作業車両
【課題】エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー及び上方側をカバーする金属製の天板を備え、該一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、サイドカバー及び天板の隅々まで塗装することが容易であって、部品点数が少なく、軽量化も容易な作業車両を提供することを課題としている。
【解決手段】エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー17,17及び上方側をカバーする金属製の天板16を備え、該一対のサイドカバー17,17の上端側を天板16の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー17,17及び天板16を塗装した後、天板16の左右端側に、左右のサイドカバー17,17の上端側をリベット20により結合した。
【解決手段】エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー17,17及び上方側をカバーする金属製の天板16を備え、該一対のサイドカバー17,17の上端側を天板16の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー17,17及び天板16を塗装した後、天板16の左右端側に、左右のサイドカバー17,17の上端側をリベット20により結合した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジンをカバーする左右一対のサイドカバーと天板を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー及び上方側をカバーする金属製の天板を備え、該一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側に一体的に取付固定した特許文献1,2に示す作業車両が公知になっている。
【0003】
そのため、サイドカバーの上端側を天板の左右端側にボルト及びナットを用いて結合することにより、結合前に予めサイドカバー及び天板を塗装し、塗装した後にサイドカバー及び天板を組立てることのできる特許文献2に記載の作業車両が従来公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35420号公報
【特許文献2】特許第4197603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の作業車両は、スポット溶接によって、一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側にそれぞれ取付固定しているため、防錆等を目的としてサイドカバー及び天板を塗装する場合、溶接の後に塗装を行う必要があり、取付箇所及びその近傍での塗り残しが発生し易く、この塗り残しによって、錆が発生する場合がある。
【0006】
また、上記特許文献2の作業車両は、ボルト及びナットによって、一対のサイドカバーの上端側を、天板の左右端側にそれぞれ取付固定しているため、取付箇所及びその近傍での塗り残しが防止できる一方で、ボルト及びナットが必要であるため、全体の重量及び部品点数が増加する。
【0007】
本発明は、エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー及び上方側をカバーする金属製の天板を備え、該一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、サイドカバー及び天板の隅々まで塗装することが容易であって、部品点数が少なく、軽量化も容易な作業車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、第1に、エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー17,17及び上方側をカバーする金属製の天板16を備え、該一対のサイドカバー17,17の上端側を天板16の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー17,17及び天板16を塗装した後、天板16の左右端側に、左右のサイドカバー17,17の上端側をリベット20により結合したことを特徴としている。
【0009】
第2に、左右のサイドカバー17,17の下部前端側に同じく塗装した後のジョイントカバー18の左右端側をリベット20により結合したことを特徴としている。
【0010】
