説明

作業車両

【課題】前後に配置された左右一対の走行装置における後側の走行装置をクローラ式走行装置とし、該クローラ式走行装置の前方に操縦部への乗降の際の踏み台となる乗降ステップを配置した作業車両において、クローラ式走行装置から乗降ステップへの泥水等の飛散を効率的に防止可能な作業車両を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、前側の左右一対の走行装置1と、後側の左右一対のクローラ式走行装置2と、側面視走行装置1とクローラ式走行装置2の間に配置されて操縦部6への乗降の際に用いられる乗降ステップ18とを備えた作業車両において、少なくとも前記クローラ式走行装置2用のフェンダー27の前端部から乗降ステップ18の下方に至る範囲を覆うカバー体31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
前側の左右一対の走行装置と、後側の左右一対のクローラ式走行装置とを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
前側の左右一対の走行装置と、後側の左右一対のクローラ式走行装置と、側面視走行装置とクローラ式走行装置の間に配置されて操縦部への乗降の際に用いられる乗降ステップとを備えた特許文献1に示す作業車両が従来公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の作業車両は、湿田等での作業において高い走破性を発揮する一方で、走破性のさらなる向上のためにクローラ式走行装置に設けたラグが圃場の水面を叩く等によって、クローラ式走行装置の前方側に飛散した圃場の泥水等が乗降ステップ、その他操縦部をカバーするキャビンを設けた場合には該キャビンの側面等に付着するため、付着した泥水等によって乗降ステップが滑り易くなり操縦部への乗降が行い難くなるという課題があるとともに、キャビンの側面等に付着した泥水等で操縦部からの視界が遮られるという課題がある。
本発明は、上記問題を解決し、前後に配置された左右一対の走行装置における後側の走行装置をクローラ式走行装置とし、該クローラ式走行装置の前方に操縦部への乗降の際の踏み台となる乗降ステップを配置した作業車両において、クローラ式走行装置から乗降ステップへの泥水等の飛散を効率的に防止可能な作業車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の作業車両は、前側の左右一対の走行装置1と、後側の左右一対のクローラ式走行装置2と、側面視走行装置1とクローラ式走行装置2の間に配置されて操縦部6への乗降の際に用いられる乗降ステップ18とを備えた作業車両において、少なくとも前記クローラ式走行装置2用のフェンダー27の前端部から乗降ステップ18の下方に至る範囲を覆うカバー体31を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の作業車両によれば、走破性向上のためにクローラ式走行装置に設けたラグが圃場の水面を叩く等によって、クローラ式走行装置の前方側に飛散した圃場の泥水等が乗降ステップ、その他操縦部をカバーするキャビンを設けた場合には該キャビンの側面等に付着することを、カバー体によって防止でき、これによって、乗降ステップに付着した泥水等による滑りを防止し操縦部への乗降が容易になるとともに、キャビンの側面等に付着した泥水等によって操縦部からの視界が遮られることを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のカバー体であるゴムマットが取付けられる農業用のトラクタの側面図である。
【図2】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面要部拡大図である。
【図3】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの背面要部拡大図である。
【図4】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの平面要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のカバー体であるゴムマットが取付けられる農業用のトラクタの側面図である。
図示するトラクタは、前側の左右一対の走行車輪1(走行装置)と、後側の左右一対のクローラ式走行装置2によって支持されるシャーシフレーム3上の前側半部にボンネット4によって覆われたエンジン(図示しない)を配置するとともに、シャーシフレーム3上の後側半部にオペレータが乗込む操縦部6を覆うキャビン7が立設されることにより走行機体8を構成しており、この走行機体8の後方にリンク機構9を介してロータリ耕耘装置11(作業機)が昇降自在に連結されている。
【0009】
本トラクタは、前側の走行車輪1及び後側のクローラ式走行装置2を駆動させて車体を走行させながら、ロータリ耕耘装置11を駆動させることにより、圃場での耕耘作業を行う。
