説明

作業車両

【課題】前部作業機を、車両の重心位置に安定装着させて、取付部の損傷を防止するとともに、前部作業機に、より強い力を伝えて効率的な作業ができる、作業性を向上させた作業車両を提供する。
【解決手段】車両前部であって、ボンネット2内のエンジン3や、このエンジン3の後方に有するクラッチハウジング5を載置する、機体の左右内側に並設した車体フレーム11の前部に、ヘッド13と、アーム14と、シリンダ15とからなる前部作業機12を備え、エンジン3の下方であって、車体フレーム11の底部に、前部作業機12を取付けるためのブラケット100を備える。そしてブラケット100は、左右の車体フレーム11それぞれの側部に、下方に向けて設けたステー101と、このステー101の下端部に取付けた支持板102とからなり、左右ステー101の側部にそれぞれシリンダ15のピストンロッド15bの一端部を取付けるとともに、支持板102の左右前端部にそれぞれアーム14の基端部を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部であって、ボンネット内のエンジンや、このエンジンの後方に有するクラッチハウジングを載置する、機体の左右内側に並設した車体フレームの前部に、ヘッドと、アームと、シリンダとからなる前部作業機を備える作業車両に関するものであり、より詳細には、エンジンの下方であって、車体フレームの底部に、前部作業機を取付けるためのブラケットを備える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタなどの作業車両には、車両前部にフロントドーザなどの前部作業機を着脱自在に装着する際、車体フレームの前端部近傍であって、この車体フレームの側部に設けられたブラケットの下部に、前部作業機のアームの基端部を取付けるとともに、ブラケットの上部に、同作業機のピストンロッドの先端部を取付けるものがある。(例えば特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2003−96812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両では、重量を有する前部作業機が機体の前端部近傍の車体フレームにブラケットを介して装着されるため、このブラケットなどの取付部が曲がるなど損傷し、車両に前部作業機を着脱し辛くなり、ブラケットを頻繁に交換する必要なども生じて、作業性が低下する問題があった。また、車両の推進力を用いた前部作業機による整地作業などの作業を行う際、この前部作業機に無理な力が加わり、上述同様にブラケットなどの取付部が損傷し易いとともに、機体の重心位置から離れた機体の前端部近傍に前部作業機が取付けられているため、車両の有する推進力(馬力)が車両の重心を介して効率的に伝わらず、整地作業などの作業時において前部作業機の力が不足することがあり、作業性が悪いという問題もあった。
そこで、この発明の目的は、前部作業機を、車両の重心位置に安定装着させて、取付部の損傷を防止するとともに、前部作業機に、より強い力を伝えて効率的な作業ができる、作業性を向上させた作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、車両前部であって、ボンネット内のエンジンや、該エンジンの後方に有するクラッチハウジングを載置する、機体の左右内側に並設した車体フレームの前部に、ヘッドと、アームと、シリンダとからなる前部作業機を備える作業車両において、前記エンジンの下方であって、前記車体フレームの底部に、前記前部作業機を取付けるためのブラケットを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記ブラケットは、前記左右の車体フレームそれぞれの側部に、下方に向けて設けたステーと、該ステーの下端部に取付けた支持板とからなり、前記ステーの側部に前記シリンダのピストンロッドの一端部を取付けるとともに、前記支持板の前端部に前記アームの基端部を取付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両前部であって、ボンネット内のエンジンや、このエンジンの後方に有するクラッチハウジングを載置する、機体の左右内側に並設した車体フレームの前部に、ヘッドと、アームと、シリンダとからなる前部作業機を備える作業車両において、エンジンの下方であって、車体フレームの底部に、前部作業機を取付けるためのブラケットを備えるので、前部作業機を、重量を有するエンジンを載置した車両の重心位置となる車体フレームの底部にブラケットを介して安定的に装着でき、前部作業機の重量や、作業により無理な力が加わっても、取付部の損傷を防止できるとともに、車両の有する推進力が車両の重心を介して前部作業機に効率的に伝えられ、より強い力で前部作業機を用いて円滑に作業をすることができる。