説明

作業車両

【課題】トランスミッション入力軸の内部に油圧ポンプの駆動軸が配置された構成において、ロックアップクラッチ装置に、簡単な構成で作動油を導く。
【解決手段】この作業車両は油圧ポンプ及びトランスミッション1を有する。トランスミッション1は、筒状の入力軸4を有するトランスミッション本体5と、トルクコンバータ本体9と、ロックアップクラッチ装置10と、PTO駆動軸12と、油路61と、を備えている。ロックアップクラッチ装置10は、ピストン41と、ピストン41の背面に形成された油室16bと、クラッチ部と、を有する。PTO軸12は入力軸4の内部を貫通して入力軸4と同軸に配置され、油圧ポンプ13へ駆動力を伝達する。油路60は、入力軸4の内周面とPTO軸12の外周面との間に形成され、ロックアップクラッチ装置10の油室16bへ通じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両においては、エンジン等の動力源からの動力をトランスミッションの入力軸に伝達するためのトルクコンバータが設けられている。トルクコンバータは、一般的に、流体を介して動力を伝達するトルクコンバータ本体と、ロックアップクラッチ装置と、を有している。ロックアップクラッチ装置は主に、油圧によって作動するピストンと、ピストンの作動によってオン(動力伝達)、オフ(動力伝達の遮断)するクラッチ部と、を備えている。そして、車両の速度が所定の速度以上になると、ロックアップクラッチ装置のクラッチ部がオンされ、エンジンからの動力は、トルクコンバータ本体を介さずにロックアップクラッチ装置を介してトランスミッションの入力軸に直接伝達される。
【0003】
このようなトルクコンバータにおいては、トルクコンバータ本体に、あるいはロックアップクラッチ装置のピストンに作動油を供給するために、油圧ポンプが必要になる。この油圧ポンプは、例えばトランスミッションのケースに、入力軸を延長した軸から偏芯して配置される場合が多い。
【0004】
しかし、このような油圧ポンプの配置では、油圧ポンプを駆動するためのポンプ駆動軸に加えて、入力軸からポンプ駆動軸に回転を取り出すためのギア機構が必要になる。このため、装置全体の幅が広がり、またギア機構を構成する部品点数が増える。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように、トルクコンバータの回転軸と同軸に油圧ポンプ及びその駆動軸を配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−521513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すような構造では、トランスミッションの入力軸の延長線上に油圧ポンプが配置されるので、トランスミッションの入力軸を筒状に形成するとともに、この入力軸内部の貫通孔に油圧ポンプの駆動軸を配置する必要がある。
【0008】
ここで、ロックアップクラッチ装置は、トルクコンバータ本体に流入あるいは流出する作動油を利用してピストンを作動させる方式と、トルクコンバータ本体の作動油とは別系統の油圧回路によって供給される作動油によってピストンを作動させる方式とがある。後者のタイプでは、ピストン背面の油室に油圧ポンプからの作動油を供給する必要がある。そして、ピストン背面の油室は、トルクコンバータ本体の前方側に設けられる。
【0009】
そこで、この後者のタイプのロックアップクラッチ装置に、特許文献1の構造を適用して油圧ポンプからの作動油を供給するためには、油圧ポンプ駆動軸の内部に軸方向に沿って孔を形成し、この孔を油路とする必要がある。
【0010】
しかし、ポンプ駆動軸の内部に形成された油路からロックアップクラッチ装置のピストンまで作動油を導くためには、2重構造になったポンプ駆動軸及びトランスミッション入力軸のそれぞれに径方向に貫通する油路を形成し、いったんポンプ駆動軸の外周に作動油を導き、さらにその外周のトランスミッション入力軸の外周に作動油を導く必要がある。このような構成では、構造が複雑になるとともに、作動油の漏れが増加する。
【0011】
