作業車両の変速装置
【課題】本発明では、作業車両の油圧式無段変速装置(HST)を使った変速伝動構成において、振動の発生しやすいHSTをミッションケースへ強固に取り付ける構成にすることによって、振動による動力伝動部の経年劣化を抑制することを課題とする。
【解決手段】エンジン5の動力を後輪3に伝動するトランスミッションケース8をフロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cで構成し、トランスミッションケース8内でHST21を厚みのあるHST取付板4に取り付け、このHST取付板4をフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置とする。また、HST21の入力軸をエンジン5のエンジンフライホイル5aにダンパ20を介して取り付けたことを特徴とする作業車両の変速装置とする。
【解決手段】エンジン5の動力を後輪3に伝動するトランスミッションケース8をフロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cで構成し、トランスミッションケース8内でHST21を厚みのあるHST取付板4に取り付け、このHST取付板4をフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置とする。また、HST21の入力軸をエンジン5のエンジンフライホイル5aにダンパ20を介して取り付けたことを特徴とする作業車両の変速装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行伝動系に油圧式無段変速装置(以下「HST」という)を設け、このHSTを制御部によって変速制御して走行車速を調節する作業車両の変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、HSTをトラニオン制御によって前進側と後進側に無段階変速するHST変速機構を走行伝動系に設けた作業車両において、その車速調節のために、幅広い変速ポジションを有する主変速レバーの操作位置に応じてHST変速機構を制御する制御部を有する作業車両の変速制御装置が知られている。
【0003】
この変速制御装置は、制御部が主変速レバーの選択ポジションに応じてトラニオン軸を駆動制御することによりHST変速機構の出力軸回転数を調節する。
HSTは、エンジンとミッションケースの間に設けられ、HST収納ケースに直接収められてエンジン出力軸の回転を変速してミッションケース内の動力伝動軸に伝動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HSTは、振動が生じやすく強固にミッションケースへ支持する必要があるが、前記の従来構成では、HSTが直接HST収納ケースに取り付けられているために、剛性不足による軸芯のずれによって振動が生じる。
【0006】
そこで、本発明では、作業車両のHSTを使った変速伝動構成において、振動の発生しやすいHSTをミッションケースへ強固に取り付ける構成にすることによって、振動による動力伝動部の経年劣化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、エンジン5の動力を後輪3に伝動するトランスミッションケース8をフロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cで構成し、トランスミッションケース8内でHST21を厚みのあるHST取付板4に取り付け、このHST取付板4をフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置とする。
【0008】
この構成で、HST21が厚みのある剛性の高いHST取付板4を介してフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着されることで、HST21の振動発生が抑えられ、トランスミッションケース8の振動も少なくなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、HST21の入力軸をエンジン5のエンジンフライホイル5aにダンパ20を介して取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置とした。
【0010】
この構成で、エンジン5を出力の異なるものと交換する場合にエンジンフライホイル5aを共用して取り付けることが可能になる。
請求項3に記載の発明は、HST21のチャージポンプ33を隔壁14のミッドケース8b側に設け、HST21のHST入力軸21aの出力側から該チャージポンプ33を駆動したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置とした。
【0011】
この構成で、ミッドケース8b側からチャージポンプ33のメンテナンスが行えて作業が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明で、HST21が厚みのある剛性の高いHST取付板4を介してフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着されることで、HST21の振動発生が抑えられ、トランスミッションケース8の振動も少なくなる。
【0013】
請求項2の発明で、エンジン5を出力の異なるものと交換する場合にエンジンフライホイル5aを共用して取り付けることが可能になる。
請求項3の発明で、ミッドケース8b側からチャージポンプ33のメンテナンスが行えて作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクターの全体平面図である。
