説明

作業車両

【課題】ミッションケースの上面の対地高さを低くても、運転座席またはミッションケースの周辺に配置される付設部品の着脱作業性などを向上する。
【解決手段】エンジンとミッションケース17を有する走行機体2を備え、ミッションケース17の上方側にシートフレームを介して運転座席8を配置し、走行機体2に作業機を装設する作業車両において、シートフレームは底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを有し、底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを矩形に連結するように構成したものであるから、運転座席8支持位置の対地高さを確保しながら、ミッションケース17の上面の対地高さを低く形成できる。また、運転座席8または前記ミッションケース17の周辺に分散させてそれらの付設部品67,69を組付けることができ、運転座席8またはミッションケース17の周辺に配置される付設部品67,69の着脱作業性などを向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、農作業に使用されるトラクタまたは土木作業に使用されるホイルローダ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラクタ等の作業車両では、後車輪が装設されたミッションケースの上面に近接させて運転座席を支持する技術が知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、箱状に形成された取付台に運転座席を支持する技術も公知である(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63969号公報
【特許文献2】特開平11−56008号公報
【特許文献3】特開2006−62572号公報
【特許文献4】特開平6−336129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜特許文献3のように、ミッションケース上面側に運転座席を支持する構造では、例えば、ミッションケースの上面の対地高さを高く形成して運転座席の対地高さを確保する必要がある。また、特許文献4のように、ミッションケースの上面に対して離間させて運転座席を支持する構造では、オペレータが搭乗する床板面に、取付台を介して運転座席を支持する必要がある。即ち、運転座席またはミッションケースとこれらの周辺の付設部品のレイアウトが制限され、運転座席またはミッションケースの周辺に配置される付設部品の着脱作業性などを向上できない等の問題がある。
【0005】
そこで、本願発明は、これらの現状を検討して改善を施した作業車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、エンジンとミッションケースを有する走行機体を備え、前記ミッションケースの上方側にシートフレームを介して運転座席を配置し、前記走行機体に作業機を装設する作業車両において、前記シートフレームは底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを有し、前記底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを矩形に連結するように構成したものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業車両において、前記シートフレームの一方の側面に作業機用の昇降油圧バルブ機構を支持するように構成したものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載した作業車両において、前記シートフレームの他方の側面に作業機用の油圧リリーフバルブ機構を支持するように構成したものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載した作業車両において、前記ミッションケースの上面に燃料タンクを載置し、前記シートフレーム内の矩形スペースに前記燃料タンクを支持するように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、エンジンとミッションケースを有する走行機体を備え、前記ミッションケースの上方側にシートフレームを介して運転座席を配置し、前記走行機体に作業機を装設する作業車両において、前記シートフレームは底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを有し、前記底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを矩形に連結するように構成したものであるから、前記運転座席支持位置の対地高さを確保しながら、前記ミッションケースの上面の対地高さを低く形成できる。また、前記運転座席またはミッションケースとこれらの周辺の付設部品のレイアウトが殆ど制限されることがなく、前記運転座席または前記ミッションケースの周辺に分散させてそれらの付設部品を組付けることができ、前記運転座席または前記ミッションケースの周辺に配置される付設部品の着脱作業性などを向上できる。
