説明

作業車両

【課題】燃料タンク内の燃料残量も考慮したエンジン出力制御を行うことができる作業車両を提供すること。
【解決手段】エンジン回転数に対して所定のパワーを確保するために予め設定された標準モードのエンジン出力トルクカーブに従ってエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置を備えた作業車両において、燃料タンク3内の燃料残量が所定量になると、前記標準モードのエンジン出力トルクカーブから予め設定された標準モードから、エンジン回転数に対して標準モードより燃料消費量を抑えた、予め設定された燃料消費量低減モードのエンジン出力カーブに切換えるエンジン出力制御装置を備えた作業車両である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料残量に応じて燃料消費量を抑えたエンジンン制御を行う作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両のエンジン制御技術には高いトルクで燃費効率が最良となるように単位時間当たりのエンジン回転数とエンジントルクにおける正味の燃料消費量との関係を示す燃料マップに基づき行う方法がある。またエンジンを低燃費モード仕様に切り替えて燃費向上を図るエンジン制御方法も用いられている。
【0003】
下記特許文献1記載の発明は、所定のパワーを確保する標準モードのエンジン出力トルクカーブと、標準モードより燃料消費量を抑える燃料消費量低減モードのエンジン出力カーブに切り替えるエンジン制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−231848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載の発明では、燃料タンク内の燃料残量をエンジン出力又は燃費改善のために考慮してエンジン出力制御を行うものではない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、燃料タンク内の燃料残量も考慮したエンジン出力制御を行うことができる作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン回転数に対して所定のパワーを確保するために予め設定された標準モードのエンジン出力トルクカーブと、標準モードのエンジン出力トルクカーブよりも燃料供給量を抑えた低燃費のエンジン出力カーブを備え、選択されたエンジン出力カーブに従ってエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置を備えた作業車両において、燃料タンク(3)内の燃料残量が所定量になると、燃料が少ない警告を発して前記低燃費のエンジン出力カーブを自動的に選択してエンジン出力制御を行うように構成したエンジン出力制御装置を備えた作業車両である。
【0008】
請求項2記載の発明は、燃料タンク(3)内の燃料残量を電気抵抗値を基準にして測定する燃料センサ(158)を設け、該燃料センサ(158)により燃料タンク3内の燃料残量が所定量になることが検知されると、標準モードより燃料消費量を抑える前記低燃費のエンジン出力カーブに自動的に切換可能な構成とした請求項1記載のエンジン出力制御装置を備えた作業車両である。
【0009】
請求項3記載の発明は、エンジン回転数に対して所定のパワーを確保するために予め設定された標準モードのエンジン出力トルクカーブと、標準モードのエンジン出力トルクカーブよりも燃料供給量を抑えた低燃費のエンジン出力カーブを備え、選択されたエンジン出力カーブに従ってエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置を備えた作業車両において、燃料タンク(3)内の燃料残量が所定量になると、燃料が少ない旨の警告を発して前記低燃費のエンジン出力カーブの選択を促す手段(23x)を備えたエンジン出力制御装置を備えた作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、燃料タンク3内の燃料残量が所定量になると、警告を発して標準的な燃焼使用量より燃料の使用量を抑えた状態でエンジンを自動的に作動させるエンジン出力制御装置を備えているので、優先的に燃料の使用量を抑えた状態でエンジンの出力制御ができるので燃費が従来技術より向上する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、燃料タンク3内の燃料残量が所定量になると、標準モードより燃料消費量を抑える燃料消費量低減モードでエンジンの出力制御を行うので、燃費節約効果がある。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、オペレータは燃料タンク3内の燃料残量が少なくなると、燃料が少ない旨の警告を発して前記低燃費のエンジン出力カーブの選択を促す手段(23x)を利用して任意に手動で標準モードから燃料消費量低減モードにエンジン出力の切り替えが行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両の蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。
【図2】本発明の作業車両のディーゼルエンジンECUの回転数と出力トルクの関係における三種類の制御モードを有する構成の説明図である。
【図3】本発明の作業車両のエンジンの出力特性を表わす回転数と出力の関係図である。
【図4】本発明の作業車両の側面図である。
【図5】本発明の作業車両の変速装置のギヤ機構図である。
【図6】本発明の作業車両の制御ブロック図である。
【図7】本発明の作業車両のメータパネルの拡大図である。
【図8】図7のメータパネル内の液晶のデータ表示部の拡大図である。
【図9】本発明の作業車両のステアリングハンドルの右側周辺の拡大斜視図である。
【図10】本発明の作業車両の操縦席付近の拡大斜視図(図10(a))とそのステアリングコラムのレバーガイドの平面図(図10(b))である。
【図11】図10のレバーガイドの拡大図である。
【図12】図10のステアリングコラムの変形例の説明図である。
