説明

作業車両用トランスミッション

【課題】バックホーローダにおいて、多段化によって走行性能を良好に維持しつつ、低速で行われる作業時の変速をスムーズに行う。
【解決手段】このトランスミッション6は、入力軸40、中間軸41,42、出力軸43,44、動力伝達機構、及び動力伝達経路を切り換える制御部を備えている。動力伝達機構は、前後進切換用の前進用クラッチ及び後進用クラッチRと、速度段を切り替えるための第1〜第3クラッチC1〜C3と、を含み、前進用クラッチは速度領域を切り換えるための前進低速用クラッチFL及び前進高速用クラッチFHを有している。制御部は、ローダ作業に用いられる前進1速〜3速においては、前進低速用クラッチFL、前進高速用クラッチFH、第1〜第3クラッチC1〜C3のうちの1つのクラッチのみを切り換えて変速段を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション、特に、ローダ作業を行う作業車両に搭載される多軸式トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両としてのバックホーローダは、車両の前方にローダバケットを有し、後方にバックホーを有している。また、運転室に設けられた運転席は、走行時やローダバケットでの作業時には前方を向くように、またバックホーでの作業時には後方を向くように、回転可能に構成されている。
【0003】
以上のようなバックホーローダには、多軸式のトランスミッションが搭載されている。このトランスミッションは、エンジンからの動力が入力される入力軸と、車輪に動力を出力する出力軸と、入力軸と出力軸との間に配置された1つ以上の中間軸と、を有している。また、各軸には、前後進切換用の油圧クラッチ及び速度段切換用の複数の油圧クラッチが設けられている。なお、以下では、油圧クラッチを単に「クラッチ」と記す。
【0004】
ここで、従来のトランスミッションにおける前後進切換用クラッチは、それぞれ1つの前進用クラッチ及び後進用クラッチを有している。しかし、このような構成では、前進時の変速段数が制限されて多段構成にすることができない。このため、中速から高速での走行において、加速性が悪い。
【0005】
そこで、速度段切換用クラッチの個数を増やして多段化することが考えられる。しかし、速度段切換用クラッチの個数を増やすと、部品点数が増え、トランスミッション全体が大型化される。また、速度段切換用クラッチの個数を増やすと、前進側だけではなく、多段化が不要な後進側の段数も増えてしまう。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1に示されるようなトランスミッションが提供されている。この特許文献1に示されたトランスミッションは、入力軸と、2つの中間軸と、出力軸と、を備えている。そして、入力軸に後進用クラッチ及び前進低速用クラッチが設けられ、一方の中間軸に前進高速用クラッチが設けられている。また、速度段切換用クラッチとして3つのクラッチが設けられている。
【0007】
以上のように、特許文献1に示されたトランスミッションでは、前進時の低速・高速の切換用として前進用低速クラッチと前進用高速クラッチを有し、速度段切換用クラッチとして第1〜第3のクラッチを有しているので、前進6段の速度段が得られ、少ない部品点数で多段化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−230278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バックホーローダの特有の使用態様として、作業現場においてローダ作業に用いられるだけではなく、作業現場間を移動したり、あるいはバックホーローダが格納されている場所から作業現場まで自走したりするような用いられ方がある。このため、バックホーローダには、良好な作業性のみならず、良好な走行性能も求められる。
【0010】
ここで、特許文献1に示されるような構成によって多段化されたバックホーローダは、中速から高速における加速性が向上されている。このため、良好な走行性能を有している。
【0011】
一方、ローダ作業時においては、低速度段を用いて作業が行われるが、この低速度段の間の変速時に、応答性が悪いという問題がある。これは、変速時に、前進低速用クラッチと前進高速用クラッチとの間で切換が行われるとともに、速度段切換用クラッチの間においても切換が行われるからである。この変速時のクラッチ切換に伴う応答性の悪化については、後に詳述する。
【0012】
そして、変速時の応答性が悪いと、変速途中で、エンジンからのトルクが車輪に伝達されないトルク切れの期間が長くなる。変速時にトルク切れの期間が長いと、変速途中で車両の速度が大きく低下することになる。このような変速時の車両速度の低下は、特に低速で作業しているときには相対的に大きくなるので、オペレータにとって違和感があり、また変速時のショックが大きくなる。また、変速時の応答性の悪化は、迅速な作業の妨げになる。
【0013】
本発明の課題は、作業車両において、多段化によって走行性能を良好に維持しつつ、主に作業時に使用される低速度段での変速をスムーズに行えるようにすることにある。