従って、作業性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、ブラケットは、左右の車体フレームそれぞれの側部に、下方に向けて設けたステーと、このステーの下端部に取付けた支持板とからなり、ステーの側部にシリンダのピストンロッドの一端部を取付けるとともに、支持板の前端部にアームの基端部を取付けるので、前部作業機の車両への取付位置が低く、作業者による前部作業機の着脱作業が容易に行えるとともに、車体フレームの、エンジンやクラッチハウジングなどの重量物を載置する部分をブラケットにより補強して、それら重量物を安定的に支持することができる。従って、作業性および安全性を向上させた作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一実施例に係るクローラ式トラクタの側面図、図2は同トラクタにおけるクローラ式走行装置の斜視図、図3は同トラクタの断面平面図、図4は同トラクタにおける駆動部の断面側面図、図5は同トラクタにおけるミッションケース内の差動機構付近を拡大した断面平面図である。
【0010】
まず、クローラ式トラクタ1の概略構成について説明する。図1〜3および図7に示すように、車両1の前部には、エンジン3を覆い、車体フレーム11上に積載されたボンネット2と、このボンネット2の後ろには車両1の操縦を行うための操縦部4が配設され、この操縦部4をキャビン6で覆設してもよい。
【0011】
そして、車体フレーム11上に設けられた不図示の防振部材により防振支持される操縦部4の前方には車両1の操向を行うステアリング操舵部のステアリングホイール9が配設され、後方に設置される運転席8の左右には、車両1の走行や、後述する前部作業機12(図1では図示しない)および図示しない後部作業機の上げ下げ等を操作するための主副変速レバーおよび作業機操作レバーなどの図示しない各種レバーが配設されている。
【0012】
また、上部車体90の後方には作業に応じて取り外し可能な前記作業機が取付けられる。さらに、上部車体90の下部には車両1の走行を行う左右一対のクローラ式走行装置80が配設されている。なお、符号100は、後述する本願発明の要部である、前部作業機12を取付けるためのブラケットである。また、符号106も後述する安全ガードである。
【0013】
クローラ式走行装置80は、図2に示すとおり、進行方向に延設された左右2本のクローラフレーム81L,81Rと、このクローラフレーム81L,81R間を連結する2本のサイドフレーム82,83と、からなり、クローラフレーム81L,81Rの前後端には、それぞれ従動アイドラ85が回転自在に支持され、この2つの従動アイドラ85間には、4つのイコライザ転輪86が回転自在に支持されている。そして、2つの従動アイドラ85と、4つのイコライザ転輪86と、リアアクスルケース88L,88Rより軸支された駆動スプロケット60L,60Rとが、この駆動スプロケット60L,60Rを頂点とし、2つの従動アイドラ85を結ぶ直線を底辺とする、略三角形状にクローラベルト95を巻回してなるクローラ式走行装置80が形成されている。
【0014】
前部のサイドフレーム82からは、上方へ向けてさらに2本の支持部材87が配設されており、この支持部材87をクラッチハウジング5の側面にボルト締めすることにより、上部車体90と、クローラ式走行装置80とを連結している。また、クローラフレーム81L,81Rの後部には、左右駆動スプロケット60L,60Rが接続される左右車軸(リアアクスル)89L,89Rを軸支させるための左右リアアクスルケース88L,88Rがクローラフレーム81L,81R上に左右リアアクスルケースステー84L,84Rと一体で形成される。
【0015】