【図13】本発明の作業車両の操縦席付近の冷却機構の側面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、燃料を適宜に制御する噴射圧力に蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられるレール圧センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する燃料高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダ5内に噴射する高圧インジェクタ6と、前記燃料高圧ポンプ4と高圧インジェクタ6やその他の制御などの動作を制御する制御装置(エンジンECU12)等から構成される。
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダ5へ噴射する燃料を、要求された出力に必要な圧力とするものである。
【0015】
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される燃料高圧ポンプ4に吸入され、この燃料高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0016】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の高圧インジェクタ6に供給され、エンジン制御装置(ECU)12からの指令に基づき、高圧インジェクタ6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シリンダ5室内に噴射供給され、各高圧インジェクタ6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10aへ導かれ、このリターン通路10aによって燃料タンク3へ戻される。
【0017】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため、燃料高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はエンジンECU12からの信号によって、燃料高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10aの流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料供給量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0018】
具体的には、エンジンEの運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0019】
トラクタなどの農作業機におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのエンジンECU12は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係においてエンジン回転数変動制御モードAとエンジン回転数維持制御モードB及び重負荷モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0020】
エンジン回転数変動制御モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するものである。基本的に移動走行する場合に使用するものであるが、急激なエンジンストールを防止するために作業中でも使用する。例えば、移動走行の場合は、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため、走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。また、作業中においては、作業負荷が作用すると、負荷に応じてエンジン回転数が低下していくものである。
【0021】
エンジン回転数維持制御モードBは、負荷が増大してもエンジン回転数を一定に維持する制御である。基本的には作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクタであれば耕うん作業時に圃場が固く、耕うん刃に抵抗が掛かるときなどであり、コンバインであれば収穫作業時に負荷が増大したときでも、回転数を維持するときなどである。
【0022】
重負荷モードCは、エンジン回転数維持制御モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数を一定に維持する制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクタで耕うん作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0023】
図3は、エンジンEの出力特性を表わす回転数と出力の関係図である。
低燃費のエンジン出力カーブSと標準のエンジン出力カーブNは、エンジン回転数(rpm)と出力(kw)との関係を示している。
低燃費のエンジン出力カーブSは、標準のエンジン出力カーブNの燃料消費率よりも燃料供給量を低下させた制御で、この低燃費のエンジン出力カーブSは、全回転域で出力が標準のエンジン出力カーブNよりも出力が1割程度低下する。
【0024】
符号STは、低燃費のエンジン出力カーブSのときのエンジン回転数(rpm)とトルク(N・m)との関係を示しており、符号NTは、標準のエンジン出力カーブNのときのエンジン回転数(rpm)とトルク(N・m)との関係を示している。
【0025】
低燃費のエンジン出力カーブSと標準のエンジン出力カーブNを切り換えてエンジンEを使用するには、モード選択手段(以下、エンジンパワー選択スイッチという)134を操作して設定する。エンジンパワー選択スイッチ134は、図6と図9に示している。
【0026】
トラクタが走行するときにはエンジン回転数変動制御モードAに自動的に切換える。そして、前記エンジンパワー選択スイッチ134で標準のエンジン出力カーブNを選択し、トラクタに装着した作業機を駆動するPTO駆動手段(以下、PTO駆動スイッチという)151(図6の制御ブロック図にのみ図示)の入り状態が共に有効にされることで、エンジン回転数維持制御モードBに自動的に切換える構成とする。PTO駆動手段については、レバーなどの操作をスイッチ等で検出する構成としてもよい。
【0027】
前記エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択し、作業機を駆動するPTO駆動スイッチ151の入り状態が共に有効にされることで、エンジン回転数変動制御モードAに自動的に切換えるように構成する。
【0028】