【0011】
請求項2の発明によると、前記シートフレームの一方の側面に作業機用の昇降油圧バルブ機構を支持するように構成したものであるから、前記昇降油圧バルブ機構の着脱作業性を向上できる。また、前記ミッションケースに前記昇降油圧バルブ機構の設置場所を確保する必要がなく、外観がシンプルな形状に前記ミッションケースを形成でき、前記ミッションケースを低コストに製造できる。
【0012】
請求項3の発明によると、前記シートフレームの他方の側面に作業機用の油圧リリーフバルブ機構を支持するように構成したものであるから、前記油圧リリーフバルブ機構の着脱作業性を向上できる。また、前記ミッションケースに前記油圧リリーフバルブ機構の設置場所を確保する必要がなく、外観がシンプルな形状に前記ミッションケースを形成でき、前記ミッションケースを低コストに製造できる。
【0013】
請求項4の発明によると、前記ミッションケースの上面に燃料タンクを載置し、前記シートフレーム内の矩形スペースに前記燃料タンクを支持するように構成したものであるから、前記ミッションケースと前記運転座席の間に形成されるスペースを有効に活用して、前記燃料タンクをコンパクトに組付けることができる。また、前記ミッションケース及び前記運転座席及び前記シートフレームによって前記燃料タンクを囲んで保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態を示す作業車両としての農作業用トラクタの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】ミッションケース部の左側面図である。
【図4】同右側面図である。
【図5】同平面図である。
【図6】同正面図である。
【図7】シートフレーム部の左側斜視図である。
【図8】同右側斜視図である。
【図9】同背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、作業車両としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同平面図、図3はミッションケース部の左側面図、図4は同右側面図、図5は同平面図、図6は同正面図、図7はシートフレーム部の左側斜視図、図8は同右側斜視図、図9は同背面斜視図である。なお、以下の説明では、機体の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
図1及び図2に示す如く、作業車両としてのトラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはステップ7が設置され、ボンネット6の後側方には、運転座席8と、かじ取りすることによって前車輪3を左右に動かすようにした操縦ハンドル9とが設置される。運転座席8の外側部には、オペレータを保護するロプスフレーム10が設けられている。
【0017】
また、前記走行機体2は、前バンパフレーム12及び前車軸ケース13を有する左右の機体フレーム16により構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18を介して取付けられている。
【0018】
前記ミッションケース17の上面には、シートフレーム20がボルト締結にて取付けられている。ロワーリンク21及びトップリンク22を有するリンク機構23を備える。ミッションケース17の後部にリンク機構23を設け、ロワーリンク21及びトップリンク22を介して耕うん機等の作業機(図示省略)が昇降可能に連結される。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記耕うん機等の作業機に動力伝達するPTO軸24が後向きに突出するように設けられている。
【0019】
さらに、前記エンジン5の後面からミッションケース17の前面に向けて自在軸継ぎ手を備えた動力伝達軸25を延設している。前記エンジン5の回転出力を、ミッションケース17に伝達し、次いで、ミッションケース17の変速出力を、図示しない差動ギヤ機構などを介して後車輪4に伝達するように構成している。また、ミッションケース17の変速出力を、前車輪駆動軸26を介して前車輪3に伝達するように構成している。
【0020】
なお、本実施形態では、運転座席8の前方のステップ7から突出する操縦コラム31上に操縦ハンドル9が配置され、ステップ7の右側後部にローダ操作機構32が着脱可能に配置されている。また、操縦コラム31の右方には変速ペダル33が配置されている。
【0021】
