説明

作業車両用キャブおよび作業車両

【課題】キャブフロアの後方側底面におけるシール機能を向上すると共にシール長をも短くすることが可能となる作業車両用キャブおよび作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両用キャブ10は、屋根部分12と、キャブフロア15と、屋根部分12とキャブフロア15とを接続する複数のピラー11a1,11a2,11b,11c1,11c2と、前面10Aと、後面10Bと、右側面10Cと、左側面10Dとを備える。キャブフロア15の底面は、前方側底面部15aと後方側底面部15bとを含む。前方側底面部は、全体形状を平坦な平面とする。後方側底面部15bは、左側端部領域15b1と右側端部領域15b2とを含む。そして、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2の全体形状を平坦な湾曲面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両用キャブおよび作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両として、たとえば掘削作業用の作業装置を装備した油圧ショベルなどが知られている。このような油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、その下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、その上部旋回体の前側に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また油圧ショベルには、たとえば後方小旋回機と呼ばれる小型の油圧ショベル(以下、小旋回式油圧ショベルという)がある。この小旋回式油圧ショベルは、上部旋回体を上側から見てほぼ円形状に形成することにより、その上部旋回体が旋回したときに下部走行体のほぼ車幅内に収まるように構成されている。
【0004】
この小旋回式油圧ショベルの上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームを有し、その旋回フレーム上にはオペレータが乗り込むキャブが搭載されている。このようなキャブの構成は、たとえば特開2008−303566号公報(特許文献1参照)に記載されている。
【0005】
この特許文献1に記載されたキャブは、屋根(天井部)を下面側から支持する形で、キャブの前方に配置された左右一対のAピラーと、中央部に配置された左右一対のBピラーとを有している。キャブ屋根の後端部はBピラーを支点とする片持ち梁の如き状態(以下、片持ち状態という)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−303566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のキャブでは、前面側にAピラー、中央部にBピラーを配置している。キャブ屋根の後端部の張り出しを小さくするため、AピラーとBピラー間の間隔を大きくすると、キャブ屋根の中央部の荷重を支える上で不利になる。従って、上記のようにBピラーの位置をキャブ後端部から中央部に移動させている。また、キャブ本体の剛性確保のため、キャブを旋回フレーム上に搭載するためのマウント部をBピラーの近傍に配置している。
【0008】
上記マウント部には、ボルト等の締結部材が装着されるが、この締結部材を装着するためにキャブフロアに水平面を確保する必要がある。また、キャブフロアはBピラーを支持するので、Bピラーを支持するための水平面をキャブフロアに確保する必要が生じる。さらに、キャブをカウンタウェイトに接続するためのブラケットが、キャブフロア下に配置され、該ブラケットを配設するための水平面をも確保する必要がある。これらの水平面は、Bピラー近傍あるいはBピラーよりも後面側に設けられるので、キャブの前後方向の中央部から後面側に位置するキャブフロアの後面側底面の構造が複雑になる。
【0009】
キャブフロアの後面側底面にはシール材が配設されるが、上記のようにキャブフロアの後面側底面の構造が複雑であると、シール長が長くなることに加え、シール機能も低下し易くなる。
