説明

作業車両

【課題】 本発明の課題は、追加部品を必要とすることなく、見栄え良く、かつ安価にフロアプレート下への水侵入を防止できるとともに、フロア下からの騒音の漏れを防止することが可能な作業車両を提供することにある。
【解決手段】 本発明に関わる作業車両は、車両本体1Hとその前部に装備される作業装置2と車両本体1H内のダッシュボード11を覆って立設されるダッシュボードカバー12と該ダッシュボードカバー12手前に配設されるフロアプレート13と該フロアプレート13上に敷かれるフロアマット14とを備える作業車両1であって、ダッシュボードカバー12に、フロアプレート13の上面に揃えた高さをもって該フロアプレート13側に張り出したマット支持部12oを一体に成型し、フロアマット14を、フロアプレート13およびダッシュボードカバー12のマット支持部12o上に載せて配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュボードカバーと操作フロアのフロアプレート間に形成される空隙を塞ぐ構造を有する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両であるフォークリフト100は、その側面図の図4に示すように、車両本体101の前方に作業装置102が装備されている。
【0003】
フォークリフト100は、作業装置102に設置されるフォーク102fを、マスト102mに沿って上下方向に昇降動作させるとともにチルト動作させることにより、荷wの運搬等の各種作業を行なう。
【0004】
フォークリフト100の操作エリア103内のハンドル103h近傍には、車内の計器類などが配設される前部分に鉄製のダッシュボード104が配設されており、ダッシュボード104を覆って樹脂製のダッシュボードカバー105が立設されている。
【0005】
また、オペレータが操作エリア103内の運転席103sに坐った場合、足元の操作フロアFの床面を成すフロアプレート106上には、ゴム製のフロアマット107が敷かれている。
【0006】
図5(a)は、図4の運転席103s側から見たダッシュボードカバー105、フロアマット107、およびフロアプレート106の配置構成を示した斜視図であり、これら以外の構成部品は省略して示している。図6は、図5(a)に示すダッシュボードカバー105、フロアマット107、およびフロアプレート106の配置を示したA方向矢視概念図である。
【0007】
図5(a)、図6に示すように、フロア上の水が、ダッシュボードカバー105およびフロアプレート106間の空隙aを通じて、フロアプレート106下に侵入することを防止するため、フロアプレート106上に敷かれるフロアマット107の前端部107mをダッシュボードカバー105の下部にもたれさせて空隙aを塞ぐか、或いは、図7に示すように、フロアマット前端部107mをダッシュボード104の下部にもたれさせて空隙aを塞いでいる。
【0008】
なお、出願人が把握している本願に係る文献公知発明はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図6、図7に示すように、フロア下への水侵入防止のため、フロアマット107の前端部107mをダッシュボードカバー105下部またはダッシュボード104下部にもたれさせる方策は、フロアマット107を外し再組みする場合、フロアマット前端部107mの処理に時間がかかるという不都合があり、また、見栄えも悪い。
【0010】
また、図5(a)に示すように、ダッシュボードカバー105下部に屈曲部105cがある場合、フロアマット107の剛さから、もたれさせたフロアマット前端部107mが該屈曲部105cにぴったり沿い難く該屈曲部105cとフロアマット前端部107m間に隙間cが開いたり、また、フロアマット107のズレに起因して該屈曲部105cとフロアマット前端部107m間に隙間cが開くことがある。
【0011】
そのため、この隙間cを通じてフロア下に水が侵入する、また、フロア下からの騒音が隙間cを通じてフロア上に漏れるという問題がある。
【0012】
そこで、フロアマット前端部107mが該屈曲部105cに沿うように、図5(b)に示すように、屈曲部105c近傍のフロアマット前端部107mにスリットlを入れる方法等があるが、このスリットlを通じてフロア下に水が侵入したり、フロア下からの騒音がスリットlを通じてフロア上に漏れる等の不都合が生じる。
【0013】
本発明は上記実状に鑑み、追加部品を必要とすることなく、見栄え良く、かつ安価にフロア下への水侵入を防止できるとともに、フロア下からの騒音の漏れを防止することが可能な作業車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1に関わる作業車両は、車両本体とその前部に装備される作業装置と前記車両本体内のダッシュボードを覆って立設されるダッシュボードカバーと該ダッシュボードカバー手前に配設されるフロアプレートと該フロアプレート上に敷かれるフロアマットとを備える作業車両であって、前記ダッシュボードカバーに、前記フロアプレートの上面に揃えた高さをもって該フロアプレート側に張り出したマット支持部を一体に成型し、前記フロアマットを、前記フロアプレートおよび前記ダッシュボードカバーのマット支持部上に載せて配設している。