第3に、エンジンの前方側をカバーするフロントグリル19に一対のサイドカバー17,17の前端側、天板16の前端側及びジョイントカバー18の上端側を取付固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、天板と一対のサイドカバーとジョイントカバーとをリベット結合して組立てるので、溶接で結合した後に塗装する場合と異なり、組立前に天板、サイドカバー及びジョイントカバーが予め塗装可能になり、天板と各サイドカバーとジョイントカバーの隅々まで塗装することが容易になる他、各部材をボルト及びナットにより結合する場合と比較して、部品点数が削減され、より軽量化できるという効果がある。
【0012】
なお、エンジンの前方側をカバーするフロントグリルに一対のサイドカバーの前端側、天板の前端側及びジョイントカバーの上端側を取付固定すれば、天板及びサイドカバーの前端側とジョイントカバーの上端側とがそれぞれフロントグリルに固定されて補強されるため、ガタをより効率的に抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面図である。
【図2】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの平面図である。
【図3】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの正面図である。
【図4】ボンネットの構成を示す斜視図である。
【図5】ボンネットの内部構造を示す要部側面図である。
【図6】ボンネット体を示す斜視図である。
【図7】ボンネット体を示す背面斜視図である。
【図8】天板及びサイドカバーの結合部を示す要部斜視図である。
【図9】リベット結合した状態を示す要部側面図である。
【図10】フロントグリルの正面斜視図である。
【図11】フロントグリルの背面斜視図である。
【図12】フロントグリルの取付態様を示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1乃至3は、本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面図と、平面図と、正面図である。作業車両の一種であるトラクタでは、左右一対の前輪1及び後輪2によって支持される機体フレーム3と、該機体フレーム3の前側に設置されたエンジンを上方側から開閉自在に覆うボンネット4と、該ボンネット4の後方に配置されてオペレータが操縦等を行う操縦部6とを備えることにより走行機体7が構成されており、該走行機体7の後方に昇降リンク8を介してロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)を昇降可能に連結している。
【0015】
前記操縦部6は、オペレータが着座する座席9と、座席9の前方に配置された操向操作具であるステアリングハンドル11と、座席9とステアリングハンドル11の間に設けられた床面であるフロアステップ12と、フロアステップ12の左右両側に配置されてオペレータが操縦部6へ乗込むのを補助する補助ステップ13とを備えている。
【0016】
上記座席9の後方側には、正面視逆U字状に屈曲形成された安全フレーム14が設置されており、この安全フレーム14は、操縦部6の後端部を左右に跨ぐように走行機体7の左右一方側から他方側に架設された状態で、走行機体7側に取付け固定されている。これにより、安全フレーム14は、車体の反転を防止し、車体が横転や反転した際に走行機体と地面との間にスペースを形成してオペレータの頭部を保護する機能を有する。
【0017】
図4は、ボンネットの構成を示す斜視図であり、図5は、ボンネットの内部構造を示す要部側面図である。前記ボンネット4は、エンジン21の上方側を覆う金属製の天板16と、エンジンの側方側を覆う左右一対の金属製のサイドカバー17,17と、一対のサイドカバー17,17の前端下側に連結する左右方向の金属製のジョイントカバー18と、エンジン前方側を覆う硬質の合成樹脂製のフロントグリル19とを、互いに縁部同士で一体的に接合して固定することにより構成されている。言い換えると、該ボンネット4の内部側にエンジン等が配置されるエンジンルーム10が形成されている。
【0018】
また、前記ボンネット4の後端(さらに具体的には天板の後端)側に設定された左右方向の軸が支点軸Xを支点として、上下揺動自在に、該ボンネット4が走行機体3に支持され、このボンネット4の上下揺動によって、エンジンルーム10が開閉される。ボンネット4の上方揺動によって、エンジン21の前方、前方斜め上方及び左右両側方が開放されるため、メンテナンス性が高い。
【0019】
このように開閉されるエンジンルーム10は、シャーシフレーム15上に固設されたエンジン21の前方にラジエータ22を配置し、上部及び下部の通気部34,36によって通気性が確保されたフロントグリル19側から流入されたエアをラジエータ22側に導入することにより、エンジン等の冷却を行う。フロントグリル19の上部の通気部34及び下部の左右一対の通気孔36,36は、無数の通気孔によって構成される他、この上下の通気部34,36の間には、左右一対の前照灯であるヘッドライト37,37を設置する前照灯設置部46,46が一体的に形成されている(図10参照)。
