作業車両
【課題】運転座席及びフェンダ部及びフェンダと連結した側面部カバーを複合的に防振支持した作業車両を提供する。
【解決手段】機体フレーム20を、左右両側に前後方向に配設した側部フレーム21と、該側部フレーム21の後部から上方に立設してロプス30を支持するためのロプス支持フレーム22と、前記ロプス支持フレーム22の中途部に架設した後フレーム28で構成した作業車両であって、前記側部フレーム21とフロア9の間、および、ロプス支持フレーム22とシートブラケット15の間に、それぞれ防振部材31・32・33・34を介装した。
【解決手段】機体フレーム20を、左右両側に前後方向に配設した側部フレーム21と、該側部フレーム21の後部から上方に立設してロプス30を支持するためのロプス支持フレーム22と、前記ロプス支持フレーム22の中途部に架設した後フレーム28で構成した作業車両であって、前記側部フレーム21とフロア9の間、および、ロプス支持フレーム22とシートブラケット15の間に、それぞれ防振部材31・32・33・34を介装した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、特に、トラクタの運転座席周囲の振動および騒音を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、運転座席は快適な乗り心地を確保するために防振部材を介して作業車両の機体フレームに取り付けられる(特許文献1及び特許文献2参照)。前記防振部材は運転座席の下方に配設する機体フレームとの間に介装されることが多く、また、その取り付け箇所も一箇所乃至は三箇所程度であった。
【特許文献1】特開2006−27342号公報
【特許文献2】実公平6−9891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術のように防振部材による運転座席の支持をする箇所が少ない場合には、騒音や振動の軽減が不十分となる場合があった。また、運転座席と左右後輪を覆う左右フェンダ部とを連結して構成した場合には、運転座席のみを防振しても左右にあるフェンダ部などの防振が不十分となり、結果として運転座席の防振性能が不十分となる場合があった。さらに機体フレームでロプス(転倒時防護フレーム)を支持する構造を持った作業車両においては、例えばロプスの直下方に弾性体からなる防振部材を介装したのでは、ロプスの強度が下がってしまう問題が発生する。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、運転座席及びフェンダ部及びフェンダと連結した側面部カバーを複合的に防振支持した作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、機体フレームを、左右両側に前後方向に配設した側部フレームと、該側部フレームの後部から上方に立設してロプスを支持するためのロプス支持フレームと、前記ロプス支持フレームの中途部に架設した後フレームで構成した作業車両であって、前記側部フレームとフロアの間、および、ロプス支持フレームとシートブラケットの間に、それぞれ防振部材を介装したものである。
【0006】
請求項2においては、前記シートブラケットの後方の上下に横フレームを平行に固設し、該上下の横フレームに防振部材を介してロプス支持フレームにシートブラケットを取り付けるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、作業車両の機体側から運転座席に伝播する振動及び騒音を低減することにより、作業者の快適性が向上する。また、作業車両の機体側からロプス支持フレームに伝わる振動が低減するため、ロプスの耐久度が向上する。
【0009】
請求項2においては、上下の横フレームによりシートブラケットを補強できるとともに、ロプス支持フレームに対してシートブラケットを強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、本発明に係る作業車両の実施の一形態であるトラクタの全体構成について説明する。
図1は本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した斜視図、図2は作業車両を示した右側面図、図3は作業車両を示した平面図、図4はカバー及び機体フレームを示した右側面図、図5は機体フレームを示した右側面図、図6は機体フレームを示した後方斜視図、図7は運転座席を示した右側面図、図8はミッションケースを示した斜視図、図9はミッションケース及び後車軸ケースの内部を示した一部断面図である。
なお、本発明に係る作業車両は本実施例のトラクタに限らず、コンバインや運搬車等の農業用車両、あるいはバックホーやローダ等の建設機械等、作業者が搭乗して運転操作する作業車両に広く適用可能である。
また、以下の説明では図1中の矢印Aの方向を(トラクタが直進時に移動する方向)をトラクタの「前方」とする。
