説明

作業車両

【課題】ボンネット前上面に大きめの前照灯を配置した場合、ボンネット前上面の切欠き部面積も大となってボンネット部の保護が損なわれる恐れがあるがこれを解消する。
【解決手段】車体の下部左右に一対の車体フレーム10,10を構成し、該車体フレーム10,10に搭載するエンジンを囲うボンネット20を上部ボンネット20a、左右側部ボンネット20b,20b及び前部グリル部により形成し、車体フレームの前部にはこの車体フレーム10,10に対して支軸部P回りに回動自在に補強フレーム22を設け、該補強フレーム22に前記上部ボンネット20aと側部ボンネット20bとの合せ部20dを支持すると共に、下部側で前部グリル部を支持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両に関し、ボンネットの支持構成に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの前方に、左右両側に支持ステーを固定しこの支持ステーにエンジンの上部を覆うボンネットの前端部固着する開閉アームを上下回動自在に支持し、ボンネットを大きく前方に回動状態に開放してエンジン近傍のメンテナンスを行うよう構成する技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−339741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン上部を覆うボンネットの前下部を支点にして上下に回動しながら開放空間を開閉する構成では、上記のように、開閉アームを設けてボンネットと車体側の支持ステーを連結する形態とするが、この開閉アーム自体には強度を有さずボンネットの支持に耐える強度に設定されるものである。
【0005】
しかしながら、近年では前上面のライト部分の意匠価値を高めるため、やや大きめのライトを配置する傾向となっており、ボンネット前上面の刳り抜き部面積も大となってライト類の保護が損なわれ、あるいはボンネット自体の補強構造が取れぬままになって改善を要する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記技術的課題を解決するために次の技術的手段を講じた。
即ち、請求項1に記載の発明は、車体1の下部左右に一対の車体フレーム10,10を構成し、該車体フレーム10,10に搭載するエンジン7を囲うボンネット20を、上部ボンネット20a、左右側部ボンネット20b,20b及び前部グリル部20cにより形成し、車体フレーム10の前部にはこの車体フレーム10,10に対して支軸部P回りに回動自在に補強フレーム22を設け、該補強フレーム22に前記上部ボンネット20aと側部ボンネット20bとの合せ部20dを支持すると共に、下部側で前部グリル部20cを支持する構成とした作業車両の構成とする。
【0007】
上記のように構成すると、ボンネット20を支持する補強フレーム22自体が支軸部Pを備えるものとなって、しかも上部の構成部分はボンネット20の裏面を支えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、補強フレーム22はパイプ材を逆U字状に折り曲げることにより上パイプ部22a、左右パイプ部22b,22b、及び下部支軸パイプ部22c,22cに形成し、このうち、下部支軸パイプ部22c,22cの夫々に車体フレーム10,10に連結固定した支点プレート26に対して支点ボルト27,27の締付固定により支軸部P回りに回動可能に装着してなる。このように構成すると、支点プレート26の幅方向に距離を長く設定して安定よく補強フレーム22を車体に組付けでき、つまり支軸部Pを安定良く構成できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、上部ボンネット20aの前側左右に前照灯29,29を組み込んだ樹脂製カバー33を装着するための切欠き部35,35を形成し、前記補強フレーム22の上部左右の湾曲部が該切欠き部35,35に対応すべく設けてなる。
【0010】
このように構成すると、比較的強度の弱い樹脂製カバー33部の裏面を補強支持できる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ボンネット20を支持する補強フレーム22自体が支軸部Pを備えるものとなって、しかも上部の構成部分はボンネット20の裏面を支えることができるから、部品点数を抑えて簡単に構成できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1の効果に加え、支点プレート26の幅方向に距離を長く設定して安定よく補強フレーム22を車体に組付けでき、つまり支軸部Pを安定良く構成できるためボンネット20の開閉作動中の動きを円滑化できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に加え、比較的強度の弱い樹脂製カバー33部の裏面を補強支持でき不測に外力が加わってもむやみに破損しない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全体側面図
【図2】全体正面図
【図3】一部省略した全体背面図
【図4】一部省略した全体平面図
【図5】一部の斜視図(A)、樹脂製カバーの斜視図(B)
【図6】ボンネットの開閉状態を示す側面図
