説明

作業車両

【課題】従来の機体上にキャビンを設けた作業車両では、介装する防振装置として弾性部材そのものを分散配置したため、十分な防振効果が得られず、特に、ローリング時には、弾性部材のせいで却って揺動幅が増加し、作業車両の左右方向の安定性が悪化した。
【解決手段】防振装置16には、側面視で直角または鋭角の屈曲部と、それを挟んだ前後二つの辺部とから成るV字リンク25・26を前後に設け、その間で前後方向内側の辺部の内支点25e・26e間に第一ダンパ27を介装すると共に、各V字リンク25・26で前後方向外側の辺部の外支点25d・26dと、屈曲部の屈曲部支点25f・26fとのうち、一方をシャーシ6に、他方を下部フレーム24に、前後回動自在に連結し、前記外支点25d・26dのうちの少なくとも一方に、シャーシ6または下部フレーム24を前後移動自在なスライド機構36を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体上に防振装置を介してキャビンを設けた作業車両に関し、特に、キャビン振動への影響が大きいバウンスとピッチングはもとより、ローリングに対しても十分な防振効果が得られる防振装置に関する。ここで、バウンスとは、車両が上下へ揺動する動きであり、ピッチングとは、車両が左右方向の軸を中心にして前後へ揺動する動きであり、ローリングとは、車両が前後方向の軸を中心にして左右へ揺動する動きである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタ等の作業車両においては、機体とキャビンとの間に、ゴムやバネ等の弾性体を有する弾性部材を介装することにより、圃場および路面の凹凸に起因する振動やエンジンからの振動が、機体からキャビンに伝播するのを抑制して、キャビンの居住性を向上する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該技術では、箱状のキャビンの下部四隅に加えて、該キャビンの下部前縁の左右略中央にも弾性部材を配置することにより、弾性部材による防振効果が大きいといわれるバウンス以外にピッチングに対する防振効果も高めて、キャビン振動に対する影響が大きいバウンスとピッチングを同時に抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記技術では、各所に設けた弾性部材そのものを防振要素として分散配置して使用するだけのため、必ずしも十分な防振効果が得られない。特に、前記バウンスとピッチングに比べてキャビン振動への影響が小さいローリングに対しては、弾性部材のせいで却って揺動幅が増加し、作業車両の左右方向の安定性が悪化する、という問題があった。
【0006】
更に、キャビンの前部には、エンジンからの動力伝達経路や各種操作手段等が集中して配置されており、前記弾性部材の配置空間が十分には確保できないため、弾性体の種類変更や個数増加等によって防振効果を高めたような、種々の防振要素の適用が困難である、という問題があった。
【0007】
加えて、分散配置した弾性部材による支持では、機体に対するキャビンの相対移動が全方位に可能であるため、機体に対するキャビンの過大な相対移動を抑制するには、多数のストッパを至る所に設ける必要があり、部品点数増による部品コストの増加とメンテナンス性の悪化を招く、という問題があった。
【0008】
また、前記キャビン側に設けたペダル・レバー等の操作具と、機体側に設けたブレーキ・クラッチ・ミッション等の被操作具とを操作系リンクで連結する場合、該操作系リンクが機体とキャビンとの間に単に橋設されているだけでは、機体に対するキャビンの相対移動に伴い、操作系リンクを介して前記被操作具が誤動作され、この相対移動が過大だと、操作系リンクが過負荷により折損したり、被操作具でギア抜け等の不具合が発生する、という問題があった。
【0009】
更に、キャビンに乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さによっては、キャビンの沈み込み量が変化するため、機体に対するキャビンの初期位置が変化して、十分な防振効果が得られない場合がある、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、機体上に防振装置を介してキャビンを設けた作業車両において、前記防振装置には、側面視で直角または鋭角の屈曲部と該屈曲部を挟んだ前後二つの辺部とから成るV字リンクを前後に設け、該両V字リンク間で前後方向内側の辺部の内端間には、第一防振要素を介装すると共に、該両V字リンクで前後方向外側の辺部の外端と屈曲部の端部とのうち、一方を機体側構造体に、他方をキャビン側構造体に、前後回動自在に連結し、前記外端のうちの少なくとも一方に、前記機体側構造体またはキャビン側構造体に対して前後移動自在なスライド機構を設けたものである。
請求項2においては、前記V字リンクと機体側構造体との間、またはV字リンクとキャビン側構造体との間に、第二防振要素を介装するものである。
請求項3においては、前記防振装置は、作業車両の左右一側または左右両側に配置可能とするものである。
請求項4においては、前記防振装置は、前記機体に対するキャビンの相対移動を少なくとも前後方向に対して規制するストッパを備えるものである。
請求項5においては、前記キャビン側に設けた操作具と機体側に設けた被操作具とを連動連結する操作系リンクにおいて、該操作系リンクでキャビン側構造体と機体側構造体との間の第一リンク部分を、前記V字リンクでキャビン側構造体と機体側構造体との間の第二リンク部分に沿って配置するものである。
請求項6においては、前記防振要素は、流体を封入したシリンダ内を摺動するピストンの流動抵抗により減衰力を発生させるダンパ部と、前記ピストンに連結されてダンパ部の長さを制御する油圧アクチュエータ部とから構成すると共に、前記防振装置には、前記油圧アクチュエータ部の動作を制御するコントローラと、前記キャビンの沈み込み量を検知して前記コントローラに制御信号を送信する位置センサとを設けることにより、前記沈み込み量に応じて油圧アクチュエータ部を動作させてダンパ部の初期長さを調整可能とするものである。
請求項7においては、前記防振要素は液圧回路を備え、該液圧回路中には圧液にかかる衝撃を吸収するアキュムレータを接続するものである。
請求項8においては、前記防振要素は、該防振要素を構成する弾性部材による弾性力を変更可能とするものである。
請求項9においては、前記スライド機構は、前記V字リンクの外端と機体側構造体との間、またはV字リンクの外端とキャビン側構造体との間に、前後方向の剛性よりも上下方向の剛性が大きいゴム部材を介装して成るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、第一防振要素を間に介装した前後二個のV字リンク、該両V字リンクで前後方向外側の辺部の外端間を結ぶリンク、及び該両V字リンクの屈曲部で端部間を結ぶリンクから成る四節リンク機構を形成することができ、リンク機構と防振要素との併用により、十分な防振効果が得られる。しかも、該四節リンク機構中に前記スライド機構を設けたので、前記外端間を結ぶリンクのリンク長を可変にして四節リンク機構の変形範囲を拡大し、機体に対するキャビンの追従性を抑制して防振効果を更に高め、キャビンの居住性を向上させることができる。特に、前記四節リンク機構は左右方向に変形しにくいため、従来のように分散配置した弾性部材とは異なり、ローリングによる揺動幅を増加させることがなく、作業車両の左右方向の安定性を確保できる。更に、V字リンクを前後に離間して配置した場合には、前記第一防振要素を、動力伝達経路や各種操作手段等が集中して配置空間が狭くなっているキャビン前部以外の位置、例えばキャビンの前後方向略中央部にも配置することができ、十分な配置空間の確保により、種々の第一防振要素の適用が可能となり、第一防振要素の適正化が図れる。
請求項2により、前記四節リンク機構を構成するV字リンク同士を防振連結する前記第一防振要素に加え、この第二防振要素により、V字リンクの一つを四節リンク機構の外部にある構造体に防振連結することが可能となり、防振装置の防振効果を更に高めることができる。
