説明

作業車両

【課題】車体フレームの支持強度を向上させるとともに、エンジン内やオイルパンの損傷を防止し、作業性を向上させた作業車両を提供する。
【解決手段】機体の前後方向に並設した車体フレーム4の前部にエンジン6を載置し、エンジン6の側方に位置する車体フレーム4の両外側部には、ステー20aを着脱自在に取付けるとともに、ステー20aに立設させたヒッチ20bに前部作業機21を取付ける、前部作業機取付部20を備え、車体フレーム4と、エンジン6底部のオイルパン6aとの間であって、車体フレーム4の前部作業機取付部20の内側部に支持部材23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレーム前部の両外側部に、前部作業機取付部を備える作業車両に関し、より詳細には、車体フレームと、エンジン底部のオイルパンとの間であって、車体フレームにおける前部作業機取付部の内側部に支持プレートを取付けた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両には、例えば、機体前後方向に延伸する左右一対の車体フレーム(フロントフレーム)間にエンジンやボンネットを配設するとともに、各車体フレーム前部の中途位置から上方に向けて延設した延出部分の外側面に、フロントローダなどの前部作業機を取付けるための取付ブラケット(マスト部)が設けられており、このマスト部に前部作業機のヒッチを取付けることでフロントローダを支持する(特許文献1)ものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両では、取付ブラケットの支持強度を考慮し、車体フレームのエンジン載置部に位置する該車体フレームの外側部に取付ブラケットを設けているが、前部作業機が大きな重量を有する場合や、作業により前部作業機を介して取付ブラケットに大きな負荷がかかると、車体フレームや取付ブラケットが曲がるなど損傷してしまうおそれがあった。このため、左右の車体フレームを連結部材で連結させ、車体フレームの強度を向上させる方法も考えられるが、この場合、エンジン下部には、下方に延設したオイルパンを備えるために、連結部材を取付けることができず、従って、上記した車体フレームの支持強度を向上させることができないという問題があった。
そこで、この発明の目的は、前部作業機を支持する車体フレームの支持強度を上げ、安全性および作業性を向上させた作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、機体の前後方向に並設した車体フレームの前部にエンジンを載置し、前記エンジンの側方に位置する前記車体フレームの両外側部には、ステーを着脱自在に取付けるとともに、前記ステーに立設させたヒッチに前部作業機を取付ける、前部作業機取付部を備える作業車両において、前記車体フレームと、前記エンジン底部のオイルパンとの間であって、前記車体フレームの前記前部作業機取付部の内側部に支持部材を設けることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記支持部材は、前記オイルパンの大きさに対応した幅または高さにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、機体の前後方向に並設した車体フレームの前部にエンジンを載置し、エンジンの側方に位置する車体フレームの両外側部には、ステーを着脱自在に取付けるとともに、ステーに立設させたヒッチに前部作業機を取付ける、前部作業機取付部を備える作業車両において、車体フレームと、エンジン底部のオイルパンとの間であって、車体フレームの前部作業機取付部の内側部に支持部材を設けるので、車体フレームと、エンジンとの隙間を有効利用し、車体フレームの内側部に支持部材を取付けて車体フレームの強度を向上させることで、前部作業機により前部作業機取付部を介して車体フレームにおける前部作業機取付部の取付位置に大きな負荷がかかっても、車体フレームが損傷することなく、安定して前部作業機を支持することができる。従って、作業性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、支持部材は、オイルパンの大きさに対応した左右幅または上下高さにするので、エンジンの型式(大きさ)によってオイルパンの大きさが異なる機種においても、車体フレームとオイルパンとの隙間に確実に挟入できる支持部材を車体フレーム内側面に設置することができる。従って、生産性を向上させた作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る農作業車両としての、ホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】前部作業機を取付けたトラクタの左側面図である。
【図3】前部作業機取付部の取付位置を示すボンネットおよび車体フレームの左側面図である。
【図4】支持部材を取付けた車体フレームの斜視図である。
【図5】支持部材を取付けた車体フレームおよびエンジンを示す機体前部の斜視図である。
【図6】オイルパンおよび支持部材を下方から見た機体底部の斜視図である。
【図7】車体フレームに前部作業機取付部のステーを取付ける際の1つのボルト締結を示す車体フレーム周辺の背面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一実施例に係るホイール式トラクタの左側面図である。なお、図に例示したトラクタは、ロプス仕様のホイール式トラクタに限定されず、キャビン仕様や、クローラ式などであってもよい。