【0015】
本発明の請求項2に関わる作業車両は、請求項1の作業車両において、前記ダッシュボードカバーのマット支持部を、前記フロアプレートの幅全域に亘って形成し、前記フロアマットを、前記ダッシュボードカバーのマット支持部および前記フロアプレートの幅全域に亘って載せて配設し、前記ダッシュボードカバーおよび前記フロアプレート間の空隙を閉塞している。
【発明の効果】
【0016】
以上、詳述した如く、本発明の請求項1に関わる作業車両は、ダッシュボードカバーに、フロアプレートの上面に揃えた高さをもって該フロアプレート側に張り出したマット支持部を一体に成型し、フロアマットを、前記フロアプレートおよび前記ダッシュボードカバーのマット支持部上に載せて配設したので、追加部品および調整作業を必要とすることなく低コストの構成で、ダッシュボードカバー、フロアプレート間の空隙を埋めることができ、フロア下への水の侵入を防止できる。
【0017】
また、フロアマットをダッシュボードカバーにもたせかけない構成であるから、フロアマットの再組み時にフロアマット前端部の処理に手間がかかることはなく、かつ見栄えも良い。
【0018】
本発明の請求項2に関わる作業車両は、ダッシュボードカバーのマット支持部を、フロアプレートの幅全域に亘って形成し、フロアマットを、前記ダッシュボードカバーのマット支持部および前記フロアプレートの幅全域に亘って載せて配設し、前記ダッシュボードカバーおよび前記フロアプレート間の空隙を閉塞したので、フロア下からの騒音の漏れを可及的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
本発明を適用した作業車両の一態様であるフォークリフト1は、その側面図の図1に示すように、車両本体1Hの前方に作業装置2が装備されている。
【0021】
フォークリフト1は、作業装置2に設置されるフォーク3を、マスト5に沿ってリフトシリンダ4によって上下方向に昇降動作させるとともにチルトシリンダ6によって前傾、後傾等のチルト動作をさせ、また、車両本体1Hを走行させることにより、荷wの運搬作業等を行う。
【0022】
フォークリフト1の運転は、オペレータが操作エリア1a内の運転席7に坐り、ハンドル8、操作レバー9、およびアクセルペダル10等を適宜、操作することにより行なわれる。
【0023】
上記ハンドル8近傍の車内の計器類が配設される前部分には、鉄製のダッシュボード11が配設されており、このダッシュボード11を覆って樹脂製のダッシュボードカバー12が立設されている。
【0024】
また、オペレータが操作エリア1a内の運転席7に坐った場合、足元の操作フロアFの床面であるフロアプレート13上には、ゴム製のフロアマット14が敷かれている。
【0025】
図2は、図1において運転席7側から見たダッシュボードカバー12、フロアマット14、およびフロアプレート13の配置構成を示した斜視図であり、それ以外の構成部品は省略して示している。図3は、図2に示すダッシュボードカバー12、フロアマット14、およびフロアプレート13の配置を示したB方向矢視概念図である。
【0026】
上記フロアプレート13は、図2、図3に示すように、フロアマット14を洗った水等が、下方に配設される内蔵機器、油圧配管等にかかることを防止すべく、水平のフロアプレート主要部13sに対して前方に向って上方に傾斜するフロアプレート前傾部13kを有して形成されている。
【0027】
ダッシュボードカバー12は、樹脂成型品であり、その下端部にマット支持部12oを手前側に、すなわちフロアプレート13側に、フロアプレート13上面に沿うように高さを揃えてフロアプレート13の幅s全域に亘って張り出した形状に成型されている。
【0028】
フロアマット14は、図2、図3に示すように、ダッシュボードカバー12のマット支持部12oおよびフロアプレート13の幅s全域に亘って載せられ配設されている。
【0029】
ここで、ダッシュボードカバー12のマット支持部12oの上面が、フロアプレート13上面に沿うように高さを揃えて構成されるので、これらの上面で一平面が形成されてフロアマット14をダッシュボードカバー12のマット支持部12oの上面およびフロアプレート13上面に密接して敷くことができ、ダッシュボードカバー12およびフロアプレート13間に形成される空隙a1は、フロアマット14により完全に閉塞されている。
【0030】
なお、上述の実施例においては、ダッシュボードカバー12の下端部にマット支持部12oを形成した場合を例示したが、ダッシュボードカバー12とフロアプレート13との位置関係によっては、例えば、図3の二点鎖線で示すようにダッシュボードカバー12がフロアプレート13の下方に延在する場合には、マット支持部12oはダッシュボードカバー12の下端部以外の箇所に設けられることになる。