請求項3により、機体上に設けるキャビンの仕様や設置位置に応じて前記防振装置の数や設置位置を変更することができ、防振装置の数を最小限に抑えて、装置コストの低減を図ることができる。
請求項4により、他の機器との干渉の恐れが大きい前後方向へのキャビンの移動を前記ストッパによって規制することにより、機体に対するキャビンの過大な相対移動を確実に抑制できる。しかも、従来のように分散配置した弾性部材とは異なり、ストッパを至る所に設ける必要がなく、前後方向のみに設けてストッパの数を最小限に抑え、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項5により、前記第一リンク部分の動きが第二リンク部分によって拘束され、操作系リンクによる被操作具の誤動作を防止できると共に、機体に対してキャビンが過大に相対移動しても、操作系リンクの折損や被操作具のギア抜け等の不具合が発生しない。
請求項6により、キャビンに乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さにかかわらず、機体に対するキャビンの初期位置を、防振に適した適正位置に予め調整することができ、十分な防振効果が得られる。しかも、この初期位置調整作業は自動的に行われるため、キャビンの沈み込み量が変化する度に手動でやり直す必要がなく、作業者の作業負荷の軽減が図れる。加えて、昇降時にはキャビンを機体に近接させるように、前記油圧アクチュエータ部の動作を自動制御することにより、作業者の昇降を容易にすることもできる。
請求項7により、防振要素を構成する各種液圧ダンパ等にかかる衝撃力を吸収することができ、防振装置の防振効果を更に高めることができる。
請求項8により、キャビンに乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さにかかわらず、機体に対するキャビンの初期位置を、防振に適した適正位置に予め調整することができ、十分な防振効果が得られる。
請求項9により、スライド機構に、安価で構造が単純な前記ゴム部材を適用することができ、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。更に、該ゴム部材では、通常のスライド部のように土・埃等が巻き込まれることがなく、該土・埃等による防振効果の低下を回避できる。加えて、該ゴム部材では、固体伝播音の絶縁が可能なため、固体間衝突によって生じる騒音も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる作業車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係わる防振装置を取り付けたキャビン下部の底面斜視図である。
【図3】防振装置の全体構成を示す図であって、図3(a)は防振装置の側面図、図3(b)は同じく側面模式図である。
【図4】ピッチングの際の各構成部材の動作状況を示す、防振装置の側面模式図であって、図4(a)は平地走行時の防振装置の側面模式図、図4(b)は機体が前傾した場合の防振装置の側面模式図、図4(c)は機体が後傾した場合の防振装置の側面模式図である。
【図5】バウンスの際の各構成部材の動作状況を示す、防振装置の側面模式図であって、図5(a)は平地走行時の防振装置の側面模式図、図5(b)は機体が上昇した場合の防振装置の側面模式図、図5(c)は機体が下降した場合の防振装置の側面模式図である。
【図6】ストッパの構成を示す図であって、図6(a)は前後方向ストッパと左右方向ストッパを取り付けた防振装置の側面模式図、図6(b)は左右方向ストッパの正面断面図である。
【図7】操作系リンクの構成を示す図であって、図7(a)はキャビンが機体直上にある場合の操作系リンクの側面模式図、図7(b)はキャビンが前方に相対移動した場合の操作系リンクの側面模式図である。
【図8】防振装置の別形態を示す、防振装置の側面模式図であって、図8(a)は防振装置16Aの側面模式図、図8(b)は防振装置16Bの側面模式図、図8(c)は防振装置16Cの側面模式図である。
【図9】第一ダンパの別形態を示す、防振装置の側面模式図であって、図9(a)は第一ダンパ27Aを設けた、防振装置の側面模式図、図9(b)は第一ダンパ27Bを設けた、防振装置の側面模式図である。
【図10】第二ダンパの別形態を示す、防振装置後部の側面模式図であって、図10(a)は第二ダンパ28Aを設けた、防振装置後部の側面模式図、図10(b)は第二ダンパ28Bを設けた、防振装置後部の側面模式図、図10(c)は第二ダンパ28Cを設けた、防振装置後部の側面模式図である。
【図11】キャビンの初期位置調整が可能な防振装置16Dの側面模式図であって、図11(a)はキャビンを下降させる場合の防振装置16Dの側面模式図、図11(b)は通常時の防振装置16Dの側面模式図、図11(c)はキャビンを上昇させる場合の防振装置16Dの側面模式図である。
【図12】キャビンの初期位置調整が自動で可能な防振装置16Eの側面模式図である。
【図13】同じく油圧回路図である。
【図14】ゴム部材によるスライド機構であって、図14(a)はスライド機構93の側面模式図、図14(b)はスライド機構94の側面模式図、図14(c)はスライド機構95の側面模式図である。
【図15】従来の操作系リンクの構成を示す図であって、図15(a)はキャビンが機体直上にある場合の操作系リンクの側面模式図、図15(b)はキャビンが前方に相対移動した場合の操作系リンクの側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向をトラクタ1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0014】
まず、本発明に係わるトラクタ1の全体構成について、図1、図2により説明する。
なお、本発明に係わる作業車両は、本実施例のトラクタ1に限らず、コンバインや運搬車等の農業用車両、あるいはバックホーやローダ等の建設機械のような、作業者がキャビンに搭乗して運転操作する作業車両に、広く適用することができる。
【0015】
前記トラクタ1においては、機体14の機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、該機体フレーム2上にエンジン3が搭載される。そして、該エンジン3の後部には、クラッチハウジング4とミッションケース5が前から順に連設され、該クラッチハウジング4とミッションケース5が、シャーシ6として、機体14の左右略中央で前後方向において一体的に構成される。
【0016】
前記機体フレーム2の前部には、フロントアクスルケース7を介して左右一対の前輪9・9が支承されると共に、前記トランスミッションケース5には、リアアクスルケース8を介して左右一対の後輪10・10が支承されている。これにより、前記エンジン3からの動力が、クラッチハウジング4とミッションケース5により断接可能に変速された後、変速動力として前輪9・9と後輪10・10に伝達され、トラクタ1が走行できるようにしている。
【0017】
前記エンジン3からの動力は、変速後に、ミッションケース5の後部に作業機装着装置11を介して装着された図示せぬ耕耘装置等の作業機にも伝達され、該作業機を駆動できるようにしている。
【0018】
また、前記エンジン3は、ボンネット12で覆われ、該ボンネット12の後方に、キャビン13が設けられている。該キャビン13の内部には、操向ハンドル17が配設され、該操向ハンドル17の後方には運転席18が配設される。そして、前記操向ハンドル17の下方位置には、ブレーキペダル19や図示せぬアクセルペダルが配置され、前記運転席18の側部には、主変速レバー・副変速レバー・PTO操作レバー等の操作レバー群20が設けられている。
【0019】
