説明

作業車両の盗難防止装置

【課題】盗難防止効果が高い作業車両の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】盗難防止モードの設定を行う設定手段91と、アウトリガの作動を検知する作動検知手段85、86と、盗難防止モードが設定されており、作動検知手段85、86がアウトリガ24、25の作動を検知した場合に、作業装置用切換制御弁51〜54の少なくともいずれか1つを中立位置III以外の位置に切り換える制御手段90とを備える。アウトリガ用切換制御弁55、56への圧油の供給が遮断され、アウトリガ用油圧アクチュエータ38、39を動作させることができない。アウトリガ24、25を接地状態で維持でき、作業車両1が走行不能な状態で維持されるため、作業車両1を走行させて盗難されることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の盗難防止装置に関する。さらに詳しくは、作業車両を走行不能な状態で維持することにより盗難を防止する作業車両の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クレーン車、高所作業車等の作業車両の盗難が増加している。このため、盗難防止対策として、作業車両に盗難防止装置が設けられるようになってきている。
【0003】
作業車両の盗難防止装置の一例として、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の盗難防止装置は、油圧ポンプから吐出される圧油によって作動するアウトリガを含む作業装置の油圧アクチュエータと、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油を制御する切換制御弁とを備えた作業車両において、作業装置の油圧回路に、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油をアンロード可能なアンロード弁と、アンロード弁をアンロード作動させる電磁弁とを設けるとともに、電磁弁を制御する電気回路に盗難防止用の回路開閉手段を設け、作業車両の保管時には、エンジンが始動しても、盗難防止用の回路開閉手段がアンロード弁をアンロード状態としアウトリガの接地状態が維持されるようにしたものである。
【0004】
上記盗難防止装置が設けられた作業車両を保管しておくときには、アウトリガを接地状態にして作業車両を走行不能な状態とし、盗難防止用の回路開閉手段で電磁弁を操作してアンロード弁をアンロード作動させる。
そのため、もし、作業車両のエンジンキースイッチを破壊したり、不正な合鍵等を用いてエンジンを始動させたりして作業車両を走行させようとしても、アウトリガの油圧回路がアンロード弁でアンロードされているので、アウトリガの油圧アクチュエータは作動不能であり、作業車両が走行不能な状態で維持される。したがって、作業車両を走行させて盗難されることを防止できる。
【0005】
しかるに、特許文献1の盗難防止装置では、アンロード弁が機能しないように工作され、アウトリガの油圧アクチュエータに圧油が供給される状態となると、油圧アクチュエータを作動させてアウトリガを格納して作業車両を走行可能な状態にできる。そのため、盗難防止の観点からは不十分なものであった。特に、積載形トラッククレーンでは油圧回路が手に届く位置にあり、知識を有する者であればアンロード弁を工作することができるので、盗難防止の観点から問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3946550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、盗難防止効果が高い作業車両の盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の作業車両の盗難防止装置は、アウトリガと、作業装置と、前記アウトリガを動作させるアウトリガ用油圧アクチュエータと、前記作業装置を動作させる作業装置用油圧アクチュエータと、前記アウトリガ用油圧アクチュエータおよび前記作業装置用油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧源と、前記油圧源から前記アウトリガ用油圧アクチュエータに供給される圧油を制御するアウトリガ用切換制御弁と、前