説明

作業車両の排気ガス浄化システム

【課題】油圧ショベル等の走行式の作業車両において、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタの手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で手動再生制御を行うことができる作業車両の排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】再生用燃料噴射装置40の作動(手動再生制御)の開始を、手動再生開始スイッチ39が操作され、エンジンコントロールダイヤル2がローアイドルを指令するよう操作され、かつゲートロックレバー22がリモコン弁25,26,27による制御パイロット圧a〜fの生成を不能とする第2位置Bに操作されたときに行う。手動再生制御中であっても、ゲートロックレバー22が第1位置Aに操作されると、直ちに手動再生制御を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業車両の排気ガス浄化システムに係わり、特に、油圧ショベル等の走行式の作業車両において、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタに堆積した粒子状物質を手動再生制御により焼却除去し、フィルタを再生させる作業車両の排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM:パティキュレート・マター:以下PMとする)を捕集し、外部に排出するPM量を低減するシステムとして、特許文献1及び2に記載の排気ガス浄化システムが知られている。このシステムは、エンジンの排気系にパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタを配置し、このフィルタで排気ガス中に含まれるPMを捕集し、排気ガスを浄化するものである。また、特許文献1及び2に記載のシステムでは、フィルタの目詰まりを防止するため、手動操作により再生制御の開始を指示し、排気ガスの温度を上昇させることでフィルタに堆積したPMを焼却除去する制御(手動再生制御)を行うようになっており、特許文献2に記載のシステムでは、更に、自動的に再生を開始して堆積PMを焼却除去する自動再生制御も行えるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−120895号公報
【特許文献2】特開2006−37925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DPFを用いたディーゼルエンジンの場合、フィルタ部にPMが溜まるが、通常、このフィルタに溜まったPMは高温の排気ガスに晒されることにより自己燃焼する。しかし、エンジンに対する負荷が軽い場合は排気ガスの温度が高温に達せず、自己燃焼できないPMが徐々にフィルタに堆積してフィルタが目詰まりを起こすため、強制的にPMを焼却除去し再生する必要がある。特許文献1及び2に記載のシステムでは、上記のように手動再生制御或いは自動再生制御により排気ガスの温度を高めることにより、強制的にPMを焼却除去し、フィルタを再生している。これらのシステムはトラック等の運搬車両で実用化されている。
【0005】
ところで、油圧ショベル等の走行式の作業車両も駆動源としてディーゼルエンジンを搭載しており、この場合も、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPMの排出量を低減することが求められている。このような要求に対しては、トラック等の運搬車両と同様に特許文献1及び2に記載のよう排気ガス浄化システムを適用すればよい。しかし、トラック等の運搬車両のディーゼルエンジンに適用されていた排気ガス浄化システムを作業車両のディーゼルエンジンにそのまま適用した場合は、手動再生制御において次のような問題が生じる。
【0006】
排気ガス浄化システムの手動再生制御は、通常、車体の停止中に運転員が手動再生開始スイッチを操作し、再生の開始(再生装置の作動の開始)を指示することにより行われる。この場合、特許文献1記載のシステムでは、車速或いは変速レバーの位置等の情報に基づいて車体が停止状態であるかどうかを確認し、車体の停止状態を確認後、フィルタの手動再生を実行する。これにより運搬作業の停止中である車体の停止時にのみフィルタの手動再生を実行している。しかし、油圧ショベル等の走行式の作業車両は、車体を停止した状態でフロント作業機等を動かして掘削等の作業を行うことのできる機械であるため、車体が停止状態にあることだけを確認して手動再生制御を開始した場合は、手動再生制御中にオペレータが操作レバー等を操作して作業系(油圧回路装置)を駆動した場合、手動再生制御が適切に行えなくなるばかりでなく、手動再生制御が作業系の動作に影響を及ぼし、作業に支障を生じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、油圧ショベル等の走行式の作業車両において、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタの手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で手動再生制御を行うことができる作業車両の排気ガス浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ディーゼルエンジンと、前記エンジンにより駆動されるメインの油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより複数の油圧アクチュエータを介して駆動される作業用の被駆動体と、運転室内に設けられ、前記複数の油圧アクチュエータの作動を指令する第1操作手段と、前記運転室内に設けられ、前記第1操作手段の指令を有効とする第1位置(A)と前記第1操作手段の指令を無効とする第2位置(B)とに選択的に操作される第2操作手段とを有する作業車両に備えられ、前記エンジンの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタを含むフィルタ装置と、前記排気ガスの温度を上昇させ、前記フィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去する再生装置とを有する作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、前記運転室内に設けられ、前記再生装置の作動の開始を指示する第3操作手段と、前記第2操作手段が前記第2位置(B)に操作されかつ前記第3操作手段(39)が操作されたときに、前記再生装置(の作動を開始させる再生制御装置とを備えるものとする。
【0009】
このように再生装置の作動(手動再生制御)の開始を、再生装置の作動の開始を指示する第3操作手段の操作状態だけではなく、第1操作手段の指令を無効とする第2操作手段の操作状態をも見て行うことにより、作業系(油圧回路装置)が動作できる状態で手動再生制御が開始されることがなくなり、手動再生制御中は第1操作手段を操作しても作業系(油圧回路装置)は動作しないため、手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で手動再生制御を行うことができる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記再生制御装置は、前記再生装置の作動開始後、前記第2操作手段が前記第1位置に操作されると前記再生装置の作動を停止させるものとする。