以下、本発明のクローラ式トラクタ1の走行系統について説明する。エンジン3からの動力は、図3〜5に示すように、クラッチハウジング5を介してミッションケース23内の主副変速装置39で変速された後、左右の差動機構50L,50Rに入力される。そして、差動機構50L,50Rより延出された左右車軸89L,89R介して左右駆動スプロケット60L,60Rによりクローラ式走行装置80を駆動させる。また、後述する車両1を旋回させるための、旋回用の油圧変速機構(HST)ポンプ72がミッションケース23の平面視左側方に、旋回用HSTモータ73が差動機構50Lの前方にそれぞれ設けられる。また、旋回用HSTモータ73は、差動機構50Rの前方でも設置可能で、旋回用HSTポンプ72と旋回用HSTモータ73とは、ミッションケース23の平面視右側方に設けてもよい。
【0016】
そして、可変容量型である旋回用HSTポンプ72内の図示しない可動斜板は図示しない副変速アームを介してステアリングホイール9に連係され、このステアリングホイール9の操向量に応じて旋回用HSTポンプ72からの吐出量が調節され、この吐出量に応じて旋回用HSTモータ73の出力回転数と回転方向とが制御される。そして、旋回用HSTモータ73の出力と主副変速装置39からの出力とが、後述する差動機構50内で合成され、車軸89L,89Rを介して駆動スプロケット60L,60Rを回転駆動させる。
【0017】
本発明のクローラ式トラクタ1では、上記のように旋回用HSTポンプ72及び旋回用HSTモータ73を配備するが、通常、ミッションケース23の下部に配置される旋回用HSTポンプ72を、本発明においてはミッションケース23と並列配置させることで、高い最低地上高を確保することができる。また、旋回用HSTポンプ72と旋回用HSTモータ73とが別体であるため、旋回用HSTモータ73をミッションケース23の上方に配置することにより、旋回用HSTモータ73を修理する場合にも、ミッションケース23内に貯留されるオイルが旋回用HSTモータ73から流出することなく、旋回用HSTモータ73のメンテナンスや交換など取り外しが容易になり、作業効率が向上する。更に、旋回用HSTモータ73がミッションケース23の上部、特に後述する差動機構50の前部に配置させたことにより、旋回用HSTモータ73から遺漏するオイルを直接差動機構50に流下させることができる。
【0018】
続いて、ミッションケース23付近内の動力伝達の構成を説明する。図4に示すように、エンジン3の動力は、出力軸31を介して主軸37に伝達される。主軸37に固設された伝達歯車37a,37b,37c,37dは、主変速軸41に遊嵌される主変速一速歯車41a、主変速二速歯車41b、主変速三速歯車41c、主変速四速歯車41dにそれぞれ噛合されている。そして、主変速軸41の軸方向摺動可能にスプライン嵌合される2つの主変速クラッチスライダ41e,41fは、操縦部4に有する不図示の主変速レバーに連係されている。この主変速レバーの操作により主変速クラッチスライダ41e,41fと主変速一速歯車41a、主変速二速歯車41b、主変速三速歯車41c、主変速四速歯車41dのそれぞれに形成された爪との咬合を選択し、選択されたいずれか1つの上記主変速歯車41a,41b,41c,41dを介して主軸37から主変速軸41へ動力が伝達される。
【0019】
また、主変速軸41の車両進行方向前方延長部分には、正転側歯車7aおよび逆転側歯車7bがそれぞれ同一軸心上に遊嵌される前後進切換機構7が設けられる。そして、操縦部4に有する不図示のリバーサレバーを操作することによりリバーサクラッチ7cが前進側または後進側のいずれかに選択接続され、主変速軸41の回転は、正転側歯車7aまたは逆転側歯車7bのいずれかに伝達される。ただし、リバーサレバーがニュートラル位置の場合は、回転は正転側歯車7aおよび逆転側歯車7bのいずれにも伝達されない。
【0020】
正転側歯車7aは、伝達軸42に嵌合される歯車42aに、逆転側歯車7bはカウンタ軸32に嵌合されるカウンタ歯車32aにそれぞれ噛合されており、このカウンタ歯車32aは伝達軸42に嵌合される歯車42bと噛合される。その結果、リバーサクラッチ7cが前進側に接続されたときは、主変速軸41の回転動力が正転側歯車7aを介して伝達軸42に伝達され、リバーサクラッチ7cが後進側に接続されたときは、主変速軸41の回転動力が逆転側歯車7bからカウンタ軸32を介して伝達軸42を逆転方向に回転させることを可能としている。
【0021】