【0014】
ここで、特許文献1において、低速度段の間で変速を行った場合の応答性の悪化について詳細に説明する。特許文献1のトランスミッションにおいて、各変速段のクラッチのオン、オフは図1に示す通りである。図1において、「○」はクラッチオン(クラッチ係合状態=動力伝達状態)を示している。なお、図1では前進側のみを示している。
【0015】
図2は、特許文献1のトランスミッションにおいて、例えば前進2速(F2)から前進3速(F3)に変速する場合の各クラッチの指令油圧の変化を示したものである。図1から明らかなように、前進2速では前進高速用クラッチFHと速度段切換用の第1クラッチC1とがオンされ、前進3速では前進低速用クラッチFLと速度段切換用の第2クラッチC2とがオンされる。
【0016】
図2(a)は前進2速から3速に変速される場合にオンされる第2クラッチC2の指令油圧の変化を示し、同図(b)はこの変速時にオフされる第1クラッチC1の指令油圧の変化を示している。また、同図(c)は前進2速から3速に変速される場合にオンされる前進低速用クラッチFLの指令油圧の変化を示し、同図(d)はこの変速時にオフされる前進高速用クラッチFHの指令油圧の変化を示している。
【0017】
前進2速から3速に変速を行う場合には、前述のように、前進低速用クラッチFL及び第2クラッチC2が用いられる(オンにされる)。このとき、迅速な変速を行うために両クラッチに対して同時にオン指令をすることが考えられる。しかし、両クラッチに同時にオン指令を与えると、前進低速用クラッチFLと第2クラッチC2のいずれが先に実際にクラッチ係合状態になるのか保証されない。仮に第2クラッチC2より先に前進低速用クラッチFLがオンになると、前進2速でオン状態であった第1クラッチC1と前進低速用クラッチFLとが過渡的にオンになる。前進低速用クラッチFLと第1クラッチC1とがオンになると、図1から明らかなように前進1速になる。
【0018】
以上のように、前進2速から3速にシフトアップ操作をしたにもかかわらず、過渡的に前進1速にシフトダウンされる場合が起こり得る。すると、オペレータとしては、前進2速から3速に加速したにもかかわらず、一時的に減速されることになり、変速時のショックが大きくなる。
【0019】
以上のような変速時の不具合を避けるためには、図2に示すようなタイミングで各クラッチを制御する必要がある。
【0020】
すなわち、前進2速から3速への変速操作がなされると、図2に示すように、まず速度段切換用の第2クラッチC2に対して、タイミングt1で先にオン指令が出力される。次に、第2クラッチC2においてフィルオンが検出された時点で前進低速用クラッチFLに対してオン指令が出力される。なお、フィルオンとは、油圧クラッチにおけるピストン背面のシリンダ室に作動油が充満された状態である。そして、前進低速用クラッチFLに供給される作動油の油圧が所定以上になったタイミングt2で、前進3速への変速が完了する。
【0021】
このようなタイミングで各クラッチをオンすることにより、シフトアップ操作のときに一時的に減速されるような不具合を避けることができる。
【0022】
しかし、以上のようなタイミングで各クラッチの制御を行うと、オペレータが変速操作をしたタイミングt1から、前進3速への変速が完了するタイミングt2までの時間が長くなる。すると、変速途中でトルク切れが生じ、その期間が長くなる。特に、ローダ作業等を行う低速度領域で長い期間トルク切れが生じると、その間に車両の速度が大きく低下し、前進3速への変速が完了した時点でショックが生じることになる。また、変速の応答性が悪いので、迅速な作業を行うことができない。
【0023】
なお、中速度段から高速度段を用いて走行を行う中速度から高速度領域では、変速のために長い時間を要してトルク切れが生じても、車両の慣性が大きいので速度はそれほど低下しない。このため、変速完了時にオペレータに与えるショックは比較的小さい。
【0024】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、特にローダ作業等を行う低速度領域において、変速時のショックを少なくし、かつ迅速な変速によって作業性を良好にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
第1発明に係る作業車両のトランスミッションは、ローダ作業を行う作業車両に搭載される多軸式トランスミッションであって、動力が入力される入力軸と、作業車両の車輪に連結される出力軸と、入力軸と出力軸との間に配置された少なくとも1つの中間軸と、入力軸から中間軸を介して出力軸に動力を伝達する動力伝達機構と、入力軸から出力軸への動力伝達経路を切り替える切換手段と、を備えている。動力伝達機構は、前後進切換用の前進用クラッチ及び後進用クラッチと、速度段を切り替えるための複数の速度段切換用クラッチと、を含み、前進用クラッチ及び後進用クラッチの少なくとも一方は速度領域を切り換えるための複数のクラッチを有している。切換手段は、ローダ作業に用いられる複数の変速段においては、複数の速度領域切換用クラッチ及び複数の速度段切換用クラッチのうちの1つのクラッチのみを切り換えて変速段を切り換える。
【0026】