【図7】図6のX−X断面図(A)、その一部の拡大断面図(B)
【図8】別実施例を示す拡大斜視図
【図9】バックミラー取付部の背面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
左右に平行して設けられる車体フレーム10,10の前部下側に左右一対の前輪2,2を有したフロントアクスル3を図外センタピボット周りに揺動自在にして支架し、後部下側に配置したミッションケース4から延出する左右一対のリヤアクスルハウジング5を支架し、該リヤアクスルハウジング5には夫々後輪6,6を備えている。
【0016】
車体1の前端上に搭載したエンジン7のエンジン軸8の駆動回転によって、このエンジン軸8の後側に連結の主伝動軸9を伝動して、前記後輪6,6を駆動連動して走行することができる。
【0017】
前記フロントアクスル3、ミッションケース4及びエンジン7等は車体1の下部に前後に長く設ける左右一対のフレーム10,10の支持構成されるものである。
そして、該車体フレーム10,10の前後中間部にはステップフロア11を構成し、このステップフロア上の操縦部には、座席12、操作パネル13、ステアリングハンドル14、及び各種操作レバー、操作ペダル類を備えている。
【0018】
エンジン7及びラジエータ19等の補機類を囲うボンネット20の構成について以下詳述する。
ボンネット20は、エンジン7等の上面を覆う上部ボンネット部20aと、左右側面を覆う側部ボンネット部20b,20bと、前面を覆う主としてパンチングメタル製の前面グリル部20cとからなる。即ち、板金材からなる上部ボンネット部20aと同じく板金材からなる側部ボンネット部20bとはその下縁部と上縁部とを合せ面20dで合わせて一体化し、前面グリル部20cの後述パンチングメタルは主として側部ボンネット部20bの前縁部にボルト等の取付具によって着脱自在に設けられ、これら上部ボンネット部20a,側部ボンネット部20b及び前面グリル部20cは一体的に車体1の前下部に設けた支軸部P中心に前後に回動してエンジン7内空間を開閉できる構成である。
【0019】
前記支軸部Pを構成しボンネット20前部を支持する補強フレーム22について説明する。パイプ材からなり、正面視逆U型に折り曲げ形成すると共に、下部左右を内側に対向すべく折り曲げることによって、上パイプ部22a、左右パイプ部22b,22b、及び下部支軸パイプ部22c,22cに形成する。
【0020】
このうち、下部支軸パイプ部22c,22cの夫々において、車体フレーム10,10を補強すべく連結する前端フレーム23をベースフレームとしてこの前端フレーム23と溶接一体化の中間フレーム24を介して着脱自在にボルト25,25止めされる支点プレート26の左右折り曲げ部26a,26aに内側から挿通する支点ボルト27,27を当該下部支軸パイプ部22c,22cに螺合する。なお、実質的に車体フレーム10,10と一体的でベース部材としての役目を果たす支点プレート26に対し、補強フレーム22の支点ボルト27,27側は支軸部P回りに回動可能に装着される。
【0021】
上記補強フレーム22の上パイプ部22aと、左右パイプ部22b,22bを互いに連結する連結フレーム28とには、前照灯29,29の取付兼光軸調整用の調整ボルト30,31,31を介して連結している。なお、連結フレーム28と前記上パイプ部22aとの間を、縦フレーム32で連結して補強している。
【0022】
左右パイプ部22b,22bには夫々受座兼用の補強板32,32を溶接によって固着し、一方前記上部ボンネット部20aと側部ボンネット20bの合せ面20dを上下に重ねてボルトによって着脱固定する。なお、合せ面から溶接によって固着して内向きに延出する延長板を設けて補強板に重ねて固定する形態でもよい。
【0023】
ボンネット20と補強フレーム22との連結は上記の補強板32,32と合せ面20dによる上位側連結のほか、下位側においても連結構成している。即ち、ボンネット22の前面グリル部20cの下部側内向きに設けたブラケット34,34に孔部形成し下部支軸パイプ部22b,22bを挿通することによって前面グリル部20cを主として支持する構成である。
【0024】
前記補強フレーム22は、回動支点Pとしての下部支軸パイプ部22c,22cを構成し、上部に延出してボンネット22の前面を補強しながら、前照灯29,29等の取り付け部材に兼用できるため、部品点数を少なくし得て実施に都合がよいものである。
【0025】
なお、回動支点Pを構成する下部支軸パイプ部22c,22cを兼用する補強フレーム22の構造とするから、ボンネット22と一体的に設けることができ、この回動支点Pと補強フレームとを個別に構成するものに比較して構成を簡単化できる。
【0026】
上部ボンネット20aの前側左右には前記前照灯29,29を装着するための切欠き部35,35を形成し、該切欠き部35,35の部分に夫々前照灯29,29を前面を照射可能に開放した樹脂製カバー33,33を嵌め込み形態で装着するが、前記補強フレーム22の上部左右の湾曲部がこの切欠き部35,35に対応すると共に樹脂製カバー33,33の内周に沿うよう形成され、しかも前照灯29,29の外周を囲うように配置されているため、左右の切欠き部35,35の間に形成される縦細部36の補強を図ることができる。
【0027】
なお、37はエンジン7側に基部を装着したボンネット開放ロッド(図示せず)の先端側係合用のフックである。