伝達軸42に嵌合される歯車42aは、正転側歯車7aと噛合うとともに、副変速軸45の同軸線上であり車両進行方向前方に設けられる歯車34と噛合っている。副変速軸45には、副変速シフタ45aがスプライン嵌合されており、副変速軸45の前部と歯車34の後部との間を自在に摺動可能としている。
【0022】
この副変速シフタ45aは、操縦部4に有する不図示の副変速レバーによって操作され、副変速シフタ45aの前部に形成された副変速シフタ歯45bが歯車34の後部位置34aに位置する状態の副変速三速、副変速シフタ歯45bと歯車34の後端に設けられた歯34bとが噛合う状態の副変速二速、副変速シフタ45aの中央上部に形成された歯45cと伝達軸42の中央近傍に設けられた歯車42cとが噛合う状態の副変速一速、副変速シフタ45aに回転動力が伝達されないニュートラル状態などそれぞれに切換可能とした副変速装置が構成される。これら副変速シフタ45aの摺動による歯車噛合わせの選択で、伝達軸42の回転が三段の変速を経て出力され、副変速軸45に入力された回転動力は、副変速軸45に設けられたベベルギア47を介して回転方向を前後方向から左右方向へと変え、後述するミッションケース23後方に位置する差動機構50L,50Rへと入力されることとなる。
【0023】
また、エンジン3の出力の一部は、前後進切換機構7から、それぞれ図示しないPTO変速ギアを介して、PTOカウンタ軸に連結され、車両1後部のPTO出力軸に伝えられて、不図示の後部作業機が駆動される。
【0024】
次に、車両1の旋回をおこなうための差動機構50の構成について説明する。図5に示すように、副変速軸45の後端に固設されたベベルギア47と、ピニオン軸22の中央部分に固設されたベベルギア21とを介して、前後方向の副変速後の動力を、左右方向へと回転方向を変え、後述する左右の差動機構50L,50Rへと伝達する。ピニオン軸22の左右両端に固設されたギア25L,25Rは、このギア25L,25Rと噛合するギア27L,27Rを介して、左右の入力軸20L,20Rを駆動する。この入力軸20L,20Rは、遊星ギア機構50である差動機構50のサンギア51L,51Rを回転駆動する。この差動機構50により旋回のための差動回転が出力される。
【0025】
さらに差動機構50について詳述する。差動機構50L,50Rは、入力軸20L,20Rに固設されたサンギア51L,51Rと、サンギア51L,51Rの周りを自公転自在に設けられたプラネタリアギア53L,53Rと、このプラネタリアギア53L,53Rを軸支するとともに入力軸20L,20Rと車軸89L,89Rとに回転自在に遊嵌された支持軸55L,55Rとからなる。そして、支持軸55L,55Rの外周には、さらにキャリアギア56L,56Rが形成されている。
【0026】
この差動機構50の構成により、車両1の直進時、即ち、左右の駆動スプロケット60L,60Rの回転が等しい回転数となるときは、支持軸55L,55Rは回転せず、差動機構50の各ギアは、その場で各軸上を自転回転して駆動スプロケット60L,60Rを回転させる。その結果、左右の駆動スプロケット60L,60Rはそれぞれ同回転数かつ同回転方向で回転し、車両1を直進させる。一方、車両1の旋回時、即ち、左右の駆動スプロケット60L,60Rの回転が異なる回転数となるときは、支持軸55L,55Rを、後述する旋回用HSTモータ73により回転駆動させて、差動機構50のプラネタリアギア53L,53Rを、サンギア51L,51R周囲において公転させる。
【0027】
そして、サンギア51L,51Rの回転に加え、支持軸55L,55Rの回転により、サンギア51L,51Rと、支持軸55L,55Rとの間に位置するプラネタリアギア53L,53Rが、サンギア51L,51R周りを公転し始める。このとき、サンギア51L,51Rの回転と、支持軸55L,55Rの回転とが等しい方向である場合には、これらサンギア51L,51Rの回転と、支持軸55L,55Rの回転との回転和がプラネタリアギア53L,53Rの自公転を介して、車軸ギア58L,58Rを回転させる。
【0028】
一方、サンギア51L,51Rの回転と、支持軸55L,55Rの回転とが異なる方向である場合、これら、サンギア51L,51Rの回転と、支持軸55L,55Rの回転との回転差が、プラネタリアギア53L,53Rの自公転を介して、車軸ギア58L,58Rを回転させる。
【0029】
