説明

作業車両

【課題】軌道や道路上からその上方に覆い被さるように延びた枝などを切断することができる作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】軌道上及び道路上の少なくとも一方を走行可能な車両本体2と、車両本体2から延び上下方向に起伏可能な第1のアーム3と、第1のアーム3の先端部に設けられ第1のアーム3の長手軸L1と直交し且つ水平方向に延びる回動軸xを中心に回動する第2のアーム4と、第2のアーム4の先端部に設けられ、枝葉を切断可能な切断機構5と、を備え、第2のアーム4は、その長手軸L2が第1のアーム3の長手軸L1に対して少なくとも直角となり且つ先端部が回動軸xよりも上方に位置するよう回動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道や道路脇に生える樹木の枝葉を切断するための作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車の軌道や道路脇に生えている樹木は、軌道や道路に覆い被さるように枝が伸びてくることがあり、これに伴って電線や通信線が損傷を受けたり、列車や自動車が走行時に接触したりするという不具合が生じる。
【0003】
これを防止するためには、軌道や道路に覆い被さるように伸びた枝を切断する必要がある。高所にある枝を切断するためには、長いロッドの先端部にハサミを取り付けて下方からワイヤで切断操作をする器具を用いることができるが、手の力で切断できる枝は細いものに限られる。また、作業者が脚立を使用してチェーンソー等で切断することもできるが、脚立の移動や作業者の上り下りに手間が掛かる上、高所での作業に危険が伴う。
【0004】
これに対し、人力に頼らずに枝の切断を行う装置として、例えば、特許文献1では、油圧ショベルのアームの先端部にカッター装置を取り付け、油圧ショベルを操作することで高所にある枝を切断する枝切り走行装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−103452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような枝切り走行装置は、真上にある枝などを切断することができないため、軌道や道路上からその上方に覆い被さるように延びた枝などを切断することが困難であった。そこで、本発明は、上記問題を解決することのできる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両は、軌道上及び道路上の少なくとも一方を走行可能な車両本体と、前記車両本体から延び、上下方向に起伏可能な第1のアームと、前記第1のアームの先端部に設けられ前記第1のアームの長手軸と直交し且つ水平方向に延びる回動軸を中心に回動する第2のアームと、前記第2のアームの先端部に設けられ、枝葉を切断可能な切断機構と、を備え、前記第2のアームは、その長手軸が前記第1のアームの長手軸に対して少なくとも直角となり且つ先端部が前記回動軸よりも上方に位置するよう回動可能である。
【0008】
この作業車両によれば、第2のアームが第1のアームに対して直交するように回動することができるために、作業車両の真上に伸びる枝を切断することができる。
【0009】
上記作業車両において、切断機構は、回転可能な回転体と、回転体の外周面に設けられた複数の突起体とを有する構成とすることができる。この各突起体は、回転体から延びる軸部と、軸部の先端側に形成されており先端側に広がる錐体状の切断部とを有する構成とすることが好ましい。なお、この切断部の形状は、円錐状や角錐状とすることができる。このように構成することで、回転する突起体を枝などに接触させるだけで枝などを切断することができるため、効率的に作業を行うことができる。また、この構成では、枝などをチップ状に切断することができるため、切断後の枝などの後処理が容易となる。
【0010】
また、上記回転体は複数のネジ穴が形成され、各突起体は軸部の後端部に雄ネジが形成され回転体の各ネジ穴に螺合されるような構成とすることができる。この構成によれば、各突起体を容易に交換することができる。
【0011】
また、上記切断機構を旋回可能とすることが好ましい。
【0012】
また、上記第2のアームをモータにより回動する構成とすることができる。
【0013】
また、上記第2のアームは伸縮可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業車両によれば、軌道や道路上からその上方に覆い被さるように延びた枝などを切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態に係る作業車両の側面図である。
【図2】図2は本実施形態に係る作業車両の平面図である。
【図3】図3は本実施形態に係る切断機構の正面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】図4は本実施形態に係る切断機構の突起体を示す側面図(a)及び平面図(b)である。