【0031】
このように、マット支持部12oは、必ずしもダッシュボードカバー12の下端部に設けることに限定されるものでなく、ダッシュボードカバー12における下端部以外の箇所にマット支持部12oを設ける場合もある。
【0032】
上記構成によれば、ダッシュボードカバー12に、オペレータ側、すなわちフロアプレート13側に張り出したマット支持部12oが一体に成型されるので、追加部品を必要とすることなく容易に製造できる。
【0033】
また、ダッシュボードカバー12、フロアプレート13間の空隙a1をフロアマット14により塞ぐ構成なので、製造工程において組立調整の作業が必要でなく、簡便な構成であり、生産コストが低い。
【0034】
また、ダッシュボードカバー12、フロアプレート13間の空隙a1をフロアマット14により塞ぐので、ダッシュボードカバー12、フロアプレート13間の空隙a1から水が侵入して、ダッシュボードカバー12およびフロアプレート13下方の内蔵部品に水がかかることを防止できる。
【0035】
また、ダッシュボードカバー12に、フロアプレート13の幅s全域に亘ってオペレータ側に張り出させたマット支持部12oを形成し、フロアマット14を該マット支持部12oおよびフロアプレート13の幅s全域に亘って載せるので、図2、図3に示すように、ダッシュボードカバー12およびフロアプレート13間に形成される空隙a1を可及的に閉塞でき、フロア下からの騒音の漏れを遮断することが可能である。
【0036】
また、図3に示すように、フロアマット14をダッシュボードカバー12にもたせかける構成でないため、フロアマット14を外して再組みする場合にもフロアマット14前端部の処理に時間を要することがなく、また、見栄えも良好である。
【0037】
従って、本発明によれば、追加部品を必要とすることなく低コストで、かつ見栄え良く、フロアプレート下への水侵入を防止できるとともに、フロア下からの騒音の漏れを防止することが可能な作業車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例に関わるフォークリフトを示す側面図。
【図2】実施例のフォークリフトにおいて運転席側から見たダッシュボードカバー、フロアマット、およびフロアプレートの配置構成を示した斜視図。
【図3】図2に示すダッシュボードカバー、フロアマット、およびフロアプレートの配置構成を示したB方向矢視概念図。
【図4】従来のフォークリフトを示す側面図。
【図5】(a)および(b)は、従来のフォークリフトにおいて運転席側から見た、ダッシュボードカバー、フロアマット、およびフロアプレートの配置構成を示した斜視図、および従来のダッシュボードカバー下部の屈曲部近くのフロアマット前端部にスリットを入れた場合を示した拡大斜視図。
【図6】図5(a)に示すダッシュボードカバー、フロアマット、およびフロアプレートの配置構成を示したA方向矢視概念図。
【図7】図6に示すダッシュボードカバー、フロアマット、およびフロアプレートの配置構成の代替例を示すA方向矢視概念図。
【符号の説明】
【0039】
1…フォークリフト(作業車両)、
1H…車両本体、
2…作業装置、
11…ダッシュボード、
12…ダッシュボードカバー、
12o…マット支持部、
13…フロアプレート、
14…フロアマット、
a1…空隙、
s…フロアプレートの幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体とその前部に装備される作業装置と前記車両本体内のダッシュボードを覆って立設されるダッシュボードカバーと該ダッシュボードカバー手前に配設されるフロアプレートと該フロアプレート上に敷かれるフロアマットとを備える作業車両であって、
前記ダッシュボードカバーに、前記フロアプレートの上面に揃えた高さをもって該フロアプレート側に張り出したマット支持部を一体に成型し、
前記フロアマットを、前記フロアプレートおよび前記ダッシュボードカバーのマット支持部上に載せて配設した
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ダッシュボードカバーのマット支持部を、前記フロアプレートの幅全域に亘って形成し、
前記フロアマットを、前記ダッシュボードカバーのマット支持部および前記フロアプレートの幅全域に亘って載せて配設し、前記ダッシュボードカバーおよび前記フロアプレート間の空隙を閉塞した
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−62793(P2008−62793A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242758(P2006−242758)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】