【0011】
本実施例に係るトラクタについて、図1乃至図3を用いて説明する。
1はトラクタの走行機体で、走行機体1の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、前記走行機体1前部のボンネット4内には図示せぬエンジンが配置されている。該ボンネット4の後方にはステアリングハンドル5が配設され、該ステアリングハンドル5の後方には運転座席6が配置されている。また、運転座席6の側部には主変速レバー、副変速レバー、PTO変速レバー、ポジションレバー等が配設されている。
エンジンの後部にはクラッチハウジング7が配置され、クラッチハウジング7の後部にミッションケース8が配設され(図4参照)、該ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース63(図9参照)を介して後輪3・3が取り付けられており、前記エンジンからの駆動力を前輪2・2及び後輪3・3に伝達可能として駆動する。
【0012】
前記クラッチハウジング7の上部にフロア9が設けられており、該フロア9の正面視右側方下部には操縦者が運転座席6に乗り込むための補助ステップ10が配設されている。前記フロア9前方の左右にはブレーキペダル11とクラッチペダル12が配設されている。
前記フロア9の後方は、シートブラケット15が配設されている。該シートブラケット15の両側には、前記後輪3・3の上方を覆うための左右フェンダ16・16と、機体後部を保護するリヤカバー18と、前記左右フェンダ16・16の内側下部に配置され機体側面を保護する側板19が一体的に連結固定されている。
【0013】
次に機体フレーム20について図4乃至図6を用いて説明する。
機体フレーム20は、前記クラッチハウジング7及びミッションケース8の左右両側方に配し、機体前後方向に延設された側部フレーム21・21と、該側部フレーム21・21の後端と連結し、ロプス(転倒時防護フレーム)30を支持するためのロプス支持フレーム22・22と、左右の前記ロプス支持フレーム22・22の上部間に架設した後部フレーム28と、から構成されている。
【0014】
前記側部フレーム21及びロプス支持フレーム22は左右同一の構造となっているので以下、走行機体正面視右側の構造について説明する。
前記側部フレーム21は正面断面視略逆「L」字状に構成され、例えば鋼鉄などによって構成されている。左右の側部フレーム21・21の前部はエンジンルームと運転席側を遮蔽するための遮蔽板35により連結されている。
こうして、機体フレーム20は側部フレーム21の前部が遮蔽板35やクラッチハウジング7に連結固定され、中途部のロプス支持フレーム22下部が後車軸ケース63に固設され、ロプス支持フレーム22の中途部間が後部フレーム28により連結され、上部がロプス30により連結されて、枠状に強固なフレームを構成している。
一方前記ロプス支持フレーム22は前記ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース63に固設するプレート状の車軸支持フレーム22aと、前記ロプスを支持するために車軸支持フレーム22aより車体後上方に突設した縦フレーム22cによって構成されている。
【0015】
また、機体フレーム20の後部に防振部材32・33を介してシートブラケット15等を支持するために、前記縦フレーム22cの上下中途部から中取付ステー25が前方に突設され、縦フレーム22cの上部から前方に上取付ステー26が突設されている。
【0016】
前記左右の中取付ステー25・25上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材32・32が固設され、該防振部材32・32上に第一横フレーム23の両側が固定されて架設されている。また、前記左右の上取付ステー26・26上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材33・33が固設され、該防振部材33・33上に第二横フレーム24の両側が固定されて横設されている。該第二横フレーム24にはその左右幅方向の端部に、フェンダ連結板24a・24aを機体前後方向に延設している。該フェンダ連結板24a・24aにはフェンダ16が螺子等によって固設されている。
こうして、前記第一横フレーム23上にシートブラケット15が取付固定されて、その両側部にフェンダ16・16が固設され、機体フレーム20上にシートブラケット15とフェンダ16・16が防振部材32・32・33・33を介して防振支持される。
【0017】
また、機体フレーム20上に防振部材を介してシートブラケット15の前部に連結されるフロア9を支持するために、側部フレーム21の前端上に前取付ステー29が固設されている。該前取付ステー29・29上に取り付けた防振部材34上にフロア9の前部が取付固定される。