【0010】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、キャブフロアの後面側底面におけるシール機能を向上すると共にシール長をも短くすることが可能となる作業車両用キャブおよび作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る作業車両用キャブは、屋根部分と、キャブフロアと、屋根部分とキャブフロアとを接続する複数のピラーと、前面と、後面と、右側面と、左側面とを備える。上記キャブフロアの底面は、キャブの前面側に位置する前方側底面部と、キャブの後面側に位置する後方側底面部とを含む。前方側底面部の全体形状を平坦な平面とし、後方側底面部は、キャブの左側面側に位置する左側端部領域と、キャブの右側面側に位置する右側端部領域とを含む。そして、左側端部領域および右側端部領域の全体形状を平坦な湾曲面とする。ここで、「平坦な湾曲面」とは、本願明細書では、全体として概ね湾曲した形状を意味し、一部に直線状の部分等の湾曲していない部分や、若干の段差部や凹凸部等を含むものであってもよいものと定義する。
【0012】
上記の左側端部領域や右側端部領域にはシール部材が設置されるが、上記のように左側端部領域および右側端部領域の全体形状を湾曲状とすることにより、シール部材の設置領域の形状を単純な形状とすることができる。それにより、上記各領域が複雑な形状を有する場合と比較して、シール部材によるシール機能を向上することができ、かつシール長をも短くすることが可能となる。
【0013】
上記左側端部領域および右側端部領域は、該左側端部領域および右側端部領域における後端部から、左側端部領域および右側端部領域における前端部に向かってキャブの前後方向に湾曲する。左側端部領域および右側端部領域をこのような形状とすることにより、上述のようにシール部材によるシール機能を向上することができ、かつシール長をも短くすることが可能となる。
【0014】
上記左側端部領域および右側端部領域を円弧状部分で構成してもよい。それにより、これらの領域上にシール部材を容易に設置することができる。また、左側端部領域および右側端部領域は、円弧状部分と、直線状に延びる直線状部分とで構成してもよい。該直線状部分は、キャブフロアの後方側底面部における、キャブの前面側に配置されてもよく、キャブの後面側に配置されてもよく、キャブの前面側と後面側の双方に配置されてもよい。この場合も、シール部材を容易に設置することができる。
【0015】
上記キャブは、好ましくは、カウンタウエイト上に配置され、カウンタウエイトを取付け可能なマウント部をキャブの後面側に備える。このとき、ピラーは、キャブの後面側に配置されたリヤピラーを含む。そして、該リヤピラーをマウント部に接合する。このようにリヤピラーを設けることにより、キャブの剛性を向上することができる。また、リヤピラーをマウント部に接合することにより、キャブフロアの後方側底面部にピラーを受けるための水平面を設ける必要がなくなり、キャブフロアの後方側底面部の形状を単純な形状とすることができる。その結果、上述のように、シール部材の設置領域である左側端部領域や右側端部領域の形状を単純な形状とすることができ、シール部材によるシール機能を向上すると共に、シール長をも短くすることが可能となる。
【0016】
本発明に係る作業車両は、上述の作業車両用キャブと、該キャブのマウント部に取付けられたカウンタウエイトとを備える。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、キャブフロアの後面側底面におけるシール機能を向上すると共にシール長をも短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における作業車両の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブとカウンタウエイトとの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブの構成を下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブとカウンタウエイトとの構成を概略的に示す組立斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブとカウンタウエイトとの構成を概略的に示す組立側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブとカウンタウエイトとの構成を概略的に示す組立上面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における作業車両用キャブの側面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態における作業車両用キャブの側面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態における作業車両用キャブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1を参照して、本実施の形態の作業車両1は、小旋回式油圧ショベルであり、自走可能な下部走行体2と、その下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体4と、その上部旋回体4の前側に設けられ、土砂の掘削作業などを行うための作業装置3とを有している。