【0011】
これにより手動再生制御中であっても、第2操作手段を第1操作手段の指令を有効とする第1位置に操作すると再生装置の作動が停止するため、手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で、直ちに作業を再開することができる。
【0012】
(3)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記エンジンの目標回転数を指示する第4操作手段を更に備え、前記再生制御装置は、前記第2操作手段が前記第2位置に操作され、前記第4操作手段がローアイドルの目標回転数を指示するよう操作されかつ前記第3操作手段が操作されたとき、前記再生装置の作動を開始させ、かつ前記エンジンの回転数を所定の回転数に制御するものとする。
【0013】
これにより手動再生制御に入るとエンジン回転数が所定の回転数に上昇し、手動再生制御が終わるとエンジン回転数がローアイドル回転数に下がるので、オペレータは手動再生制御中であるかどうかや、手動再生制御が終わったことをエンジン音で確認することができる。
【0014】
(4)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記エンジンの回転数とトルクを制御し走行速度を指示制御するための指令信号を出力する第5操作手段と、前記エンジンの出力軸に接続された走行系と、前記作業車両の駐車時に操作され前記走行系(235,236)を制動する駐車用の第6操作手段を更に備え、前記再生制御装置は、前記第2操作手段が前記第2位置に操作され、前記第6操作手段が操作されかつ前記第3操作手段が操作されたとき、前記再生装置の作動を開始させるものとする。
【0015】
これにより作業系及び走行系が動作できる状態で手動再生制御が開始されることがなくなり、手動再生制御中は、第1操作手段や第5操作手段を操作しても作業系(油圧回路装置)や走行系は動作しないため、手動再生制御と作業系及び走行系の動作が互いに影響することのなり適切な状態でフィルタの手動再生制御を行うことができる。
【0016】
(5)更に、上記(1)乃至(4)において、好ましくは、前記作業車両は、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとを有する油圧回路装置を更に備え、前記フィルタ装置は前記フィルタの上流側に配置された酸化触媒を有し、前記再生装置は、前記排気ガス中に再生用の燃料を噴射する燃料供給手段と、前記油圧回路装置に設けられ、前記エンジンに油圧的な負荷をかける油圧負荷生成手段とを有し、前記再生制御装置は、前記第2操作手段が前記第2位置に操作されかつ前記第3操作手段が操作されたときに、前記燃料供給手段及び油圧負荷生成手段を作動させ、かつ前記エンジンの回転数を所定の回転数に制御するものとする。
【0017】
このように作業車両に通常備えられる油圧回路装置を利用してエンジンに負荷をかけ、その状態でエンジン回転数を所定の回転数に制御することにより、エンジンの排気ガス温度は速やかに酸化触媒の活性化に適した温度まで上昇し、排気ガス中に噴射された燃料はフィルタ装置内において酸化触媒によって効率良く反応するため、その反応熱によりフィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去し、フィルタを適切に再生することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、再生装置の作動(手動再生制御)の開始を、再生装置の作動の開始を指示する第3操作手段の操作状態だけではなく、第1操作手段の指令を無効とする第2操作手段の操作状態も見て行うので、作業系(油圧回路装置)が動作できる状態で手動再生制御が開始されることがなくなり、油圧ショベル等の走行式の作業車両において、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタの手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのなり適切な状態で手動再生制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる建設機械の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すシステムにおける制御装置の詳細を示す図である。
【図3】図3は、建設機械(例えば油圧ショベル)に搭載される油圧回路装置を示す図である。
【図4】図4は、図3に示す油圧回路装置を備えた建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。
【図5】図5は、車体制御装置の手動再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】図6は、車体制御装置の手動再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係わる建設機械の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【図8】図8は、図7に示すシステムにおける制御装置の詳細を示す図である。
【図9】図9は、建設機械(例えば油圧ショベル)に搭載される油圧回路装置を示す図である。
【図10】図10は、車体制御装置の手動再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態に係わる建設機械の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【図12】図12は、図11に示すシステムにおける制御装置の詳細を示す図である。
【図13】図13は、本実施の形態に係わる作業車両であるホイールローダの外観を示す図である。
【図14】図14は、車体制御装置の手動再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる作業車両の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。
【0022】
図1において、本実施の形態に係わる作業車両は例えば建設機械の一例である油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、電子ガバナ1a(電子制御式の燃料噴射制御装置)を備えたディーゼルエンジン(以下単にエンジンという)1を有している。エンジン1の目標回転数は、油圧ショベルのキャビン(運転室)107(図4参照)内に設けられたエンジンコントロールダイヤル2により指令され、エンジン1の実回転数は回転数検出装置3により検出される。エンジンコントロールダイヤル2(第4操作手段)の指令信号及び回転数検出装置3の検出信号は制御装置4に入力され、制御装置4はその指令信号(目標回転数)と検出信号(実回転数)とに基づいて電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の回転数とトルクを制御する。また、エンジン1の始動停止指令装置として、キャビン107内にはキースイッチ5が設けられ、キースイッチ5の指令信号も制御装置4に入力され、制御装置4はその指令信号に基づいてスタータ(図示せず)と電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の始動及び停止を制御する。また、油圧ショベルのキャビン107内には運転席108が設置され、運転席108の前側の左側部(キャビン107の入り口側)にゲートロックレバー22(第2操作手段)が設けられている。