【図2】トランスミッションケースの側断面図である。
【図3】トランスミッションケースの拡大側断面図である。
【図4】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図5】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図6】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図7】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図8】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図9】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図10】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側断面図である。
【図11】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
作業車両の一例としてトラクター1を実施例にして以下に説明する。
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0016】
トラクター1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5の回転動力をトランスミッションケース8内のHST21と副変速装置22によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0017】
機体中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側に回動すると機体は前進し、後側へ回動すると後進する構成である。
【0018】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、走行速度を調節するアクセルペダル18と、そのアクセルペダル18の内側に左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0019】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、シート9の左前側部には、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15を設け、その後方にPTO変速レバー12を設けている。シート9の右側部には、最高速設定ダイヤル54とレスポンス設定ダイヤル55とオートクルーズセットスイッチ56を設けている。
【0020】
トラクター1の機体後部には、ロータリ作業機等を装着するヒッチ17を設けている。
図2は、トランスミッションケース8の側断面図を示している。
トランスミッションケース8は、フロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cを一体に組み付けた構成で、フロントケース8a内にHST21を収納してフロントケース8a側の隔壁14に厚みのあるHST取付板4を介して取り付けて、エンジン5のエンジンフライホイル5aとHST21のHST入力軸21aをダンパ20で連結している。HST取付板4は、HST21の取り付け面よりやや小さく、HST21は、直接HST取付板4にボルトで取り付けたり、HST取付板4を貫通するボルトでフロントケース8aの隔壁14に取り付けたりしている。
【0021】
HST21の出力側でミッドケース8b内には、前記HST入力軸21aの出力側に第一PTO軸30を連結し、PTO出力軸21bに第一走行軸34を連結している。また、隔壁14内にチャージポンプ33を設け、HST入力軸21aの出力側にスプライン嵌合して止め輪63で固定した第一ギヤ31を上側で銅パッキンにポートを設けて挟み込む構成のチャージポンプ33の入力軸に固着の第二ギヤ32に噛み合わせて駆動している。チャージポンプ33は、後方に油路を設けて下方から吸い上げる。
【0022】
第一PTO軸30の回転は、第三ギヤ35と第四ギヤ36と第五ギヤ37でPTOクラッチ47に伝動され、PTOクラッチ47のオンによって第二PTO軸38に伝動され、さらに第三PTO軸39に伝動され、この第三PTO軸39の回転が第六ギヤ40と第七ギヤ41で後PTO軸42に伝動し、さらに、第八ギヤ43と第九ギヤ44と第十ギヤ45で前PTO軸46に伝動する。
【0023】
PTO出力軸21bの回転は、第一スリーブ62で連結した第一走行軸34に伝動し、第十一ギヤ48から第十二ギヤ49を経て第三走行軸50に伝動し、第二スリーブ59で連結した走行変速軸51に伝動される。走行変速軸51とべベル軸52の間で、3個のギヤ組み合わせによって高・中・低に変速され、べベル軸52の第一べベルギヤ53から第二べベルギヤ60へ伝動して後輪駆動軸54を駆動する。また、べベル軸52の第十三ギヤ55から第十四ギヤ56と第十五ギヤ57を経て前輪駆動軸58を駆動する。
【0024】
第一スリーブ62には、回転検出ギヤ61を固着し、第一走行軸34の回転方向と回転数を検出する。回転検出ギヤ61はレーザー加工により歯数を多くして検出精度を向上させた。なお、回転検出ギヤ61は歯切り加工をすることでコストダウンしても良い。
【0025】
図4に示す実施例は、ステアリングハンドル7の回転を油圧信号に変換して前輪2を操向制御するパワーステアリングユニット65をフロントケース8a前側のクラッチケース64内に収めて、ステアリングシャフト66の回転を延長シャフト67からパワーステアリングユニット65に直接伝動した構成を示し、この構成でパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0026】