更に、前記キャビン13は、構造体を構成するフレーム群と被覆部材群とから構成される。前記フレーム群のうち、左右枠部を構成する左右一対のサイドフレームユニット21L・21Rは、いずれも、フロントピラー22、フェンダ23、下部フレーム24等から構成され、このうちの左右の下部フレーム24・24と前記シャーシ6との間に、本発明に係わる左右一対の防振装置16・16が介装されている。
【0020】
次に、該防振装置16・16の構成について、図2乃至図5により説明する。なお、該防振装置16・16は左右で略同じ構造であるため、左右一方の防振装置16、ここでは左側の防振装置16についてのみ説明する。
【0021】
図2、図3に示すように、防振装置16は、前後に設けた一対のV字リンク25・26と、該V字リンク25・26間に介装する第一ダンパ27と、後側のV字リンク26とシャーシ6との間に介装する第二ダンパ28とにより構成される。
【0022】
このうち前側のV字リンク25は、側面視で直角または鋭角の屈曲部25cと、該屈曲部25cよりも前側の長辺部25aと、該長辺部25aより短くて前記屈曲部25cよりも後側の短辺部25bとを有する。そして、前記長辺部25aは、外支点25dを介して、前記下部フレーム24の前部に前後回動自在に連結される。一方、前記屈曲部25cは、屈曲部支点25fを介して、前記シャーシ6の前部に前後回動自在に連結されている。
【0023】
前記後側のV字リンク26は、側面視で直角または鋭角の屈曲部26cと、該屈曲部26cよりも前側の短辺部26bと、該短辺部26bより長くて前記屈曲部26cよりも後側の長辺部26aとを有する。そして、該長辺部26aの後端は、外支点26dを介して、長孔24bに前後移動可能に連結されると共に、該長孔24bは、前記下部フレーム24の後部に長手方向を前後方向として開口されている。一方、前記屈曲部26cは、屈曲部支点26fを介して、前記シャーシ6の後部に前後回動自在に連結されている。
【0024】
前記第一ダンパ27は、前後一対のシリンダ27a・27b、該シリンダ27a・27b内にそれぞれ摺動可能に挿嵌されるピストン27c・27d、該ピストン27c・27d間を連結するピストンロッド27e、及び該ピストンロッド27eに外嵌された上でシリンダ27a・27b間に前後端が固設されるダンパスプリング27fとから構成されており、該ダンパスプリング27fによって、前記シリンダ27a・27b間が弾性的に連結されている。
【0025】
そして、前側のシリンダ27aの前端は、前側のV字リンク25の短辺部25b後端に、内支点25eを介して連結されると共に、シリンダ27aよりも短尺な後側のシリンダ27bの後端は、後側のV字リンク26の短辺部26b前端に、内支点26eを介して連結されている。
【0026】
これにより、矢印29・30のように、前後のV字リンク25・26が、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして前後に回動し、シリンダ27a・27b間の間隔が急激に伸縮しても、その衝撃力は前記ダンパスプリング27fによって減衰される。
【0027】
前記第二ダンパ28は、一個のシリンダ28a、該シリンダ28a内に摺動可能に挿嵌されるピストン28b、該ピストン28bに一端が固設されると共に他端が前記シリンダ28aの外部まで延設されるピストンロッド28c、及び該ピストンロッド28cに外嵌された上で一端がシリンダ28aの上端に固設されるダンパスプリング28dから構成される。更に、前記ピストンロッド28cの先端は、後側のV字リンク26の長辺部26a途中部に、連結支点28fを介して連結され、該連結支点28fには、前記ダンパスプリング28dの他端が固設されており、該ダンパスプリング28dによって、前記V字リンク26とシリンダ28a間が弾性的に連結されている。
【0028】
そして、前記シリンダ28aの下端は、前記シャーシ6の後部で屈曲部支点26fよりも後方の位置に、取付支点28eを介して、前後回動自在に連結されている。
【0029】
これにより、矢印30のように、後側のV字リンク26が屈曲部支点26fを中心にして前後に回動し、ピストンロッド28cが急激に伸縮しても、その衝撃力はダンパスプリング28dによって減衰される。つまり、後側のV字リンク26については、二つのダンパ27・28が防振要素として機能している。
【0030】
以上のような構成により、シャーシ6と下部フレーム24との間には、前側のV字リンク25、後側のV字リンク26、下部フレーム24上で長辺部25aの前端と長辺部26aの後端間、つまり外支点25d・26d間を結ぶリンク34、及びシャーシ6上で前後の屈曲部25c・26cの端部間、つまり屈曲部支点25f・26f間を結ぶリンク33から成る四節リンク機構35が形成される。
【0031】
該四節リンク機構35では、前述の如く、前記下部フレーム24の後部に、長手方向を前後方向とした長孔24bが開口され、該長孔24bに沿って後側のV字リンク26の外支点26dが前後移動可能に連結されており、このスライド機構36によって、前記リンク34のリンク長を可変としている。これにより、四節リンク機構35の変形範囲を拡大し、該四節リンク機構35にシャーシ6の動きができるだけ吸収されるようにして、この動きが下部フレーム24へ伝播するのを抑制し、機体14に対するキャビン13の追従性を抑えることができる。
【0032】
更に、該四節リンク機構35に接続される前記第一ダンパ27は、間隔の大きい前後のV字リンク25・26間に設けるようにしている。従って、第一ダンパ27のために、十分な大きさの配置空間を確保することができ、本実施例のバネダンパ以外に、バネ−油圧ダンパ、ER流体(磁気粘性流体)の流動抵抗による減衰力を利用するMRダンパ、ER流体(電気粘性流体)の流動抵抗による減衰力を利用するERダンパ、後述するアキュムレータ91といった種々の防振要素を適用することができる。前記第二ダンパ28についても、四節リンク機構35の外部にあるシャーシ6に取り付けるため、同様に、前述したような種々の防振要素の適用が可能である。
【0033】
加えて、前記四節リンク機構35は、前後方向と上下方向にのみ変形する前記リンク25・26・33・34から構成されており、左右方向には変形しにくい。従って、弾性部材そのものを分散配置させる従来の構成とは異なり、キャビン13の振動への影響が小さいローリングに対し、その振動幅を増加させることがない。
【0034】
また、ピッチング、バウンスにおける、防振装置16の各構成部材の動作について説明する。
ピッチングの際の一例を図4に示す。
図4(a)と図4(b)に示すように、機体14が略水平状態から前傾し、シャーシ6が矢印37の方向に回転すると、後側のV字リンク26における屈曲部支点26f・外支点26d間の高低差(以下、「後部高低差」とする。)は、Hrのままで変わらずに、前側のV字リンク25における屈曲部支点25f・外支点25d間の高低差(以下、「前部高低差」とする。)は、HfからHf1まで増加しようとする。
【0035】
この際、前側のV字リンク25は、外支点25dを中心にして矢印39の方向に回転すると共に、該V字リンク25に前記第一ダンパ27を介して連結されるV字リンク26も、その外支点26dが長孔24bに沿って前後に移動する。それに伴い、該V字リンク26に連結される前記第二ダンパ28も伸縮される。
【0036】
図4(a)、図4(c)に示すように、逆に、機体14が略水平状体から後傾し、シャーシ6が矢印38の方向に回転すると、前部高低差はHfのままで変わらずに、後部高低差Hrは、HrからHr1まで増加しようとする。
【0037】
この際、後側のV字リンク26は、外支点26dを中心にして矢印40の方向に回転しつつ、該外支点26dは、前記長孔24bに沿って前方に移動しようとし、該V字リンク26に前記第一ダンパ27を介して連結されるV字リンク25も、その外支点25dを中心に回転しようとする。それに伴い、V字リンク26に連結される前記第二ダンパ28も伸縮される。
【0038】
このように、ピッチングの際には、四節リンク機構35に付設したダンパ27・28にも常に応力が作用するようにしており、該ダンパ27・28に設けたダンパスプリング27f・28dによって、四節リンク機構35にかかる衝撃力を減衰し、防振装置16の防振効果を高めることができる。