【0023】
本実施の形態の排気ガス浄化システムは上記のような作業車両(油圧ショベル)に設けられるものであり、エンジン1の排気系を構成する排気管31に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ32及びフィルタ32の上流側に配置された酸化触媒33を含むDPF装置34と、ゲートロックレバー22の操作位置を検出する位置検出装置35と、フィルタ32の上流側と下流側の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)を検出する差圧検出装置36と、フィルタの上流側に設置され、排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置37と、表示画面38aを有する表示装置(モニタ)38と、表示装置38に設けられた手動再生開始スイッチ39(第3操作手段)と、排気管31のエンジン1とDPF装置34との間に設けられた再生用燃料噴射装置40とを備えている。
【0024】
再生用燃料噴射装置40は排気ガスの温度を上昇させ、フィルタ32に堆積したPM(粒子状物質)を焼却除去するフィルタ32の再生装置を構成しており、手動再生開始スイッチ39は再生用燃料噴射装置40(再生装置)の作動の開始(フィルタ32の手動再生制御の開始)を指示する操作手段として機能し、手動再生開始スイッチ39がOFF位置からON位置に操作されると手動再生制御の開始を指示する指令信号が出力される。
【0025】
位置検出装置35及び排気温度検出装置37の検出信号と手動再生開始スイッチ39の指令信号は、制御装置4に入力され、制御装置4はそれらの信号と、上記エンジンコントロールダイヤル2からの指令信号及び回転数検出装置3の検出信号とに基づいて手動再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じて電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置40を制御する。また、制御装置4は、回転数検出装置3、キースイッチ5、位置検出装置35、差圧検出装置36、排気温度検出装置37、手動再生開始スイッチ39からの各種信号が示す情報や制御装置4の手動再生制御の演算処理結果を表示信号として表示装置38に送り、それら情報を表示画面38aに表示させる。表示装置38が表示画面38aに表示する情報には、差圧検出装置36により検出されたフィルタ32の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)が含まれており、オペレータはその前後差圧の値がフィルタ32の強制再生を必要とするレベルを超えているかどうかを判断することで手動再生制御の要否を判断することができる。
【0026】
図2は制御装置4の詳細を示す図である。制御装置4は、車体制御装置41と、モニタ制御装置42と、エンジン制御装置43とを含み、これら制御装置41〜43は通信ライン44を介して相互に接続され、車体ネットワークを構成している。位置検出装置35の検出信号、手動再生開始スイッチ39及びエンジンコントロールダイヤル2の指令信号、差圧検出装置36及び排気温度検出装置37の検出信号は車体制御装置41に入力され、キースイッチ5の指令信号と回転数検出装置3の検出信号はエンジン制御装置43に入力される。
【0027】
エンジン制御装置43は、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号を通信ライン44を介して受信し、この指令信号と回転数検出装置3の検出信号に基づいて上記のようにエンジン1の回転数とトルクを制御する。また、エンジン制御装置43はキースイッチ5の指令信号に基づいてスタータ(図示せず)と電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の始動及び停止を制御する。
【0028】
車体制御装置41は、回転数検出装置3の検出信号を通信ライン44を介して受信し、この検出信号と、位置検出装置35の検出信号、手動再生開始スイッチ39及びエンジンコントロールダイヤル2の指令信号とに基づいて上記のように手動再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じた制御信号を通信ライン44を介してエンジン制御装置に送信し、エンジン制御装置43はその制御信号に応じて電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置40を制御する。
【0029】
モニタ制御装置42は、回転数検出装置3、キースイッチ5、位置検出装置35、差圧検出装置36、排気温度検出装置37、手動再生開始スイッチ39からの各種信号や車体制御装置41の手動再生制御の演算処理結果を通信ライン44を介して受信し、上記のようにこれら信号情報や演算処理結果を表示信号として表示装置38に送り、それら情報を表示画面38aに表示させる。
【0030】
図3は、本実施の形態に係わる作業車両である油圧ショベルに搭載される油圧回路装置を示す図である。油圧ショベルの油圧回路装置は、エンジン1により駆動される可変容量型のメインの油圧ポンプ11及び固定容量型のパイロットポンプ12と、油圧ポンプ11から吐出される圧油によって駆動される油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15を含む複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ11から油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するパイロット操作式の流量制御弁17〜19を含む複数の流量制御弁と、パイロットポンプ12から吐出される圧油の圧力を一定に保ち、パイロット油圧源20を形成するパイロットリリーフ弁21と、パイロット油圧源20の下流側に接続され、油圧ショベルの運転席108(図1)の入り口側に設けられた上記ゲートロックレバー22(図1)の開閉状況によってON/OFF制御される電磁切換弁23と、電磁切換弁23の下流側のパイロット油路24に接続され、パイロット油圧源20の油圧を元圧として流量制御弁17〜19を操作するための制御パイロット圧a〜fを生成するリモコン弁25,26,27(第1操作手段)と、メインの油圧ポンプ11の吐出圧力の上限を規定する安全手段としてのメインリリーフ弁29とを備えている。リモコン弁25,26,27は運転席108の左右に設けられた左右のコントロールレバーユニット(図示せず)に内蔵されている。
【0031】
図4は、図3に示す油圧回路装置を備えた建設機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1が配置され、キャビン107内の運転席108(図1)の入り口側にゲートロックレバー22(図1)が設けられ、運転席108の左右にリモコン弁25,26,27を内蔵したコントロールレバーユニット(図示せず)が配置されている。また、キャビン107内の適所にエンジンコントロールダイヤル2、キースイッチ5、表示装置38が設置されている。
【0032】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0033】