記油圧源から前記作業装置用油圧アクチュエータに供給される圧油を制御する切換制御弁であって、該油圧源と前記アウトリガ用切換制御弁とを接続する油路に介在されており、中立位置の場合に該油圧源から供給される圧油を該アウトリガ用切換制御弁に供給し、中立位置以外の位置の場合に該油圧源から該アウトリガ用切換制御弁への圧油の供給を遮断する作業装置用切換制御弁と、を備える作業車両に設けられる盗難防止装置であって盗難防止モードの設定を行う設定手段と、前記アウトリガの作動を検知する作動検知手段と、前記盗難防止モードが設定されており、前記作動検知手段が前記アウトリガの作動を検知した場合に、前記作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換える制御手段と、を備えることを特徴とする。
第2発明の作業車両の盗難防止装置は、第1発明において、前記作動検知手段は、前記アウトリガ用切換制御弁の切り換えを検知するものであり、前記制御手段は、前記盗難防止モードが設定されており、前記作動検知手段が前記アウトリガ用切換制御弁の切り換えを検知した場合に、前記作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換えるものであることを特徴とする。
第3発明の作業車両の盗難防止装置は、第1または第2発明において、前記設定手段は、前記アウトリガが接地状態の場合にのみ、前記盗難防止モードの設定を行うことができるものであることを特徴とする。
第4発明の作業車両は、第1、第2または第3発明に記載の作業車両の盗難防止装置が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、作動検知手段がアウトリガの作動を検知した場合に、作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換えるので、アウトリガ用切換制御弁への圧油の供給が遮断され、アウトリガ用油圧アクチュエータを動作させることができない。そのため、アウトリガを接地状態で維持でき、作業車両が走行不能な状態で維持されるため、作業車両を走行させて盗難されることを防止できる。
第2発明によれば、アウトリガ用切換制御弁の切り換えを検知した場合に、作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換えるので、アウトリガが動き出す前にアウトリガ用切換制御弁への圧油の供給を遮断できる。そのため、より確実に作業車両を走行不能な状態で維持できる。
第3発明によれば、アウトリガが接地状態の場合にのみ、盗難防止モードの設定を行うことができるので、アウトリガが格納状態の場合に誤って盗難防止モードの設定を行うことを防止でき、確実に盗難を防止できる。
第4発明によれば、アウトリガを接地状態で維持でき、作業車両が走行不能な状態で維持されるため、作業車両を走行させて盗難されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る盗難防止装置を備えた積載形トラッククレーンの油圧回路図である。
【図2】同油圧回路の切換制御弁部分の拡大図である。
【図3】図1におけるA部分の拡大図である。
【図4】図1におけるB部分の拡大図である。
【図5】盗難防止モードの設定処理のフローチャートである。
【図6】盗難防止処理のフローチャートである。
【図7】積載形トラッククレーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係る作業車両の盗難防止装置は、クレーン車、高所作業車等の作業車両に設けられる。クレーン車としては、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーン等が挙げられる。
以下では、積載形トラッククレーンを例に説明するが、他の作業車両においても本発明に係る作業車両の盗難防止装置を設けることができる。
【0012】
まず、積載形トラッククレーンの構成について説明する。
図7に示すように、積載形トラッククレーン1は、汎用トラック10の運転室11と荷台12との間の車両フレーム13に小型クレーン20が搭載されたものである。なお、他の形態として荷台12の後方の車両フレーム13に小型クレーン20が搭載されたリア架装のものや、荷台12の内側に小型クレーン20が搭載されたものもある。
【0013】