【0011】
この例のホイール式のトラクタ1は、前輪2および後輪3を備え、前輪2の上方であって車体フレーム4上にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6を配置するとともに、このエンジン6の後方には順にクラッチハウジング7およびミッションケース8が備えられる。
【0012】
そして、ボンネット5に連設したダッシュボード9の後方に操縦部10が設けられ、この操縦部10の前部であって、上方にステアリングハンドル11を突設させたステアリングコラム12の下方、かつフロア13上には、フートアクセルペダルなどの操作部材14を配設するとともに、この操縦部10の後部には運転席15などが設けられる。なお、符号20は、機体後部に設けられたロプスフレームである。
【0013】
また、前記運転席15は、後輪3の上方であって、前部を下方に屈曲させた形状の左右フェンダ16間に配置され、この運転席15の後方には燃料タンク17が配設される。また左右フェンダ16の内側面に設けた、図示しないレバーガイドには、例えば、副変速レバーやPTOレバーなどの各種操作レバー18の下部を内設し、それら操作レバー18を上部を突出させている。
【0014】
次に、本願発明の特徴である、燃料タンクステーについて、その具体的構成を説明する。図2は前部作業機を取付けたトラクタの左側面図、図3は前部作業機取付部の取付位置を示すボンネットおよび車体フレームの左側面図、図4は支持部材を取付けた車体フレームの斜視図、図5は支持部材を取付けた車体フレームおよびエンジンを示す機体前部の斜視図、図6はオイルパンおよび支持部材を下方から見た機体底部の斜視図である。
【0015】
まず、エンジン6からの動力は、ミッションケース8から突出した不図示のPTO軸からや、不図示の油圧ケースなどを介して、車両後部では、ユニバーサルジョイントや三点リンク式などのそれぞれ図示しない後部作業機装着装置を介して装着された後部作業機を駆動させることができるほか、図2に示すように、車両前部では、左右に配置された前部作業機取付部20を介して装着されたフロントローダなどの前部作業機21が駆動される。
【0016】
前部作業機取付部20は、前輪2の後方であって、機体左右に並設された機体前後方向に延びる、エンジン6などを載置した2本の各車体フレーム4における、エンジン6近傍位置の両外側面に取付けられたもので、左右一対のステー20aや、このステー20aを介してそれぞれ上方に立ち上げ状に取付けた左右一対のヒッチ20b、および各ヒッチ20bの上端部に跨架された正面視略門型の連結フレーム20cなどから構成される。
【0017】
そして、前部作業機21の後端に有する左右ヒッチ22を、前部作業機取付部20のヒッチ20bに枢支させて取付けることで、前部作業機21が前部作業機取付部20を介して機体前部に取付けられる。
【0018】
この前部作業機取付部20の各ステー20aが、図3に示すように、各車体フレーム4それぞれの外側面位置4aにボルト締めなどで取付けられるが、このように前部作業機取付部20を、エンジン6の載置位置近傍における各車体フレーム4の両外側面に取付けることで、重量を有するエンジン6を支持するために若干強度が上昇した車体フレーム4の該位置に前部作業機21の荷重負荷をかけるようにしている。
【0019】
しかしながら、2本の比較的に左右方向の厚みの薄い車体フレーム4では、重量を有しかつ作業において大きな負荷を前部作業機取付部20を介して車体フレーム4に与えるような前部作業機21を安定支持させることは不十分であり、このような場合、車体フレーム4やヒッチ20bなどの取付部材が損傷してしまう恐れがある。このため、単に車体フレーム4の厚みを増加させて、車体フレーム4の強度を上昇させると、車体フレーム4の重量増加に伴う機体の重量増加により、コスト高や燃費の低下を招くことになる。
【0020】
そこで、本願では、図4に示すように、左右各車体フレーム4の内側部における前部作業機取付部20の取付位置4a近傍に、車体フレーム4と同じ金属類の材質(限定されない)からなる支持プレートとしての支持部材23が取付けられる。
【0021】
これら左右支持部材23は、図5〜6に示すように、車体フレーム4と、エンジン6下部のオイルパン6aとの間のスペースsであって、各車体フレーム4の内側面に溶接もしくはボルト締結などして取付けられる。
【0022】
また、この支持部材23は、例えば、オイルパン6aに接触しない程度の左右幅を有するとともに、前部作業機取付部20における取付位置の前後長さに略等しい長さを有する構成とされる。
【0023】
このような構成により、車体フレーム4と、エンジン6のオイルパン6aとのスペースs1を有効に利用し、車体フレーム4の内側部に支持部材23を取付けることで、車体フレーム4の強度が向上し、前部作業機21により前部作業機取付部20を介して車体フレーム4における前部作業機取付部20の取付位置に大きな負荷がかかっても、車体フレーム4が損傷することなく、安定して前部作業機21支持することができる。
【0024】