エンジンパワー選択スイッチ134で標準のエンジン出力カーブNを選択して、PTO駆動スイッチ151を入り状態としての作業中は、自動的にエンジン回転数維持制御モードBでエンジン回転数制御を行う。そして、エンジン負荷に余裕があると判断すると、モード選択手段134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択するが、この選択で自動的にエンジン回転数変動制御モードAに切換わる。
【0029】
エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択し、PTO駆動スイッチ151を入り状態としての作業中は、自動的にエンジン回転数変動制御モードAでエンジン回転数制御を行う。そして、エンジン負荷に余裕が無いと判断すると、エンジンパワー選択スイッチ134で標準のエンジン出力カーブNを選択するが、この選択で自動的にエンジン回転数維持制御モードBに切り替わる。
【0030】
低燃費のエンジン出力カーブSの許容最大負荷は、標準のエンジン出力カーブNの許容最大負荷よりも低いので、許容最大負荷に達する可能性が高い。このため、仮に低燃費のエンジン出力カーブSの選択状態において、エンジン回転数維持制御モードBで作業を行う場合において許容最大負荷に達すると、一気にエンジンストールしてしまうという不具合が発生する。
【0031】
そこで、低燃費のエンジン出力カーブSでエンジン回転数変動制御モードAで作業を行うと、負荷の作用に応じてエンジン回転数が低下していくので、一気にエンジン回転数がストールしてしまって、エンジンを再始動しなくてはならないという不具合を防止できるようになる。また、負荷に応じてエンジン回転数が低下していくので、作業者は負荷の状態を容易に把握し易くなる。
【0032】
また、エンジンパワー選択スイッチ134で標準のエンジン出力カーブNを選択し、作業機を駆動するPTO駆動スイッチ151の入り状態が共に有効にされることで、自動的にエンジン回転数維持制御モードBに切換えるように構成したので、エンジン自体が持っている許容最大負荷まで一定の回転数で作業できるので、エンジン自体の能力を最大に引き出して、作業能率を向上させることができるようになる。
【0033】
前記PTO駆動スイッチ151を入り状態にすると、後述する図6に示すPTOクラッチsol(ソレノイド)54bに通電して、図5に示すPTOクラッチ54aが入りとなる。
【0034】
また、図6に示すように、特定のエンジン回転数を記憶するエンジン回転数記憶手段(以下、エンジン回転数記憶スイッチという)152と、記憶している特定のエンジン回転数を再現するエンジン回転数再現手段(以下、エンジン回転数再現スイッチという)153を設ける構成とする。このエンジン回転数再現スイッチ153を設けることで、特定のエンジン回転数に自動的に設定できるので、アクセルレバーなどの操作が不要となり、操作性が向上するようになる。
【0035】
そして、エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択し、エンジン回転数再現スイッチ152の入り状態が共に有効にされることで、自動的にエンジン回転数変動制御モードAに切換えるように構成する。
【0036】
エンジン回転数記憶スイッチ152で、作業者が希望する特定のエンジン回転数を走行制御装置120に記憶する。そして、エンジン回転数再現スイッチ153を操作して、記憶しているエンジン回転数を再現する。このように、エンジン回転数再現スイッチ153で記憶している特定のエンジン回転数を再現する場合は、作業を行う場合である。記憶しているエンジン回転数を再現すると共に、エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択すると、自動的にエンジン回転数変動制御モードAに切換わる。
【0037】
このように、作業を行う際、記憶しているエンジン回転数を再現すると共に、エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択すると、自動的にエンジン回転数変動制御モードAに切換わるように構成したので、負荷の作用に応じてエンジン回転数が低下していくので、一気にエンジン回転数がストールしてしまって、エンジンを再始動しなくてはならないという不具合を防止できるようになる。また、負荷に応じてエンジン回転数が低下していくので、作業者は負荷の状態を容易に把握し易くなる。
【0038】
また、別構成として、作業機を駆動するPTO出力軸54c(図5)の負荷率を検出し、一定時間標準のエンジン出力カーブNの最高出力の略70%以下で作業、又は走行している場合には、自動的に低燃費のエンジン出力カーブSに切り換えるように構成する。これにより、効率の良い低燃費の作業や走行を行うことができるようになる。PTO出力軸54cの負荷率は、規定の回転数に対する現在の回転数から算出する。
【0039】
逆に、一定時間低燃費のエンジン出力カーブSにおける最高出力の略70%以上で作業、又は走行している場合には、自動的に標準のエンジン出力カーブNに切換わるように構成する。このように、エンジン自体の持っている能力を引き出して、作業や走行を行うことが可能となる。
【0040】
また、走行変速レバー(図示せず)を路上走行位置(高変速位置で高速走行をする位置)にするか、又は標準のエンジン出力カーブNで一定時間(10分程度)走行すると、自動的に低燃費のエンジン出力カーブSに切換わるようにしても良い。
【0041】
前記エンジン回転数変動制御モードAとエンジン回転数維持制御モードB、及び重負荷モードCにおいて、農作業車(トラクタ、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクタであればロータリ駆動等のPTOクラッチであり、コンバインであれば刈取部や脱穀部の駆動クラッチである)の入り切り操作等によって自動的にエンジン回転数維持制御モードBに切換わるように構成してもよい。なお、トラクタでは、PTOクラッチが切りであっても、作業機を連結しているリフトアームが最上位置より低く、かつリフトアームを昇降させている場合には、プラウ作業やプラソイラ作業であるので、自動的にエンジン回転数維持制御モードBや重負荷モードCにする。
【0042】
また、エンジン回転数変動制御モードAとエンジン回転数維持制御モードB、及び重負荷モードCは、エンジン回転数制御モード切換スイッチ148(図6)の操作により、手動で切り換えるように構成してもよい。手動の場合は、運転者の判断で選択する。
【0043】