【0020】
次に、図4乃至12に基づき、上述のボンネットについて詳述する。
ボンネット4は、前記左右のサイドカバー17,17、天板16、ジョイントカバー18及びフロントグリル19の他、必要に応じて延長パネル27,27を備えている。
【0021】
上記サイドカバー17,17は、正断面視で上下方向に形成された下側半部に対して、上側半部が、正断面視上方に向かって左右内側に湾曲形成されている。このサイドカバー17,17の前端下部は、前端の上部及び中途部に対して、前方に突出しながら左右内側に湾曲又は屈曲(図示する例では湾曲)形成され、この突出箇所が延出部を構成している。
【0022】
上記天板16は、水平状の後側半部に対して、前側半部が前方に向かって若干下方に湾曲形成されており、各サイドカバー17の前後方向の上縁部は、側面視、天板16に沿った形状に成形されている。この天板16の前端側は、サイドカバー17,17の前端上部に対して、若干前方に突出している。
【0023】
上記ジョイントカバー18は、左右のサイドカバー17,17の延出部同士を接続するように左右方向に形成されており、左右の端側に比べて中央側が若干前方に湾曲している。
【0024】
上記フロントグリル19は、天板16の前端と、左右のサイドカバー17,17の前端と、ジョイントカバー18の上端に沿うように縁側が形成され、前方に膨出する凸曲面状に形成されている。
【0025】
上記延長パネル27,27は、天板16の後端位置が、サイドカバー17,17の後端位置よりも後方にある場合に用い、側面視で各サイドカバー17,17の後端から天板16の後端に至る範囲に形成される。この延長パネル27,27は、正断面視で、サイドカバー17,17の正断面形状に沿うように、上側半部が上方に向かって左右内側に湾曲形成されている。該延長パネル27,27を有無や、前後長の調整によって、1つのサイドカバー17,17に対して、前後長が異なる複数種類の天板16を適用させることが可能になる。この結果、サイドカバー17,17を小型、中型、大型等、様々なタイプのトラクタに適用可能になる。
【0026】
ボンネット4の組立手段について説明すると、鉄板で形成された天板16、一対のサイドカバー17,17及びジョイントカバー18における隣接する各縁部同士を、リベット20によって結合(リベット結合)することにより、正断面視逆U字状に形成された前後方向の鉄製のボンネット体26を予め一体成形し、このボンネット体26にフロントグリル19をボルト固定によって着脱可能に取付ける。
【0027】
図6は、ボンネット体を示す斜視図であり、図7は、ボンネット体を示す背面斜視図であり、図8は、天板及びサイドカバーの結合部を示す要部斜視図であり、図9は、リベット結合した状態を示す要部側面図である。各サイドカバー17の上縁部(上端側)からは、前後方向の上端側接合部17aが、下方に向かって一体的に延出されるとともに、各サイドカバー17の後縁部(後端側)からは、上下方向の後端側接合部17bが左右内側に一体的に延出される他、各サイドカバー17の延出部の先端側(前端側)からは、上下方向の前端側接合部17cが後方に一体的に延出される。
【0028】
これに対して、天板16の左右両縁部(左右端側)からは、前後方向の接合部16aが下方に向かって一体的に延出されている。この接合部16aの下端部は、サイドカバー17側に屈曲形成されて受部23を構成している。さらに、ジョイントカバー18の左右の各端部からは上下方向の接合部18cが後方に向かって一体的に延出され他、延長パネル27,27を設ける場合には、延長パネルの上縁部(上端側)からは、前後方向の上端側接合部27aが下方側に向かって一体的に延出されるとともに、延長パネル27の前縁部(前端側)からは、上下方向の前端側接合部27bが左右内側に向かって一体的に延出される。
【0029】
そして、左右のサイドカバーの上端側接合部17aと、天板16の左右の接合部16aとを面状に密着させた状態で、リベット結合する。この際、天板16の接合部16aに設けられた受部23に、各サイドカバー17,17の上端側接合部を受止められ、両者を接合する作業を効率的に行うことが可能になる。また、左右のサイドカバー17,17の前端側接合部17cと、ジョイントカバー18の左右の接合部18cとを、それぞれ面状に密着させた状態で、リベット接合する。
【0030】
さらに、延長パネル27,27を設ける場合には、延長パネル27の前端側接合部27bをサイドカバー17,17の後端側接合部17b,17bに面状に密着させた状態で、リベット結合するとともに、延長パネル27の上端側接合部27a,27aを、天板16の接合部16a,16aに面状に密着させた状態で、リベット係合する。これらの作業によって、上述したボンネット体26が形成される。