また、車体フレーム4の内側部における前部作業機取付部20の取付位置近傍にのみ 支持部材23を設けるため、車体フレーム4全体の重量増加を抑えることができ、前部作業機21の安定支持を低コストおよび低燃費で実現することができる。さらには、このような支持部材23を備える左右車体フレーム4の前端を、図4などに示す連結部材(フレーム)で連結するため、一層強度が向上し、エンジンなどの載置はもちろん前部作業機21の安定支持をより向上させることができる。
【0025】
また、支持部材23は、車体フレーム4上に載置するエンジン6の大きさに伴うオイルパン6aの大きさに対応した左右幅のものを適宜用いることができるため、エンジン6の型式(大きさ)によってオイルパン6aの大きさが異なる機種においても、車体フレーム4とオイルパン6aとの隙間(スペースs)に確実に挟入できる支持部材23を車体フレーム4の内側面に設置でき、様々な機種製造に容易に対応することができる。
【0026】
なお、図示しないが、左右各支持部材23間であって、オイルパン6aの底面よりもやや広い程度の薄い板状の金属類からなるガード板を、オイルパン6aに下方から覆設させることもできる。この際、前記ガード板の左右端部を左右各支持部材23の底面(下端)にボルト締めなどすることで、前記ガード板が各支持部材23に着脱自在に取付けられる。
【0027】
このような構成にすることで、機体の走行中や作業中などに跳ね上がった小石や障害物をガード板25に衝突させて、オイルパン6aの損傷を防ぐことができる。また、オイルパン6aやエンジン6のメンテナンスなど必要時には、ガード板25を容易に取外すことができる。
【0028】
また、本願では、前部作業機取付部20における前部作業機21の取付強度を向上させることができる。図7は、車体フレームに前部作業機取付部のステーを取付ける際の1つのボルト締結を示す車体フレーム周辺の背面模式図である。
【0029】
この車体フレーム4に前部作業機取付部20のステー20aを取付けるためには、左右それぞれの車体フレーム4の外側面に、複数個のボルトによってステー20aが締結される。そこで、これら個々のボルト締結では、図7に示すように、1本のボルト24および2個のナット25a,25bを用いるとともに、このナット25a,25bは、ナット25a,25b同士の接触面が同方向に斜設されており、それら接触面が合致されるものとされる。
【0030】
そして、車体フレーム4の外側面における図示しないネジ穴にステー20aの図示しないネジ穴を位置させ、このステー20aの外側方および車体フレーム4内側に備える支持部材23の内側方から前記ネジ穴を介してボルト24およびナット25a,25bによりこれらステー20aおよび車体フレーム4が締結される。
【0031】
このとき、ナット25a,25bの接触面の傾斜により、ボルトの押圧が外側方および内側方に分散されるため、車体フレーム4に対するステー20aの締結力が上昇し、両者を確実の固定させることができる。
【0032】
以上詳述したように、この例の作業車両(トラクタ1)は、機体の前後方向に並設した車体フレーム4の前部にエンジン6を載置し、エンジン6の側方に位置する車体フレーム4の両外側部には、ステー20aを着脱自在に取付けるとともに、ステー20aに立設させたヒッチ20bに前部作業機21を取付ける、前部作業機取付部20を備える作業車両において、車体フレーム4と、エンジン6底部のオイルパン6aとの間であって、車体フレーム4の前部作業機取付部20の内側部に支持部材23を設けるものである。加えて、支持部材23は、オイルパン6aの大きさに対応した左右幅にする。加えて、支持部材23は、オイルパン6aの大きさに対応した左右幅にする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
なお、上述の例では、作業車両の一例として、農作業車両のホイール式トラクタについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタや、建設作業車両など、機体前部であって、車体フレームの両外側部に前部作業機を取付けるための前部作業機取付部を備えたあらゆる作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
4 車体フレーム
4a 外側面位置
6 エンジン
6a オイルパン
20 前部作業機取付部
21 前部作業機
23 支持部材
24 ボルト
25a,25b ナット
s スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前後方向に並設した車体フレームの前部にエンジンを載置し、前記エンジンの側方に位置する前記車体フレームの両外側部には、ステーを着脱自在に取付けるとともに、前記ステーに立設させたヒッチに前部作業機を取付ける、前部作業機取付部を備える作業車両において、
前記車体フレームと、前記エンジン底部のオイルパンとの間であって、前記車体フレームの前記前部作業機取付部の内側部に支持部材を設けることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記支持部材は、前記オイルパンの大きさに対応した幅または高さにすることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201989(P2010−201989A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47588(P2009−47588)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】