また、副変速レバーを路上走行位置にすると、自動的にエンジン回転数変動制御モードAになるが、路上走行の場合には負荷が小さいので、自動的に低燃費のエンジン出力カーブSとなるように構成してもよい。この場合に、副変速レバーを路上走行位置以外に変速操作すると、事前に標準のエンジン出力カーブNを選択していれば、その標準のエンジン出力カーブNに戻すように構成する。これにより、効率のよい走行が可能となる。
【0044】
また、エンジンパワー選択スイッチ134が入り状態のときは、常にエンジン回転数変動制御モードAとしてもよい。また、エンジンパワー選択スイッチ134が切りであり、アクセルペダルの操作で自動的に変速を行う場合も、エンジン回転数変動制御モードAとしてもよい。
【0045】
また、エンジンパワー選択スイッチ134が切りであり、手動スイッチ150(図6)を切りにし、さらに、PTOクラッチが入りであると、自動的にエンジン回転数維持制御モードBにしてもよい。このPTOクラッチが入りの条件の代わりに、作業機が下げ状態やエンジン回転数再現スイッチ153が入り状態であってもよい。そして、PTOクラッチが切りとなったり、作業機が上げ状態になったり、エンジン回転数再現スイッチ153が切り状態になると、自動的にエンジン回転数変動制御モードAにする構成とする。
【0046】
前記手動スイッチ150が入り状態であれば、常にエンジン回転数維持制御モードBとする。これにより、能率のよい作業や走行が可能となる。
【0047】
図4には、本発明を実施した作業車としてトラクタ15を示している。
【0048】
トラクタ15は、機体前部のボンネット内にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース16内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪17と後輪18とに伝えるようにしている。機体上の操縦席22の周りはキャビン19で覆われている。キャビン19の内部で操縦席22前側のメータパネル117を設けたダッシュボード13からステアリングハンドル20を立設し、その周りに前後進レバーや駐車ブレーキレバーやPTO変速レバー等を配置している。このエンジンEは、前記のコモンレール式のディーゼルエンジンである。
【0049】
左右の後輪18,18の間にはヒッチ21と三点リンク(図示省略)を設けてロータリ等の作業機を装着するように構成している。
【0050】
図7は、メータパネル117の拡大図である。図8は、メータパネル117内の液晶のデータ表示部14の拡大図であり、表示の一例を示している。図9は、ダッシュボード13に立設したステアリングハンドル20の右側周辺の拡大斜視図である。
【0051】
ステアリングハンドル20の前側のメータパネル117には、中央にエンジン回転計24を配置し、その右側に液晶のデータ表示部14を配置し、左側に省エネモニタランプ23を配置している。また、左下側には燃料タンク3内の燃料の充填状況の警告表示ランプ23xがある。
【0052】
データ表示部14には、現在の変速段を表示する変速段表示14aと、燃料消費率表示14b等が有り、燃料消費率表示14bは走行速度表示14cと一定時間毎に切り換わる構成である。燃料消費率とは、そのときのエンジン回転数における最大出力を出すための燃料噴射量に対する、実際に噴射されている燃料噴射量の割合のことである。また、データ表示部14には、燃料計14dとエンジンの冷却水温計14eも表示する構成としている。
【0053】
省エネモニタランプ23は、エンジンパワー選択スイッチ134で低燃費のエンジン出力カーブSを選択しているときに点灯する構成であり、緑色に点灯する。
また、図9に示すように、ステアリングハンドル20の右側であって、ダッシュボード13にエンジンパワー選択スイッチ134を設けている。このエンジンパワー選択スイッチ134を押すと、エンジンが低燃費のエンジン出力カーブSで制御される。
【0054】
図5は、ミッションケース16内の変速装置の伝動機構を示す線図である。エンジンEから前輪17と後輪18への動力伝動構成を説明する。
エンジンEの出力軸に直結した入力軸25には、第一ギヤ26を固着し、前後進切換クラッチ27を装着している。
【0055】
前後進切換クラッチ27の一方の第二ギヤ28は、第一変速軸29に固着した第三ギヤ30に噛み合って減速し、前後進切換クラッチ27の他方の第四ギヤ31は、カウンタギヤ32を介して第一変速軸29に固着した第五ギヤ33に噛み合っており、逆転で動力を伝動している。すなわち、前後進切換クラッチ27を第二ギヤ28側に入れる(繋ぐ)と、入力軸25の回転が逆方向回転で第一変速軸29に伝動され、第四ギヤ31側に入れると、入力軸25の回転が順方向回転で第一変速軸29に伝動され、第二ギヤ28と第四ギヤ31の両方から離れたニュートラル状態が、動力伝動を断ったメインクラッチ切状態である。油圧バルブの制御によって、このメインクラッチ切状態を保持出来るようにしている。すなわち、自動制御を行うときや、前後進レバーの操作時、そしてクラッチペダルの操作時において作動する前後進切換クラッチ27が、メインクラッチとして機能している構成である。
【0056】
前後進切換クラッチ27の伝動下手側であって前記第一変速軸29には、一速/三速切換用第一変速クラッチ34と、二速/四速切換用第二変速クラッチ35を装着している。
【0057】
一速/三速切換用第一変速クラッチ34の第一クラッチギヤ36と第二クラッチギヤ37は、第二カウンタ軸38に固着した第三クラッチギヤ39と第四クラッチギヤ40に噛み合っており、一速用にしたり三速用にしたりして、第一変速軸29の回転を第二カウンタ軸38に伝動している。
【0058】
さらに、二速/四速切換用第二変速クラッチ35の第五クラッチギヤ41と第六クラッチギヤ42は、第二カウンタ軸38に固着した第七クラッチギヤ43と第八クラッチギヤ44に噛み合っており、二速用にしたり四速用にしたりして、第一変速軸29の回転を第二カウンタ軸38に伝動している。
【0059】
第二カウンタ軸38の伝動下手側に、第三カウンタ軸45をカップリング46で連結しており、回転をそのままで伝動している。この第三カウンタ軸45には、小ギヤ47と大ギヤ48を固着している。この小ギヤ47と大ギヤ48は、第二変速軸49に装着した高・低速切換クラッチ50のクラッチ大ギヤ51とクラッチ小ギヤ52にそれぞれ噛み合っており、第三カウンタ軸45の回転を高速又は低速で第二変速軸49に伝動している。
【0060】
第二変速軸49の伝動下手側端部に第六ギヤ53を固着し、この第六ギヤ53は、第三駆動軸54に回動可能に軸支している大小ギヤ55部の大ギヤ56と噛み合っており減速伝動している。