【0031】
ちなみに、リベット結合について、詳述すると、リベット20は、軸部28及び該軸部28の端側に形成された頭部29を有する鋲の軸部28を、両接合部に穿設されたリベット孔25に嵌合挿通させ、リベット孔25から突出した軸部28をカシメ加工等によって変形させて変形部30を形成し、この頭部29と変形部30との間に両接合部を接合固定させる。この際、各接合部は、エンジンルーム10側に延出されており、ボンネット体26の外側に突出しない構造となっている。
【0032】
図10は、フロントグリルの正面斜視図であり、図11は、フロントグリルの背面斜視図であり、図12は、フロントグリルの取付態様を示す背面斜視図である。図6,図7,図10〜図11に示す通り、フロントグリル19の背面側には、前記ボンネット体26の前端の縁側にフロントグリル19を取付けるための円筒状のボルト部41,42,43,44がフロントグリル19の背面側から後方側に向かって押出し成形されている。詳しくは、該ボルト部41,42,43,44は、天板側に固定される左右一対の天板ボルト部41,41と、左サイドカバー側に固定される上下一対の左サイドカバーボルト部42,42と、右サイドカバー側に固定される上下の右サイドカバーボルト部43,43と、ジョイントカバー側に固定される左右のジョイントカバーボルト部43,43との計8個が設けられている。
【0033】
また、ボンネット体26を構成する天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18により構成されるボンネット体26の前端の縁側には、フロントグリル19を取付けられる枠状の開口部28が形成され、該開口部28には、上記フロントグリル19の各ボルト部41,42,43,44を、着脱自在に取付け固定するための取付部29,31,32,33が開口部28の内周面側に向かって突出形成されている。詳しくは、各取付部29,31,32,33は、天板16に左右一対に設けた天板側取付部29,29と、左サイドカバー17に設けた上下一対の左サイドカバー側取付部31,31と、右サイドカバー17に設けた上下一対の右サイドカバー側取付部32,32と、ジョイントカバー18に設けた左右一対のジョイントカバー側取付部33,33の計8個を備えている。
【0034】
すなわち、前記ボンネット体26側の取付部29,31,32,33にフロントグリル18背面側のボルト部41,42,43,44をそれぞれボルト固定することにより、フロントグリル19をボンネット体26前端の縁側にボルト固定することができる。
【0035】
当該構成により、各ボルト部41,42,43,44は、フロントグリル19の背面側から後方側(ボンネット内部側)に押出し成形されたアウトサートボルトであって、フロントグリル19をボンネット体26側へ取付けるためのボルト部41,42,43,44及び取付部29,31,32,33が、ボンネット4の外側から視認できない構成となる。
【0036】
また、天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18をリベット結合することにより形成した前記ボンネット体26の前端側に、一体成形された樹脂製のフロントグリル19を取付けてボンネット4を一体的に構成することにより、逆U字状のボンネット体26のガタを抑制して剛性を高めることができる。
【0037】
上述の構成により、鉄板で形成した天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18をそれぞれリベット結合してボンネット体26を構成し、該ボンネット体26の開口部28にフロントグリル19をボルト固定することによってボンネット4を形成する構成としたことにより、天板16、サイドカバー17,17、ジョイントカバー18及びフロントグリル19を互いに結合させる前に予め塗装しておき、その後にリベット結合によりボンネット4に組立てるため、ボンネット4の結合部を含めて隅々まで防錆作用のある塗料を塗布できる。
【符号の説明】
【0038】
16 天板
17 サイドカバー
18 ジョイントカバー
19 フロントグリル
20 リベット
21 エンジン
【技術分野】
【0001】
エンジンをカバーする左右一対のサイドカバーと天板を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー及び上方側をカバーする金属製の天板を備え、該一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側に一体的に取付固定した特許文献1,2に示す作業車両が公知になっている。
【0003】