図3において、油圧モータ13は例えば旋回モータ105であり、油圧シリンダ14は例えばアームシリンダ115であり、油圧シリンダ15は例えばブームシリンダ114である。図3に示す油圧回路装置には走行モータ104a,104b、バケットシリンダ116等に対応するその他の油圧アクチュエータや制御弁も備えられているが、図3では図示を省略している。
【0034】
図1に戻り、ゲートロックレバー22は運転席108の入り口を制限する下げ位置である第1位置Aと運転席108の入り口を開放する上げ位置である第2位置Bとに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー22が第1位置Aにあるときは電磁切換弁23のソレノイドを励磁して電磁切換弁23を図示の位置から切り換え、パイロット油圧源20の圧力をリモコン弁25,26,27に導き、これによりリモコン弁25,26,27による制御パイロット圧a〜fの生成を可能とし、その制御パイロット圧a〜fによる流量制御弁17〜19の操作を可能とする。ゲートロックレバー22が第2位置Bに上げ操作されると、電磁切換弁23のソレノイドを励磁を解除して電磁切換弁23を図示の位置に切り換え、パイロット油圧源20とリモコン弁25,26,27の連通を遮断し、これによりリモコン弁25,26,27による制御パイロット圧a〜fの生成を不能とし、その制御パイロット圧a〜fによる流量制御弁17〜19の操作を不能とする。すなわち、ゲートロックレバー22が第2位置Bに上げ操作されるとリモコン弁25,26,27(コントロールレバーユニット)に対してロック入りの状態となる。ゲートロックレバー22による電磁切換弁23の位置の切り換えは、例えば電磁切換弁23のソレノイドと電源との間に図示しないスイッチを設け、ゲートロックレバー22が第1位置AにあるときはそのスイッチをON(閉)してソレノイドを励磁し、ゲートロックレバー22が第2位置Bに操作されるとそのスイッチをOFF(開)してソレノイドの励磁を解除することにより行う。
【0035】
図5及び図6は車体制御装置41の手動再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。車体制御装置41は、図5に示す演算処理と図6に示す演算処理を所定の制御サイクルで交互に実行する。
【0036】
図5において、車体制御装置41は、まず、位置検出装置35の検出信号に基づいてゲートロックレバー22が第2位置Bに上げ操作されたかどうか、すなわちゲートロックレバー22がリモコン弁25,26,27(コントロールレバーユニット)に対してロック入りの状態(ロック状態)にあるかどうかを判定し(ステップS100)、ゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)にあると判定されると、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号に基づいてエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数が低速アイドル回転数(ローアイドル)であるかどうかを判定し(ステップS105)、エンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数が低速アイドル回転数(ローアイドル)であると判定されると、回転数検出装置3の検出信号に基づいてエンジン1の回転数が500rpm以上であるかどうかを判定し(ステップS110)、エンジン1の回転数が500rpm以上であると判定されると、DPF手動再制御可能フラグをONに設定し(ステップS115)、かつDPF手動再生制御停止フラグをOFFに設定する(ステップS120)。エンジン1の回転数が500rpm以上であるかどうかの判定は、エンジン1が稼動中であるかどうかを確認するためのものである。DPF手動再制御可能フラグはDPF手動再生制御を開始させるためのフラグであり、DPF手動再生制御停止フラグはDPF手動再生制御を停止させるためのフラグである。ステップS100においてゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)にないと判定された場合、ステップS105においてエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数が低速アイドル回転数(ローアイドル)でないと判定された場合、ステップS110においてエンジン1の回転数が500rpm以上でないと判定された場合は、それぞれスタートに戻ってステップS100〜S110の判定処理を繰り返す。
【0037】
また、ステップS120においてDPF手動再生制御停止フラグをOFFに設定した後は、位置検出装置35の検出信号に基づいてゲートロックレバー22が第2位置Bに保持されているかどうか、すなわちゲートロックレバー22がリモコン弁25,26,27(コントロールレバーユニット)に対してロック入りの状態(ロック状態)に保たれているかどうかを判定し(ステップS125)、ゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)に保持されていると判定されると、回転数検出装置3の検出信号に基づいてエンジン1の回転数が500rpm以上であるかどうかを判定し(ステップS135)、エンジン1の回転数が500rpm以上であると判定されると、上記ステップS125〜S135の判定処理を繰り返す。エンジン1の回転数が500rpm以上であるかどうかの判定は、上記と同様、エンジン1が稼動中であるかどうかを確認するためのものである。ステップS125においてゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)に保たれていない(第1位置Aに操作された)と判定された場合、ステップS135においてエンジン1の回転数が500rpm以上でないと判定された場合は、DPF手動再制御停止フラグをONに設定し(ステップS140)、かつDPF手動再生制御可能フラグをOFFに設定する(ステップS145)。
【0038】
図6において、エンジン制御装置41は、まず、手動再生制御可能フラグがONかどうかを判定し(ステップS200)、手動再生制御可能フラグがONであると判定されると、手動再生開始スイッチ39がON位置にあるかどうかを判定し(ステップS210)、手動再生開始スイッチ39がON位置にあると判定されると、DPF手動再生制御を開始する(ステップS220)。ステップS200において手動再生制御可能フラグがONでない(OFFである)と判定された場合、ステップS210において手動再生開始スイッチ39がON位置にない(OFF位置にある)と判定された場合は、それぞれステップS200,S210の判定処理を繰り返す。ステップS220においてDPF手動再生制御を開始した場合は、DPF手動再生制御開始後の時間(再生制御時間)が所定時間Tcに達したかどうかを判定し(ステップS230)、再生制御時間が所定時間Tcに達したと判定された場合は、DPF手動再生制御を停止する(ステップS250)。また、ステップS230において、再生制御時間が所定時間Tcに達していないと判定された場合は、更に、DPF手動再生停止フラグがONであるかどうかを判定し(ステップS240)、DPF手動再生停止フラグがONであると判定されると、DPF手動再生制御を停止する(ステップS250)。ステップS230においてDPF手動再生停止フラグがONでない(OFFである)と判定された場合は、ステップS230〜S240の判定処理を繰り返す。
【0039】