【図5】図5は本実施形態に係る作業車両の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る作業車両の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る作業車両10は、車両本体2、車両本体2から延びる第1のアーム3、第1のアーム3に回動可能に接続された第2のアーム4、及び第2のアーム4の先端部に取り付けられた切断機構5を主な構成としている。
【0018】
車両本体2は、走行機構21と、走行機構21上に旋回可能に搭載された旋回体22とを備えている。走行機構21は、軌道のレール上を走行するための車輪211と、地面や道路上を走行するためのキャタピラ212とを備えている。車輪211は昇降機構(図示省略)により昇降可能となっており、昇降機構により車輪211を下降させた場合は車輪211により軌道のレール上を走行可能となり、車輪211を上昇させた場合はキャタピラ212により地面や道路上を走行可能となる。なお、走行のための駆動源は、伝動装置の切り替え手段により、走行に用いられる車輪211及びキャタピラ212のいずれかに伝達される。
【0019】
旋回体22は、走行機構21のフレーム上に垂直軸周りに旋回可能に搭載されており、運転席221、動力部222を有している。運転席221において、車両本体2の走行や、第1のアーム3の起伏動、第2のアーム4の回動、切断機構5の運転などの各種操作を行い、各種操作は、動力部222からの動力を油圧ポンプで油圧力に変換し、この油圧力を駆動源としている。
【0020】
旋回体22からは、第1のアーム3が延びている。この第1のアーム3は、旋回体22に対して上下方向に起伏可能に取り付けられており、動力部222に接続された油圧シリンダなどにより起伏駆動される。第1のアーム3の先端部31は二股に分岐しており、この先端部31の間において第2のアーム4が取り付けられている。なお、第1のアーム3の二股に分かれた先端部31が延びる方向が第1のアーム3の長手軸L1である。
【0021】
第2のアーム4は、第1のアーム3の先端部31に取り付けられており、第1のアーム3の先端部31に設けられた回動軸xを中心に回動可能である。この第2のアーム4の回動範囲については、第1のアーム3の長手軸L1を基準とした第2のアーム4の長手軸L2の回動角度αを−100〜+90度程度とすることができる。なお、第1のアーム3の長手軸L1と第2のアーム4の長手軸L2が平行となったとき(本実施形態では長手軸L1とL2とが一直線上に重なったとき)回動角度αは0度となり(図1の(I)の状態)、この状態における第2のアーム4の先端の位置よりも第2のアーム4の先端が下方に位置するときは回動角度αが「−」となり(図1の(II)の状態)、逆に上方に位置するときは回動角度αが「+」となる(図1の(IIIの状態))。なお、第2のアーム4の回転駆動は、駆動部222を駆動源とする油圧モータ41や、油圧モータ41と第2のアーム4とを接続するウォームギアによって行われ、ウォームホイールを油圧モータ41の出力軸に取り付けてもよいし、ウォームを油圧モータ41の出力軸に取り付けてもよい。
【0022】
また、第2のアーム4は、伸縮可能に構成されており(本実施形態では3段階に伸縮可能)、好ましくは駆動部222を駆動源とする油圧式のテレスコシリンダにより構成することができる。
【0023】
第2のアーム4の先端部には、切断機構5が取り付けられている。この切断機構5は、回転プレート51において旋回軸yを中心として旋回可能である。この切断機構5の旋回は、油圧によって行われることが好ましいが、手動によって行うこともできる。また、切断機構5は、水平方向に延び且つ第2のアーム4の長手軸L2に直交する揺動軸z周りに揺動可能に第2のアーム4の先端に取り付けられており、油圧シリンダ52を伸縮させることによって揺動軸zを中心に揺動され角度を調整することができる。
【0024】
また、切断機構5は、図3に示すように、円柱状の回転体53と、回転体53の外周面に形成された複数の突起体54とを有している。また、突起体54が形成された回転体53を覆うカバー55が取り付けられており、カバー55の下端縁には、切断したチップ状の枝などが飛散しないようチェーン56が取り付けられている。なお、このチェーン56は、回転する突起体54に接触しないような長さとする。
【0025】
回転体53は、駆動部222を駆動源とする油圧モータ(図示省略)によって回転駆動する。また、回転体53の外周面には、複数のネジ穴が形成されている。各突起体54は、図4に示すように、軸部541と、軸部541の先端側に設けられた切断部542とを有している。軸部541は、その後端部に雄ネジが形成されており、上述した回転体53の各ネジ穴に螺合できるようになっている。また、切断部542は、先端側に広がる円錐状となっており、その先端の外周縁において枝葉などを切断するようになっている。なお、突起体54の材質は、枝などを切断するのに十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばニッケルクロム鋼などとすることができる。
【0026】
次に、上述した作業車両の使用方法について図5を参照しつつ説明する。
【0027】