また、ポンプ駆動軸の内部に孔を形成する場合、ガンドリルが用いられるが、一般的に、ガンドリルでは小径の孔を形成するのは困難である。このため、ポンプ駆動軸の内部にガンドリルで孔を形成すると、ポンプ駆動軸の肉厚が薄くなる。このようなポンプ駆動軸に熱処理を施すと、ポンプ駆動軸の軸歪みが大きくなる。
【0012】
本発明の課題は、トランスミッション入力軸の内部に油圧ポンプの駆動軸が配置された構成において、ロックアップクラッチ装置に、簡単な構成で作動油を導くことにある。また、ポンプ駆動軸に変形等を生じさせることのない、油路を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る作業車両は、エンジンと、エンジンに連結されるトランスミッションと、油圧ポンプと、を有する。トランスミッションは、エンジンからの動力が入力される入力部材と、筒状の入力軸を有するトランスミッション本体と、トルクコンバータ本体と、ロックアップクラッチ装置と、ポンプ駆動軸と、油路と、を備えている。トルクコンバータ本体は、入力部材に連結され、入力部材からの動力を入力軸に流体を介して伝達する。ロックアップクラッチ装置は、油圧によって作動するピストンと、ピストンの背面に形成された油室と、ピストンの作動によって入力部材からの動力を入力軸に伝達するクラッチ部と、を有する。ポンプ駆動軸は入力軸の内部を貫通して入力軸と同軸に配置され、油圧ポンプへ駆動力を伝達する。油路は、入力軸の内周面とポンプ駆動軸の外周面との間に形成され、ロックアップクラッチ装置の油室へ通じている。
【0014】
ここでは、ポンプ駆動軸によって油圧ポンプが駆動され、油圧ポンプから吐出された作動油は、ポンプ駆動軸と入力軸との間の隙間である油路を通ってロックアップクラッチ装置の油室に導かれる。
【0015】
このような構成では、ポンプ駆動軸の内部に油路としての孔を形成する必要がない。したがって、簡単な構成で、かつ作動油の漏れを少なくして、油圧ポンプからの作動油をロックアップクラッチ装置に導くことができる。また、熱処理工程においてポンプ駆動軸に生じる歪みを抑えることができる。さらに、小型の作業車両で、ポンプ駆動軸の径が小さい場合でも、容易に油路を構成することができる。
【0016】
第2発明に係る作業車両は、第1発明の作業車両において、ポンプ駆動軸は、先端部が入力軸の先端面からエンジン側に突出して延びている。また、入力部材は、連結用孔と、嵌合孔と、油溜め部と、連通孔と、を有している。連結用孔は、入力部材の中心部に配置され、ポンプ駆動軸の先端部が連結される。嵌合孔は、連結用孔と同軸に配置され、連結用孔より大径に形成され入力軸の先端部の外周面と嵌合する。油溜め部は、嵌合孔の内周面と、入力軸先端面と、ポンプ駆動軸の外周面と、によって形成され、油路に連通する。連通孔は油溜め部とロックアップクラッチ装置の油室とを連通する。
【0017】
ここでは、ポンプ駆動軸と入力軸との間の油路を通過してきた作動油は、油溜め部に導かれ、さらに連通孔を通してロックアップクラッチ装置の油室に導かれる。連通孔は、例え複数設けられたとしても、その総断面積は、ポンプ駆動軸の外周面積(幅を連通孔の径とする)と比べると狭い。そして、ポンプ駆動軸の外周部の作動油が連通孔に集まる。また、ポンプ駆動軸外周面と入力軸の内周面の距離は短いので、作動油の圧損が大きくなる。その結果、ロックアップクラッチの動作が遅れる原因にもなる。そこで、油溜め部を設けることで、ポンプ駆動軸と入力軸との間の油路から連通孔への作動油の流れがスムーズになり、圧損が少なくなる。
【0018】
第3発明に係る作業車両は、第2発明の作業車両において、タービンハブと、ベアリングと、をさらに有している。タービンハブは、中心部に円筒部を有し、その内周部が入力軸の外周部と連結され、トルクコンバータ本体からの動力を入力軸へ伝達する。ベアリングは、その内周が円筒部の外周に嵌合する。入力部材は支持孔をさらに有する。支持孔は、嵌合孔と同軸であり、入力部材に配置され、ベアリングの外周と嵌合する。入力軸は、タービンハブ及びベアリングを介して入力部材に支持されている。
【0019】
ポンプ駆動軸は、連結用孔で入力部材と連結されている。入力軸はタービンハブ及びベアリングを介して入力部材に支持されている。ポンプ駆動軸と入力軸は共に入力部材に支持されているので、入力軸の内周面とポンプ駆動軸の外周面との間の距離を一定に保つことが容易にできる。