ステップS230では、再生制御時間が所定時間Tcに達したかどうかを判断してDPF手動再生制御を終了させたが、差圧検出装置36の検出信号に基づき、フィルタ32の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)が所定の値より低くなったかどうかを判断し、フィルタ32の前後差圧が所定の値より低くなったときに、再生制御を終了させてもよい。
【0040】
また、ステップS220におけるDPF手動再生制御は例えば次のように行う。まず、エンジン1の回転数を強制再生制御に適した所定の回転数Naに制御する。強制再生制御に適した所定の回転数Naとは、そのときの排気ガスの温度を酸化触媒33の活性温度よりも高い温度まで上昇させることができる回転数であり、例えば1800rpm程度の中速回転数である。この制御では、車体制御装置41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)から所定の回転数Naに切り換え、その所定の回転数Na(目標回転数)を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信する。エンジン制御装置43は、その目標回転数(所定の回転数Na)と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がその所定の回転数Naとなるよう制御する。
【0041】
次いで、排気温度検出装置37により検出した排気ガス温度が所定の温度(酸化触媒33の活性温度よりも高い温度)まで上昇したことが確認されると、再生用燃料噴射装置40を制御して排気管31内への燃料噴射を行う。排気管31内に燃料噴射を行うことで未燃燃料が酸化触媒33に供給され、その未燃燃料を酸化触媒33によって酸化させ、そのときに得られる反応熱により排気ガス温度が更に上昇し、フィルタ32に蓄積したPMが焼却除去される。
【0042】
ステップS250においてDPF手動再生制御を停止させるときは、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻し、再生用燃料噴射装置40の制御を停止させる。目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻す代わりに、エンジン1を停止させてもよい。
【0043】
次に、以上のように構成した本実施の形態の排気ガス浄化システムの動作を説明する。
【0044】
本実施の形態の排気ガス浄化システムによる手動再生制御は、例えば、表示装置38の画面38aに表示されたフィルタ32の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)がフィルタ32の強制再生を必要とする値を超えており、オペレータがフィルタ32の再生が必要であると判断した場合や、休憩時等の作業中断時に行う。手動再生制御を行うときは、キースイッチ5はONのままとし、エンジン1は駆動にしておく。オペレータは、まず、エンジンコントロールダイヤル2を操作してエンジン1の目標回転数を低速アイドル回転数に下げ、かつゲートロックレバー22を第1位置Aから第2位置Bに上げ操作する。このような操作をすると、車体制御装置41は、図5に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御可能フラグをONに設定し、DPF手動再生制御停止フラグをOFFに設定する(ステップS100→S105→S110→S115→S120)。次いで、オペレータは、手動再生制御を開始するため手動再生開始スイッチ39をON位置に操作する。車体制御装置41は、図6に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御可能フラグがONであり、手動再生開始スイッチ39がON位置にあると判定し、DPF手動再制御を開始する(ステップS200→S210→S220)。この手動再生制御では、上記のようにエンジン1の回転数は強制再生制御に適した回転数Naに制御され、エンジン回転数が上昇する。これによりオペレータは手動再生制御に入ったことをエンジン音で確認することができる。
【0045】
DPF手動再生制御開始後、所定時間Tc経過すると、車体制御装置41は手動再生制御を終了する(ステップS230→S250)。このとき、エンジン1の目標回転数は、強制再生制御に適した回転数Naからエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に復帰する。これによりオペレータは手動再生制御が終了したことをエンジン音で確認することができる。
【0046】
また、手動再生制御中であっても作業を再開させたい場合は、オペレータは、通常の作業再開時と同様、ゲートロックレバー22を第2位置Bから第1位置Aに下げ操作する。このようにゲートロックレバー22を操作すると、車体制御装置41は、図5に示すフローチャートにおいて、DPF手動再生制御停止フラグをONに設定し、DPF手動再制御可能フラグをOFFに設定する(ステップS125→S140→S145)。また、DPF手動再生制御停止フラグの設定がOFFからONに切り換わると、車体制御装置41は、図6に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御停止フラグがONであると判定し、DPF手動再制御を停止する(ステップS240→S250)。このときも、エンジン1の目標回転数はエンジンコントロールダイヤル2が指示する低速アイドル回転数に復帰するため、オペレータは手動再生制御が終了したことをエンジン音で確認することができる。
【0047】
以上のように構成した本実施の形態によれば、下記の効果が得られる。
【0048】
(a)再生用燃料噴射装置40(再生装置)の作動の開始を、手動再生開始スイッチ39の操作状態だけではなく、リモコン弁25,26,27による制御パイロット圧a〜fの生成を不能とするゲートロックレバー22の操作状態をも見て行うので、作業系を構成する図3に示す油圧回路装置が動作できる状態で手動再生制御が開始されることがなくなり、手動再生制御中はリモコン弁25,26,27を操作しても作業系(油圧回路装置)は動作しないため、手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で手動再生制御を行うことができる。
【0049】
(b)手動再生制御中であっても、ゲートロックレバー22を第1位置A(リモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を可能とする位置)に操作すると再生用燃料噴射装置40(再生装置)の作動が停止するため、手動再生制御と作業系の動作が互いに影響することのない適切な状態で、直ちに作業を再開することができる。
【0050】
(c)エンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数がローアイドル回転数であることも手動再生制御の開始条件に入れたので、手動再生制御に入るとエンジン1の回転数が所定の回転数Naに上昇し、手動再生制御が終わるとエンジン1の回転数がローアイドル回転数に下がるため、オペレータは手動再生制御中であるかどうかや、手動再生制御が終わったことをエンジン音で確認することができる。
【0051】
本発明の第2の実施の形態を図7〜図10により説明する。図中、図1〜図3、図6に示す部分と同等のものには同じ符号を付している。
【0052】