ここで、支持軸55L,55Rの回転は、旋回用HSTモータ73により回転駆動されるが、旋回用HSTモータ73は、上述のとおりステアリングホイール9の操向に伴い回転駆動され、旋回用HSTモータ73の回転は、この旋回用HSTモータ73の出力ギア35に噛合う左右2つの逆転ギア52L,52Rを介して左右の逆転軸43L,43Rをそれぞれ逆回転させる。そして、これら逆転軸43L,43Rはそれぞれ、逆転軸43L,43Rの一端に固設された差動ギア44L,44Rと、キャリアギア56L,56Rとを介して左右の支持軸55L,55Rを逆回転させる。このようにして、旋回用HSTモータ73の回転に伴い、差動機構50の左右支持軸55L,55Rは、それぞれ逆回転し、その結果、一方の差動機構50は回転が足され、他方の差動機構50は回転が差し引かれるため、左右の駆動スプロケット60L,60Rはそれぞれ異なる回転数で回転し、車両1を旋回させる。
【0030】
このように、前部のエンジン3から、ミッションケース23内の主副変速装置39を介して後部へと伝達される直進用の出力と、ステアリングホイール9の操向により回転駆動する旋回用HSTモータ73の出力とが、差動機構50内で合成されることにより、左右のクローラ走行装置80の駆動スプロケット60L,60Rを差動回転させ、左方向若しくは右方向へと車両1を旋回させる構成である。
【0031】
また、ピニオン軸22Rの片端には、ブレーキ機構29である複数のブレーキ板29aが、ピニオン軸22上に形成されており、運転者の操作により図示しないブレーキペダルが操作されると、ブレーキアーム28が連動して回動し、このブレーキアーム28の回動に伴い、ピニオン軸22にブレーキ作用を発生させるとともに車両1を減速させるものである。
【0032】
特に、ブレーキ板29aは、ピニオン軸22Rの右端に位置しており、ブレーキ板29aや、ブレーキアーム28などを収容する図示しないブレーキケースを右側の差動機構50Rを収容する右リアアクスルケース80Rと一体とすることが可能である。また、旋回用HSTモータ73が、左リアアクスルケース88L上に位置しているため、右リアアスクルケース88Rに配置されたブレーキ機構29と、左リアアクスルケース88Lに配置された旋回用HSTモータ73とにより車両1の重量バランスを保つことが可能である。
【0033】
さらには、ブレーキ機構29と、旋回用HSTモータ73とを左右に分けて配置することにより、ブレーキ機構29を構成する不図示のリンク関係と、旋回用HSTポンプ72および旋回用HSTモータ73からなる旋回用HST機構を構成する不図示の油圧配管類と、を左右のリアアクスルケース88L,88R内に分けて配置することが可能であり、車両1のメンテナンス性が向上する効果がある。
【0034】
次に、本願発明の、前部作業機を車両に取付けるためのブラケットについて、その具体的構成を説明する。図6は前部作業機を取付けたトラクタ前部の左側面図、図7はブラケットの設置を示す車体フレーム周辺の左側面図、図8はブラケットを下方から見た車体フレーム周辺の斜視図、図9はブラケットを前部上方から見た拡大斜視図である。
【0035】
まず、図6のように、整地作業などを行うフロントドーザなどの前部作業機12を車両に着脱自在に装着する取付部99に備えるブラケット100は、図7〜9に示すように、それぞれ金属製の左右ステー101と、支持板102とから構成され、エンジン3を載置した車体フレーム11の、エンジン3下方に位置する底部に設置される。
【0036】
そして、左右車体フレーム11のそれぞれの外側面に、上部をボルト締めなどで取付けて立設した左右ステー101の下端部を、外側方から覆うとともに、エンジン3の後部およびクラッチハウジング5の前部を車体フレーム11底部から覆うようにして、支持板102の前部を左右ステー101の前部に接触させ、支持板102後部の底部からクラッチハウジング5の前部にボルト締めなどで支持板102がステー101に固定される。この支持板102は、車両前後方向の左右端部に側板を備える略コ字の形状を有する。なお、支持板102の前部と、左右ステー101の前部との接触部分は、溶接などで固定してもよい。
【0037】