【0039】
バウンスの際の一例を図5に示す。
図5(a)と図5(b)に示すように、機体14が初期高さから上昇し、シャーシ6も上昇すると、前部高低差はHf・後部高低差もHrのいずれも、略同じ高さだけ減少し、それぞれHf2、Hr2となる。
【0040】
この際、前側のV字リンク25は、外支点25dを中心にして矢印41の方向に回転する一方、後側のV字リンク26は、外支点26dを中心にして矢印42の方向に回転しつつ、該外支点26dは、前記長孔24bに沿って後方に移動しようとする。それに伴い、両V字リンク25・26間を連結する第一ダンパ27は、左右方向外側に伸長され、逆に、第二ダンパ28は、後部高低差Hrの減少によって圧縮される。
【0041】
図5(a)と図5(c)に示すように、機体14が初期高さから下降し、シャーシ6も下降すると、前部高低差はHf・後部高低差もHrのいずれも、略同じ高さだけ増加し、それぞれHf3、Hr3となる。
【0042】
この際、前側のV字リンク25は、外支点25dを中心にして前記矢印39の方向に回転する一方、後側のV字リンク26は、外支点26dを中心にして前記矢印40の方向に回転しつつ、該外支点26dは、前記長孔24bに沿って前方に移動しようとする。それに伴い、両V字リンク25・26間を連結する第一ダンパ27は、左右方向内側に圧縮され、逆に、第二ダンパ28は、後部高低差Hrの増加によって伸長される。
【0043】
このように、バウンスの際にも、四節リンク機構35に付設したダンパ27・28にも常に応力が作用するようにしており、該ダンパ27・28に設けたダンパスプリング27f・28dによって、四節リンク機構35にかかる衝撃力を減衰し、防振装置16の防振効果を高めることができる。
【0044】
以上のような構成と動作を示す防振装置16は、本実施例では、図2に示すように、左右両側に配置しているが、左右いずれか一側に配置してもよい。これは、単一の防振装置16によっても、四節リンク機構35とダンパ27・28との併用により、十分な防振効果が得られるからである。従って、キャビン13の左右幅が小さくてローリングの影響が小さい場合や、キャビン13が左右一側にずれて設置されている場合等には、防振装置16を単一にしたり、防振装置16の設置位置をキャビン13と同じ側に配置するようにして、防振装置16の数を最小限に抑えることもできる。
【0045】
すなわち、前記防振装置16は、作業車両であるトラクタ1の左右一側または左右両側に配置可能とするので、機体14上に設けるキャビン13の仕様や設置位置に応じて前記防振装置16の数や設置位置を変更することができ、防振装置16の数を最小限に抑えて、装置コストの低減を図ることができる。
【0046】
次に、前記防振装置16の周辺構造について、図3、図6、図7、図15により説明する。
図6に示すように、該防振装置16において、前側のV字リンク25の前方でシャーシ6上には、第一前後方向ストッパ43aが固設され、同様に、後側のV字リンク26の後方でシャーシ6上にも、第二前後方向ストッパ43bが固設されている。
【0047】
これにより、キャビン13が、前述したピッチングやバウンスの際、機体14に対して前方に相対移動しようとしても、V字リンク25の長辺部25aの前辺が前記第一前後方向ストッパ43aに当接し、それ以上の前移動が規制される。逆に、キャビン13が機体14に対して後方に相対移動しようとしても、V字リンク26の長辺部26aの後辺が前記第二前後方向ストッパ43bに当接し、それ以上の後方移動が規制される。
【0048】
すなわち、前記防振装置16は、前記機体14に対するキャビン13の相対移動を少なくとも前後方向に対して規制するストッパである前後方向ストッパ43a・43bを備えるので、他の機器との干渉の恐れが大きい前後方向へのキャビン13の移動を、前記前後方向ストッパ43a・43bによって規制することにより、機体14に対するキャビン13の過大な相対移動を確実に抑制できる。しかも、従来のように分散配置した弾性部材とは異なり、ストッパを至る所に設ける必要がなく、前後方向のみに設けてストッパの数を最小限に抑え、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0049】
なお、必要に応じて、前側のV字リンク25の途中部でシャーシ6の側面に、該V字リンク25の長辺部25aを左右から挟むようにして、上に開いた正面視コ字状の第一左右方向ストッパ44aを固設し、同様に、後側のV字リンク26の途中部でシャーシ6の側面に、該V字リンク26の長辺部26aを左右から挟むようにして、正面視コ字状の第二左右方向ストッパ44bを固設してもよい。
【0050】
これにより、仕様等のために、キャビン13が左右方向へ相対移動して他の機器と干渉する恐れがある場合でも、その干渉を確実に防止することができる。つまり、キャビン13の前部が、前述したピッチングやバウンスの際、機体14に対して左右方向に相対移動しようとしても、V字リンク25の長辺部25aが前記第一左右方向ストッパ44aの内側に当接し、それ以上の左右移動が規制される。キャビン13の後部が、機体14に対して左右方向に相対移動しようとしても、V字リンク26の長辺部26aが前記第二左右方向ストッパ44bの内側に当接し、それ以上の左右移動が規制されるのである。
【0051】
また、図3、図7に示すように、キャビン13内部に配置した前記ブレーキペダル19は、ブレーキリンク47を介してブレーキ装置48と連動連結されている。
該ブレーキリンク47は、下部フレーム24の前部とシャーシ6の前後略中央部にそれぞれ設けた前後一対の三股リンク103・104と、該三股リンク103・104間に介装する第一リンクアーム105と、前記三股リンク104とブレーキ装置48のステー107との間に介装する第二リンクアーム106とにより構成される。
【0052】
このうち前側の三股リンク103は、側面視で、上方に延出する中央分岐部103aと、前斜め上方に延設する前分岐部103bと、後斜め上方に延設する後分岐部103cとから構成され、前記中央分岐部103a上端の中央支点103dを介して、下部フレーム24の前部に前後回動自在に連結される。
【0053】
前記後側の三股リンク104は、前記三股リンク103を上下反転させたものであり、側面視で、下方に延出する中央分岐部104aと、前斜め下方に延設する前分岐部104bと、後斜め下方に延設する後分岐部104cとから構成され、前記中央分岐部104a下端の中央支点104dを介して、シャーシ6の前後略中央部に前後回動自在に連結される。
【0054】
前記ブレーキペダル19は、前支点103eを介して、前側の三股リンク103の前分岐部103bに連結される。そして、前記第一リンクアーム105は、前側の三股リンク103の後分岐部103cにおける後支点103fと、後側の三股リンク104の前分岐部104bにおける前支点104eとの間に介設されると共に、前記第二リンクアーム106は、後側の三股リンク104の後分岐部104cにおける後支点104fと、ブレーキ装置48を操作する前記ステー107との間に介設されている。
【0055】
このような構成において、前記ブレーキペダル19を踏込み操作すると、前側の三股リンク103が矢印109の方向に回転し、前記第一リンクアーム105が前方に牽引されて後側の三股リンク104が矢印110の方向に回転する。すると、前記第二リンクアーム106が前方に牽引されて、前記ステー107が支点107aを中心に矢印111の方向に傾倒し、ブレーキ装置48がブレーキ「入」となって、後輪10が制動される。
【0056】
この際、前側の三股リンク103の中央支点103dは、前記V字リンク25の外支点25dと同一軸心上に配置されると共に、後側の三股リンク104の中央支点104dも、前記V字リンク25の屈曲部支点25fと同一軸心上に配置されている。つまり、ブレーキリンク47において、キャビン13側の中央支点103dと、第一リンクアーム105等を介した機体14側の中央支点104dとを連結するリンク部分(以下、「第一リンク部分」とする)101は、前記V字リンク25において、外支点25dと、長辺部25aを介した屈曲部支点25fとを連結するリンク部分(以下、「第二リンク部分」とする)102に沿って配置されている。