前記前面グリル部20cは左右の側部ボンネット20b,20bを形成すべく平面視U型に折り曲げられたボンネットの前側に形成する開放部38にパンチングメタル39を着脱自在に連結して通気可能に構成されている。
【0028】
前記実施例では、ボンネット20は補強フレーム22に対して上部左右の補強板32と合せ部20dとの重合構成、及び下部の支軸パイプ22cとの連結構成によって支持するものであるが、図8に示すように、補強フレーム22の上パイプ部22aの左右中央部に基部を溶接固着したステー40を上部ボンネット20aに接続する構成とすることにより、縦細部36の補強構造とすることができる。
【0029】
補強フレーム22は、車体1の前進作業中においては立設状態に設けられて、必要な強度を備えるものである(または、必要な強度を付与する寸法を確保する)ことができ、車体1後方の安全フレーム41と相俟って転倒時の安全領域Aを確保できる。即ち、車体1の後部リヤアクスルハウジング5に基部を接続したベースフレーム42に、下側フレーム41aとこの下側フレーム41aに夫々基端を横軸ピンで連結支持させた上側フレーム41bとからなり、該上側フレーム41bはやや前傾に設けられ、搭乗者の頭部を保護し、転倒時の安全領域Aは、車体1転倒時の搭乗者の安全領域であって、本実施例では、車体1前部の前記補強フレーム22の上端と安全フレーム41の上端とを結ぶ線分Sの下側に形成される空間領域である。
【0030】
エンジン7の上部左右一側(図例では前進方向右側)にマフラ45を設け、このマフラ45のテールパイプ46は前側が下方に傾斜する状態に固定され、テールパイプ46の排気部はマフラ45の取付角度が上下に微調整できるよう構成され、前記グリル部20cのパンチングメタル39に形成した孔部47にのぞませてある。この孔部47位置は前記補強フレーム22の下方支軸パイプ部22cよりも高位置に配置されている。
【0031】
したがって、ボンネット20の支軸P回りの回動の際、孔部47はテールパイプ46の排気部に対し前下方に退避し、ボンネット20を閉じるときは逆に前側下方から接近するが、テールパイプ46の傾斜方向に一致する退避・接近動作を行うため、テールパイプ46がむやみにパンチングメタル39の孔部47に干渉し難い。
【0032】
なお、テールパイプ46の排気部から噴出する排気は、排気部のある左右一側から左右中央側乃至左右他側に向けて噴出するようテールパイプ46中途傾斜部を形成する。このように構成すると、車体1前進時、排気ガスがオペレータに直接降り掛かり難い。
【0033】
前記ボンネット20の側部ボンネット20b,20bの後下部には操作パネル13を支持するハンドルポスト50の後方まで延出させた側部カバー51,51を左右対称に設けている。また、この左右の側部カバー51,51の奥側においてラジエータ52の支持構造枠部に固着されるバックミラー取付部53に、バックミラー54を取付けている。
【0034】
符号55は、車体1腹部に装着する作業機(例えばモーア(図示せず))の昇降リンクである。また、車体1後部には作業機(図示せず)を昇降自在に装着する3点リンク機構56を備えている。前記安全フレーム41の上下中間部には方向指示器57,57を備えている。
【符号の説明】
【0035】
1 車体
7 エンジン
10 車体フレーム
20 ボンネット
20a 上部ボンネット
20b 側部ボンネット
20c 前部グリル部
22 補強フレーム
22a 上パイプ部
22b 左右パイプ部
22c 下部支軸パイプ部
26 支点プレート
27 支点ボルト
29 前照灯
33 樹脂製カバー
35 切欠き部
P 支軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)の下部左右に一対の車体フレーム(10,10)を構成し、該車体フレーム(10,10)に搭載するエンジン(7)を囲うボンネット(20)を、上部ボンネット(20a)、左右側部ボンネット(20b,20b)及び前部グリル部(20c)により形成し、車体フレーム(10,10)の前部には該車体フレーム(10,10)に対して横軸状態の支軸部(P)回りに回動自在に補強フレーム(22)を設け、該補強フレーム(22)に前記上部ボンネット(20a)と側部ボンネット(20b)との合せ部(20d)を支持すると共に、下部側で前部グリル部(20c)を支持する構成とした作業車両。
【請求項2】
補強フレーム(22)はパイプ材を逆U字状に折り曲げることにより上パイプ部(22a)、左右パイプ部(22b,22b)、及び下部支軸パイプ部(22c,22c)に形成し、このうち、下部支軸パイプ部(22c,22c)の夫々に車体フレーム(10,10)に連結固定した支点プレート(26)に対して支点ボルト(27,27)の締付固定により支軸部(P)回りに回動可能に装着した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
上部ボンネット(20a)の前側左右に前照灯(29,29)を組み込んだ樹脂製カバー(33)を装着するための切欠き部(35,35)を形成し、前記補強フレーム(22)の上部左右の湾曲部が該切欠き部(35,35)に対応すべく設けてなる請求項1または請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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