【0020】
以上のように、この発明では、入力部材に連通孔を形成して、入力軸先端部に導かれた作動油を入力部材の油室に導いている。このため、油圧回路を簡単な構成で実現できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明では、トランスミッション入力軸の延長線上に油圧ポンプが配置され、トランスミッション入力軸の内部に油圧ポンプ駆動軸が配置された構成において、簡単な構成で、ロックアップクラッチ装置の油室に作動油を導くことができる。また、ポンプ駆動軸の内部に油路としての孔を形成する必要がないので、熱処理時等におけるポンプ駆動軸の変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による作業車両に用いられるトランスミッションの一部を示す断面構成図。
【図2】図1の拡大部分図。
【図3】図1の拡大部分図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[全体構成]
図1に、本発明の一実施形態によるトランスミッション1の一部の断面構成を示している。このトランスミッション1は、例えば、バックホーローダのトランスミッションであり、本体ケース2と、本体ケース2のエンジン側(図1において左側)に固定されたフロントケース3と、を有している。本体ケース2には、入力軸4を含むトランスミッション本体5が収納されている。トランスミッション本体5は、前後進切換用の複数の油圧クラッチ、速度段切換用の複数の油圧クラッチ、歯車機構等の部材を有している。また、フロントケース3には、エンジン側のフライホイール6に連結されたフレキシブルプレート7と、フレキシブルプレート7に固定された入力部材8と、入力部材8に固定されたトルクコンバータ本体9と、ロックアップクラッチ装置10と、が配置されている。また、このトランスミッション1は、入力軸4と同軸に配置されたポンプ駆動軸12(以下、「PTO軸」と記す)と、を有している。
【0024】
入力軸4の延長線上には、本体ケース2に装着された油圧ポンプ13が設けられている。油圧ポンプ13はPTO軸12によって駆動される。
【0025】
[入力部材]
入力部材8は、エンジン側のPTO軸連結部15と、トランスミッション側の入力軸支持部16と、を有している。PTO軸連結部15と入力軸支持部16とは、フレキシブルプレート7をPTO軸連結部15に固定するボルト17によって互いに固定されている。
【0026】
図1及び図1の一部を拡大した図2に示すように、PTO軸連結部15は大径部21及び小径部22を有する円板状の部材である。大径部21の中心部には、エンジン側に突出する突出部21aが形成されており、図1に示すように、この突出部21aの先端部が軸受23を介してフライホイール6の内周部に支持されている。大径部21のエンジン側の側面には、フレキシブルプレート7の内周部が固定され、フレキシブルプレート7の外周部がフライホイール6の外周部に固定されている。また、大径部21の中心部には、スプライン孔21bが形成されている。小径部22の中心部には、スプライン孔21bより大きい内径のカラー挿入用孔22aと、カラー挿入用孔22aより大きい内径の嵌合孔22bと、が形成されている。
【0027】
入力軸支持部16は、環状の部材であり、内周部の孔16aにPTO軸連結部15の小径部22が挿入されている。入力軸支持部16は、外周部にトランスミッション側に延びる筒状部25を有している。筒状部25の内周側で、入力軸支持部16のトルクコンバータ本体9側の側面には、環状の凹部16bが形成されている。この環状の凹部16bが、ロックアップクラッチ装置10の油室(後述する)として機能している。また、筒状部25の先端部には外周側に延びるフランジ部26を有している。
【0028】
[トルクコンバータ本体]
図1に示すように、トルクコンバータ本体9は、主に、ポンプ28、タービン29、及びステータ30と、ステータ30と固定軸31との間に配置されたワンウェイクラッチ32と、を有している。
【0029】