【0057】
これにより、キャビン13が、前述したピッチングやバウンスの際に、機体14に対して前方に相対移動しても、前記第一リンク部分101の可動範囲は、前記第二リンク部分102によって常に制限されているため、前記後側の三股リンク104の回転が微小で前記ステー107はほとんど傾倒せず、誤ってブレーキ「入」になることがない。また、ブレーキリンク47やブレーキ装置48自体に大きな負荷がかかることもない。
【0058】
なお、図15に示すように、従来のブレーキリンク47Aでは、リンクアーム108が、キャビン13側の前記三股リンク103と機体14側の前記ステー107との間に介装されているだけであり、キャビン13が、機体14に対して前方に相対移動すると、前記ブレーキペダル19が踏込み操作されていないにもかかわらず、リンクアーム108が前方に牽引されて、前記ステー107が支点107aを中心に矢印111の方向に傾倒され、ブレーキ装置48がブレーキ「入」となり、後輪10が制動される。
【0059】
すなわち、前記キャビン13側に設けた操作具であるブレーキペダル19と機体14側に設けた被操作具であるブレーキ装置48とを連動連結する操作系リンクであるブレーキリンク47において、該ブレーキリンク47でキャビン側構造体である下部フレーム24と機体側構造体であるシャーシ6との間の第一リンク部分101を、前記V字リンク25で下部フレーム24とシャーシ6との間の第二リンク部分102に沿って配置するので、前記第一リンク部分101の動きが第二リンク部分102によって拘束され、ブレーキリンク47によるブレーキ装置48の誤動作を防止できると共に、機体14に対してキャビン13が過大に相対移動しても、ブレーキリンク47の折損やブレーキ装置48のギア抜け等の不具合が発生しない。
【0060】
次に、前記防振装置16の別形態について、図3、図8により説明する。
図8(a)に示す防振装置16Aは、前記防振装置16における長孔24bについて、その開口位置を下部フレーム24の後部から前部に移動し、長孔24aとしたものであり、該長孔24aに沿って、前側のV字リンク25の外支点25dが前後移動可能としている。このスライド機構50により、前記スライド機構36と同様に、前記リンク34のリンク長が可変となり、四節リンク機構35の変形範囲を拡大することができる。
【0061】
図8(b)に示す防振装置16Bは、前記防振装置16における長孔24bに前記長孔24aを加えたものであり、前後一対の長孔24a・24bから成るスライド機構51が形成される。該スライド機構51により、前記リンク34のリンク長の可変幅が増加し、前記防振装置16・16Aに比べて、四節リンク機構35の変形範囲を一層拡大することができる。
【0062】
図8(c)に示す防振装置16Cは、前記防振装置16Bを上下に反転したものである。つまり、V字リンク25・26の外支点25d・26dは、それぞれ、シャーシ6に開口した長孔6a・6bに、前後回動自在かつ前後移動自在に連結され、この前後一対の長孔6a・6bから成るスライド機構52により、前記リンク34のリンク長の可変幅が増加する。前記V字リンク25・26の屈曲部支点25f・26fは、下部フレーム24に対して、前後回動自在に連結されている。前記第二ダンパ28のシリンダ28aの下端は、前記下部フレーム24の後部で屈曲部支点26fよりも後方の位置に、取付支点28eを介して、前後回動自在に連結されている。
【0063】
これにより、トラクタ1の仕様のために、第二ダンパ28の設置空間をシャーシ6の前後部に確保できない場合や、長孔24a・24bの開口面積を下部フレーム24の前後部に確保できない場合であっても、この防振装置16Cによって対応することができる。
【0064】
すなわち、以上のように、機体14上に防振装置16を介してキャビン13を設けた作業車両であるトラクタ1において、前記防振装置16には、側面視で直角または鋭角の屈曲部25c・26cと、該屈曲部25c・26cを挟んだ前後二つの辺部25a・26a、25b・26bとから成るV字リンク25・26を前後に設け、該両V字リンク25・26間で前後方向内側の辺部25b・26bの内端間、つまり短辺部25b後端と短辺部26b前端の間には、第一防振要素である第一ダンパ27を介装すると共に、該両V字リンク25・26で前後方向外側の辺部25a・26aの外端、つまり長辺部25aの前端・長辺部26aの後端と、屈曲部25c・26cの各端部とのうち、一方を機体側構造体であるシャーシ6に、他方をキャビン側構造体である下部フレーム24に、前後回動自在に連結し、前記長辺部25aの前端・長辺部26aの後端のうちの少なくとも一方に、シャーシ6または下部フレーム24に対して前後移動自在なスライド機構36・50・51・52を設けたので、第一ダンパ27を間に介装した前後二個のV字リンク25・26、該両V字リンク25・26で長辺部25aの前端と長辺部26aの後端間、つまり外支点25d・26d間を結ぶリンク34、及び該両V字リンク25・26で屈曲部25c・26cの端部間、つまり屈曲部支点25f・26f間を結ぶリンク33から成る四節リンク機構35を形成することができ、リンク機構である四節リンク機構35と防振要素である第一ダンパ27との併用により、十分な防振効果が得られる。しかも、該四節リンク機構35中に前記スライド機構36・50・51・52を設けたので、前記長辺部25aの前端・長辺部26aの後端間を結ぶリンク34のリンク長を可変にして四節リンク機構35の変形範囲を拡大し、機体14に対するキャビン13の追従性を抑制して防振効果を更に高め、キャビン13の居住性を向上させることができる。特に、前記四節リンク機構35は左右方向に変形しにくいため、従来のように分散配置した弾性部材とは異なり、ローリングによる揺動幅を増加させることがなく、トラクタ1の左右方向の安定性を確保できる。更に、V字リンク25・26を前後に離間して配置した場合には、前記第一ダンパ27を、動力伝達経路や各種操作手段等が集中して配置空間が狭くなっているキャビン13前部以外の位置、例えばキャビン13の前後方向略中央部にも配置することができ、十分な配置空間の確保により、種々の第一ダンパ27の適用が可能となり、第一ダンパ27の適正化が図れる。
【0065】
更に、前記V字リンク25・26と機体側構造体であるシャーシ6との間、またはV字リンク25・26とキャビン側構造体である下部フレーム24との間に、第二防振要素である第二ダンパ28を介装するので、前記四節リンク機構35を構成するV字リンク25・26同士を防振連結する前記第一防振要素である第一ダンパ27に加え、この第二ダンパ28により、V字リンク25・26の一つを四節リンク機構35の外部にある構造体であるシャーシ6に防振連結することが可能となり、防振装置16の防振効果を更に高めることができる。
【0066】
次に、前記ダンパ27・28の別形態について、図3、図9、図10により説明する。
図9(a)に示す第一ダンパ27Aは、前記第一ダンパ27における前後一対のシリンダ27a・27bを前後反転させたものであり、シリンダ27aよりも短尺なシリンダ27bの方を前側に配置している。これにより、ピストンロッド27eに外嵌されるダンパスプリング27fの配設位置を、前記第一ダンパ27の場合よりも前方に移動させて、衝撃力の減衰位置を変更できるようにしている。
【0067】
図9(b)に示す第一ダンパ27Bは、前記第一ダンパ27Aにおける前側のシリンダ27bを更に短くしてシリンダ27b1とし、後側のシリンダ27aを更に長くしてシリンダ27a1とすることにより、ダンパスプリング27fの配設位置を、前記第一ダンパ27Aの場合よりも更に前方に移動させて、衝撃力の減衰位置を変更している。
【0068】