そのため、サイドカバーの上端側を天板の左右端側にボルト及びナットを用いて結合することにより、結合前に予めサイドカバー及び天板を塗装し、塗装した後にサイドカバー及び天板を組立てることのできる特許文献2に記載の作業車両が従来公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35420号公報
【特許文献2】特許第4197603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の作業車両は、スポット溶接によって、一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側にそれぞれ取付固定しているため、防錆等を目的としてサイドカバー及び天板を塗装する場合、溶接の後に塗装を行う必要があり、取付箇所及びその近傍での塗り残しが発生し易く、この塗り残しによって、錆が発生する場合がある。
【0006】
また、上記特許文献2の作業車両は、ボルト及びナットによって、一対のサイドカバーの上端側を、天板の左右端側にそれぞれ取付固定しているため、取付箇所及びその近傍での塗り残しが防止できる一方で、ボルト及びナットが必要であるため、全体の重量及び部品点数が増加する。
【0007】
本発明は、エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー及び上方側をカバーする金属製の天板を備え、該一対のサイドカバーの上端側を天板の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、サイドカバー及び天板の隅々まで塗装することが容易であって、部品点数が少なく、軽量化も容易な作業車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、第1に、エンジンの側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー17,17及び上方側をカバーする金属製の天板16を備え、該一対のサイドカバー17,17の上端側を天板16の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー17,17及び天板16を塗装した後、天板16の左右端側に、左右のサイドカバー17,17の上端側をリベット20により結合したことを特徴としている。
【0009】
第2に、左右のサイドカバー17,17の下部前端側に同じく塗装した後のジョイントカバー18の左右端側をリベット20により結合したことを特徴としている。
【0010】
第3に、エンジンの前方側をカバーするフロントグリル19に一対のサイドカバー17,17の前端側、天板16の前端側及びジョイントカバー18の上端側を取付固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、天板と一対のサイドカバーとジョイントカバーとをリベット結合して組立てるので、溶接で結合した後に塗装する場合と異なり、組立前に天板、サイドカバー及びジョイントカバーが予め塗装可能になり、天板と各サイドカバーとジョイントカバーの隅々まで塗装することが容易になる他、各部材をボルト及びナットにより結合する場合と比較して、部品点数が削減され、より軽量化できるという効果がある。
【0012】
なお、エンジンの前方側をカバーするフロントグリルに一対のサイドカバーの前端側、天板の前端側及びジョイントカバーの上端側を取付固定すれば、天板及びサイドカバーの前端側とジョイントカバーの上端側とがそれぞれフロントグリルに固定されて補強されるため、ガタをより効率的に抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面図である。
【図2】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの平面図である。
【図3】本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの正面図である。
【図4】ボンネットの構成を示す斜視図である。
【図5】ボンネットの内部構造を示す要部側面図である。
【図6】ボンネット体を示す斜視図である。
【図7】ボンネット体を示す背面斜視図である。
【図8】天板及びサイドカバーの結合部を示す要部斜視図である。
【図9】リベット結合した状態を示す要部側面図である。
【図10】フロントグリルの正面斜視図である。
【図11】フロントグリルの背面斜視図である。