図7は本実施の形態における作業車両の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図であり、図8は、その制御装置の詳細を示す図である。本実施の形態の排気ガス浄化システムは電磁切換弁50を更に備え、制御装置4Aの一部を構成する車体制御装置41Aは、手動再生制御の演算処理結果に応じて電磁切換弁50を制御し、その演算結果に応じた制御信号を通信ライン44を介してエンジン制御装置43に送信し、エンジン制御装置43はその制御信号に応じて電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置40を制御する。
【0053】
図9は、本実施の形態に係わる作業車両である油圧ショベルに搭載される油圧回路装置を示す図である。この油圧回路装置において、流量制御弁17〜19を含む複数の流量制御弁はセンターバイパス型であり、これら流量制御弁は油圧ポンプ11の吐出油路につながるセンターバイパスライン51に直列に接続され、センターバイパスライン51の最下流側部分51aはタンクTに接続されている。また、センターバイパスライン51の最下流側部分51aには上記の電磁切換弁50が接続されている。電磁切換弁50は開位置と閉位置とを有する二位置切換弁であり、車体制御装置41AからのON信号が無く、ソレノイドが励磁されていないときは図示の開位置にあり、車体制御装置41AからON信号が送られ、ソレノイドが励磁されると図示の開位置から閉位置に切り換えられる。電磁切換弁50は再生用燃料噴射装置40とともに再生装置を構成する。
【0054】
図10は、本実施の形態における車体制御装置41Aの手動再生制御の演算処理のうち、図6に示すフローチャートに対応するものを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートとの相違点は、ステップS220AとステップS250Aの処理内容にある。
【0055】
すなわち、本実施の形態では、ステップS220Aにおいて次のように手動再生制御を開始する。
【0056】
まず、エンジン1の回転数を強制再生制御に適した所定の回転数Na(例えば1800rpm程度の中速回転数)に制御する。これと同時に、電磁切換弁50にON信号を送り、電磁切換弁50を開位置から閉位置に切り換える。これにより油圧ポンプ11の吐出圧力はメインリリーフ弁29の設定圧力まで上昇し、エンジン1はその油圧ポンプ11を駆動するため、エンジン1の負荷トルクが増大し、エンジン1の排気ガス温度が上昇する。
【0057】
次いで、排気温度検出装置37により検出した排気ガス温度が所定の温度(酸化触媒33の活性温度よりも高い温度)まで上昇したことが確認されると、再生用燃料噴射装置40を制御して排気管31内への燃料噴射を行い、未燃燃料を酸化触媒33によって酸化させて排気ガス温度を更に上昇させ、フィルタ32に蓄積したPMが焼却除去される。
【0058】
また、ステップS250Aにおいて手動再生制御を終了するときは、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻し、再生用燃料噴射装置40の制御を停止させ、かつ電磁切換弁50に送られる信号をOFFにし、電磁切換弁50を開位置に切り換える。この場合も、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻す代わりに、エンジン1を停止させてもよい。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態においては、第1の実施の形態の効果(a)〜(c)に加えて下記の効果が得られる。
【0060】
本実施の形態においては、手動再生制御が開始されると、エンジン1の回転数が所定の回転数Naに制御されると同時に、電磁切換弁50が閉位置に切り換わって油圧ポンプ11の負荷が上昇し、エンジン1の負荷トルクが増大するため、エンジン1の排気ガス温度は速やかに酸化触媒33の活性化に適した温度まで上昇する。そして、この状態で再生用燃料噴射装置40により排気ガス中に燃料を噴射するため、排気ガス中の未燃燃料はDPF装置34内において酸化触媒33によって効率良く酸化反応し、そのときの反応熱によってフィルタ32に堆積した粒子状物質が確実に焼却除去される。これによりフィルタ32を更に適切に再生することができる。
【0061】
本発明の第3の実施の形態を図11〜図13により説明する。図中、図1、図2、図5、図7及び図8に示す部分と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態は、本発明をホイールローダに適用した場合のものである。
【0062】
図11及び図12において、本実施の形態に係わる作業車両はホイールローダであり、ホイールローダの運転室206には、図1に示したエンジンコントロールダイヤル2(第4操作手段)に代え、エンジン1の回転数とトルクを制御し走行速度を制御するための指令信号を出力する操作手段(第5操作手段)として、アクセルペダル2Bが備えられており、更に、駐車用の制動手段として設けられ走行系(後述)を制動するパーキングブレーキ操作装置60(第6操作手段)が設置されている。アクセルペダル2Bの指令信号は制御装置4Bの車体制御装置41Bに入力される。車体制御装置41Bは、その指令信号に基づいてエンジン1の目標回転数を演算し、エンジン制御装置43に送信し、エンジン制御装置43はその目標回転数と回転数検出装置3の検出信号(実回転数)とに基づいて電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の回転数とトルクを制御する。エンジン1の出力軸は走行系に接続されており、エンジン1の回転数とトルクを制御することで走行速度が制御される。また、パーキングブレーキ操作装置60にはその操作位置を検出する位置検出装置61が設けられ、位置検出装置61の検出信号も制御装置4Bを構成する車体制御装置41Bに入力される。
【0063】
図13は、本実施の形態に係わる作業車両であるホイールローダの外観を示す図である。図13において、ホイールローダ200は相互に回動自在にピン結合された車体前部201と車体後部202とを備え、車体前部201と車体後部202とで車体を構成している。車体前部201にはフロント作業装置204が設けられ、車体後部202には運転席206が設けられ、運転席206には操作レバー装置207、ハンドル208、前述したアクセルペダル2Bやパーキングブレーキ操作装置60(図示せず)等の操作手段が設けられている。また、車体前部201及び車体後部202にはそれぞれ前輪235及び後輪236が取り付けられるとともに、車体後部202には前述したエンジン1、油圧ポンプ11、コントローラ4B等の各機器が搭載されている。前輪235及び後輪236は図示しないトルクコンバータ及びトランスミッショを介してエンジン1の出力軸に接続され前述した走行系を構成している。アクセルペダル2Bを踏み込むと、エンジン1の回転数とトルクが上昇し、その動力がトルクコンバータ及びトランスミッションを介して前輪235及び後輪236に伝達され、走行が行われる。車体前部201と車体後部202との間にはステアリングシリンダ203が設けられ、ハンドル208を操作することによりステアリングシリンダ203が作動し、車体後部202に対する車体前部201の向き(車体の進行方向)が変わる。
【0064】
図14は、本実施の形態における車体制御装置41Bの手動再生制御の演算処理のうち、図5に示すフローチャートに対応するものを示すフローチャートである。図5に示すフローチャートとの相違点は、図5に示したステップS105の処理がステップS160の処理に置き換わり、かつステップS170の処理が付加された点である。