次に、図3〜図9を参照して、運転座席8などの取付け構造を説明する。図6に示す如く、運転座席8右側の右フエンダ34部には、作業機昇降レバー35が配置され、運転座席8左側の左フエンダ36部には、走行変速レバー37とPTO変速レバー38が配置されている。
【0022】
図3〜図9に示す如く、前記シートフレーム20は、前後の底面フレーム41,42と、左右の底面フレーム43,44と、左右の前部縦フレーム45,46と、左右の後部縦フレーム47,48と、前後の上面フレーム49,50と、左右の上面フレーム51,52とを有する。前記各底面フレーム41〜44及び各縦フレーム45〜48及び各上面フレーム49〜52を矩形に連結して、直方体の枠構造にシートフレーム20を形成している。
【0023】
即ち、各底面フレーム41〜44及び各縦フレーム45〜48及び各上面フレーム49〜52が、直方体の12辺になるように枠組み形成されて、シートフレーム20が構成されている。なお、各底面フレーム41〜44及び各縦フレーム45〜48及び各上面フレーム49〜52は、ボルト締結にて連結したが、溶接固定などにて連結してもよい。
【0024】
図3〜図9に示す如く、ミッションケース17の上面に前後の底面フレーム41,42が着脱可能にボルト締結され、直方体の櫓状のシートフレーム20がミッションケース17の上面に載置される。一方、左右の上面フレーム51,52の上面に、シート前後位置調節レバー59操作によって多段に前後動する左右のスライドレール55,56を固着する。シート前部支持体57が左右のスライドレール55,56の前部に懸架され、シート後部支持体58が左右のスライドレール55,56の後部に懸架される。
【0025】
前後回転軸60を有するシート前部支持体57に、運転座席8の前部を支持する。シート後部支持体58にクッションゴム体61を介して運転座席8の後部を支持する。前後回転軸60回りに運転座席8が前方向に展開移動するように構成している。また、図3、図6に示す如く、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク62を備える。ミッションケース17の上面に燃料タンク62を載置し、シートフレーム20内の矩形スペースに前記燃料タンク62を支持するように構成している。
【0026】
図3〜図5、図8、図9に示す如く、ミッションケース17後部の上面にリフト支点軸63を介してリフトアーム64の基端部を回動可能に軸支する。リフトアーム64の先端部にリフトロッド65を介してロワーリンク21を連結する。ミッションケース17の後面部に油圧リフトシリンダ66を設け、リフトアーム64の中間部に油圧リフトシリンダ66を連結する。また、油圧リフトシリンダ66を作動させる作業機昇降用の昇降油圧バルブ機構67を備える。シートフレーム20の右側面に、右の前部縦フレーム46と右の上面フレーム52を介して昇降油圧バルブ機構67を支持するように構成している。
【0027】
なお、昇降油圧バルブ機構67を中立に復帰させるためのフィードバックリンク68が、ロワーリンク21と昇降油圧バルブ機構67の間に連結されている。作業機昇降レバー35を操作して昇降油圧バルブ機構67を切換え、油圧リフトシリンダ66を作動させ、ロワーリンク21を昇降動させ、ロワーリンク21とトップリンク22に連結された耕耘作業機などの作業機(図示省略)を昇降させ、前記作業機を任意の高さに支持するように構成している。
【0028】
また、図示しない油圧ポンプから供給される油圧リフトシリンダ66への作動油圧などを制限するための作業機昇降用の油圧リリーフバルブ機構69を備える。シートフレーム20のうち後の底面フレーム42に油圧リリーフバルブ機構69を固着し、シートフレーム20の後部に底面フレーム42を介して油圧リリーフバルブ機構69を支持するように構成している。なお、シートフレーム20のうち、後の底面フレーム42以外のフレーム(例えば、左右の底面フレーム43,44、または縦フレーム45〜48等)を利用して、油圧リリーフバルブ機構69を着脱可能に設けることもできる。一方、油圧リフトシリンダ66と、昇降油圧バルブ機構67と、油圧リリーフバルブ機構69を、複数の油圧配管にて接続している。図示しない油圧ポンプの高圧油が、油圧リリーフバルブ機構69にて制限されながら、昇降油圧バルブ機構67を介して油圧リフトシリンダ66に供給されるように構成している。
【0029】
図1、図3〜図9に示す如く、エンジン5とミッションケース17を有する走行機体2を備え、ミッションケース17の上方側にシートフレーム20を介して運転座席8を配置し、走行機体2に作業機を装設する作業車両において、シートフレーム20は底面フレーム41〜44及び縦フレーム45〜48及び上面フレーム49〜52を有し、底面フレーム41〜44及び縦フレーム45〜48及び上面フレーム49〜52を矩形(直方体の12辺を形成する枠形状)に連結するように構成している。
【0030】