まず、作業車両1を軌道のレール上に設置し、昇降機構(図示省略)によって車輪211を下降させて車輪211をレール上に載せ、作業場所まで作業車両1を走行させる。そして、第1のアーム3を起伏させたり、第2のアーム4を回動・伸縮させたりすることで、切断機構5の位置を調節し、回転した状態の回転体53を切断対象の枝に接触させる。これにより、枝は回転した回転体53の外周面に形成された突起体54の切断部542によってチップ状に切断される。なお、回転体53の回転数は、特に限定されるものではないが、例えば、1800〜2200rpm程度とすることが好ましい。そして、第1のアーム3や第2のアーム4を操作することで切断機構5が届く範囲の樹木を伐採した後は、次の作業場所まで作業車両1を走行させて、同様の方法で樹木を伐採する。なお、軌道ではなく道路付近の樹木を伐採する場合、作業車両1は、昇降機構(図示省略)によって車輪211を上昇させ、キャタピラ212によって走行する。
【0028】
特に軌道上に覆い被さるようにして伸びている枝bを切断する場合は、まず第1のアーム3を起こし、切断機構5の位置を調節するために回動角度αが約90度以上となるまで第2のアーム4を回動し、切断機構5が枝bまで届くよう第2のアーム4を伸ばす。そして、切断機構5を作動させる、すなわち回転体53を回転させることで枝bを切断する。このように、第2のアーム4が回動することで、第1のアーム3が架線wに接触することなく、軌道上を覆い被さるように伸びる枝bを切断することができる。なお、軌道付近の傾斜面に沿って生える雑草や低木などを伐採する場合は、第1のアーム3を寝かせ、また、第2のアーム4を回動角度αが約0度から−10度くらいまでとなるように回動し、回転体53を回転させることで雑草や低木を伐採する。
【0029】
以上、本実施形態に係る作業車両1によれば、軌道又は道路上にありながら軌道又は道路の上方に覆い被さるようにして伸びる枝を伐採することができる。また、本実施形態に係る切断機構5は、回転体53を回転させ、その回転する回転体53の外周面に形成された突起体54によって樹木を伐採するために、従来のようにカッターなどを用いる場合に比べて、より短時間で大量の樹木を伐採することができ効率的な作業を実現することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態では、切断機構5として、回転体53の外周面に複数の突起体54が形成されたものを採用したが、軌道や道路に覆い被さるように延びる枝などを切断できるものであれば種々のものを採用することができ、例えば、チェーンソーや、カッターなどを切断機構5として採用することができる。
【0032】
また、本実施形態では、油圧モータ41によって第2のアーム4を回動させているが、電気モータによって第2のアーム4を回動させたりと、種々の方法により第2のアーム4を回動させることができる。
【0033】
また、第2のアーム4の回動角度αは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、回動角度αを−180〜+180度程度としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 作業車両
2 車両本体
3 第1のアーム
4 第2のアーム
41 油圧モータ
5 切断機構
53 回転体
54 突起体
541 軸部
542 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上及び道路上の少なくとも一方を走行可能な車両本体と、
前記車両本体から延び、上下方向に起伏可能な第1のアームと、
前記第1のアームの先端部に設けられ前記第1のアームの長手軸と直交し且つ水平方向に延びる回動軸を中心に回動する第2のアームと、
前記第2のアームの先端部に設けられ、枝葉を切断可能な切断機構と、を備え、
前記第2のアームは、その長手軸が前記第1のアームの長手軸に対して少なくとも直角となり且つ先端部が前記回動軸よりも上方に位置するよう回動可能である、作業車両。
【請求項2】
前記切断機構は、回転可能な回転体と、前記回転体の外周面に設けられた複数の突起体とを有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記各突起体は、前記回転体から延びる軸部と、前記軸部の先端側に形成されており先端側に広がる錐体状の切断部とを有する、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記回転体は複数のネジ穴が形成され、前記各突起体は前記軸部の後端部に雄ネジが形成され前記回転体の各ネジ穴に螺合される、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記切断機構は、旋回可能である、請求項2から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記第2のアームは、モータにより回動される、請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記第2のアームは伸縮可能である、請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239418(P2012−239418A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112174(P2011−112174)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(591158449)