【0061】
大小ギヤ55部の小ギヤ57は、ベベルギヤ軸58に軸支した二連の副変速クラッチ59の第七ギヤ60に噛み合わせて減速伝動している。さらに、第七ギヤ60と一体に設けた第八ギヤ61を、第五カウンタ軸62に固着した第二大ギヤ63に噛み合わせて減速伝動している。
【0062】
第五カウンタ軸62には、さらに第二小ギヤ64が固着され、この第二小ギヤ64がベベルギヤ軸58の第三大ギヤ65と噛み合ってさらに減速伝動されている。従って、第二変速軸49の回転は、第六ギヤ53→大ギヤ56→小ギヤ57→第七ギヤ60→第八ギヤ61→第二大ギヤ63→第二小ギヤ64→第三大ギヤ65と順次減速されながら伝動されていく。
【0063】
副変速レバーで操作される二連の副変速クラッチ59の第一シフター66と第二シフター67は、ベベルギヤ軸58へ軸方向にスライド可能に係合していて、第一シフター66を第七ギヤ60側へスライドして係合すると、第七ギヤ60の回転がベベルギヤ軸58に伝わり、第二シフター67が第八ギヤ61側へスライドして係合すると、第八ギヤ61の回転がベベルギヤ軸58に伝わって、順次減速されてベベルギヤ軸58が低速で回転することになる。
【0064】
ベベルギヤ軸58の回転は、第一ベベルギヤ68と第二ベベルギヤ69を経てデフギヤ70に伝動され、デフギヤ70から車軸71と遊星ギヤ72を経て後輪18へ伝動される。
【0065】
以上の説明を要約すると、入力軸25の回転は、まず前後進切換クラッチ27で正転又は逆転に切り替えられ、一速/三速切換用第一変速クラッチ34と二速/四速切換用第二変速クラッチ35で一速から四速まで4段に変速され、高・低速切換クラッチ50で高速と低速の2段に変速され、さらに二連の副変速クラッチ59で高・中・低速の3段に変速されて、ベベルギヤ軸58に伝動される。すなわち、入力軸25の回転が4×2×3=24段に変速されて車軸71へ伝動されるのである。
【0066】
前輪17への駆動力伝動は、ベベルギヤ軸58に第九ギヤ74を固着し、この第九ギヤ74を中継ギヤ75に噛み合わせ、さらに第三駆動軸76に固着した第十ギヤ77に噛み合わせて第三駆動軸76を駆動する。第三駆動軸76を第二カップリング78で前輪増速クラッチ79を装着した変速軸80に連結している。前輪増速クラッチ79の第十一ギヤ81と第十二ギヤ82は、第七カウンタ軸83に固着した第十三ギヤ84と第十四ギヤ85に噛み合わせており、通常の前輪駆動から前輪増速に切り替えるようにしている。なお、前輪増速クラッチ79を中立にすると、前輪17の駆動が断たれて後輪のみの駆動になる。
【0067】
第七カウンタ軸83は、第三カップリング86で前輪駆動軸87に連結し、さらに、第四カップリング88と延長軸89及び第五カップリング90で前輪駆動ベベル軸91に連結している。
【0068】
前輪駆動ベベル軸91の動力は、前第一ベベルギヤ92、前第二ベベルギヤ93、前デフギヤ94、前デフギヤ軸95、前第三ベベルギヤ96、前第四ベベルギヤ97、垂直軸98、前第五ベベルギヤ99、前第六ベベルギヤ100、前遊星ギヤ101を経て前輪17を駆動している。
【0069】
第三駆動軸54の伝動下手側にPTO出力軸54cを連結している。PTO出力軸54cは、PTO変速部54d、PTOカウンタ軸54e、第三駆動軸54を介して駆動する構成である。
【0070】
次に、図6の制御ブロック図で、制御信号の流れを説明する。
【0071】
まず、エンジンECU(エンジン制御装置)12には、エンジン排気温度センサ106から排気の温度が入り、エンジン回転センサ107からエンジン回転数が入り、エンジンオイル圧力センサ108からエンジン潤滑オイルの圧力が入り、エンジン水温センサ109から冷却水の温度が入り、レール圧センサ2からコモンレール1の圧力が入り、燃料高圧ポンプ4に駆動信号が出力され、高圧インジェクタ6に燃料供給調整制御信号が出力される。
【0072】
次に、作業機昇降制御装置110には、作業機昇降レバーに設けるポジションコントロールセンサ111の操作信号と、リフトアームセンサ112の昇降信号と、上げ位置規制ダイアル113の上げ位置規制信号と、下げ速度調整ダイアル114の降下速度設定信号がそれぞれ入力し、メイン上昇ソレノイド115とメイン下降ソレノイド116に作業機昇降信号が出力し作業機昇降シリンダを作動する。
【0073】
前記エンジンECU12と作業機昇降制御装置110、及び後述する走行制御装置120は制御信号が交互に交信(CAN1,CAN2通信)されて、メータパネル117にエンジンEが標準のエンジン 出力カーブNであるか、又低燃費のエンジン出力カーブSであるかの状態や、作業機の昇降状態、走行装置の走行速度等が表示され、操作パネル118に各レバーやペダルの操作位置等が表示される。
【0074】
走行制御装置120は、変速1クラッチ圧力センサ121、変速2クラッチ圧力センサ122、変速3クラッチ圧力センサ123、変速4クラッチ圧力センサ124からクラッチ入信号、即ち多段ギヤ変速装置の変速段が入力する。即ち、一速/三速切換用第一変速クラッチ34と、二速/四速切換用第二変速クラッチ35の信号である。Hi(高速)クラッチ圧力センサ125とLo(低速)クラッチ圧力センサ126からサブクラッチの変速位置が入力する。即ち、高・低速切換クラッチ50の信号である。
【0075】
前進クラッチ圧力センサ127と後進クラッチ圧力センサ128からメインクラッチの前進・中立・後進が入力する。即ち、前後進切換クラッチ27の信号である。トラクタを前後進させる前後進レバーの位置を検出する前後進レバー操作位置センサ129と、副変速レバーの操作位置を検出する副変速レバー操作位置センサ130から変速操作位置信号が入力する。
【0076】
車速センサ131から走行速度が入力し、ミッションオイル油温センサ132からミッションオイルの温度が入力し、クラッチペダル操作位置センサ133からクラッチペダルの踏込み信号が入力し、エンジンパワー選択スイッチ134から標準のエンジン出力カーブNと低燃費のエンジン出力カーブSの選択信号が入力し、エンジン回転数制御モード切換スイッチ148からエンジン制御モードの切換信号が入力する。また、手動スイッチ150が入り状態であれば、常にエンジン回転数維持制御モードBとする。
【0077】
さらに、アクセルペダルの踏み込み状態で走行(路上)の自動変速を行うアクセル変速設定スイッチ144からも信号が入力し、手動で変速の増減速を行う主変速増減速操作スイッチ145の操作信号が入力し、アクセルレバーの位置を検出するアクセルセンサ146からアクセル操作信号が入力し、アクセルを微調整するアクセル微調整レバーセンサ147のアクセル調整信号が入力する。