ここでは、ローダ作業に用いられる複数の変速段においては、複数の速度領域切換用クラッチ及び複数の速度段切換用クラッチのうちの1つのクラッチのみが切り換えられ、変速される。このため、従来のトランスミッションのように2つのクラッチを切り換える場合に比較して変速に要する時間が短縮される。したがって、変速時のショックを抑えることができ、しかも迅速な変速によって作業性を良好にすることができる。
【0027】
第2発明に係る作業車両用トランスミッションは、第1発明のトランスミッションにおいて、切換手段は、ローダ作業用速度段より高速の変速段においては、複数の速度領域切換用クラッチ及び複数の速度段切換用クラッチのうちの少なくとも1つの速度領域切換用クラッチを切り換える。
【0028】
ここでは、高速の変速段においては2つのクラッチの切換によって変速がなされる場合がある。しかし、高速度領域では、変速に長い時間を要しても車両の速度低下が少ないので、オペレータに与える変速時のショックは小さい。
【0029】
第3発明に係る作業車両用トランスミッションは、第1又は第2発明のトランスミッションにおいて、前進用クラッチは前進用第1クラッチ及び前進用第2クラッチ有し、速度段切換用クラッチは、第1クラッチ、第2クラッチ、及び第3クラッチを有している。切換手段は、各速度段で各クラッチを以下のように制御する。
【0030】
前進1速では前進用第1クラッチと第1クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0031】
前進2速では前進用第1クラッチと第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0032】
前進3速では前進用第2クラッチと第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0033】
前進4速では前進用第1クラッチと第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態する。
【0034】
前進5速では前進用第2クラッチと第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0035】
後進1速では後進用クラッチと第1クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0036】
後進2速では後進用クラッチと第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0037】
後進3速では後進用クラッチと第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする。
【0038】
ここでは、ローダ作業を行う前進1速から3速の間の変速時には、1つのクラッチのみの切換で変速が可能である。具体的には、前進1速と2速の間は、第1クラッチと第2クラッチとの間の切換のみで変速が可能である。前進2速と3速の間は、前進用第1クラッチと前進用第2クラッチとの間の切換のみで変速が可能である。
【0039】
第4発明に係る作業車両用トランスミッションは、第1発明のトランスミッションにおいて、前進用クラッチ及び後進用クラッチは入力軸に配置されている。
【0040】
作業車両用のトランスミッションでは、一般的に、入力軸の回転数がもっとも高く、この回転が減速されて出力軸に伝達される。したがって、入力軸のトルクが最も小さい。この入力軸に、使用頻度の高い前進用クラッチ及び後進用クラッチが配置されているので、これらのクラッチの容量を小さくして小型化が可能になり、またこれらのクラッチの摩耗を抑えることができる。
【0041】
第5発明に係る作業車両用トランスミッションは、第1から第4発明のいずれかのトランスミッションにおいて、出力軸は、中間軸からの動力を前輪に伝達する前出力軸と、中間軸からの動力を後輪に伝達する後出力軸と、を有している。
【発明の効果】
【0042】
以上のような本発明では、特に低速度領域で作業を行う作業車両において、多段化によって走行性能を良好に維持しつつ、低速度領域での変速時のショックを抑えることができる。また、迅速な変速によって作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来のトランスミッションにおける前進時の各変速段での各クラッチのオン、オフを示す図。
【図2】従来のトランスミッションにおける変速時の不具合を説明するための、各クラッチへの指令油圧の変化を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係るバックホーローダの外観斜視図。
【図4】前記バックホーローダのトランスミッションの概略構成図。
【図5】前記バックホーローダの制御ブロック図。
【図6】図4に示したトランスミッションにおける各変速段での各クラッチのオン、オフを示す図。
【図7】前進1速の動力伝達経路を示す図。
【図8】前進2速の動力伝達経路を示す図。
【図9】前進3速の動力伝達経路を示す図。
【図10】前進4速の動力伝達経路を示す図。
【図11】前進5速の動力伝達経路を示す図。
【図12】後進1速の動力伝達経路を示す図。
