。
【請求項8】
前記上下ロック機構のロッドは、格納姿勢の前記ラダー本体において下方の側板に固定されており、
前記左右ロック機構の突起部材は、格納姿勢の前記ラダー本体において上方の側板に固定されている、
請求項7に記載の作業車両の可動式ラダー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87416(P2013−87416A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225468(P2011−225468)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】