【0020】
下部走行体2は、たとえば履帯を有しており、履帯が回転駆動することにより作業車両1が走行するよう構成されている。上部旋回体4のたとえば前部左側には、オペレータが各種操作を行なうための運転室を画成するキャブ10が配置されている。作業装置3は、上部旋回体4のたとえば前部右側(キャブ10のたとえば右側)に配置されている。この作業装置3は、たとえばブーム、アーム、バケット、油圧シリンダなどを有している。
【0021】
図1および図2を参照して、上部旋回体4は、旋回体フレーム(図示せず)と、その旋回体フレームの後部側に搭載されたエンジン、マフラなどと、その旋回体フレームに搭載される上記キャブ10と、旋回体フレームの後端部に装着されるとともにキャブ10に取付けられたカウンタウエイト5とを主に有している。
【0022】
図2を参照して、キャブ10は、オペレータが着座するための運転席の取付け部13を有し、かつその取付け部13を囲むように配置された前面10A、後面10B、右側面10Cおよび左側面10Dとを有している。前面10Aは、オペレータがキャブ10内の運転席に着座した状態でオペレータの前方に位置する面である。また後面10B、右側面10Cおよび左側面10Dはそれぞれ、オペレータの後方、右側方および左側方に位置する面である。
【0023】
キャブ10は、キャブフロア15と、屋根部分12と、5本のピラー11a1、11a2、11b、11c1、11c2と、マウント部14とを主に有している。キャブフロア15は上記取付け部13を有している。この取付け部13はキャブフロア15の湾曲部分に形成されたへこみ部である。屋根部分12は取付け部13の上方に位置している。5本のピラー11a1、11a2、11b、11c1、11c2は、キャブフロア15と屋根部分12との間を上下方向に延びており、かつキャブフロア15に対して屋根部分12を支えている。マウント部14は、カウンタウエイト5の上記取付け部13よりも後面10B側に延びるように設けられている。このマウント部14はカウンタウエイト5を取り付けることができるように構成されている。
【0024】
キャブ10のたとえば左側面10Dには3本のピラー11a1、11b、11c1が配置されている。この3本のピラーをなすAピラー(第1フロントピラー)11a1、Bピラー(センターピラー)11b、およびCピラー(第1リヤピラー)11c1は、この順に前面10A側から後面10B側へ配置されている。またキャブ10のたとえば右側面10Cには2本のピラー11a2、11c2が配置されている。この2本のピラーのうち前面10A側にはAピラー(第2フロントピラー)11a2が配置されており、後面10B側にはCピラー(第2リヤピラー)11c2が配置されている。
【0025】
左側面10DのAピラー11a1とBピラー11bとの間には開口部が形成されている。この開口部には、たとえばオペレータがキャブ10内に出入りするための開閉ドア17(図1)が設けられている。このため、たとえばBピラー11bにはその開閉ドア17を取付けるためのドアヒンジが設けられている。右側面10CのAピラー11a2とCピラー11c2との間の中央部には、左側面10DのBピラー11bに対応するピラーは設けられておらず、Aピラー11a2とCピラー11c2との間は開口部となっている。
【0026】
左右一対のCピラー11c1、11c2の各々は、取付け部13よりも後面10B側においてマウント部14に直接接続されている。左側面10Dに位置するCピラー11c1の横断面の断面積は、右側面10Cに位置するCピラー11c2の横断面の断面積よりも小さいことが好ましい。これにより左側面10Dの後方視認性を向上させることができる。またCピラー11c1は丸パイプで構成されていることが好ましい。これにより左側面10Dの後方視認性をさらに向上させることができる。またCピラー11c2は長方形の横断面形状を有していることが好ましい。これによりCピラー11c2において高い剛性を得ることができる。
【0027】
図3に示すように、キャブフロア15は、キャブ10の前面10A側に位置する前方側部分と、キャブ10の後面10B側に位置する後方側部分とに分割されている。前方側部分は、左側面10DのAピラー11a1とBピラー11bとの間に位置し、平板状部材で構成されている。後方側部分は、左側面10DのBピラー11bとCピラー11c1との間に位置し、該後方側部分の全体形状は湾曲状である。図3に示すように、キャブフロア15の底面は、前面10A側に位置する前方側底面部15aと、後面10B側に位置する後方側底面部15bとを含む。