小型クレーン20は、車両フレーム13上に固定されたベース21と、ベース21に対して旋回可能に設けられたポスト22と、ポスト22の上端部に起伏可能に設けられたブーム23と、ベース21の左右両側に設けられたアウトリガ24、25とを備えている。ポスト22にはウインチが内蔵されており、このウインチからワイヤロープをブーム23の先端部に導いて、ブーム23先端部の滑車を介してフック26に掛け回すことにより、フック26をブーム23の先端部から吊り下げている。また、これらを操作するためのレバー群27がベース21の左右両側に設けられている。
【0014】
図1に示すように、積載形トラッククレーン1の油圧回路は、主に、油圧バルブユニット31と、油圧バルブユニット31にタンク32内の作動油を供給する油圧ポンプ33と、油圧バルブユニット31に接続された複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ33と油圧バルブユニット31とを接続する主油路41と、油圧バルブユニット31とタンク32とを接続する戻油路42とから構成されている。
【0015】
油圧バルブユニット31に接続された油圧アクチュエータは、ブーム伸縮用油圧シリンダ34、ウインチ用油圧モータ35、ブーム起伏用油圧シリンダ36、旋回用油圧モータ37、およびアウトリガ用油圧シリンダ38、39である。ブーム伸縮用油圧シリンダ34の動作によりブーム23が伸縮され、ウインチ用油圧モータ35の動作によりフック26が巻上巻下作動され、ブーム起伏用油圧シリンダ36の動作によりブーム23が起伏され、旋回用油圧モータ37の動作によりポスト22が旋回され、アウトリガ用油圧シリンダ38、39の動作によりアウトリガ24、25が伸縮する。なお、ポスト22を旋回させるアクチュエータとしては油圧シリンダが用いられる場合もある。
【0016】
なお、ブーム23およびフック26が、特許請求の範囲に記載の作業装置に相当し、ブーム伸縮用油圧シリンダ34、ウインチ用油圧モータ35、ブーム起伏用油圧シリンダ36、および旋回用油圧モータ37が、特許請求の範囲に記載の作業装置用油圧アクチュエータに相当し、アウトリガ用油圧シリンダ38、39が、特許請求の範囲に記載のアウトリガ用油圧アクチュエータに相当し、油圧ポンプ33が特許請求の範囲に記載の油圧源に相当する。また、以下では、油圧アクチュエータ34〜37を作業装置用油圧アクチュエータ34〜37と称する。
【0017】
油圧バルブユニット31には、伸縮用切換制御弁51、ウインチ用切換制御弁52、起伏用切換制御弁53、旋回用切換制御弁54、およびアウトリガ用切換制御弁55、56が設けられている。伸縮用切換制御弁51にブーム伸縮用油圧シリンダ34が、ウインチ用切換制御弁52にウインチ用油圧モータ35が、起伏用切換制御弁53にブーム起伏用油圧シリンダ36が、旋回用切換制御弁54に旋回用油圧モータ37が、アウトリガ用切換制御弁55、56にアウトリガ用油圧シリンダ38、39が、それぞれ接続されており、油圧ポンプ33から供給される圧油を制御して、これら油圧アクチュエータ34〜39の動作を切り換え制御できるようになっている。
なお、伸縮用切換制御弁51、ウインチ用切換制御弁52、起伏用切換制御弁53、および旋回用切換制御弁54が、特許請求の範囲に記載の作業装置用切換制御弁に相当する。以下では、切換制御弁51〜54を作業装置用切換制御弁51〜54と称する。
【0018】
図2に示すように、伸縮用切換制御弁51は、3位置6ポートの切換制御弁である。伸縮用切換制御弁51は6つのポートP1〜P6を備えており、ポートP1は主油路41の入側に、ポートP2は主油路41の出側に、ポートP3はブーム伸縮用油圧シリンダ34に接続する一方の油路に、ポートP4は戻油路42に、ポートP5はブーム伸縮用油圧シリンダ34に接続する他方の油路に、ポートP6は後述の第1副油路43に、それぞれ接続されている。そして、ブーム伸縮用油圧シリンダ34へ圧油を供給し、主油路41を遮断する右位置Iおよび左位置IIと、ブーム伸縮用油圧シリンダ34への圧油の供給を遮断し、主油路41を連通する中立位置IIIとで切換可能となっている。
【0019】
他の切換制御弁52〜56も、伸縮用切換制御弁51と同様の構成であり、油圧アクチュエータ35〜39へ圧油を供給し、主油路41を遮断する右位置Iおよび左位置IIと、油圧アクチュエータ35〜39への圧油の供給を遮断し、主油路41を連通する中立位置IIIとで切換可能となっている。なお、アウトリガ用切換制御弁55、56のポートP6は、第1副油路43に代えて、後述の第2副油路44に接続されている。