【図13】後進2速の動力伝達経路を示す図。
【図14】後進3速の動力伝達経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[全体構成]
図3に本発明の一実施形態による作業車両としてのバックホーローダ1の外観を示している。バックホーローダ1は、1台で掘削作業及び積み込み作業を行うことができる作業車両である。このバックホーローダは主に、本体2と、ローダ3と、バックホー4と、左右のスタビライザ5と、を備えている。
【0045】
本体2は、エンジン及びトランスミッション6(図4参照)等の機器類を支持するフレーム10と、フレーム10に搭載された運転室11と、それぞれ1対の前輪12及び後輪13と、を備えている。バックホーローダ1の特徴的な構成として、前輪12の径に比較して後輪13の径は大きくなっている。したがって、前輪12に連結されたアクスルは後輪13に連結されたアクスルの位置より低い位置に配置されている。エンジン及びトランスミッション等の機器類は、外装カバー14によって覆われている。運転室11の内部には、オペレータが着座する運転席16が設けられている。運転席16は、前方向きの位置と後方向きの位置とで回転が可能である。また、運転室11の内部には、ステアリングや、各種のペダル、ローダ3やバックホー4を操作するための操作部材、前後進切換操作のための前後進切換レバー、変速操作のための変速レバー等が設けられている。
【0046】
エンジンはフレーム10の前部に搭載されている。エンジンは、トランスミッション及びアクスルを介して前輪12及び後輪13を駆動し、また各種油圧機器を作動させるための油圧ポンプを駆動する。
【0047】
トランスミッション6は、詳細は後述するが、図4に示すように、複数の軸を有しており、リバース軸を除く各軸には、油圧クラッチ又は油圧ブレーキが設けられている。
【0048】
ローダ3は、運転室11の前方に配置されており、積み込み作業を行うための作業機である。ローダ3は、ローダアーム20と、ブラケット21と、リンク22と、ローダバケット23と、バケットシリンダ24と、アームシリンダ25と、を有している。
【0049】
ローダアーム20は、基端部がフレーム10に回動自在に支持され、先端にローダバケット23が回動自在に装着されている。ブラケット21は、基端部がローダアーム20に回動自在に支持され、先端にはバケットシリンダ24のロッドの先端とリンク22の一端とが回動自在に連結されている。バケットシリンダ24の基端部はフレーム10に回動自在に支持されている。また、リンク22の先端はバケット23に回動自在に連結されている。アームシリンダ25は、基端部がフレーム10に回動自在に支持され、アームシリンダ25のロッドの先端がローダアーム20の長手方向の中間部に回動自在に連結されている。
【0050】
以上のような構成によって、アームシリンダ25のロッドが突出するとローダアーム20が上方に回動し、アームシリンダ25のロッドが後退するとローダアーム20が下方に回動する。また、バケットシリンダ24のロッドが突出すると、ブラケット21が前方に回動し、リンク22が前方に移動してローダバケット23が下方に回動する。逆に、アームシリンダ24のロッドが後退すると、ブラケット21が後方に回動し、リンク22が後方に移動してローダバケット23が上方に回動する。
【0051】
バックホー4は、運転室11の後方に配置されており、掘削作業を行うための作業機である。バックホー4は、ブーム30と、アーム31と、バケットリンク32と、バックホーバケット33と、ブームシリンダ34と、アームシリンダ35と、バケットシリンダ36と、を有している。ブーム30は、基端部が図示しないブラケットを介してフレーム10に左右方向に回動可能に支持されている。ブーム30の先端部にはアーム31の基端部が回動自在に連結され、アーム31の先端にバックホーバケット33が回動自在に連結されている。ブームシリンダ34は、一端がフレーム10に取り付けられたブラケット(図示せず)に回動自在に連結され、他端がブーム30に固定されたブームブラケット37に回動自在に連結されている。アームシリンダ35は、一端がブームブラケット37に回動自在に連結され、他端がアーム31の基端部に回動自在に連結されている。バケットシリンダ36は、基端部がアーム31に回動自在に連結され、先端がバケットリンク32に回動自在に連結されている。
【0052】
以上のような構成によって、ブームシリンダ34のロッドが突出するとブーム30は下方に回動し、ブームシリンダ34のロッドが後退するとブーム30は上方に回動する。また、アームシリンダ35のロッドが突出するとアーム31は下方に回動し、アームシリンダ35のロッドが後退するとアーム31は上方に回動する。さらに、バケットシリンダ36のロッドが突出すると、バケットリンク32を介してバックホーバケット33が回動し、バックホーバケット33の開口部がアーム31に接近する。一方、バケットシリンダ36のロッドが後退すると、バケットリンク32を介してバックホーバケット33が回動し、バックホーバケット33の開口部がアーム31から離間する。
【0053】