そして、前記車軸支持フレーム22aより前方に下取付ステー27が突設され、該下取付ステー27上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材31が取り付けられ、該防振部材31上に側部フレーム21の後部が固定される。
こうして、フロア9が機体フレーム20上に防振支持され、シートブラケット15とともに防振支持されることになる。
【0018】
次に本発明の要部である、防振部材31・31・32・32・33・33・34・34の配置について説明する。
前記オペレーターは走行時や作業時等において、運転座席6上に着座し、足をフロア9上に載置する。この運転座席6はシートブラケット15上に取り付けられ、該シートブラケット15は左右の防振部材32・32・33・33を介して機体フレーム20に防振支持される。前記フロア9は、前部で防振部材34・34を介して機体フレーム20上に防振支持されており、機体フレーム20の側部フレーム21の後部が防振部材31・31を介してロプス支持フレーム22に防振支持される。以上、左右合わせて計八箇所に防振部材31・31・32・32・33・33・34・34を配置して、運転部を安定して防振支持することを可能としている。
なお、防振部材はゴムの他、バネなどの他の弾性体によって構成することも可能である。
【0019】
次に運転座席6の支持構造について図7を用いて説明する。
前記シートブラケット15上には、前後スライド調整可能とする位置調整部材17が取り付けられ、該位置調整部材17の前部に連結板17aを形成して、前記運転座席6の底面から下方に突出した連結板6aとを支軸8bによって連結し、運転座席6を必要に応じて支軸8bを軸に前倒姿勢に回動できるように構成している。
一方運転座席6の後部下面には、運転座席6を弾性的に当接支持する防振バネ38が固設されている。該防振バネ38によって走行機体1より伝達する振動や騒音を軽減している。
【0020】
一方、ロプス支持フレーム22の縦フレーム22cの下部は車軸支持フレーム22aを介して側部フレーム21と後車軸ケース63に固設される。左右の縦フレーム22cの上部には略逆U字状に構成したロプス30が前方へ傾倒可能に取り付けられる。
こうして、ロプス30は防振支持されることなく機体フレーム20に固設されることになり、ロプスの強度が向上し、転倒時の衝撃にも耐えうることが可能となる。
【0021】
次にミッションケース及びリアアクセルケースの構造について説明する。
図8及び図9に示すように、エンジンの後部にクラッチハウジング7が配置され、該クラッチハウジング7の後部に前記ミッションケース8が配設されている。該ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース(リアアクスルケース)63を介して後輪3・3が取り付けられている。
【0022】
前記ミッションケース8と後車軸ケース63に、ブレーキ軸となるリダクション軸52と、車軸となるリアアクスル軸53が平行に配置され、リダクション軸52及びリアアクスル軸53はベアリングを介して後車軸ケース63とミッションケース8に回転自在に支持されている。
【0023】
前記リダクション軸52の端部にはブレーキ装置60が配置されている。該リダクション軸52の後車軸ケース63とミッションケース8との境界付近には歯車61が形成されており、一方、リアアクスル軸53のミッションケース8側の端部に嵌合された歯車62と噛合され、該歯車61・62により減速歯車を構成し、該リアアクスル軸53の端部には後輪3が固設されている。このように構成することにより、リダクション軸52からリアアクスル軸53に動力が減速して伝達され、後輪3を回転駆動するようにしている。
【0024】
前記ブレーキ装置60は前記リダクション軸52と平行にブレーキカム軸74が貫通して回転可能に横架され、該ブレーキカム軸74の端部にはブレーキアーム75が固設され、該ブレーキアーム75よりリンクまたはワイヤーを介してブレーキペダル11と連結されている。
【0025】
このような構成において、運転部に設けられた左右のブレーキペダル11を踏むことによって、リンク等を介してブレーキアーム75が引っ張られてブレーキカム軸74が回動される。そして、該ブレーキカム軸74の回動によって摩擦板65を圧接して、リダクション軸52の回転を制動する。
【0026】
また、図8に示すように前記ミッションケース8後部のリアアクスル軸53を軸支するボス部8aの周囲には複数のリブ80を放射状に設けている。該リブ80の形状はボス部8aに遠い位置から近い位置に向けて高くなるように傾斜をつけた構成としている。すなわち、ボス部8aの周囲でのリブ80の高さが高くなるため、ボス部8aにかかる曲げモーメントに耐えられるようにしている。また、ボス部8aから離れたリブ80の高さは比較的低くなっており、歯車62の配置できる容積を大きく取ることができる。
【0027】