【図12】フロントグリルの取付態様を示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1乃至3は、本発明の作業車両を適用した農業用のトラクタの側面図と、平面図と、正面図である。作業車両の一種であるトラクタでは、左右一対の前輪1及び後輪2によって支持される機体フレーム3と、該機体フレーム3の前側に設置されたエンジンを上方側から開閉自在に覆うボンネット4と、該ボンネット4の後方に配置されてオペレータが操縦等を行う操縦部6とを備えることにより走行機体7が構成されており、該走行機体7の後方に昇降リンク8を介してロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)を昇降可能に連結している。
【0015】
前記操縦部6は、オペレータが着座する座席9と、座席9の前方に配置された操向操作具であるステアリングハンドル11と、座席9とステアリングハンドル11の間に設けられた床面であるフロアステップ12と、フロアステップ12の左右両側に配置されてオペレータが操縦部6へ乗込むのを補助する補助ステップ13とを備えている。
【0016】
上記座席9の後方側には、正面視逆U字状に屈曲形成された安全フレーム14が設置されており、この安全フレーム14は、操縦部6の後端部を左右に跨ぐように走行機体7の左右一方側から他方側に架設された状態で、走行機体7側に取付け固定されている。これにより、安全フレーム14は、車体の反転を防止し、車体が横転や反転した際に走行機体と地面との間にスペースを形成してオペレータの頭部を保護する機能を有する。
【0017】
図4は、ボンネットの構成を示す斜視図であり、図5は、ボンネットの内部構造を示す要部側面図である。前記ボンネット4は、エンジン21の上方側を覆う金属製の天板16と、エンジンの側方側を覆う左右一対の金属製のサイドカバー17,17と、一対のサイドカバー17,17の前端下側に連結する左右方向の金属製のジョイントカバー18と、エンジン前方側を覆う硬質の合成樹脂製のフロントグリル19とを、互いに縁部同士で一体的に接合して固定することにより構成されている。言い換えると、該ボンネット4の内部側にエンジン等が配置されるエンジンルーム10が形成されている。
【0018】
また、前記ボンネット4の後端(さらに具体的には天板の後端)側に設定された左右方向の軸が支点軸Xを支点として、上下揺動自在に、該ボンネット4が走行機体3に支持され、このボンネット4の上下揺動によって、エンジンルーム10が開閉される。ボンネット4の上方揺動によって、エンジン21の前方、前方斜め上方及び左右両側方が開放されるため、メンテナンス性が高い。
【0019】
このように開閉されるエンジンルーム10は、シャーシフレーム15上に固設されたエンジン21の前方にラジエータ22を配置し、上部及び下部の通気部34,36によって通気性が確保されたフロントグリル19側から流入されたエアをラジエータ22側に導入することにより、エンジン等の冷却を行う。フロントグリル19の上部の通気部34及び下部の左右一対の通気孔36,36は、無数の通気孔によって構成される他、この上下の通気部34,36の間には、左右一対の前照灯であるヘッドライト37,37を設置する前照灯設置部46,46が一体的に形成されている(図10参照)。
【0020】
次に、図4乃至12に基づき、上述のボンネットについて詳述する。
ボンネット4は、前記左右のサイドカバー17,17、天板16、ジョイントカバー18及びフロントグリル19の他、必要に応じて延長パネル27,27を備えている。
【0021】
上記サイドカバー17,17は、正断面視で上下方向に形成された下側半部に対して、上側半部が、正断面視上方に向かって左右内側に湾曲形成されている。このサイドカバー17,17の前端下部は、前端の上部及び中途部に対して、前方に突出しながら左右内側に湾曲又は屈曲(図示する例では湾曲)形成され、この突出箇所が延出部を構成している。
【0022】
上記天板16は、水平状の後側半部に対して、前側半部が前方に向かって若干下方に湾曲形成されており、各サイドカバー17の前後方向の上縁部は、側面視、天板16に沿った形状に成形されている。この天板16の前端側は、サイドカバー17,17の前端上部に対して、若干前方に突出している。
【0023】
上記ジョイントカバー18は、左右のサイドカバー17,17の延出部同士を接続するように左右方向に形成されており、左右の端側に比べて中央側が若干前方に湾曲している。
【0024】
上記フロントグリル19は、天板16の前端と、左右のサイドカバー17,17の前端と、ジョイントカバー18の上端に沿うように縁側が形成され、前方に膨出する凸曲面状に形成されている。
【0025】
上記延長パネル27,27は、天板16の後端位置が、サイドカバー17,17の後端位置よりも後方にある場合に用い、側面視で各サイドカバー17,17の後端から天板16の後端に至る範囲に形成される。この延長パネル27,27は、正断面視で、サイドカバー17,17の正断面形状に沿うように、上側半部が上方に向かって左右内側に湾曲形成されている。該延長パネル27,27を有無や、前後長の調整によって、1つのサイドカバー17,17に対して、前後長が異なる複数種類の天板16を適用させることが可能になる。この結果、サイドカバー17,17を小型、中型、大型等、様々なタイプのトラクタに適用可能になる。