【0065】
すなわち、本実施の形態では、ステップS100においてゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)にあると判定された後、位置検出装置61の検出信号に基づいてパーキングブレーキ操作装置60が制動位置に操作されたかどうか(ONかどうか)を判定し(ステップS160)、パーキングブレーキ操作装置60が制動位置に操作された(ONである)と判定されるとステップS110に進み、エンジン1の回転数が500rpm以上であるかどうかを判定する。ステップS160においてパーキングブレーキ操作装置60が制動位置に操作されていない(ONでない)と判定された場合は、スタートに戻ってステップS100,S160の判定処理を繰り返す。
【0066】
また、ステップS125においてゲートロックレバー22が第2位置B(ロック入りの状態)に保持されていない(第1位置Aに操作された)と判定された後、位置検出装置61の検出信号に基づいてパーキングブレーキ操作装置60が制動位置に保持されている(ONのまま)かどうかを判定し(ステップS170)、パーキングブレーキ操作装置60が制動位置に保持されていると判定されるとステップS135に進み、エンジン1の回転数が500rpm以上に保たれているかどうかを判定する。ステップS170においてパーキングブレーキ操作装置60が制動位置に保持されていない(パーキングブレーキ操作装置60による制動が解除された)と判定された場合は、DPF手動再制御停止フラグをONに設定し(ステップS140)、かつDPF手動再生制御可能フラグをOFFに設定する(ステップS145)。
【0067】
このように構成した本実施の形態においては、手動再生制御を開始するときは、事前の準備として、パーキングブレーキ操作装置60を制動位置に操作し、かつゲートロックレバー22を第1位置Aから第2位置Bに上げ操作する。このとき、キースイッチ5はONのままであり、エンジン1は駆動している。また、アクセルペダル2Bは踏み込まれないため、エンジン1の目標回転数は低速アイドル回転数にある。パーキングブレーキ操作装置60が制動位置に操作し、ゲートロックレバー22を第2位置Bに上げ操作すると、車体制御装置41Bは、図14に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御可能フラグをONに設定し、DPF手動再生制御停止フラグをOFFに設定する(ステップS100→S160→S110→S115→S120)。次いで、オペレータは、手動再生制御を開始するため手動再生開始スイッチ39をON位置に操作する。車体制御装置41Bは、図10に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御可能フラグがONであり、手動再生開始スイッチ39がON位置にあると判定し、DPF手動再制御を開始する(ステップS200→S210→S220A)。手動再生制御が開始されると、上記のようにエンジン1の回転数は強制再生制御に適した回転数Naに制御され、エンジン回転数が上昇する。これによりオペレータは手動再生制御に入ったことをエンジン音で確認することができる。また、図7に示す実施の形態で説明したように、電磁切換弁50を開位置から閉位置に切り換え、エンジン1に油圧的な負荷をかけてエンジン1の負荷トルクを増大させる。
【0068】
DPF手動再生制御開始後、所定時間Tc経過すると、車体制御装置41Bは手動再生制御を終了する(ステップS230→S250A)。また、手動再生制御中であっても作業を再開させたい場合は、オペレータは、ゲートロックレバー22を第2位置Bから第1位置Aに下げ操作し、かつパーキングブレーキ操作装置60による制動を解除する。このとき、車体制御装置41Bは、図13に示すフローチャートにおいて、DPF手動再生制御停止フラグをONに設定し、DPF手動再制御可能フラグをOFFに設定する(ステップS125→S170→S140→S145)。また、DPF手動再生制御停止フラグの設定がOFFからONに切り換わると、車体制御装置41Bは、図10に示すフローチャートにおいて、DPF手動再制御停止フラグがONであると判定し、DPF手動再制御を停止する(ステップS240→S250A)。このような手動再生制御の停止時には、エンジン1の目標回転数は低速アイドル回転数に復帰するため、オペレータは手動再生制御が終了したことをエンジン音で確認することができる。
【0069】
以上のように構成した本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(a)〜(c)及び第2の実施の形態の効果に加えて下記の効果が得られる。
【0070】
すなわち、本実施の形態においては、ゲートロックレバー22の操作によりリモコン弁25,26,27(第1操作手段)による制御パイロット圧a〜fの生成を不能としかつパーキングブレーキ操作装置60を制動位置に操作して初めて手動再生制御を開始できるようになる。これにより作業系を構成する図9に示す油圧回路装置及び図示しない走行系が動作できる状態で手動再生制御が開始されることがなくなり、手動再生制御中は、リモコン弁25,26,27やアクセルペダル2Bを操作しても油圧回路装置や走行系は動作しないため、手動再生制御と作業系及び走行系の動作が互いに影響することのなり適切な状態で手動再生制御を行うことができる。
【0071】
以上に本発明の実施の形態を説明したが、本発明はそれらの実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。
【0072】
1.前述したように、上記の実施の形態では、再生制御の終了は、再生制御時間が所定時間Tcに達する角かを判定して行ったが、フィルタ32の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)が所定の値より低くなったかどうかを判断し、フィルタ32の前後差圧が所定の値より低くなったときに、再生制御を終了させてもよい。
【0073】
2.前述したように、上記の実施の形態では、再生制御時間が所定時間Tcに達して(或いはフィルタ32の前後差圧が所定の値より低くなり)DPF手動再生制御を停止させるときに、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻したが、エンジン1を停止させてもよい。更に、適当な選択スイッチを設け、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻すのか、エンジン1を停止させるのかを選択できるようにしてもよい。
【0074】
3.上記実施の形態では、手動再生制御中であっても、ゲートロックレバー22を第1位置A(リモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を可能とする位置)に操作すると手動再生制御を終了させ、直ちに作業を再開できるようにしたが、ゲートロックレバー22の操作に代え、或いはゲートロックレバー22の操作と併用し、エンジンコントロールダイヤルを操作し、エンジン1の目標回転数をローアイドルからハイアイドルに変更した場合に手動再生制御を終了させるようにしてもよい。一般に、エンジン1の目標回転数をローアイドルからハイアイドルに変更する操作は、ゲートロックレバーの解除操作と同様、オペレータが作業を開始しようとする意思表示の1つである。したがって、エンジンコントロールダイヤルの操作で手動再生制御を終了させても、同様の効果が得られる。