【0020】
図1に示すように、切換制御弁51〜56は、油圧ポンプ33から圧油が供給される主油路41に直列に接続されている。ここで、主油路41の油圧ポンプ33側を上流とすると、主油路41の上流に作業装置用切換制御弁51〜54が接続されており、下流にアウトリガ用切換制御弁55、56が接続されている。換言すれば、作業装置用切換制御弁51〜54は、油圧ポンプ33とアウトリガ用切換制御弁55、56とを接続する主油路41に介在されている。
そして、切換制御弁51〜56は、中立位置IIIの場合のみ主油路41を連通させ下流に作動油を供給し、右位置Iおよび左位置IIの場合には主油路41を遮断して下流に作動油を供給しないようになっている。
【0021】
また、作業装置用切換制御弁51〜54は、その上流で主油路41から分岐した第1副油路43に並列に接続されており、アウトリガ用切換制御弁55、56は、旋回用切換制御弁54とアウトリガ用切換制御弁55との間で主油路41から分岐した第2副油路44に並列に接続されている。
【0022】
そのため、作業装置用切換制御弁51〜54のいずれもが中立位置IIIである場合には、主油路41を通じてアウトリガ用切換制御弁55、56に圧油が供給され、アウトリガ用油圧シリンダ38、39を動作させることができるが、作業装置用切換制御弁51〜54の内の1つ以上が右位置Iまた左位置IIに切り替えられた場合には、主油路41が遮断されるので、アウトリガ用切換制御弁55、56には第2副油路44から圧油が供給されなくなり、アウトリガ用油圧シリンダ38、39を動作させることができない。すなわち、図1の油圧回路は、作業装置用油圧アクチュエータ34〜37とアウトリガ用油圧シリンダ38、39とを選択的に動作させる油圧回路となっており、作業装置用油圧アクチュエータ34〜37とアウトリガ用油圧シリンダ38、39とを同時に操作することができないものとなっている。
【0023】
なお、作業装置用切換制御弁51〜54は第1副油路43に並列に接続されているため、作業装置用切換制御弁51〜54の内の一つが右位置Iまたは左位置IIに切り換えられた場合であっても、他の作業装置用切換制御弁にも第1副油路43を介して圧油が供給される。そのため、複数の作業装置用油圧アクチュエータ34〜37を同時に動作させることができる。
また、アウトリガ用切換制御弁55、56は第2副油路44に並列に接続されているため、アウトリガ用切換制御弁55、56の一方が右位置Iまたは左位置IIに切り換えられた場合であっても、他方のアウトリガ用切換制御弁にも第2副油路44を介して圧油が供給される。そのため、左右両方のアウトリガ用切換制御弁55、56を同時に動作させることができる。
【0024】
切換制御弁51〜56には、それぞれレバーが取り付けられており、そのレバーを手動操作することにより、右位置I、左位置II、中立位置IIIのいずれかに切り換えることができるようになっている。切換制御弁51〜56に取り付けられたレバーは、レバー群27としてベース21の左右両側に設けられている。そのため、そのレバー群27を作業者が操作することにより、ブーム23やフック26,アウトリガ24、25等を動作させることができる。
【0025】
また、図3に示すように、作業装置用切換制御弁51〜54には、それぞれパイロットシリンダ61〜64が取り付けられており、そのパイロットシリンダ61〜64の動作によっても、右位置I、左位置II、中立位置IIIのいずれかに切り換えることができるようになっている。
【0026】
パイロットシリンダ61は、複動形シリンダであり、右側油室への圧油の給排を行なう電磁弁71Rと、左側油室への圧油の給排を行なう電磁弁71Lがそれぞれ付設されている。そして、電磁弁71L、71Rは、制御手段90に接続されており、制御手段90からの制御信号に基づいて動作することで、パイロットシリンダ61を駆動し、伸縮用切換制御弁51を切り換えるようになっている。より詳細には、パイロットシリンダ61の左側油室に圧油を供給し、右側油室の圧油を排出することで、ロッドを右側に動かし、そのロッドに接続された伸縮用切換制御弁51のスプールを右側に動かすことで、伸縮用切換制御弁51を左位置IIに切り換える。また、パイロットシリンダ61の右側油室に圧油を供給し、左側油室の圧油を排出することで、ロッドを左側に動かし、伸縮用切換制御弁51のスプールを左側に動かすことで、伸縮用切換制御弁51を右位置Iに切り換える。さらに、パイロットシリンダ61の左側油室および右側油室の両方に圧油を供給、あるいは圧油を排出することで、ロッドを中間位置にし、伸縮用切換制御弁51のスプールを中間位置とすることで、伸縮用切換制御弁51を中立位置IIIに切り換える。