したがって、運転座席8支持位置の対地高さを確保しながら、ミッションケース17の上面の対地高さを低く形成できる。また、運転座席8またはミッションケース17とこれらの周辺の付設部品(昇降油圧バルブ機構67、油圧リリーフバルブ機構69など)のレイアウトが殆ど制限されることがない。運転座席8またはミッションケース17の周辺に分散させてそれらの付設部品(昇降油圧バルブ機構67、油圧リリーフバルブ機構69など)を組付けることができる。運転座席8またはミッションケース17の周辺に配置される付設部品(昇降油圧バルブ機構67、油圧リリーフバルブ機構69など)の着脱作業性などを向上できる。
【0031】
図3〜図9に示す如く、シートフレーム20の一方の側面(右側面)に、右の前部縦フレーム46または右の上面フレーム52を介して、作業機昇降用の昇降油圧バルブ機構67を支持するように構成している。したがって、昇降油圧バルブ機構67の着脱作業性を向上できる。また、ミッションケース17に昇降油圧バルブ機構67の設置場所を確保する必要がなく、外観がシンプルな形状に前記ミッションケース17を形成でき、ミッションケース17を低コストに製造できる。例えば、製造場所または修理場所などにおいて、作業機昇降レバー35などを組付けたユニット状態の昇降油圧バルブ機構67を単一部品として取扱うことができ、昇降油圧バルブ機構67の組立作業性またはメンテナンス作業性を向上できる。
【0032】
図3〜図9に示す如く、シートフレーム20の他方の側面(後面側)に、後の底面フレーム42を介して、作業機用の油圧リリーフバルブ機構69を支持するように構成している。したがって、油圧リリーフバルブ機構69の着脱作業性を向上できる。また、ミッションケース17に油圧リリーフバルブ機構69の設置場所を確保する必要がなく、外観がシンプルな形状にミッションケース17を形成でき、ミッションケース17を低コストに製造できる。例えば、製造場所または修理場所などにおいて、油圧リリーフバルブ機構69を単一部品として取扱うことができ、油圧リリーフバルブ機構69の組立作業性またはメンテナンス作業性を向上できる。
【0033】
図3〜図9に示す如く、ミッションケース17の上面に燃料タンク62を載置し、シートフレーム20内の矩形スペース(直方体の内部空間)に燃料タンク62を支持するように構成している。したがって、ミッションケース17と運転座席8の間に形成されるスペースを有効に活用して、燃料タンク62をコンパクトに組付けることができる。また、ミッションケース17及び運転座席8及びシートフレーム20(縦フレーム45〜48など)によって燃料タンク62を囲んで保護できる。燃料タンク62の上面側が運転座席8(オペレータ)によって遮蔽されるから、太陽光などによって燃料タンク62が殆ど加熱されることがなく、燃料タンク62内の燃料が昇温するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0034】
2 走行機体
5 エンジン
8 運転座席
17 ミッションケース
20 シートフレーム
41 前の底面フレーム
42 後の底面フレーム
43 左の底面フレーム
44 右の底面フレーム
45 左の前部縦フレーム
46 右の前部縦フレーム
47 左の後部縦フレーム
48 右の後部縦フレーム
49 前の上面フレーム
50 後の上面フレーム
51 左の上面フレーム
52 右の上面フレーム
62 燃料タンク
67 昇降油圧バルブ機構
69 油圧リリーフバルブ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとミッションケースを有する走行機体を備え、前記ミッションケースの上方側にシートフレームを介して運転座席を配置し、前記走行機体に作業機を装設する作業車両において、
前記シートフレームは底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを有し、前記底面フレーム及び縦フレーム及び上面フレームを矩形に連結するように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記シートフレームの一方の側面に作業機用の昇降油圧バルブ機構を支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記シートフレームの他方の側面に作業機用の油圧リリーフバルブ機構を支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ミッションケースの上面に燃料タンクを載置し、前記シートフレーム内の矩形スペースに前記燃料タンクを支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−126209(P2012−126209A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278093(P2010−278093)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】