【0078】
走行制御装置120からの出力は、前後進切換sol(ソレノイド)135に前後進切換クラッチの切換信号が出力し、リニア昇圧sol(ソレノイド)136に前後進切換sol(ソレノイド)を駆動する油圧のリリーフ圧調整信号が出力してクラッチ接続のショックを低減し、クラッチsol(ソレノイド)137に入・切信号が出力する。
【0079】
さらに、一速/三速切換用第一変速クラッチ34を駆動する油圧シリンダの変速1−3切換sol(ソレノイド)138に一速又は三速の入信号が出力し、変速1−3昇圧sol(ソレノイド)139に一速/三速切換用第一変速クラッチ34を駆動する油圧のリリーフ圧調整信号が出力してクラッチ接続のショックを低減する。二速/四速切換用第二変速クラッチ35を駆動する油圧シリンダの変速2−4切換sol(ソレノイド)140に二速又は四速の入信号が出力し、変速2−4昇圧sol(ソレノイド)141に二速/四速切換用第二変速クラッチ35を駆動する油圧のリリーフ圧調整信号が出力してクラッチ接続のショックを低減する。高・低速切換クラッチ50を駆動する油圧シリンダを作動するHi(高速)クラッチ切換sol(ソレノイド)142とLo(低速)クラッチ切換sol(ソレノイド)143に高速クラッチの入信号及び低速クラッチの入信号が出力する構成である。
【0080】
燃料センサ158などで燃料タンク3に燃料が残り僅かになったことが検知されると、表示部14に給油警告が警告表示ランプ23xに表示されたときは、自動かつ強制で燃料使用量を少なくするエンジン制御にする。
燃料使用量を少なくする具体例として、例えば低燃費のエンジンン出力カーブS(図3)を選択するような低燃費のエンジン出力モードSを選択する制御を行うことで、燃料消費が抑えられた燃費向上が図れる。
また、燃料タンク3内の燃料残量を測定する燃料センサ158の電気抵抗値を基準にして燃料タンク3に燃料が残り僅かになったことが検知されると、前記低燃費のエンジン出力カーブSに自動的に切換わる構成とすることで、切換精度が従来技術より向上する。
【0081】
さらに、選択スイッチ160(図6)を設けておき、このスイッチ160が「入」の時に、燃料タンク3内の燃料が残り僅かになり、表示部14に給油警告が表示ランプ23xに表示されたときに低燃費のエンジン出力モードSが選択制御できる構成にしても良い。これにより、低燃費のエンジン出力モードSを選択するか否かをトラクタの操縦者が決めることができる。なお、上記給油警告は表示部14での画像表示、音声、ランプの点滅表示等を用いることができる。
【0082】
燃料センサ158などで燃料タンク3に燃料が残り僅かになったことが検知されると、表示部14に低燃費のエンジン出力カーブSへの切り換えを促す表示を表示ランプ23xなどで行う。低燃費のエンジン出力カーブSへの切り換えは手動で行う。
また、選択スイッチ160は、選択スイッチ160の切り換え選択で、自動で低燃費のエンジン出力カーブSを実行するか、手動で低燃費のエンジン出力カーブSを実行するかを選択する。
【0083】
さらに、燃料タンク3の容量に応じて燃料が満タン時に閾値を変更できるモードを設けることができる。例えば、燃料センサ158の検出値に応じて警告音を発する閾値を種々変更して設定しておけば、警報を発する閾値を燃料タンク3の容量に応じて変更することができる。
従来は、燃料を補給する際に、その補給方法(装置)により給油速度が異なり、燃料タンク容量により燃料センサ158の変化速度が大きく変わるため、警報精度が悪くなることがあった。
【0084】
しかし、以下の表1に示すように燃料タンク容量に応じて警報を発する閾値を変えることができるので上記不具合が無くなり、燃料タンク容量に応じたブザー吹鳴が可能となる。
【表1】

【0085】
また、燃料タンク3への給油速度に応じて満タン時の閾値を変更するモードを設けると、燃料タンク3へ燃料を補給する際に燃料補給方法(装置)により給油速度が異なったとしても、例えば表2のように給油速度に応じた適切な閾値で警報を発することができる。
【表2】

こうして燃料タンク3が満タンになる前に給油を中止することができる。
【0086】
本発明のトラクタでは、コラムシフトレバー163(ステアリングコラムに配置されたシフトレバー)163の操作位置に前後進レバーを組み込んだ機構を採用した。即ち、図10(a)の操縦部の斜視図に示すように操縦席22の前にあるステアリングハンドル20を備えたステアリングコラム13にコラムシフトレバー163を設けた。
【0087】
次のように主変速の変速段をコラムシフトレバー163の変速位置に組み込むことでレバー操作がし易くなる。図10(b)には、操作レバーガイド154の平面図を示す。
車両の前進方向に向かって左右にそれぞれの前後方向の2列に前進側レバーガイド154aと後進側レバーガイド154bを配置し、両方のレバーガイド154a,154bのコラムシフトレバー163のシフト位置毎に左右方向に前記2列の前進側レバーガイド154aと後進側レバーガイド154bを橋渡しするレバーガイド154cが設けられている。そして、図10(b)に示すように前進側レバーガイド154aと後進側レバーガイド154bの同じ変速段では前進側レバーガイド154aにあるコラムシフトレバー163が移動する同一変速位置(例えば前進3速)が後進側レバーガイド154bにあるコラムシフトレバー163がある同一変速位置(例えば後進3速)より前側に配置されている。
【0088】
そして、前後方向の2列のレバーガイド154a,154bのいずれかのシフト位置にあるコラムシフトレバー163を反対側の列、例えば前進側レバーガイド154aにあるコラムシフトレバー163を後進側レバーガイド154bに移動させるためには、コラムシフトレバー163を中立位置のレバーガイド154cを経由して右に移動させて後進側レバーガイド154bに移動させるので、一旦変速装置は中立状態となる。そして、後進側レバーガイド154bの目的とする変速位置にコラムシフトレバー163を前後に移動させる。また、後進側レバーガイド154bにあるコラムシフトレバー163を前進側レバーガイド154aに移動させるためにはコラムシフトレバー163を中立位置にあるレバーガイド154cを経由して左に移動させ、前進側レバーガイド154aに移動させて、前進側レバーガイド154aの目的とする変速位置にコラムシフトレバー163を前後に移動させる。
【0089】