加えて、後側のシリンダ27a1の途中部には、屈曲可能な支点53が設けられており、第一ダンパ27Bが前後方向に急激に圧縮されても、シリンダ27a1が支点53を中心に屈曲することにより、その際の衝撃力を確実に減衰できるようにしている。
【0069】
図10に示す第二ダンパ28A・28B・28Cは、前記第二ダンパ28における取付支点28eと連結支点28fのうちの少なくとも一方の取付位置を変更したものである。このうち、図10(a)に示す第二ダンパ28Aでは、連結支点28fの取付位置を、後斜め上方に移動し、V字リンク26における長辺部26aの途中部から外支点26dに変更すると共に、取付支点28eの取付位置も、後斜め上方に移動し、第二ダンパ28Aの傾倒姿勢を変更しないようにしている。
【0070】
図10(b)に示す第二ダンパ28Bでは、前記第二ダンパ28における取付支点28eの取付位置はそのままで、連結支点28fの取付位置だけを、V字リンク26における長辺部26aの途中部から外支点26dに変更している。
【0071】
図10(c)に示す第二ダンパ28Cでは、連結支点28fの取付位置を、V字リンク26における長辺部26aの途中部から内支点26eに変更すると共に、取付支点28eの取付位置も移動して、第二ダンパ28Cを略水平に配置するようにしている。このようにして、前記第二ダンパ28のダンパスプリング28dの配設位置を自在に変え、衝撃力の減衰位置を変更できるようにしている。
【0072】
以上のような構成により、ダンパ27・28におけるダンパスプリング27f・28dの配設位置を変えて衝撃力の減衰位置を変更し、防振性能を調整することができる。
【0073】
次に、キャビン13の初期位置調整構成について、図3、図11乃至図13により説明する。
図11に示す防振装置16Dにおいて、その第一ダンパ55は、前記第一ダンパ27・27A・27Bのように、シリンダ27a・27b・27a1・27b1を用いたバネダンパとは異なり、前後一対のロッド55a・55bの間に、ダンパスプリング55cを介装しただけのものである。
【0074】
該ダンパスプリング55cの後端は、図11(b)に示すように、前記後ロッド55bの係止部55gに係止されると共に、該後ロッド55bの後端は、前記後側のV字リンク26に内支点26eを介して連結される。一方、ダンパスプリング55cの前端は、前記前ロッド55aの後部に前から順に連設された3個の係止部55d・55e・55fのうち、最も後の係止部55fから中央の係止部55eにかけて係止されると共に、該前ロッド55aの前端は、前記前側のV字リンク25に内支点25eを介して連結される。
【0075】
そして、前記ダンパスプリング55cの前端を前方に伸長させ、図11(c)に示すように、最も後の係止部55fから最も前の係止部55dにかけて係止させると、ダンパスプリング55cの弾性力によって両ロッド55a・55b間が引き寄せられ、その間隔が減少しようとする。すると、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして内側に回動し、長辺部25a・26aが立ち上がってキャビン13が上昇する。
【0076】
逆に、前記ダンパスプリング55cの前端を後方に縮めて、図11(a)に示すように、最も後の係止部55fのみに係止させると、ダンパスプリング55cの弾性力によって両ロッド55a・55b間が押し広げられ、その間隔が増加しようとする。すると、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして外側に回動し、長辺部25a・26aが横に倒れてキャビン13が下降する。
【0077】
つまり、ダンパスプリング55cの係止位置を変更することにより、該ダンパスプリング55cによる弾性力を変えて、機体14に対するキャビン13の位置、本実施例では高さを自在に変更することができる。
【0078】
従って、乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さが重くて、キャビン13が大きく沈み込む場合は、前記図11(c)に示すようにしてキャビン13を上昇させ、逆に軽くて上がり過ぎている場合は、前記図11(a)に示すようにしてキャビン13を下降させることにより、走行直前のキャビン13の初期位置を、防振に適した適正位置に前もって調整しておくことができる。
【0079】
なお、本実施例では、ダンパスプリング55cの係止位置は、段階的に変更しているが、ボルト等に接続して無段階で変更できるようにしてもよい。更に、このような弾性力の調整機構は、前記第二ダンパ28・28A・28B・28Cのバネダンパに代えて用いることができる。
【0080】
すなわち、前記防振要素である第一ダンパ55は、該第一ダンパ55を構成する弾性部材であるダンパスプリング55cによる弾性力を変更可能とするので、キャビン13に乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さにかかわらず、機体14に対するキャビン13の初期位置を、防振に適した適正位置に予め調整することができ、十分な防振効果が得られる。
【0081】
また、図12に示す防振装置16Eにおいて、その第一ダンパ56は、前記第一ダンパ27・27A・27B・55のようなバネダンパとは異なり、シリンダ内に充填される作動油の粘性抵抗を利用するオイルダンパである。そして、該第一ダンパ56は、防振機能を発揮するダンパ部56aと、該ダンパ部56aよりも後方に連設される油圧アクチュエータ部56bとから構成される。
【0082】
このうちのダンパ部56aは、作動油が封入されているダンパシリンダ57と、該ダンパシリンダ57内のシリンダ室60を摺動するダンパピストン58と、該ダンパピストン58に前端が固設されると共に後端が前記ダンパシリンダ57の外部まで延設されるピストンロッド59とから構成される。
【0083】
そして、前記油圧アクチュエータ部56bは、前記ダンパシリンダ57と同一軸心上に配置する調整シリンダ61と、該調整シリンダ61内を前シリンダ室63と後シリンダ室64に分ける調整ピストン62とから構成され、該調整ピストン62は、前記ピストンロッド59の後端部に固設されている。
【0084】
更に、前記ダンパ部56aのダンパシリンダ57の前端は、前記前側のV字リンク25に内支点25eを介して連結されると共に、前記油圧アクチュエータ部56bの調整シリンダ61の後端は、前記後側のV字リンク26に内支点26eを介して連結されている。
【0085】
これにより、前記調整ピストン62を前後摺動させると、ピストンロッド59のうちでダンパシリンダ57と調整シリンダ61に挟まれた外部長さ70が変化して、ダンパ部56aの初期長さ68が変更される。すると、第一ダンパ56の全長も変化して、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして内側または外側に回動し、キャビン13を上昇または下降させることができる。
【0086】
前記V字リンク26の長辺部26aには、基準ピン66が固設され、該基準ピン66の下面には、上方に付勢するようにしてセンサアーム65aの先部が当接される一方、該センサアーム65aの基部は、前記シャーシ6に設けた位置センサ65に取り付けられている。
【0087】
これにより、前記キャビン13が沈み込むと、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして外側に回動し、それに伴い前記基準ピン66が下降してセンサアーム65aを押し下げ、その押し下げ量から、機体14に対するキャビン13の沈み込み量が位置センサ65によって検知される。
【0088】
逆に、前記キャビン13が上昇すると、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして内側に回動し、それに伴い前記基準ピン66が上昇してセンサアーム65aも上昇し、その上昇量から、機体14に対するキャビン13の上昇量が位置センサ65によって検知される。
【0089】
ここで、前記油圧アクチュエータ部56bの動作を制御する油圧回路67について、図13により説明する。