ポンプ28は、外周部が入力軸支持部16のフランジ部26に連結されている。また、ポンプ28の内周部が軸受34を介して固定軸31に回転自在に支持されている。なお、固定軸31はボルト35によってフロントケース3に固定されている。タービン29はポンプ28に対向して配置されている。タービン29の内周部にはタービンハブ38が固定されている。タービンハブ38の中心部には、略円筒状の円筒部が形成されており、円筒部の内周部にはスプライン孔38aが形成されている。また、タービンハブ38の円筒部の外周面は、一部縮径され、ベアリング39の内周が嵌合されている。ベアリング39の外周は、入力軸支持部16に設けられた支持孔16dの内周面に嵌合されている。このようにして、タービンハブ38はベアリング39を介して入力軸支持部16に回転自在に支持されている。
【0030】
[ロックアップクラッチ装置]
図2及び図3に示すように、ロックアップクラッチ装置10は、油室16bと、ピストン41と、クラッチ部を構成する第1クラッチプレート42及び第2クラッチプレート43と、ダンパ機構44と、を有している。なお、図2は図1の径方向一方側の一部を拡大して示した図であり、図3は図1の径方向他方側の一部を拡大して示した図である。
【0031】
油室16bは、前述のように、入力軸支持部16に形成された環状の凹部である。ピストン41は油室16bに配置されている。また、図3に示すように、ピストン41と入力軸支持部16には、それぞれ対向する位置に孔41a,16cが形成されており、これらの孔41a,16cに1つのロッド46が挿入されている。これにより、ピストン41は入力軸支持部16に対して軸方向に移動自在でかつ相対回転不能である。
【0032】
第1クラッチプレート42は、環状の部材であり、両面に摩擦材が設けられている。第1クラッチプレート42の内周部には内歯が形成されており、この内歯が、ダンパ機構44を構成する入力プレート(後述)に形成された外歯に噛み合っている。したがって、第1クラッチプレート42は、ダンパ機構44に対して、軸方向移動自在にかつ相対回転不能に連結されている。
【0033】
第2クラッチプレート43は、環状の部材であり、外周部に外歯が形成されている。一方、入力軸支持部16の筒状部25の内周面には内歯が形成されており、この内歯に第2クラッチプレート43の外歯が噛み合っている。したがって、第2クラッチプレート43は、入力軸支持部16に対して、軸方向移動自在にかつ相対回転不能に連結されている。なお、第2クラッチプレート43のトランスミッション側には、バックプレート48が設けられ、第2クラッチプレート43の軸方向の移動を規制している。
【0034】
ダンパ機構44は、第1クラッチプレート42からの動力をタービンハブ38に伝達する機構である。ダンパ機構44は、入力プレート51と、入力プレート51の両側に配置された1対の出力プレート52と、これらのプレートによって支持された複数のトーションスプリング53と、を有している。入力プレート51は第1クラッチプレート42に連結され、1対の出力プレート52はタービンハブ38にリベットにより固定されている。
【0035】
[入力軸]
図1〜図3に示すように、入力軸4は、エンジンの回転軸と同軸に配置され、軸受55を介してフロントケース3に回転自在に支持されている。また、入力軸4は筒状に形成され、入力軸4の中心部には貫通孔4aが形成されている。この入力軸4には、前後進切換用クラッチ(図1では一部のみを示している)等の油圧クラッチ56や、複数のギアが設けられている。入力軸4の先端部外周には、スプライン軸4bが形成されている。このスプライン軸4bは、タービンハブ38の内周面に形成されたスプライン孔38aに係合している。入力軸4のスプライン軸4bのさらに先端部は、PTO軸連結部15の嵌合孔22bに挿入されて回転自在に支持されている。入力軸4の外周面にはシール部材が装着されており、入力軸4の外周面と嵌合孔22bの内周面とはシールされている。
【0036】
したがって、入力軸4は、タービンハブ38とベアリング39とを介して、入力軸支持部16に支持されている。
【0037】
[PTO軸]