他のパイロットシリンダ62〜64も、パイロットシリンダ61と同様の構成であり、右側油室への圧油の給排を行なう電磁弁72R〜74Rと、左側油室への圧油の給排を行なう電磁弁72L〜74Lがそれぞれ付設されている。そして、電磁弁72L〜74L、72R〜74Rは、制御手段90に接続されており、制御手段90からの制御信号に基づいて動作することで、パイロットシリンダ62〜64を駆動し、作業装置用切換制御弁52〜54を切り換えるようになっている。
【0027】
また、作業装置用切換制御弁51〜54に取り付けられたパイロットシリンダ61〜64には、位置検出センサ81〜84が付設されている。そのため、位置検出センサ81〜84により作業装置用切換制御弁51〜54のスプールの位置を検出でき、右位置I、左位置II、および中立位置IIIのいずれの状態か、さらには開度を判断できる。
一方、図4に示すように、アウトリガ用切換制御弁55、56のスプールには、切換検出センサ85、86が付設されている。そのため、切換検出センサ85、86によりアウトリガ用切換制御弁55、56が中立位置IIIであるか否かが検出できる。
【0028】
位置検出センサ81〜84および切換検出センサ85、86は、それぞれ制御手段90に接続されており、その検出結果が制御手段90に入力されるようになっている。
前述のごとく、作業装置用切換制御弁51〜54は制御手段90からの制御信号に基づいて切り換えられる。ここで、位置検出センサ81〜84は作業装置用切換制御弁51〜54の位置および/または開度を制御手段90にフィードバックして、作業装置用切換制御弁51〜54の切り換えを制御するために用いられる。
なお、切換検出センサ85、86が、特許請求の範囲に記載の作動検知手段に相当する。
【0029】
図1に示すように、アウトリガ用油圧シリンダ38、39のヘッド側油室に接続された油路には、圧力センサ87、88が設けられている。この圧力センサ87、88は制御手段90に接続されており、その検出結果が制御手段90に入力されるようになっている。圧力センサ87、88は、油圧が高いか低いかにより、アウトリガ24、25が接地状態であるか否かが検出できる。より詳細には、アウトリガ24、25の非接地状態では、アウトリガ用油圧シリンダ38、39のヘッド側油室の油圧が低くなるため、その油圧が所定の閾値よりも低い場合に非接地状態を検出する。そして、非接地状態以外の場合を接地状態と判断する。
【0030】
主油路41と戻油路42との間には、リリーフ弁45が設けられており、主油路41の作動油の油圧が過大にならないように規制している。また、主油路41には背圧弁46が介在されている。
【0031】
制御手段90は、公知のコンピュータ等で構成されており、後述の処理を行い盗難防止機能を実現するためのものである。
また、制御手段90には、設定手段91が接続されている。設定手段91は、盗難防止モードの設定、解除を行うものであって、スイッチ等から構成されたものである。設定手段91は、例えば、前述のレバー群27の近くに取り付けられ、作業者が操作可能となっている。
【0032】
また、小型クレーン20には、格納状態検知センサ92が取り付けられており、その格納状態検知センサ92は制御手段90に接続されている。格納状態検知センサ92は、例えば、ブーム23が汎用トラック10の前方または後方を向いた状態まで旋回したことを検知するセンサ、ブーム23の最縮小状態を検知するセンサ、ブーム23の最倒伏状態を検知するセンサ、フック26がブーム23の先端部まで巻き上げた状態を検知するセンサ等である。そのため、格納状態検知センサ92によりブーム23およびフック26の格納状態を検知することができる。
【0033】
つぎに、盗難防止を行うための処理について説明する。
まず、図5に基づき、盗難防止モードの設定処理について説明する。