図11(a)にはレバーガイド154a,154b,154c,154dの要部を示し、図11(b)には後進3速位置から前進3速位置又は前進3速位置から後進3速位置にコラムシフトレバー163をシフトさせるときのコラムシフトレバー163の移動手順を示す。後進3速位置にあるコラムシフトレバー163を、まず左に倒して中立レバーガイド154d(中立レバーガイド154cの一部であるが、説明上ガイド154dとした)を経由して前進側レバーガイド154aに移動させて前進3速位置に移動完了させる。また、前進3速位置にあるコラムシフトレバー163を、右に倒して中立レバーガイド154cを経由して後進側レバーガイド154cに移動させた状態とし、次いでレバーガイド154cを後側に移動させ後進3速位置に移動完了させる。
なお、副変速の変速位置は別途設けた副変速レバー等を用いる。
【0090】
一般に、走行方向を決定する変速レバーなどを前方へ動かすと、通常は車両が前進するので、もし車両を後進させる目的でコラムシフトレバー163を前方に動かして、車両を後進させると違和感を感じる場合がある。
【0091】
そこで図12に示すように、コラムシフトレバー163に前後進シフト用のスイッチ155を設けて、スイッチ155を押すことにより「後進状態でシフトアップする」という認識をオペレータに持たせるようにすることで、誤操作を防ぐことができる。
【0092】
すなわち、コラムシフトレバー163に設けたスイッチ155を押さないと、後進側ではシフトアップを図るために前方向(前進方向)にコラムシフトレバー163を移動出来なくなるようにしている。従って前記スイッチ155を押していない場合はコラムシフトレバー163を手前に引いて後進方向へシフトダウンをすることはできるが、後進方向へのシフトアップは出来ない。
【0093】
本実施例のトラクタは、デイーゼルエンジンを搭載している。ディーゼルエンジンの排気ガス内には粒状化物質(PM)が含まれているため、この粒状化物質(PM)を取り除く必要がある。そこで、排気系統にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を設ける構成とする。
【0094】
DPFは時間が経過するとDPF内に粒状化物質(PM)が堆積してくるので、この堆積した粒状化物質(PM)を除去してDPFを再生する必要がある。DPFの前後に圧力センサを設け、下流側の圧力センサ値に対して上流側の圧力センサ値がある範囲を超えて大きくなると、DPF内に粒状化物質(PM)が堆積していると推測できる。
【0095】
また、DPFの再生には自動再生と手動(強制)再生がある。自動再生は走行中、又は作業中に自動的に行うものであり、手動(強制)再生は機体を停車させて行うものである。手動(強制)再生のときの方が自動再生よりも粒状化物質(PM)の堆積量は多い。自動再生したくても排気温度が上昇しない場合には再生できないので、粒状化物質(PM)は堆積する一方となり、最終的に機体を停車させての手動(強制)再生が必要となる。この場合は機体停車なので作業ができなくなる。したがって、できるだけ自動再生可能な条件にすることが望ましい。基本的にはポスト噴射を行うが、作業車などでは使用していない油圧等を駆動(ポンプ駆動)して意図的にエンジンに負荷をかけて排気温度を上昇させることもある。
【0096】
DPF内に堆積した粒状化物質(PM)を除去する自動再生(メイン噴射の後に行うポスト噴射により排気ガスの温度を約500℃から600℃以上に上昇させてDPFを再生する。ポスト噴射による燃料は、シリンダ内で燃焼するのではなく、クランク軸の角度の関係から排気管内に燃料が送られて燃焼する。)を行う際に、燃料タンク3の残量をチェックし、燃料が少なければオペレータに警告を促す制御を行う。これはDPFの再生中はCAN通信しているため、途中で前記再生を停止するとエラーが出る可能性が高い。そこでDPFの再生中にはエンジンEが停止させないようにする。
同様にDPFの自動再生を行う際には、CAN通信しているため、キーをオフとしてもオペレータに警告を促し、すぐにエンジンEを停止させないようにする。
【0097】
また、DPFの再生中は一定以上のエンジン回転数でないと十分な再生効果が得られないので、DPFの自動再生を行う際には、エンジン回転数の制御は予め決められたプログラムを優先にしてスロットルレバー等のエンジン回転数の手動操作を無効にする制御を行う。さらに、DPFの手動(強制)再生を行う際に、安全のため自動でブレーキをかける構成とする。
【0098】
図13にトラクタの要部側面図を示すように、キャビンを搭載しない小型トラクタなどでは、操縦席22にファン送風ダクト156を接続してオペレータの暑気対策とする。ファン送風ダクト156の一端を水タンク157に接続し、他端を操縦席22のシートの中央に設けた網目付の通風部に接続する。水タンク157の通風入口には吸気ファン159を設け、吸気した空気と水を含んだ不織布フィルター160を通して水タンク157の通風出口からファン送風ダクト156を経由して操縦席22のシートから操縦者に冷風として供給する。水を含んだ不織布フィルター160は圃場の土が含まれているので定期的に交換するだけで、その他の部材は環境に優しいものである。
上記冷風装置はキャビンを搭載しない小型機や管理機などにも簡単に搭載することができ、夏期の作業を快適に行うことができる。また、非常に簡単な構成のため、低原価にて実施できる。
【0099】
フィルター160の取り替え時は操縦席22のシートを倒し、フィルター160を引き抜き、水タンク157を引き出して補水する。この方法では水のみの補給で済むので、環境への負荷が少なく、非常に簡単な構成のため、低原価にて実施できる。また、自然冷媒を使用しているため優しい送風になり、高齢者への負担が少ない。
上記操縦席22のシートは円座状にすることにより、送風を効率的に行うことができ、シートを円座状にすることにより着座性を向上し、快適な作業を行える。
【0100】
本実施例の冷風装置は、水の気化潜熱を利用した冷風発生装置であり、自然冷媒を利用しているため、環境負荷が少なくエコロジーであり、簡易で安価である。また冷風装置は水のみの補給で実施可能なため、環境への負荷が少なく、自然冷媒を利用しているため優しい送風となり、高齢者への負担が少ない。また、簡易な構成のため低原価にて実施でき、フィルター160に不織布を設定することにより、安価でフィルター交換できる。
さらに、冷風装置は簡易な構成であるので、小型トラクタなどキャビンの搭載が困難な機種にも冷風装置を設けることが簡単に可能となる。
【0101】
フロントケース、ミドルケース、リヤケースからなるミッションケースの中でリヤミッションの上部に冷風発生ボックスを構成する。リヤミッションの上部に冷風発生ボックスを配置し、内部に送風ファン、不織布フィルター、水タンクを配置し、前方・左右から送風ダクトによって、オペレータへ冷風を送る構成とする。