以上のように、本発明にかかる作業車両は、機体フレーム20を、左右両側に前後方向に配設した側部フレーム21と、該側部フレーム21の後部から上方に立設してロプス30を支持するためのロプス支持フレーム22と、前記ロプス支持フレーム22の中途部に架設した後フレーム28で構成した作業車両であって、前記側部フレーム21とフロア9の間、および、ロプス支持フレーム22とシートブラケット15の間に、それぞれ防振部材31・32・33・34を介装したものである。このように構成することにより、作業車両の機体側から運転座席に伝播する振動及び騒音を低減することにより、作業者の快適性が向上する。また、作業車両の機体側からロプス支持フレームに伝わる振動が低減するため、ロプスの耐久度が向上する。
【0028】
また、前記シートブラケット15の後方の上下に横フレーム23・24を平行に固設し、該上下の横フレーム23・24に防振部材32・33を介してロプス支持フレーム22にシートブラケット15を取り付けるものである。このように構成することにより、上下の横フレームによりシートブラケットを補強できるとともに、ロプス支持フレームに対してシートブラケットを強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】作業車両を示した右側面図。
【図3】作業車両を示した平面図。
【図4】カバー及び機体フレームを示した右側面図。
【図5】機体フレームを示した右側面図。
【図6】機体フレームを示した後方斜視図。
【図7】運転座席を示した右側面図。
【図8】ミッションケースを示した斜視図。
【図9】ミッションケース及び後車軸ケースの内部を示した一部断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 走行機体
2 前輪
3 後輪
6 運転座席
8 ミッションケース
8a ボス部
15 カバー
16 フェンダ
20 機体フレーム
21 側部フレーム
22 ロプス支持フレーム
23 第一横フレーム
24 第二横フレーム
31 防振部材
32 防振部材
33 防振部材
80 リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、特に、トラクタの運転座席周囲の振動および騒音を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、運転座席は快適な乗り心地を確保するために防振部材を介して作業車両の機体フレームに取り付けられる(特許文献1及び特許文献2参照)。前記防振部材は運転座席の下方に配設する機体フレームとの間に介装されることが多く、また、その取り付け箇所も一箇所乃至は三箇所程度であった。
【特許文献1】特開2006−27342号公報
【特許文献2】実公平6−9891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術のように防振部材による運転座席の支持をする箇所が少ない場合には、騒音や振動の軽減が不十分となる場合があった。また、運転座席と左右後輪を覆う左右フェンダ部とを連結して構成した場合には、運転座席のみを防振しても左右にあるフェンダ部などの防振が不十分となり、結果として運転座席の防振性能が不十分となる場合があった。さらに機体フレームでロプス(転倒時防護フレーム)を支持する構造を持った作業車両においては、例えばロプスの直下方に弾性体からなる防振部材を介装したのでは、ロプスの強度が下がってしまう問題が発生する。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、運転座席及びフェンダ部及びフェンダと連結した側面部カバーを複合的に防振支持した作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、機体フレームを、左右両側に前後方向に配設した側部フレームと、該側部フレームの後部から上方に立設してロプスを支持するためのロプス支持フレームと、前記ロプス支持フレームの中途部に架設した後フレームで構成した作業車両であって、前記側部フレームとフロアの間、および、ロプス支持フレームとシートブラケットの間に、それぞれ防振部材を介装したものである。
【0006】
請求項2においては、前記シートブラケットの後方の上下に横フレームを平行に固設し、該上下の横フレームに防振部材を介してロプス支持フレームにシートブラケットを取り付けるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、作業車両の機体側から運転座席に伝播する振動及び騒音を低減することにより、作業者の快適性が向上する。また、作業車両の機体側からロプス支持フレームに伝わる振動が低減するため、ロプスの耐久度が向上する。
【0009】
請求項2においては、上下の横フレームによりシートブラケットを補強できるとともに、ロプス支持フレームに対してシートブラケットを強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、本発明に係る作業車両の実施の一形態であるトラクタの全体構成について説明する。