なお、図示していないが、バックホー4は、ブーム30をフレーム10に連結しているブームブラケットを左右方向に回動するためのブラケットシリンダを有している。ブラケットシリンダの一端はフレーム10に回動自在に連結され、他端はブームブラケットに回動自在に連結されている。ブラケットシリンダのロッドが突出すると、ブームブラケットは左右方向の一方側に回動し、ブラケットシリンダのロッドが後退すると、ブームブラケットは左右方向の他方側に回動する。
【0054】
左右のスタビライザ5は、バックホー4による作業時に、バックホーローダ1の姿勢を安定させて転倒を防止するためのものである。左右のスタビライザ5はそれぞれフレーム10の後左部及び後右部に設けられている。このスタビライザ5を、バックホーローダ1の左右側方に張り出した状態で接地し、後輪13が地面から離れるまでバックホーローダ1の本体後部を持ち上げることにより、掘削作業時のバックホーローダ1の姿勢を安定させることができる。
【0055】
[トランスミッション]
図4にトランスミッション6の概略構成を示す。このトランスミッション6は、動力が入力される入力軸40と、第1中間軸41と、第2中間軸42と、前出力軸43と、後出力軸44と、リバース軸45と、を有している。各軸40〜45は互いに平行に配置されている。また、このトランスミッション6は、ロックアップクラッチ46を有するトルクコンバータ47を有している。
【0056】
<入力軸40>
入力軸40は、トルクコンバータ47を介して、あるいはロックアップクラッチ46を介してエンジンからの動力が入力される。各軸40〜45のうちで、この入力軸40が最も高い位置に配置されている。入力軸40には、入力軸ギアGiと、後進用クラッチRと、前進低速用クラッチFLと、が設けられている。入力軸ギアGiは入力軸40に相対回転不能に固定されている。後進用クラッチRと前進低速用クラッチFLの入力側は共通の入力軸クラッチパック50を有しており、入力軸クラッチパック50は入力軸40に相対回転不能に固定されている。後進用クラッチRの出力側には後進用クラッチギアGcrが設けられ、前進低速用クラッチFLの出力側には前進低速用クラッチギアGcflが設けられている。後進用クラッチギアGcr及び前進低速用ギアGcflは、ともに入力軸40に対して相対回転自在に支持されている。
【0057】
<第1中間軸41>
第1中間軸41は入力軸40と前出力軸43との間に配置されている。第1中間軸41には、第1中間軸ギアGm1と、第1クラッチC1と、前進高速用クラッチFHと、が設けられている。第1中間軸ギアGm1は第1中間軸41に相対回転不能に固定されている。第1クラッチC1と前進高速用クラッチFHの入力側は共通の第1クラッチパック51を有しており、第1クラッチパック51は第1中間軸41に相対回転不能に固定されている。第1クラッチパック51の外周には第1パックギアGp1が設けられている。第1パックギアGp1は前進低速用クラッチギアGcflに噛み合っている。第1クラッチC1の出力側には第1クラッチギアGc1が設けられ、前進高速用クラッチFHの出力側には前進高速用クラッチギアGcfhが設けられている。前進高速用クラッチギアGcfhは入力軸ギアGiに噛み合っている。第1クラッチギアGc1及び前進高速用ギアGcfhは、ともに第1中間軸41に対して相対回転自在に支持されている。
【0058】
<第2中間軸42>
第2中間軸42は入力軸40と前出力軸43との間に配置されている。第2中間軸42には、第2中間軸ギアGm2と、第2クラッチC2と、第3クラッチC3と、が設けられている。第2中間軸ギアGm2は、第2中間軸42に相対回転不能に固定され、前進高速用クラッチギアGcfhに噛み合っている。第2クラッチC2と第3クラッチC3の入力側は共通の第2クラッチパック52を有しており、第2クラッチパック52は第2中間軸42に相対回転不能に固定されている。第2クラッチパック52の外周には第2パックギアGp2が設けられている。第2パックギアGp2は第1クラッチギアGc1に噛み合っている。第2クラッチC2の出力側には第2クラッチギアGc2が設けられ、第3クラッチC3の出力側には第3クラッチギアGc3が設けられている。第3クラッチギアGc3は第1パックギアGp1に噛み合っている。第2クラッチギアGc2及び第3クラッチギアGc3は、ともに第2中間軸42に対して相対回転自在に支持されている。
【0059】
<前出力軸43>
前出力軸43は、各軸40〜45のうちで最も低い位置に配置されている。また、前出力軸43は前輪12に連結可能である。前出力軸43には、駆動方式切換用クラッチCSが設けられている。この駆動方式切換用クラッチCSは、クラッチオンによって第2中間軸42の動力を前出力軸43に伝達し、クラッチオフによって第2中間軸42と前出力軸43との間の動力伝達を遮断する。すなわち、2輪駆動と4輪駆動とを切り換えるためのクラッチである。駆動方式切換用クラッチCSのクラッチパック53は前出力軸43に相対回転不能に固定されている。また、このクラッチCSの入力側には、第1前出力軸ギアGf1と第2前出力軸ギアGf2とが設けられている。これらの前出力軸ギアGf1,Gf2は、ともに前出力軸43に回転自在に支持されており、また両ギアGf1,Gf2は互いに相対回転不能に固定されている。なお、両ギアGf1,Gf2は1つの部材で構成されていてもよい。