図5に示す実施例は、クラッチケース64の外側にパワーステアリングユニット65を取り付け、ステアリングシャフト66の回転を延長シャフト67からクラッチケース64内のべベルギヤ66a,66bを介してパワーステアリングユニット65に伝動する。この構成もパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0027】
図6に示す実施例は、フロントケース8aの側面にパワーステアリングユニット65を取り付け、ステアリングシャフト66の延長シャフト67をフロントケース8a内を通して、べベルケース66c内のべベルギヤ66a,66bでステアリングシャフト66の回転をパワーステアリングユニット65に伝動する。この構成もパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0028】
図7に示す実施例は、HST21のチャージオイルを流す第一ストレーナ69aと第二ストレーナ69bをフロントケース8aの外側面に配設した構成で、第一オイル管68aから第一ストレーナ69aと第二ストレーナ69bを通って第二オイル管68bへ流れる。
【0029】
図8に示す実施例は、フロントケース8aの側面にメインフィルタ70とマニホールド71を取り付け、ストレーナ69からの第三オイル管72とパワーステアリングの戻り配管73をマニホールド71で合流して、第四オイル管74と第五オイル管75でメインフィルタ70に流している。マニホールド71は、第三オイル管72の流入口と戻り配管73の流入口と第五オイル管75の流出口と第四オイル管74の流出口が縦方向に並んでいるので、コンパクトになる。また、第三オイル管72を下からマニホールド71に連結することで、空気溜まりを無くしている。
【0030】
図9に示す実施例は、HST21のメインフィルタ70をミッドケース8bに取り付けた状態を示し、フロントケース8aとミッドケース8bの合わせ面近くで、フロントケース8aのチャージポンプ吐出口から下方へ湾曲する吐出パイプ76をメインフィルタ70に下方から連結し、ミッドケース8bのHST21への供給パイプ77を同じく下方へ湾曲してメインフィルタ70の下方に連結している。
【0031】
チャージポンプ吐出口76aと供給口77aは略同じ高さ位置で、チャージポンプ吐出口76aに連結する吐出パイプ76は、図10の如く、ステップフロア13の下部で水平に連結し下方へ湾曲している。また、供給パイプ77もステップフロア13の下部で水平に供給口77aに連結している。
【0032】
フロントケース8aとミッドケース8bの下部側面には、トランスミッションケース8側からの不足分供給パイプ79とパワーステアリングの戻りパイプ78を配設し、フロントケース8aの合流口80に連結して、チャージポンプ33へ供給している。不足分供給パイプ79は戻りパイプ78からのオイル不足を補うためで、トランスミッションケース8からの吐出オイル量を少なく出来る。
【0033】
次に、HST21の制御について説明する。
HSTは、油圧ポンプと油圧モータで構成し、前後進レバー10の前後操作で前進と後進を切り換えるが、この前後進の切換え時にいったん中立にすることなく前進から後進へ或いは後進から前進へ切り換える。この操作で走行方向の切換え時のもたつきが無くなり、走行停止後直ちに走行方向が切り換えられる。
【0034】
前後進レバー10の切換えタイミングでリニアクラッチにより前後進を切り換えるようにしても良い。
PTO変速レバー12を適宜の設定速にして発進する場合は、まずトラニオン軸を設定速に対応する角度まで回動した後に供給圧を徐々に昇圧して発進し設定速まで増速する。
【0035】
アクセルレバー11を最高速にしている場合の発進は、まずトラニオン軸を中速まで回動して圧油を昇圧して増速し、その後にトラニオン軸を高速まで回動して増速する。
乾式メインクラッチを備えている場合には、クラッチペダルが踏まれていることを検出すると、トラニオン軸を設定速に対応する角度まで回動し前後進クラッチを繋いだ状態にして、クラッチペダルを戻すと半クラッチで発進する。
【0036】
副変速レバー15で走行速度を切り換える場合には、高速から低速にする場合にはトラニオン軸を増速側にし、低速から高速にする場合にはトラニオン軸を減速側にすることで、スムースな変速が行える。
【0037】
前後進切換え時に滑らかに停止するために、後輪3或いは前輪2と後輪3に対するブレーキに走行速度に応じたブレーキ作動力を作用させる。その後に発進する場合は、ブレーキを徐々に緩めて滑らかに発進する。
【0038】
アクセルレバー11を停止にしても走行している場合には、前後進レバー10を逆方向走行に切り換える。
前後進レバー10で走行方向切り換えを行っても停止して走行方向が切り換わらない場合や逆に加速する場合には、警告音を鳴らしてブレーキを作用させる。
【符号の説明】
【0039】
3 後輪
4 HST取付板
5 エンジン
5a エンジンフライホイル
8 トランスミッションケース
8a フロントケース
8b ミッドケース
8c リアケース
14 隔壁
20 ダンパ
21 HST
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行伝動系に油圧式無段変速装置(以下「HST」という)を設け、このHSTを制御部によって変速制御して走行車速を調節する作業車両の変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、HSTをトラニオン制御によって前進側と後進側に無段階変速するHST変速機構を走行伝動系に設けた作業車両において、その車速調節のために、幅広い変速ポジションを有する主変速レバーの操作位置に応じてHST変速機構を制御する制御部を有する作業車両の変速制御装置が知られている。