図1は本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した斜視図、図2は作業車両を示した右側面図、図3は作業車両を示した平面図、図4はカバー及び機体フレームを示した右側面図、図5は機体フレームを示した右側面図、図6は機体フレームを示した後方斜視図、図7は運転座席を示した右側面図、図8はミッションケースを示した斜視図、図9はミッションケース及び後車軸ケースの内部を示した一部断面図である。
なお、本発明に係る作業車両は本実施例のトラクタに限らず、コンバインや運搬車等の農業用車両、あるいはバックホーやローダ等の建設機械等、作業者が搭乗して運転操作する作業車両に広く適用可能である。
また、以下の説明では図1中の矢印Aの方向を(トラクタが直進時に移動する方向)をトラクタの「前方」とする。
【0011】
本実施例に係るトラクタについて、図1乃至図3を用いて説明する。
1はトラクタの走行機体で、走行機体1の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、前記走行機体1前部のボンネット4内には図示せぬエンジンが配置されている。該ボンネット4の後方にはステアリングハンドル5が配設され、該ステアリングハンドル5の後方には運転座席6が配置されている。また、運転座席6の側部には主変速レバー、副変速レバー、PTO変速レバー、ポジションレバー等が配設されている。
エンジンの後部にはクラッチハウジング7が配置され、クラッチハウジング7の後部にミッションケース8が配設され(図4参照)、該ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース63(図9参照)を介して後輪3・3が取り付けられており、前記エンジンからの駆動力を前輪2・2及び後輪3・3に伝達可能として駆動する。
【0012】
前記クラッチハウジング7の上部にフロア9が設けられており、該フロア9の正面視右側方下部には操縦者が運転座席6に乗り込むための補助ステップ10が配設されている。前記フロア9前方の左右にはブレーキペダル11とクラッチペダル12が配設されている。
前記フロア9の後方は、シートブラケット15が配設されている。該シートブラケット15の両側には、前記後輪3・3の上方を覆うための左右フェンダ16・16と、機体後部を保護するリヤカバー18と、前記左右フェンダ16・16の内側下部に配置され機体側面を保護する側板19が一体的に連結固定されている。
【0013】
次に機体フレーム20について図4乃至図6を用いて説明する。
機体フレーム20は、前記クラッチハウジング7及びミッションケース8の左右両側方に配し、機体前後方向に延設された側部フレーム21・21と、該側部フレーム21・21の後端と連結し、ロプス(転倒時防護フレーム)30を支持するためのロプス支持フレーム22・22と、左右の前記ロプス支持フレーム22・22の上部間に架設した後部フレーム28と、から構成されている。
【0014】
前記側部フレーム21及びロプス支持フレーム22は左右同一の構造となっているので以下、走行機体正面視右側の構造について説明する。
前記側部フレーム21は正面断面視略逆「L」字状に構成され、例えば鋼鉄などによって構成されている。左右の側部フレーム21・21の前部はエンジンルームと運転席側を遮蔽するための遮蔽板35により連結されている。
こうして、機体フレーム20は側部フレーム21の前部が遮蔽板35やクラッチハウジング7に連結固定され、中途部のロプス支持フレーム22下部が後車軸ケース63に固設され、ロプス支持フレーム22の中途部間が後部フレーム28により連結され、上部がロプス30により連結されて、枠状に強固なフレームを構成している。
一方前記ロプス支持フレーム22は前記ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース63に固設するプレート状の車軸支持フレーム22aと、前記ロプスを支持するために車軸支持フレーム22aより車体後上方に突設した縦フレーム22cによって構成されている。
【0015】
また、機体フレーム20の後部に防振部材32・33を介してシートブラケット15等を支持するために、前記縦フレーム22cの上下中途部から中取付ステー25が前方に突設され、縦フレーム22cの上部から前方に上取付ステー26が突設されている。
【0016】
前記左右の中取付ステー25・25上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材32・32が固設され、該防振部材32・32上に第一横フレーム23の両側が固定されて架設されている。また、前記左右の上取付ステー26・26上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材33・33が固設され、該防振部材33・33上に第二横フレーム24の両側が固定されて横設されている。該第二横フレーム24にはその左右幅方向の端部に、フェンダ連結板24a・24aを機体前後方向に延設している。該フェンダ連結板24a・24aにはフェンダ16が螺子等によって固設されている。