【0010】
上記操縦部6は、オペレータが着座する座席12とキャビン前方に配置されたステアリングハンドル13とを備え、ステアリングハンドル13の側方に前後揺動によって車体の前後進切換操作を行う前後進切換レバー14が配置されている。
【0011】
上記キャビン7は、操縦部6の前後側及び左右側に配置されて該操縦部6の前後及び左右を囲繞する透明な4つのパネル部と、操縦部の上方を覆うルーフ16とを備え、4つのパネル部の内の左右の各パネル部であるサイドパネル部には、透明な開閉扉17が開閉自在に設けられ、この開閉扉17を開くことにより、オペレータは、キャビン7内におけるステアリングハンドル13と座席12との間から操縦部6に乗込むことができる。
【0012】
この乗降の際に踏み台として利用される乗降ステップ18が、開閉扉17の下側近傍に設置されている。乗降ステップ18は、側面視U字状をなすとともに側面視で走行車輪1とクローラ式走行装置2の間に位置しており、キャビン7に一体的に連結固定されている。この乗降ステップ18の下側の水平部分に足を掛けながら操縦部6に乗込むことにより、オペレータのキャビン7内への乗込みが容易になる。
【0013】
また、走行機体8にはエンジンからの動力を変速伝動する変速装置(図示しない)が内装された前後方向のミッションケース28(図2乃至4参照)が設けられるが、該ミッションケース28はシャーシフレーム3の一部を構成するか、又は、シャーシフレーム3の上面側に固着されている。このミッションケース28の後部側からは左右両側方にリヤアクスルケース29(図2乃至4参照)が一体的に突出形成され、このリヤアクスルケース29の内部にはクローラ式走行装置2を駆動するドライブシャフト(図示しない)が収納されている。そして、キャビン7の後端側は、左右一対の防振装置30を介して、リヤアクスルケース29上に載置支持されており(図2乃至4参照)、これによって、走行時に圃場等からキャビン7内に伝わる振動を軽減できるため、操作性及び居住性が良好になる(図2及び図3参照)。
【0014】
上記クローラ式走行装置2は、シャーシフレーム3側に回転自在に支持されて上述のドライブシャフトから伝動されるエンジン動力によって駆動される駆動スプロケット19と、シャーシフレーム3側に連結支持されたクローラフレーム21と、クローラフレーム21の前後の各端部に回転自在に支持されたアイドラホイール22と、前後のアイドラホイール22間に位置してクローラフレーム21に回転自在に支持された複数(図示する例では3つ)の転輪23と、駆動スプロケット19、前後のアイドラホイール22及び複数の転輪23に巻き掛けられたクローラ24と、から構成されており、前後のアイドラホイール22及び複数の転輪23は駆動スプロケット19の下方に配置され、クローラ24は側面視三角形状をなしている。
【0015】
前後のアイドラホイール22の一方又は両方は、前後位置が変更調整可能な状態で、クローラフレーム21に取付けられており、該前後位置調整によってクローラ24のテンションを調整する。環状のクローラ24は、周方向に所定のピッチ(図示する例では等間隔)毎に、左右方向のラグ26が一体的に突出形成されており、クローラ24に万遍無く配された複数のラグ26によって泥濘のある圃場等での走破性を向上させることが可能になる。
【0016】
また、キャビン7の左右の側面の下端側には、クローラ式走行装置2からの泥水の飛散を防止する側面視円弧状のフェンダー27が、それぞれ設けられている。この左右のフェンダー27はキャビン7の後端側から前方の乗降ステップ18側に向かって下方に湾曲された円弧状をなし、この前方斜め上方に山形をなすフェンダー27によってクローラ式走行装置2の上方側から前方側に至る範囲をカバーしている。
【0017】
この左右の各フェンダー27によって、クローラ式走行装置2の前方側から上方側に至る範囲へのクローラ式走行装置2からの泥水の飛散をある程度防止することができるが、このクローラ式走行装置2は、前進走行時、前方斜め下方に移動するクローラ24上のラグ26によって圃場面が叩かれ、泥水等を前方斜め上方側に飛散させることがある。
【0018】
この圃場面から前方斜め上方側に飛散された泥水は、フェンダー27の下端よりも下方側を通って、上述の乗降ステップ18や、キャビン7側面の開閉扉17に付着する場合があり、この場合には、乗降ステップ18に滑りが生じたり、キャビン7側面の視界の妨げになるという問題がある。本トラクタでは、圃場面から前方斜め上方側に飛散された泥水が、フェンダー27の下端よりも下方側を通って、乗降ステップ18やキャビン7側面に至るのを防止するために、弾性変形可能な合成樹脂等によって構成される板状のカバー体としてゴムマット31を設けている(図2乃至4参照)。
【0019】
次に、図2乃至4に基づき、上記ゴムマットについて説明する。