【0026】
ボンネット4の組立手段について説明すると、鉄板で形成された天板16、一対のサイドカバー17,17及びジョイントカバー18における隣接する各縁部同士を、リベット20によって結合(リベット結合)することにより、正断面視逆U字状に形成された前後方向の鉄製のボンネット体26を予め一体成形し、このボンネット体26にフロントグリル19をボルト固定によって着脱可能に取付ける。
【0027】
図6は、ボンネット体を示す斜視図であり、図7は、ボンネット体を示す背面斜視図であり、図8は、天板及びサイドカバーの結合部を示す要部斜視図であり、図9は、リベット結合した状態を示す要部側面図である。各サイドカバー17の上縁部(上端側)からは、前後方向の上端側接合部17aが、下方に向かって一体的に延出されるとともに、各サイドカバー17の後縁部(後端側)からは、上下方向の後端側接合部17bが左右内側に一体的に延出される他、各サイドカバー17の延出部の先端側(前端側)からは、上下方向の前端側接合部17cが後方に一体的に延出される。
【0028】
これに対して、天板16の左右両縁部(左右端側)からは、前後方向の接合部16aが下方に向かって一体的に延出されている。この接合部16aの下端部は、サイドカバー17側に屈曲形成されて受部23を構成している。さらに、ジョイントカバー18の左右の各端部からは上下方向の接合部18cが後方に向かって一体的に延出され他、延長パネル27,27を設ける場合には、延長パネルの上縁部(上端側)からは、前後方向の上端側接合部27aが下方側に向かって一体的に延出されるとともに、延長パネル27の前縁部(前端側)からは、上下方向の前端側接合部27bが左右内側に向かって一体的に延出される。
【0029】
そして、左右のサイドカバーの上端側接合部17aと、天板16の左右の接合部16aとを面状に密着させた状態で、リベット結合する。この際、天板16の接合部16aに設けられた受部23に、各サイドカバー17,17の上端側接合部を受止められ、両者を接合する作業を効率的に行うことが可能になる。また、左右のサイドカバー17,17の前端側接合部17cと、ジョイントカバー18の左右の接合部18cとを、それぞれ面状に密着させた状態で、リベット接合する。
【0030】
さらに、延長パネル27,27を設ける場合には、延長パネル27の前端側接合部27bをサイドカバー17,17の後端側接合部17b,17bに面状に密着させた状態で、リベット結合するとともに、延長パネル27の上端側接合部27a,27aを、天板16の接合部16a,16aに面状に密着させた状態で、リベット係合する。これらの作業によって、上述したボンネット体26が形成される。
【0031】
ちなみに、リベット結合について、詳述すると、リベット20は、軸部28及び該軸部28の端側に形成された頭部29を有する鋲の軸部28を、両接合部に穿設されたリベット孔25に嵌合挿通させ、リベット孔25から突出した軸部28をカシメ加工等によって変形させて変形部30を形成し、この頭部29と変形部30との間に両接合部を接合固定させる。この際、各接合部は、エンジンルーム10側に延出されており、ボンネット体26の外側に突出しない構造となっている。
【0032】
図10は、フロントグリルの正面斜視図であり、図11は、フロントグリルの背面斜視図であり、図12は、フロントグリルの取付態様を示す背面斜視図である。図6,図7,図10〜図11に示す通り、フロントグリル19の背面側には、前記ボンネット体26の前端の縁側にフロントグリル19を取付けるための円筒状のボルト部41,42,43,44がフロントグリル19の背面側から後方側に向かって押出し成形されている。詳しくは、該ボルト部41,42,43,44は、天板側に固定される左右一対の天板ボルト部41,41と、左サイドカバー側に固定される上下一対の左サイドカバーボルト部42,42と、右サイドカバー側に固定される上下の右サイドカバーボルト部43,43と、ジョイントカバー側に固定される左右のジョイントカバーボルト部43,43との計8個が設けられている。
【0033】
また、ボンネット体26を構成する天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18により構成されるボンネット体26の前端の縁側には、フロントグリル19を取付けられる枠状の開口部28が形成され、該開口部28には、上記フロントグリル19の各ボルト部41,42,43,44を、着脱自在に取付け固定するための取付部29,31,32,33が開口部28の内周面側に向かって突出形成されている。詳しくは、各取付部29,31,32,33は、天板16に左右一対に設けた天板側取付部29,29と、左サイドカバー17に設けた上下一対の左サイドカバー側取付部31,31と、右サイドカバー17に設けた上下一対の右サイドカバー側取付部32,32と、ジョイントカバー18に設けた左右一対のジョイントカバー側取付部33,33の計8個を備えている。