こうして、前記第一横フレーム23上にシートブラケット15が取付固定されて、その両側部にフェンダ16・16が固設され、機体フレーム20上にシートブラケット15とフェンダ16・16が防振部材32・32・33・33を介して防振支持される。
【0017】
また、機体フレーム20上に防振部材を介してシートブラケット15の前部に連結されるフロア9を支持するために、側部フレーム21の前端上に前取付ステー29が固設されている。該前取付ステー29・29上に取り付けた防振部材34上にフロア9の前部が取付固定される。
そして、前記車軸支持フレーム22aより前方に下取付ステー27が突設され、該下取付ステー27上にはゴム等の弾性部材で構成した防振部材31が取り付けられ、該防振部材31上に側部フレーム21の後部が固定される。
こうして、フロア9が機体フレーム20上に防振支持され、シートブラケット15とともに防振支持されることになる。
【0018】
次に本発明の要部である、防振部材31・31・32・32・33・33・34・34の配置について説明する。
前記オペレーターは走行時や作業時等において、運転座席6上に着座し、足をフロア9上に載置する。この運転座席6はシートブラケット15上に取り付けられ、該シートブラケット15は左右の防振部材32・32・33・33を介して機体フレーム20に防振支持される。前記フロア9は、前部で防振部材34・34を介して機体フレーム20上に防振支持されており、機体フレーム20の側部フレーム21の後部が防振部材31・31を介してロプス支持フレーム22に防振支持される。以上、左右合わせて計八箇所に防振部材31・31・32・32・33・33・34・34を配置して、運転部を安定して防振支持することを可能としている。
なお、防振部材はゴムの他、バネなどの他の弾性体によって構成することも可能である。
【0019】
次に運転座席6の支持構造について図7を用いて説明する。
前記シートブラケット15上には、前後スライド調整可能とする位置調整部材17が取り付けられ、該位置調整部材17の前部に連結板17aを形成して、前記運転座席6の底面から下方に突出した連結板6aとを支軸8bによって連結し、運転座席6を必要に応じて支軸8bを軸に前倒姿勢に回動できるように構成している。
一方運転座席6の後部下面には、運転座席6を弾性的に当接支持する防振バネ38が固設されている。該防振バネ38によって走行機体1より伝達する振動や騒音を軽減している。
【0020】
一方、ロプス支持フレーム22の縦フレーム22cの下部は車軸支持フレーム22aを介して側部フレーム21と後車軸ケース63に固設される。左右の縦フレーム22cの上部には略逆U字状に構成したロプス30が前方へ傾倒可能に取り付けられる。
こうして、ロプス30は防振支持されることなく機体フレーム20に固設されることになり、ロプスの強度が向上し、転倒時の衝撃にも耐えうることが可能となる。
【0021】
次にミッションケース及びリアアクセルケースの構造について説明する。
図8及び図9に示すように、エンジンの後部にクラッチハウジング7が配置され、該クラッチハウジング7の後部に前記ミッションケース8が配設されている。該ミッションケース8の左右両側面に固設した後車軸ケース(リアアクスルケース)63を介して後輪3・3が取り付けられている。
【0022】
前記ミッションケース8と後車軸ケース63に、ブレーキ軸となるリダクション軸52と、車軸となるリアアクスル軸53が平行に配置され、リダクション軸52及びリアアクスル軸53はベアリングを介して後車軸ケース63とミッションケース8に回転自在に支持されている。
【0023】
前記リダクション軸52の端部にはブレーキ装置60が配置されている。該リダクション軸52の後車軸ケース63とミッションケース8との境界付近には歯車61が形成されており、一方、リアアクスル軸53のミッションケース8側の端部に嵌合された歯車62と噛合され、該歯車61・62により減速歯車を構成し、該リアアクスル軸53の端部には後輪3が固設されている。このように構成することにより、リダクション軸52からリアアクスル軸53に動力が減速して伝達され、後輪3を回転駆動するようにしている。
【0024】
前記ブレーキ装置60は前記リダクション軸52と平行にブレーキカム軸74が貫通して回転可能に横架され、該ブレーキカム軸74の端部にはブレーキアーム75が固設され、該ブレーキアーム75よりリンクまたはワイヤーを介してブレーキペダル11と連結されている。
【0025】
このような構成において、運転部に設けられた左右のブレーキペダル11を踏むことによって、リンク等を介してブレーキアーム75が引っ張られてブレーキカム軸74が回動される。そして、該ブレーキカム軸74の回動によって摩擦板65を圧接して、リダクション軸52の回転を制動する。