【0060】
<後出力軸44>
後出力軸44は、前出力軸43より高い位置に配置されている。また、後出力軸44は、従来のトランスミッションとは異なり、第2中間軸42と別の軸で構成され、両者は切り離されている。後出力軸44は後輪13に連結可能である。後出力軸44には、後出力軸ギアGrと、パーキングブレーキPBとが設けられている。後出力軸ギアGrは、後出力軸44に相対回転不能に固定されており、第2前出力軸ギアGf2と噛み合っている。
【0061】
<リバース軸45>
リバース軸45には、後進用の第1ギアGb1及び第2ギアGb2が相対回転不能に設けられている。後進用第1ギアGb1は後進用クラッチギアGcrに噛み合っている。後進用第2ギアGb2は第1パックギアGp1に噛み合っている。
【0062】
<動力伝達機構>
以上のように、複数のギア及びクラッチによって、入力軸40から第1中間軸41及び第2中間軸42に動力を伝達する第1動力伝達機構が構成されている。また、第2中間軸ギアGm2と、第1及び第2前出力軸ギアGf1,Gf2と、駆動方式切換用クラッチCSと、によって、第2中間軸42から前出力軸43に動力を伝達するとともに、前出力軸43から後出力軸44に動力を伝達する第2動力伝達機構が構成されている。
【0063】
なお、以上の各クラッチ及びパーキングブレーキPBは、複数の摩擦板を有し、油圧によって作動するピストンを備えた油圧クラッチ(ブレーキ)によって構成されている。
【0064】
[制御ブロック]
図5に、変速制御に関する制御ブロックを示している。このバックホーローダ1は制御部60を有している。制御部60には、前後進切換用レバーの位置を検出するセンサ61、及び変速レバーの位置を検出するセンサ62が接続されている。また、制御部60には、クラッチを制御するためのコントロールバルブ63が接続されている。なお、図4では、1つのコントロールバルブ63を示しているが、各クラッチに対応してそれぞれコントロールバルブが設けられている。すなわち、複数のコントロールバルブが制御部60に接続されている。そして、制御部60は、各センサ61,62からの信号を受けて、各コントロールバルブに制御信号を出力し、トランスミッション6の各軸に設けられた複数の油圧クラッチのオン/オフを制御する。具体的には、制御部60は、変速レバーの操作を受けて、各クラッチのオン、オフを図6に示すように制御する。図6において、「○」はクラッチオン(クラッチ係合状態=動力伝達状態)を示している。
【0065】
[動作]
次に、各変速段における動力伝達経路について説明する。なお、ここでは、駆動方式切換用クラッチCSは常にオンで、前輪12及び後輪13にエンジンからの動力が伝達される4輪駆動の場合について説明する。
【0066】
<前進1速>
前進1速(F1)の場合は、前進低速用クラッチFL及び第1クラッチC1がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0067】
この場合は、図7の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0068】
入力軸40→前進低速用クラッチFL→前進低速用クラッチギアGcfl→第1パックギアGp1→第1クラッチC1→第1クラッチギアGc1→第2パックギアGp2→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0069】
<前進2速>
前進2速(F2)の場合は、前進低速用クラッチFL及び第2クラッチC2がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0070】
この場合は、図8の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0071】
入力軸40→前進低速用クラッチFL→前進低速用クラッチギアGcfl→第1パックギアGp1→第1中間軸41→第1中間軸ギアGm1→第2クラッチギアGc2→第2クラッチC2→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0072】
<前進3速>
前進3速(F3)の場合は、前進高速用クラッチFH及び第2クラッチC2がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0073】
この場合は、図9の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0074】
入力軸40→入力軸ギアGi→前進高速用クラッチギアGcfh→前進高速用クラッチFH→第1中間軸41→第1中間軸ギアGm1→第2クラッチギアGc2→第2クラッチC2→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0075】
<前進4速>
前進4速(F4)の場合は、前進低速用クラッチFL及び第3クラッチC3がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0076】
この場合は、図10の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0077】