PTO軸12は入力軸4の貫通孔4aを貫通して配置されている。PTO軸12の外周面と入力軸4の内周面との間には隙間が形成されている。PTO軸12の先端は、入力軸4の先端面からさらにエンジン側に突出して延びており、この先端部にはスプライン軸12aが形成されている。スプライン軸12aはPTO軸連結部15のスプライン孔21bに係合している。また、PTO軸12のスプライン軸12aのトランスミッション側の一部は、PTO軸連結部15のカラー挿入用孔22aに挿入されている。そして、PTO軸12の外周面とカラー挿入用孔22aの内周面との間にはカラー58が挿入されている。カラー58の外周面はカラー挿入用孔22aの内周面に密着しており、カラー58の内周面はPTO軸12の外周面に密着している。また、PTO軸12の外周面にはシール部材が設けられており、PTO軸12の外周面とカラー内周面との間はシールされている。
【0038】
以上のような構成では、入力軸12の先端面、カラー58の端面、PTO軸12の外周面、及び嵌合孔22bの内周面によって形成される空間は、油溜め部60として機能する。
【0039】
[油圧ポンプ]
油圧ポンプ13はPTO軸12の先端とは逆側の端部に連結されている。油圧ポンプ13は、PTO軸12の回転によって駆動され、作動油をPTO軸12の外周面と入力軸4の内周面との間の隙間に吐出する。
【0040】
[油圧回路]
油圧ポンプ13から吐出された作動油は、油圧回路を介してロックアップクラッチ装置10の油室16bに供給される。油圧回路は、図2に示すように、第1油路61と、前述の油溜め部60と、第2油路62と、第3油路63と、第4油路64と、から構成されている。
【0041】
第1油路61は、前述のように、PTO軸12の外周面と入力軸4の内周面との間の隙間によって形成されている。この第1油路61のエンジン側の端部は油溜め部60に連通している。
【0042】
第2油路62は、PTO軸連結部15の小径部22に形成された第1貫通穴によって形成されている。具体的には、PTO軸連結部15の小径部22には、環状の溝22cが形成されており、この環状溝22cから油溜め部60に連通するように1つの第1貫通孔62が形成されている。なお、第1貫通孔は複数形成されていてもよい。
【0043】
第3油路63は、入力軸支持部16の外周面から内周部に向けて貫通する第2貫通孔により形成されている。第2貫通孔63の内周側はPTO軸連結部15の環状溝22cに連通している。また、第2貫通孔63の外周端は、ネジ部材65が装着されることによって封止されている。
【0044】
第4油路64は、入力軸支持部16に形成された油室16bと第3油路63とを連通する連通孔によって形成されている。
【0045】
[動作]
車両の低速領域では、ロックアップクラッチ装置10はオフされている。すなわち、ロックアップクラッチ装置10の油室16bに作動油は供給されていない。この場合は、エンジンから入力部材8に入力された動力は、トルクコンバータ本体9を介して入力軸4に伝達される。
【0046】
車両の速度が所定の速度以上になると、油圧ポンプ13からの作動油がロックアップクラッチ装置10に供給される。具体的には、油圧ポンプ13から吐出された作動油は、第1油路61を通過して油溜め部60に導かれる。その後、油溜め部60から第2油路62、第3油路63、及び第4油路64を通過して油室16bに供給される。この油室16bに供給された作動油によって、ピストン41はトランスミッション側に移動させられる。このため、第1クラッチプレート42がピストン41と第2クラッチプレート43との間に圧接される。
【0047】
このような状態では、エンジンから入力部材8に入力された動力は、ロックアップクラッチ装置10を介してタービンハブ38及び入力軸4に伝達される。すなわち、エンジンからの動力は、トルクコンバータ本体9の流体を介さずに、ロックアップクラッチ装置10を介して入力軸4に直接伝達される。
【0048】
[特徴]
油圧ポンプ13から吐出された作動油は、PTO軸12と入力軸4との間の隙間である油路61を通ってロックアップクラッチ装置10に導かれる。このため、PTO軸12の内部に油路としての孔を形成する必要がない。したがって、簡単な構成で、かつ作動油の漏れを少なくして、油圧ポンプ13からの作動油をロックアップクラッチ装置10に導くことができる。また、PTO軸12を中実で形成できるために、熱処理工程における歪みを抑えることができる。