作業者は、ブーム23およびフック26を格納状態にし、アウトリガ24、25を接地状態にする。ここでブーム23およびフック26の格納状態とは、ブーム23が汎用トラック10の前方または後方を向いた状態まで旋回させ、ブーム23を最縮小し、最倒伏状態とし、フック26をブーム23の先端部まで巻き上げた状態である。また、アウトリガ24、25の接地状態とは、アウトリガ24、25が伸長し、アウトリガ24、25のフロートが地面に接した状態、またはアウトリガ24、25により積載形トラッククレーン1の車体が浮上した状態である。なお、アウトリガ24、25は、積載形トラッククレーン1の車幅方向に張り出した状態で接地状態にしてもよいし、格納した状態で接地状態にしてもよい。
【0034】
つぎに、作業者は設定手段91のスイッチ等を操作し、盗難防止モードの設定を行う(ステップS11)。ここで、盗難防止モードの解除を行うために必要な暗証番号等の設定や確認も行われることが好ましい。
制御手段90は、設定手段91からの設定信号を受け付け、盗難防止モードの設定処理を開始する(ステップS12)。
【0035】
つぎに、制御手段90は、格納状態検知センサ92の検知結果を取得し(ステップS13)、ブーム23およびフック26が格納状態であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0036】
ブーム23およびフック26が格納状態である場合には、制御手段90は、圧力センサ87、88の検出結果を取得し(ステップS15)、アウトリガ24、25が接地状態であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0037】
アウトリガ24、25が接地状態である場合には、制御手段90は、後述の盗難防止処理を開始する(ステップS17)。そして、盗難防止モードが設定された旨のメッセージを音声で発するか、設定手段91に設けられたディスプレイに表示する等して(ステップS18)、盗難防止モードの設定処理を終了する。
【0038】
ステップS14でブーム23およびフック26が格納状態でないと判断された場合、または、ステップS16でアウトリガ24、25が接地状態でないと判断された場合には、盗難防止モードが設定不可である旨のメッセージとともに、ブーム23およびフック26を格納状態とし、アウトリガ24、25を接地状態にすべき旨のメッセージを音声等で発する(ステップS19)。そして、制御手段90は、設定手段91からの設定信号を受け付ける状態に戻る(ステップS12)。
【0039】
つぎに、図6に基づき、盗難防止処理について説明する。
盗難防止処理が開始されると、制御手段90は、設定手段91からの盗難防止モードの解除信号を受け付ける状態となり(ステップS22)、盗難防止モードが設定されているか、解除されているかを判断する(ステップS23)。
【0040】
盗難防止モードが設定されている場合には、制御手段90は、切換検出センサ85、86の検出結果を取得して(ステップS24)、アウトリガ用切換制御弁55、56が切り換えられた否かを判断する(ステップS25)。
ここで、積載形トラッククレーン1を盗難しようとする盗難者が、アウトリガ24、25を格納しようとしてアウトリガ用切換制御弁55、56のレバーを操作すると、アウトリガ用切換制御弁55、56が中立位置IIIから外れ、それを切換検出センサ85、86により検出することができる。そのため、盗難行為を検知することができる。
【0041】
アウトリガ用切換制御弁55、56の切り換えを検知した場合、制御手段90は、電磁弁71L〜74L、71R〜74Rに制御信号を出力し、作業装置用切換制御弁51〜54を中立位置III以外の右位置Iまたは左位置IIに切り換える(ステップS26)。そうすると、作業装置用切換制御弁51〜54により主油路41が遮断され、アウトリガ用切換制御弁55、56に圧油が供給されなくなり、アウトリガ用油圧シリンダ38、39が動作しなくなる。
そのため、アウトリガ24、25を接地状態で維持でき、積載形トラッククレーン1が走行不能な状態で維持されるため、積載形トラッククレーン1を走行させて盗難されることを防止できる。
【0042】
ここで、中立位置IIIから切り換える作業装置用切換制御弁51〜54は、いずれか1つでもよいし、複数でもよい。いずれか1つでも中立位置IIIから切り換えれば、主油路41を遮断して、アウトリガ用切換制御弁55、56に圧油を供給させなくすることができるからである。
【0043】