入力軸40→前進低速用クラッチFL→前進低速用クラッチギアGcfl→第1パックギアGp1→第3クラッチギアGc3→第3クラッチC3→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0078】
<前進5速>
前進5速(F5)の場合は、前進高速用クラッチFH及び第3クラッチC3がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0079】
この場合は、図11の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0080】
入力軸40→入力軸ギアGi→前進高速用クラッチギアGcfh→前進高速用クラッチFH→第1中間軸41→第1パックギアGp1→第3クラッチギアGc3→第3クラッチC3→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0081】
<後進1速>
後進1速(R1)の場合は、後進用クラッチR及び第1クラッチC1がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0082】
この場合は、図12の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0083】
入力軸40→後進用クラッチR→後進用クラッチギアGcr→後進用第1ギアGb1→リバース軸45→後進用第2ギアGb2→第1パックギアGp1→第1クラッチC1→第1クラッチギアGc1→第2パックギアGp2→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0084】
<後進2速>
後進2速(R2)の場合は、後進用クラッチR及び第2クラッチC2がオン(動力伝達)され、他のクラッチはオフ(動力遮断)される。
【0085】
この場合は、図13の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0086】
入力軸40→後進用クラッチR→後進用クラッチギアGcr→後進用第1ギアGb1→リバース軸45→後進用第2ギアGb2→第1パックギアGp1→第1中間軸41→第1中間軸ギアGm1→第2クラッチギアGc2→第2クラッチC2→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0087】
<後進3速>
後進3速(R3)の場合は、後進用クラッチR及び第3クラッチC3がオンされ、他のクラッチはオフされる。
【0088】
この場合は、図14の一点鎖線の矢印で示すように、入力軸40に入力された動力は、以下の経路で前出力軸43及び後出力軸44に伝達される。
【0089】
入力軸40→後進用クラッチR→後進用クラッチギアGcr→後進用第1ギアGb1→リバース軸45→後進用第2ギアGb2→第1パックギアGp1→第3クラッチギアGc3→第3クラッチC3→第2中間軸42→第2中間軸ギアGm2→第1前出力軸ギアGf1
第1前出力軸ギアGf1からは、前輪側と後輪側に分かれて、次のように伝達される。
・前輪側:→駆動方式切換用クラッチCS→前出力軸43
・後輪側:→第2前出力軸ギアGf2→後出力軸ギアGr→後出力軸44
【0090】
[ローダ作業に用いられる速度段]
各速度段においては、以上のような動力伝達経路で動力が伝達される。ここで、一般的には、車両の最高速度は約40km/hである。また、ローダ作業は、約12km/h以下の速度で行われ、速度段としては1速〜3速が用いられる。
以下に、前進時の各速度段における標準的な速度を示す。
前進1速:0km/h〜5.5km/h
前進2速:0km/h〜11.0km/h
前進3速:9.0km/h〜16.4km/h
前進4速:14.4km/h〜25.6km/h
前進5速:23.6km/h〜40.0km/h
【0091】
[特徴]
このような実施形態では、ローダ作業の際に選択される前進1速〜3速間の変速時には、1つのクラッチの切換のみで変速が可能である。具体的には、前進1速と2速の間の変速は、第1クラッチC1と第2クラッチC2の切換のみで可能である。また前進2速と3速の間の変速は、前進低速用クラッチFLと前進高速用クラッチFHの切換のみで可能である。
【0092】
このため、素早い変速が可能になり、変速時における車両の速度低下が小さく、変速時のショックを抑えることができる。また、同様の理由により、迅速な作業が可能になる。
【0093】
また、バックホーローダにおいて使用頻度の高い後進用クラッチRと前進低速用クラッチFLとを、負荷トルクのもっとも小さい入力軸40に設けているので、これらのクラッチ容量を小さくすることができる。また、これらのクラッチの摩耗を抑えることができる。
【0094】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0095】
(1)前記実施形態では、前進用クラッチとして前進低速用クラッチ及び前進高速用クラッチを設けたが、これらに追加して前進中速用クラッチを設けてもよい。また、前進側に代えて後進側に同様の複数のクラッチを設けてもよい。さらに、前進側と後進側の両方に同様の複数のクラッチを設けてもよい。