【0034】
すなわち、前記ボンネット体26側の取付部29,31,32,33にフロントグリル18背面側のボルト部41,42,43,44をそれぞれボルト固定することにより、フロントグリル19をボンネット体26前端の縁側にボルト固定することができる。
【0035】
当該構成により、各ボルト部41,42,43,44は、フロントグリル19の背面側から後方側(ボンネット内部側)に押出し成形されたアウトサートボルトであって、フロントグリル19をボンネット体26側へ取付けるためのボルト部41,42,43,44及び取付部29,31,32,33が、ボンネット4の外側から視認できない構成となる。
【0036】
また、天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18をリベット結合することにより形成した前記ボンネット体26の前端側に、一体成形された樹脂製のフロントグリル19を取付けてボンネット4を一体的に構成することにより、逆U字状のボンネット体26のガタを抑制して剛性を高めることができる。
【0037】
上述の構成により、鉄板で形成した天板16、サイドカバー17,17及びジョイントカバー18をそれぞれリベット結合してボンネット体26を構成し、該ボンネット体26の開口部28にフロントグリル19をボルト固定することによってボンネット4を形成する構成としたことにより、天板16、サイドカバー17,17、ジョイントカバー18及びフロントグリル19を互いに結合させる前に予め塗装しておき、その後にリベット結合によりボンネット4に組立てるため、ボンネット4の結合部を含めて隅々まで防錆作用のある塗料を塗布できる。
【符号の説明】
【0038】
16 天板
17 サイドカバー
18 ジョイントカバー
19 フロントグリル
20 リベット
21 エンジン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(21)の側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー(17,17)及び上方側をカバーする金属製の天板(16)を備え、該一対のサイドカバー(17,17)の上端側を天板(16)の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー(17,17)及び天板(16)を塗装した後、天板(16)の左右端側に、左右のサイドカバー(17,17)の上端側をリベット(20)により結合した作業車両。
【請求項2】
左右のサイドカバー(17,17)の下部前端側に同じく塗装した後のジョイントカバー(18)の左右端側をリベット(20)により結合した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
エンジン(21)の前方側をカバーするフロントグリル(19)に一対のサイドカバー(17,17)の前端側、天板(16)の前端側及びジョイントカバー(18)の上端側を取付固定した請求項1及び2に記載の作業車両。
【請求項1】
エンジン(21)の側方側をカバーする左右一対の金属製のサイドカバー(17,17)及び上方側をカバーする金属製の天板(16)を備え、該一対のサイドカバー(17,17)の上端側を天板(16)の左右端側に一体的に取付固定した作業車両において、前記一対のサイドカバー(17,17)及び天板(16)を塗装した後、天板(16)の左右端側に、左右のサイドカバー(17,17)の上端側をリベット(20)により結合した作業車両。
【請求項2】
左右のサイドカバー(17,17)の下部前端側に同じく塗装した後のジョイントカバー(18)の左右端側をリベット(20)により結合した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
エンジン(21)の前方側をカバーするフロントグリル(19)に一対のサイドカバー(17,17)の前端側、天板(16)の前端側及びジョイントカバー(18)の上端側を取付固定した請求項1及び2に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−6513(P2013−6513A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140409(P2011−140409)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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