【0075】
4.上記実施の形態では、再生のための燃料噴射を排気管31に設けた再生用の燃料噴射装置40によって行ったが、電子ガバナ1aによるエンジン1の筒内(シリンダ内)噴射システムを利用し、多段噴射の主噴射後の膨張行程において燃料を噴射する副噴射(ポスト噴射)を実行することで排気ガス中に再生用の燃料を噴射してもよく、例えばそのような手法は特許文献1(特開2005−282545号公報)や、特開2006−37925号公報、特開2002−276340号公報等に記載されている。
【0076】
5.上記実施の形態では、手動再生制御時は、エンジン1の被駆動体である油圧ポンプ11に負荷をかけてエンジン1に負荷をかけ、排気ガス温度を上昇させたが、それに代え、或いはそれと併用し、排気ガス中に再生用の燃料を噴射する際、排気管に設けた絞り弁で排気管の流路を絞ることにより負荷運転をし、排気ガス温度を再生に適した温度に上昇させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ディーゼルエンジン
1a 電子ガバナ
2 エンジンコントロールダイヤル
2B アクセルペダル
3 回転数検出装置
4,4A,4B 制御装置
5 キースイッチ
11 油圧ポンプ
12 パイロットポンプ
13 油圧モータ
14,15 油圧シリンダ
17〜19 流量制御弁
20 パイロット油圧源
21 パイロットリリーフ弁
22 ゲートロックレバー
23 電磁切換弁
24 パイロット油路
25,26,27 リモコン弁
29 メインリリーフ弁
31 排気管
32 フィルタ
33 酸化触媒
34 DPF装置
35 位置検出装置
36 差圧検出装置
37 排気温度検出装置
38 表示装置(モニタ)
38a 表示画面
39 手動再生開始スイッチ
40 再生用燃料噴射装置(再生装置)
41,41A,41B 車体制御装置
42 モニタ制御装置
43 エンジン制御装置
50 電磁切換弁(再生装置)
60 パーキングブレーキ操作装置
61 位置検出装置
100 下部走行体
101 上部旋回体
102 フロント作業機
104a,104b 走行モータ
105 旋回モータ
106 エンジンルーム
107,107B 運転室
108 運転席
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
114 ブームシリンダ
115 アームシリンダ
116 バケットシリンダ
200 ホイールローダ
201 車体前部
202 車体後部
204 フロント作業装置
206 運転席
207 操作レバー装置
208 ハンドル
211 バケット
212 ブーム
213 バケットシリンダ
214 ブームシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン(1)と、
前記エンジン(1)により駆動されるメインの油圧ポンプ(11)と、
前記油圧ポンプにより複数の油圧アクチュエータを(105,114,115)を介して駆動される作業用の被駆動体(101,102)と、
運転室(107,107B)内に設けられ、前記複数の油圧アクチュエータの作動を指令する第1操作手段(25,26,27)と、
前記運転室内に設けられ、前記第1操作手段の指令を有効とする第1位置(A)と前記第1操作手段の指令を無効とする第2位置(B)とに選択的に操作される第2操作手段(22)とを有する作業車両に備えられ、
前記エンジンの排気系(31)に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタ(32)を含むフィルタ装置(34)と、
前記排気ガスの温度を上昇させ、前記フィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去する再生装置(40,50)とを有する作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、
前記運転室(107,107B)内に設けられ、前記再生装置(40,50)の作動の開始を指示する第3操作手段(39)と、
前記第2操作手段(22)が前記第2位置(B)に操作されかつ前記第3操作手段(39)が操作されたときに、前記再生装置(40,50)の作動を開始させる再生制御装置(41,41A,41B)とを備えることを特徴とする作業車両の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、
前記再生制御装置(41,41A,41B)は、前記再生装置(40,50)
の作動開始後、前記第2操作手段(22)が前記第1位置(A)に操作される
と前記再生装置(40,50)の作動を停止させることを特徴とする作業車輌
の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、
前記エンジン(1)の目標回転数を指示する第4操作手段(2)を更に備え、前記再生制御装置(41,41A)は、前記第2操作手段(22)が前記第2位置(B)に操作され、前記第4操作手段(2)がローアイドルの目標回転数を指示するよう操作されかつ前記第3操作手段(39)が操作されたとき、
前記再生装置(40,50)の作動を開始させ、かつ前記エンジン(1)の回転数を所定の回転数に制御することを特徴とする作業車両の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、
前記エンジン(1)の回転数とトルクを制御し走行速度を制御するための指令信号を出力する第5操作手段(2B)と、
前記エンジン(1)の出力軸に接続された走行系(235,236)と、
前記作業車両の駐車時に操作され前記走行系(235,236)を制動する駐車用の第6操作手段(60)を更に備え、
前記再生制御装置(41B)は、前記第2操作手段(22)が前記第2位置(B)に操作され、前記第6操作手段(60)が操作されかつ前記第3操作手段(39)が操作されたとき、前記再生装置(40,50)の作動を開始させることを特徴とする建設機械の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の作業車両の排気ガス浄化システムにおいて、
前記作業車両は、前記油圧ポンプ(11)と前記油圧アクチュエータ(13,14,15)とを有する油圧回路装置を更に備え、
前記フィルタ装置(34)は前記フィルタ(32)の上流側に配置された酸化触媒(33)を有し、
前記再生装置(40,50)は、前記排気ガス中に再生用の燃料を噴射する燃料供給手段(40)と、前記油圧回路装置に設けられ、前記エンジンに油圧的な負荷をかける油圧負荷生成手段(50)とを有し、
前記再生制御装置(41A,41B)は、前記第2操作手段(22)が前記第2位置(B)に操作されかつ前記第3操作手段(39)が操作されたときに、前記燃料供給手段(40)及び油圧負荷生成手段(50)を作動させ、かつ前記エンジン(1)の回転数を所定の回転数に制御することを特徴とする作業車両の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−255443(P2012−255443A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169004(P2012−169004)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2009−540007(P2009−540007)の分割
【原出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】