【0102】
前記水タンク160に銀イオンを練り込み、カビの発生を抑える、水タンク160は樹脂で成型するが、このタンクの樹脂成型時に銀イオンを混ぜて、カビの発生を少なくすることが望ましい。水タンク160には水を溜めておかなければいけないが、夏期に水を溜めたままであると、カビの発生が予想され、不衛生となりかねない。前記樹脂(不織布フィルター)に銀イオンを練り込むことによりカビの発生を抑え、水タンク160を清潔に保つことができる。
【0103】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0104】
1 コモンレール 2 レール圧センサ
3 燃料タンク 4 燃料高圧ポンプ
5 シリンダ 6 高圧インジェクタ
7 燃料フィルタ 8 吐出通路
9 高圧燃料供給通路 12 エンジン制御装置(ECU)
10,10a リターン通路 11 圧力制御弁
13 ダッシュボード 14 データ表示部
15 トラクタ 16 ミッションケース
17 前輪 18 後輪
19 キャビン 20 ステアリングハンドル
21 ヒッチ 22 操縦席
23 省エネモニタランプ 25 入力軸
26 第一ギヤ 27 前後進切換クラッチ
28 第二ギヤ 29 第一変速軸
30 第三ギヤ 31 第四ギヤ
32 カウンタギヤ 33 第五ギヤ
34 一速/三速切換用第一変速クラッチ
35 二速/四速切換用第二変速クラッチ
36 第一クラッチギヤ 37 第二クラッチギヤ
38 第二カウンタ軸 39 第三クラッチギヤ
40 第四クラッチギヤ 41 第五クラッチギヤ
42 第六クラッチギヤ 43 第七クラッチギヤ
44 第八クラッチギヤ 45 第三カウンタ軸
46 カップリング 47 小ギヤ
48 大ギヤ 49 第二変速軸
50 高・低速切換クラッチ 51 クラッチ大ギヤ
52 クラッチ小ギヤ 53 第六ギヤ
54 第三駆動軸 55 大小ギヤ
56 大ギヤ 57 小ギヤ
58 ベベルギヤ軸 59 二連の副変速クラッチ
60 第七ギヤ 61 第八ギヤ
62 第五カウンタ軸 63 第二大ギヤ
64 第二小ギヤ 65 第三大ギヤ
66 第一シフター 67 第二シフター
61 第八ギヤ 68 第一ベベルギヤ
69 第二ベベルギヤ 70 デフギヤ
72 遊星ギヤ 74 第九ギヤ
75 中継ギヤ 76 第三駆動軸
77 第十ギヤ 78 第二カップリング
79 前輪増速クラッチ 79 前輪増速クラッチ
81 第十一ギヤ 82 第十二ギヤ
83 第七カウンタ軸 84 第十三ギヤ
85 第十四ギヤ 86 第三カップリング
87 前輪駆動軸 89 延長軸
90 第五カップリング 91 前輪駆動ベベル軸
92 前第一ベベルギヤ 93 前第二ベベルギヤ
94 前デフギヤ 95 前デフギヤ軸
96 前第三ベベルギヤ 97 前第四ベベルギヤ
98 垂直軸 99 前第五ベベルギヤ
100 前第六ベベルギヤ 101 前遊星ギヤ
106 エンジン排気温度センサ
107 エンジン回転センサ
108 エンジンオイル圧力センサ
109 エンジン水温センサ
110 作業機昇降制御装置 111 ポジションコントロールセンサ
112 リフトアームセンサ 113 上げ位置規制ダイアル
114 下げ速度調整ダイアル 115 メイン上昇ソレノイド
116 メイン下降ソレノイド 120 走行制御装置
117 メータパネル 118 操作パネル
121 変速1クラッチ圧力センサ
122 変速2クラッチ圧力センサ
123 変速3クラッチ圧力センサ
124 変速4クラッチ圧力センサ
125 Hi(高速)クラッチ圧力センサ
126 Lo(低速)クラッチ圧力センサ
127 前進クラッチ圧力センサ
128 後進クラッチ圧力センサ
129 前後進レバー操作位置センサ
130 副変速レバー操作位置センサ
131 車速センサ
132 ミッションオイル油温センサ
133 クラッチペダル操作位置センサ
134 エンジンパワー選択スイッチ
144 アクセル変速設定スイッチ
145 主変速増減速操作スイッチ
146 アクセルセンサ
147 アクセル微調整レバーセンサ
148 エンジン回転数制御モード切換スイッチ
150 手動スイッチ 154レバーガイド
160 選択スイッチ 163 コラムシフトレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転数に対して所定のパワーを確保するために予め設定された標準モードのエンジン出力トルクカーブと、標準モードのエンジン出力トルクカーブよりも燃料供給量を抑えた低燃費のエンジン出力カーブを備え、選択されたエンジン出力カーブに従ってエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置を備えた作業車両において、
燃料タンク(3)内の燃料残量が所定量になると、燃料が少ない警告を発して前記低燃費のエンジン出力カーブを自動的に選択してエンジン出力制御を行うように構成したことを特徴とするエンジン出力制御装置を備えた作業車両。
【請求項2】
燃料タンク(3)内の燃料残量を電気抵抗値を基準にして測定する燃料センサ(158)を設け、該燃料センサ(158)により燃料タンク3内の燃料残量が所定量になることが検知されると、標準モードより燃料消費量を抑える前記低燃費のエンジン出力カーブに自動的に切換可能な構成とした請求項1記載のエンジン出力制御装置を備えた作業車両。
【請求項3】
エンジン回転数に対して所定のパワーを確保するために予め設定された標準モードのエンジン出力トルクカーブと、標準モードのエンジン出力トルクカーブよりも燃料供給量を抑えた低燃費のエンジン出力カーブを備え、選択されたエンジン出力カーブに従ってエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置を備えた作業車両において、
燃料タンク(3)内の燃料残量が所定量になると、燃料が少ない旨の警告を発して前記低燃費のエンジン出力カーブの選択を促す手段(23x)を備えたことを特徴とするエンジン出力制御装置を備えた作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−24038(P2013−24038A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156399(P2011−156399)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】