【0096】
(2)前記実施形態では、本発明をバックホーローダに適用したが、本発明はホイールローダ等の他の作業車両にも同様に適用することができる。
【0097】
(3)前記実施形態では、2つの中間軸を有するトランスミッションを例にとって説明したが、中間軸の個数は限定されない。1つの中間軸、あるいは3つ以上の中間軸を有するトランスミッションにも、本発明を同様に適用することができる。
【0098】
(4)前記実施形態における変装段数は一例であって、本発明はこれらの変速段数に限定されるものではない。さらに、各クラッチの配置についても同様であり、前記実施形態の配置に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1 バックホーローダ
3 ローダ
4 バックホー
6 トランスミッション
12 前輪
13 後輪
40 入力軸
41 第1中間軸
42 第2中間軸
43 前出力軸
44 後出力軸
45 リバース軸
60 制御部
FL 前進低速用クラッチ
FH 前進高速用クラッチ
R 後進用クラッチ
C1〜C3 第1〜第3クラッチ
CS 駆動方式切換用クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローダ作業を行う作業車両に搭載される多軸式トランスミッションであって、
動力が入力される入力軸と、
作業車両の車輪に連結される出力軸と、
前記入力軸と前記出力軸との間に配置された少なくとも1つの中間軸と、
前記入力軸から前記中間軸を介して前記出力軸に動力を伝達する動力伝達機構と、
前記入力軸から前記出力軸への動力伝達経路を切り換える切換手段と、
を備え、
前記動力伝達機構は、前後進切換用の前進用クラッチ及び後進用クラッチと、速度段を切り替えるための複数の速度段切換用クラッチと、を含み、前記前進用クラッチ及び前記後進用クラッチの少なくとも一方は速度領域を切り換えるための複数の速度領域切換用クラッチを有しており、
前記切換手段は、ローダ作業に用いられる複数の変速段においては、前記複数の速度領域切換用クラッチ及び前記複数の速度段切換用クラッチのうちの1つのクラッチのみを切り換えて変速段を切り換える、
作業車両用トランスミッション。
【請求項2】
前記切換手段は、ローダ作業用速度段より高速の変速段においては、前記複数の速度領域切換用クラッチ及び前記複数の速度段切換用クラッチのうちの少なくとも1つの速度領域切換用クラッチを切り換えて変速段を切り換える、請求項1に記載の作業車両用トランスミッション。
【請求項3】
前記前進用クラッチは前進用第1クラッチ及び前進用第2クラッチ有し、
前記速度段切換用クラッチは、第1クラッチ、第2クラッチ、及び第3クラッチを有し、
前記切換手段は、
前進1速では前記前進用第1クラッチと前記第1クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
前進2速では前記前進用第1クラッチと前記第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
前進3速では前記前進用第2クラッチと前記第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
前進4速では前記前進用第1クラッチと前記第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
前進5速では前記前進用第2クラッチと前記第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
後進1速では前記後進用クラッチと前記第1クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
後進2速では前記後進用クラッチと前記第2クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にし、
後進3速では前記後進用クラッチと前記第3クラッチとを動力伝達状態にするとともに、他のクラッチを動力遮断状態にする、
請求項1又は2に記載の作業車両用トランスミッション。
【請求項4】
前記前進用クラッチ及び前記後進用クラッチは前記入力軸に配置されている、請求項1に記載の作業車両用トランスミッション。
【請求項5】
前記出力軸は、前記中間軸からの動力を前輪に伝達する前出力軸と、前記中間軸からの動力を後輪に伝達する後出力軸と、を有している、請求項1から4のいずれかに記載の作業車両用トランスミッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−44368(P2013−44368A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181725(P2011−181725)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【特許番号】特許第5095849号(P5095849)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】