【0028】
後方側底面部15bは、キャブ10の左側面10D側に位置し、所定の幅を有する左側端部領域15b1と、キャブ10の右側面10C側に位置し、所定の幅を有する右側端部領域15b2とを含む。この左側端部領域15b1および右側端部領域15b2の全体形状も湾曲状とする。
【0029】
図3に示すように、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2は、これらの領域におけるキャブ10の後面10B側の端部から、これらの領域におけるキャブ10の前面10A側の端部に向かってキャブ10の前後方向に湾曲している。より詳しくは、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2は、キャブ10の前方に向かって湾曲し、かつ徐々に下降しながら延びている。
【0030】
左側端部領域15b1と右側端部領域15b2との間に位置する後方側底面部15bの後方側の中央領域には、図3に示すように、段差部(突出部)が設けられている。この段差部は、後方側底面部15bから後方および下方に突出するように設けられているが、上述した運転席の取付け部13(図2参照)を設けることに起因するものである。取付け部13には、運転席を前後に移動させるためのレールを配置する必要があるため、水平面を確保する必要がある。この水平面を、キャブフロア15の後方側部分の湾曲形状に沿わせることは困難であるので、上記のような段差部が残ることとなる。しかし、この段差部の存在により、キャブフロア15の後方側部分の剛性を向上することができる。
【0031】
左側端部領域15b1および右側端部領域15b2は、円弧状部分のような曲面部で構成してもよいが、全体として湾曲状であれば、直線状に延びる直線状部分、若干の凹凸部分、平坦部分等の湾曲していない部分を一部に設けてもよい。ただし、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2の形状は、従来例のような複雑な段差形状とならないように、全体として比較的単純でなだらかな形状とすることが好ましい。
【0032】
左側端部領域15b1および右側端部領域15b2に、上記の直線状部分等を設ける場合、該直線状部分等は、これらの領域の任意の箇所に設けることができる。たとえば、上記直線状部分等は、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2における、前面10A側に配置してもよく、後面10B側に配置してもよく、前面10A側と後面10B側との双方に配置してもよい。
【0033】
図3に示すように、左側端部領域15b1および右側端部領域15b2上には、シール部材19を設置する。このシール部材19は、典型的には、後方側底面部15bの周縁部上に、後方側底面部15bの中央領域を取り囲むように環状に設置される。ここで、上記のように左側端部領域15b1および右側端部領域15b2の全体形状を概ね湾曲した形状とすることにより、シール部材19の設置領域の形状を単純な形状とすることができる。それにより、複雑な段差形状の上にシール部材19を設置する場合と比較して、シール部材19によるシール機能を向上することができる。また、シール長をも短くすることができ、シール部材19の量を低減することができる。さらに、シール部材19を容易に各領域上に設置することもできる。
【0034】
また、上記のようにキャブフロア15の後方側部分を単純な形状とすることができるので、たとえばプレス成形した一枚の金属板で、キャブフロア15の後方側部分を作製することもできる。
【0035】
図3に示すように、右側面10Cの近傍には、ラジエータのような冷却装置18を配設してもよい。また、後方側底面部15bの下方の空間を利用して、図示しないエンジンやマフラ等の機器を配設してもよい。図3において矢印で示すように、冷却装置18からエンジンやマフラ等の機器に対し外気等を送ることができるが、この場合に、後方側底面部15bの周縁部に上述のようにシール部材19を設置することにより、シール部材19で囲まれた空間(エンジンルーム)を気密にシールすることができる。その結果、エンジン等の機器からの温風が、底面部の孔や隙間を通って運転室に浸入するのを防いでいる。
【0036】