【0003】
この変速制御装置は、制御部が主変速レバーの選択ポジションに応じてトラニオン軸を駆動制御することによりHST変速機構の出力軸回転数を調節する。
HSTは、エンジンとミッションケースの間に設けられ、HST収納ケースに直接収められてエンジン出力軸の回転を変速してミッションケース内の動力伝動軸に伝動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HSTは、振動が生じやすく強固にミッションケースへ支持する必要があるが、前記の従来構成では、HSTが直接HST収納ケースに取り付けられているために、剛性不足による軸芯のずれによって振動が生じる。
【0006】
そこで、本発明では、作業車両のHSTを使った変速伝動構成において、振動の発生しやすいHSTをミッションケースへ強固に取り付ける構成にすることによって、振動による動力伝動部の経年劣化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、エンジン5の動力を後輪3に伝動するトランスミッションケース8をフロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cで構成し、トランスミッションケース8内でHST21を厚みのあるHST取付板4に取り付け、このHST取付板4をフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置とする。
【0008】
この構成で、HST21が厚みのある剛性の高いHST取付板4を介してフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着されることで、HST21の振動発生が抑えられ、トランスミッションケース8の振動も少なくなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、HST21の入力軸をエンジン5のエンジンフライホイル5aにダンパ20を介して取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置とした。
【0010】
この構成で、エンジン5を出力の異なるものと交換する場合にエンジンフライホイル5aを共用して取り付けることが可能になる。
請求項3に記載の発明は、HST21のチャージポンプ33を隔壁14のミッドケース8b側に設け、HST21のHST入力軸21aの出力側から該チャージポンプ33を駆動したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置とした。
【0011】
この構成で、ミッドケース8b側からチャージポンプ33のメンテナンスが行えて作業が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明で、HST21が厚みのある剛性の高いHST取付板4を介してフロントケース8aのミッドケース8b側隔壁14に固着されることで、HST21の振動発生が抑えられ、トランスミッションケース8の振動も少なくなる。
【0013】
請求項2の発明で、エンジン5を出力の異なるものと交換する場合にエンジンフライホイル5aを共用して取り付けることが可能になる。
請求項3の発明で、ミッドケース8b側からチャージポンプ33のメンテナンスが行えて作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクターの全体平面図である。
【図2】トランスミッションケースの側断面図である。
【図3】トランスミッションケースの拡大側断面図である。
【図4】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図5】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図6】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図7】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図8】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図9】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側面図である。
【図10】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側断面図である。
【図11】別実施例トランスミッションケースの部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
作業車両の一例としてトラクター1を実施例にして以下に説明する。
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0016】
トラクター1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5の回転動力をトランスミッションケース8内のHST21と副変速装置22によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0017】
機体中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側に回動すると機体は前進し、後側へ回動すると後進する構成である。