一方、前部作業機12は、図6に示すように、例えば、先端部の左側面視略逆C字状のヘッド13と、このヘッド13の下部背面における左右両側部に、一端部を固設した、ヘッド13を支持する左右アーム14と、左右アーム14のそれぞれ中途部に取付けられた左右油圧シリンダ15とから構成されるフロンドドーザなどであって、左右油圧シリンダ15におけるチューブ15aの前端部である他端部が、ピンなどの連結部材16を介して左右アーム14の中途部に連結固定される。なお、前部作業機12は、フロンドドーザに限定されない。
【0038】
ここで、前部作業機12を車両に装着させる場合は、図7および図9に示すように、まず、左右アーム14の前記他端部(基端部)に設けられた穴部h1を、支持板102の前記左右側板における前端部の外側面の中央近傍に設けられた、この穴部h1の直径に略等しい穴部h2の位置に合わせて、ボルトなどの連結部材103を介して、左右アーム14が、この連結部材103を回動支点として上下方向に回動自在に取付けられる。
【0039】
同様に、左右油圧シリンダ15のチューブ15a内に出入りする左右それぞれのピストンロッド15bの一端部に設けられた穴部h3を、左右ステー101のそれぞれの外側面中央近傍に設けられたこの穴部h3の直径に略等しい穴部h4の位置に合わせて、ボルトなどの連結部材104を介して、左右油圧シリンダ15が、連結部材104を回動支点として左右車体フレーム11に取付けられる。
【0040】
このとき、油圧シリンダ15には、車両側に有する不図示の油圧取出口に設置したホースなどの接続部材がチューブ15aに接続され、操縦部4に有する前記作業機操作レバーの操作により、油圧を変化させた作動油をチューブ15aに供給することで、ピストンロッド15bをチューブ15a内において伸縮させ、アーム14を油圧シリンダ15とともに連結部材103,104を回動支点として上下に回動させ、ヘッド13が昇降される。また、前部作業機12を車両から取り外すときは、連結部材103,104を緩めて取り外すことにより、車両から容易に前部作業機12を脱着することができる。なお、アーム14と支持板102の前記左右側板および、ピストンロッド15bと左右ステー101のそれぞれ締結する接触部には不図示のスペーサなどを介在させてもよい。
【0041】
以上のような構成にすることで、前部作業機12を、重量を有するエンジン3を載置した車両の重心位置となる車体フレーム11の底部にブラケット100を介して装着させるため、前部作業機12が車両に安定的に支持され、前部作業機12の重量や、作業により無理な力が加わっても、取付部99の、例えばブラケット100や連結部材103,104などの損傷を防止できるとともに、車両の有する推進力が前部作業機12に車両の重心を介して効率的に伝えられ、より強い力で前部作業機12を用いて円滑に作業をすることができる。
【0042】
また、前部作業機12を車両に着脱させる取付部99の位置が、従来よりも低い位置の車体フレーム11底部であるため、作業者が前部作業機12の着脱作業をし易くなるとともに、走行中や作業中に車両下方から飛び跳ねた泥や小石などをブラケット100の支持板102で防ぐことにより、エンジン3を保護することができる。さらには、エンジン3の下方に位置する左右車体フレーム11の底部を、ブラケット100が架橋支持しているため、重量を有するエンジン3を車体フレーム11に安定して載置することができる。
【0043】
本願発明の作業車両では、ボンネット2内でエンジン3などを冷却して高温になった空気の機外排出により、作業者が火傷するなどの負傷を防止するための安全ガード106が備えられる。
【0044】
この安全ガード106は、例えば、図1および図6〜8に示すように、ボンネット2前部の下方であって、左右車体フレーム11それぞれの外側部に、略コ字の形状を有する、ポリアリレート(PAR)やポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)などの熱伝導性が低い耐熱樹脂からなり、その前後端部が車体フレーム11外側部にボルト締めなどにより取付けられる。なお、安全ガード106の材質は、車体の軽量化の観点から上記した耐熱樹脂などが好ましいが、車体フレーム11同様に金属製であってもよい。
【0045】