【0026】
また、図8に示すように前記ミッションケース8後部のリアアクスル軸53を軸支するボス部8aの周囲には複数のリブ80を放射状に設けている。該リブ80の形状はボス部8aに遠い位置から近い位置に向けて高くなるように傾斜をつけた構成としている。すなわち、ボス部8aの周囲でのリブ80の高さが高くなるため、ボス部8aにかかる曲げモーメントに耐えられるようにしている。また、ボス部8aから離れたリブ80の高さは比較的低くなっており、歯車62の配置できる容積を大きく取ることができる。
【0027】
以上のように、本発明にかかる作業車両は、機体フレーム20を、左右両側に前後方向に配設した側部フレーム21と、該側部フレーム21の後部から上方に立設してロプス30を支持するためのロプス支持フレーム22と、前記ロプス支持フレーム22の中途部に架設した後フレーム28で構成した作業車両であって、前記側部フレーム21とフロア9の間、および、ロプス支持フレーム22とシートブラケット15の間に、それぞれ防振部材31・32・33・34を介装したものである。このように構成することにより、作業車両の機体側から運転座席に伝播する振動及び騒音を低減することにより、作業者の快適性が向上する。また、作業車両の機体側からロプス支持フレームに伝わる振動が低減するため、ロプスの耐久度が向上する。
【0028】
また、前記シートブラケット15の後方の上下に横フレーム23・24を平行に固設し、該上下の横フレーム23・24に防振部材32・33を介してロプス支持フレーム22にシートブラケット15を取り付けるものである。このように構成することにより、上下の横フレームによりシートブラケットを補強できるとともに、ロプス支持フレームに対してシートブラケットを強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】作業車両を示した右側面図。
【図3】作業車両を示した平面図。
【図4】カバー及び機体フレームを示した右側面図。
【図5】機体フレームを示した右側面図。
【図6】機体フレームを示した後方斜視図。
【図7】運転座席を示した右側面図。
【図8】ミッションケースを示した斜視図。
【図9】ミッションケース及び後車軸ケースの内部を示した一部断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 走行機体
2 前輪
3 後輪
6 運転座席
8 ミッションケース
8a ボス部
15 カバー
16 フェンダ
20 機体フレーム
21 側部フレーム
22 ロプス支持フレーム
23 第一横フレーム
24 第二横フレーム
31 防振部材
32 防振部材
33 防振部材
80 リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームを、左右両側に前後方向に配設した側部フレームと、該側部フレームの後部から上方に立設してロプスを支持するためのロプス支持フレームと、前記ロプス支持フレームの中途部に架設した後フレームで構成した作業車両であって、
前記側部フレームとフロアの間、および、ロプス支持フレームとシートブラケットの間に、それぞれ防振部材を介装したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記シートブラケットの後方の上下に横フレームを平行に固設し、該上下の横フレームに防振部材を介してロプス支持フレームにシートブラケットを取り付けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
機体フレームを、左右両側に前後方向に配設した側部フレームと、該側部フレームの後部から上方に立設してロプスを支持するためのロプス支持フレームと、前記ロプス支持フレームの中途部に架設した後フレームで構成した作業車両であって、
前記側部フレームとフロアの間、および、ロプス支持フレームとシートブラケットの間に、それぞれ防振部材を介装したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記シートブラケットの後方の上下に横フレームを平行に固設し、該上下の横フレームに防振部材を介してロプス支持フレームにシートブラケットを取り付けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−114610(P2008−114610A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296770(P2006−296770)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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