【0049】
油溜め部60が設けられているので、PTO軸12と入力軸4との間の油路61から第2油路62への作動油の流れがスムーズになり、作動油の圧損が少なくなる。このため、ロックアップクラッチの動作の遅れを避けることができる。
【0050】
PTO軸連結部15及び入力軸支持部16に形成される貫通孔62,63及び連通孔64は、回転軸に直交、あるいは回転軸に沿った方向に形成される。このため、斜め方向に孔を形成する必要がなく、加工が容易になる。
【0051】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0052】
特に、PTO軸連結部及び入力軸支持部に形成される油路としての孔の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 トランスミッション
4 入力軸
5 トランスミッション本体
8 入力部材
9 トルクコンバータ本体
10 ロックアップクラッチ装置
12 PTO軸(ポンプ駆動軸)
13 油圧ポンプ
15 PTO軸連結部
16 入力軸支持部
16b 油室
16d 支持孔
21b スプライン孔(連結用孔)
22b 嵌合孔
38 タービンハブ
39 ベアリング
41 ピストン
42 第1クラッチプレート
43 第2クラッチプレート
60 油溜め部
61 第1油路
62 第2油路
63 第3油路
64 第4油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに連結されるトランスミッションと、
油圧ポンプと、
を有する作業車両であって、
前記トランスミッションは、
前記エンジンからの動力が入力される入力部材と、
筒状の入力軸を有するトランスミッション本体と、
前記入力部材に連結され、前記入力部材からの動力を前記入力軸に流体を介して伝達するトルクコンバータ本体と、
油圧によって作動するピストンと、前記ピストンの背面に形成された油室と、前記ピストンの作動によって前記入力部材からの動力を前記入力軸に伝達するクラッチ部と、を有するロックアップクラッチ装置と、
前記入力軸の内部を貫通して前記入力軸と同軸に配置され、前記油圧ポンプへ駆動力を伝達するポンプ駆動軸と、
前記入力軸の内周面と前記ポンプ駆動軸の外周面との間に形成され、前記ロックアップクラッチ装置の油室へ通じる油路と、
を備えた作業車両。
【請求項2】
前記ポンプ駆動軸は、先端部が前記入力軸の先端面からエンジン側に突出して延びており、
前記入力部材は、
中心部に配置され、前記ポンプ駆動軸の先端部が連結される連結用孔と、
前記連結用孔と同軸に配置され、前記連結用孔より大径に形成され前記入力軸の先端部の外周面と嵌合する嵌合孔と、
前記嵌合孔の内周面と、前記入力軸先端面と、前記ポンプ駆動軸の外周面と、によって形成され、前記油路に連通する油溜め部と、
前記油溜め部と前記ロックアップクラッチ装置の油室とを連通する連通孔と、
を有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
中心部に円筒部を有し、その内周部が前記入力軸の外周部と連結され、前記トルクコンバータ本体からの動力を前記入力軸へ伝達するタービンハブと、
前記円筒部の外周に、内周が嵌合するベアリングと、
をさらに備え、
前記入力部材は、
前記嵌合孔と同軸であり、前記入力部材に配置され、前記ベアリングの外周と嵌合する支持孔をさらに有し、
前記入力軸は、前記タービンハブ及び前記ベアリングを介して前記入力部材に支持されている、
請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36591(P2013−36591A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175533(P2011−175533)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【特許番号】特許第5106663号(P5106663)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)