ここで、ボンネット2前端部の外気取込口からボンネット2内に導入された空気が、車両後方に向って、例えば、それぞれ図示しない、ボンネット2内であって、エンジン3の前方に配置される、エンジン3の内燃機関からの戻り燃料油を冷却させるための燃料油クーラーや、キャビン6内の冷房などに用いられるエアコンの冷媒ガスを冷却するためのコンデンサ、ミッションオイルなどの作動油を冷却するための作動油クーラーおよびラジエータなどを順に冷却してゆき、最後にエンジン3外周部を冷却後、ボンネット2の内側壁に沿ってボンネット2の側面下部に有する、図8に示す排気口107から排出される。
【0046】
このとき、排気口107が、安全ガード106で覆われているため、高温になって排出される空気が安全ガード106近傍で作業などしている作業者に直接当たることがなく、作業者が火傷するなどの負傷を防止することができ、安全対策が施されるものである。
【0047】
以上詳述したように、この例のトラクタ1は、車両前部であって、ボンネット2内のエンジン3や、このエンジン3の後方に有するクラッチハウジング5を載置する、機体の左右内側に並設した車体フレーム11の前部に、ヘッド13と、アーム14と、シリンダ15とからなる前部作業機12を備え、エンジン3の下方であって、車体フレーム11の底部に、前部作業機12を取付けるためのブラケット100を備えるものである。加えて、ブラケット100は、左右の車体フレーム11それぞれの側部に、下方に向けて設けたステー101と、このステー101の下端部に取付けた支持板102とからなり、左右ステー101の側部にそれぞれシリンダ15のピストンロッド15bの一端部を取付けるとともに、支持板102の左右前端部にアーム14の基端部を取付ける。
【0048】
また、上述の例では、作業車両の一例としてクローラ式トラクタ(農作業車両)について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、ホイール式トラクタのほか、建設作業車両として、バックホーやブルトーザ、その他除雪車両など、車両前部に前部作業機を着脱自在に備えたあらゆる作業車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一例としての、クローラ式トラクタの側面図である。
【図2】同トラクタにおけるクローラ式走行装置の斜視図である。
【図3】同トラクタにおける断面平面図である。
【図4】同トラクタにおける駆動部の断面側面図である。
【図5】同トラクタにおけるミッションケース内の差動機構付近を拡大した断面平面図である。
【図6】前部作業機を取付けたトラクタ前部の左側面図である。
【図7】ブラケットの設置を示す車体フレーム周辺の左側面図である。
【図8】ブラケットを下方から見た車体フレーム周辺の斜視図である。
【図9】ブラケットを前部上方から見た拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
2 ボンネット
3 エンジン
5 クラッチハウジング
11 車体フレーム
12 前部作業機
13 ヘッド
14 アーム
15 シリンダ
15a チューブ
15b ピストンロッド
99 取付部
100 ブラケット
101 ステー
102 支持板
103,104 連結部材
106 安全ガード
107 排気口
h1,h2,h3,h4 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部であって、ボンネット内のエンジンや、該エンジンの後方に有するクラッチハウジングを載置する、機体の左右内側に並設した車体フレームの前部に、ヘッドと、アームと、シリンダとからなる前部作業機を備える作業車両において、
前記エンジンの下方であって、前記車体フレームの底部に、前記前部作業機を取付けるためのブラケットを備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記左右の車体フレームそれぞれの側部に、下方に向けて設けたステーと、該ステーの下端部に取付けた支持板とからなり、前記ステーの側部に前記シリンダのピストンロッドの一端部を取付けるとともに、前記支持板の前端部に前記アームの基端部を取付けることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−137426(P2009−137426A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315576(P2007−315576)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】