また、後方側底面部15bには、エンジンやマフラ等からの熱が運転席に伝わらないように断熱材が貼り付けられる。このとき、図3に示すように、後方側底面部15bの全体形状がなだらかで単純な形状であるので、後方側底面部15bに断熱材をも容易に貼着することができる。また、後方側底面部15bに段差が少ないので、必要な断熱材の量をも低減することができる。さらに、断熱材を段差などの凹凸にあわせて細かく分割して張り付ける必要がないので、細かく分割された断熱材の隙間から運転席側へ熱が伝わることをも効果的に抑制でき、断熱効果を高めることもできる。
【0037】
再び図2を参照して、このキャブフロア15の上記取付け部13の形成位置からさらに後面10B側に延びるようにマウント部14が配置されている。このマウント部14はキャブフロア15と一体の部材(たとえば鋼板)で形成されていてもよく、また別体の部材から形成されていてもよい。
【0038】
このマウント部14にいわゆるゴムマウントによってカウンタウエイト5が取付けられている。
【0039】
上記のゴムマウントは、ゴム部材31a、31bと、円筒カラー32と、カップ33と、ワッシャ34と、ボルト35とを有している。ゴム部材31a、31bはマウント部14の上下を挟み込むことで振動を吸収するためのものである。円筒カラー32は、ボルト35の締め付け力がゴム部材31a、31bにかかることでゴム部材31a、31bが潰れないようにボルト25の締め付け力を受けるためのものである。この円筒カラー32は、マウント部14の貫通孔とゴム部材31a、31bの貫通孔との各内部にわたって位置している。カップ33は、ゴム部材31bを上方から抑えるためのものである。ボルト35は、ワッシャ34、カップ33、円筒カラー32の各貫通孔を貫通してカウンタウエイト5のねじ穴24にねじ込まれており、これによりマウント部14にカウンタウエイト5が取付けられている。
【0040】
図4〜図6を参照して、マウント部14にカウンタウエイト5が取付けられた状態において、上記のゴムマウントとCピラー11c1、11c2とはともにマウント部14に位置しており、かつカウンタウエイト5の真上に位置している。またゴムマウントとCピラー11c1、11c2とは互いに近くに配置されている。
【0041】
上記のようにCピラー11c1、11c2を設けることにより、キャブ10の剛性を向上することができる。また、Cピラー11c1、11c2をマウント部14に接合することにより、キャブフロア15の後方側底面部15bにピラーを受けるための水平面を設ける必要がなくなり、キャブフロア15の後方側底面部15bの形状を単純な形状とすることができる。その結果、上述のように、シール部材19の設置領域である左側端部領域15b1や右側端部領域15b2の形状を単純な形状とすることができ、シール部材19によるシール機能を向上すると共に、シール長をも短くすることが可能となる。
【0042】
なお、上記の実施の形態においては、左側面10DのCピラー11c1が上方から後方にかけて直線状に延びてマウント部14に直接接続された構成について説明したが、このCピラー11c1はマウント部14付近でオフセットしてマウント部14に接続されていてもよい。
【0043】
次に、図7〜図9を用いて、キャブ10の側面構造について説明する。図7は、上述の実施の形態のキャブ10の側面図であり、図8および図9は、他の実施の形態のキャブ10の側面図である。
【0044】
図7に示すように、キャブ10を左側面側から見ると、左側端部領域15b1は、略円弧状に湾曲した形状を有する。しかし、図8に示すように、左側端部領域15b1に直線状部分15cを設けてもよい。図8の例では、左側端部領域15b1の前方側端部を直線状部分15cで構成しているが、これ以外の部分に直線状部分15cを設けてもよい。また、図9に示すように、後方側底面部15bの後方側の中央領域に、図3に示されるような段差部を設けないようにすることも可能である。この場合には、後方側底面部15bに段差部や凹凸が更に少なくなり、後方側底面部15b全体を更に単純な形状とすることができる。それにより、断熱材の設置面積を更に縮小することができる。また、キャブフロア15の後方側部分をプレス成形で作製する場合には、プレス成形も更に容易になる。
【0045】
次に、本発明の実施の形態の上記以外の構成による作用効果について説明する。
上述の作業車両用キャブ10によれば、運転席の取付け部13よりも後面10B側に延びるようにマウント部14が設けられている。このため、Cピラー11c1をその取付け部13よりも後面10B側にてマウント部14に接合して設けることが可能となる。
【0046】
また、Cピラー11c1を設けたことにより、Cピラー11c1により屋根部分12を後面10B側で支えることが可能となる。このため、オペレータの居住空間を拡大する場合においても、Aピラー11a1およびBピラー11bだけで屋根部分12を支える場合に比較して屋根部分12の荷重を十分に支えることが可能となる。