該油圧回路67において、油圧アクチュエータ部56bの前後のシリンダ室63・64は、それぞれ油路71・72を介して、2ポート3位置式の電磁切替弁73に接続される。そして、前記油路72の途中部には、絞り92付きで気体式のアキュミュレータ91が連通されている。
【0090】
前記電磁切替弁73には、スプール73aが電磁ソレノイド74・74により往復摺動可能に備えられ、該電磁ソレノイド74・74は、配線75・75を介してコントローラ76に接続され、該コントローラ76は、配線69を介して前記位置センサ65に接続されている。
【0091】
更に、電磁切替弁73には、作動油を供給するポンプポート77とドレンポート78が形成され、このうちのポンプポート77は、油路79を介して油圧ポンプ80の吐出側に連通されると共に、ドレンポート78は、油路81を介して油溜まり82に連通されている。
【0092】
そして、前記油路79には、油路98を介して可変式のリリーフ弁83に連通されており、電磁切替弁73に供給する作動油の油圧を所定値に設定できるようにしている。更に、該リリーフ弁83は、油路84を介して油溜まり85に連通されると共に、そのリリーフ圧調整部86は、配線87を介して前記コントローラ76に接続されている。
【0093】
以上のような構成において、機体14に対するキャビン13の沈み込みや上昇が位置センサ65によって検知されると、その検知信号がコントローラ76に送信され、その沈み込み量や上昇量に応じて、該コントローラ76から前記電磁ソレノイド74・74に弁切替信号が送信される。
【0094】
つまり、前記キャビン13が沈み込むと、電磁切替弁73は位置88に設定され、油圧ポンプ80の吐出側が前シリンダ室63に連通されて、該前シリンダ室63に作動油が流入する一方、前記油溜まり82が後シリンダ室64連通されて、該後シリンダ室64から作動油が排出される。これにより、図12に示すように、前記シリンダ室63・64内の作動油に差圧が生じて調整ピストン62が後方に摺動し、前記外部長さ70が短くなり、ダンパ部56aの初期長さ68も短くなる。すると、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして内側に回動し、キャビン13が上昇する。
【0095】
逆に、キャビン13が上昇すると、電磁切替弁73は位置90に設定され、油圧ポンプ80の吐出側が後シリンダ室64に連通されて、該後シリンダ室64に作動油が流入する一方、前記油溜まり82が前シリンダ室63連通されて、該前シリンダ室63から作動油が排出される。これにより、図12に示すように、前記シリンダ63・64内の作動油に差圧が生じて調整ピストン62が前方に摺動し、外部長さ70が長くなり、ダンパ部56aの初期長さ68も長くなる。すると、前後のV字リンク25・26は、それぞれ屈曲部支点25f・26fを中心にして外側に回動し、キャビン13が下降する。
【0096】
更に、キャビン13の沈み込みや上昇が検知されないと、電磁切替弁73は位置89に設定され、前記シリンダ室63・64への連通が遮断され、調整ピストン62の前後摺動が停止して前記初期長さ68は通常の長さに保持され、キャビン13の位置はそのままに保たれる。
【0097】
従って、キャビン13に乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さが大きく変化して、キャビン13が沈み込み過ぎたり、上昇し過ぎたりする場合には、自動的に、調整ピストン62を前後摺動してダンパ部56aの初期長さ68を変更することにより、キャビン13を昇降させ、走行直前のキャビン13の初期位置を防振に適した適正位置に前もって調整しておくことができる。
【0098】
なお、このような防振装置16Eにおいては、該防振装置16Eが受ける衝撃力の一部は、調整ピストン62を介して前記シリンダ室64内の作動油にも伝播するが、該シリンダ室64には、前述の如く、油路72を介してアキュミュレータ91が連通されており、該アキュミュレータ91に衝撃力の一部が吸収されるようにしている。もちろん、該アキュミュレータ91は、前記ダンパ部56a内のシリンダ室60に連通してもよく、防振要素として設けたダンパ部56aやアクチュエータ部56bのような油圧機器の油圧回路中に接続して圧油に伝播された衝撃力を吸収できるのであれば、アキュミュレータ91の接続位置は特には限定されない。
【0099】
すなわち、前記防振要素である第一ダンパ56は、流体を封入したシリンダであるダンパシリンダ57内を摺動するピストンであるダンパピストン58の流動抵抗により減衰力を発生させるダンパ部56aと、前記ダンパピストン58に連結されてダンパ部56aの長さを制御する油圧アクチュエータ部56bとから構成すると共に、前記防振装置16Eには、前記油圧アクチュエータ部56bの動作を制御するコントローラ76と、前記キャビン13の沈み込み量を検知して前記コントローラ76に制御信号を送信する位置センサ65とを設けることにより、前記沈み込み量に応じて油圧アクチュエータ部56bを動作させてダンパ部56aの初期長さ68を調整可能とするので、キャビン13に乗り込む作業者の体重や持ち込む荷物の重さにかかわらず、機体14に対するキャビン13の初期位置を、防振に適した適正位置に予め調整することができ、十分な防振効果が得られる。しかも、この初期位置調整作業は自動的に行われるため、キャビン13の沈み込み量が変化する度に手動でやり直す必要がなく、作業者の作業負荷の軽減が図れる。加えて、昇降時にはキャビン13を機体に近接させるように、前記油圧アクチュエータ部56bの動作を自動制御することにより、作業者の昇降を容易にすることもできる。
【0100】
更に、前記防振要素である第一ダンパ56は液圧回路である油圧回路67を備え、該油圧回路67中には圧液である圧油にかかる衝撃を吸収するアキュムレータ91を接続するので、防振要素を構成する第一ダンパ56にかかる衝撃力を吸収することができ、防振装置16Eの防振効果を更に高めることができる。
【0101】
次に、前記スライド機構36・50・51・52の代替構造について、図14により説明する。
図14に示すスライド機構93・94・95は、前後方向の剛性よりも上下方向の剛性が大きいゴム部材93a・94a・95aから成り、いずれも、前記下部フレーム24の後部に開口された丸孔24c内に、筒状のスペーサ96を介して嵌入されている。なお、前記ゴム部材93a・94a・95aは、安価で後述の如く構造が単純な上、固体伝播音に対する絶縁性に優れると共に、スライド部がないため、土・埃等の巻き込みの恐れがない。
【0102】
図14(a)に示すスライド機構93のゴム部材93aには、側面視で、略中央にはV字リンク26の外支点26dを嵌入するための支点孔93bが形成され、該支点孔93bを挟み前後には、上下に長い楕円状の弾性変形空間93c・93dが形成されている。
【0103】
このような構成において、V字リンク26が前後回動すると、支点孔93bに嵌入されている外支点26dは、前記弾性変形空間93c・93dの方向、本実施例では、略水平前方または略水平後方に向かって移動しようとするが、その際の剛性は小さい。これは、移動に伴って弾性変形するゴム部材93aが、前記弾性変形空間93c・93d内に流入するため、該弾性変形空間93c・93dの方向への変形抵抗が軽減されるからである。
【0104】
一方、支点孔93bを基準とした上下方向と左右方向には、ゴム部材93aが充填状態で存在しているため、両方向に向かって移動する際の剛性は大きく、外支点26dの移動は制限される。これにより、該外支点26dが前後方向のみに優先して移動可能な前記スライド機構93が形成される。
【0105】
図14(b)に示すスライド機構94のゴム部材94aには、前記ゴム部材93aと同様、側面視で、略中央にはV字リンク26の外支点26dを嵌入するための支点孔94bが形成され、該支点孔94bを挟み前後には、上下に長細い楕円状の弾性変形空間94c・94dが形成されている。更に、該弾性変形空間94c・94dの上下略中央では、それぞれ、支持部94e・94fが前後方向に橋架され、該支持部94e・94fには、変形しにくいリング帯97・97が外嵌されている。