【0018】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、走行速度を調節するアクセルペダル18と、そのアクセルペダル18の内側に左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0019】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、シート9の左前側部には、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15を設け、その後方にPTO変速レバー12を設けている。シート9の右側部には、最高速設定ダイヤル54とレスポンス設定ダイヤル55とオートクルーズセットスイッチ56を設けている。
【0020】
トラクター1の機体後部には、ロータリ作業機等を装着するヒッチ17を設けている。
図2は、トランスミッションケース8の側断面図を示している。
トランスミッションケース8は、フロントケース8aとミッドケース8bとリアケース8cを一体に組み付けた構成で、フロントケース8a内にHST21を収納してフロントケース8a側の隔壁14に厚みのあるHST取付板4を介して取り付けて、エンジン5のエンジンフライホイル5aとHST21のHST入力軸21aをダンパ20で連結している。HST取付板4は、HST21の取り付け面よりやや小さく、HST21は、直接HST取付板4にボルトで取り付けたり、HST取付板4を貫通するボルトでフロントケース8aの隔壁14に取り付けたりしている。
【0021】
HST21の出力側でミッドケース8b内には、前記HST入力軸21aの出力側に第一PTO軸30を連結し、PTO出力軸21bに第一走行軸34を連結している。また、隔壁14内にチャージポンプ33を設け、HST入力軸21aの出力側にスプライン嵌合して止め輪63で固定した第一ギヤ31を上側で銅パッキンにポートを設けて挟み込む構成のチャージポンプ33の入力軸に固着の第二ギヤ32に噛み合わせて駆動している。チャージポンプ33は、後方に油路を設けて下方から吸い上げる。
【0022】
第一PTO軸30の回転は、第三ギヤ35と第四ギヤ36と第五ギヤ37でPTOクラッチ47に伝動され、PTOクラッチ47のオンによって第二PTO軸38に伝動され、さらに第三PTO軸39に伝動され、この第三PTO軸39の回転が第六ギヤ40と第七ギヤ41で後PTO軸42に伝動し、さらに、第八ギヤ43と第九ギヤ44と第十ギヤ45で前PTO軸46に伝動する。
【0023】
PTO出力軸21bの回転は、第一スリーブ62で連結した第一走行軸34に伝動し、第十一ギヤ48から第十二ギヤ49を経て第三走行軸50に伝動し、第二スリーブ59で連結した走行変速軸51に伝動される。走行変速軸51とべベル軸52の間で、3個のギヤ組み合わせによって高・中・低に変速され、べベル軸52の第一べベルギヤ53から第二べベルギヤ60へ伝動して後輪駆動軸54を駆動する。また、べベル軸52の第十三ギヤ55から第十四ギヤ56と第十五ギヤ57を経て前輪駆動軸58を駆動する。
【0024】
第一スリーブ62には、回転検出ギヤ61を固着し、第一走行軸34の回転方向と回転数を検出する。回転検出ギヤ61はレーザー加工により歯数を多くして検出精度を向上させた。なお、回転検出ギヤ61は歯切り加工をすることでコストダウンしても良い。
【0025】
図4に示す実施例は、ステアリングハンドル7の回転を油圧信号に変換して前輪2を操向制御するパワーステアリングユニット65をフロントケース8a前側のクラッチケース64内に収めて、ステアリングシャフト66の回転を延長シャフト67からパワーステアリングユニット65に直接伝動した構成を示し、この構成でパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0026】
図5に示す実施例は、クラッチケース64の外側にパワーステアリングユニット65を取り付け、ステアリングシャフト66の回転を延長シャフト67からクラッチケース64内のべベルギヤ66a,66bを介してパワーステアリングユニット65に伝動する。この構成もパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0027】
図6に示す実施例は、フロントケース8aの側面にパワーステアリングユニット65を取り付け、ステアリングシャフト66の延長シャフト67をフロントケース8a内を通して、べベルケース66c内のべベルギヤ66a,66bでステアリングシャフト66の回転をパワーステアリングユニット65に伝動する。この構成もパワーステアリングユニット65の油圧作動音を低減する効果がある。
【0028】
図7に示す実施例は、HST21のチャージオイルを流す第一ストレーナ69aと第二ストレーナ69bをフロントケース8aの外側面に配設した構成で、第一オイル管68aから第一ストレーナ69aと第二ストレーナ69bを通って第二オイル管68bへ流れる。
【0029】
図8に示す実施例は、フロントケース8aの側面にメインフィルタ70とマニホールド71を取り付け、ストレーナ69からの第三オイル管72とパワーステアリングの戻り配管73をマニホールド71で合流して、第四オイル管74と第五オイル管75でメインフィルタ70に流している。マニホールド71は、第三オイル管72の流入口と戻り配管73の流入口と第五オイル管75の流出口と第四オイル管74の流出口が縦方向に並んでいるので、コンパクトになる。また、第三オイル管72を下からマニホールド71に連結することで、空気溜まりを無くしている。
【0030】