【0047】
さらに、マウント部14により、運転席の取付け部13よりも後面10B側にカウンタウエイト5とCピラー11c1の双方を取付けることができる。このため、カウンタウエイト5とCピラー11c1との取付け位置を近づけることができる。よって、オペレータの居住空間を拡大する場合においても、転倒負荷を受けたときのキャブ10の剛性を向上することができる。
【0048】
さらに、キャブ10の左側面10Dに3本のピラー11a1、11b、11c1が配置されているため、Bピラー11bをAピラー11a1に近づけて配置することができる。このため、Bピラー11bから後面10B側においてキャブフロア15を湾曲させることが可能となり、キャブフロア15の湾曲部途中にBピラー11bを接合する必要はなくなる。
【0049】
またCピラー11c1、11c2もキャブフロア15の取付け部13から後面10B側へ延びるように設けられたマウント部14に接合されているため、キャブフロア15の湾曲部途中にCピラー11c1、11c2を接合する必要はなくなる。これによりBピラー11bおよびCピラー11c1、11c2を受けるための水平部がキャブフロア15の湾曲部に不要となるため、取付け部13を除くキャブフロア15の部分を凹凸のない一様になだらかな湾曲形状にすることができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 作業車両、2 下部走行体、3 作業装置、4 上部旋回体、5 カウンタウエイト、5a カウンタウエイト本体、5a1 ボルト、5b カウンタウエイト取付け調整部、10 作業車両用キャブ、10A 前面、10B 後面、10C 右側面、10D 左側面、11a1,11a2 Aピラー、11b Bピラー、11c1,11c2 Cピラー、12 屋根部分、13 取付け部、14 マウント部、15 キャブフロア、15a 前方側底面部、15b 後方側底面部、15b1 左側端部領域、15b2 右側端部領域、15c 直線状部分、16 鍛造部品、17 開閉ドア、18 冷却装置、19 シール部材、24 ねじ穴、25 ボルト、31a ゴム部材、31b ゴム部材、32 円筒カラー、33 カップ、34 ワッシャ、35 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根部分と、キャブフロアと、前記屋根部分と前記キャブフロアとを接続する複数のピラーと、前面と、後面と、右側面と、左側面とを備えた作業車両用キャブであって、
前記キャブフロアの底面は、前記キャブの前面側に位置する前方側底面部と、前記キャブの後面側に位置する後方側底面部とを含み、
前記前方側底面部は、全体形状を平坦な平面とし、
前記後方側底面部は、前記キャブの左側面側に位置する左側端部領域と、前記キャブの右側面側に位置する右側端部領域とを含み、
前記左側端部領域および前記右側端部領域の全体形状を平坦な湾曲面とした、作業車両用キャブ。
【請求項2】
前記後方側底面部における前記左側端部領域および前記右側端部領域は、前記左側端部領域および前記右側端部領域における後端部から、前記左側端部領域および前記右側端部領域における前端部に向かって前記キャブの前後方向に湾曲する、請求項1に記載の作業車両用キャブ。
【請求項3】
前記左側端部領域および前記右側端部領域を円弧状部分で構成した、請求項1または請求項2に記載の作業車両用キャブ。
【請求項4】
前記左側端部領域および前記右側端部領域は、円弧状部分と、直線状に延びる直線状部分とで構成した、請求項1または請求項2に記載の作業車両用キャブ。
【請求項5】
前記キャブは、カウンタウエイト上に配置され、前記カウンタウエイトを取付け可能なマウント部を前記キャブの後面側に備え、
前記ピラーは、前記キャブの前記後面側に配置されたリヤピラーを含み、
前記リヤピラーを前記マウント部に接続した、請求項1から請求項4のいずれかに記載の作業車両用キャブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の作業車両用キャブと、
前記キャブのマウント部に取付けられたカウンタウエイトとを備えた、作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−215005(P2012−215005A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80228(P2011−80228)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】