【0106】
このような構成において、V字リンク26が前後回動すると、支点孔94bに嵌入されている外支点26dは、弾性変形空間94c・94dの方向に向かって移動しようとするが、その際の剛性は小さい。
【0107】
一方、支点孔94bを基準とした上下方向と左右方向には、ゴム部材94aが充填状態で存在しているため、両方向に向かって移動する際の剛性は大きく、外支点26dの移動が制限される。更に、前記リング帯97・97によって上下方向への変形が更に抑制されるため、上下方向に移動する際の剛性は一層大きくなる。これにより、該外支点26dが前後方向のみに優先して移動可能な前記スライド機構94が形成される。
【0108】
図14(c)に示すスライド機構95のゴム部材95aには、側面視で、略中央にはV字リンク26の外支点26dを嵌入するための支点孔95bが形成され、該支点孔94bを挟み上下には、略円状の上ゴム95a1・下ゴム95a2が配置されると共に、該上ゴム95a1・下ゴム95a2を挟み前後には、弾性変形空間95c・95dが形成されている。
【0109】
このような構成において、V字リンク26が前後回動すると、支点孔95bに嵌入されている外支点26dは、弾性変形空間95c・95dの方向に向かって移動しようとするが、その際の剛性は小さい。
【0110】
一方、支点孔95bを基準とした上下方向と左右方向には、上ゴム95a1・下ゴム95a2から成るゴム部材93aが充填状態で存在しているため、両方向に向かって移動する際の剛性は大きく、外支点26dの移動は制限される。これにより、該外支点26dが前後方向のみに優先して移動可能な前記スライド機構95が形成される。
【0111】
なお、以上説明したゴム部材93a・94a・95aは、V字リンク26の外支点26dを、下部フレーム24との間でなくシャーシ6との間に介装させて、スライダ機能を発揮するようにしてもよい。
【0112】
すなわち、前記スライド機構93・94・95は、前記V字リンク26の外端と機体側構造体であるシャーシ6との間、またはV字リンク26の外端とキャビン側構造体である下部フレーム24との間に、前後方向の剛性よりも上下方向の剛性が大きいゴム部材93a・94a・95aを介装して成るので、スライド機構93・94・95に、安価で構造が単純な前記ゴム部材93a・94a・95aを適用することができ、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。更に、該ゴム部材93a・94a・95aでは、通常のスライド部のように土・埃等が巻き込まれることがなく、該土・埃等による防振効果の低下を回避できる。加えて、該ゴム部材93a・94a・95aでは、固体伝播音の絶縁が可能なため、固体間衝突によって生じる騒音も低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、機体上に防振装置を介してキャビンを設けた全ての作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 作業車両
6 シャーシ(機体側構造体)
13 キャビン
14 機体
16・16A・16B・16C・16D・16E 防振装置
19 ブレーキペダル(キャビン側に設けた操作具)
24 下部フレーム(キャビン側構造体)
25・26 V字リンク
25a・26a、25b・26b 辺部
25c・26c 屈曲部
25e・26e 内支点(内側の辺部の内端)
25d・26d 外支点(外側の辺部の外端)
25f・26f 屈曲部支点(屈曲部の端部)
27・27A・27B・55・56 第一ダンパ(第一防振要素)
28・28A・28B・28C 第二ダンパ(第二防振要素)
36・50・51・52・93・94・95 スライド機構
43a・43b 前後方向ストッパ(ストッパ)
47 ブレーキリンク(操作系リンク)
48 ブレーキ装置(機体側に設けた被操作具)
55c ダンパスプリング(弾性部材)
56a ダンパ部
56b 油圧アクチュエータ部
57 ダンパシリンダ(流体を封入したシリンダ)
58 ダンパピストン(シリンダ内を摺動するピストン)
65 位置センサ
67 油圧回路(液圧回路)
68 初期長さ
76 コントローラ
91 アキュムレータ
93a・94a・95a ゴム部材
101 第一リンク部分
102 第二リンク部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体上に防振装置を介してキャビンを設けた作業車両において、前記防振装置には、側面視で直角または鋭角の屈曲部と該屈曲部を挟んだ前後二つの辺部とから成るV字リンクを前後に設け、該両V字リンク間で前後方向内側の辺部の内端間には、第一防振要素を介装すると共に、該両V字リンクで前後方向外側の辺部の外端と屈曲部の端部とのうち、一方を機体側構造体に、他方をキャビン側構造体に、前後回動自在に連結し、前記外端のうちの少なくとも一方に、前記機体側構造体またはキャビン側構造体に対して前後移動自在なスライド機構を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記V字リンクと機体側構造体との間、またはV字リンクとキャビン側構造体との間に、第二防振要素を介装することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記防振装置は、作業車両の左右一側または左右両側に配置可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記防振装置は、前記機体に対するキャビンの相対移動を少なくとも前後方向に対して規制するストッパを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記キャビン側に設けた操作具と機体側に設けた被操作具とを連動連結する操作系リンクにおいて、該操作系リンクでキャビン側構造体と機体側構造体との間の第一リンク部分を、前記V字リンクでキャビン側構造体と機体側構造体との間の第二リンク部分に沿って配置することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記防振要素は、流体を封入したシリンダ内を摺動するピストンの流動抵抗により減衰力を発生させるダンパ部と、前記ピストンに連結されてダンパ部の長さを制御する油圧アクチュエータ部とから構成すると共に、前記防振装置には、前記油圧アクチュエータ部の動作を制御するコントローラと、前記キャビンの沈み込み量を検知して前記コントローラに制御信号を送信する位置センサとを設けることにより、前記沈み込み量に応じて油圧アクチュエータ部を動作させてダンパ部の初期長さを調整可能とすることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記防振要素は液圧回路を備え、該液圧回路中には圧液にかかる衝撃を吸収するアキュムレータを接続することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項8】
前記防振要素は、該防振要素を構成する弾性部材による弾性力を変更可能とすることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項9】
前記スライド機構は、前記V字リンクの外端と機体側構造体との間、またはV字リンクの外端とキャビン側構造体との間に、前後方向の剛性よりも上下方向の剛性が大きいゴム部材を介装して成ることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−56547(P2012−56547A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204949(P2010−204949)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】