図2乃至4は、本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面要部拡大図、背面要部拡大図及び平面要部拡大図である。上述のゴムマット31は、フェンダー27の前端部から乗降ステップ18の下方に至る範囲を覆うものであって、フェンダー27先端部に設けた左右方向のブラケット32と、乗降ステップ18の近傍側に固設されたプレート状の支持部材33とによって走行機体8側に取付支持されている。
【0020】
また、該ゴムマット31はクローラ式走行装置2と略同じ左右幅か、クローラ式走行装置2よりも若干小さい左右幅(図示する例では若干小さい左右幅)を有する弾性変形可能な方形状シート部材であり、走行機体8側に取付支持された状態では、平面視クローラ式走行装置2の前方に配置されてフェンダー27先端部から鉛直下方に向かう起立部34と、該起立部34の下端部から乗降ステップ18の下側を通過して前方に延設される水平部36とを有するように側面視略L字型の形状に変形される。
【0021】
上記ブラケット32は、フェンダー27最下端箇所となる前端部から下方に延設されてクローラ式走行装置2の前方をカバーするカバー部37と、該カバー部37から外側方に一体的に突出形成されて突出端側がフェンダー27よりも機体外側に位置する左右方向の突出部38と、カバー部37の左右端部の内の機体内側端部から後方に向かって走行機体8の左右方向中心側に傾斜したサイドカバー部39と、カバー部37及び突出部38の上端縁から上方に一体的に突出形成された左右方向の取付部41と、から構成され、全体の左右幅がクローラ式走行装置2の左右幅よりも若干小さくなっているか、略同一になっている。ちなみにカバー部37は下端部が後方側に屈曲形成されている。
【0022】
そして、ブラケット32の取付部41をフェンダー27の前端部背面側に当接させてボルト固定することによりブラケット32をフェンダー27の前端部に固定し、ブラケット32正面側のカバー部37から突出部38に至る範囲にゴムマット31の起立部34の上端部を当接させ、左右並列配置された複数のボルトによって固定することにより、ゴムマット31の上端部がフェンダー27の前端側に取付支持される。
【0023】
上記支持部材33は、鉛直方向が長手方向となる側面視方形状のプレートの下端部を内側方に屈曲形成することにより、下端部に水平な取付座42を形成している。この支持部材33の上端部を、シャーシフレーム又はキャビン側(図示する例ではキャビン側)に固着された平面視機体内側が開放されたコの字状をなす取付ブラケット43にボルト固定することにより、支持部材33が走行機体8側に取付固定される。そして、ゴムマット31の水平部36における左右半部の内の機体内側箇所を、下側から支持部材33の取付座42に当接させてボルト固定することにより、ゴムマットの水平部36が乗降ステップ18に沿うようにして水平部36の近傍に配置固定される。
【0024】
以上のようにして、後側上端部がブラケット32に係止されるとともに前側下端部が支持部材33に係止されたゴムマット31は、上述のように、側面視L字状をなし、クローラ式走行装置2の前方であって乗降ステップ18真後側の左右幅略全体をカバーするように構成されている。これによって、クローラ式走行装置2から乗降ステップ18への泥水等の飛散を最小限に抑制できる。ちなみに、ゴムマット31の水平部36の4隅における前方外側は切抜かれて、切欠き部44を形成している。
【0025】
なお、この支持部材33と、上述のミッションケース28の側面との間には、前後方向に長い直方体状の燃料タンク46が配置され、該燃料タンク46は後方側及び下方側の少なくとも一部(図示する例では左右半部における機体外側半部)が上述のゴムマット31によりカバーされている。このため、クローラ式走行装置2から燃料タンク46への泥水等の飛散も効率的に防止される。ちなみに、サイドカバー部39によって、燃料タンク46へのクローラ走行式装置2からの泥水等の飛散は、さらに効率的に防止される。
【符号の説明】
【0026】
1 走行車輪(走行装置)
2 クローラ式走行装置
6 操縦部
18 乗降ステップ
27 フェンダー
31 ゴムマット(カバー体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側の左右一対の走行装置(1)と、後側の左右一対のクローラ式走行装置(2)と、側面視走行装置(1)とクローラ式走行装置(2)の間に配置されて操縦部(6)への乗降の際に用いられる乗降ステップ(18)とを備えた作業車両において、少なくとも前記クローラ式走行装置(2)用のフェンダー(27)の前端部から乗降ステップ(18)の下方に至る範囲を覆うカバー体(31)を設けた作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57171(P2011−57171A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211990(P2009−211990)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】