図9に示す実施例は、HST21のメインフィルタ70をミッドケース8bに取り付けた状態を示し、フロントケース8aとミッドケース8bの合わせ面近くで、フロントケース8aのチャージポンプ吐出口から下方へ湾曲する吐出パイプ76をメインフィルタ70に下方から連結し、ミッドケース8bのHST21への供給パイプ77を同じく下方へ湾曲してメインフィルタ70の下方に連結している。
【0031】
チャージポンプ吐出口76aと供給口77aは略同じ高さ位置で、チャージポンプ吐出口76aに連結する吐出パイプ76は、図10の如く、ステップフロア13の下部で水平に連結し下方へ湾曲している。また、供給パイプ77もステップフロア13の下部で水平に供給口77aに連結している。
【0032】
フロントケース8aとミッドケース8bの下部側面には、トランスミッションケース8側からの不足分供給パイプ79とパワーステアリングの戻りパイプ78を配設し、フロントケース8aの合流口80に連結して、チャージポンプ33へ供給している。不足分供給パイプ79は戻りパイプ78からのオイル不足を補うためで、トランスミッションケース8からの吐出オイル量を少なく出来る。
【0033】
次に、HST21の制御について説明する。
HSTは、油圧ポンプと油圧モータで構成し、前後進レバー10の前後操作で前進と後進を切り換えるが、この前後進の切換え時にいったん中立にすることなく前進から後進へ或いは後進から前進へ切り換える。この操作で走行方向の切換え時のもたつきが無くなり、走行停止後直ちに走行方向が切り換えられる。
【0034】
前後進レバー10の切換えタイミングでリニアクラッチにより前後進を切り換えるようにしても良い。
PTO変速レバー12を適宜の設定速にして発進する場合は、まずトラニオン軸を設定速に対応する角度まで回動した後に供給圧を徐々に昇圧して発進し設定速まで増速する。
【0035】
アクセルレバー11を最高速にしている場合の発進は、まずトラニオン軸を中速まで回動して圧油を昇圧して増速し、その後にトラニオン軸を高速まで回動して増速する。
乾式メインクラッチを備えている場合には、クラッチペダルが踏まれていることを検出すると、トラニオン軸を設定速に対応する角度まで回動し前後進クラッチを繋いだ状態にして、クラッチペダルを戻すと半クラッチで発進する。
【0036】
副変速レバー15で走行速度を切り換える場合には、高速から低速にする場合にはトラニオン軸を増速側にし、低速から高速にする場合にはトラニオン軸を減速側にすることで、スムースな変速が行える。
【0037】
前後進切換え時に滑らかに停止するために、後輪3或いは前輪2と後輪3に対するブレーキに走行速度に応じたブレーキ作動力を作用させる。その後に発進する場合は、ブレーキを徐々に緩めて滑らかに発進する。
【0038】
アクセルレバー11を停止にしても走行している場合には、前後進レバー10を逆方向走行に切り換える。
前後進レバー10で走行方向切り換えを行っても停止して走行方向が切り換わらない場合や逆に加速する場合には、警告音を鳴らしてブレーキを作用させる。
【符号の説明】
【0039】
3 後輪
4 HST取付板
5 エンジン
5a エンジンフライホイル
8 トランスミッションケース
8a フロントケース
8b ミッドケース
8c リアケース
14 隔壁
20 ダンパ
21 HST
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(5)の動力を後輪(3)に伝動するトランスミッションケース(8)をフロントケース(8a)とミッドケース(8b)とリアケース(8c)で構成し、トランスミッションケース(8)内でHST(21)をHST取付板(4)に取り付け、このHST取付板(4)をフロントケース(8a)のミッドケース(8b)側隔壁(14)に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置。
【請求項2】
HST(21)の入力軸をエンジン(5)のエンジンフライホイル(5a)にダンパ(20)を介して取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置。
【請求項3】
HST(21)のチャージポンプ(33)を隔壁(14)のミッドケース(8b)側に設け、HST(21)のHST入力軸(21a)の出力側から該チャージポンプ(33)を駆動したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置。
【請求項1】
エンジン(5)の動力を後輪(3)に伝動するトランスミッションケース(8)をフロントケース(8a)とミッドケース(8b)とリアケース(8c)で構成し、トランスミッションケース(8)内でHST(21)をHST取付板(4)に取り付け、このHST取付板(4)をフロントケース(8a)のミッドケース(8b)側隔壁(14)に固着したことを特徴とする作業車両の変速装置。
【請求項2】
HST(21)の入力軸をエンジン(5)のエンジンフライホイル(5a)にダンパ(20)を介して取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置。
【請求項3】
HST(21)のチャージポンプ(33)を隔壁(14)のミッドケース(8b)側に設け、HST(21)のHST入力軸(21a)の出力側から該チャージポンプ(33)を駆動したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−71545(P2013−71545A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211030(P2011−211030)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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