また、作業装置用切換制御弁51〜54を切り換える位置は、ブーム23およびフック26を格納状態に動作させる位置であることが好ましい。例えば、伸縮用切換制御弁51をブーム23が縮小する位置に切り換え、起伏用切換制御弁53をブーム23が倒伏状態となる位置に切り換えればよい。ブーム23およびフック26は、すでに格納状態であるため、外観上はブーム23およびフック26が動作せず、安全である。
【0044】
また、作業装置用切換制御弁51〜54として、中立位置IIIから少しでも動かせば主油路41を遮断できる構造のものを採用すれば、制御手段90の制御信号により即時にアウトリガ用油圧シリンダ38、39が動作しなくなり、確実に積載形トラッククレーン1を走行不能な状態で維持できるため好ましい。
【0045】
また、アウトリガ用切換制御弁55、56として不感帯域を持つものを使用し、この不感帯域内で中立位置IIIから切り換わったことを検知できるような切換検出センサ85、86を採用すれば、制御手段90の制御信号により即時に作業装置用切換制御弁51〜54を中立位置IIIから右位置Iまたは左位置IIに切り換えることができ、アウトリガ用油圧シリンダ38、39が全く動作せず、確実に積載形トラッククレーン1を走行不能な状態で維持できるため好ましい。
【0046】
つぎに、制御手段90は、盗難行為である旨の警報を音声等で発し(ステップS27)、再び設定手段91からの解除信号を受け付ける状態に戻る(ステップS22)。
【0047】
ステップS25でアウトリガ用切換制御弁55、56の切り換えを検知しなかった場合にも、設定手段91からの解除信号を受け付ける状態に戻る(ステップS22)。そして、制御手段90は、盗難防止モードが解除されるか、アウトリガ用切換制御弁55、56の切り換えを検知するまで、ステップS22からS25を繰り返す。
【0048】
一方、作業者が、設定手段91のスイッチ等を操作し、盗難防止モードの解除を行う(ステップS21)と、制御手段90は、設定手段91からの解除信号を受け付ける(ステップS22)。ここで、盗難防止モードの設定時に暗証番号等の設定が行われた場合には、設定手段91は、入力された暗証番号等が登録されたものと一致するか否か判断し、一致する場合にのみ制御手段90に解除信号を送信する。
【0049】
つぎに、制御手段90は、盗難防止モードが設定されているか、解除されているかを判断し(ステップS23)、盗難防止モードが解除されている場合には、盗難防止モードが解除された旨のメッセージを音声等で発して(ステップS28)、盗難防止処理を終了する。
【0050】
(他の実施形態)
上記実施形態では、アウトリガ用切換制御弁55、56に切換検出センサ85、86を取り付けたが、これに代えてアウトリガ24、25の作動を検知する他の作動検知手段を設けても良い。例えば、アウトリガ用切換制御弁55、56のレバーに、そのレバーの操作を検知するセンサを取り付けてもよいし、アウトリガ24、25にその収縮を検知するセンサを取り付けてもよい。ただし、上記実施形態のように、アウトリガ用切換制御弁55、56の切り換えを直接検知できるように構成すれば、アウトリガ24、25が動き出す前にアウトリガ用切換制御弁55、56への圧油の供給を遮断でき、より確実に積載形トラッククレーン1を走行不能な状態で維持できるので好ましい。
【0051】
また、アウトリガ用切換制御弁55、56をレバー以外の手段で操作する場合、例えば、制御手段90と無線通信可能なコントローラで操作する場合には、制御手段90からの制御信号によりアウトリガ用切換制御弁55、56を切り換える必要があるため、アウトリガ用切換制御弁55、56にもパイロットシリンダおよび電磁弁を設ける必要がある。
ただし、パイロットシリンダおよび電磁弁を設けなければ、その分、積載形トラッククレーン1を安価にすることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、盗難防止モードの設定処理におけるステップS15、S16により、アウトリガ24、25が接地状態の場合にのみ、盗難防止モードの設定を行うことができるようにしたが、この処理を設けなくてもよい。このようにすれば、圧力センサ87、88を設ける必要がないため、積載形トラッククレーン1を安価にできる。
ただし、この場合には、作業者がアウトリガ24、25を設置状態にした後に盗難防止モードの設定を行うように心がける必要がある。そのため、アウトリガ24、25が接地状態の場合にのみ、盗難防止モードの設定を行うことができるようにした方が、アウトリガ24、25が格納状態の場合に誤って盗難防止モードの設定を行うことを防止でき、確実に盗難を防止できるので好ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、盗難防止モードの設定処理におけるステップS13、S14により、ブーム23およびフック26が格納状態の場合にのみ、盗難防止モードの設定を行うことができるようにしたが、この処理を設けなくてもよい。
例えば、ブーム23を最伸長した状態で盗難防止モードに設定してもよいし、ブーム23を最起立させた状態で盗難防止モードに設定してもよい。この場合、盗難防止処理のステップS26では、伸縮用切換制御弁51をブーム23が伸長する位置に切り換えるか、起伏用切換制御弁53をブーム23が起立状態となる位置に切り換えればよい。そうすれば、外観上はブーム23が動作しない。
【符号の説明】
【0054】
1 積載形トラッククレーン
20 小型クレーン
21 ベース
22 ポスト
23 ブーム
24、25 アウトリガ
26 フック
31 油圧バルブユニット
32 タンク
33 油圧ポンプ
34〜37 作業装置用油圧アクチュエータ
38、39 アウトリガ用油圧シリンダ
51〜54 作業装置用切換制御弁
55、56 アウトリガ用切換制御弁
81〜84 位置検出センサ
85、86 切換検出センサ
87、88 圧力センサ
90 制御手段
91 設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトリガと、
作業装置と、
前記アウトリガを動作させるアウトリガ用油圧アクチュエータと、
前記作業装置を動作させる作業装置用油圧アクチュエータと、
前記アウトリガ用油圧アクチュエータおよび前記作業装置用油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧源と、
前記油圧源から前記アウトリガ用油圧アクチュエータに供給される圧油を制御するアウトリガ用切換制御弁と、
前記油圧源から前記作業装置用油圧アクチュエータに供給される圧油を制御する切換制御弁であって、該油圧源と前記アウトリガ用切換制御弁とを接続する油路に介在されており、中立位置の場合に該油圧源から供給される圧油を該アウトリガ用切換制御弁に供給し、中立位置以外の位置の場合に該油圧源から該アウトリガ用切換制御弁への圧油の供給を遮断する作業装置用切換制御弁と、を備える作業車両に設けられる盗難防止装置であって
盗難防止モードの設定を行う設定手段と、
前記アウトリガの作動を検知する作動検知手段と、
前記盗難防止モードが設定されており、前記作動検知手段が前記アウトリガの作動を検知した場合に、前記作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換える制御手段と、を備える
ことを特徴とする作業車両の盗難防止装置。
【請求項2】
前記作動検知手段は、前記アウトリガ用切換制御弁の切り換えを検知するものであり、
前記制御手段は、前記盗難防止モードが設定されており、前記作動検知手段が前記アウトリガ用切換制御弁の切り換えを検知した場合に、前記作業装置用切換制御弁を中立位置以外の位置に切り換えるものである
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両の盗難防止装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記アウトリガが接地状態の場合にのみ、前記盗難防止モードの設定を行うことができるものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両の盗難防止装置。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の作業車両の盗難防止装置が設けられた
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−71494(P2013−71494A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210272(P2011−210272)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】